説明

濾過装置

【課題】 従来、CMP等の機械的加工により発生する排水は、CMPスラリーに含まれる砥粒が微粒子であるためにコロイド溶液となり、有効な濾過装置がなかった。
【解決手段】 本発明では、コロイド溶液の微粒子を含む排水をタンク50に導入し、排水を循環させて第1のフィルタ1の表面に吸引により形成されるゲル膜の第2のフィルタ2を用いて濾過する濾過装置を提供する。このときの吸引圧力は極めて微弱にして、第2のフィルタ2の目詰まりを延ばしながら濾過能力を維持している。更に第1のフィルタ1の表面に吸着される第2のフィルタ2のゲル膜は吸引を停止することで容易に離脱でき、タンク50底部に貯まったゲルの濃縮スラリーを回収可能な濾過装置を実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被除去物の除去方法に関し、また主に0.15μm以下と非常に微細な被除去物がコロイド溶液(ゾル)に含まれた流体の被除去物を除去する濾過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、産業廃棄物を減らすこと、また産業廃棄物を分別し再利用することまたは産業廃棄物を自然界に放出させないことは、エコロジーの観点から重要なテーマであり、21世紀の企業課題である。この産業廃棄物の中には、被除去物が含まれた色々な流体がある。
【0003】
これらは、汚水、排水、廃液等の色々な言葉で表現されているが、以下、水や薬品等の流体中に被除去物である物質が含まれているものを排水と呼び説明する。これらの排水は、高価な濾過処理装置等で前記被除去物が取り除かれ、排水がきれいな流体となり再利用されたり、分別された被除去物または濾過できず残ったものを産業廃棄物として処理している。特に水は、濾過により環境基準を満たすきれいな状態にして川や海等の自然界に戻されたり、また再利用される。
【0004】
しかし、濾過処理等の設備費、ランニングコスト等の問題から、これらの装置を採用することが非常に難しく、環境問題にもなっている。
【0005】
このことからも判るように、排水処理の技術は、環境汚染の意味からも、またリサイクルの点からも重要な問題であり、低イニシャルコスト、低ランニングコストのシステムが早急に望まれている。
【0006】
一例として、半導体分野に於ける排水処理を以下に説明していく。一般に、金属、半導体、セラミック等の板状体を研削または研磨する際、摩擦による研磨(研削)治具等の温度上昇防止、潤滑性向上、研削屑または切削屑の板状体への付着等が考慮され、水等の流体が研磨(研削)治具や板状体にシャワーリングされている。
【0007】
具体的には、半導体材料の板状体である半導体ウェハをダイシングしたり、バックグラインドする際、純水を流す手法が取られている。ダイシング装置では、ダイシングブレードの温度上昇防止のために、またダイシング屑がウェハに付着するのを防止するために、半導体ウェハ上に純水の流れを作ったり、ブレードに純水が当たるように放水用のノズルが取り付けられ、シャワーリングされている。またバックグラインドでウェハ厚を薄くする際も、同様な理由により純水が流されている。
【0008】
前述したダイシング装置やバックグラインド装置から排出される研削屑または研磨屑が混入された排水は、濾過されてきれいな水にして自然界に戻したり、あるいは再利用され、濃縮された排水は、回収されている。
【0009】
現状の半導体製造に於いて、Siを主体とする被除去物(屑)の混入された排水の処理には、凝集沈殿法、フィルタ濾過と遠心分離機を組み合わせた方法の二通りがある。
【0010】
前者の凝集沈殿法では、凝集剤としてPAC(ポリ塩化アルミニウム)またはAl2(SO4)3(硫酸バンド)等を排水の中に混入させ、Siとの反応物を生成させ、この反応物を取り除くことで、排水の濾過をしていた。
【0011】
後者の、フィルタ濾過と遠心分離を組み合わせた方法では、排水を濾過し、濃縮された排水を遠心分離機にかけて、シリコン屑をスラッジとして回収するとともに、排水を濾過してできたきれいな水を自然界に放出したり、または再利用していた。
【0012】
例えば、図13に示すように、ダイシング時に発生する排水は、原水タンク201に集められ、ポンプ202で濾過装置203に送られる。濾過装置203には、セラミック系や有機物系のフィルタFが装着されているので、濾過された水は、配管204を介して回収水タンク205に送られ、再利用される。または自然界に放出される。
【0013】
一方、濾過装置203は、フィルタFに目詰まりが発生するため、定期的に洗浄が施される。例えば、原水タンク201側のバルブB1を閉め、バルブB3と原水タンクから洗浄水を送付するためのバルブB2が開けられ、回収水タンク205の水で、フィルタFが逆洗浄される。これにより発生した高濃度のSi屑が混入された排水は、原水タンク201に戻される。また濃縮水タンク206の濃縮水は、ポンプ208を介して遠心分離器209へ輸送され、遠心分離器209により汚泥(スラッジ)と分離液に分離される。Si屑から成る汚泥は、汚泥回収タンク210に集められ、分離液は分離液タンク211に集められる。更に分離液が集められた分離液タンク211の排水は、ポンプ212を介して原水タンク201に輸送される。
【0014】
これらの方法は、例えば、Cu、Fe、Al等の金属材料を主材料とする固形物または板状体、セラミック等の無機物から成る固形物や板状体等の研削、研磨の際に発生する屑を回収する際も採用されていた。
【0015】
一方、CMP(Chemical-Mechanical Polishing)が新たな半導体プロセス技術として登場してきた。
【0016】
このCMP技術がもたらすものは、
(1):平坦なデバイス面形状の実現
(2):基板とは異なる材料の埋め込み構造の実現
である。
(1)は、リソグラフィ技術を使った微細パターンを精度良く形成するものである。またSiウェハの貼り付け技術の併用等で、三次元ICの実現の可能性をもたらすものである。
【0017】
(2)は、埋め込み構造を可能とするものである。従来、ICの多層配線には、タングステン(W)埋め込み技術が採用されている。これは層間膜の溝にCVD法でWを埋め込み、表面をエッチバックして平坦化していたが、最近はCMPにより平坦化されている。この埋め込み技術の応用としては、ダマシンプロセス、素子分離があげられる。
【0018】
これらCMPの技術および応用は、サイエンスフォーラム発行の「CMPのサイエンス」に詳述されている。
【0019】
続いて、CMPの機構を簡単に説明する。図14に示すように、回転定盤250上の研磨布251に半導体ウェハ252を載せ、研磨材(スラリー)253を流しながら擦り合わせ、研磨加工、化学的エッチングすることにより、ウェハ252表面の凹凸を無くしている。研磨材253の中の溶剤による化学反応と、研磨布と研磨剤の中の研磨砥粒との機械的研磨作用で平坦化されている。研磨布251としては、例えば発泡ポリウレタン、不織布などが用いられ、研磨材は、シリカ、アルミナ等の研磨砥粒を、pH調整材を含んだ水に混合したもので、一般にはスラリーと呼ばれている。このスラリー253を流しながら、研磨布251にウェハ252を回転させながら一定の圧力をかけて擦り合わせるものである。尚、254は、研磨布251の研磨能力を維持するもので、常に研磨布251の表面をドレスされた状態にするドレッシング部である。また202、208、212はモーター、255〜257はベルトである。
【0020】
上述した機構は、例えば図15に示すように、システムとして構築されている。このシステムは、大きく分けると、ウェハカセットのローディング・アンローデイングステーション260、ウェハ移載機構部261、図12で説明した研磨機構部262、ウェハ洗浄機構部263およびこれらを制御するシステム制御から成る。
【0021】
まずウェハが入ったカセット264は、ウェハカセット・ローデイング・アンローディングステーション260に置かれ、カセット264内のウェハが取り出される。続いて、ウェハ移載機構部261、例えばマニプュレータ265で前記ウェハを保持し、研磨機構部262に設けられた回転定盤250の上に載置され、CMP技術を使ってウェハが平坦化される。この平坦化の作業が終わると、スラリーの洗浄を行うため、前記マニプュレータ266によりウェハがウェハ洗浄機構部263に移され、洗浄される。そして洗浄されたウェハは、ウェハカセット266に収容される。
