説明

濾過器

【課題】液体を浄化するための濾過器について、高い液体浄化能力を確保しながらフィルタ交換頻度の少ないものとしてコストパフォーマンスに優れたものとする。
【解決手段】フィルタをカートリッジ式に交換可能な状態で内蔵した液体を浄化して送出する濾過器1Aにおいて、そのフィルタはシート状の濾材が周壁により略管状構造を形成して周壁を外周面側から内周面側に向かって液体が通過することで液体中に分散した汚れ粒子を捕捉するものであって、略管状構造の中心軸線に対し直角な面による断面形状が菊花状となるように濾材を外周面側と内周面側とで逆方向に折り返して周壁の厚さ方向に往復させてなるものであり、上流側の濾過ユニット6Aが水溶液中で電荷を帯びないフィルタ520を内蔵し、下流側の濾過ユニット6Bが水溶液中で陽電荷を帯びる陽電荷フィルタであるフィルタ530を内蔵しているものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の汚れ粒子をフィルタで捕捉して液体を浄化するための濾過器に関し、殊に、そのフィルタが水中に分散した油分を捕捉可能であるとともにカートリッジ式に交換可能な濾過器に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工や切削加工などの機械加工で製作される金属部品には、切粉などの固形塵の他に加工に伴う油分が付着している場合が多く、次の工程や出荷の前に洗浄装置で洗浄して油分を中心とした汚れを除去することが行われている。そして、その洗浄装置では洗浄後の汚れた洗浄液を濾過器のフィルタで濾過することで浄化しながら繰り返し使用するのが一般的である。
【0003】
このように洗浄液中に固形塵と油分を含む場合には、例えば目の細かい濾材からなるフィルタを用いることにより水中で微細なエマルジョン状に分散した油分を捕捉して、フィルタごと固形ゴミとして廃棄または焼却することが考えられる。しかし、目の細かいフィルタは短期間で目詰まりを起こして処理能力が低下することから、頻繁にフィルタの交換作業を要することになるため、メンテナンスに費やす手間とコストが過大なものとなってしまう。
【0004】
一方、特開平10−230260号公報や特開2005−151968号公報に記載されているように、フィルタによる濾過層を複数段階設けて下流側になるに従ってフィルタを構成する濾材の目開き(ポア径)を小さくした濾過器も知られている。このように、複数段階の濾過層のうち上流側のもので大径の粒子を捕捉し、下流側のもので小径の粒子を捕捉することにより効率的な捕捉が可能となるため、フィルタの寿命をある程度長くすることができる。
【0005】
しかしながら、孔径が段階的に異なるフィルタで汚れ粒子を捕捉する場合でも、フィルタの交換頻度を顕著に低減させるためには数多くの濾過層を段階的に設け全体として大きな濾過面積を確保することが必要となる。そのため、イニシャルコストが過大となりやすいことに加え、直列的に多くの濾過層を設けることにより濾過抵抗が大きくなって時間あたりの液体浄化能力が低下することになり、コストパフォーマンスの点で不充分なものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−230260号公報
【特許文献2】特開2005−151968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、液体を浄化するための濾過器について、高い液体浄化能力を確保しながらフィルタ交換頻度の少ないものとして、コストパフォーマンスに優れたものとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、フィルタをカートリッジ式に交換可能な状態で内蔵した少なくとも2つの濾過ユニットが直列的に連結されてなり導入した液体を浄化して送出する濾過器において、そのフィルタは、シート状の濾材が周壁により略管状構造を形成してその周壁を外周面側から内周面側に向かって液体が通過することで液体中に分散した汚れ粒子を捕捉するものであって、その略管状構造の中心軸線に対し直角な面による断面形状が菊花状となるように濾材を外周面側と内周面側とで逆方向に折り返して周壁の厚さ方向に往復させてなるものであり、最も上流側の濾過ユニットが水溶液中で電荷を帯びないフィルタを内蔵し、これよりも下流側の濾過ユニットが水溶液中で陽電荷を帯びる陽電荷フィルタを内蔵している、ことを特徴とする濾過器とした。
【0009】
