説明

火災報知システム

【課題】同一感知器回線に接続した2報目以降に発報した火災感知器を特定できるようにする。
【解決手段】受信機から引き出された感知器回線に複数の火災感知器を接続したP型の火災報知システムに於いて、火災感知器は、火災を検出して発報した際に火災発報信号とアドレスコード号を順次出力する発報制御部と、火災発報信号が出力された場合に第1の電圧変化によって共通の火災信号を送信する第1スイッチング回路と、アドレスコード信号が出力された場合に第2の電圧変化によってアドレス信号を送信する第2スイッチング回路とを備え、受信機は、共通の火災信号を受信して警報すると共にアドレス信号を受信して、感知器回線に接続した2報目以降に発報した発報感知器を識別する受信制御部を備え、発報制御部は、感知器回線に第2の電圧変化がない時間帯に自己のアドレス信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信機から引き出された感知器回線に複数の火災感知器を接続し、回線単位に火災感知器の発報を受信して警報する火災報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、P型として知られた火災報知システムにあっては、受信機から引き出された感知器回線に複数の火災感知器を接続し、回線単位に火災感知器からの発報信号を受信して火災を警報するようにしている。
【0003】
一方、R型として知られた火災報知システムにあっては、受信機から引き出された伝送路に、伝送機能を備えた中継器やアナログ火災感知器等の端末装置を接続し、火災検出時には、例えば端末装置からの火災割込みに基づき、検索コマンドを発行して発報した端末装置のアドレスを特定し、火災発生アドレスを表示すると共に、特定した端末装置から火災データを収集して監視するようにしている。
【0004】
このように、火災を検出した火災感知器や中継器のアドレスが分かると、適切な避難誘導や消火活動が可能となり、特に規模の大きな設備の火災監視には不可欠な機能となっている。
【0005】
しかし、P型の火災報知システムにおいては、受信機ではどの感知器回線が火災発報したかが判るが、発報した感知器回線に接続された複数の感知器の中のどの感知器が発報したのかは判らない。
【0006】
そこで、近年、P型の火災報知システムについても、発報した火災感知器からアドレス信号を送信して発報した火災感知器を特定できるようにしている。図8は従来のP型火災報知システムにおける、火災発報時の感知器回線電圧と火災感知器のスイッチング回路のタイムチャートである。
【0007】
同じ感知器回線に接続している複数の火災感知器のうち、例えばアドレスNo.3を設定した火災感知器が時刻t1で火災を検出して発報したとすると、発報した火災感知器に設けているスイッチング回路をオンすることで感知器回線に共通の火災信号としての発報電流を流し、このため図8(A)に示すように感知器回線の電圧が監視時の例えば24Vから10Vに低下する。
【0008】
続いて、発報した火災感知器は、図8(B)に示すようにスイッチング回路のアドレスNo.3を示すスイッチング動作によりアドレス信号を送信し、これにより図8(A)に示すように感知器回線電圧は10Vと24Vとの間で変化する。
【0009】
受信機にあっては、時刻t1で火災発報したアドレスNo.3の火災感知器から送信された共通の火災信号、即ち感知器回線の電圧低下を検知して警報を行い、火災の共通信号に続いて受信されるアドレス信号、即ち感知器回線の電圧変化から発報した火災感知器のアドレスを特定して火災発生地区等の必要な表示を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−184571号公報
【特許文献2】特開2004−38647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の、発報した火災感知器から共通の火災信号に加えてアドレス信号を送信するようにしたP型火災報知システムにあっては、最初に火災発報した1報目の火災感知器を特定することは可能であるが、その後に同一感知器回線に接続している他の火災感知器が発報する2報目以降については、火災感知器を特定することができないという問題がある。
