説明

潮流・海流発電システム

【課題】潮流・海流発電において、低い流速でも安定的に高い効率で発電を行う。
【解決手段】この潮流・海流発電システム10においては、図中左側にある第1プロペラ20、図中右側にある第2プロペラ30が用いられ、これらの回転によって発電機本体100で発電が行われる。第1プロペラ20と第2プロペラ30においては同じ方向に回転トルクが発生し、これらは同じ方向に回転する設定とされる。第1回転軸21の回転に伴って、2つの界磁子25、26が、第1回転軸21を中心として、第1プロペラ20と同様に回転運動をする。第2回転軸31は、逆転機構32に接続されており、逆向きの回転となって第3回転軸33に出力される。遊星歯車機構34においては、第3回転軸33の回転は、同一方向に増速されて第4回転軸35から出力される。第4回転軸35の回転に伴って、電機子36は、界磁子25、26の間で、界磁子25、26とは逆向きに回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水(水)の流れによって発電を行う潮流・海流発電システムの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
自然現象を利用して発電を行う方法として、風力発電等が用いられているが、同様に、海水の流れによって発電を行うこともできる。海水の流れとしては、潮汐力によって生じた海水の流れである潮流と、潮汐力以外の原因によって生じた海水の流れである海流とがある。風力発電に用いられる風は吹いていない状態も多く、発電量が安定していないのに対して、こうした海水の流れは大半の時間で生じている。従って、海水の流れを利用する潮流・海流発電機は、風力発電等と比べて、これらの海水の流れを利用してより安定的に発電を行うことが可能であるという利点がある。
【0003】
こうした潮流・海流発電機は、比較的潮流・海流の強い海域に設置することが望ましいが、例えば日本沿岸域では流れの遅いところが多く、潮流・海流の強い海域で水深が浅く岸に近いような地点は限られている。また、潮流・海流はその向きや強さが時間とともに変化するという点においては、風と同様である。また、遅い流れの中で流れを有効に使い高い効率で発電を行うことが必要である点については、風力発電と同様であり、このためには、発電機を回転させるプロペラ翼(プロペラ)を複数組み合わせることが有効である。例えば、特許文献1には、大きさ(慣性モーメント)の異なる2つのプロペラを用い、一方のプロペラを発電機の電機子ロータに、他方のプロペラを発電機の界磁ロータに接続した構成の風力発電装置が記載されている。この構成においては、風力が弱いときには慣性モーメントが小さなプロペラを回転させることによって発電を行い、風力が充分強いときには慣性モーメントが大きなプロペラで高い安定性で発電を行う。また、慣性モーメントが小さなプロペラは、風力が強いときと弱いときでは、異なる方向に回転するように設定されている。これにより、風力が弱い際の発電機の起動性を向上させるとともに、風力が強い際の出力を安定化することができる。また、この構成においては、2種類のプロペラを近接距離に積層させて用いることができるため、例えばプロペラを横方向に複数並べて発電を行う場合と比べて、発電機自体を小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−100546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
海流や潮流は、風と比べて時間変動に強い規則性があるために、海流・潮流発電は、風力発電と比べて安定的な電力源となる。しかしながら、天候によっては風の流速は非常に高くなることがあるが、周期的に変動する海流や潮流の流速の最大値は大きく変動することがなく、その最大流速は風の流速と比べると非常に低い。
【0006】
従って、潮流・海流発電においては、低い流速でも高い効率で安定的に発電を行うことが特に要求される。このためには、前記の風力発電機の構成は不充分であった。
【0007】
本発明は、斯かる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の請求項1に係る潮流・海流発電システムは、潮流・海流の流れ方向において距離をおいて設置され、前記潮流・海流によって同一方向に回転する第1のプロペラ及び第2のプロペラと、前記第1のプロペラの回転軸となる第1の回転軸と、前記第2のプロペラの回転軸となる第2の回転軸と、前記第2の回転軸の回転方向を逆転させて第3の回転軸に出力する回転変換機構と、外側回転子と内側回転子の相対的回転運動によって発電を行い、外側回転子/内側回転子の一方は前記第1の回転軸によって回転し、外側回転子/内側回転子の他方は前記第3の回転軸によって回転する発電機本体とを具備し、前記回転変換機構及び前記発電機本体が、前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの間に設けられたことを特徴とする。
この発明においては、発電機本体が、潮流・海流によって同一方向に回転する第1及び第2のプロペラを用いて発電を行う。この際、第1及び第2のプロペラ間にある発電機本体において、第2のプロペラの回転を逆方向に変換して出力する回転変換機構が設けられることによって、外側回転子と内側回転子とが互いに逆向きに回転して発電が行われる。この際、自己安定的に第1のプロペラと第2のプロペラが同一方向に同一速度で回転しやすくなる。また、発電機本体が第1のプロペラと第2のプロペラの間に設けられており、例えば、第1のプロペラと第2のプロペラの間において、回転力を伝達するための機構的構造物は、発電機本体の他には不要である。
本発明の請求項2に係る潮流・海流発電システムは、前記第1のプロペラは前記潮流・海流における上流側に、前記第2のプロペラは前記潮流・海流における下流側にそれぞれ設置され、前記第3の回転軸の回転速度を同一方向に増速し第4の回転軸に出力して前記外側回転子/内側回転子の他方を回転させる増速機構を前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの間に具備することを特徴とする。
