説明

火災感知器

【課題】スイッチ部から収納部内にガスなどが侵入することがなく長期的な信頼性を得ることができる密閉構造の火災感知器を提供する。
【解決手段】表カバー2と、所定の機能を選択するスイッチ部18が電気的に接続されたプリント基板8と、表カバー2の裏側からプリント基板8の収納部4をシール部材5を介して密閉する裏カバー3とを備えた火災感知器であって、スイッチ部18は、複数の電極ピン19a〜19cを有しこの電気的接続状態によって所定の機能が切換選択されるスイッチ本体21と、電極ピン19a〜19c間に嵌合して所定の電気的接続状態を与えるコネクタ22とによって構成され、スイッチ本体21の電極ピン19a〜19cを裏カバー3から収納部4外に露出させ、電極ピン19a〜19cの基部側と裏カバー3との間を樹脂封止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は火災感知器に係り、より詳しくは、防水や防ガス機能を充足させる密閉構造を有し、外部から所定の機能を切換選択することができる火災感知器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の火災感知器においては、所定の機能を切換選択するスイッチ部の操作つまみが火災感知器の表面に露出しており、この操作つまみを操作することによって所定の機能を切換選択していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−30761号公報(第2〜3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような火災感知器においては、防水や防ガス機能を充足させる場合、プリント基板の収納部内全体に樹脂を充填して感知器全体を密閉構造とし、スイッチ部のみを外部に露出させるようにすることとなるが、こうすると収納部全体を樹脂で充填することになるため、作業性、保守性に問題があった。
このため、収納部内全体を樹脂充填せずに収納部を形成する表カバーと裏カバーとの接合部分等を接着剤などのシール部材を用いて密閉して、スイッチ部(スイッチ部材の操作部)のみを外部に露出させる場合もあるが、スイッチ部材の内部構造によっては収納部内にガスなどが侵入することがあり、特に腐食ガスなどの環境下では長期的な信頼性という面において問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、プリント基板の収納部内をシール部材などによって密閉してスイッチ部のみを外部に露出させる場合においても、スイッチ部から収納部内にガスなどが侵入することがなく、腐食ガスなどの環境下にあっても長期的な信頼性を得ることができる火災感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る火災感知器は、表カバーと、所定の機能を選択するスイッチ部が電気的に接続されたプリント基板と、前記表カバーの裏側から前記プリント基板の収納部をシール部材を介して密閉する裏カバーとを備えた密閉構造の火災感知器において、前記スイッチ部は、複数の電極ピンを有し該複数の電極ピン同士の電気的接続状態によって所定の機能が切換選択されるスイッチ本体と、前記複数の電極ピン間に嵌合して所定の電気的接続状態を与えるコネクタとによって構成され、前記スイッチ本体の電極ピンを前記裏カバーから収納部外に露出させ、前記電極ピンの基部側と裏カバーとの間を樹脂封止したものである。
【0007】
また、前記裏カバーに凹部を形成してスイッチ本体の電極ピンを該凹部より収納部外に露出させ、前記裏カバーの凹部底面とプリント基板との間に樹脂を介装して前記電極ピンの基部側と裏カバーとの間を樹脂封止したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る火災感知器は、シール部材を用いて密閉構造にすると共に外部から所定の機能を切換選択することができるようにしたので、作業性、保守性に優れる。また、スイッチ部は、スイッチ本体の電極ピンを収納部外に露出させ、電極ピンの基部側と裏カバーとの間を樹脂封止した状態にしてプリント基板に取り付けられているので、スイッチ部の構造を介して収納部内にガスなどが侵入することもなく、長期的な信頼性に優れる。