【0012】
本発明は、同一感知器回線に接続した2報目以降に発報した火災感知器を特定できるようにしたP型の火災報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、本発明は次のように構成する。本発明は、複数の火災感知器を接続した感知器回線に流れる電流の変化による感知器回線端子間の電圧変化に基づいて火災を報知する受信機を備えた火災報知システムに於いて、火災感知器は、火災を検出して発報した際に火災発報信号を出力し、続いて自己のアドレスコード信号を出力する発報制御部と、火災発報信号が入力した場合に、感知器回線に第1の電流を与えることによって感知器回線端子間に第1の電圧変化を発生させ、受信機に複数の火災感知器に共通の火災信号を送信する第1スイッチング回路と、アドレスコード信号が入力した場合に、感知器回線に第2の電流を与えることによって、感知器回線端子間に第2の電圧変化を発生させ、受信機に複数の火災感知器毎に異なるアドレス信号を送信する第2スイッチング回路と、を備え、受信機は、火災信号を受信して火災警報を出力すると共にアドレス信号を受信して発報した火災感知器の識別情報を出力する受信制御部と、火災警報及び識別情報を表示可能な表示部と、を備え、第1の電圧変化は、通常時の感知器回線の端子間電圧に対し所定の電圧低下となる定常変化であり、第2の電圧低下は、発報制御部からのアドレスコード信号に基づくパルス変化であり、発報制御部は、火災発報信号を出力した後の感知器回線端子間に第2の電圧変化がない時間帯に、第2のスイッチング回路に対してアドレスコード信号を出力することを特徴とする。
【0014】
こここで、感知器回線に接続される全ての火災感知器が火災信号を送信した場合の、第1の電圧変化と第2の電圧変化とを加えた総電圧変化が、通常時の前記感知器回線の端子間電圧より小さくなるようにし、また、総電圧変化時の感知器回線の端子間電圧が火災感知器の最低作動電圧より高くなるようにする。
【0015】
発報制御部は、アドレスコード信号の出力を繰り返し、受信制御部は、火災信号の受信後のアドレス信号を受信していない時間帯に、第1の電圧変化から火災感知器の発報台数を判定する。
【0016】
また、受信制御部は、第1の電圧変化によって判定した火災感知器の発報台数と受信したアドレス信号によって識別した火災感知器の発報台数とを比較して、一致した場合に火災警報を出力し、一致しない場合には前記アドレス信号の受信障害報を出力し、表示部は、受信障害報を表示する。
【0017】
また、受信制御部は、火災感知器の発報台数が一致しない場合には受信障害報と共に火災警報を出力し、更に、最後の火災信号を受信してから所定時間内に受信したアドレス信号によって火災感知器の発報台数を識別する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、火災感知器が感知器回線に所定の電圧低下を発生させて火災信号を送信すると共に、感知器回線の端子間電圧にパルス変化がないタイミングで感知器回線にパルス状の電圧変化を発生させて自己のアドレス信号を送信することで、同じ感知器回線に接続している複数の火災感知器が発報した場合でも、受信機は発報した火災感知器を識別することができる。
【0019】
また、火災感知器の各々が電圧低下を発生させて火災信号を送信することで、同じ感知器回線に接続している複数の火災感知器が発報した際に、受信機は、発報した何れかの火災感知器の識別に失敗した場合でも、複数の火災信号による感知器回線の電圧変化量によって発報した火災感知器の台数を知ることができる。
【0020】
また、感知器回線に接続されている全ての火災感知器が火災信号を送信すると共に、何れかの火災感知器がアドレス信号を送信している状態で、感知器回線の端子間電圧が火災感知器の最低作動電圧より高くなるように火災信号とアドレス信号の電圧変化量を選定することで、火災感知器の動作停止を防止できる。
【0021】