この発明においては、下流側に設けられた第2のプロペラによる回転が逆転かつ増速された第4の回転軸によって外側回転子又は内側回転子が回転する。
本発明の請求項3に係る潮流・海流発電システムにおいて、前記増速機構は、遊星歯車機構であることを特徴とする。
この発明においては、増速機構は、遊星歯車機構、すなわち、内歯車、遊星歯車、太陽歯車の組み合わせからなる機構であり、増速された回転出力が太陽歯車に接続された回転軸において得られる。
本発明の請求項4に係る潮流・海流発電システムにおいて、前記内側回転子は、前記第4の回転軸の回転運動によって回転運動を行うことを特徴とする。
この発明においては、増速された回転軸によって内側回転子が回転する設定とされる。
本発明の請求項5に係る潮流・海流発電システムは、前記第4の回転軸の回転速度を複数の異なる比率で変速する変速機構を、前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの間に具備することを特徴とする。
この発明においては、増速される回転軸の回転速度を複数の異なる比率で制御する変速機構が用いられる。
本発明の請求項6に係る潮流・海流発電システムは、前記変速機構における増速比率が小さくなる側に変速される際に、前記変速機構の出力回転軸に連動して回転するフライホイールが接続されることを特徴とする。
この発明においては、増速比率が小さくなり、回転運動の負荷が小さくなった際には、この回転運動に対する慣性モーメントを大きくするフライホイールが、出力回転軸に連動するように設置される。
本発明の請求項7に係る潮流・海流発電システムは、前記第2のプロペラの回転速度が上昇した際に、前記変速機構における増速比率が小さくなる側に変速されることを特徴とする。
この発明においては、第2のプロペラの回転速度が上昇した際に、増速比率が小さくなるように変速される。
本発明の請求項8に係る潮流・海流発電システムは、前記外側回転子に連動して回転するフライホイールが接続されたことを特徴とする。
この発明においては、外側回転子に連動するフライホイールが用いられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の潮流・海流発電システムは以上のように構成されているので、高い効率で安定的に発電を行うことができる。特に、第2のプロペラの回転と第1のプロペラの回転を整合させる、すなわち、同一方向に同一回転速度で回転させることが自己安定的に行えるため、潮流・海流の流速が低い場合でも、これを有効に利用して発電を行うことができる。また、発電機本体が第1のプロペラと第2のプロペラの間に設けられており、例えば、第1のプロペラと第2のプロペラの間において回転力を伝える機構的構造物は、発電機本体の他には不要である。従って、こうした大きな構造物の存在による水流への影響を極少にすることが可能である。
この際、下流側にあるプロペラの回転が逆転された第3の回転軸の回転を増速機構を用いて増速することにより、発電機本体における界磁子と電機子(内側回転子と外側回転子)との相対回転速度を増大させることができるため、更に発電効率を高めることができる。
この際、遊星歯車機構を用いれば、コンパクトな構成でこの増速機構を実現することができる。
また、内側回転子が増速機構を介して回転する構成とすれば、慣性力の影響を少なくした高速回転動作が可能である。
また、変速機構を用いれば、増速比率を、水流の状況やプロペラの回転に応じた最適な設定とすることが可能である。この場合、プロペラの回転が十分上がった場合、増速比率を小さくして回転運動の負荷が小さくなった際に、この回転運動に対する慣性モーメントを大きくするフライホイールを装着する構成とすれば、フライホイールの装着による影響を小さくした上で、回転の安定化による安定した電力供給が可能である。
また、フライホイールを外側回転子に連動するように装着すれば、簡単な構成で、この回転軸の回転の安定化が図れ、更に安定した電力供給が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態となる潮流・海流発電システムの構成を示す断面図である。
【図2】この潮流・海流発電システムにおいて用いられる回転変換機構の構成の概要を示す斜視図である。
【図3】この潮流・海流発電システムにおいて用いられる増速機構の概要を示す斜視図である。
【図4】水流がプロペラを通過した後の螺旋流を撮影した結果である。
【図5】螺旋流をシミュレーションした際の座標軸を示す図である。
【図6】第1のプロペラ通過後の螺旋流における流れの強度分布をシミュレーションした結果である。
【図7】本発明の実施の形態となる潮流・海流発電システムの第1の変形例の構成を示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態となる潮流・海流発電システムの第1の変形例において用いられる変速機構の構造及び動作を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態となる潮流・海流発電システムの第2の変形例の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態となる潮流・海流発電システムについて説明する。図1は、この潮流・海流発電システム10の構成を示す断面図である。
