説明

濁・色度計

【課題】 同一の測定セル長にて広範囲の濁度の測定を可能とする濁・色度計を実現するとともに窓汚れの影響による色度の測定誤差を補正し、また、ランプ光量変動による色度の測定誤差を補正することができる濁・色度計を実現することを目的とする。
【解決手段】 透明容器中の微粒子を含む測定液に光を照射する光照射手段と、前記測定液を透過した光の濁度に関する光量を測定する第1光検出器と、前記微粒子によって散乱した光の濁度に関する光量を測定する第2光検出器と、前記測定液を透過した光の色度に関する光量を測定する第3光検出器と、
を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濁・色度計、特に、透過光と散乱光の量をもとに光学的に濁度および色度を求める濁・色度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浄水及び排水などの水処理プロセスでは、濁度や色度の測定及び管理は重要な項目となっており、濁・色度計が用いられている。
濁度計の方式には、透過光方式、散乱光方式、表面散乱光方式、透過散乱光方式がある
が、特に、透過光と散乱光の量の比により光学的に濁度を求める透過散乱光方式は低濁度
から高濁度まで測定が可能である。
【0003】
図4は従来の透過・散乱光方式の濁・色度計の要部構成図である。
図4において、光源(光照射手段)30から出た白色光はそれぞれ凹面鏡31で平行光となり、一方は測定光として測定セル(Mes)32、また他方は比較光として比較セル(Ref)33に入射する。円板状のフィルタホイール34の縁部近傍の表面には390nmの色度フィルタ35および660nmの濁度フィルタ36が1個ずつ90度の角度をおいて取付けてあり、一定速度で回転している。
【0004】
各セルを出た測定光と比較光は間欠的に2個のフィルタを通過した後凹面鏡31aにより光検出器37の位置で焦点を結ぶ。そして測定光比較光それぞれ2種の波長光合せて4種の透過光の強さが検出器により検出される。この検出した光の強さに応じて公知の式により色度および濁度を求めることができる。
【0005】
このような方式の濁・色度計は比較セル33と測定セル32で長さ以外は同じ構造なので比較光を基準として測定光を演算することにより、測定セル32の窓ガラスの汚れによる光の減光、ランプ輝度の変動などの影響をキャンセルすることができる。
また、2波長を用いることで一台の装置で色度と濁度を同時に測定することができ、サンプル液に混じる濁度分を補償した色度を測定することができる。
【0006】
比較セルと測定セルを用いて濁度と色度を測定する構成の技術としては例えば下記の特許文献に記載されたものがある。
【0007】
【特許文献1】特開平04−315020
【特許文献2】実開平04−29866
【特許文献3】特開2003−057230
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、図4の従来例では次の問題点があった。
濃度が低い領域では濁度成分による透過光の吸収が少なく測定が困難である。
窓汚れの影響を除去するために別々のセルを使用しているが実際には汚れの付着の程度がセルによって異なるため完全には影響を除去できない。
吸光度のみを使用して濁度を測定する場合、低濃度の測定は光の吸収が少ないため測定が困難である。
【0009】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、同一の測定セル長にて
広範囲の濁度の測定を可能とする濁・色度計を実現するとともに窓汚れの影響による色度の測定誤差を補正し、また、ランプ光量変動による色度の測定誤差を補正することができる濁・色度計を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を達成するために、本発明の濁・色度計は次のとおりの構成になっている。
請求項1においては、
透明容器中の微粒子を含む測定液に光を照射する光照射手段と、前記測定液を透過した光の濁度に関する光量を測定する第1光検出器と、前記微粒子によって散乱した光の濁度に関する光量を測定する第2光検出器と、前記測定液を透過した光の色度に関する光量を測定する第3光検出器と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2においては、請求項1記載の濁・色度計において、
前記第1光検出器で検出した光量値で前記第3光検出器で検出した光量値を除した値を用いて前記透明容器の汚れの影響による色度の測定誤差を補正する色度誤差演算手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3においては、請求項1又は2に記載の濁・色度計において、