更に、火災信号による感知器回線の電圧変化量によって判定した火災感知器の発報台数と、受信したアドレス信号によって識別した火災感知器の発報台数とが一致しない場合には、アドレス信号の受信障害報を表示することで、受信機は、例えば火災報知システムの点検時に、システム障害を警告することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用される火災報知システムの説明図
【図2】図1の火災感知器の実施形態の説明図
【図3】図1の感知器回線の1つを取り出して本発明による火災発報制御機能を示した説明図
【図4】図3における火災発報時の火災信号とアドレス信号の送信動作を示したタイムチャート
【図5】図3においてアドレス信号の送信を繰り返した場合のタイムチャート
【図6】図3の火災感知器による発報制御処理を示したフローチャート
【図7】図3の受信機による受信制御処理を示したフローチャート
【図8】従来の火災報知システムにおける発報制御のタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明による火災報知システムの説明図である。図1において、受信機10からは感知器回線12−1、12−2、・・・12−mが引き出され、それぞれNo.1〜No.nに示すアドレスを設定したn台の火災感知器14を終端抵抗16と共に接続している。感知器回線12−1〜12−mに接続される火災感知器14としては、煙感知器、熱感知器等の各種の火災感知器を接続することができる。
【0024】
受信機10にはMPU18が設けられ、MPU18に対しては操作部22、警報表示部24、地区表示部26、移報出力部28及びメモリ30が設けられている。またMPU18の感知器回線側には、回線単位に受信回路部20−1、20−2、・・・20−mが設けられており、受信回路部20−1〜20−mのそれぞれより感知器回線12−1〜12−mが引き出されている。
【0025】
受信回路部20−1〜20−mは、感知器回線12−1〜12−mに接続している火災感知器14の火災発報により火災信号を受信すると共に、火災信号に続いて送信されるアドレス信号を受信する。
【0026】
受信機10のMPU18に設けている受信制御部32は、受信回路部20−1〜20−mから受信信号を順次読み込み、感知器回線単位に火災信号を判別して警報表示、即ち火災代表表示と地区表示(発報回線表示)を行う。また火災信号に続いて受信されたアドレス信号から発報した感知器のアドレスを識別し、地区表示部に1報目と2報目以降に分けて発報した火災感知器のアドレス又は地区名称等を表示させる。
【0027】
図2は、図1の火災感知器14の実施形態であり、散乱光式の煙感知器を例にとっている。図2において、火災感知器14は、整流回路・ノイズ吸収回路34、第1スイッチング回路38、第2スイッチング回路40、定電圧・電流制限回路42、作動表示灯44、アドレス設定回路46、発報制御部48、発振回路50、発光素子52、受光素子54、増幅回路56、および比較回路58で構成される。
【0028】
ここで、整流回路・ノイズ吸収回路34は、例えばダイオードブリッジ、ツェナーダイオード、コンデンサ等により回線L−C間の電流を無極性化し、更にノイズを抑える。定電圧・電流制限回路42は、回線L−C上の過渡電流を防止するため後段の回路部に対する供給電流を一定値に制限する。
【0029】
通常監視時、発振回路50により発光素子52がパルス駆動され周期的に発光する。火災により煙が発生すると、発光素子52からの光は煙により散乱し受光素子54に入射する。入射した光は光電流に変換され、増幅回路56で信号増幅された後、比較回路58へ信号が入力される。
【0030】
この信号が規定値を越えている場合、発光素子52の発光周期に同期して発報制御部48でカウントを行ない、所定カウント数に達したときに火災発報信号を第1スイッチング回路38に出力し、続いてアドレス設定回路46で設定されたアドレスコードに基づいてパルス状のアドレスコード信号を第2スイッチング回路40に出力する。
【0031】
即ち、発報制御部48はCPUで構成され、定電圧・電流制限回路42の入力側からの信号の取り込みにより感知器回線の信号状態を監視しており、比較回路58から火災検出信号を受けて火災発報信号を第1スイッチング回路38に出力すると共に、感知器回線の信号状態にパルス変化がない時間帯に、アドレスコード信号によるパルス変化を第2スイッチング回路40に出力する。