この潮流・海流発電システム10は、流れのある海中に設置される。この潮流・海流発電システム10においては、図中左側にある第1プロペラ(第1のプロペラ)20、図中右側にある第2プロペラ(第2のプロペラ)30が用いられ、これらの回転によって発電機本体100で発電が行われる。第1プロペラ20、第2プロペラ30は、それぞれ発電機構120における第1回転軸(第1の回転軸)21、第2回転軸(第2の回転軸)31に接続されている。発電機構120においては、周知の発電機と同様に、界磁子/電機子がそれぞれ外側回転子/内側回転子とされ、これらの間の相対的な回転運動によって発電が行われ、電機子から出力が取り出される。その出力は、発電機構120外周に設けられた取付ベース121を介して設置された送電管122を通って、送電線123によって海上の浮体(図示せず)に送電される。送電管122は、発電機構120や第1プロペラ20、第2プロペラ30を吊り下げる役割と送電線123を通す役割を果たす。発電機構120は第1プロペラ20、第2プロペラ30の間に設けられており、送電管122の役割は、この潮流・海流発電システム10の機械的支持と、その内部において送電線123を通過させることだけである。このため、送電管122中に複雑な機構を設ける必要はないため、全体の寸法を小さく(細く)することが可能である。すなわち、第1プロペラ20、第2プロペラ30と分離して設けられた発電機構120に回転力を伝えるための機構的構造物等を別途設ける必要がないため、第2プロペラ30に向かう流れに対する影響を極少にできる。なお、図1において、発電機構120他は、分かり易くするため寸法的に拡大して表現している。実際は、発電機構120の径は、第1プロペラ20、第2プロペラ30の径よりも、図1に記載されたよりもはるかに小さい。このため、発電機構120の存在が流れに与える影響も極めて小さい。
【0012】
第1回転軸21と第2回転軸31は同心上に設置され、図1はこの同心をなす中心軸における断面を示している。潮流・海流の流れ(水流)は図中の矢印で示されるように、左側から右側に向かっており、この流れによって、第1プロペラ20と第2プロペラ30においては同じ方向に回転トルクが発生し、これらは同じ方向に回転する設定とされる。すなわち、第1プロペラ20と第2プロペラ30のピッチの方向は水流に対して同一方向である。また、これらは共に中心軸から対称に2枚のプロペラ翼を具備するものとする。後述するように、第1プロペラ20と第2プロペラ30とは自己安定的に同一回転速度で回転する。
【0013】
第1回転軸21は、第1回転板22に固定されている。第1回転板22は、第1回転軸21を中心とした円板形状であり、図1においてはその円形の中心を通る厚さ方向の断面が示されている。第1回転板22には、第1回転軸21とは反対側(図中右側)に、図中上下の2箇所において、水平方向に延びる界磁子固定軸23、24がそれぞれ固定されている。界磁子固定軸23、24には、それぞれ界磁子(外側回転子)25、26が固定されている。界磁子25、26は、通常の発電機における界磁子と同様に、例えば永久磁石を用いて構成される。界磁子固定軸23、24は、第1回転板22の反対側(図中右側)で、第2回転板27に固定されている。第2回転板27も、第1回転板22と同様の円板形状であり、図1においてはその円形の中心を通る厚さ方向の断面が示されている。
【0014】
以上の構成により、この発電機本体100においては、第1回転軸21(第1プロペラ20)の回転に伴って、2つの界磁子(外側回転子)23、24が、第1回転軸21を中心として、第1プロペラ20と同様に回転運動をする。
【0015】
一方、第2回転軸31は、逆転機構(回転変換機構)32に接続されている。逆転機構32は、第2回転軸31と直結された第1傘歯車321、これと直交方向の回転軸をもち回転自在とされた第2傘歯車322、第2傘歯車322と直交しかつ第2回転軸31と同一方向となる第3回転軸(第3の回転軸)33に固定された第3傘歯車323から構成されている。逆転機構32における第1傘歯車321、第2傘歯車322、第3傘歯車323の関係及びこれらの動作を示した斜視図が図2である。第1傘歯車321と第2傘歯車322、第2傘歯車322と第3傘歯車323とは直交してそれぞれ係合し、これらはそれぞれ図示される方向に回転する。第2傘歯車322は、第2傘歯車軸324に回転自在にして取り付けられている。この構成によれば、図示されるとおり、第1傘歯車321(第2回転軸31)の回転は、逆向きの回転となって第3傘歯車323(第3回転軸33)に出力される。
【0016】
逆転機構32の出力側となる第3回転軸33は、図1中の右側から、遊星歯車機構(増速機構)34に接続されている。遊星歯車機構34においては、第3回転軸33は、第3回転板341に接続されている。第3回転板341は、第3回転軸33を中心とした円板形状であり、図1においてはその円形の中心を通る厚さ方向の断面が示されている。第3回転板341には、第3回転軸33とは反対側(図中左側)に、図中上下の2箇所に2本の遊星歯車固定軸342、343がそれぞれ固定されている。遊星歯車固定軸342、343には、これらを軸にして回転自在にされた構成で、遊星歯車344、345がそれぞれ設置されている。遊星歯車344、345は、第3回転軸33を中心として見た場合のその外側において、円環状の内歯車346の内側に係合し、かつその内側において太陽歯車347の外側に係合している。太陽歯車347は、第4回転軸(第4の回転軸)35に固定されている。この構成においては、第4回転軸35の回りにおける遊星歯車344、345の公転速度は、第3回転板341の回転速度と等しくなる。遊星歯車機構34の構成及びその動作を示した斜視図が図3である。
【0017】
円環状の内歯車346の中心軸は第4回転軸35と等しく、図1においてはこの中心軸を通る厚さ方向の断面が示されている。図3に示される遊星歯車344、345、内歯車346、太陽歯車347の構成は、従来より周知である。
【0018】
ここで、内歯車346は、前記の第2回転板27に一体化されて固定されている。従って、内歯車346は、第1回転軸21と一体化されており、第1回転軸21(第1プロペラ20)の回転に伴って回転する。第2回転軸31と第1回転軸21とは同一方向に回転し、第3回転軸33は、逆転機構32によって、第2回転軸31と逆方向の回転をする。従って、図3に示されるように、第3回転板341と内歯車346とは逆向きに回転する。これにより、この遊星歯車機構34においては、第3回転軸33の回転は、同一方向に増速されて第4回転軸35から出力される。
【0019】
