説明

濾過・殺菌装置

【課題】大量の液体に対して、迅速・確実に濾過処理と殺菌処理を同時に行う。
【解決手段】外殻30の内部には、円筒状の金属フィルタ10が配置されている。金属フィルタ10の閉塞板11には超音波振動子20が固着されており、超音波振動子20は、超音波発振器21から発振電流が供給されることにより超音波振動する。処理液が外殻30内に供給されると、この処理液は、金属フィルタ10を外周側から内周側に透過・流通することにより濾過される。また、金属フィルタ10は、超音波振動子20により超音波振動するため、金属フィルタ10のメッシュ部を透過する処理液に超音波を確実に照射することができる。このため、メッシュ部を透過する処理液に含まれていた微生物は、超音波照射により生じたキャビテーション・バブルが崩壊するときの衝撃波を受けて破壊して死滅する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は濾過・殺菌装置に関し、液体の濾過と殺菌を同時に行うことができ、しかも大量処理することができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
公衆浴場や、温泉や、プールや、クーリングタワー等では、水を循環して再利用しており、水耕栽培では養分を含んだ水溶液を循環して再利用している。
また豚舎などの家畜小屋や、食品加工工場からは大量の排水が出てくる。
【0003】
このような各種の分野で使用される水には、使用により塵等(塵、汚濁物、垢、土砂など)や微生物(大腸菌、レジオネラ、クリプトスポリジウムなど)が混入されることがあるため、濾過をして塵等を除去するとともに微生物を殺菌してから、再利用したり外部に排出したりする必要がある。
【0004】
従来では、「濾過」と「微生物の殺菌」は、それぞれ、別の処理工程であり、例えば、濾過処理をしてから、殺菌処理をし、その後に再利用や排出をしていた。
【0005】
濾過処理手法としては、活性炭塔や、各種のフィルタや、沈殿槽などを使用して濾過をするものが知られている。
【0006】
また微生物の殺菌をする手法としては、下記のものが知られている。
(1)塩素を投入して殺菌する。
(2)オゾンにより殺菌をする。
(3)紫外線を照射して殺菌する。
(4)超音波を照射して殺菌する。つまり、殺菌処理する水(液)を処理板の上に薄く数mmの膜状にして流し、超音波振動子から処理板に超音波を伝達して振動させることにより、膜状の水に超音波を照射する。そうすると、水中にキャビテーション・バブルと称する微細な気泡が生じ、この気泡が圧壊するときに発生する衝撃波により、微生物を破壊して殺菌をする(非特許文献1参照)。この場合、水を膜状にすることにより、効率的かつ確実に殺菌することができる。
【0007】
【非特許文献1】日立 ニュースリリース 2001年12月13日 「環境に配慮した薬剤を用いない超音波殺菌技術を開発」 株式会社 日立製作所 発行
【非特許文献2】生物工学学会誌 バイオミディア 2006年 第1号 17頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記殺菌手法では、次のような問題がある。
(1)塩素による殺菌では、塩素が有機物質と化合して、発癌性のあるトリハロメタンが発生する恐れがある。なお、クリプトスポリジウムは薬品耐性が非常に強いため、塩素によっては殺菌することができない。
(2)オゾンによる殺菌では、オゾンが人間の健康に対して害がある。
(3)紫外線による殺菌では、処理する液(水)が透明でないと紫外線が透過せず、濁った液では殺菌ができない。
(4)超音波による殺菌では、処理する水を膜状にした状態にしないといけないので、処理量が極めて少ない。
なお、水を膜状にすることなく超音波照射により殺菌することも考えられているが、この場合には、殺菌効率が大幅に低下してしまう。
【0009】
更に、従来技術では、「濾過」と「微生物の殺菌」を、それぞれ別の処理工程により行っているため、ぞれぞれの処理設備が必要であり、処理設備が大型化していた。
【0010】
本発明は、上記従来技術に鑑み、薬剤を用いることなく、処理液の濾過と微生物の殺菌を同時に行うことができ、しかも、大量の処理液を迅速に濾過・殺菌することができ、更にフィルタの目詰まりの防止もできる濾過・殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の構成は、処理液が透過することによりこの処理液を濾過する金属フィルタと、前記金属フィルタに超音波振動を伝える超音波振動子とを有することを特徴とする。
