説明

濾過器とそれを用いる濾過方法

【課題】
人力のみで濾過とフィルターの再生ができる、主に汚濁水の濾過を目的とする携帯型の濾過装置とそれを使用する濾過方法に関する。
【解決方法】
吐出口を有する押出し容器と、該吐出口に気密に装着される濾過機構を備えてなる濾過器であって、該濾過機構は、中空膜フィルターが固定具の中を貫通して、該固定具に気密に固定された構造からなり、
該濾過機構を該押出し容器の吐出口に装着した時、該容器内に挿入される側の該中空膜フィルターの先端が封止され、該容器外に突出される側の該中空膜フィルターの先端が開放されてなると共に、該吐出口と該固定具の接触面が隙間なく密封される構造にされて成ることを特徴とする濾過器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過器とそれを用いる濾過方法に係わり、更に詳しくは、主に汚濁水の濾過を目的とする携帯型の濾過装置とそれを使用する濾過方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯型浄水器あるいは簡易浄水器として、特許文献1(特開平9−248559)、特許文献2(特開平11−290838)、特許文献3(特開2004−49946)が開示されている。
【0003】
特許文献1〜3はいずれも異物の濾過のみならず濾過した水の殺菌、あるいは殺菌後の溶存成分を除去してより上質の水を得ることを目的とするものであり、電気や水道水を利用し、複雑な構造で安価に製造できるものでない。そして携帯型とは言え、人がポケットの中に入れて簡便に持ち運びできるものではない。
【0004】
これらの濾過器はいずれも、突発的な事故等の緊急災害時、電気も水道もない状態での、水の濾過装置としては全く無力であり、全く役に立たない欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−248559
【特許文献2】特開平11−290838
【特許文献3】特開2004−49946
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、安価、軽量で持ち運びが簡単で、突発的な事故等の緊急災害時、飲み水に窮したとき、人力のみで、泥水でも飲用に変換でき、かつ目詰まりを起こした時、人力のみで逆洗浄して残渣を除去できる濾過装置とその濾過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決できる濾過装置は下記の構造からなる。
即ち、吐出口を有する押出し容器と、この吐出口に気密に装着される濾過機構を備え、この容器に濾過する液体を容れ、押出し容器を押すことで濾過する液体を加圧して濾過し、逆洗浄時は、この容器にきれいな水を容れ、押出し容器を押すことできれいな水を加圧して逆洗浄する構造の濾過器であって、
この濾過機構は、中空膜フィルターとこの中空膜フィルターを固定する固定具を備え、この中空膜フィルターは、この固定具の中を貫通して、固定具に気密に固定されてなると共に、一方の端が気密封止され、もう一方の端が開口され、開口された側から濾過された液体が排出される構造であって、
この濾過機構は、濾過時、この中空膜フィルターの封止側がこの押出し容器の中に差し込まれて吐出口と隙間なく装着される構造にされて成ると共に、目詰まりを起こした濾別残渣を逆洗浄で除去する時は、この中空膜フィルターを反転して、中空膜フィルターの開口側を押出し容器の中に差し込んで吐出口と隙間なく装着される構造にされて成ることを特徴とする濾過器である。
【0008】
そして、この濾過器を使って汚濁水を濾過するには、まず押出し容器の中に汚濁水を容れ、次に吐出口から中空膜フィルターを差し込む。
このとき先端を封止された側の中空膜フィルターを容器の中に差し込む。
フィルターは固定具の中を貫通して固定機構に気密に固定されているおり、この固定具を容器の吐出口に隙間なく密着させて、固定具と吐出口の接触面から汚濁水が漏れないようにして、押出し容器を押すと、容器に容れた汚濁水は、この容器内に挿入された側の中空膜フィルターの表面で汚濁物質が濾過されて、濾過されたきれいな水は、中空膜フィルターの中に排出され、容器の外に突出した中空膜フィルター先端の開口の中からきれいな水となって出てくる。
【0009】
前記固定具と容器の吐出口は、少なくとも濾過する時には汚濁水が漏れないように密着させることが必要である。
【0010】
前記固定具と容器の吐出口を密着させる手段は、少なくとも前記固定具と吐出口を隙間なく封止できる手段であればいかなる手段を採用しても良い。