一方、第4回転軸35は第2回転板27を貫通して図中左側に延びている。また、第4回転軸35には、界磁子25、26の間において電機子(内側回転子)36が固定されている。電機子36は、通常の発電機における電機子と同様に、例えばコイルを用いて構成され、界磁子(外側回転子)25、26の間で回転することによって、電機子36から出力が取り出される。
【0020】
この構成により、第4回転軸35(太陽歯車347)の回転に伴って、電機子36は、界磁子25、26の間で、界磁子25、26とは逆向きに回転する。従って、電機子36のコイル中に電磁誘導によって電流が流れ、発電が行われる。通常の発電機においては、電機子と界磁子のうちの一方が固定され、他方が回転することによって発電がなされるのに対して、この潮流・海流発電システム10においては、どちらも回転する構成とされ、かつその回転の向きが逆向きとなる。従って、発電作用を起こす電機子36と界磁子25、26の相対回転速度を実効的に高めることができる。
【0021】
この際、遊星歯車機構34における遊星歯車344、345、内歯車346、太陽歯車347の歯数をそれぞれ設定することにより、第3回転軸33の回転速度と第4回転軸35の回転速度の比を適宜設定することができ、増速の度合いを設定することが可能である。増速比率を高めた場合には、負荷が大きくなるために、この増速比率は、発電効率や負荷を考慮して適宜設定することができる。
【0022】
このように、図1の構成においては、第1プロペラ20と第2プロペラ30とが同一方向に回転し、第2プロペラ30の回転が逆転機構32で逆向きに出力され、この逆向きの2つの回転運動が発電機本体100に入力されることによって、効率的に発電を行うことができる。この際、逆向きとされた回転を遊星歯車機構34で増速することによって、更にその効率を高めている。なお、上記の例では、増速機構を第2回転軸31側に設けていたが、これを第1回転軸21側(界磁子(外側回転子)25、26側)に設けることも可能である。ただし、回転中心に近い側に設置されたために慣性モーメントが小さな電機子(内側回転子)36側を増速機構を介して回転させることが、安定した回転運動を行わせる上ではより好ましい。
【0023】
なお、この構成において、第1回転軸21、第2回転軸31、第3回転軸33、第4回転軸35は、同心上に設置され、第1回転板22、第2回転板27もこの同心上に設置される。また、第2回転板27の周囲には、この直線をその中心軸とする円環状のフライホイール37が設置されている。フライホイール37は第2回転板27と一体化されてこの中心軸の回りで回転運動をするが、フライホイール37はその外径が大きく、その慣性モーメントが大きくなるため、この回転運動の安定化が図れる。これにより、第2回転板27と一体化されて回転する界磁子(外側回転子)25、26の回転運動の安定化が図れ、発電の安定化が図れる。
【0024】
また、第4回転軸35は、第1回転板27を貫通し、第1回転板22に当接して固定されるため、これらの間の接点には、ベアリング38がそれぞれ設置されている。
【0025】
図1の構成全体は、水中に設置されるため、発電機構120は、発電機構ケース41中に封入される。また、発電機本体100は、この内部で更に発電機本体ケース42中に収納される。第1回転軸21、第2回転軸31がこれらのケースを貫通する箇所には、前記と同様のベアリング38が設置されている。
【0026】
上記の構成においては、第1プロペラ20、第2プロペラ30が同時に用いられており、これらが同じ方向に回転することによって特に発電効率を高めている。この点について以下に説明する。
【0027】
通常、プロペラのプロペラ翼の数は、回転効率の観点から、2枚とされる場合が多い。この場合には、一様な流れがプロペラに当たればプロペラは回転するが、このプロペラの後方においては、水流がプロペラの影響を受けて螺旋流となる。この螺旋流における流速の遅くなった箇所を実際に視覚的に撮影したのが図4である。この箇所は水流の進行に伴って螺旋形状となる。
【0028】
この螺旋流については、例えば、「Velocity Measurement in the Near Wake of a Horizontal Axis Wind Turbine」、W.Haans、T.Sant、GAM. van Kulk、 and GJW.van Bussel、Delft University of Technology、Delft、 The Netherlands(2005年)に、詳細に解析されている。ここでは、図5に示すように、第1プロペラ20の中心を原点としてX、Y、Z軸をとり(Z軸は水流の方向を正側とする)、プロペラの長さ(半径)をRとしてこの螺旋流についてこの文献においてシミュレーションされた結果を図6に示す。図6において、濃淡は水流の強度を示し、濃部が強度の高い箇所、淡部が強度の低い箇所を示し、(a)(b)(c)の順にZ/Rが大きくなっている、すなわち水流の進行方向の順となっている。Z/Rが大きくなるにつれて、強度の低い箇所が回転しながら進行していく、螺旋流となっていることが確認できる。強度の低い箇所は、2枚あるプロペラに対応している。一方、このプロペラに対応する箇所以外の箇所においては、流速はほぼ一様であり、プロペラよりも上流の流速とほぼ等しい流速となっている。
【0029】
従って、第1プロペラ20の後部に第2プロペラ30を図1に示すように配置した場合、第2プロペラ30は、この螺旋流によって回転する。この際、第2プロペラ30のプロペラ翼が上記の水流の低い領域に入った場合、発生する回転トルクは小さくなり、減速する。しかしながら、この場合には、隣接する強度の高い領域(第1プロペラ20通過前と同じ流速分布をもつ領域)にこのプロペラ翼は入り、第1プロペラ20と同様の回転トルクが発生する。このように、第1プロペラ20と第2プロペラ30で同じトルクが発生し、同じ方向に同じ回転速度で回った場合に、これらの回転は安定する。この場合、図5に示す第1プロペラ20と第2プロペラ30との位相差θは一定となるように自己安定作用が働く。θは、流速の絶対値や、第1プロペラ20と第2プロペラ30との距離等に応じて変わる量となる。