【0032】
第1スイッチング回路38は、発報制御部48からの火災発報信号に基づいてスイッチングし、回線L−C間に電流を流すことで感知器回線12に定常変化である電圧変化を発生させ、感知器回線12に接続された火災感知器14に共通の火災信号を送信する。この電圧変化は、通常監視時の感知器回線12の端子間電圧に対し所定の電圧低下となる。
【0033】
第2スイッチング回路40は、発報制御部48からのアドレスコード信号に基づいてスイッチングし、回線L−C間に電流を流すことで感知器回線12にパルス変化である電圧変化を発生させ、火災感知器14毎に異なるアドレス信号を送信する。
【0034】
第1スイッチング回路38は、共通の火災信号としての5〜30ミリアンペアの範囲に定めた一定の電流、例えば10ミリアンペアの電流を回線L−C間に流す。また第2スイッチング回路40は、アドレス信号としてスイッチオン・オフで例えば20ミリアンペアの電流変化を起こす。また発報制御部48は、火災発報と同時に作動表示灯44を点灯させる。
【0035】
図3は、図1の感知器回線12−1〜12−mの1つを取り出して本発明による火災発報制御機能を示した説明図である。図3において、受信機10の受信回路部20から引き出された感知器回線12には、No.1〜No.nの番号をアドレスとして設定した火災感知器14が接続されている。
【0036】
火災感知器14は、発報制御部48とこれによりオン・オフ制御される第1スイッチング回路38及び第2スイッチング40の部分を取り出しており、第1スイッチング回路38は感知器回線12間に抵抗R1とトランジスタQ1を直列接続し、第2スイッチング回路40も感知器回線12間に抵抗R2とトランジスタQ2を直列接続している。
【0037】
ここで、感知器回線12に接続された全ての火災感知器14が、火災信号の送信として、第1スイッチング回路38をオンして感知器回線12間に電流I1を流し、更に感知器回線12に接続された何れか1台の火災感知器14が、アドレス信号の送信として、第2スイッチング40をオン・オフして感知器回線12間に電流I2を流している状態で、感知器回線12の総電圧変化が通常監視時の端子間電圧よりも小さく、且つその時の端子間電圧が火災感知器14の最低作動電圧より高くなるように、第1スイッチング回路38の抵抗R1及び第2スイッチング回路40の抵抗R2を選定している。
【0038】
図4は、図3における火災発報時の火災信号とアドレス信号の送信動作を示したタイムチャートであり、1報目としてアドレスNo.1の火災感知器が発報し、2報目にアドレスNo.2、続いてアドレスNo.nの火災感知器が3報目を発報した場合を例にとっている。
【0039】
図4(A)は、感知器回線電圧であり、図4(B)は、アドレスNo.1の火災感知器14における第1スイッチング回路38のトランジスタQ1のオン・オフであり、図4(C)は、同じくアドレスNo.1の火災感知器14における第2スイッチング回路40のトランジスタQ2のオン・オフである。
【0040】
また図4(D)は、アドレスNo.2の火災感知器14における第1スイッチング回路38のトランジスタQ1のオン・オフであり、図4(E)は、同じくアドレスNo.2の火災感知器14の第2スイッチング回路40におけるトランジスタQ2のオン・オフを示している。
【0041】
更に図4(F)は、アドレスNo.nの火災感知器14における第1スイッチング回路38のトランジスタQ1のオン・オフであり、図4(G)は、同じくアドレスNo.nの火災感知器14の第2スイッチング回路40におけるトランジスタQ2のオン・オフを示している。
【0042】
図4において、時刻t1で火災が発生したとすると、火災を検出して、図4(B)に示すようにアドレスNo.1の火災感知器14の第1スイッチング回路38に設けているトランジスタQ1がオンし、感知器回線12に火災信号としての電流I1を流す。このため感知器回線電圧は通常監視時の24Vからv1に低下する。
【0043】
