説明

濾過モジュール

【課題】高温での使用に耐え、広範な種類の洗浄液が使用可能な濾過モジュールを提供する。
【解決手段】 懸濁物質を含有する被処理液の固液分離を行なう中空糸膜;該中空糸膜を収納し、前記被処理液が供給される供給口及び前記被処理液の濾過残渣液を排出する排出口を有し、電子線架橋されたポリプロピレン又は繊維強化ポリプロピレンで構成されたハウジング;並びに前記中空糸膜内の濾過水が該ハウジング外に排出されるように、前記中空糸膜の一端を保持する集水用保持部を備えている。好ましくは、電子線架橋されたポリプロピレン又は繊維強化ポリプロピレンの引張り弾性率が2200MPa以上、80℃における引張り弾性率が1100MPa以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜を用いて懸濁物質を含む被処理液の濾過を行なう濾過モジュールに関し、特に高温の被処理液や懸濁物質として油性物質を含む水の濾過に適し、濾過後、酸、アルカリ、有機溶剤などによる中空糸膜の洗浄が可能な濾過モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細菌、砂、微粒子などの懸濁物質を含む液体の濾過方法として、多孔質膜で構成されたチューブ(中空糸膜)を利用した濾過装置が実現されつつある。
中空糸膜を、懸濁物質を含む液体に曝すと、懸濁物質が中空糸膜を通過できず、液体だけが透過して中空糸膜内に流入できる。このような中空糸膜の固液分離機能を利用して、河川水、廃液、産業廃水等の高汚濁水を浄化することができる。
【0003】
高汚濁水を浄化する濾過装置に用いられる濾過モジュールとしては、例えば、図1に示すように、円筒状のハウジング1内に、固液分離を行なう多数の中空糸膜2を集束した中空糸束が収納されていて、前記中空糸膜2の一端は閉塞するように、ハウジング1底面側の保持部材3に取付けられ、中空糸膜2の他端はハウジング1外に連通するようにハウジング1上面の保持部材4に挿通されている。ハウジング底面側の保持部材3には、多数の貫通孔3aが開設されていて、懸濁物質、微粒子などを含んだ被処理液を、ハウジング1の底面からハウジング1内に供給できるようになっている。中空糸膜2を透過した濾過水は、ハウジング1上面の保持部材4を通って、ハウジング1上部の開口部から取水できるようになっている。
【0004】
中空糸膜としては、要求される濾過性能等によるが、一般に、特開2000−42375号公報(特許文献1)の段落番号0018に記載されているように、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルフォン、セルロース系、ポリビニルアルコール系、ポリイミド系の中空糸膜が用いられる。あるいは特開平5−96136号公報(特許文献2)の段落番号0011に記載されているように、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート、ポリアクリロニトリルなどを用いることもできる。
【0005】
ハウジングは、一般に、特開2000−42375号公報(特許文献1)の段落番号0037に記載されているように、機械的強度及び耐久性を有する材料で構成され、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、PTFE、PVDF等の樹脂材料、ステンレススチール等の金属材料が用いられる。被処理液に有機溶剤を使用する場合、耐溶剤性に優れたポリプロピレン、PTFE、PVDFなどが好適に用いられる。また、特開平5−96136号公報(特許文献2)の段落番号0012、特開平7−136469号公報(特許文献3)の段落番号0018では、ハウジング材料として、金属、プラスチック類の適当な材質とあり、好ましい材料として、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリスルホン、変性ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート樹脂が例示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−42375号公報
【特許文献2】特開平5−96136号公報
【特許文献3】特開平7−136469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ハウジングの構成材料も、中空糸膜の材料と同様に、上記材料のうち、要求される性能に応じて、適宜選択される。要求される特性としては、まず、被処理液に対して耐蝕性のある材料でなければならない。また、産業廃水、河川水などの浄化装置に使用される場合、モジュールの高さ1.5〜2.5mといった大型の濾過モジュールを用いることが多いため、機械的強度も重要となる。