【0030】
従って、第1プロペラ20と第2プロペラ30とを同一回転速度で駆動させることが容易であり、これによって界磁子25、26と電機子36をそれぞれ逆方向に回転させ、これらの相対回転速度を高めることができるため、特に高い発電効率が得られる。この動作は、上記の螺旋流を利用しているため、流速が低く、回転数が遅い場合に特に有効である。すなわち、この構成は、潮流・海流発電に特に好適である。
【0031】
上記の構成においては、第1プロペラ20を用いた発電に有効に寄与しなかった水流を、第2プロペラ30を用いて再度発電に用いることができる。この際、実効的に大きな面積を占める第1プロペラ20と第2プロペラ30とを、これらの間に発電機構120を挟んで積層した形態とすることができる。有効に水流を受けるための大きさ(プロペラ翼の長さ)が必要である第1プロペラ20、第2プロペラ30と比べ発電機構120の大きさは小さく、かつ発電機構120は第1プロペラ20、第2プロペラ30の中心軸付近に設置される。第1プロペラ20から第2プロペラ30に至るまでの水流のうち、中心軸から離れた部分の水流は、特に第2プロペラ30で発生する回転トルクに大きな影響を与えるが、この構成においては、発電機構120の存在はこの水流に対して大きな影響を与えない。また、発電機構120で発電を行うので、従来のように回転力を伝える機構部をカバーする大きなケーシングは必要なく、第1プロペラ20から第2プロペラ30に向かう水流を遮るのは、細い送電管122だけである。このため、第2プロペラに向かう水流への影響は極少となる。従って、この潮流・海流発電システム10を小型化することが可能であり、かつ高い発電効率を得ることができる。
【0032】
また、上記の構成においては、何らかの機械的障害や海草など異物の付着によって第1プロペラ20、第2プロペラ30のうちのどちらか一方が回転しなくなった場合においては、他方は回転することができ、その効率は低下するものの、発電は行われる。従って、この観点からも安定した電力供給が可能である。
【0033】
なお、前記の通り、第2回転板27にフライホイール37が接続されることにより、第2回転板27の回転に伴って回転する界磁子25、26の回転運動における慣性モーメントが増大し、出力を安定させることができる。ただし、回転の立ち上がり時には、回転モーメントが小さい方が、その立ち上がり時間を短縮することができる。このため、フライホイール37は、着脱可能な設定とすることが好ましい。この場合には、この潮流・海流発電システム10の起動時には、フライホイール37を接続せずに上記の慣性モーメントを小さくした状態とすることによって、回転の上昇速度を高め、回転が充分上昇した後でフライホイール37を接続する設定とすることもできる。これにより、立ち上がりが速く、かつ安定した出力を得ることも可能である。
【0034】
また、図1の例では、フライホイール37を第2回転板27に固定した構成としたが、同様の効果を奏し、レイアウトが可能な限りにおいて、他の箇所に固定することが可能である。すなわち、第1回転軸21、第2回転軸31、第3回転軸33、第4回転軸35のいずれかに間接的に固定し、これらに連動してフライホイール37が回転する設定とすることができる。また、上記においては、フライホイール37の形状を円環状としたが、同様の効果を奏し、発電機構120に組み込める限りにおいて、その形状は任意である。
【0035】
次に、上記の潮流・海流発電システム10の変形例について説明する。図7は、第1の変形例である潮流・海流発電システム210の構成を示す断面図であり、図1に対応している。この潮流・海流発電システム210において用いられている発電機本体220は、前記の発電機本体100と同様の構成であり、フライホイール37が設けられていない点のみが異なる。この発電機構230においては、前記の発電機構120とは異なり、逆転機構(回転変換機構)32と遊星歯車機構34との間に変速機構50が設けられている。変速機構50の出力回転軸である第5回転軸51の回転方向は、第3回転軸33と同一であり、その回転速度あるいはその負荷が変速機構50によって調整される。第5回転軸51は、遊星歯車機構(増速機構)34における第3回転板341に接続されており、これによって回転が増速されて第4回転軸35(電機子36)が回転する。ここで、逆転機構32、遊星歯車機構34は潮流・海流発電システム10におけるものと同様である。この構成においては、変速機構50内の変速比を変更することにより、遊星歯車機構(増速機構)34の入力となる第5回転軸51の回転速度が調整される。これにより、遊星歯車機構34の出力となる第4回転軸35の第3回転軸33に対する増速比率が調整される。
【0036】
前記の通り、遊星歯車機構34においては、各歯車の歯数の設定により、発電機本体220に直接接続される第4回転軸35の回転の増速比率を調整することが可能である。しかしながら、この発電機構230の動作中に、これらの各歯車(歯数)の変更を行うことは困難である。ここでは、この代わりに、遊星歯車機構34に入力する第5回転軸51の回転速度を、変速機構50を用いて調整することにより、第4回転軸35の回転速度を調整する。この調整は、この発電機構230の動作中においても容易に行うことができる。
【0037】
図8は、この変速機構50の構造及びその動作を示す断面図である。図8(a)は、第2プロペラ30の回転が十分に高くなったときに、第5回転軸51の増速比率が小さくなるように変速する場合であり、図8(b)は、始動時など第2プロペラ30の回転が低いときに、増速比率が大きくなる側に変速する場合に対応する。この変速機構50においては、第3回転軸33と第5回転軸51とは、同心上に設定されている。また、この直線と平行に、副回転軸501が設置されている。図8(a)(b)は、第3回転軸33、第5回転軸51、副回転軸501を含む平面内の断面図となっている。
【0038】
