説明

濾過装置

【課題】磁性粒濾材と磁石を用い、より高精度の濾過性能を発揮することができる濾過装置を提供する。
【解決手段】この濾過装置10は、濾過槽11と、濾材ユニット12と、磁石19などを備えている。濾材ユニット12は、濾材収容ケース30と、多数の磁性粒濾材31とを含んでいる。磁石19は、第1の位置と第2の位置とにわたって移動可能である。第1の位置では、磁性粒濾材31に磁界を与えて磁性粒濾材31どうしが磁気的に吸着される。第2の位置では、磁性粒濾材31どうしの磁気的な吸着が解除される。濾材収容ケース30は、非磁性材料からなる非磁性メッシュ部材35,36と、磁性材料からなる磁力増強プレート40とを含んでいる。磁力増強プレート40は、磁石19が前記第1の位置にあるとき、磁性粒濾材31と非磁性メッシュ部材35,36とを間に挟んで磁石19と水平方向に対向する位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を含むダーティ液を濾過するための濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば精密な加工を行う工作機械では、加工部の潤滑あるいは冷却のためにクーラント等の液が使用されている。この種の液はワークの加工に伴って切り粉等が混入するばかりでなく、ダスト、カーボンなどの微粒子も混入することもあって次第に汚れてゆき、ダーティ液となることが避けられない。
【0003】
ダーティ液を濾過するために、工作機械から生じる切り屑を濾材として利用し、この濾材を電磁コイルによって磁化させることにより、ダーティ液中の磁性体不純物を捕捉するフィルタ装置が提案されている。(下記特許文献1参照)
特許文献1のフィルタ装置は、濾材として切り屑を用いるため、濾過精度のばらつきが大きい。しかも濾材に用いる切り屑の表面状態がきわめて荒いため、濾過能力が低下したときに、濾過能力を回復させるために濾材を洗浄することが困難である。このため濾材の切り屑を頻繁に交換する必要があるという問題がある。
【0004】
本発明者達は、洗浄の容易なスチールボールなどからなる球形の磁性金属球を濾材に用い、磁石によって磁性金属球を吸着し固定する濾過装置を開発した。この濾過装置は濾過精度が高く、しかも濾材の洗浄が容易である。(下記特許文献2参照)
【特許文献1】特開平11−77479号公報
【特許文献2】特開2007−105706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁性金属球を用いる濾過装置の濾材ユニットは、濾材収容ケースと、濾材収容ケースの内部に収容された多数の磁性金属球とを有している。濾材収容ケースは鉄製のパンチングメタル(磁性体)からなる上下一対のメッシュ部材と、メッシュ部材を囲むステンレス鋼製の枠部材などによって構成されている。しかし本発明者達が鋭意研究したところ、従来の濾材ユニットにおいて改善すべき余地が見出された。
【0006】
すなわち磁性金属球を用いる従来の濾材ユニットにおいて、磁力が弱い磁石が使用された場合、磁石の近くでは磁性金属球を十分吸着できても、磁石から離れた位置では磁性金属球の吸着が不十分になりやすく、その結果、磁石から離れた位置では除去対象物を捕捉する能力が低いことが判った。例えば従来の濾過装置では、磁石から最も離れた位置の磁力が磁石近傍の磁力の4分の1程度になることがあり、所望の濾過精度を発揮できない懸念がある。このため、より大形で強力な磁石を使用する必要があったが、大形で強力な磁石は濾材ユニットに出し入れする際に大きな駆動エネルギーが必要であり、駆動機構が大形し、消費エネルギーも大きいという問題があった。
【0007】