【0012】
また本発明の構成は、処理液が透過することによりこの処理液を濾過する金属フィルタと、前記金属フィルタに超音波振動を伝える超音波振動子と、前記超音波振動子に発振電流を供給する超音波発振器とを有することを特徴とする。
【0013】
また本発明の構成は、処理液が流通する中空容器と、前記中空容器の内部を流通する処理液が透過する状態で、前記中空容器の内部に配置された金属フィルタと、前記金属フィルタに超音波振動を伝える超音波振動子と、前記超音波振動子に発振電流を供給する超音波発振器とを有することを特徴とする。
【0014】
また本発明の構成は、処理液が供給される中空容器と、筒状をなすと共に両端面が閉塞されて形成されており、しかも、前記中空容器内に配置されており、外周面側から内周面側に透過してきた処理液を一方の端面から排出する金属フィルタと、前記金属フィルタの他方の端面に固着された超音波振動子と、前記超音波振動子に発振電流を供給する超音波発振器とを有することを特徴とする。
【0015】
また本発明の構成は、中空のフィルタ容器内に金属線材を充填してなり、処理液が前記フィルタ容器内を透過することによりこの処理液を濾過する金属フィルタと、前記金属フィルタに超音波振動を伝える超音波振動子と、前記超音波振動子に発振電流を供給する超音波発振器とを有することを特徴とする。
【0016】
また本発明の構成は、前記超音波振動子は、前記金属フィルタに直接固着されていることを特徴とする。
【0017】
また本発明の構成は、前記金属フィルタに接触させた状態で、二酸化チタン部材を配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、処理液が金属フィルタを透過することにより、処理液に含まれている塵等を除去する濾過・除去処理を迅速に行うことができる。
また、超音波振動子により生じた超音波振動を金属フィルタに伝えているため、金属フィルタのメッシュ部に超音波が照射され、メッシュ部を透過する処理液に対して確実・効果的に超音波を照射することができる。このため、金属フィルタのメッシュ部を透過する処理液に含まれている微生物を迅速・確実に殺菌することができる。
この結果、大量の処理液に対して迅速・確実に濾過処理及び殺菌処理をすることができ、しかも、薬品を全く使用することがなく安全性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づき詳細に説明する。
なお以下の説明では、「処理液」は、水や湯のみならず、各種の液体や溶媒を含む液体を意味するものであるとして使用する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の実施例1に係る濾過・殺菌装置1を示す。
この濾過・殺菌装置1では、フィルタとして円筒状の金属フィルタ10を使用している。金属フィルタ10としては、積層金網を筒状に形成し焼成してなる多孔質の金属フィルタや、金属製ワイヤーを筒形に形成した金網をサポートロッドに溶接し金属製ワイヤー間にスリットが形成されている金属フィルタなど、液体の濾過に適する各種の金属フィルタを使用することができる。
【0021】
本例では、フィルタのメッシュ径が、例えば、1μm〜200μmとなっている金属フィルタ10を採用している。
【0022】
円筒状の金属フィルタ10の底面は、金属製の閉塞板11により閉塞されている。金属フィルタ10の上面は、取出管12を備えた端板13で塞がれている。このため、金属フィルタ10の内部空間であるフィルタ室R0は取出管12を介して外部に連通することができる。
【0023】
金属フィルタ10の閉塞板11の下面側には、超音波振動子20が溶接等により固着されている。超音波発振器21は、後述する外殻(中空容器)30の外に配置されている。電線22は、防水された状態で、超音波振動子20に接続されると共に外殻30を貫通している。この電線22により、超音波振動子20と超音波発振器21とが接続されている。
超音波発振器21から超音波振動子20に発振電流が供給されると、超音波振動子20は発振して超音波を発生する。超音波振動子20の発振周波数は、例えば、20KHz、または40KHz、または1MHzである。