【0008】
近年、さらに濾過装置の用途が拡大し、例えば、高温で運転されたボイラーのドレン水、油田採掘に使用された水の濾過に対する利用も検討されるようになってきている。
高温で運転されるボイラーのドレン水では、70℃以上の液体がハウジングに供給されることになるため、高温下でも機械的強度を保持できるハウジングを使用する必要がある。
【0009】
また、戸外で使用される濾過モジュールの場合、特に砂漠地帯での石油採掘に使用した水の濾過装置に用いる場合、装置が設置される環境温度の高低差が大きいため、高温時・低温時の温度サイクルに耐える強度が要求される。しかしながら、上記のようなプラスチック材料で、このような要件を充足させることは難しいのが実情である。
【0010】
また、濾過モジュールは、連続運転により、濾過残渣が中空糸膜表面に付着し、やがては中空糸膜の空孔が閉塞されて、濾過性能の低下をもたらしてしまう。この場合、濾過性能が低下してきた時点で、洗浄液を濾過装置に流し入れ、中空糸膜を洗浄することで、一般に対処している。
【0011】
油性物質を含む被処理液の場合、アセトン、メチルエチルケトン等の有機溶剤で中空糸膜を洗浄することが有効である。従って、中空糸膜として有機溶剤に対して耐性を有する材料を使用することは勿論であり、ハウジングの材料についても、有機溶剤に対して耐久性ある材料を使用することが望まれる。しかしながら、上記特許文献に例示されているようなプラスチック材料で構成されるハウジング内に、大量の有機溶剤を洗浄用に供給し、長時間曝すと、ハウジングを構成しているプラスチックの分解が促進され、ハウジングの強度低下、耐久性の低下をもたらしてしまう。上記特許文献1には、耐有機溶剤性に優れるPP、PTFE、PVDFを用いることが開示されているが、上記のような大型濾過モジュールでは、強度の点で満足できない。一方、ステンレス等の金属材料は、有機溶剤に対して耐久性を有する。しかしながら、油田採掘現場に使用する水の場合、シリカ等の無機物の付着も多く、このような無機物は、有機溶剤では除去できない。無機物を除去するためには、酸で洗浄することが効率的であるが、金属製ハウジングを大量の酸に長時間曝すといった洗浄操作は、金属材料の腐食をもたらす。
【0012】
さらに、近年、洗浄の方法として、濾過モジュール内に空気を供給して、中空糸膜束を振動、或いは気泡により膜表面に付着した汚染物質を除去する方法が提案されている。例えば、前述の特許文献2では、中空糸膜束の中心に細孔を有するパイプを設置し、パイプから洗浄用空気を供給することが提案されている。あるいは、被処理液に、気泡を含有させ、ハウジング内に供給する場合もある。いずれの場合も、ハウジング内には、被処理液の供給による内圧だけでなく、洗浄用気泡による内圧も加わるため、ハウジングに要求される強度は、さらに厳しくなり、上記のような材料で充足するものを見出すことはできないのが現状である。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高温ボイラーのドレン水や油田採掘現場の処理水のように、大型の濾過装置において、高温での使用に耐え、しかも油性物質や無機物の洗浄も行えるように、広範な種類の洗浄液が使用可能な濾過モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、大型の濾過モジュールにおいては、種々の被処理液、種々の条件で供給する場合について、ハウジングにかかる負荷を検討し、本発明に到達した。
【0015】
すなわち、本発明の濾過モジュールは、懸濁物質を含有する被処理液の固液分離を行なう中空糸膜;該中空糸膜を収納し、前記被処理液が供給される供給口及び前記被処理液の濾過残渣液を排出する排出口を有し、電子線架橋されたポリプロピレン又は繊維強化ポリプロピレンで構成されたハウジング;並びに前記中空糸膜内の濾過水が該ハウジング外に排出されるように、前記中空糸膜の一端を保持する集水用保持部を備えている。
【0016】
前記電子線架橋されたポリプロピレン又は繊維強化ポリプロピレンの引張り弾性率は2200MPa以上であることが好ましく、より好ましくは80℃における引張り弾性率が1100MPa以上である。
【0017】
前記ハウジングは、肉厚5〜10mmで、外径150〜300mm、長さ1500〜2500mmであることが好ましい。また、前記中空糸膜は、フッ素樹脂の多孔質膜で構成されていることが好ましい。
【0018】