従って本発明の目的は、磁性粒濾材と磁石を用い、より高精度の濾過性能を発揮することができる濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の濾過装置は、除去すべき微粒子を含むダーティ液が導入される濾過槽と、前記濾過槽の内部に収容される濾材ユニットと、前記濾材ユニットに磁界を与える磁石とを有する濾過装置において、前記濾材ユニットは、濾材収容ケースと、該濾材収容ケースの内部に収容された磁性材料からなる多数の磁性粒濾材とを有している。前記磁石は、前記濾材ユニットに対し第1の位置と第2の位置とに相対移動可能であり、前記第1の位置において前記磁性粒濾材に磁界を与えることによって前記磁性粒濾材どうしを磁気的に吸着させて互いに固定し、前記第2の位置において前記磁性粒濾材どうしの磁気的な吸着を解除する。前記濾材収容ケースは、前記磁性粒濾材を支持しかつ前記ダーティ液を通すことのできる多数の流通孔を有する非磁性材料からなる非磁性メッシュ部材と、磁性材料からなる磁力増強プレートとを具備している。磁力増強プレートは、前記磁石が前記第1の位置にあるとき、該磁石に対して前記非磁性メッシュ部材と前記磁性粒濾材とを間に挟んで前記磁石と水平方向に対向するよう前記非磁性メッシュ部材の端部に設けられている。
前記非磁性メッシュ部材は、例えば平坦な形状のステンレス鋼からなるプレートに、前記磁性粒濾材の直径よりも開口幅が小さい多数の流通孔を形成したものである。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記濾過槽の内部に第1の磁石と第2の磁石とが水平方向に間隔をあけて配置され、前記第1の磁石と第2の磁石の間に、第1の濾材ユニットと第2の濾材ユニットとが、互いに前記磁力増強プレートを磁気的に接続した状態で水平方向に隣り合って配置されている。
【0010】
また、前記第1の磁石と前記濾過槽の一方の側壁との間に、第3の濾材ユニットが前記磁力増強プレートを前記一方の側壁に磁気的に接続した状態で配置され、前記第2の磁石と前記濾過槽の他方の側壁との間に、第4の濾材ユニットが前記磁力増強プレートを前記他方の側壁に磁気的に接続した状態で配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、磁性粒濾材を収容する濾材収容ケースが、非磁性材料からなる非磁性メッシュ部材と、磁性材料からなる磁力増強プレートとを備えていることにより、磁石から遠い位置にある磁性粒濾材も磁石の磁力によって十分吸着させることができる。このため濾材ユニットの端部付近の濾過精度が低下することを防止でき、濾過精度が向上する。しかも磁石の磁力を濾材ユニットの全体にわたって有効に活用できるため、必要以上に大形で強力な磁石を用いることがなくなり、例えば磁石を動かすための駆動機構等の省エネルギー化に寄与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態について、図1〜図7を参照して説明する。
図1に示された濾過装置10は、濾過槽11と、濾材ユニット12と、磁石ユニット13とを備えている。濾過槽11の材料は鉄系などの磁性材料である。濾過槽11の上部にカバー筐体14が設けられている。濾過槽11の内部に、ダーティ室15と、クリーン室16とが形成されている。
【0013】
ダーティ室15は、濾材ユニット12の下側に位置している。クリーン室16は濾材ユニット12の上側に位置している。クリーン室16の上部は隔壁17によって気密に閉塞されている。隔壁17の下方に磁石収納室18が形成されている。磁石収納室18は上下方向に延びている。磁石収納室18に磁石19が収容されている。
【0014】
濾過槽11の下部に、ダーティ室15に開口するダーティ液入口20が形成されている。濾過すべき微粒子を含むダーティ液は、このダーティ液入口20からダーティ室15に導入される。濾過槽11の上部に、クリーン室16に開口するクリーン液出口21が形成されている。
【0015】
図2に示すように、クリーン液出口21にクリーン液管22が接続されている。このクリーン液管22に、大気圧開放手段であるエアバルブ23を備えたエア供給管24が接続されている。エアバルブ23を開放することにより、クリーン室16を大気に開放することができる。なお、エア供給管24に圧搾空気の供給源が接続されていてもよい。その場合には、クリーン室16内に圧搾空気を供給することができる。濾過槽11の底部すなわちダーティ室15の底部に、ドレンバルブ25を備えたドレンポート26が設けられている。