光照射手段を構成するランプ近傍に配置され、色度に関する光の光量を測定する第4光検出器を備え、該第4光検出器で検出した光量値で前記第3光検出器で検出した光量値を除した値を用いてランプ光量変動による色度の測定誤差を補正する色度誤差演算手段を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項4においては、請求項1乃至3 のいずれかに記載の濁・色度計において、
光照射手段を構成するランプ近傍に配置され、濁度に関する光量を測定する第5光検出器とを備え、該第5光検出器で検出した光量値および前記第4光検出器で検出した光量値と、前記第1、第2光検出器で検出した光量値を用い、前記透明容器の汚れの影響による色度の測定誤差とランプ光量の変化に基づく色度誤差を補正する色度演算手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1によれば次のような効果がある。
短い測定セル長でも低い濃度の濁度を正確に測定でき、ランプ光量変動の影響を補正できる透過散乱光測定法と色度を測定する透過光測定法をひとつの検出器内で組み合わせ、濁度を正確に測定し色度も同時に測定できる。
【0015】
請求項2によれば、
濁度の透過光測定用の第1光検出器で検出した光量値で色度の透過光測定用の第3光検出器で検出した光量値を割りその値を使用して演算することで、窓汚れの影響による色度の測定誤差を補正することができる。
【0016】
請求項3によれば、
ランプ近傍に色度に関する光の光量を測定する第4光検出器を設け、この第4光検出器の信号で色度の透過光測定用の第3光検出器で検出した光量値を割り、その値を使用して演算することでランプ光量変動による色度の測定誤差を補正することができる。
請求項4によれば、
ランプ近傍に色度に関する光の光量を測定する第4光検出器を設けると共に、濁度測定用の第5光検出器を配置する。
そして、これらの検出器が検出した信号と、濁度の透過光測定用の第1光検出器で検出した透過光量と、色度の透過光測定用の第3光検出器で検出した光量値を用いて透明容器の汚れの影響による色度の測定誤差とランプ光量の変化に基づく色度誤差を補正する色度演算手段を用いて演算することで、窓汚れの影響とランプ光量の影響による色度の測定誤差を補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例を示す要部構成図である。図4に示す従来例と同一のものは同一符号を付している。
図1において、光源1からの光束はレンズ2で集光され平行光となる。
測定セル4の両端は透明ガラス3により仕切られており、測定セル4内を流れる測定液31の濁度成分(微粒子)によって平行光の一部は散乱されて散乱光8となる。
【0018】
測定セル3内の測定液を透過した透過光7は濁度測定用光学フィルタ9を通過した後に濁度の透過光測定用の第1光検出器5aで光電変換され電気信号Itを発生する。
測定セル3中の粒子(浮遊物質)により散乱された散乱光8は、濁度測定用光学フィルタ9を通した後に平行光線より外側にある1個または複数個の濁度の散乱光測定用第2光検出器6aにより光電変換され電気信号Isを発生する。
【0019】
濁度は濁度の散乱光測定用第2光検出器で得られた電気信号Isと濁度の透過光測定用光検出器で得られた透過光量Itの比率演算により求めている。このときIs/Itが粒子(浮遊物質)の濃度と直線関係にあることが求められる。このようにすることで、低濁度を正確に感度良く測定することができる。また透過光と散乱光の比率演算をしていることでランプ光量の変動および着色の影響などを除去することができる。
【0020】
同様に測定セル3内の測定液を透過した透過光7は色度測定用光学フィルタ10を通過した後に色度の透過光測定用の第3光検出器5bで光電変換され電気信号Icを発生する。
【0021】
濁度の透過光測定用第1光検出器で検出した電気信号Itと第3光検出器で検出した電気信号Icを比率演算(Ic/It)した値を使用し演算することで窓汚れの影響を除去することができる。またこの比率演算した値を使用することでランプ光量変動による測定誤差をある程度補正することができる。
【0022】
図2はランプ光量の変動の影響による色度の測定誤差を補正するための要部構成を示す図である(図1とは光源1側に色度測定用光学フィルタ10と濁度補正ランプ光の第4光検出器5cを設けた点のみが異なる)。
色度の測定において、ランプの光量変動を色度測定用光学フィルタ10を通して色度の透過光測定用の第3光検出器5bで検出した場合と、濁度測定用光学フィルタ10を通して濁度の透過光測定用の第1光検出器5aで検出した場合に検出する光の最大感度波長が異なるため光量変動時の光量検出量が異なる。
【0023】
そのため色度の透過光測定用第3光検出器5bの光量を濁度の透過光測定用の第1光検出器5aの光量で割っても完全には光量変動の影響による測定誤差を補正できない。ランプ光量の変動の影響による色度の測定誤差を補正するためには図2に示すように、色度測定用光学フィルタ10を通したランプ光を色度補正ランプ光測定用第4光検出器5cで検出した値ILCと色度の透過光測定用第3光検出器5bで 検出した値Icとで(Ic/ILC)の比率演算行い、この値を使用して演算を行う。