時刻t1で発報したアドレスNo.1の火災感知器14は、図4(C)に示すように発報から一定時間後の時刻t3で第2スイッチング回路40のトランジスタQ2をオン・オフし、感知器回線12にアドレスNo.1を示すアドレスコード信号に従った1報目のアドレス信号となる電流I2を流す。
【0044】
このアドレス信号の送信は、火災信号としての電流I1を感知回線12に流した状態でトランジスタQ2をオン・オフすることで、感知器回線12の電流がトランジスタQ2のオンの際に電流(I1+I2)に増加する電流増減を生ずる。これに対応して図4(A)に示す感知器回線電圧がトランジスタQ2のオンで低下し、オフで増加する1報目アドレスの電圧変化を生ずる。
【0045】
アドレスNo.2の火災感知器14にあっては、図4(D)に示すように火災発生時刻t1に続く時刻t2で火災を検出して発報し、第1スイッチング回路38のトランジスタQ1をオンすることで感知回線12に火災信号として電流I1を流す。
【0046】
このためアドレスNo.2の火災感知器14が発報した時刻t2にあっては、すでにアドレスNo.1の火災感知器14が1報目の火災発報を行なっていることから、感知器回線12には火災信号として1報目と2報目の和となる電流(2×I1)が流れる。
【0047】
なお、アドレスNo.1〜No.nの火災感知器14は、抵抗R1の抵抗値が同じであるため、感知器回線12の電圧が通常監視時の24VのときにトランジスタQ1をオンする1報目の電流I1に対し、感知器回線12の電圧が1報目によって通常監視時より低下しているときにトランジスタQ1をオンする2報目の電流I1は僅かに小さくなるが、説明を分かりやすくするために、本実施形態では2報目以降も同じ電流I1とする。
【0048】
また、後の説明で明らかにするように、複数の火災感知器14が火災信号を送信した場合の発報台数の識別においては、感知器回線12の電圧変化量に基づいて発報台数の判別を行っているため、発報時に各火災感知器14が流す電流I1の値を厳密に区別しなくても実用上の問題は生じない。
【0049】
2報目に対応して図4(A)に示す感知器回線電圧は、時刻t2で1報目の火災信号によるv1から、2報目の火災信号によってv2に低下する。そして時刻t2の2報目後に、アドレスNo.1の火災感知器14のランジスタQ2がオン・オフして図4(C)に示すように1報目のアドレス信号の送信が行なわれる。これを図4(A)に示す感知器回線電圧について見ると、時刻t3よりアドレス信号の送信で感知器回線電圧はv2とv4の間でパルス変化して、1報目のアドレス信号を送信していくことになる。
【0050】
更に、時刻t2で2報目の火災発報を行なったアドレスNo.2の火災感知器14にあっては、一定時間後で、且つ1報目のアドレスが送信されていない時刻t4で第2スイッチング回路40のトランジスタQ2をオン・オフして図4(E)に示すように2報目のアドレス信号を送信する。これを図4(A)に示す感知器回線電圧について見ると、時刻t4よりアドレス信号の送信で感知器回線電圧はv2とv4の間でパルス変化して、2報目のアドレス信号を送信していくことになる。
【0051】
また、アドレスNo.nの火災感知器14にあっては、図4(F)に示すようにアドレスNo.2の火災感知器14がアドレス信号を送信したt4に続く時刻t5で火災を検出して発報し、第1スイッチング回路38のトランジスタQ1をオンすることで感知回線12に火災信号として電流I1を流す。
【0052】
このためアドレスNo.nの火災感知器14が発報した時刻t5にあっては、すでにアドレスNo.1とNo.2の火災感知器14が1報目と2報目の火災発報を行なっていることから、感知器回線12には火災信号として1〜3報目の和となる電流(3×I1)が流れる。3報目に対応して図4(A)に示す感知器回線電圧は、時刻t5で2報目の火災信号によるv2から、3報目の火災信号によるv3に低下する。
【0053】
更に、時刻t5で3報目の火災発報を行なったアドレスNo.nの火災感知器14にあっては、一定時間後で、且つ1報目と2報目のアドレスが送信されていない時刻t6で第2スイッチング回路40のトランジスタQ2をオン・オフして図4(G)に示すように3報目のアドレス信号を送信する。これを図4(A)に示す感知器回線電圧について見ると、時刻t6よりアドレス信号の送信で感知器回線電圧はv3とv5の間でパルス変化して、3報目のアドレス信号を送信していくことになる。