【0016】
濾材ユニット12は、以下に説明するように構成されている。
図3は、濾材ユニット12を拡大して示す断面図である。この濾材ユニット12は、以下に説明する濾材収容ケース30と、濾材収容ケース30の内部に収容された多数の磁性粒濾材31とを有している。
【0017】
磁性粒濾材31の一例は、鉄等の磁性材料からなる球形の金属球であり、磁界を与えたときに図4に示すように互いに吸着し合うようになっている。また磁界を与えない自由状態のもとでは、磁力による吸着が解かれ、各磁性粒濾材31が互いにある程度動くことが可能である。磁性粒濾材31の表面は滑らかであり、洗浄しやすい形態である。
【0018】
濾材収容ケース30に収容される全ての磁性粒濾材31の直径は互いに同等でよいが、直径が異なる複数種類の磁性粒濾材31を混ぜてもよい。また、球以外の形状の磁性粒濾材が用いられてもよい。要するに磁性粒濾材31は、磁石ユニット13によって磁界を与えたときに磁性粒濾材31どうしが動かないように吸着し合い、磁界を除いたときに磁性粒濾材31どうしの吸着が解除されるように、磁性材料によって構成されていればよいから、形状は問わない。
【0019】
濾材収容ケース30は、ステンレス鋼(SUS304)等の非磁性材料からなる上下一対の非磁性メッシュ部材35,36と、非磁性メッシュ部材35,36の周囲に設けられた枠部材37と、非磁性メッシュ部材35,36の端部に設けられた磁力増強プレート40によって構成されている。枠部材37は非磁性メッシュ部材35,36と同様にステンレス鋼(SUS304)等の非磁性材料からなる。非磁性メッシュ部材35,36間に、磁性粒濾材31が例えば上下方向に複数列(例えば3列)並んだ状態で収納されている。
【0020】
非磁性メッシュ部材35,36に、それぞれ多数の流通孔35a,36aが形成されている。流通孔35a,36aの開口幅は、磁性粒濾材31の直径よりも小さい。一例として、磁性粒濾材31の直径が4mm前後の場合、流通孔35a,36aの開口幅は2〜3mmである。これにより、磁性粒濾材31が流通孔35a,36aを通り抜けることを回避できる。下側の非磁性メッシュ部材36の上に磁性粒濾材31が乗り、磁性粒濾材31が支持される。
【0021】
非磁性メッシュ部材35,36の一例は、平坦な形状のステンレス鋼からなるプレートに前記流通孔35a,36aを形成したいわゆるパンチングメタルであるが、パンチングメタル以外に、平坦な網状部材、すのこ、格子状の部材、その他の形態であってもよい。要するに非磁性メッシュ部材35,36は、収容された磁性粒濾材31を支持することができ、かつ、液が上下方向に通り抜けることができるものであればよい。
【0022】
本実施形態では水平方向に平坦な形状の非磁性メッシュ部材35,36を用いているため、各磁性粒濾材31どうしの位置決めが容易である。このため、非磁性メッシュ部材36の上に複数列の磁性粒濾材31を整然と並ばせることができる。
【0023】
濾材ユニット12の端部、すなわち磁石19から遠い側の端部に、磁力増強プレート40が設けられている。この磁力増強プレート40は、例えば厚さが3mm前後の鉄等の磁性材料からなり、濾材ユニット12の幅方向の全長W(図2に示す)にわたって設けられている。磁力増強プレート40は、磁石19が図1に示す第1の位置にあるときに、磁石19に対し、非磁性メッシュ部材35,36と磁性粒濾材31を間に挟んで水平方向に磁石19と対向する位置に設けられている。言い換えると、磁石19と磁力増強プレート40との間に、磁性粒濾材31と非磁性メッシュ部材35,36が設けられている。
【0024】