このため、火災感知器を、例えば船内のように防水が要求される室内に取り付けることもできる。また、凹部を形成することによって、樹脂の充填量を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は本発明にかかる火災感知器の一実施の形態を示す縦断面図、図2は図1の下面図、図3は図1の上面図、図4は図1のA矢視図である。図において、火災感知器の一例としての炎感知器は、外殻がほぼ鍋状の表カバー2と、表カバー2の内面側から立設した隔壁2a上を覆う裏カバー3とからなる本体ケース1を備え、裏カバー3は表カバー2の裏側から内部の収納部4をシール部材5(一例として接着剤)を介して樹脂接着することによって密閉している。このとき、裏カバー3と表カバー2とは、裏カバー3の周縁に形成された凸部3dと隔壁2aの端部に形成された段部2bとによって係合し、その係合部位等の接合部位をシール部材5により樹脂接着している。そして、本体ケース1は取付具7によって取り付けベース(図示せず)に結合されて、天井面等に取り付けられる。
【0010】
本体ケース1の収納部4内にはプリント基板8が収納されており、このプリント基板8には、火災検出素子としての第1、第2のセンサ11,12が設けられている。第1のセンサ11は、例えば、炎から放射されるCO2 共鳴放射の波長帯である概ね4.4〜4.5μm付近の赤外線を受光し、第2のセンサ12は、例えばCO2 共鳴放射の波長帯近傍である概ね5.0μm付近の赤外線を受光して、それぞれセンサ出力を生じるものである。
【0011】
表カバー2の中央部付近には窓部となる開口部15が形成されており、この開口部15を裏面から覆うように保護フィルターである例えばサファイアガラス16が樹脂接着により固定されてサファイア窓を形成している。なお、開口部15によって、第1、第2のセンサ11,12の視野角が決定される。
第1、第2のセンサ11,12はホルダ17内に収容され、表カバー2の開口部15と相対して位置するようにして、ホルダ17を介してプリント基板8に搭載されている。
【0012】
本体ケース1の収納部4内に収納されたプリント基板8には、所定の機能を選択するスイッチ部18が、裏カバー3の収納部4側に突出するように形成された凹部3aの底面3bに設けた底面孔部3cを介して電気的に接続されている。このスイッチ部18は、図5に示すように、複数の電極ピン19、例えば3本からなる第1、第2、第3の電極ピン19a,19b,19c、及びこれら第1〜第3の電極ピン19a〜19cの基部に一体に取り付けられた樹脂材質のコネクタ載置部20を有しており、第1〜第3の電極ピン19a〜19c同士の電気的接続状態によって所定の機能が切換選択されるスイッチ本体21と、3本の電極ピン19a〜19cのうちの2本の電極ピンに嵌合して所定の電気的接続状態を与える操作つまみである導電性のコネクタ(ジャンパ)22とによって構成されている。なお、この火災感知器において、スイッチ部18によって切換選択される所定の機能として、この火災感知器の感度の切換選択がなされるようになっている。
【0013】
スイッチ部18は、第1〜第3の電極ピン19a〜19cの基部側がプリント基板8のピン支持孔8aに挿入、半田付けされてそれぞれプリント基板8に電気的に接続されており、そのコネクタ載置部20が裏カバー3の凹部3aの底面孔部3cに挿入されて凹部3a内に露出している。
【0014】
そして、裏カバー3の凹部3aの底面3bとプリント基板8との間には樹脂23を挟み込んで充填してあり、第1〜第3の電極ピン19a〜19cの基部側と裏カバー3との間を樹脂封止して密閉してある。こうして、スイッチ本体21の第1〜第3の電極ピン19a〜19cを裏カバー3の凹部3aより収納部4外の火災感知器背面に露出させ、この露出した第1〜第3の電極ピン19a〜19cにコネクタ22を嵌合できるようにしてある。
【0015】