【0022】
例えば、1回の工程で使われるスラリーの量は、約500cc〜1リットル/ウェハである。また、前記研磨機構部262、ウェハ洗浄機構部263で純水が流される。そしてこれらの排水は、ドレインで最終的には一緒になるため、約5リットル〜10リットル/ウェハの排水が1回の平坦化作業で排出される。例えば3層メタルであると、メタルの平坦化と層間絶縁膜の平坦化で約7回の平坦化作業が入り、一つのウェハが完成するまでには、5〜10リットルの七倍の排水が排出される。
【0023】
よって、CMP装置を使うと、純水で希釈されたスラリーがかなりの量排出されることが判る。
【0024】
そしてこれらの排水は、凝集沈殿法で処理されていた。
【0025】
以下の特許文献に示される発明はいずれもゾルを被除去物として含まれる廃液からゲル化して被除去物を濾過するするものではない。
【特許文献1】特開2001−38351
【特許文献2】特開2001−38352
【特許文献3】特開2001−38152
【特許文献4】特開2001−44149
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、凝集沈殿法は、凝集剤として化学薬品が投入される。しかし完全に反応する薬品の量を特定するのは非常に難しく、どうしても薬品が多く投入され未反応の薬品が残る。逆に薬品の量が少ないと、全ての被除去物が凝集沈降されず、被除去物が分離せず残ってしまう。特に、薬品の量が多い場合は、上澄液に薬品が残る。これを再利用する場合、濾過流体に薬品が残留するため、化学反応を嫌うものには再利用できない問題があった。
【0027】
また薬品と被除去物の反応物であるフロックは、あたかも藻の如き浮遊物で生成される。このフロックを形成する条件は、pH条件が厳しく、攪拌機、pH測定装置、凝集剤注入装置およびこれらを制御する制御機器等が必要となる。またフロックを安定して沈降させるには、大きな沈殿槽が必要となる。例えば、3立方メートル(m3)/1時間の排水処理能力であれば、直径3メートル、深さ4メートル程度のタンク(約15トンの沈降タンク)が必要となり、全体のシステムにすると約11メートル×11メートル程度の敷地も必要とされる大がかりなシステムになってしまう。
【0028】
しかも沈殿槽に沈殿せず浮遊しているフロックもあり、これらはタンクから外部に流出する恐れがあり、全てを回収することは難しかった。つまり設備の大きさの点、このシステムによるイニシャルコストが高い点、水の再利用が難しい点、薬品を使う点から発生するランニングコストが高い点等の問題があった。
【0029】
一方、図12の如き、5立方メートル(m)/1時間のフィルタ濾過と遠心分離機を組み合わせた方法では、濾過装置203にフィルタF(UFモジュールと言われ、ポリスルホン系ファイバで構成されたもの、またはセラミックフィルタ)を使用するため、水の再利用が可能となる。しかし、濾過装置203には4本のフィルタFが取り付けられ、フィルタFの寿命から、約50万円/本と高価格なフィルタを、少なくとも年に1回程度、交換する必要があった。しかも濾過装置203の手前のポンプ202は、フィルタFが加圧型の濾過方法であるためフィルタの目詰まりが発生してモータの負荷が大きく、ポンプ202が高容量であった。また、フィルタFを通過する排水の内、2/3程度は、原水タンク201に戻されていた。更には被除去物が入った排水をポンプ202で輸送するため、ポンプ202の内壁が削られ、ポンプ2の寿命も非常に短かった。
【0030】
これらの点をまとめると、モータの電気代が非常にかかり、ポンプPやフィルタFの取り替え費用がかかることからランニングコストが非常に大きい問題があった。
【0031】
更に、CMPに於いては、ダイシング加工とは、比較にならない量の排水が排出される。スラリーはコロイド状に流体内に分布し、ブラウン運動によりなかなか沈降しない。しかもスラリーに混入される砥粒の粒径は10〜200nmの極めて微細なものである。従って、微細な砥粒から成るスラリーをフィルタで濾過すると、フィルタの孔に砥粒が侵入し、すぐに目詰まりを起こし、目詰まりが頻繁に発生するため、排水を大量に処理できない問題があった。
【0032】
今までの説明からも判るように、地球環境に害を与える物質を可能な限り取り除くため、または濾過流体や分離された被除去物を再利用するために、排水の濾過装置は、色々な装置を追加して大がかりなシステムとなり、結局イニシャルコスト、ランニングコストが膨大と成っている。従って今までの汚水処理装置は、到底採用できるようなシステムでなかった。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は上記の課題に鑑みてなされ、本発明の目的は、コロイド溶液の被除去物を含む流体が収納されるタンクと、前記タンク内に浸漬される第1のフィルタとその表面に吸着されるゲル膜より成る第2のフィルタとで形成されるフィルタ装置と、前記フィルタ装置に接続された第1のパイプを介して前記流体を吸引するポンプと、前記ポンプからの濾過流体を前記タンク外に取り出す第2のパイプとを備え、前記第2のフィルタが目詰まりを起こして濾過流量が減じる際に、前記ポンプを停止して前記フィルタ装置に加えた吸引圧力を無くして前記第2のフィルタ表面に吸着されたゲルを離脱させ、前記ゲルを前記タンクの底部に沈殿させて回収することを特徴とする濾過装置を提供することにある。
【0034】
本発明の他の目的は、被除去物から成膜されたゲル膜を第2のフィルタとして用いる濾過装置を提供することにある。
【0035】
本発明の他の目的は、前記フィルタ装置はフレームと、該フレームにその周囲を支持された前記第1のフィルタと、前記第1のフィルタの表面に吸着された前記第2のフィルタとで構成される濾過装置を提供することにある。
【0036】
また本発明の他の目的は、前記ゲルの濃縮スラリーは前記タンクの底部に設けたバルブから外部に排出されて回収されることを特徴とする濾過装置を提供することにある。
【0037】
更に本発明の他の目的は、前記被除去物はCMPスラリーから成る濾過装置を提供することにある。
【発明の効果】
【0038】
一般に、CMPのスラリーに混入される砥粒のように主に0.15μmクラス以下の微粒子を取り除くには、この微粒子よりも小さな孔のフィルタ膜を採用するのが一般的であるが、このようなフィルタ膜は存在しないので濾過をすることができなかった。しかし、本発明は主に0.15μm以下の小さな孔のフィルタ膜を用いることなく、コロイド溶液の被除去物をゲル膜のフィルタを成膜して濾過出来る濾過装置を実現した。
【0039】
また、ゲル膜のフィルタをゾルで含まれる被除去物の流体から形成するために、凝集剤等の薬品を添加すること無く且つ微小孔のフィルタも用いること無く濾過出来る濾過装置を実現した。
【0040】
更に、ゲル膜より成る第2のフィルタの成膜は吸引により第1のフィルタ表面に微粒子をゲル化しながら行え、しかも吸引圧力を微弱に設定してゆっくり排水を吸引することで極めて濾過効率の良い濾過装置を実現できた。
【0041】
更に、ゲル膜より成る第2のフィルタは成膜条件を最適に選ぶことおよび濾過流量または吸引圧力を一定に保持することで、極めて目詰まりし難い且つ濾過時間の長い濾過装置を実現できた。
【0042】
更に、CSPの半導体装置を製造するために用いるCMPスラリーの濾過を実現し、CMPスラリーに含まれる大量の砥粒やCMPで排出される電極材料の屑やシリコンあるいはシリコン酸化膜の屑も同時に濾過できる濾過装置を実現した。
【0043】
また、本発明では第2のフィルタ表面に濾過を続けることで吸着されるゲルをポンプでの吸引を停止することで、そのゲルの自重を利用して離脱できるので、第2のフィルタの再生が容易に行える濾過装置である。そして濾過工程、再生工程および再濾過工程を何度も繰り返し行え、極めて長時間の濾過を続けることを可能にした濾過装置である。
【0044】