このように、濾過ユニットを直列的に複数設けるとともに、そのフィルタを濾材が横断面菊花状のプリーツフィルタとしたことにより、その濾過面積が格段に大きいものとなって濾過抵抗を過剰にすることなくフィルタ寿命の長いものとなり、且つ、上流側のフィルタにおいて通常の濾過作用で汚れ粒子を捕捉した後に、下流側の陽電荷フィルタが陽電荷による電位的な力で吸着しながら汚れ粒子を捕捉するため、通常のフィルタでは捕捉しにくい微細な汚れ粒子も確実に捕捉可能なものとなる。したがって、数多くの濾過層を要することなくメンテナンスの手間とコストを最小限としながら優れた液体浄化能力を発揮することができる。
【0010】
また、この場合、その陽電荷フィルタは、少なくとも汚れ粒子の捕捉部分が直径0.1μm以下の無機繊維状物質である無機ナノファイバーで構成されたことを特徴としたものとすれば、水溶液中で陽電荷を帯びて確実に汚れ粒子の吸着力を発揮するものとなり、この場合、その陽電荷フィルタは、無機ナノファイバーがアルミナを主成分とした直径0.01μm以下のものであって、所定の骨格にこの無機ナノファイバーを三次元的な枝状に設けてなるものとすれば、水溶液中での吸着力に優れることに加え、汚れ粒子の捕捉容量が一層大きいものとなって、詰まりにくく高濾過量を維持しやすいものとなる。
【0011】
さらに、上述した濾過器において、少なくとも最も上流側の濾過ユニットのフィルタは、複数枚のシート状の濾材が重ねられたもので構成されていることを特徴とするものとすれば、より多量の汚れ粒子を捕捉可能になるとともに一層確実な液体浄化機能を発揮するものとなり、このフィルタが、平均ポア径が3.5μm以下の濾材の層を少なくとも有したものとすれば、液体中の微細な汚れ粒子を確実に捕捉しやすいものとなる。
【0012】
さらにまた、上述した複数枚のシート状の濾材が重ねられてなるフィルタは、濾材同士が重なる部分に複数のホットメルトが互いに間隔を有して設けられたことにより濾材間に隙間を形成していることを特徴としたものとすれば、その隙間部分に汚れ粒子を溜めておくことできるため、汚れ粒子の捕捉容量が一層大きなものとなる。
【0013】
加えて、上述した濾過器において、直列的に連結された濾過ユニットに内蔵された各フィルタは、濾過ユニットが上流側から下流側になるのに従い濾材の目開きが段階的に小さくなっているものとすれば、各フィルタカートリッジで効率的な濾過を実現しながら一層目詰まりしにくいものとなる。
【発明の効果】
【0014】
断面菊花状のフィルタを有した濾過ユニットを直列的に複数配置して、通常の濾過による捕捉を行うフィルタと、主として陽電荷による吸着力による捕捉を行うフィルタとを組み合わせた本発明によると、高い液体浄化能力を確保しながらフィルタ交換頻度の少ないものとして、コストパフォーマンスに優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における実施の形態である濾過器の簡略化した縦断面図。
【図2】(A)は図1の上流側のフィルタカートリッジの正面図、(B)は(A)のフィルタカートリッジの縦断面図。
【図3】図2(A)のフィルタカートリッジのX−X線に沿う断面図。
【図4】図1の下流側のフィルタカートリッジの横断面図。
【図5】図1の上流側のフィルタカートリッジの応用例を示す横断面図。
【図6】本発明の実施例における試験用の部品洗浄装置の写真
【図7】右は本発明の実施例において浄化前の洗浄液の写真、左は浄化後の洗浄液の写真。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態である濾過器1Aの簡略化した縦断面図を示している。この濾過器1Aは、例えば部品洗浄装置において洗浄に使用して汚れた洗浄液を内部に導入して濾過することにより、洗浄液中に分散した固形塵やエマルジョン状の油分等の汚れ粒子を捕捉し、清浄な状態として送出することにより、洗浄液を繰り返し使用可能とさせる場合を想定したものである。
【0018】
濾過器1Aは、2種類の濾過ユニット6A,6Bが連結管7で直列的に連結したものであり、各濾過ユニット6A,6Bは、上部が開口し内部に空間を形成する円筒状のケーシング6a,6a内にフィルタカートリッジ5A,5Bを各々挿設して、その開口側を蓋部材6b,6bで各々塞いでなるものである。
【0019】
各蓋部材6bは内部に空間が形成されており、その側面に導入口63が開口し、導入口63の対向側の側面には出口66が開口しており、且つ、内部空間が隔壁62で区画されており導入口63側の空間が導入室60、出口66側の空間が出口室61となっている。
【0020】
また、濾過ユニット6Aは、蓋部材6bの導入室60下部側が、ケーシング6aの内部空間のうちフィルタカートリッジ5Aの外周空間50に連通孔64で連通しており、出口室61の下部側で蓋部材6bの略中央位置に一致する部分が、ケーシング6aの内部空間のうちフィルタカートリッジ5Aの中心孔51に連通孔65で連通している。これにより、導入口63から導入室60に導入した洗浄液は、連通孔64、外周空間50、フィルタカートリッジ5Aの周壁、中心孔51、連通孔65、出口室61を経由して、出口66から送出されるようになっている。