磁石19は磁石収納室18に収容され、上下方向に移動することができる。磁石19の一例は、強力な永久磁石である。この磁石19は、濾材ユニット12に対し、図1に示す第1の位置と、図5に示す第2の位置にわたって移動する。磁石19が第1の位置にあるとき、磁性粒濾材31に磁界が与えられることにより、磁性粒濾材31どうしが磁気的に吸着して固定される。磁石19が第2の位置に上昇すると、磁性粒濾材31どうしの磁気的な吸着が解かれ、磁性粒濾材31がある程度動きうるようになる。
【0025】
磁石19を前記第1の位置(図1)と第2の位置(図5)とに移動させるための保持手段として、それぞれの磁石19に連結された昇降ロッド50と、各昇降ロッド50の上端部どうしをつなぐ水平方向の連結部材51と、連結部材51に固定されて上方に延びる操作部材52などが設けられている。昇降ロッド50は磁石収納室18に挿入され、磁石19と共に上下方向に移動することができる。操作部材52は手動あるいは図示しないアクチュエータによって上下方向に駆動され、磁石19を前記第1の位置と第2の位置とに移動させることができるように構成されている。
【0026】
本実施形態の場合、図1に示されるように、濾過槽11の内部に一対の磁石(第1の磁石19aと第2の磁石19b)が水平方向に間隔をあけて並んで配置されている。そして第1の磁石19aと第2の磁石19bとの間に、第1の濾材ユニット12aと第2の濾材ユニット12bが配置されている。これら濾材ユニット12a,12bの構造は図3に示す濾材ユニット12と同じであり、各濾材ユニット12a,12bは、それぞれ、磁性粒濾材31と、上下一対の非磁性メッシュ部材35,36と、磁力増強プレート40とを有している。
【0027】
第1の濾材ユニット12aの磁力増強プレート40と、第2の濾材ユニット12bの磁力増強プレート40とが互いに当接している。つまり第1の濾材ユニット12aと第2の濾材ユニット12bは、各磁力増強プレート40が磁気的に接続した状態で、水平方向に隣り合って配置されている。
【0028】
第1の磁石19aと、濾過槽11の一方の側壁11aとの間に、第3の濾材ユニット12cが配置されている。第3の濾材ユニット12cの構造は図3に示す濾材ユニット12と同じである。第3の濾材ユニット12cの磁力増強プレート40は、一方の側壁11aに当接している。つまり第3の濾材ユニット12cは、磁力増強プレート40が濾過槽11の側壁11aに磁気的に接続した状態で、第1の磁石19aと側壁11aとの間に配置されている。
【0029】
第2の磁石19bと、濾過槽11の他方の側壁11bとの間に、第4の濾材ユニット12dが配置されている。第4の濾材ユニット12dの構造は、図3に示す濾材ユニット12と同じである。第4の濾材ユニット12dの磁力増強プレート40は、他方の側壁11bに当接している。つまり第4の濾材ユニット12dは、磁力増強プレート40が濾過槽11の側壁11bに磁気的に接続した状態で、第2の磁石19bと側壁11bとの間に配置されている。このようにして4つの濾材ユニット12a〜12dが水平方向に並んでいる。
【0030】
図6と図7は、前記濾過装置10を有する濾過設備60の概要を示している。この濾過設備60は、ダーティタンク61と、クリーンタンク62と、前記濾過装置10と、スラッジ処理装置63などを備えている。図6に示すように、濾過すべき微粒子を含むダーティ液Q1は、ポンプ65と配管66およびバルブ67を経て、濾過装置10のダーティ液入口20に供給される。濾過装置10のクリーン室16内のクリーン液Q2は、バルブ70と配管71を経てクリーンタンク62に回収される。
【0031】
ダーティ液Q1を濾過するための濾過工程では、図6に示すようにバルブ67,70を開弁させ、ドレンバルブ25を閉じる。そしてダーティタンク61内のダーティ液Q1をポンプ65によって濾過装置10のダーティ室15に供給する。また、磁石ユニット13の磁石19を第1の位置(図1)に移動させることにより、磁性粒濾材31に磁界を与える。
【0032】