【0024】
超音波振動子20は金属フィルタ10の閉塞板11に固着されているため、超音波振動子20の振動が、円筒状の金属フィルタ10に伝達して金属フィルタ10全体が振動する。つまり、閉塞板11及び金属フィルタ10が共に金属であるので、超音波振動が良好に伝達するのである。この結果、金属フィルタ10から超音波が発生し、この超音波は、金属フィルタ10の微細な透過空間であるメッシュ部においても伝搬する。
【0025】
外殻(中空容器)30は、金属フィルタ10を囲う状態で配置されている。このため、外殻30の内周面と金属フィルタ10の外周面との間には、供給室R1が形成される。
この外殻30の上部には、フランジ部31が形成されており、このフランジ部31の中央には、貫通管32が形成されている。
【0026】
複数本の支持スプリング33は、その上端がフランジ部31の下面に連結され、その下端が金属フィルタ10の端板13の上面に連結されている。これにより、複数本の支持スプリング33により、金属フィルタ10をフランジ部31の下方に吊り下げて配置している。
【0027】
そして、金属フィルタ10の取出管12と、外殻30のフランジ31に形成された貫通管32とが、筒状の緩衝ゴム管34により連通されている。
【0028】
更に、外殻30の内面のうち、金属フィルタ30が配置されている位置よりも下方位置には、漏斗部材35が配置されている。この漏斗部材35は、下方に向かうに従い開口面積が狭められるような円錐形状面となっており、下端が下端開口35aとなっている。
外殻30の内部空間のうち漏斗部材35よりも下方が回収室R2となっており、この回収室R2と、供給室R1とは、漏斗部材35の下端開口35aを介して連通している。
【0029】
濾液タンク40は、そのフランジ部41を介して、外殻30のフランジ部31にボルト結合されている。濾液タンク40のフランジ部41の中央には、貫通孔42が形成されており、この貫通孔42は、フランジ部31の貫通管32と位置合わせして形成されている。
このため、濾液タンク40の内部空間である濾液室R3は、貫通孔42,貫通管32,緩衝ゴム管34,取出管12を介して、金属フィルタ10の内部空間であるフィルタ室R0と連通している。
【0030】
供給管L1は、外殻30に接続されており、処理液を供給室R1に供給するものである。供給管L1を介して処理液を外殻30に流通すると、処理液は外殻30の内部を流通していって、貫通管32を介して排出される。
ドレン管L2は、外殻30の底部に接続されており、バルブVが介装されている。
濾液管L3は、濾液タンク40の頂面に接続されており、濾液室R3内の処理液を排出するものである。
【0031】
このような構成となっている濾過・殺菌装置1により、塵等(塵、汚濁物、垢、土砂など)や微生物を含む処理液の濾過と殺菌をする場合には、
(a)ポンプ(図示省略)などにより送給した処理液を、供給管L1を介して供給室R1内に供給すると共に、
(b)超音波発振器21から発振電流を超音波振動子20に送って、超音波振動子20を超音波振動させ、
(c)バルブVを閉じておく。
【0032】
上記(a)〜(c)の状態にすると、処理液(塵等や微生物が混入している水など)は供給室Rに供給され、供給室R1に供給された処理液は、金属フィルタ10を外周側から内周側に向かって透過していく。金属フィルタ10を透過することにより、塵等は金属フィルタ10により濾過・除去され、塵等を含まない処理液がフィルタ室R0内に入る。
濾過・除去された塵等のうち重いものは、供給室R1内を沈降していき、漏斗部材35の下端開口35aを通って回収室R2内に入り沈殿する。
【0033】
また処理液が金属フィルタ10を透過する際には、処理液は金属フィルタ10のメッシュ部、つまり極めて微細な透過空間(1μm〜200μmの隙間間隔となっている空間)を透過する。このとき、前述したように、超音波振動子20から発生した超音波振動が金属フィルタ10に伝わり、これにより金属フィルタ10から超音波が発生するため、この超音波はメッシュ部において伝搬する。
したがって、金属フィルタ10のメッシュ部を透過する処理液には、超音波が照射されることになる。
【0034】