変速機構50において、第3回転軸33には、これを中心軸として第1歯車502が固定されている。第1歯車502は、副回転軸501にこれを中心軸として固定された第2歯車503と係合している。これにより、第3回転軸33の回転運動は、副回転軸501に逆向きの回転となって伝達される。副回転軸501には、第2歯車503の他に、第3歯車504、第4歯車505が、それぞれ副回転軸501を中心軸として固定されている。副回転軸501は、この状態を保ったまま、図中の左右方向に移動できる設定とされる。ただし、副回転軸501の位置に関わらず、第2歯車503と第1歯車502は常に係合している設定とされる。このため、第1歯車502は、第2歯車503と比べて充分に厚くされる。この構成により、副回転軸501の位置に関わらず、第3回転軸33の回転運動は、第1歯車502、第2歯車503を介して副回転軸501に伝達される。
【0039】
この変速機構50の出力回転軸となる第5回転軸51には、第5歯車506が、その右側(第3回転軸33に近い側)において、第5回転軸51を中心軸として固定されている。また、この左側(遊星歯車機構34に近い側)において、ワンウェイクラッチ507が設置される。ワンウェイクラッチ507は、ラチェット構造となっており、図8(c)(d)に図8(a)(b)中のA−A方向の断面を示すように、内側歯車507Aと外側歯車507Bで構成される。このうちの内側歯車507Aが第5回転軸51に固定され、外側歯車507Bには、第6歯車508が固定される。第6歯車508の図中左側の面には、第5回転軸51を中心軸とし、第6歯車508よりも大きな外径をもつ円環状のフライホイール509が固定されている。ここで、図示されるように、副回転軸501上においては、第3歯車504の外径は、第4歯車505の外径よりも大きく設定されている。逆に、第5回転軸51上において、第5歯車506の外径は、第6歯車508の外径よりも小さく設定されている。また、第3歯車504と第5歯車506、第4歯車505と第6歯車508は、それぞれ係合するように設定されている。従って、第3歯車504と第5歯車506の外径の和と、第4歯車505と第6歯車508の外径の和は等しくされている。また、第4歯車505と第6歯車508が係合する場合には第3歯車504と第5歯車506は係合せず(図8(a))、第3歯車504と第5歯車506が係合する場合には第4歯車505と第6歯車508が係合しない(図8(b))位置関係とされる。この切替は、副回転軸501の左右方向の位置設定によって可能となっている。
【0040】
増速比率を小さくする場合(図8(a))には、副回転軸501は、左側にある設定とされる。この場合、副回転軸501の回転運動は、第4歯車505と第6歯車508を介して、ワンウェイクラッチ507に外側から伝わる。図8(c)は、この場合におけるワンウェイクラッチ507の動作を、図8(a)中のA−A方向の断面において示す。第6歯車508は、ワンウェイクラッチ507の外側歯車507Bに固定されているため、まず、外側歯車507Bはこれに応じて図8(c)中の矢印で示される回転運動をする。外側歯車507Bの内面は、図8(c)に示されるように、その法線が回転方向(図中では右回転方向)側を向く端面(円周方向に対して略垂直な角度をもつ面)と、回転軸を中心とした円弧に近い形状をもつ滑らかな曲面で構成された鋸歯形状となっている。逆に、内側歯車507Aの外面は、この逆方向を向く端面と、回転軸を中心とした円弧に近い形状をもつ滑らかな曲面とで構成された、外側歯車507Bの内面とは逆向きの鋸歯形状となっている。内側歯車507A、外側歯車507Bは共に金属で形成されており、特に内側歯車507Aは、弾性変形をする材料あるいは力を受けて変位する機構で形成されている。
【0041】
この構成により、図8(c)中の矢印で示される方向に外側歯車507Bが回転をした場合には、例えば図8(c)中の点線で囲まれた箇所において、外側歯車507B内面における端面と内側歯車507A外面における端面が当接する。これによって、外側歯車507Bの回転運動が内側歯車507Aに伝達され、内側歯車507Aも、図8(c)中の矢印で示される方向に回転する。すなわち、この回転運動は、内側歯車507Aに固定された第5回転軸51に伝達され、遊星歯車機構34(第3回転板341)にこの回転運動が伝達される。この際、第6歯車508には、フライホイール509が接続されているため、この回転運動における慣性モーメントは大きくなる。従って、この回転運動を安定化させることができる。
【0042】
一方、増速比率を大きくする場合(図8(b))には、副回転軸501は、右側にある設定とされる。この場合、副回転軸501の回転運動は、第3歯車504と第5歯車506を介して、第5回転軸51に伝達される。この場合のワンウェイクラッチ507の動作を前記と同様に示したのが、図8(d)である。この場合には、図8(c)の場合と異なり、まず内側歯車507Aが矢印で示される方向に回転運動をする。この場合には、内側歯車507A内面の端面と外側歯車507Bの内面の端面とは当接せず、代わりに、例えば図8(d)中の点線で囲まれた箇所において、回転軸を中心とした円弧に近い形状をもつ滑らかな曲面同士が当接する。この場合には、この接触の際に内側歯車507A内面が弾性変形をし、この曲面同士が摩擦した状態で内側歯車507Aが回転する、すなわち、内側歯車507Aが空回りをし、外側歯車507Bは回転をしない。この構成は、周知のラチェット構造の動作と同様である。この場合には、前記の場合とは異なり、外側歯車507B、第6歯車508、フライホイール509は、内側歯車507Aの回転運動から分離され、これらは回転運動を行わない。従って、この回転運動に際しての慣性モーメントは小さくなる。この場合には、回転の立ち上がり時間を速くすることが可能である。
【0043】