【0024】
図3は色度の測定においてランプ光量の変動と、窓汚れの影響による測定誤差を補正するための要部構造を示す図である(図2とは光源1側に濁度測定用光学フィルタ9と濁度補正ランプ光の第5光検出器5dを設けた点のみが異なる)。
図3において、 色度測定用光学フィルタ10を通過したランプ光を色度補正ランプ光測定用の第4光検出器5cで検出し、この値をILCとする。
そして、色度の透過光測定用第3光検出器で検出したIcを用いてIc/ILCの比率演算を行うことでランプ光量の変動による測定誤差を補正する。
【0025】
さらに濁度の透過光測定用の第1光検出器5aで検出したItで(Ic/ILC)を割る(Ic/(ILC×It))ことにより窓汚れの影響による測定誤差を補正することができる。
このままでは分母側が光量変動の影響を分子側に比べ大きく受けるため分子側に濁度測定用光学フィルタ9を通過したランプ光を濁度補正ランプ光測定用第5光検出器5dで検出したランプ光量(ILD)を乗じる((Ic×ILD)/(ILC×It))。この値を使用して演算することでランプ光量の変動と窓汚れの影響による色度の測定誤差を補正することができる。
【0026】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。図1〜図3の実施例では散乱光検出用の第2光検出器6aは2個の場合の例を示しているが、2個以上であってもよい。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の濁・色度計の一実施例を示す要部構成図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す要部構成図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す要部構成図図である。
【図4】従来の透過散乱方式の濁・色度計の要部構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1,30 光源
2 レンズ
3 透明ガラス
4 測定セル
5a 第1光検出器(濁度の透過光測定用)
5b 第3光検出器(色度の透過光測定用)
5c 第4光検出器(色度の透過光測定用)
5d 第5光検出器(濁度の透過光測定用)
6a 第2光検出器(濁度の散乱光測定用)
7 透過光
8 散乱光
9 濁度測定用光学フィルタ
10 色度測定用光学フィルタ
31 凹面鏡
32 測定セル
33 比較セル
34 フィルターホイール
35 色度フィルタ
36 濁度フィルタ
37 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明容器中の微粒子を含む測定液に光を照射する光照射手段と、前記測定液を透過した光の濁度に関する光量を測定する第1光検出器と、前記微粒子によって散乱した光の濁度に関する光量を測定する第2光検出器と、前記測定液を透過した光の色度に関する光量を測定する第3光検出器と、
を備えたことを特徴とする濁・色度計。
【請求項2】
前記第1光検出器で検出した光量値で前記第3光検出器で検出した光量値を除した値を用いて前記透明容器の汚れの影響による色度の測定誤差を補正する色度誤差演算手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の濁・色度計。
【請求項3】
光照射手段を構成するランプ近傍に配置され、色度に関する光の光量を測定する第4光検出器を備え、該第4光検出器で検出した光量値で前記第3光検出器で検出した光量値を除した値を用いてランプ光量変動による色度の測定誤差を補正する色度誤差演算手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の濁・色度計。
【請求項4】
光照射手段を構成するランプ近傍に配置され、濁度に関する光量を測定する第5光検出器とを備え、該第5光検出器で検出した光量値および前記第4光検出器で検出した光量値と、前記第1、第2光検出器で検出した光量値を用い、前記透明容器の汚れの影響による色度の測定誤差とランプ光量の変化に基づく色度誤差を補正する色度演算手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至3 のいずれかに記載の濁・色度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−317269(P2006−317269A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−139924(P2005−139924)
【出願日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】