【0054】
このようなアドレスNo.1、No.2、No.nの各火災感知器14の1報目、2報目、3報目の火災発報に対し、受信機10にあっては、時刻t1のアドレスNo.1の火災感知器14のトランジスタQ1のオンによる火災信号を受信して火災代表表示を行い、感知器回線12−1〜12−mの何れから火災信号を受信したかに基づいて地区表示を行なう。
【0055】
また必要に応じて、時刻t1、t2、t5におけるアドレスNo.1、No.2、No.nの火災感知器の1〜3報目の火災信号による感知器回線12の端子間電圧の変化から発報台数を判別し、これによって2報目以降の発報を認識して表示する。火災信号を送信した火災感知器14が4台以上であっても、同様に感知器回線12の端子間電圧の変化から発報台数を判別し、4報目以降を認識して表示することも可能である。
【0056】
感知器回線12の端子間電圧の変化から発報台数を判別するには、例えば、本発明による火災報知システムを設置したときに、火災感知器14を1台ずつ試験発報させて行き、その際の感知器回線12の電圧変化のデータを受信機10に保存し、火災報知システムの運用時には感知器回線12の電圧変化とこのデータを対比すればよい。
【0057】
感知器回線12毎に接続している火災感知器14の台数が異なる場合や、感知器回線12毎に回線長が異なる場合でも、感知器回線12毎にこの電圧変化のデータを保存し対比すればよい。
【0058】
また、1報目あるいはそれ以降の火災信号の総和によって電圧が低下している状態で、火災感知器14から送信されるパルス変化をもったアドレス信号を受信することで、発報した火災感知器14を識別し、火災感知器14のアドレスや地区名等の必要な表示あるいは制御を行なうことができる。
【0059】
また、感知器回線12に接続されている全ての火災感知器14が発報したとして、全台数分の、例えば最大接続数が16であった場合に16台分の火災信号と1台分のアドレス信号によって感知器回線12の端子間電圧が、例えば6Vに低下したとしても、火災感知器14の最低作動電圧が6V以下であれば、火災感知器14は作動を続けアドレス信号を繰り返して送信することができる。
【0060】
図4(F)においては、アドレスNo.nの火災感知器14は時刻t5で火災信号を送信しているが、例えば、アドレスNo.2の火災感知器14が時刻t4から2報目のアドレス信号を送信している間に、アドレスNo.nの火災感知器14が火災信号を送信すると、受信機10は2報目のアドレス信号を正常に受信できない。
【0061】
このような場合やその他の要因で、受信機10がアドレス信号の受信に失敗したとしても、火災感知器14がアドレス信号を繰り返して送信すれば、再度同じアドレス信号を受信でき、発報した火災感知器14の識別が確実になる。
【0062】
図5は、図3においてアドレス信号の送信を繰り返した場合のタイムチャートであり、図4と同様に、アドレスNo.1の火災感知器14が1報目の火災発報を行なった後にアドレスNo.2の火災感知器14が2報目の火災発報を行ない、更にアドレスNo.nの火災感知器14が3報目の火災発報を行なった場合を例にとっている。
【0063】
このため、時刻t1、t2、t5の1報目、2報目、3報目の火災発報による火災信号の送信、及びこれに続く1報目のアドレス信号、2報目のアドレス信号、3報目のアドレス信号の送信は、図4のタイムチャートと同じである。
【0064】
その後、アドレスNo.1、No.2、No.nの火災感知器14は、感知器回線電圧が通常監視時からvd低下した状態で、一定の時間間隔で1〜3報目のアドレス信号の送信を繰り返すようになる。
【0065】
なお、図4及び図5のタイムチャートにおいて、1報目の火災検出と2報目の火災検出のタイミングによっては、火災信号を送信してから一定の時間後にアドレス信号を送信すると、アドレス信号がタイミング的に重複して識別不能になる恐れがある。
【0066】