更に、本発明では第2のフィルタの再生に際したポンプの吸引を停止するだけでフィルタ装置が外側に膨らんで戻る力を利用して第1のフィルタ表面に吸着された第2のフィルタのゲル膜の離脱を行うので、従来の濾過装置の様に大がかりな逆洗浄を全く必要としない利点がある。また再生工程で気泡を濾過時より増量することで、気泡の上昇力や破裂による力が更に第1のフィルタ表面に追加されて更に第2のフィルタのゲル膜の離脱を促進する利点もある。更に補助タンクからの濾過水をフィルタ装置に逆流させることで更に高低差による静水圧を追加して加えるので、ゲル膜の離脱をより促進する利点もある。
【0045】
更にまた、本発明を実現する濾過装置では第2のフィルタが目詰まりしない様に、微弱な吸引圧力で吸引しているため、ポンプは小型ポンプで達成できる。しかも濾過水がポンプを通過するため、被除去物による摩耗の心配もなく、その寿命もはるかに長くなった。従ってシステムの規模が小さくでき、ポンプを稼働するための電気代は節約でき、更にはポンプの取り替え費用も大幅に抑えられ、イニシャルコストも、ランニングコストも削減できた。
【0046】
また原水タンクのみを利用して濃縮させるので、余分な配管、タンクおよびポンプ等が不要となり、省資源型の濾過装置が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明を説明する上で本発明に用いる用語の定義を明確にする。
【0048】
コロイド溶液とは直径が1nm〜1μmの大きさの微粒子が媒質中に分散している状態をいう。この微粒子はブラウン運動をし、普通の濾紙は通過するが半透膜は通過しない性質がある。また凝集速度が非常に遅い性質は微粒子間に静電気反発力が働いているため、接近する機会を少なくしていると考えられている。
【0049】
ゾルはコロイド溶液とほぼ同義に使用され、ゾルはゲルと異なり液体中に分散していて流動性を示し、微粒子は活発にブラウン運動をしている。
【0050】
ゲルはコロイド粒子が独立した運動性を失って、集合して固化した状態をいう。例えば寒天やゼラチンは温水に溶かせば分散してゾルになるが、これを冷却すると流動性を失ってゲルとなる。ゲルには液体分の多いヒドロゲルとやや乾燥したキセロゲルとがある。
【0051】
ゲル化の要因としては、分散媒の水を取り除いて乾燥させたり、シリカスラリー(pH9〜10)に電解質塩を添加してpH6〜7までpH調整をしたり、冷却をして流動性を失わせる等がある。
【0052】
スラリーは粒子と液体および化学薬品を混合して、ポリッシングに使用するコロイド溶液またはゾルを言う。前述したCMPに用いる研磨剤をCMPスラリーと呼んでいる。CMPスラリーにはシリカ系研磨剤、酸化アルミニウム(アルミナ)系研磨剤、酸化セリウム(セリア)系研磨剤等が知られている。もっともよく利用されるのはシリカ系研磨剤であり、その中でもコロイダルシリカが広く用いられる。コロイダルシリカとは、7〜300nmのコロイドサイズのシリカ超微粒子が水または有機溶媒中に沈降すること無く均質に分散している分散液であり、シリカゾルとも呼ばれる。このコロイダルシリカは水の中で粒子が単分散しているので、コロイド粒子の相互の反発力で1年以上放置してもほとんど沈降することはない。
【0053】
まず本発明は被除去物がコロイド溶液あるいはゾルで流体中に含まれた状態の排水から
被除去物を濾過により取り除く被除去物の除去方法を提供することにある。
【0054】
被除去物は、3nm〜2μmの粒径分布の微粒子が大量に入ったコロイド溶液(ゾル)であり、例えばCMPに用いるシリカ、アルミナあるいはセリア等の砥粒と砥粒により削られて発生する半導体材料屑、金属屑および/または絶縁膜材料屑である。本実施例ではCMPスラリーとして、キャボット社製W2000タングステン研磨用のスラリーを用いた。このスラリーはpH 2.5、砥粒分布10〜200nmのシリカを主成分としている。
【0055】
本発明の原理を図1を参照して説明する。
【0056】
本発明は、コロイド溶液(ゾル)の被除去物が混入された流体(排水)を、被除去物から形成したゲル膜から成るフィルタで除去するものである。
【0057】
具体的に説明すると、有機高分子の第1のフィルタ1表面に、コロイド溶液の被除去物であるCMPスラリーから形成した第2のフィルタ2となるゲル膜を形成し、このフィルタ
1、2をタンク内の流体3中に浸漬し、被除去物が入った排水を濾過するものである。
【0058】
第1のフィルタ1は、ゲル膜を付着させることができれば原理的に考えて有機高分子系、セラミック系とどちらでも採用可能である。ここでは、平均孔径0.25μm、厚さ0.1mmのポリオレフィン系の高分子膜を採用した。このポリオレフィン系から成るフィルタ膜の表面写真を図2Bに示した。
【0059】
また、第1のフィルタ1はフレーム4の両面に設けられた平膜構造を有し、流体に垂直になるように浸漬され、フレーム4の中空部5からポンプ6により吸引する様に構成され、ろ液7を取り出せる。
【0060】
次に、第2のフィルタ2は第1のフィルタ1表面全体に付着され、被除去物のゾルを吸引することでゲル化して形成されるゲル膜である。一般にゲル膜はゼリー状であるので、フィルタとしての働きは無いと考えられている。しかし、本発明ではこのゲル膜の生成条件を選択することで第2のフィルタ2の機能を持たせることができる。この生成条件は後で詳述する。
【0061】
では、上記した被除去物のコロイド溶液(ゾル)で被除去物のゲル膜である第2のフィルタ2を形成し、被除去物を取り除く濾過について図1および図2Aを参照して説明する。
【0062】
1は第1のフィルタで、11はフィルタ孔である。またフィルタ孔11の開口部および第1のフィルタ1の表面に層状に形成されている膜は、被除去物13のゲル膜である。この被除去物13はポンプからの吸引圧力により第1のフィルタ1を介して吸引され、流体3の水分が吸い取られるために乾燥(脱水)してコロイド溶液の被除去物の微粒子がゲル化して結合し、フィルタ孔11を通過できない大きなゲル膜を第1のフィルター1表面に形成する。このゲル膜が第2のフィルタ2を形成する。
【0063】
やがて第2のフィルタ2が所定の膜厚になると第2のフィルタ2は被除去物のゲルを通過させない隙間を形成し、この第2のフィルタ2を利用してコロイド溶液の被除去物の濾過が開始される。従ってポンプ6で吸引しながら濾過を続けると、第2のフィルタ2の表面には徐々にゲル膜が積層されて厚くなり、やがて第2のフィルタ2は目詰まりして濾過を続けられなくなる。この間に被除去物のコロイド溶液はゲル化されながら、第2のフィルタ2の表面に付着してコロイド溶液の水が第1のフィルター1を通過して濾過水として取り出される。
【0064】
図2Aにおいて、第1のフィルタ1の片面には、被除去物が混入されたコロイド溶液の排水があり、第1のフィルタ1の反対面には、第1のフィルタ1を通過した濾過水が生成されている。矢印の方向に排水は吸引されて流れ、この吸引によりコロイド溶液中の微粒子が第1のフィルタ1に近づくにつれて静電気反発力を失いゲル化されていくつかの微粒子が結合したゲル膜が第1のフィルタ1表面に吸着されて第2のフィルタ2が形成される。この第2のフィルタ2の働きでコロイド溶液中の被除去物はゲル化されながら排水の濾過が行われる。第1のフィルタ1の反対面からは濾過水が吸引される。
【0065】
このように第2のフィルタ2を介してコロイド溶液の排水をゆっくりと吸引することで、排水中の水が濾過水として取り出せ、被除去物は乾燥してゲル化し第2のフィルタ2表面に積層されて被除去物はゲル膜として捕獲される。
【0066】
次に、第2のフィルタ2の生成条件について図3を参照して説明する。図3は第2のフィルタ2の生成条件とその後の濾過量を示している。
【0067】
本発明の方法では、まず第2のフィルタ2の生成と濾過の工程から構成されている。第2のフィルタ2の生成条件により濾過時の精製水濾過量が大きく異なり、第2のフィルタ2の精製条件を適切に選択しないと、ゲル膜の第2のフィルタ2でほとんど濾過できないことが明らかとなる。これは従来ではコロイド溶液の濾過は不可能であると言われてきた事実と一致している。
【0068】