【0021】
また、濾過ユニット6Aの出口66から送出された洗浄液は、連結管7を通って下流側の濾過ユニット6Bの導入口63から内部に導入されるが、濾過ユニット6Bにおいても濾過ユニット6Aと同様に、導入口63から導入室60に導入した洗浄液が、連通孔64、外周空間50、フィルタカートリッジ5Bの周壁、中心孔51、連通孔65、出口室61を経由して、出口66から送出されるようになっている。
【0022】
図2(A)は、濾過ユニット6Aにおいてカートリッジ式に着脱されるフィルタカートリッジ5Aの拡大した正面図を示しており、図2(B)はその縦断面図を示している。図に示すように、フィルタカートリッジ5Aは、シート状の濾材521,522,523により全体として筒状に形成されたフィルタ520を備えて全体として筒状とされている。
【0023】
このフィルタカートリッジ5Aの外周側及び内周側には、所定の力学的強度を有して所定サイズ以下の個体及び液体が通過可能な網状部材からなる外部カバー527、内部カバー528が配設されて、その上下側をドーナツ状の蓋材525,526で封止されており、その筒状の周壁の中心軸線を中心孔51が貫通してなるものである。
【0024】
そして、この筒状のフィルタカートリッジ5Aのうち、筒状のフィルタ520を形成するシート状の濾材521,522,523は、水溶液中で電荷を帯びない通常の濾材であるがその構成に特徴があり、図2(A)のX−X線に沿う拡大した断面図及びその拡大部分図(円中)である図3に示すように、そのフィルタ520は、シート状の濾材521,522,523が重ねられて三層になっているとともにプリーツ状に形成されてなるものである。
【0025】
即ち、フィルタ520は、所定の厚さを有する周壁の外周面側と内周面側とで逆向きに連続的に折り返されて、周壁の厚さ方向に往復しながら断面形状が全体として菊花状となるように形成されたものであり、シート状の濾材を単に筒状に形成した従来例のフィルタと比べて濾過面積が極めて大きくなっている点を特徴としている。
【0026】
このように、大きな表面積を有して極めて広い濾過面積とされたフィルタ520は、洗浄液中に分散したエマルジョン状の油分や固形塵を、濾過抵抗を過剰にすることなく高効率で捕捉可能となって高い液体浄化能力を発揮するものとなり、且つ、濾材を3重にしたことにより汚れ粒子の捕捉容量(キャパシティ)が極めて大きくなったため、目詰まりしにくくフィルタとしての寿命が極めて長くなっている。
【0027】
このフィルタ520を構成するシート状の濾材521,522,523としては、極細繊維を不織的に絡みあわせたり部分的に結合させたりして目の細かい濾材としてシート状に形成したものを使用することが好ましく、このように作成されて平均ポア径が3.5μm以下としたものを使用することにより、極めて微細なエマルジョン状の油分も確実に捕捉できるものとなる。従って、本実施の形態においても、3層の濾材のうち、少なくとも1層において、平均ポア径が3.5μm以下の濾材を使用することが推奨される。
【0028】
図4は、下流側の濾過ユニット6Bに内蔵されたフィルタカートリッジ5Bを前述と同様にして拡大した横断面図を示している。図3のフィルタカートリッジ5Aが、濾材の目開きのサイズよりも大きなサイズの汚れ粒子を通過させないことで物理的に捕捉するだけであるのに対し、このフィルタカートリッジ5Bは、濾材の目開きのサイズによる捕捉に加え、濾材の汚れ粒子捕捉部分が水溶液中で陽電荷を帯びる素材から構成されていることにより、水溶液中で陰電荷を帯びる汚れ粒子を電位的な力で吸着して捕捉する点を特徴としている。
【0029】
このように、濾材を構成する素材が水溶液中で陽電荷を帯びる性質を利用したフィルタは、一般に陽電荷フィルタと呼ばれるものであるが、これを使用することで、濾材の目開きのサイズよりも微細な汚れ粒子であっても確実に捕捉できるとともに、その吸着力により捕捉した汚れ粒子が遊離しにくいものとなるため、濾過抵抗を過大にすることなく汚れ粒子が下流側に漏出することを確実に防止できるものとなる。
【0030】
斯かるフィルタカートリッジ5Bにおいても、フィルタ530は横断面菊花状とされてその濾過面積を大きくしているが、前述した濾材521,522,523よりも厚手の1枚の濾材から構成されている。図4の拡大部分図である円中を参照して、その濾材は陽電荷を帯びる芯材532とその表側と裏側に設けた補強材531,533からなる点を特徴としている。
【0031】