この磁界によって、図4に示すように磁性粒濾材31どうしが互いに接した状態で固定され、磁性粒濾材31の接触点Cに向かって、奥が狭い「くさび状」の狭小な隙間Gが形成される。ダーティ液Q1が磁性粒濾材31の接触点C付近を流れる際に、この隙間Gの奥などに微粒子Sが入り込み、微粒子Sが捕捉される。微粒子Sが磁性体の場合には、磁化した磁性粒濾材31によって、微粒子Sが磁性粒濾材31に吸着する。こうして、ダーティ室15に供給されたダーティ液Q1が、濾材ユニット12(12a〜12d)を下から上に向かって通ることにより濾過され、クリーン室16に流入する。
【0033】
磁性粒濾材31に捕捉された微粒子Sの量が増すと、濾過性能が低下する。濾過性能を回復させるために洗浄工程を実施する。洗浄工程では、図7に示すようにバルブ67,70を閉じ、エアバルブ23(図2に示す)を開弁させることにより、クリーン室16の内部を大気に開放する。またポンプ65を停止させ、ドレンバルブ25を開弁させる。そして磁石19を第2の位置(図5)に移動させることにより、磁性粒濾材31に与えていた磁界を解除し、磁性粒濾材31の吸着を解く。
【0034】
こうすることにより、クリーン室16内のクリーン液Q2が、自重によって濾材ユニット12(12a〜12d)を通りながらダーティ室15に向かって落下する。このとき、エア供給管24(図2に示す)から圧搾エアをクリーン室16に供給することにより、クリーン室16内のクリーン液Q2をエアの圧力によって速やかにダーティ室15に向けて押し出してもよい。
【0035】
クリーン室16からダーティ室15に向かってクリーン液Q2が流れることにより、磁性粒濾材31の表面がクリーン液Q2によって洗い流される。ドレンポート26からスラッジ処理装置63に排出された微粒子等を大量に含むスラッジは、スラッジ処理装置63によって液から分離されて回収される。
【0036】
以上説明したように本実施形態の濾過装置10は、濾過能力が低下したときに、必要に応じて濾過槽11内のクリーン液Q2を利用して磁性粒濾材31の洗浄を容易にかつ迅速に行うことができ、短時間に濾過能力を回復することができる。しかも濾過装置10自体をそのまま利用して洗浄を行うことができるため、ランニングコストが安くつく。なお前記濾過工程と洗浄工程とを、タイマによって自動的に切り替えて濾過装置10を運転するようにしてもよい。
【0037】
本実施形態の濾過装置10は、磁性粒濾材31を収容する濾材収容ケース30が、非磁性材料からなる非磁性メッシュ部材35,36と、磁性材料からなる磁力増強プレート40とを備えていることにより、磁石19から遠い位置にある磁性粒濾材31どうしも磁石19の磁力によって十分吸着させることができる。このため濾材ユニット12の各部の濾過精度のばらつきを小さくすることができ、濾過精度が向上する。しかも磁石19の磁力を濾材ユニット12の全体にわたって有効に活用できるため、必要以上に大形で強力な磁石を用いることがなくなり、磁石19を動かすための駆動機構等の省エネルギー化に寄与することができる。
【0038】
本実施形態の濾材ユニット12の磁性粒濾材31に作用する磁力を測定したところ、図2において磁石19の近傍の測定点P1の磁力が5200ガウス、中間の測定点P2が2750ガウス、磁石19から最も離れた測定点P3が2200ガウスであった。この場合、磁石19から最も遠い位置でも、磁石19の近くの35〜40%前後の磁力を得ることができ、高精度の濾過に適した吸着力を得ることができた。
【0039】
これに対し磁力増強プレート40を備えていない比較例では、磁石19の近傍の測定点P1の磁力が5000ガウス、中間の測定点P2が2100ガウス、磁石から最も離れた測定点P3では1100ガウスであった。この比較例の場合、磁石19から最も遠い位置では、磁石19の近くの20%前後の磁力しか得ることができず、磁力のばらつきが大きかった。
【0040】
メッシュ部材35,36が非磁性材料ではなく鉄等の磁性材料からなる場合には、磁石19から遠い位置の磁力がさらに低下し、濾過精度が劣るものとなった。所望の濾過性能を得るには、濾材ユニット12の端部に前記磁力増強プレート40を設けるとともに、少なくとも下側のメッシュ部材36に非磁性材料を用いる必要がある。