固定具を弾性体で作り、この弾性体の面を吐出口に当てて締め付ける構造、あるいは固定具をキャップ状にして、キャップそのものを吐出口にねじ込んで締結する構造等、少なくとも固定具と吐出口を隙間なく密封できる手段であればいかなる手段を採用しても良い。
【0011】
押出し容器は可撓性のある容器、例えばマヨネーズに代表されるような流動物を容れて手のひらに入れて押出しできるような大きさの柔軟性に富んだ容器が好ましい。
【0012】
濾過速度は汚濁水と接触する部分の中空膜フィルターの表面積に依存するので、濾過速度をより早くするためには、中空膜フィルターの濾過面積(表面積)を広くすることが好ましい。
濾過面積を広くするためには、中空膜フィルターとして、単位体積あたりの表面積を大きくできる中空糸膜フィルターが好ましい。
【0013】
中空糸膜フィルターの材質は、濾過した水の中に有害成分が溶出するものでなければ、いかなる材質のものでも使用できる。また容器を加圧する時、手で握って加圧するので、手で握る程度の圧力(0.1〜0.5kg/cm)で濾過が可能な中空糸膜フィルターが好ましい。そのためには、フィルターの孔径は、0.1μm以上が好ましい。0.1μm未満では、普通人の握力で握って押出すことが難しくなる。またフィルターの孔径の上限は、3μm程度が好ましい。
水に溶け込んだ臭い物質を除いて、ほとんどの臭い物質は汚濁粒子に吸着しており、臭いを取るためには汚濁粒子を除去するのが最も効果的であり、フィルターの孔径の上限を3μm程度に設定することで、汚濁物質をほとんど濾別することができ、臭いはほとんど除去できる。3μm以上の汚濁粒子を濾別することで、濾別後水は済んだ状態になる。
【0014】
濾過された水を殺菌、除菌フィルターに通すことで、あるいは更に煮沸することで飲料水として利用できるようになる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は下記の効果を有する。
1 人力のみで汚濁水を真水に濾過することができ、緊急災害時、泥水を濾過して、飲用水にすることができる。
2 目詰まりを起こしても人力のみで逆洗浄ができ、濾過機能を回復させて繰返し再利用できる。
3 きわめて簡単な構造、軽量で常時携帯ができる。
4 安価に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面によって本発明を説明する。なお本図面は、発明の趣旨をよりよく理解させるために具体的に説明するものであり、本発明がこれのみに限定されるものでないことはもちろんである。
【0017】
図1、2は、本発明の押出し容器と濾過機構の説明図である。
図1は押出し容器の説明図である。
図2は、濾過機構の説明図である。
図1で、押出し容器1は、可撓性のある薄い樹脂の袋のような形状をしており、袋の出口側は径を絞られて細くなっている。
濾過時、この袋状の容器の中に濾過する液体が容れられることになる。
径の細くなった出口側が濾過液の吐出口2であり、吐出口近傍の容器にはネジが形成されている。
【0018】
図2で、濾過機構は、中空糸膜フィルター4と中空糸膜フィルターを固定するための固定具7と、固定具を隙間なく吐出口2に押し付けるためのキャップ3の組合せからなる。
中空糸膜フィルター4は、固定具7を貫通し、固定具7に気密に固定されている。
中空糸膜フィルター4を固定具7に気密に固定するためには、隙間にシリコーンのような有機接着剤を挿入することで、フィルターの固定と目地部のシールを同時に行うことができる。
あるいは中空糸膜フィルター4の束を樹脂で接着して、接着樹脂そのものを固定具としても良い。
【0019】
図3は、中空糸膜フィルター4と固定具7とキャップ3を組み立てた時の完成図であり、図3の完成図が、本発明濾過機構の実施形態の一つになる。
【0020】
図4は、図3に示す本発明濾過機構を押出し容器1に差し込んで装着して、キャップ3を閉めて容器の吐出口に固定具を密着させて固定した時の説明図である。
容器1に差し込まれる側の中空糸膜フィルター4の先端は、濾過される液体が中空糸膜フィルターの内径側に浸入しないように、封止されている。
容器1の外に突出される側の中空糸膜フィルターの先端は開口しており、ここから濾過された液体が排出される。
【0021】
固定具7は、弾性を有しているために、キャップを閉めることで容器の吐出口に押し付けられて固定具7が変形して隙間がふさがれることになる。
なお本発明において固定具と容器の吐出口のシール機構(隙間を無くす機構)は、本例のみに限定されるものではなく、固定具を剛体で形成して、固定具と容器の吐出口の間に、別途O−リングのような弾性体を挟んで隙間を無くすようにしても良いことは言うまでもないことである。