図3Bに示す特性は、図3Aに示す方法で実験的に求められたものである。すなわち、円筒の容器21の底部に第1のフィルタ1を設け、キャボット社製W2000タングステン研磨用のスラリー22の原液50ccを入れて吸引圧力を変えてゲル膜の生成を行う。続いて残ったスラリー22を捨てて精製水23を100cc入れ、極めて低い吸引圧力で濾過を行うものである。これにより第2のフィルタ2となるゲル膜の濾過特性を調べることが出来る。なお、このときの第1のフィルタ1は直径47mmのものを用い、その面積は1734mmである。
【0069】
図3Bにおいて、ゲル膜の生成工程では、吸引圧力を−55cmHg、−30cmHg、−10cmHg、−5cmHg、−2cmHgと変えて120分間成膜を行い、ゲル膜の性質を調べた。この結果、吸引圧力を−55cmHgと強く設定すると2時間で濾過量は16ccと一番多く、順に12.5cc、7.5cc、6cc、4.5ccとなる。
【0070】
次に、精製水に入れ替えてこのゲル膜で濾過を行う。このときの吸引圧力は−10cmHg一定に設定される。吸引圧力−55cmHgで成膜されたゲル膜ではわずか0.75cc/時間しか濾過できない。吸引圧力−30cmHgで成膜されたゲル膜では約1cc/時間の濾過量である。しかし、吸引圧力−10cmHgのゲル膜では2.25cc/時間、吸引圧力−5cmHgのゲル膜では3.25cc/時間、吸引圧力−2cmHgのゲル膜では3.1cc/時間の濾過量となり、極めて弱い吸引圧力で成膜されたゲル膜は濾過工程でも安定して濾過が行える。この実験結果から、第2のフィルタ2のゲル膜の生成工程では約3cc/時間の濾過量になるように吸引圧力を設定すれば、その後の濾過工程での濾過量が一番大きくなることが明らかである。
【0071】
この理由は吸引圧力が強いと、成膜されるゲル膜が膨潤度が低く、緻密で硬くなり、ゲル膜が水分の含有が少なく収縮された状態で成膜されるので、精製水が浸透する通路がほとんど無くなるためであると考えられる。
【0072】
これに対して吸引圧力を弱くすると、成膜されるゲル膜は膨潤度が高く、密度が低く柔らかくなり、ゲル膜に水分の含有が多く膨潤された状態のまま成膜され、精製水が浸透する通路を多く確保できる。ちょうど粉雪がゆっくり降り積もる状態を考えれば容易に理解できる。本発明の特徴はこの微弱な吸引圧力で成膜された膨潤度の高いゲル膜を用いて、このゲル膜に水分が浸透する性質を利用して濾過を実現したことにある。
【0073】
図4を参照して、ゲル膜の特性を説明する。
【0074】
図4Aはゲル膜中に含まれるゾル量と濾過量の関係を示す。ゾルの除去量はスラリー濃度3%の精製水からゲル膜成膜時の濾過量から第1のフィルタ1に捕捉されたゾル量を求めている。このゾル量が吸引による乾燥で第2のフィルタ2としてゲル化して付着した量と考えられる。これから明らかになることは微弱な吸引により第2のフィルタ2を成膜したときほどゾル量が少ないことが分かる。すなわち、3cc/時間の濾過量のときに消費されるゾル量は0.15ccと極めて少なく、第2のフィルタ2に含まれるゾル量が少ないほど濾過量は多くなる。これが本発明の重要なポイントを示唆するもので、出来るだけゾル量の少ない第2のフィルタ2を形成することでコロイド溶液の排水の濾過を実現可能にするものである。
【0075】
また、図4Bでは上述したゾル除去量とゲル膜の体積からその膨潤度すなわちゲル膜中のゾルの密度を示す。吸引圧力が−30mmHgのときの第2のフィルタ2の膜厚が6mm、
吸引圧力が−10mmHgのときの第2のフィルタ2の膜厚が4mmである実験結果から、膨潤度は27から30に増加している。すなわち、吸引圧力が大きいほど膨潤度が低下し、第2のフィルタ2のゾル量の密度が高くなることを示している。さらに重要なことは吸引圧力が低いほど第2のフィルタ2の膜厚も薄くなり且つ膨潤度も大きくなり、図3Bに示す吸引圧力を微弱にして形成した第2のフィルタ2の濾過時の濾過量が多く且つ長時間濾過できることを裏付けている。
【0076】
従って、本発明で主に0.15μm以下の微粒子のコロイド溶液の排水が濾過できる大きなポイントは第2のフィルタ2の成膜条件に依るところが大きいことが明確になる。
【0077】
図2に示すフィルタは図1のフィルタの片側を示しており、実際にはゲル膜がどのように付着するかを説明する模式図である。
【0078】
第1のフィルタ1はコロイド溶液の排水に垂直に立って浸漬され、排水は被除去物13が分散したコロイド溶液となっている。被除去物13は小さい黒丸で示している。ポンプ6により第1のフィルタ1を介して排水を微弱な吸引圧力で吸引をすると、第1のフィルタ1に近づくにつれて被除去物の微粒子はゲル化して第1のフィルタ1の表面に吸着される。白丸で示すゲル化した微粒子14は第1のフィルタ1のフィルタ孔11より大きいものが徐々に第1のフィルタ1表面に吸着して積層され、ゲル膜より成る第2のフィルタ2を形成する。なおフィルタ孔11より径の小さいゲル化した微粒子14は第1のフィルタ1を通過するが、第2のフィルタ2を成膜する工程では濾過水は再び排水に循環されるので問題はない。そして前述したように約120分間を掛けて第2のフィルタ2が形成される。この成膜する工程では、極めて微弱な吸引圧力で吸引されているのでゲル化した微粒子14はいろいろな形状の隙間を形成しながら積層され、極めて膨潤度の低い柔らかなゲル膜の第2のフィルタ2となる。排水中の水はこの膨潤度の高いゲル膜を浸透して吸引されて第1のフィルタ1を通過して濾過水として取り出され、最終的に排水は濾過されることになる。
【0079】
すなわち、本発明では膨潤度の高いゲル膜で第2のフィルタ2を形成し、第1のフィルタ1から微弱な吸引圧力で吸引することで第1のフィルタ1に接するゲル膜に含まれる水分を脱水させてゲル膜を収縮させ、そのゲル膜に排水に接するゲル膜から水分を浸透させて補給して膨潤させることを繰り返して、第2のフィルタ2を水分のみ浸透させて濾過するのである。
【0080】
また、第1のフィルタ1には排水の底面から空気の気泡12を送り、第1のフィルタ1の表面に沿って排水に並行流を形成している。これは第2のフィルタ2が第1のフィルタ1の表面全体に均一に付着するためと第2のフィルタ2に隙間を形成して柔らかく付着するためである。具体的には1.8リットル/分のエアー流量に設定をしているが、第2のフィルタ2の膜質により選択される。
【0081】
次に濾過工程では、この第2のフィルタ2の表面に微弱な吸引圧力により白丸で示すゲル化した微粒子14が吸着されながら徐々に積層される。このときに精製水は第2のフィルタ2および更に積層される白丸で示すゲル化した微粒子14を浸透して第1のフィルタ1から濾過水として取り出される。すなわち排水に含まれる、例えばCMPの場合にはシリカ、アルミナあるいはセリア等の砥粒と砥粒により削られて発生する半導体材料屑、金属屑および/または絶縁膜材料屑等の加工屑はゲルとして第2のフィルタ2の表面に徐々に積層して捕獲され、水はゲル膜を浸透して第1のフィルタ1から濾過水として取り出せる。
【0082】
しかし、図3Bに示すように長時間濾過を続けると、第2のフィルタ2表面には厚くゲル膜が付着されるために上述した隙間もやがて目詰まりを起こし、濾過水は取り出せなくなる。このために濾過能力を再生するにはこの積層されたゲル膜を除去することが必要になる。
【0083】
続いて、図5を参照してより具体化された濾過装置を説明する。
【0084】
図5において、50は原水タンクである。このタンク50の上方には、排水供給手段としてパイプ51が設けられている。このパイプ51は被除去物が混入した流体をタンク50に導入する。例えば、半導体分野で説明すると、ダイシング装置、バックグラインド装置、ミラーポリッシング装置またはCMP装置から流れ出るコロイド溶液の被除去物が混入された排水(原水)が導かれる所である。尚、この排水は、CMP装置から流れる砥粒、砥粒により研磨または研削された屑が混入された排水として説明していく。
【0085】
原水タンク50に貯められた原水52の中には、第2のフィルタが形成されたフィルタ装置53が複数個設置される。このフィルタ装置53の下方には、例えばパイプに小さい孔を開けたような、また魚の水槽に使うバブリング装置の如き、散気管54が設けられ、ちょうどフィルタ装置53の表面を通過するようにその位置が調整されている。この散気管54はフィルタ装置53の底辺全体に渡って配置され、気泡をフィルタ装置53の全面に均一に供給出来るようになっている。55はエアーポンプである。ここでフィルタ装置53は図1に示す第1のフィルタ1、フレーム4、中空部5および第2のフィルタ2を指している。