この結果、処理液に含まれている微生物(その大きさは約0.5μm〜1μm)は、金属フィルタ10のメッシュ部を透過する際に、超音波が照射されて破壊し死滅する。しかも、金属フィルタ10のメッシュ部は、極めて微細な空間(隙間)であるため、超音波による殺菌は効果的かつ確実に行われる。
つまり、微細空間において超音波が確実に照射されてキャビテーション・バルブが発生し、キャビテーション・バブルの圧壊に起因する衝撃波が、微細空間を通る微生物に確実に作用して、効率的かつ確実な殺菌が行われるのである。
【0035】
金属フィルタ10には、極めて多数のメッシュ部があるため、大量の処理液は、金属フィルタ10を透過して迅速に濾過処理される。そして、この大量の処理液は、微細な空間であるメッシュ部を通る際に確実に殺菌処理がされる。
したがって、大量の処理液を迅速に濾過しつつ、微生物の迅速・確実な殺菌ができる。
【0036】
更に、超音波振動子20から発生した超音波振動が金属フィルタ10に伝わるため、金属フィルタ10に付着した塵等は、振動により金属フィルタ10から剥離し易くなり、金属フィルタ10の目詰まりの防止を図ることもできる。
【0037】
なお、金属フィルタ10は超音波振動するが、金属フィルタ10は支持スプリング33によりフランジ部31に吊り下げ支持されており、また、緩衝ゴム管34が超音波振動を緩衝するため、フランジ部31,41への超音波振動の伝達は殆どない。このため、フランジ部31,41が超音波振動により緩むことはない。
【0038】
金属フィルタ10を透過することにより、塵等が濾過・除去されると共に殺菌された処理液は、フィルタ室R0から、取出管12,緩衝ゴム管34,貫通管32,貫通孔42を通って濾液タンク40の濾液室R3内に入る。
この濾液室R3内の処理液は、濾液管L3を通って出て行き、再利用に供されたり外部に排出されたりする。
【0039】
なお、濾液管L3を介して外部から処理液を濾液室R3内に瞬時的に供給することにより、または、圧縮空気を濾液室R3内に瞬時的に供給することにより、濾液室R3内の処理液がフィルタ室R0に入り、これによりフィルタ室R0内の処理液が、金属フィルタ10の内周側から外周側に吹き出して、金属フィルタ10の逆洗をすることもできる。
【0040】
また、回収室R2内に大量の塵等が堆積した場合には、バルブVを一時的に開放し、処理液と共に塵等をドレン管L2を介して排出することができる。
【0041】
上述したように、この濾過・殺菌装置1では、超音波振動している金属フィルタ10に処理液を透過することにより、大量の処理液の濾過ができると共に、大量の処理液に含まれる微生物の殺菌も同時に行うことができる。しかも、塩素等の薬剤は全く使用する必要はない。
【0042】
[変形例]
図1に示す実施例では、超音波振動子20を、金属フィルタ10に直接固着しているが(金属フィルタ10の閉塞板11に直接固着しているが)、これに限ることなく、超音波振動子20の超音波振動が金属フィルタ10に伝達されるようになっていればよい。
例えば、図1に示す例において、
(i) 緩衝ゴム管34と支持スプリング33を無くし、
(ii)金属フィルタ10の取出管12と、外殻30の貫通孔32とを直結し、
(iii)超音波振動子20を、外殻30の外周面に固着する、
ようにした構成を採用することもできる。
【0043】
このようにすれば、超音波振動子20の超音波振動は、外殻30→フランジ部31→貫通管32→取出管12→端板13という経路を介して金属フィルタ10に伝搬することができ、金属フィルタ10が超音波振動して超音波を発生することができる。
この結果、図1に示す濾過・殺菌装置1と同様な作用・効果を得ることができる。
【0044】
なおこの変形例を採用する場合は、フランジ部31,41間の緩みを防止するため、フランジ部31,41の締結手段として、緩みの発生しない工夫をする必要がある。
例えば、フランジ間に緩衝材を介在させたり、バネ部材により両フランジを挟持したり、両フランジを溶接したりする手法を採用する。
【0045】
また図1に示す実施例では円筒状の金属フィルタ10を用いたが平板状の金属フィルタを用いることもできる。
例えば、外殻30の一端面側から他端面側に向かって処理液を流通させるようにしておき、このように流通する処理液が全て透過するように平板状の金属フィルタを外殻30内に配置する。そして、平板状の金属フィルタに、超音波振動子20を固着する構成とする。
【0046】
このような構成を採用しても、図1に示す濾過・殺菌装置1と同様な作用・効果を得ることができる。