これを防ぐためには、アドレス信号を送信する前に感知器回線12の信号状態を読み込み、他の火災感知器14からアドレス信号の送信が行なわれていないことを確認して自己のアドレス信号を送信するようにする。
【0067】
また、受信機10からのタイミング信号を受信してから、1報目から順にアドレスを送信するようにいても良く、発報順に予め決められた送信時間タイミングに基づいて順次送信するようにしても良い。
【0068】
図6は、図3の火災感知器14による発報制御処理を示したフローチャートである。図6において、ステップS1で火災発報を判別するとステップS2に進み、第1スイッチング回路38のトランジスタQ1のオン・オフにより火災信号を送信する。
【0069】
次に、ステップS3で一定時間後に感知器回線上に他の火災感知器の発報によるアドレス信号がないことを確認するとステップS4に進み、第2スイッチング回路40のトランジスタQ2のオン・オフによりアドレス信号を送信する。
【0070】
なお、ステップS3で感知器回線上に他の火災感知器から送信されたアドレス信号がある場合には、ステップS3の処理を繰り返し、更に一定時間経過後に回線上にアドレス信号がないことを確認して、ステップS4によるアドレス信号の送信を行なうことになる。
【0071】
ステップS5で火災復旧が確認されるまで、ステップS3、S4によるアドレス信号の送信が繰り返される。ステップS5で火災復旧が判別されるとステップS6に進み、初期化処理を行なった後、ステップS1の処理に戻る。
【0072】
図7は、図3の受信機10による受信制御処理を示したフローチャートである。図7において、ステップS11でカウンタを初期化し、ステップS12で感知器回線12ごとに受信回路部20で受信された信号状態を順次読み込み、ステップS13で火災信号の受信の有無をチェックしている。ステップS12の処理は、全ての感知器回線12の信号状態を読み込んだら最初の感知器回線12に戻り、同じ処理を繰り返す。
【0073】
ステップS13で火災信号の受信を判別するとステップS14に進み、代表火災表示と発報回線に対応した地区表示等の火災警報処理を行ない、火災信号を受信しなかった場合には、ステップS12〜S13の処理を繰り返す。
【0074】
次に、ステップS15でアドレス信号の受信をチェックし、その時点でアドレスを識別していない未受信のアドレス信号を受信すると、ステップS16でカウンタを1カウントアップして、例えばn=1であればステップS17で最初に識別した火災感知器14のアドレス等の必要な表示を行ない、n=2の場合は2番目に識別した火災感知器14のアドレス等の必要な表示を行う。
【0075】
その後ステップS14〜17の処理を繰り返し、ステップS15でアドレス信号を受信できない場合は、ステップS18で最後の火災信号を受信してからの経過時間をチェックし、所定の時間が経過するまではステップS15、S18の処理を繰り返す。
【0076】
ステップS18で所定の時間が経過していた場合はステップS19に進み、ステップS19で感知器回線12の電圧低下量に基づいて受信した火災信号の数Nを判定し、ステップS20で受信したアドレス信号の数nと受信した火災信号の数Nとを比較する。
【0077】
ステップS20でnとNが一致した場合は、ステップS21で火災復旧の有無をチェックし、一致しない場合はステップS22でアドレス受信障害を警告表示する障害報処理を行ってからステップS21に進む。
【0078】
ステップS21で火災復旧していない場合は、ステップS14の火災警報処理に戻り、ステップS21で火災復旧されるまでステップS14〜S21の処理を繰り返す。ステップS21で火災復旧を確認できたら、ステップS23で初期化処理を行い、ステップS11に戻る。
【0079】
本発明は、その目的と利点を損なわない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0080】
10:受信機
12−1〜12−m:感知器回線
14:火災感知器
16:終端抵抗
18:MPU
20−1〜20−m:受信回路部
22:操作部
24:警報表示部
26:地区表示部
28:移報出力部
30:メモリ
32:受信制御部