本発明の濾過モジュールは、油性物質を含有する水の濾過用として、あるいは70℃以上の被処理液の濾過用に好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の濾過モジュールは、酸、アルカリ、高温に耐えることができる電子線架橋ポリプロピレン又は繊維強化ポリプロピレンで、ハウジングを構成しているので、中空糸膜の濾過性能、濾過寿命に応じて、酸・アルカリによる洗浄が必要な被処理液や高温水の濾過に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の濾過モジュールの一実施形態について、図1を参照しつつ、説明する。
図1に示す濾過モジュールは、円筒状のハウジング1上面に取付けられた集水用保持部材4に、固液分離を行なう多数の中空糸膜2を集束した中空糸膜束の一端がハウジング2外に連通するように挿通され、前記中空糸膜2の他端は閉塞するように保持部材3に取付けられた状態で、中空糸膜束がハウジング1内に収納されている。ハウジング1底面側の保持部材3には、多数の貫通孔3aが開設されていて、懸濁物質、微粒子などを含んだ被処理液を、ハウジング1底面からハウジング1内に供給できるようになっている。中空糸膜2を透過した濾過水は、ハウジング上面の保持部材4を通って、ハウジング上部の開口部から取水できるようになっている。また、濾過残渣で濃縮された被処理液(濃縮液)は、ハウジング1上方の壁面に開設された排出口5から排出される。
【0021】
本発明の濾過モジュールは、ハウジングが、電子線架橋されたポリプロピレン、又は繊維強化ポリプロピレンで構成されているという特徴を有している。
ハウジングのサイズは特に限定しないが、大量の被処理液を濾過するために、戸外に設備される濾過装置、工場内に備え付けられる濾過装置に用いられる濾過モジュールにおいては、肉厚5〜10mm、外径150〜300mm、全長1500〜2500mmであることが好ましい。
【0022】
架橋ポリプロピレンとは、放射線照射等により、架橋させた3次元構造を有するポリプロピレンである。一般に、ポリプロピレンに放射線等を照射すると、架橋反応と分子切断反応とがほぼ同じ確率で進行するため、機械的物性の改善が困難であるが、多官能性モノマーを添加した状態で放射線照射することにより、分子切断反応よりも架橋反応が優先的に起り、機械的物性が向上した架橋ポリプロピレンを得ることができる。
【0023】
多官能性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の分子内に二重結合を複数個持つモノマーが好ましく用いられる。このような多官能性モノマーは、ポリプロピレン100質量部に対して6〜20質量部の割合で混合されることが好ましい。
【0024】
ポリプロピレンとしては、ホモポリマー、ランダムポリマー、ブロックポリプロピレンなどのいずれを用いることもできるが、好ましくはランダムポリプロピレンである。一般に、非晶部分の多いランダムコポリマー、結晶化度の低いポリプロピレンの方が架橋しやすいためと思われる。
【0025】
また、架橋のための放射線は、γ線や電子線(β線)、X線などを用いることができるが、工業的生産にはコバルト60によるγ線や電子線加速器による電子線が好ましい。また、照射量としては、数十kGy以上あれば架橋できるが、200kGy以上にすることが好ましい。
【0026】
このような架橋ポリプロピレンは、引張り弾性率2200MPa以上とすることができ、好ましくは80℃での引張り弾性率1100MPa以上である。また、熱変形率(厚み1mmのサンプルに70℃で100gの荷重をかけた場合)1%以下とすることができる。
【0027】
このような架橋ポリプロピレン製ハウジングは、多官能性モノマーをポリプロピンに所定割合で混合したポリプロピン組成物で所定形状のハウジングを成形した後、放射線照射して、架橋すればよい。
【0028】
繊維強化ポリプロピレンに用いられる繊維としては、通常、繊維強化プラスチックに用いられる公知の繊維を使用することができる。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、金属繊維などが挙げられる。
このような繊維は、ポリプロピレン100質量部あたり20質量部含有されることが好ましい。
【0029】
上記所定割合で、強化繊維を混合したポリプロピレン組成物を、射出成形機、押出成型機などを用いて、所定形状に成形してもよいし、分割された部材をまず成形し、各部材を組合わせて熱溶接、高周波溶接、超音波溶接などによって所定形状にしてもよい。
【0030】
このような繊維強化ポリプロピレンは、引張り弾性率2200MPa以上とすることができ、好ましくは80℃での引張り弾性率1100MPa以上である。
【0031】