【0041】
なお本発明を実施するに当たって、濾過槽や磁性粒濾材、磁石、非磁性メッシュ部材、磁気増強プレート等をはじめとする濾過装置の構成要素を、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜に変更して実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る濾過装置の縦断面図。
【図2】図1中のF2−F2線に沿う濾過装置の縦断面図。
【図3】図1に示された濾過装置の濾材ユニットを拡大して示す断面図。
【図4】図1に示された濾過装置の磁性粒濾材の濾過時の作用を示す側面図。
【図5】図1に示された濾過装置の磁石が上昇した状態の縦断面図。
【図6】図1に示された濾過装置を備えた濾過設備の濾過時の状態を模式的に示す断面図。
【図7】図1に示された濾過装置を備えた濾過設備の洗浄時の状態を模式的に示す断面図。
【符号の説明】
【0043】
10…濾過装置
11…濾過槽
12…濾材ユニット
15…ダーティ室
16…クリーン室
19…磁石
30…濾材収容ケース
31…磁性粒濾材
35,36…非磁性メッシュ部材
35a,36a…流通孔
40…磁力増強プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
除去すべき微粒子を含むダーティ液が導入される濾過槽と、
前記濾過槽の内部に収容される濾材ユニットと、
前記濾材ユニットに磁界を与える磁石と、
を有する濾過装置において、
前記濾材ユニットは、濾材収容ケースと、該濾材収容ケースの内部に収容された磁性材料からなる多数の磁性粒濾材とを有し、
前記磁石は、前記濾材ユニットに対し第1の位置と第2の位置とに相対移動可能で前記第1の位置において前記磁性粒濾材に磁界を与えることによって前記磁性粒濾材どうしを磁気的に吸着させて互いに固定し、前記第2の位置において前記磁性粒濾材どうしの磁気的な吸着を解除し、
前記濾材収容ケースは、
前記磁性粒濾材を支持しかつ前記ダーティ液を通すことのできる多数の流通孔を有する非磁性材料からなる非磁性メッシュ部材と、
磁性材料からなり、前記磁石が前記第1の位置にあるとき該磁石に対して前記非磁性メッシュ部材と前記磁性粒濾材を間に挟んで水平方向に対向するよう前記非磁性メッシュ部材の端部に設けられた磁力増強プレートと、
を具備したことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記非磁性メッシュ部材は、平坦な形状のステンレス鋼からなるプレートに前記磁性粒濾材の直径よりも開口幅が小さい多数の流通孔を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記濾過槽の内部に第1の磁石と第2の磁石とが水平方向に間隔をあけて配置され、
前記第1の磁石と第2の磁石の間に、第1の濾材ユニットと第2の濾材ユニットとが、互いに前記磁力増強プレートを磁気的に接続した状態で水平方向に隣り合って配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記第1の磁石と前記濾過槽の一方の側壁との間に、第3の濾材ユニットが前記磁力増強プレートを前記一方の側壁に磁気的に接続した状態で配置され、前記第2の磁石と前記濾過槽の他方の側壁との間に、第4の濾材ユニットが前記磁力増強プレートを前記他方の側壁に磁気的に接続した状態で配置されていることを特徴とする請求項3に記載の濾過装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−50829(P2009−50829A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222642(P2007−222642)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(594204756)株式会社ブンリ (11)
【Fターム(参考)】