34:整流回路・ノイズ吸収回路
36:スイッチング回路
38:第1スイッチング回路
40:第2スイッチング回路
42:定電圧・電流制限回路
44:作動表示灯
46:アドレス設定回路
48:発報制御部
50:発振回路
52:発光素子
54:受光素子
56:増幅回路
58:比較回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の火災感知器を接続した感知器回線に流れる電流の変化による感知器回線端子間の電圧変化に基づいて火災を報知する受信機を備えた火災報知システムに於いて、
前記火災感知器は、
火災を検出して発報した際に火災発報信号を出力し、続いて自己のアドレスコード信号を出力する発報制御部と、
前記火災発報信号が入力した場合に、前記感知器回線に第1の電流を与えることによって前記感知器回線端子間に第1の電圧変化を発生させ、前記受信機に前記複数の火災感知器に共通の火災信号を送信する第1スイッチング回路と、
前記アドレスコード信号が入力した場合に、前記感知器回線に第2の電流を与えることによって、前記感知器回線端子間に第2の電圧変化を発生させ、前記受信機に前記複数の火災感知器毎に異なるアドレス信号を送信する第2スイッチング回路と、
を備え、
前記受信機は、
前記火災信号を受信して火災警報を出力すると共に前記アドレス信号を受信して発報した火災感知器の識別情報を出力する受信制御部と、
前記火災警報及び識別情報を表示可能な表示部と、
を備え、
前記第1の電圧変化は、通常時の前記感知器回線の端子間電圧に対し所定の電圧低下となる定常変化であり、
前記第2の電圧低下は、前記発報制御部からの前記アドレスコード信号に基づくパルス変化であり、
前記発報制御部は、前記火災発報信号を出力した後の前記感知器回線端子間に前記第2の電圧変化がない時間帯に、前記第2のスイッチング回路に対して前記アドレスコード信号を出力し、
前記感知器回線に接続される全ての前記火災感知器が前記火災信号を送信した場合の、第1の電圧変化と前記第2の電圧変化とを加えた総電圧変化が、通常時の前記感知器回線の端子間電圧より小さいことを特徴とする火災報知システム。
【請求項2】
請求項1記載の火災報知システムに於いて、前記総電圧変化時の前記感知器回線の端子間電圧が前記火災感知器の最低作動電圧より高いことを特徴とする火災報知システム。
【請求項3】
請求項2記載の火災報知システムに於いて、前記発報制御部は、前記アドレスコード信号の出力を繰り返すことを特徴とする火災報知システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の火災報知システムに於いて、前記受信制御部は、前記火災信号の受信後の前記アドレス信号を受信していない時間帯に、前記第1の電圧変化から火災感知器の発報台数を判定することを特徴とする火災報知システム。
【請求項5】
請求項4記載の火災報知システムに於いて、
前記受信制御部は、前記第1の電圧変化によって判定した火災感知器の発報台数と前記受信したアドレス信号によって識別した火災感知器の発報台数とを比較して、一致した場合に火災警報を出力し、一致しない場合には前記アドレス信号の受信障害報を出力し、
前記表示部は、前記受信障害報を表示可能であることを特徴とする火災報知システム。
【請求項6】
請求項5記載の火災報知システムに於いて、前記受信制御部は、前記火災感知器の発報台数が一致しない場合には前記受信障害報と共に火災警報を出力することを特徴とする火災報知システム。
【請求項7】
請求項5又は6記載の火災報知システムに於いて、前記受信制御部は、最後の火災信号を受信してから所定時間内に受信したアドレス信号によって火災感知器の発報台数を識別することを特徴とする火災報知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−243106(P2011−243106A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116304(P2010−116304)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】