補強材531,533は、通常の濾材と同様に一般的な繊維を不織的に絡み合わせたものであるが、心材532はガラス繊維等からなる所定の骨格に直径0.1μm以下の無機繊維状物質である無機ナノファイバーを三次元的な枝状に設けてなるものであって、水溶液中で陽電荷を帯びて陰電荷の物質を吸着する性質を有したものを用いる。
【0032】
尚、この心材532の目開きは、無機ナノファイバーで形成されている関係で、フィルタ520を構成する濾材521,522,523の目開きよりも小さくなっていることから、上流側のフィルタ520を通過した微細な汚れ粒子を目開きのサイズで物理的に捕捉する機能も備えているが、このフィルタ520の汚れ粒子捕捉の中心は陽電荷による吸着力によるものである。尚、補強材531,533の目開きのサイズも同様に濾材521,522,523よりも小さいものとして、段階的に縮小する目開きサイズによる段階的な濾過層を構成するようにして効率的な濾過を実現するようにしてもよい。
【0033】
また、この陽電荷フィルタとしての機能を発揮するフィルタ530は、濾材内部で捕捉対象粒子を三次元的に捕捉するデプスフィルタであって、目が比較的詰まりにくいという特性があり、汚れ粒子の確実な捕捉能を長期間に亘って発揮するとともに濾過抵抗が増大しにくいという特徴を有している。
【0034】
このように、本実施の形態の濾過器1Aにおいて、三層に重ねた濾材を横断面形状菊花状にして濾過面積と捕捉容量を大きくしたフィルタ520を内蔵した濾過ユニット6Aを上流に配置し、その下流側に前述した陽電荷フィルタとしての特性を有するフィルタ530を備えた濾過ユニット6Bを直列的に配置したことにより、上流側のフィルタ520で下流側の超高性能のフィルタ530の負荷を軽減しながら極めて高い液体浄化能力を確保することができ、濾過抵抗を過大にすることなくフィルタ交換頻度を極めて少ないものとして、メンテナンスに費やす手間と費用を大きく削減することができ、コストパフォーマンスに極めて優れたものとしている。
【0035】
図5は、図3のフィルタカートリッジ5Aの応用例としてのフィルタカートリッジ5Cを示すものであり、そのフィルタ540を構成する三層の濾材521,522,523の間に複数のホットメルト541,541,541,・・・を互いに間隔を有した状態で設けて濾材521,522,523間に隙間を形成させた点を特徴としている。
【0036】
即ち、濾材522における濾材521側の表面と濾材521における濾材522側の表面に、各々、互いに間隔を有するようにホットメルト541,541,541,・・・をドット状にまんべんなく設けて、その突出分だけ濾材間に隙間が生じるようにしたものであり、濾材間に隙間があることで汚れ粒子の捕捉容量が格段に大きくなり、さらにフィルタ寿命を長くすることが可能となる。
【実施例】
【0037】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。図6は、図1の濾過器1Aと同様の構成のものを作成して実際に組み込んで作成した、バブル洗浄式の部品洗浄装置の正面写真を示しており、この部品洗浄装置を用いて洗浄に使用した洗浄液の濾過器による油分除去能を検証した。
【0038】
この部品洗浄装置では、上流側の濾過ユニットに内蔵され横断面菊花状のフィルタを構成する3枚の濾材は、極細繊維を不織的に絡み合わせて各々平均ポア径が3.5μm以下としたものを使用しており、下流側の濾過ユニットに内蔵された横断面菊花状の陽電荷フィルタは、ガラスの骨格にアルミナを主成分とする直径約2nmの無機ナノファイバーを三次元的に枝状に設けて水溶液中で電気的にプラスを帯びる特性を有した心材と、その表側と裏側に設けた補強材とからなるフィルタを用いた。
【0039】
(試験1)図6の部品洗浄装置の洗浄部(最下段)に、A社、B社、C社、D社、E社、F社の6種類の油を実験用の金属部品に刷毛で塗布したものを配置し、洗浄液をpH13.2の強アルカリ性電解水(温度40℃)として、10分間浸漬させてバブル洗浄を実施し、洗浄後の汚れた洗浄液を、濾過器(最上段)を通過させて濾過したものについて、nーヘキサン抽出量を検査した。
(試験2)プレス工作油(製品名:FB―410、日本工作油製)について上記同様の試験を行い、濾過前の洗浄液と濾過後の洗浄液の外観、及びn―ヘキサン抽出量を比較した。
【0040】
表1は試験1の結果を纏めたものであり、n―ヘキサン抽出量5mg/リットル以下の場合のみ濾過性OKとした。(表中の粒径は各メーカーの資料を引用したものである)表1に示す通り、A社、B社、C社の油をエマルジョン状に含む洗浄液を本発明の濾過器で濾過したことにより、n―ヘキサン抽出量が5mg/リットル以下となっており、この3種類の油については濾過器として充分な浄化能を発揮していたことが分かった。