また固定具を吐出口に密着させる手段は、本例のようなネジコミ式のキャップのみに限定されるものではなく、物理的に密着させうる機能を有するものであれば他の手段でも良いことは言うまでもないことである。
【0022】
本発明濾過器は人力のみで液体を濾過することができる。
すなわち容器に濾過する液体を容れ、中空糸膜フィルターを差込、固定具をキャップで締め付けてシールして、容器を手のひらで握って絞ることで濾過する液体が加圧されて、容器の外に開口する中空糸膜フィルターの先端開口部から濾過されたきれいな液体が排出される。
【0023】
図5は目詰まりを起こしたときの逆洗浄の説明図である。
濾過を始めて一定時間経過すると中空糸膜フィルターに濾過された残渣が付着して濾過速度が遅くなる。あるいは濾過不能の状態になる。
その時には、キャップをはずして中空糸膜フィルターを取り出し、容器の中に濾過したきれいな液体を容れて、図5に示すように、中空糸膜フィルターの開口側を容器の中に差し込み、キャップを締めて容器を手のひらで握って絞ることで、容器の中のきれいな水が中空糸膜フィルターから染み出て、表面に付着した残渣を逆洗浄で浮き上がらせてことができる。
浮き上がった残渣はタワシ等で軽くこするだけで剥離除去することができ、濾過機能を再び回生させることができる。
【0024】
図6は、本発明濾過機構の別の実施形態を説明する図である。
本例ではキャップそのものが固定具も兼ねており、中空糸膜フィルターはキャップ3の中に差し込まれて気密に固定されている。
逆洗浄するとき、中空糸膜フィルターを反転させて差し込むので、キャップ形状は図のように、反転させた時でもキャップで締め付けができるようになっている。
【0025】
図7は、濾過した水を更にフィルター8に通して除菌、殺菌できる濾過器の構造の説明図である。
中空糸膜フィルターの開口から出てきた濾過されたきれいな水は、フィルター8の中を通過する時に臭いや細菌類を吸着除去される。
フィルター8には、臭いや細菌を吸着する活性炭フィルター、あるいは除菌、殺菌作用のある銀、銅等成分を含むフィルターが好適に利用できる。あるいは必要に応じて、フィルターの中に消臭、殺菌用の徐放性薬剤を含ませておくことも有効である。
【0026】
実施例1
図1〜4に示した構造の濾過器を使用して汚濁水の濾過テストを行った。
押出し容器
押出し容器にはポリエチレン製の家庭用マヨネーズの押出しチューブを代用した。
チューブの厚さは、50μm
【0027】
キャップ
キャップはマヨネーズの押出しチューブのキャップをそのまま代用し、キャップの頭の部分を図2のように孔を空けた。
【0028】
濾過機構
濾過機構の中空糸膜フィルターには、外径1.25mm、平均孔径2μmのフッ化ビニリデン製中空糸膜フィルター(クラレ社製)を使用した。
中空糸膜フィルターを200mmの長さで切断して、一方の端の孔はシリコーン系接着剤を塗布して封止した。
中空糸膜フィルターの数は100本、固定具は厚さ10mmのゴムの板に互いに0.5mm前後の距離離隔して100個の孔を開け、孔の中に中空糸膜フィルターを差し込んで、図2に示すように封止していない側の開口端を上に突き出させ、孔とフィルター外周の間の隙間をシリコーン系接着剤で埋め、接着剤を固化させてフィルターを固定具に固定した。
【0029】
押出し容器の中に汚濁水を容れ、中空糸膜フィルター、固定具、キャップを図3に示すように組み立てて、図4に示すように押出し容器の中に差し込み、キャップを締めて、固定具を容器の吐出口に密着させた。
【0030】
濾過テスト
押出し容器を手のひらで握り、握りつぶすようにして加圧した。
キャップから外に突き出た中空糸膜フィルターの開口口から濾過されたきれいな水が流れ出た。
押出し容器に容れた汚濁水は300CC、約10分握り続けて、きれいな水150CC得ることができた。
濾過する汚濁水がなくなったら、キャップをはずして新たに汚濁水を追加して、この操作を10回繰り返したところで、加圧しても濾過できない状態になった。
【0031】
逆洗浄
キャップをはずして中空糸膜フィルターを抜き取り、容器中の汚濁水の残り、および容器に付着した固形物を除去した。
中空糸膜フィルター表面には汚濁粒子が密に付着していた。
容器にきれいな水を容れて、中空糸膜フィルターを逆さにして図5に示す構造に組み立てた。
容器を手のひらで握り、加圧した。
中空糸膜フィルターの外に突き出た部分の先端は封止されているので、きれいな水が中空糸膜フィルターの中からにじみ出て、表面の濾過残渣を浮き上がらせることができた。
