説明

濾過式集塵機用濾布の評価試験方法

【課題】集塵機内に取り付けられていた濾布を、濾布に付着したダストの性状が変化することのない状態で試験場所に搬送し、濾布の評価を行うことによって、実態に則した精度の高い濾布の評価試験を行うことができる濾過式集塵機用濾布の評価試験方法を提供すること。
【解決手段】濾過式集塵機から評価用濾布を抜き取り、試験場所に搬送して濾布の評価を行う濾過式集塵機用濾布の評価試験方法において、濾過式集塵機から抜き取った直後の濾布を、内部を真空状態にした合成樹脂製の袋1に封入して試験場所に搬送し、試験場所で袋1を開封し、袋1より取り出して濾布の評価を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過式集塵機用濾布の評価試験方法に関し、特に、集塵機内に取り付けられていた濾布を、濾布に付着したダストの性状が変化することのない状態で試験場所に搬送し、濾布の評価を行うようにした濾布式集塵機用濾布の評価試験方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、濾過式集塵機用濾布の評価試験方法として、濾過式集塵機内に吊下される多数の濾布の中から、任意に選んだ1乃至複数本の濾布を集塵機内より抜き取った後に、試験場所まで適宜手段で搬送して濾布の評価試験を行う方法が一般に採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、上記方法は、使用中濾布の現状性能を把握する方法として一般的に用いられているものであるが、このほか、運転中に破損した濾布を検出するものとして濾布からのガス出口にビーム光を照射してその乱反射密度を検出する方法等も提案されている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0004】
ところで、上記濾布の評価試験として一般に採用されている抜き取り性能評価方法では、濾布の試験項目として、引っ張り強さ・伸び率・通気性(付着ダストの払い落とし前後)・目付け(ダスト付着量)・顕微鏡写真・半折径試験があり、また、性能評価項目として、物理的強度(濾布の繊維自体の性能)・濾過性能(濾布としての性能)が挙げられ、このうち、濾過性能の評価は、通気性(付着ダストの払い落とし前後)と顕微鏡写真によって行われている。
ところで、これらの試験に際し、集塵機から取り出した濾布は、運搬車両などの搬送手段を用いて性能試験場所まで搬送される。
しかしながら、従来の方法では、集塵機の設置場所から試験場所まで搬送する間に、濾布に付着したダストに含まれる塩化カルシウム等が空気中の水分を吸収して、結露や潮解現象を生じ、これによって、ダストの性状が大きく変化し、実態に則した濾布の評価試験を行うことができないという問題があった。
また、集塵機の運転中に破損した濾布を検出する方法は、実際に破損した濾布を対象とするものであって、現状の濾布の性能を把握することはできないという問題があった。
【特許文献1】実公昭51−011420号公報
【特許文献2】特開平04−104038号公報
【特許文献3】特開昭63−294921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の濾過式集塵機用濾布の評価試験方法の有する問題点に鑑み、集塵機内に取り付けられていた濾布を、濾布に付着したダストの性状が変化することのない状態で試験場所に搬送し、濾布の評価を行うことによって、実態に則した精度の高い濾布の評価試験を行うことができる濾過式集塵機用濾布の評価試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の濾過式集塵機用濾布の評価試験方法は、濾過式集塵機から評価用濾布を抜き取り、試験場所に搬送して濾布の評価を行う濾過式集塵機用濾布の評価試験方法において、濾過式集塵機から抜き取った直後の濾布を、内部を真空状態にした合成樹脂製の袋に封入して試験場所に搬送し、試験場所で袋を開封し、袋より取り出して濾布の評価を行うことを特徴とする。
【0007】
この場合において、濾布を入れた状態で内部を真空状態にできる空気吸引バルブを配設した合成樹脂製の袋を用いることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の濾過式集塵機用濾布の評価試験方法によれば、濾過式集塵機から抜き取った直後の濾布を、内部を真空状態にした合成樹脂製の袋に封入して試験場所に搬送し、試験場所で袋を開封し、袋より取り出して濾布の評価を行うようにしているので、合成樹脂製の袋内の水分の絶対量を少なく抑えることができ、濾布に付着したダストに含まれる塩化カルシウム等が空気中の水分を吸収して、結露や潮解現象を生じることを防止し、これによって、ダストの性状を変化させずに実態に則した精度の高い濾布の評価試験を行うことができる。
【0009】
また、濾布を入れた状態で内部を真空状態にできる空気吸引バルブを配設した合成樹脂製の袋を用いることにより、合成樹脂製の袋の内部の空気を吸引することにより、袋の内部を簡易に真空状態に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の濾過式集塵機用濾布の評価試験方法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図4に本発明の濾過式集塵機用濾布の評価試験方法の搬送時に用いる合成樹脂製の袋1を示す。
この合成樹脂製の袋1は、ポリエチレン等の合成樹脂製のもので、集塵機から取り外した濾布を収納することのできるサイズであれば、例えば、一般に市販されている布団や衣類等の圧縮袋を代用することもできる。
より具体的には、合成樹脂製の袋1は、一辺に開口部4が形成されるように四角形の合成樹脂製シート2の三辺を貼り合わせるか、四角形の合成樹脂製シート2の一辺を折り二辺を貼り合わせて構成し、開口部4には吸引バルブ3を配設するとともに、吸引バルブ3以外の箇所には内部に濾布を入れた状態で開口部4を密封するための密封手段20を配設するようにする。
【0012】