【0041】
【表1】

【0042】
試験2では、図7の写真に示すように、ビーカに入れた濾過前の洗浄液(左)は白濁していたのに対し、濾過後の洗浄液(右)は澄明な状態となっており、また、濾過前のnーヘキサン抽出量が43mg/リットルであったのに対し、濾過後は0.30mg/リットルとなっていたことから、充分な液体浄化機能を発揮していたことが分かった。
【0043】
尚、上述の説明においては、部品洗浄装置における洗浄液中の油分を含む汚れ粒子を除去して浄化する場合を説明したが、本発明の濾過器はこの使用目的に限定されるものではなく、例えば、コンプレッサーにおけるドレン廃液中から油分を含む汚れ粒子を除去する場合にも極めて有用である。
【0044】
本発明の濾過器をドレン廃液浄化用に実際に導入した例では、ドレン廃液処理量:9600リットル/年であったのが、導入後はフィルタ交換6回/年のみで済むものとなり、フィルタの寿命も比較的長くなっており、メンテナンスコストを試算したところ、3分の1〜4分の1に低減可能であることが分かった。
【0045】
以上、述べたように、液体を浄化するための濾過器について、本発明により、高い液体浄化能力を確保しながらフィルタ交換頻度の少ないものとして、コストパフォーマンスに極めて優れたものとなった。
【符号の説明】
【0046】
1A 濾過器、5A,5B,5C フィルタカートリッジ、6A,6B 濾過ユニット、6a ケーシング、6b 蓋部材、7 連結管、51 中心孔、520,530,540 フィルタ、521,522,523 濾材、541 ホットメルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタをカートリッジ式に交換可能な状態で内蔵した少なくとも2つの濾過ユニットが直列的に連結されてなり導入した液体を浄化して送出する濾過器において、
前記フィルタは、シート状の濾材が周壁により管状構造を形成して前記周壁を外周面側から内周面側に向かって液体が通過することで液体中に分散した汚れ粒子を捕捉するものであって、前記管状構造の中心軸線に対し直角な面による断面形状が菊花状となるように前記濾材を前記外周面側と前記内周面側とで逆方向に折り返して前記周壁の厚さ方向に往復させてなるものであり、最も上流側の前記濾過ユニットが水溶液中で電荷を帯びないフィルタを内蔵し、前記最も上流側の濾過ユニットよりも下流側の前記濾過ユニットが水溶液中で陽電荷を帯びる陽電荷フィルタを内蔵している、ことを特徴とする濾過器。
【請求項2】
前記陽電荷フィルタは、少なくとも汚れ粒子の捕捉部分が直径0.1μm以下の無機繊維状物質である無機ナノファイバーで構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載した濾過器。
【請求項3】
前記陽電荷フィルタは、前記無機ナノファイバーがアルミナを主成分とした直径0.01μm以下のものであって、所定の骨格に前記無機ナノファイバーを三次元的な枝状に設けてなるものである、ことを特徴とする請求項2に記載した濾過器。
【請求項4】
少なくとも前記最も上流側の濾過ユニットに内蔵したフィルタは、複数枚の前記シート状の濾材が重ねられたもので構成されている、ことを特徴とする請求項1,2または3に記載した濾過器。
【請求項5】
前記複数枚のシート状の濾材が重ねられてなるフィルタは、平均ポア径が3.5μm以下の濾材の層を少なくとも有している、ことを特徴とする請求項4に記載した濾過器。
【請求項6】
前記複数枚のシート状の濾材が重ねられてなるフィルタは、前記濾材同士が重なる部分に複数のホットメルトが互いに間隔を有して設けられたことにより前記濾材間に隙間が形成されている、ことを特徴とする請求項4または5に記載した濾過器。
【請求項7】
前記直列的に連結された濾過ユニットに内蔵された各フィルタは、前記濾過ユニットが上流側から下流側になるのに従い前記濾材の目開きが段階的に小さくなっている、ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6に記載した濾過器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−179262(P2010−179262A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26448(P2009−26448)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(595060018)アルプス工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】