【0086】
フィルタ装置53に固定されたパイプ56は、図1のパイプ8に相当するものである。このパイプ56は、フィルタ装置53で濾過された濾過流体が流れ、バルブV1を介して吸引を行うマグネットポンプ57に接続される。パイプ58はマグネットポンプ57からコントロールバルブCV1を介してバルブV3およびバルブV4に接続されている。またパイプ56のバルブV1の後に第1の圧力計59が設けられ、吸引圧力Pinを測定している。更にパイプ58のコントロールバルブCV1の後には流量計Fおよび第2の圧力計60が設けられ、流量計61で一定の流量になるように制御している。またエアーポンプ55からのエアー流量はコントロールバルブCV2で制御される。
【0087】
パイプ51から供給された原水52は、原水タンク50に貯められ、フィルタ装置53により濾過される。このフィルタ装置に取り付けられた第2のフィルタ2の表面は、気泡が通過し、気泡の上昇力や破裂により並行流を発生させ、第2のフィルタ2に吸着するゲル化した被除去物を動かし、フィルタ装置53の全面に均一に吸着させてその濾過能力が低下しないように維持されている。
【0088】
ここで前述したフィルタ装置53、具体的には原水タンク50の中に浸漬されるフィルタ装置53について図6および図7を参照しながら説明する。
【0089】
図6Aに示す符号30は、額縁の如き形状のフレームであり、図1のフレーム4と対応する。このフレーム30の両面には第1のフィルタ1(図1)となるフィルタ膜31、32が貼り合わされ固定されている。そしてフレーム30、フィルタ膜31、32で囲まれた内側の空間33(図1の中空部5と対応する)には、パイプ34(図1のパイプ8と対応する)を吸引することにより、フィルタ膜31、32により濾過される。そしてフレーム30にシールされて取り付けられているパイプ34を介して濾過水が取り出されている。もちろんフィルタ膜31、32とフレーム30は、排水がフィルタ膜以外から前記空間33に侵入しないように完全にシールされている。
【0090】
図6Aのフィルタ膜31、32は、薄い樹脂膜であるため、吸引されると内側に反り、破壊に至る場合もある。そのため、この空間をできるだけ小さくし、濾過能力を大きくするために、この空間33を大きく形成する必要がある。これを解決したものが、図6Bである。図6Bでは、空間33が9個しか示されていないが、実際は数多く形成される。また実際に採用したフィルタ膜31は、約0.1mm厚さのポリオレフィン系の高分子膜であり、図6Bに示す如く、薄いフィルタ膜が袋状に形成されており、図6BではFTで示した。この袋状のフィルタFTの中に、パイプ34が一体化されたフレーム30が挿入され、前記フレーム30と前記フィルタFTが貼り合わされている。符号RGは、押さえ手段であり、フィルタFTが貼り合わされた枠を両側から押さえるものである。そして押さえ手段の開口部OPからは、フィルタFTが露出している。詳細については、図7を参照して再度説明する。
【0091】
図6Cは、フィルタ装置53自身を円筒形にしたものである。パイプ34に取り付けられたフレームは、円筒形で、側面には開口部OP1、OP2が設けられている。開口部OP1と開口部OP2に対応する側面が取り除かれているため、開口部間には、フィルタ膜31を支持する支持手段SUSが設けられることになる。そして側面にフィルタ膜31が貼り合わされる。
【0092】
更に図7を参照して、図6Bのフィルタ装置53を詳述する。
【0093】
まず図6Bのフレーム30に相当する部分30aを図7Aおよび図7Bで説明する。部分30aは、見た限り段ボールの様な形状に成っている。0.2mm程度の薄い樹脂シートSHT1、SHT2が重なり、その間に縦方向にセクションSCが複数個設けられ、樹脂シートSHT1、SHT2,セクションSCで囲まれて空間33が設けられる。この空間33の断面は、縦3mm、横4mmから成る矩形であり、別の表現をすると、この矩形断面を持ったストローが何本も並べられ一体化されたような形状である。部分30aは、両側のフィルタ膜FTを一定の間隔で維持しているので、以下スペーサと呼ぶ。
【0094】
このスペーサ30aを構成する薄い樹脂シートSHT1,SHT2の表面には、直径1mmの孔HLがたくさん開けられ、その表面にはフィルタ膜FTが貼り合わされている。よって、フィルタ膜FTで濾過された濾過水は、孔HL、空間33を通り、最終的にはパイプ34から出ていく。
【0095】
またフィルタ膜FTは、スペーサ30aの両面SHT1、SHT2に貼り合わされている。スペーサ30aの両面SHT1,SHT2には、孔HLの形成されていない部分があり、ここに直接フィルタ膜FT1が貼り付けられると、孔HLの形成されていない部分に対応するフィルタ膜FT1は、濾過機能が無く排水が通過しないため、被除去物が捕獲されない部分が発生する。この現象を防止するため、フィルタ膜FTは、少なくとも2枚貼り合わされている。一番表側のフィルタ膜FT1は、被除去物を捕獲するフィルタ膜で、このフィルタ膜FT1からスペーサ30aの表面SHT1に向かうにつれて、フィルタ膜FT1の孔よりも大きな孔を有するフィルタ膜が設けられ、ここではフィルタ膜FT2が一枚貼り合わされている。依って、スペーサ30aの孔HLが形成されていない部分でも、間にフィルタ膜FT2が設けられているため、フィルタ膜FT1全面が濾過機能を有するようになり、フィルタ膜FT1全面に被除去物が捕獲され、第2のフィルタ膜が表裏の面SH1、SH2全面に形成されることになる。また図面の都合で、フィルタ膜SHT1、SHT2が矩形状のシートの様に表されているが、実際は図6Bに示すように袋状に形成されている。
【0096】
次に、袋状のフィルタ膜SHT1、SHT2、スペーサ30aおよび押さえ手段RGがどのように取り付けられているか、図7A、図7Cおよび図7Dを参照して説明する。
【0097】
図7Aは完成図であり、図7Cは、図7AのA−A線に示すように、パイプ34頭部からパイプ34の延在方向(縦方向)に切断した図を示し、図7Dは、B−B線に示すように、フィルタ装置35を水平方向に切断した断面図である。
【0098】
図7A、図7C、図7Dを見ると判るように、袋状のフィルタ膜FTに挿入されたスペーサ30aは、フィルタ膜FTも含めて4側辺が押さえ手段RGで挟まれている。そして袋状にとじた3側辺および残りの1側辺は、押さえ手段RGに塗布された接着剤AD1で固定される。また残りの1側辺(袋の開口部)と押さえ手段RGとの間には、空間SPが形成され、空間33に発生した濾過水は、空間SPを介してパイプ34へと吸引される。また押さえ金具RGの開口部OPには、接着剤AD2が全周に渡り設けられ、完全にシールされ、フィルタ以外から流体が侵入できない構造になっている。
【0099】
よって空間33とパイプ34は連通しており、パイプ34を吸引すると、フィルタ膜FTの孔、スペーサ30aの孔HLを介して流体が空間33に向かって通過し、空間33からパイプ34を経由して外部へ濾過水を輸送できる構造となっている。
【0100】
ここで用いるフィルタ装置53は、図7の構造を採用しており、フィルタ膜を取り付けるフレーム(押さえ金具RG)の大きさはA4サイズであり、具体的には縦:約19cm、横:約28.8cm、厚み:5〜10mmである。実際にはフィルタ装置53はフレームの両面に設けられるので、上記した2倍の面積(面積:0.109m)となる。しかし原水タンク50の大きさによりフィルタ装置の枚数や大きさは自由に選ばれ、求められる濾過量から決められる。
【0101】
続いて、図5に示す濾過装置を用いて実際の濾過方法を具体的に説明する。
【0102】
まず原水タンク50にコロイド溶液の被除去物が混入された排水をパイプ51を介して入れる。このタンク50の中に第2のフィルタ2が形成されていない第1のフィルタ1のみのフィルタ装置53を浸漬し、パイプ56を介してポンプ57で微弱な吸引圧力で吸引しながら排水を循環させる。循環経路はフィルタ装置53、パイプ56、バルブV1、ポンプ57、パイプ58、コントロールバルブCV1、流量計61、光センサー62、バルブV3であり、排水はタンク50から吸引されまたタンク50に戻される。