また、前記の第3歯車504の外径と第4歯車505の外径、第5歯車506の外径と第6歯車508の外径の関係より、第3回転軸33の回転速度が同一の場合には、図8(a)の場合の方が図8(b)の場合よりも第5回転軸51の回転速度が低くなる。すなわち、上記の構成によって2種類の変速比の切替が可能である。また、第5回転軸51の増速比を高くする設定(図8(b))は、始動時等、第2プロペラ30の回転が低く、発電機構230の発電に必要な回転数が十分に得られないときになされる。これに対して、第5回転軸51の増速比を低くする設定(図8(a))は、第2プロペラ30の回転が十分に高く発電機構230の発電に必要な回転数が得られるとき、あるいは第2プロペラ30の回転が高過ぎ、発電機構230が過回転になるときになされる。この場合、フライホイール509も回転するが、第2プロペラ30の回転数の変動に対して、フライホイール509を接続した場合の悪影響は小さくなり、慣性モーメントが大きくなったことによる回転運動の安定化が有効となる。上記の構成においては、この変速比及びフライホイールの脱着の切替動作を、副回転軸501の左右の位置の設定だけで行うことが可能であり、この潮流・海流発電システム210の動作中においてもこの切替動作を行うことができる。例えば、第2のプロペラ30(第2の回転軸31)の回転数が充分上昇した場合に、この切替動作を行い、増速比率を小さくする制御を行うことが可能である。この場合には、発電効率を高く保ったままで、回転の安定化を図ることができる。コンピューター等が第2のプロペラ30の回転数を検知することによって、この切替動作を自動的に行わせることも可能である。
【0044】
なお、上記の例では、図8(a)と図8(b)に示す2種類の変速比を設定できるものとしたが、同様の構成を左右方向に複数設けることにより、3種類以上の変速比を選択できる構成とすることができる。
【0045】
前記のとおり、自己安定的に第1回転軸21と第2回転軸31とは同一回転速度で回転した状態となるため、この状態で安定した出力が得られる。しかしながら、例えば水流の状態によっては、第2回転軸31(第2プロペラ30)の回転速度が不充分となって同一回転速度となりにくい場合も生ずる。こうした場合には、変速機構50を用いて適切な変速比を設定し、第2回転軸31の負荷を低減し、第2回転軸31の回転速度が上昇しやすい状態として、第1回転軸21と第2回転軸31の回転速度を近づけ、安定した状態を得ることができる。
【0046】
このため、変速機構50で実現される変速比(減速比)は複数種類設定できる構成とすることが好ましい。これにより、状況に応じて最適な減速比を選択することが可能となる。
【0047】
なお、この場合においても、前記の潮流・海流発電システム10と同様に、フライホイール509を装着する箇所は、同様の効果(回転の安定化)をもたらすことができる限りにおいて、任意である。ただし、前記の場合のように、回転軸の負荷が相対的に小さな側、すなわち、減速された側の回転軸に連動させるように固定することがより好ましい。
【0048】
次に、第2の変形例である潮流・海流発電システムについて説明する。図9は、この潮流・海流発電システム310の構成を示す断面図であり、図1に対応している。この潮流・海流発電システム310においては、3つのプロペラ(第1プロペラ320、第2プロペラ330、第3プロペラ340)と、2台の発電機構(第1発電機構350、第2発電機構360)、を具備する。各発電機構中には、それぞれ第1発電機本体370、第2発電機本体380が存在する。
【0049】
第1プロペラ320、第2プロペラ330、第3プロペラ340は、同一方向の水流によって同一方向に回転する。第1発電機構350(第1発電機本体370)、第2発電機構360(第2発電機本体380)は、それぞれが前記の発電機構120(発電機本体100)とほぼ同様の構成をもつ。従って、第1プロペラ320及び第2プロペラ330によって第1発電機構350(第1発電機本体370)が駆動され、第2プロペラ330及び第3プロペラ340によって第2発電機構360(第2発電機本体380)が駆動される。これらの各々が前記の潮流・海流発電システム10と同様に動作する。
【0050】
ただし、ここでは、前記の第2回転板27よりも外径の大きな第2回転板371、381が用いられている。これにより、第2回転板371、381自身がフライホイールと同様の効果をもたらす。この場合には、フライホイールの脱着によって慣性モーメントを調整するとことは不可能とはなるものの、構造がより単純化されるため、このように発電機構(発電機本体)を多数用いる場合には、特に好ましい。この点以外については、第1発電機構350(第1発電機本体370)、第2発電機構360(第2発電機本体380)は、前記の発電機構120(発電機本体100)と同様である。
【0051】
また、第1プロペラ320、第2プロペラ330間、及び第2プロペラ330、第3プロペラ340間の関係は、前記の潮流・海流発電システム10における第1プロペラ20、第2プロペラ30の関係と同様である。すなわち、これらは自己安定的に同一回転速度で回転をする。これにより、前記の潮流・海流発電システム10よりも更に水流を有効に利用し、更に効率的に発電を行うことができる。同様に、プロペラを4つ以上、発電機本体を3台以上用いて発電を行うことも可能である。また、前記の変形例と同様に、各発電機本体において、変速機構を設けることもできる。この場合、変速比の設定は、各発電機構毎に行うことができる。
【0052】
なお、上記のいずれの例においても、発電機本体における内側回転子として電機子を、外側回転子として界磁子を設置した構成としたが、これらを互いに入れ替えた構成としても同様に発電が行われることは明らかである。すなわち、電機子/界磁子のうちの一方を内側回転子とし、電機子/界磁子のうちの他方を外側回転子とし、これらが互いに逆方向に回転する設定とすればよい。この際、上記の例では、上流側にある第1のプロペラ(第1の回転軸)と外側とを直結し、下流側にある第2のプロペラ(第2の回転軸)の回転を逆方向に変えて内側を回転させる構成としたが、逆に、第1のプロペラと内側とを直結し、第2のプロペラの回転を逆方向に変えて外側を回転させる構成とすることができることもでき、同様の効果を奏することは明らかである。これらの設定は、内側回転子に接続された系と外側回転子に接続された系の慣性モーメントの大小関係に応じて適宜設定が可能である。フライホイールを使用することによってこれらの慣性モーメントの値を調整することもできる。