架橋ポリプロピレン、繊維強化ポリプロピレンは、いずれも、上記のように、ポリプロピン本来の化学的物性を損なうことなく、機械的物性が改善されている。従って、架橋ポリプロピレン、繊維強化ポリプロピレン製ハウジングは、酸、アルカリ、有機溶剤に対する耐薬品性を有していて、これらと直接、長時間接触するような状況に曝されても、初期の優れた機械的強度を維持することが可能である。
【0032】
また、本発明の濾過モジュールに用いられているハウジングは、肉厚5〜10mm、外径150〜300mm、円筒の高さ1500〜2500mmのサイズで、80℃においても耐圧性0.5MPaを確保することが可能である。このことは、上記サイズを有する図1に示すような濾過モジュールを、縦型に用いて、下方から被処理液を供給した場合、ハウジングの自重、被処理液の重量、被処理液の供給圧力、さらには洗浄用気泡等により、特にハウジング下方にかかる内圧にも耐えることを意味する。
【0033】
中空糸膜の構成材料としては、多孔質膜で構成されたチューブ(中空糸膜)を形成できる樹脂であれば特に限定せず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、PVDF等のフッ素化ポリオレフィンなどが用いられる。中空糸膜を構成する多孔質膜としては、膜を適宜処理により多孔質構造としたものであってもよいし、延伸により形成される繊維(フィブリル)構造で、フィブリル間間隙が空孔となったものであってもよいし、多孔質膜をらせん状に重ね合わせてチューブ構造を形成したものであってもよい。また、中空糸膜を構成する多孔質膜は、単層であってもよいし、適宜製法を組合わせた複数層構造であってもよい。
【0034】
中空糸膜のサイズは特に限定しないが、中空糸膜のチューブ内径0.3〜12mm、外径0.8〜14mm、膜厚0.2〜1mm、多孔質膜の空孔径10nm〜1000nm、空孔率50〜90%、膜間差圧0.1〜1.0MPaの耐圧性を備えたものが好ましく用いられる。
【0035】
中空糸膜の構成材料は、上記材料から、被処理液の種類に応じて適宜選択すればよいが、被処理液が、高温のドレン水や石油採掘水の場合には、フッ素樹脂で構成されることが好ましく、特に、延伸PTFE等の延伸により繊維構造となったフッ素樹脂の多孔質膜が好ましく用いられる。
【0036】
ハウジングの上面を構成する保持部材(集水用保持部材)は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等の液状樹脂を硬化させて成型するか、あるいはPFA、PP、PE樹脂などの熱溶融性プラスチック素材に中空糸膜の外径サイズの貫通孔を形成し、孔に中空糸膜を納めて、そのまま熱溶融させて作製することができる。
【0037】
ハウジング底面を構成する保持部材は、上面の集水用保持部材と同様の材料で構成でき、汚濁水が通過できる貫通孔が多数開設された円盤で、中空糸膜の一端が保持するための凹部が設けられている。この凹部に中空糸膜の一端を差し込み、接着剤で固着すればよい。
【0038】
以上のような構成を有する濾過モジュールは、ハウジング底面から被処理液水が供給される。ハウジング内に供給された被処理液は、中空糸膜と接触して、水、又は水溶液だけが中空糸膜内に流入する。中空糸膜内に流入した濾過水は、上部の固定部材を通過してハウジング外で取水されることができる。一方、中空糸膜の濾過作用で被処理液中に含まれる懸濁物質や油分の濃度が高くなった液は、適宜、排出口からハウジング外へ排出される。このようにして、濾過モジュールで、被処理液の濾過が行なわれる。
【0039】
ここで、中空糸膜表面には、被処理液に含まれていた油分、被処理液中の混入していた懸濁物質などが付着している。これらを放置しておくと、中空糸膜の濾過性能は低下し、ついには濾過装置としての役目を果たせなくなくなるので、定期的に洗浄する必要がある。本発明の濾過モジュールでは、そのサイズから、分解は容易でなく、また石油採掘現場や工場内に備え付けてしまっている場合には、分解掃除する事自体ができない。この場合、通常、被処理液に代えて、洗浄液をハウジング内に供給し、あるいは取水口から中空糸膜内に洗浄液を供給して、ハウジング内を洗浄液で満たすようにする(逆洗)ことで、洗浄することになる。付着した油性物質にはアセトン、メチルエチルケトン等の有機溶剤、シリカなどの無機物が付着しているおそれがある場合には、酸を用いて洗浄することが好ましい。
架橋ポリプロピレン、又は繊維強化ポリプロピン製ハウジングは、有機溶剤、酸による洗浄が行なわれても、所期の機械的物性を維持することができる。従って、使用する洗浄液を制限することなく、中空糸膜に付着した物質の種類に応じて、洗浄液を適宜選択できる。