【0103】
循環させることによりフィルタ装置53の第1のフィルタ1(図6では31)には、第2のフィルタ2が成膜され、最終的には目的のコロイド溶液の被除去物が捕獲される様になる。
【0104】
すなわち、ポンプ57により第1のフィルタ1を介して排水を微弱な吸引圧力で吸引をすると、第1のフィルタ1に近づくにつれて被除去物の微粒子はゲル化して第1のフィルタ1の表面に吸着される。ゲル化した微粒子は第1のフィルタ1のフィルタ孔11より大きいものが徐々に第1のフィルタ1表面に吸着して積層され、ゲル膜より成る第2のフィルタ2を形成する。なおフィルタ孔11より径の小さいゲル化した微粒子は第1のフィルタ1を通過するが、第2のフィルタ2の成膜とともに排水中の水はこの隙間を通路として吸引されて第1のフィルタ1を通過して精製水として取り出され、排水は濾過されるようになる。
【0105】
光センサー62で濾過水に含まれる微粒子の濃度を監視し、微粒子が所望の混入率よりも低いことを確認して濾過を開始する。濾過が開始される時は、バルブV3が光センサー62からの検出信号で閉じられ、バルブV4が開かれて前述した循環経路は閉じられる。従って、バルブV4から精製水が取り出される。散気管54からは常時エアーポンプ55から供給される空気の気泡がコントロールバルブCV2で調整されてフィルタ装置53の表面に供給されている。
【0106】
そして連続して濾過が続けられると、原水タンク50の排水中の水は精製水としてタンク50の外に取り出されるので、排水中の被除去物の濃度は上がってくる。すなわち、コロイド溶液は濃縮されて粘度を増してくる。このために原水タンク50にはパイプ51から排水を補充して、排水の濃度の上昇を抑えて濾過の効率を上げる。しかし、フィルタ装置53の第2のフィルタ2表面にゲル膜が厚く付着して、やがて第2のフィルタ2は目詰まりを起こし、濾過が行えない状態になる。
【0107】
フィルタ装置53の第2のフィルタ2が目詰まりを起こすと、第2のフィルタ2の濾過能力の再生を行う。すなわち、ポンプ57を停止し、フィルタ装置53に加わる負の吸引圧力を解除する。
【0108】
図8に示すその模式図を参照して、その再生工程を更に詳述する。図8Aは濾過工程のフィルタ装置53の状態を示している。第1のフィルタ1の中空部5は微弱な吸引圧力によりは外側と比較すれば負圧となっているので、第1のフィルタ1は内側に窪んだ形状になっている。従って、その表面に吸着される第2のフィルタ2も同様に内側に窪んだ形状になっている。更に第2のフィルタ2の表面に徐々に吸着されるゲル膜も同様である。
【0109】
ところが、再生工程ではこの微弱な吸引圧力が停止されてほぼ大気圧に戻るので、フィルタ装置53の第1のフィルタ1は元の状態に戻る。これにより第2のフィルタ2およびその表面に吸着されたゲル膜も同様に戻る。この結果、まずゲル膜を吸着していた吸引圧力がなくなるので、ゲル膜はフィルタ装置53への吸着力を失うと同時に外側に膨らむ力を受ける。これにより、吸着したゲル膜は自重でフィルタ装置53から離脱を始める。更に、この離脱を進めるために散気管54からの気泡の量を2倍程度に増加させると良い。実験に依れば、フィルタ装置53の下端から離脱が始まり、雪崩の様に第1のフィルタ1表面の第2のフィルタ2のゲル膜が離脱し、原水タンク50の底面に沈降する。その後、第2のフィルタ2は前述した循環経路で排水を循環させて再度成膜を行うと良い。この再生工程で第2のフィルタ2は元の状態まで戻り、排水の濾過を行える状態まで復帰し、再び排水の濾過を行う。
【0110】
更に、この再生工程で中空部5に濾過水を逆流させると、第1に、第1のフィルタ1が元の状態に戻るのを助け且つ濾過水の静水圧が加わり更に外側に膨らむ力を加え、第2に、第1のフィルタ1の内側からフィルタ孔11を通して濾過水が第1のフィルタ1と第2のフィルタ2の境界にしみ出して第1のフィルタ1の表面から第2のフィルタ2のゲル膜が離脱するのを促進する。
【0111】
上述のように第2のフィルタ2を再生させながら濾過を続けると、原水タンク50の排水の被除去物の濃度が上昇し、やがて排水もかなりの粘度を有する。従って、排水の被除去物の濃度が所定の濃度を超えたら、濾過作業を停止し沈殿させるために放置する。するとタンク50の底に濃縮スラリーが貯まり、このゲルの濃縮スラリーをバルブ64を開けて回収する。回収された濃縮スラリーは圧縮または熱乾燥してその中に含まれる水を除去して更にその量を圧縮する。これにより産業廃棄物として扱われるスラリーの量は大幅に減少できる。
【0112】
図9を参照して、図5に示す濾過装置の運転状況を説明する。運転条件は前述したA4サイズのフィルタ装置53の1枚の両面(面積:0.109m)を用いたものである。初期流量は前述したように濾過効率の良い3cc/時間(0.08m/日)に設定し、再生後流量も同じに設定している。エアーブロー量は成膜および濾過時1.8L/分、再生時3L/分としている。Pinおよび再Pinは吸引圧力であり、圧力計59で測定される。Poutおよび再Poutはパイプ58の圧力であり、圧力計60で測定される。流量および再流量は流量計61で測定され、フィルタ装置53から吸引される濾過量を表している。
【0113】
図9で左側のY軸は圧力(単位:MPa)を示し、X軸に近づくほど負圧が大きくなることを示している。右側のY軸は流量(単位:cc/分)を示す。X軸は成膜からの経過時間(単位:分)を示す。
【0114】
本発明のポイントであるが、第2のフィルタ2の成膜工程、濾過工程および再生後の濾過工程において、流量および再流量は3cc/時間を維持するように制御している。このために成膜工程ではPinは−0.001MPaから−0.005MPaと極めて微弱の吸引圧力で柔らかく吸着されたゲル膜で第2のフィルタ2を形成している。
【0115】
次に、濾過工程ではPinは−0.005MPaから徐々に大きくして、一定の流量を確保しながら濾過を続ける。濾過は約1000分続けられ、やがて流量が減少し始めてときに再生工程を行う。これは第2のフィルタ2の表面にゲル膜が厚く付着して目詰まりを起こすためである。
【0116】
更に、第2のフィルタ2の再生が行われると、徐々に再Pinを大きくしながら一定の再流量で再度濾過を続ける。第2のフィルタ2の再生および再濾過は原水52が所定の濃度、具体的には濃縮度が5倍から10倍になるまで続けられる。
【0117】
また、上述した運転方法とは異なり、吸引圧力を濾過流量の多い−0.005MPaに固定して濾過を行う方法も採用できる。この場合は、第2のフィルタ2の目詰まりとともに濾過流量は徐々に減少するが、濾過時間を長く取れ且つポンプ57の制御が簡単となる利点がある。従って、第2のフィルタ2の再生は濾過流量が一定値以下に減少したときに行えば良い。
【0118】
図10Aは、CMP用スラリーの中に含まれる砥粒の粒径分布を示すものである。この砥粒は、Si酸化物から成る層間絶縁膜をCMPするものであり、材料はSi酸化物から成り、一般にシリカと呼ばれているものである。最小粒子径は約0.076μm、最大粒子径は、0.34μmであった。この大きな粒子は、この中の粒子が複数集まって成る凝集粒子である。また平均粒径は、約0.1448μmであり、この近傍0.13〜0.15μmで分布がピークとなっている。またスラリーの調整剤としては、KOHまたはNH3が一般的に用いられる。またpHは、約10から11の間である。
【0119】
具体的に、CMP用の砥粒はシリカ系、アルミナ系、酸化セリウム系、ダイヤモンド系が主にあり、他に酸化クロム系、酸化鉄系、酸化マンガン系、BaCO4系、酸化アンチモン系、ジルコニア系、イットリア系がある。シリカ系は、半導体の層間絶縁膜、P−Si、SOI等の平坦化、Al・ガラスディスクの平坦化に使用されている。アルミナ系は、ハードディスクのポリッシング、金属全般、Si酸化膜等の平坦化に使用されている。また酸化セリウムは、ガラスのポリッシング、Si酸化物のポリッシングとして、酸化クロムは、鉄鋼の鏡面研磨に使用されている。また酸化マンガン、BaCO4は、タングステン配線のポリッシングに使用されている。