【実施例2】
【0047】
次に本発明の実施例2に係る濾過・殺菌装置1Aを図2を参照しつつ説明する。この濾過・殺菌装置1Aは、図1に示す濾過・殺菌装置1に、更に、金属フィルタ10内に二酸化チタン部材50を配置したものである。
なお、他の部分は実施例1と同じであるので、実施例1と同一部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0048】
二酸化チタン部材50は、上面が開放し底面が閉塞した円筒状部材であり、円筒部分には直径が1〜2mm程度の多数の孔が形成されている。二酸化チタン部材50は、円筒状の基材(金属や樹脂)に、二酸化チタン(TiO2)を、メッキや塗布や練り込みにより施したものである。
【0049】
二酸化チタン部材50は、その上面が金属フィルタ10の端板13の下面に接続されているため、超音波振動子20から発生した超音波振動が伝わってきて振動する。
二酸化チタン部材50が超音波振動すると、非特許文献2に示すように、OHラジカルを発生する。
【0050】
実施例2の濾過・殺菌装置1Aでは、処理液は、金属フィルタ10を透過する際に、濾過と超音波による殺菌が行われる。更に、二酸化チタン部材50を透過して濾液室R3に流れていく。
このとき、二酸化チタン部材50にてOHラジカルが発生するため、このOHラジカルにより、更に殺菌が行われる。
またOHラジカルは、脱色や脱臭の作用もはたす。このため、処理液に匂い成分や、色素が含まれていた場合には、OHラジカルの作用により、脱色・脱臭を行うことができる。
【0051】
なお、超音波振動子20とは別の超音波振動子を、二酸化チタン部材50に取り付け、この別の超音波振動子により二酸化チタン部材50を超音波振動させるようにしてもよい。
【0052】
[変形例]
実施例2では、円筒状の二酸化チタン部材50を金属フィルタ10内に配置したが、他の変形例も考えられる。
例えば、図1に示す濾過・殺菌装置1において、金属フィルタ10内に粒状の多数の二酸化チタン粒部材を入れると共に、金属フィルタ10の上面(取出管12の下端面当たり)に二酸化チタン粒部材の流出を防止する流出防止ネットをセットする。
粒状の二酸化チタン粒部材としては、水よりも比重の軽い樹脂に二酸化チタンを練り込んだものを粒状に形成したものを使用することができる。二酸化チタン粒部材の直径は、例えば0.5mm〜2mmとする。
【0053】
このようにしても、超音波振動子20の振動が、水溶液を介して二酸化チタン粒部材に伝わり、この二酸化チタン粒部材がOHラジカルを発生して、殺菌・脱色・脱臭を行うことができる。
【実施例3】
【0054】
次に本発明の実施例3に係る濾過・殺菌装置100を、図3を参照しつつ説明する。
この濾過・殺菌装置100に用いる金属フィルタ110は、円筒部材111の一端面を端板112で閉塞すると共に他端面を端板113で閉塞してなるフィルタ容器内に、繊維状の多数の縮れた(綿状の)ステンレス線材114を緊密に充填して構成されている。
【0055】
円筒部材111の外周面には、2枚の伝播板120,121が固定されている。伝播板120,121は、円筒部材111の軸方向に沿い伸びており、円筒部材111の周方向に関して180°ずれた位置に配置されている。
【0056】
伝播部材120には、超音波振動子130,131,132が取り付けられており、伝播部材121には超音波振動子133,134,135が取り付けられている。
また、端板112には、超音波振動子136が取り付けられている。
【0057】
各超音波振動子130〜136には、図示しない電線を介して、超音波発振器137から発振電流が供給されるようになっている。各超音波振動子130〜137は、発振電流が供給されると発振する。
各超音波振動子130〜135が振動すると、この振動は伝播板120を介して円筒部材111に達し、円筒部材111から超音波が発生する。同様に、超音波振動子136が振動すると端板112が振動して、端板112から超音波が発生する。
発生した超音波により、ステンレス線材114の間の微細な透過空間であるメッシュ部に超音波が照射される。
【0058】
供給管L11は、円筒部材111の下部に接続されており、処理水を金属フィルタ110内に供給する。また濾液管L12は、端板113に接続されており、金属フィルタ110内を流通してきた処理液を外部に出す。