この密封手段20は、特に限定されるものではないが、咬合具としてのファスナやチャックテープを用いることができ、例えば、図2に示すように、頭部21aと首部21bからなる断面T字状の雄爪21と、前記頭部21aの進入を屈曲して許容する対となる断面L字状の受け部22a、22aからなる雌爪22とを対(2列)に配設したチャックテープから構成される。なお、合成樹脂製の袋1の内部気密性をより向上させるために、チャックテープを複数列(図示の実施例では、対(2列)のチャックテープを距離をおいて2組、合計4列)配列することもできる。
【0013】
図3は、密封手段20の別の実施例を示す。
図3(a)に示す密封手段20は、開口部4の幅よりも広い長さを有する断面U字状の受け部材23と、受け部材23の凹部に嵌合する円筒状の嵌め込み部材24とからなり、合成樹脂製の袋1の開口部4近傍で、合成樹脂製の袋1の上下に受け部材23と嵌め込み部材24を位置させ、嵌め込み部材24を合成樹脂製の袋1とともに受け部材23に押し込み嵌合することによって内部を密封する。
【0014】
また、図3(b)に示す密封手段20は、ヒータ25、25によって合成樹脂製の袋1の開口部4近傍を溶着させるもので、ヒータは片側にのみ配設する構成であってもよい。
【0015】
吸引バルブ3は、特に限定されるものではないが、内部に逆止弁を備えたものを用いることができ、例えば、図4(a)に示すように、吸引管31の内部に常時は接触して図示の矢印方向とは逆方向への空気の流れを遮断するフィルム状の逆止弁32を配設したもののほか、図4(b)に示すように、弁板状の逆止弁34を内部に配設した吸引管33を利用するものであってもよい。
吸引バルブ3を合成樹脂製シートで構成するときは、吸引バルブ3の部分にも密封手段20を配備し、内部空気の吸引時には吸引バルブ3の近傍まで密封しておき、吸引終了後に吸引バルブ3を含めて雄爪21を雌爪22内に進入させることにより吸引バルブ3からの空気の漏れを確実に遮断することができる。
また、吸引バルブ3は開口部4に配設することなく、図1の点線で示すように開口部4以外の位置に配設してもよい。
【0016】
そして、濾過式集塵機用濾布の評価試験を行う場合は、従来の抜き取りでの性能評価方法と同様に、濾過式集塵機内に吊下される多数の濾布の中から、任意に選んだ1乃至複数本の濾布を抜き取り、直ちに上記の合成樹脂製の袋1に収容する。
【0017】
濾布を収容した合成樹脂製の袋1の開口部4を密封手段20によって密封する。
その後、掃除機等の任意の吸引手段を用いて吸引バルブ3から内部の空気を吸い出し、内部空気をほぼ吸い出した状態(理論上完全な真空状態にすることは不可能であるが、本明細書においては、この状態を「真空状態」という。)にする(真空状態となった合成樹脂製の袋1は、密封手段20や吸引バルブ3によって、外部から空気が侵入することを防止し、真空状態を維持することができる。)ことによって、合成樹脂製の袋1内の水分の絶対量を少なく抑え、濾布に付着したダストに含まれる塩化カルシウム等が空気中の水分を吸収して、結露や潮解現象を生じることを防止する。
【0018】
このように、濾布の周りから空気を遮断することによって、集塵機内で濾布に付着したダストが空気中の水分を吸収することを防止し、付着したダストの性状を保持したまま、試験場所まで適宜手段、例えば、運搬車両による陸路で搬送し、試験場所において、袋1を開封し、袋1より取り出された濾布に対し上述した種々の性能試験を実施する。
【0019】
この際、特に通気性(付着ダストの払い落とし前後)試験において、濾布に付着したダストは、濾布が内部を真空とした合成樹脂製の袋1内に封入されていたことによって、その性状が変化することないため、実態に則した精度の高い濾布の評価試験を行うことができる。
【0020】
以上、本発明の濾過式集塵機用濾布の評価試験方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の濾過式集塵機用濾布の評価試験方法は、試験用濾布を、濾布に付着したダストの性状が変化することのない状態で試験場所に搬送し、濾布の評価を行うことができることから、集塵機の設置場所から試験場所まで搬送に時間を要する場合を始めとして濾過式集塵機用濾布の評価試験の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の濾過式集塵機用濾布の評価試験方法に用いる合成樹脂製の袋の正面図である。
【図2】合成樹脂製の袋に使用する密封手段の断面図を示し、(a)は密封前の状態を、(b)は雄爪が雌爪に進入する状態を、(c)は密封後の状態である。
【図3】合成樹脂製の袋に使用する密封手段の別の実施例を示し、(a)は圧着型の密封手段の一部断面の斜視図を、(b)は熱融着型の密封手段の一部断面図である。
【図4】合成樹脂製の袋に使用する吸引バルブを示し、(a)はフィルム状の逆止弁を用いた断面図を、(b)は弁板状の逆止弁を用いた断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 合成樹脂製の袋
20 密封手段
3 吸引バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過式集塵機から評価用濾布を抜き取り、試験場所に搬送して濾布の評価を行う濾過式集塵機用濾布の評価試験方法において、濾過式集塵機から抜き取った直後の濾布を、内部を真空状態にした合成樹脂製の袋に封入して試験場所に搬送し、試験場所で袋を開封し、袋より取り出して濾布の評価を行うことを特徴とする濾布式集塵機用濾布の評価試験方法。
【請求項2】
濾布を入れた状態で内部を真空状態にできる空気吸引バルブを配設した合成樹脂製の袋を用いることを特徴とする請求項1記載の濾布式集塵機用濾布の評価試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−98162(P2006−98162A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283076(P2004−283076)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】