【0120】
更には、酸化物ゾルと呼ばれ、このゾルは、シリカ、アルミナ、ジルコニア等、金属酸化物または一部水酸化物から成るコロイドサイズの微粒子が水または液体中に均一に分散されているモノで、半導体デバイスの層間絶縁膜やメタルの平坦化に使用され、またアルミ・ディスク等の情報ディスクにも検討されている。
【0121】
図10Bは、CMP排水が濾過され、砥粒が捕獲されていることを示すデータである。実験では、前述したスラリーの原液を、純水で50倍、500倍、5000倍に薄め、試験液として用意した。この3タイプの試験液は、従来例で説明したように、CMP工程に於いて、ウェハが純水で洗浄されるため、排水は、50倍〜5000倍程度になると想定し、用意された。
【0122】
この3つのタイプの試験液の光透過率を400nmの波長の光で調べると、50倍の試験液は、22.5%、500倍の試験液は、86.5%、5000倍の試験液は、98.3%である。原理的には、排水に砥粒が含まれていなければ、光は散乱されず、限りなく100%に近い数値をとるはずである。
【0123】
これら3つのタイプの試験液に前記第2のフィルタ膜13が形成されたフィルタを浸漬し濾過すると、濾過後の透過率は、3つのタイプとも99.8%となった。つまり濾過する前の光透過率よりも濾過後の光透過率の値が大きいため、砥粒は捕獲できている。尚、50倍希釈の試験液の透過率データは、その値が小さいため図面には出てこない。
【0124】
以上の結果から、本発明の濾過装置に設けたフィルタ装置53のゲル膜より成る第2のフィルタ2でCMP装置から排出されるコロイド溶液の被除去物を濾過すると、透過率で99.8%程度まで濾過できることが判った。
【0125】
図11を参照して再生回路を追加した具体化された濾過装置を説明する。なお、図5に示す濾過装置と同一構成要素は同一符号を付した。
【0126】
図11において、50は原水タンクである。このタンク50の上方には、排水供給手段としてパイプ51が設けられている。このパイプ51は被除去物が混入した流体をタンク50に導入する。例えば、半導体分野で説明すると、ダイシング装置、バックグラインド装置、ミラーポリッシング装置またはCMP装置から流れ出るコロイド溶液の被除去物が混入された排水(原水)が導かれる所である。尚、この排水は、CMP装置から流れる砥粒、砥粒により研磨または研削された屑が混入された排水として説明していく。
【0127】
原水タンク50に貯められた原水52の中には、第2のフィルタが形成されたフィルタ装置53が複数個設置される。このフィルタ装置53の下方には、例えばパイプに小さい孔を開けたような、また魚の水槽に使うバブリング装置の如き、散気管54がフィルタ装置53の底辺全体に渡って設けられ、ちょうどフィルタ装置53の表面を通過するようにその位置が調整されている。55はエアーポンプである。空気はエアーポンプ55から供給され、エアーの流量を制御するコントロールバルブCV2およびエアー流量計69を介して散気管54に導かれる。ここでフィルタ装置53は図1に示す第1のフィルタ1、フレーム4、中空部5および第2のフィルタ2を指している。
【0128】
フィルタ装置53に固定されたパイプ56は、図1のパイプ8に相当するものである。このパイプ56は、フィルタ装置53で濾過された濾過流体が流れ、バルブV1を介して吸引を行うマグネットポンプ57に接続される。パイプ58はマグネットポンプ57から第1のコントロールバルブCV1を介してバルブV3およびバルブV4に接続されている。またパイプ56のバルブV1の後に第1の圧力計59が設けられ、吸引圧力Pinを測定している。更にパイプ58の第1のコントロールバルブCV1の後には流量計61および第2の圧力計60が設けられ、流量計61で一定の濾過流量になるように制御している。
【0129】
また、バルブ58は光センサ62に接続され、光センサ62からは分岐したパイプ63、64に導かれる。パイプ63、64には光センサ62からの検出信号で開閉が切り換えられるバルブV3、V4が挿入され、パイプ63は濾過水をタンク50に戻し、パイプ64は濾過水を外部に取り出すようになっている。光センサー62は濾過水に含まれる微粒子の濃度を監視し、微粒子が所望の混入率よりも低いことを確認して濾過を開始する。濾過が開始される時は、バルブV3が光センサー62からの検出信号で閉じられ、バルブV4が開かれて精製水が外部に取り出される。
【0130】
また、補助タンク70はバルブV5によりパイプ58と接続され、濾過水を貯める働きがあり、一定量を超えるとオーバーフローしてタンク50にパイプ71で戻される。その底部にはバルブV2が設けられ、パイプ56と接続されている。この補助タンク70はタンク50の液面より10〜20cm程度高い位置に設けられ、第2フィルタの再生工程で利用される。
【0131】
更に、タンク50にはpH調節機65、加熱冷却機66が設けられ、特にCMP排水のpHを6〜7程度に調整をしたり、ゲル化を促進するために排水の温度を調整する。タンク50から排水がオーバーフローするのを防止するために液面計67で監視し、排水の流入量を調整する。
【0132】
更に、この濾過装置の運転を制御する制御装置68が設けられ、図11で点線で示すようにコントロールバルブCV1、CV2、流量計61、69、ポンプ57、圧力計59、60、光センサ62等が各工程毎に制御される。
【0133】
上述した濾過装置では、第2のフィルタの成膜工程、濾過工程、第2のフィルタの再生工程、再濾過工程、メンテナンス工程において、制御装置68からの制御で各バルブ等を開閉し、ポンプ57等の運転を制御している。以下に各工程毎にその運転状況を説明する。なお、
図12に各工程でのポンプ57,光センサ62、エアーポンプ55および各バルブの動作状態を示す。
【0134】
まず、原水タンク50にコロイド溶液の被除去物が混入された排水をパイプ51を介して入れる。このタンク50の中に第2のフィルタ2が形成されていない第1のフィルタ1のみのフィルタ装置53を所望の濾過流量を得られる枚数だけ間隔を設けて浸漬する。具体的には、10枚から40枚程度のフィルタ装置53が図示しないが支持手段に懸架される。当然フィルタ装置53の1枚の濾過面積によりこの枚数も異なるが、タンク50の大きさよりフィルタ装置53の必要な濾過面積総計は求められる。
【0135】
次に、第2のフィルタ2の成膜工程に移行する。パイプ56を介してポンプ57で微弱な吸引圧力で吸引しながらタンク50内の排水を循環させる。循環経路はフィルタ装置53、パイプ56、バルブV1、ポンプ57、パイプ58、コントロールバルブCV1、流量計61、光センサー62、バルブV3であり、排水はタンク50から吸引されまたタンク50に戻される。散気管54からはエアーポンプ55からコントロールバルブV2を通り供給される空気の気泡が上昇してフィルタ装置53の表面に供給されている。このとき、他のバルブ
V2、V4、V5、V6、Dは閉じられている。
【0136】
排水を循環させることによりフィルタ装置53の第1のフィルタ1(図6では31)には、第2のフィルタ2が成膜され、最終的には目的のコロイド溶液の被除去物が捕獲される様になる。すなわち、ポンプ57により第1のフィルタ1を介して排水を微弱な吸引圧力で吸引をすると、第1のフィルタ1に近づくにつれて被除去物の微粒子はゲル化して第1のフィルタ1の表面に吸着される。ゲル化した微粒子は第1のフィルタ1のフィルタ孔11より大きいものが徐々に第1のフィルタ1表面に吸着して積層され、ゲル膜より成る第2のフィルタ2を形成する。なおフィルタ孔11より径の小さいゲル化した微粒子は第1のフィルタ1を通過するが、第2のフィルタ2の成膜とともに排水中の水はこの隙間を通路として吸引されて第1のフィルタ1を通過して精製水として取り出され、排水は濾過されるようになる。
【0137】
このとき光センサー62で濾過水に含まれる微粒子の濃度を監視し、微粒子が所望の混入率よりも低いことを確認して濾過工程に移行する。
【0138】