【0059】
上記構成となっている濾過・殺菌装置100では、処理液の濾過・殺菌は次のようにして行われる。
まず、超音波発振器137から超音波振動子130〜136に発振電流を供給して、超音波振動子130〜136が超音波振動して、ステンレス線材114の間の微細な透過空間であるメッシュ部に超音波が照射される状態にしておく。
【0060】
このとき、供給管L11を介して金属フィルタ110内に処理液を供給すると、処理液はステンレス線材114の間の微小隙間であるメッシュ部を透過することにより、塵等が濾過・除去される。
また、処理液がステンレス線材114の間のメッシュ部を透過するときに、超音波が照射されることにより、微生物が破壊されて殺菌される。
【0061】
このようにして塵等の濾過・除去がされ且つ殺菌された処理液は、濾液管L12を介して排出される。
【0062】
[変形例]
なお、図3に示す例において、金属フィルタ110のフィルタ容器内に、ステンレス線材114のみならず、二酸化チタン粒部材をも充填しておくことにより、二酸化チタン粒部材からOHラジカルを発生させて、このOHラジカルにより、殺菌・脱臭、脱色を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例1に係る濾過・殺菌装置を示す構成図。
【図2】本発明の実施例2に係る濾過・殺菌装置を示す構成図。
【図3】本発明の実施例3に係る濾過・殺菌装置を示す構成図。
【符号の説明】
【0064】
1,1A 濾過・殺菌装置
10 金属フィルタ
20 超音波振動子
21 超音波発振器
30 外殻
40 濾液タンク
50 二酸化チタン部材
100 濾過・殺菌装置
111 円筒部材
114 ステンレス線材
130〜136 超音波振動子
137 超音波発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液が透過することによりこの処理液を濾過する金属フィルタと、
前記金属フィルタに超音波振動を伝える超音波振動子と、
を有することを特徴とする濾過・殺菌装置。
【請求項2】
処理液が透過することによりこの処理液を濾過する金属フィルタと、
前記金属フィルタに超音波振動を伝える超音波振動子と、
前記超音波振動子に発振電流を供給する超音波発振器と、
を有することを特徴とする濾過・殺菌装置。
【請求項3】
処理液が流通する中空容器と、
前記中空容器の内部を流通する処理液が透過する状態で、前記中空容器の内部に配置された金属フィルタと、
前記金属フィルタに超音波振動を伝える超音波振動子と、
前記超音波振動子に発振電流を供給する超音波発振器と、
を有することを特徴とする濾過・殺菌装置。
【請求項4】
処理液が供給される中空容器と、
筒状をなすと共に両端面が閉塞されて形成されており、しかも、前記中空容器内に配置されており、外周面側から内周面側に透過してきた処理液を一方の端面から排出する金属フィルタと、
前記金属フィルタの他方の端面に固着された超音波振動子と、
前記超音波振動子に発振電流を供給する超音波発振器と、
を有することを特徴とする濾過・殺菌装置。
【請求項5】
中空のフィルタ容器内に金属線材を充填してなり、処理液が前記フィルタ容器内を透過することによりこの処理液を濾過する金属フィルタと、
前記金属フィルタに超音波振動を伝える超音波振動子と、
前記超音波振動子に発振電流を供給する超音波発振器と、
を有することを特徴とする濾過・殺菌装置。
【請求項6】
請求項3または請求項5において、
前記超音波振動子は、前記金属フィルタに直接固着されていることを特徴とする濾過・殺菌装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか一項において、
前記金属フィルタに接触させた状態で、二酸化チタン部材を配置したことを特徴とする濾過・殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−264739(P2008−264739A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115023(P2007−115023)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(502411698)
【Fターム(参考)】