【0040】
本発明の濾過モジュールは、このように化学的、機械的に優れた特性を有するので、厳しい使用環境にも耐えることができ、濾過性能のメインテナンスを行なうことにより、長期運転が可能である。
【0041】
本発明が対象とする被処理液は、特に限定しないが、上記のように、70℃以上の高温に曝されるような条件でも耐久性を確保することが可能であり、また、中空糸膜の洗浄に酸、アルカリ、有機溶剤を用いる必要があるような懸濁物質を含む被処理液の使用も可能である。従って、ボイラーのドレン水のように、70℃以上の汚濁水や、石油採掘に利用された水の濾過に用いることができる。特に砂漠の油田に設置されるような石油採掘水の濾過装置の場合、使用環境の温度サイクルの高低差が大きく、被処理液には、油性物質だけでなく、シリカ成分が混入している場合もあるが、このような被処理液の濾過にも対応することができ、固定構造物として、長期運転に耐えることができる。
【0042】
尚、図1に示す濾過モジュールは、底面を被処理液の供給口、上面を濾過水の取水口としたが、これに限定しない。被処理液を下方から供給し、上方から取水するものであったが、本発明の濾過モジュールはこれに限定されず、被処理液を上方から供給して下方から取水するものであってもよいし、あるいはハウジングを横型に設置して、使用してもよい。
横型、あるいは被処理液を上方から供給するタイプのモジュールの場合、被処理液供給側の保持部材3は、ハウジング1に固定されていてもよい。
【0043】
また、図1に示す濾過モジュールでは、中空糸膜の両端を、ハウジングの上面及び底面にそれぞれ取付けられた保持部材に固定した、いわゆるI字型濾過モジュールであったが、本発明の濾過モジュールはこの構成に限定しない。中空糸膜束をU字に折り曲げて、その両端をハウジングの上面又は底面に固定された保持部材に固定してもよい。この場合、中空糸膜束のU字状を保持するために、U字状頂部を適宜支持部材で支持するようにしてもよい。
【0044】
さらに、図1の態様では、中空糸膜の一端を固定保持した底面の固定部材に汚濁水の供給口が開設されていたが、供給口を、中空糸膜の保持部材と兼用する必要がない。ハウジング壁面に被処理液の供給口が別途開設されていてもよい。
【0045】
さらにまた、洗浄用気泡を被処理液に混入して供給してもよいし、中空糸膜束の中心に気泡を放出する散気管を備え付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】濾過モジュールの一実施形態の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ハウジング
2 中空糸膜
3 保持部材
4 集水用保持部材
5 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁物質を含有する被処理液の固液分離を行なう中空糸膜;
該中空糸膜を収納し、前記被処理液が供給される供給口及び前記被処理液の濾過残渣液を排出する排出口を有し、電子線架橋されたポリプロピレン又は繊維強化ポリプロピレンで構成されたハウジング;並びに
前記中空糸膜内の濾過水が該ハウジング外に排出されるように、前記中空糸膜の一端を保持する集水用保持部を備えた濾過モジュール。
【請求項2】
前記電子線架橋されたポリプロピレン又は繊維強化ポリプロピレンの引張り弾性率は2200MPa以上である請求項1に記載の濾過モジュール。
【請求項3】
前記電子線架橋されたポリプロピレン又は繊維強化ポリプロピレンの80℃における引張り弾性率は1100MPa以上である請求項2に記載の濾過モジュール。
【請求項4】
前記ハウジングは、肉厚5〜10mmで、外径150〜300mm、長さ1500〜2500mmである請求項1〜3のいずれかに記載の濾過モジュール。
【請求項5】
前記中空糸膜は、フッ素樹脂の多孔質膜で構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の濾過モジュール。
【請求項6】
油性物質を含有する水の濾過用である請求項1〜5に記載の濾過モジュール。
【請求項7】
70℃以上の被処理液の濾過用である請求項1〜6のいずれかに記載の濾過モジュール。

【図1】
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【公開番号】特開2009−160561(P2009−160561A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2909(P2008−2909)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】