【0053】
また、上記の例では、増速機構として遊星歯車機構を用いていたが、これに限定されず、機械的に第3の回転軸の回転速度を高めて第4の回転軸に出力できる機構であれば、同様に増速機構として用いることができる。また、逆転機構(回転変換機構)として、3つの傘歯車を用いた構成について説明したが、機械的に第2の回転軸の回転方向を逆転させて第3の回転軸に出力できる構成であれば、他の構成を用いることもできる。あるいは、これらの機能を、例えば遊星歯車を部分的に用いた単一のギヤボックスで実現してもよい。逆に、遊星歯車機構(増速機構)を設けなくとも充分な出力が得られる場合には、これを用いる必要はない。また、第2の回転軸は、逆転機構を介してから増速機構に接続されるとしたが、これらの位置関係を逆転させてもよい。
【0054】
更に、変速機構も、図8の構成以外で実現することが可能である。この変速機構と増速機構、逆転機構を例えば単一のギヤボックス内において実現してもよい。また、変速機構、増速機構、逆転機構を別体とした場合には、これらの位置関係も、上記の動作を行える限りにおいて任意である。
【0055】
また、上記の例では、プロペラのプロペラ翼がいずれも2枚であるとしたが、第1のプロペラの後流によって第2のプロペラを駆動できる構成であれば、これらの構成は任意である。例えばプロペラ翼の数は3枚、あるいは任意の複数枚であってもよい。
【0056】
また、特に複数の発電機本体を用いる潮流・海流発電システム310においては、各発電機本体の構成は同一である必要はない。各プロペラを同一方向に回転させ、各発電機本体が発電を行うことができる限りにおいて、各発電機本体の設定は任意である。各プロペラについても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
上記の潮流・海流発電システムは、上記の通り、海上又は海中で発電を行なう際に用いることができる。河川等においても、水流によって発電を行う際にも同様に用いることができ、弱い水流を利用して安定的に発電を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10、210、310 潮流・海流発電システム
20 第1プロペラ(第1のプロペラ)
21 第1回転軸(第1の回転軸)
25、26 界磁子(外側回転子)
30 第2プロペラ(第2のプロペラ)
31 第2回転軸(第2の回転軸)
32 逆転機構(回転変換機構)
33 第3回転軸(第3の回転軸)
34 遊星歯車機構(増速機構)
35 第4回転軸(第4の回転軸)
36 電機子(内側回転子)
37 フライホイール
38 ベアリング
41 発電機構ケース
42 発電機本体ケース
100 発電機本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潮流・海流の流れ方向において距離をおいて設置され、前記潮流・海流によって同一方向に回転する第1のプロペラ及び第2のプロペラと、
前記第1のプロペラの回転軸となる第1の回転軸と、
前記第2のプロペラの回転軸となる第2の回転軸と、
前記第2の回転軸の回転方向を逆転させて第3の回転軸に出力する回転変換機構と、
外側回転子と内側回転子の相対的回転運動によって発電を行い、外側回転子/内側回転子の一方は前記第1の回転軸によって回転し、外側回転子/内側回転子の他方は前記第3の回転軸によって回転する発電機本体とを具備し、
前記回転変換機構及び前記発電機本体が、前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの間に設けられたことを特徴とする潮流・海流発電システム。
【請求項2】
前記第1のプロペラは前記潮流・海流における上流側に、前記第2のプロペラは前記潮流・海流における下流側にそれぞれ設置され、
前記第3の回転軸の回転速度を同一方向に増速し第4の回転軸に出力し前記外側回転子/内側回転子の他方を回転させる増速機構を前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの間に具備することを特徴とする請求項1に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項3】
前記増速機構は、遊星歯車機構であることを特徴とする請求項2に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項4】
前記内側回転子は、前記第4の回転軸の回転運動によって回転運動を行うことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項5】
前記第4の回転軸の回転速度を複数の異なる比率で変速する変速機構を、前記第1のプロペラと前記第2のプロペラの間に具備することを特徴とする請求項4に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項6】
前記変速機構における増速比率が小さくなる側に変速される際に、前記変速機構の出力回転軸に連動して回転するフライホイールが接続されることを特徴とする請求項5に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項7】
前記第2のプロペラの回転速度が上昇した際に、前記変速機構における増速比率が小さくなる側に変速されることを特徴とする請求項6に記載の潮流・海流発電システム。
【請求項8】
前記外側回転子に連動して回転するフライホイールが接続されたことを特徴とする請求項2から請求項7までのいずれか1項に記載の潮流・海流発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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