続いて、第2のフィルタ2の成膜が完了すると、濾過工程に進む。濾過が開始されると、バルブV3が光センサー62からの検出信号で閉じられ、バルブV4が開かれて前述した循環経路は閉じられ、バルブV4から濾過水が取り出される。この工程では、流量計61で一定の濾過流量になるように制御装置68で制御され、第2のフィルタ2の目詰まりをできるだけ防いで濾過時間を長く保持できるように運転される。図9に示すように、ポンプ57の吸引圧力Pinは徐々に増加され、濾過流量を一定に保持している。なお、他の部分は成膜工程と同様の運転条件となっている。
【0139】
何らかの原因で第2のフィルタ2が破壊された場合は、光センサ62で微粒子の混入が検出されて、バルブV4が閉じられ、逆にバルブV3が開かれて濾過水はタンク50に戻される。すなわち、成膜工程に逆戻りをして第2のフィルタ2の修復を行い、正常に戻ると再び濾過工程に戻る。
【0140】
そして連続して濾過が続けられると、原水タンク50の排水中の水は濾過水としてタンク50の外に取り出されるので、排水中の被除去物の濃度は上がってくる。すなわち、コロイド溶液は濃縮されて粘度を増してくる。このために原水タンク50にはパイプ51から排水を補充して、排水の濃度の上昇を抑えて濾過の効率を上げる。しかし、フィルタ装置53の第2のフィルタ2表面にゲル膜が厚く付着して、やがて第2のフィルタ2は目詰まりを起こし、濾過が行えない状態になる。
【0141】
この第1フィルタ1の表面に第2のフィルタ2のゲル膜が厚く吸着されると、濾過流量の減少として流量計61で検知されて制御装置68により濾過工程から第2のフィルタの再生工程に移行する。
【0142】
まず、再生工程ではポンプ57を停止し、フィルタ装置53に加わる負の吸引圧力を解除する。同時に、バルブV2が開かれて補助タンク70に予め蓄えられた濾過水がバルブV1を介してパイプ56を逆流してフィルタ装置53の中空部5に送られる。
【0143】
従って、再生工程ではこの微弱な吸引圧力が停止されてほぼ大気圧に戻るので、フィルタ装置53の第1のフィルタ1は吸引圧力で窪んだ状態から元の状態に戻る。これにより第2のフィルタ2およびその表面に吸着されたゲル膜も同様に戻る。この結果、まずゲル膜を吸着していた吸引圧力がなくなるので、ゲル膜はフィルタ装置53への吸着力を失うと同時に外側に膨らむ力を受ける。更に、補助タンク70がタンク50液面より高い位置に設けられるので、補助タンク70からの濾過水の逆流によりその高低差による静水圧が加わり、フィルタ装置53の第1のフィルタ1および第2のフィルタ2は外側に膨らむ力が加わる。これにより、吸着したゲル膜は自重および静水圧でフィルタ装置53から離脱を始める。更に、この離脱を進めるために散気管54からの気泡の量を2倍程度に増加させると良い。実験に依れば、フィルタ装置53の下端から離脱が始まり、雪崩の様に第1のフィルタ1の表面に付着した第2のフィルタ2のゲル膜が離脱し、原水タンク50の底面に沈降する。続いて前述した循環経路で排水を循環させて第2のフィルタ2の成膜を行うと良い。この再生工程で第2のフィルタ2は元の状態まで戻り、排水の濾過を行える状態まで復帰し、再び排水の濾過を行う。このときにバルブV2を閉じてバルブV5を開き、補助タンク70に濾過水を貯めておき、次の再生工程に備える。
【0144】
この後に、再濾過工程に入り再び排水の濾過を開始する。運転条件は濾過工程と同様である。このように第2のフィルタ2を再生させながら何度も濾過を続けると、原水タンク50の排水の被除去物の濃度が上昇し、やがて排水もかなりの粘度を有する。従って、排水の被除去物の濃度が所定の濃度を超えたら、濾過作業を停止してメンテナンス工程に移行する。」
メンテナンス工程はパイプ56、58および補助タンク70にある濾過水を排出するステップと、タンク50内の排水および底部に貯まったゲルを排出するステップから構成される。
前のステップでは、ポンプ57およびエアーポンプ55を停止し、コントロールバルブCV1、バルブV1、V2、V5を開いて、パイプ56、58および補助タンク70にある濾過水をパイプ56に設けた排出用のバルブDより外部に排出する。
【0145】
また、後のステップでは凝集沈殿させるために放置してタンク50の底に濃縮スラリーを沈殿させ、このゲルの濃縮スラリーをバルブV6を開けて回収する。回収された濃縮スラリーは熱乾燥してその中に含まれる水を蒸発させて更にその量を圧縮する。これにより産業廃棄物として扱われるスラリーの量は大幅に減少できる。上澄みの排水は同様にバルブV6から排出され、続く濾過工程においてまたタンク50に戻される。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明のフィルタを説明する図である。
【図2】本発明のフィルタの動作原理を説明する図である。
【図3】本発明の第2のフィルタの成膜条件を説明する(A)断面図および(B)特性図である。
【図4】本発明の第2のフィルタの特性を説明する図である。
【図5】本発明の具体化された濾過装置を説明する図である。
【図6】本発明のフィルタ装置を説明する図である。
【図7】本発明の更に具体化されたフィルタ装置を説明する図である。
【図8】本発明のフィルタ装置の再生を説明する図である。
【図9】本発明の濾過装置の運転状況を説明する図である。
【図10】本発明の濾過特性を説明する図である。
【図11】本発明の更に具体化された濾過装置を説明する図である。
【図12】本発明の更に具体化された濾過装置の運転状況を説明する図である。
【図13】従来の濾過システムを説明する図である。
【図14】CMP装置を説明する図である。
【図15】CMP装置のシステムを説明する図である。
【符号の説明】
【0147】
1 第1のフィルタ
2 第2のフィルタ
4 フレーム
5 中空部
6 ポンプ
7 ろ液
11 フィルタ孔
50 原水タンク
52 原水
53 フィルタ装置
57 ポンプ
61 流量計
62 光センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイド溶液の被除去物を含む流体が収納されるタンクと、
前記タンク内に浸漬される第1のフィルタとその表面に吸着されるゲル膜より成る第2のフィルタとで形成されるフィルタ装置と、
前記フィルタ装置に接続された第1のパイプを介して前記流体を吸引するポンプと、
前記ポンプからの濾過流体を前記タンク外に取り出す第2のパイプとを備え、
前記第2のフィルタが目詰まりを起こして濾過流量が減じる際に、前記ポンプを停止して前記フィルタ装置に加えた吸引圧力を無くして前記第2のフィルタ表面に吸着されたゲルを離脱させ、前記ゲルを前記タンクの底部に沈殿させて回収することを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記第2のフィルタは前記被除去物から形成されるゲル膜であることを特徴とする請求項1記載の濾過装置。
【請求項3】
前記ゲルの濃縮スラリーは前記タンクの底部に設けたバルブから外部に排出されて回収されることを特徴とする請求項1記載の濾過装置。
【請求項4】
前記被除去物は主に0.15μm以下の微粒子から成ることを特徴とした請求項1に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記被除去物はCMPスラリーから成ることを特徴とした請求項1に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記被除去物はCMPスラリーおよびCMP加工時に発生する加工屑から成ることを特徴とした請求項1に記載の濾過装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−870(P2007−870A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256616(P2006−256616)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【分割の表示】特願2001−334302(P2001−334302)の分割
【原出願日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【出願人】(501423757)三洋アクアテクノ株式会社 (2)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】