浮かび上がった濾過残渣は刷毛ブラシで軽くこするだけできれいに除去できた。
【0032】
逆洗浄で濾過残渣を除去した後、再度汚濁水の濾過に使用した。
濾過機能は回復しており、初回の場合と同じく、約10分握り続けて、きれいな水150CC得ることができた。
【0033】
濾過テストの結果
本願発明の濾過装置と濾過方法は、人力のみで簡便に、汚濁水をきれいな水に変換できるもので、緊急災害時、飲み水に窮したとき、人力のみで、泥水でも飲用に変換でき、かつ目詰まりを起こしても人力のみで残渣を除去して再生できることを確認できた。
なお本発明の濾過水は、清澄であり、除菌、殺菌剤を添加するだけで十分に飲用に供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
1.軽量で携帯が可能であり、緊急時、人力のみで汚濁水の飲料水化が可能また目詰まりを起こしても人力で再生可能であり、緊急時の備品として極めて有用である。
2.人力だけで濾過と再生ができるので、地球上の未開地、電気のない未開地、泥水を飲用して生活している人々のために極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明押出し容器の説明図
【図2】本発明濾過機構の組み立て前の説明図
【図3】本発明濾過機構の組み立て後の説明図
【図4】押出し容器に濾過機構の組み立てた時の完成図
【図5】逆洗浄するときの説明図である。
【図6】本発明濾過機構の別の実施の態様の説明図
【図7】濾過した水を更に除菌、殺菌できる濾過器の構造の説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 押出し容器
2 吐出口
3 キャップ
4 中空糸膜フィルター
5 封止部
6 濾過液出口
7 固定具
8 フィルター


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出口を有する押出し容器と、該吐出口に気密に装着される濾過機構を備え、該容器に濾過する液体を容れ、該押出し容器を押すことで該濾過する液体を加圧して濾過し、該容器にきれいな水を容れ、該押出し容器を押すことで該きれいな水を加圧して逆洗浄する濾過器であって、該濾過機構は、中空膜フィルターと該中空膜フィルターを固定する固定具を備え、該中空膜フィルターは、該固定具の中を貫通して、該固定具に気密に固定されてなると共に、一方の端が気密封止され、もう一方の端が開口され、該開口された側から濾過された液体が排出される構造であって、
該濾過機構は、濾過時、該中空膜フィルターの封止側が該押出し容器の中に差し込まれて該吐出口と隙間なく装着される構造にされて成ると共に、目詰まりを起こした濾別残渣を逆洗浄で除去する時は、該中空膜フィルターを反転して、該中空膜フィルターの開口側を該押出し容器の中に差し込んで該吐出口と隙間なく装着される構造にされて成ることを特徴とする濾過器。
【請求項2】
前記押出し容器の中に汚濁水を容れ、前記濾過機構の中空膜フィルターの先端封止側を該容器に差し込んで該容器に隙間なく装着した後、該容器を加圧して、該容器外に突出した中空膜フィルターの開口から汚濁物質を濾過された水を排出させることを特徴とする請求項1に記載の濾過器を使用する濾過方法。
【請求項3】
前記中空糸膜フィルターに濾別残渣が堆積して濾過機能が劣化した時、該フィルターを容器から取り出し、該容器の中の汚濁水をきれいな水と入れ替えて、該きれいな水の中に該中空糸膜フィルターの開口側を差し込んで該容器に気密に装着した後、該容器を加圧して、該容器の中の水を該フィルターの内径側から外に染み出させることで該中空糸膜フィルターの表面に堆積した濾過残渣を浮き上がらせ、該浮き上がった残渣を物理的に除去して濾過機能を回復させることを特徴とする請求項2に記載の濾過方法。
【請求項4】
前記中空膜フィルターが、孔径が0.1〜3μmの中空糸膜フィルターであって、前記押出し容器の加圧を手のひらで握って加圧することを特徴とする請求項2〜3のいずれか1項に記載の濾過方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−135748(P2012−135748A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291453(P2010−291453)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(310011011)クリアーシステム株式会社 (4)
【Fターム(参考)】