また、この第1〜第3の電極ピン19a〜19cは、その先端が凹部3a内から突出しない長さに設定されており、これにより、この火災感知器を天井面等に取り付けた状態で、電極ピン19a〜19c同士が障害物等によって誤短絡されないようにしてある。また、裏カバー3の凹部3aの底面3bとプリント基板6との間に位置するスイッチ本体21の周囲を樹脂で介装して、電極ピン19a〜19cの基部側と裏カバー3との間を樹脂封止したので、底面孔部3cを介して収納部4内にガスなどが侵入することが防止されており、さらに第1〜第3の電極ピン19a〜19cとコネクタ載置部20との間がゆるんだときに、凹部3a内に露出するコネクタ載置部20の内部構造を介して収納部4内にガスなどが侵入することも防止されている。また、凹部3aを形成することによって、樹脂23の充填量を低減させている。
【0016】
なお、第1〜第3の電極ピン19a〜19cをコネクタ載置部20に貫通させてスイッチ本体21を構成しているため、上記の密閉構造以外にコネクタ載置部20の表面であって第1〜第3の電極ピン19a〜19cが貫通する部分24(図6参照)に樹脂を用いて封止するようにしてもよい。これによって、第1〜第3の電極ピン19a〜19cとコネクタ載置部20との隙間から、コネクタ載置部20の内部構造を介して収納部4内にガスなどが侵入することをより防止することができる。
【0017】
上記のように構成した本発明の作用について説明する。まず、スイッチ部18を、火災感知器の本体ケース1に取り付ける場合について説明する。プリント基板8の裏面の第1〜第3の電極ピン19a〜19cの周囲に溶融状態の樹脂23を盛り上げておき、表カバー2の裏側から裏カバー3を被せるときに、図6に示すように、プリント基板8に取付けられた第1〜第3の電極ピン19a〜19bのコネクタ載置部20を裏カバー3の凹部3bの底面孔部3cに挿通し、プリント基板8と裏カバー3の凹部3aの底面3bとの間に溶融状態にある樹脂23を挟み込む。また、裏カバー2の凸部3dと隔壁2aの段部2bとを係合し、この係合部位等の接合部位をシール部材5により樹脂接着して(図1参照)、裏カバー3を表カバー2に固定する。
【0018】
これにより、裏カバー3の凹部3aの底面3bとプリント基板8との間で樹脂23が固化して、図1、図6に示すように、第1〜第3の電極ピン19a〜19cの基部側と裏カバー3との間が固化後の樹脂23によって封止される。このとき、裏カバー3の凹部3aの底面3bからスイッチ部18のコネクタ載置部20の一部が凹部3a内に突出して固定され、底部3bによって樹脂23は十分に押され、第1〜第3の電極ピン19a〜19cの基部側を十分密閉することができる。
なお、第1〜第3の電極ピン19a〜19cのそれぞれをコネクター載置部20に貫通させてスイッチ本体21を構成しているため、上記の密閉構造以外にコネクタ載置部20の表面であって第1〜第3の電極ピン19a〜19cが貫通する部分24に樹脂を用いて封止してもよい。
【0019】
次に、上記のようにして組み立てた火災感知器における炎検知について説明する。火災により炎が発生すると、その放射光がサファイアガラス16を介して第1及び第2のセンサ11,12に到達する。すると、第1及び第2のセンサ11,12はそれぞれ前記した帯域の波長の赤外線のみに基づいたセンサ出力が生じる。そして、第1のセンサ11のセンサ出力と第2のセンサ12のセンサ出力との比率を演算する等の所定のアルゴリズムを用いて、炎の発生を感知することで、精度よく炎を検知する。
【0020】
次に、上記の火災感知器において、上記第1、第2のセンサ11,12の感度調節(火災感知機の感度切換)を行う場合について説明する。図5に示すように、第1、第2の電極ピン19a,19bにコネクタ22が嵌合しており、第1、第2のセンサ11,12が一定の感度状態にあるとき、この感度を変える場合には、コネクタ22をつまんでこれを第1、第2の電極ピン19a,19bから抜き取り、抜き取ったコネクタ22の孔部を、第2、第3の電極ピン19b,19cに嵌合させる。こうして、第1〜第3の電極ピン19a〜19c間の短絡、開放によって火災感知器の所定の機能(この場合は、感度)を切換選択して、第1、第2のセンサ11,12の感度調節を行い、火災感知器の感度切換作業を極めて容易に行うことができる。
なお、コネクタ22の装着状態において、第1〜第3の電極ピン19a〜19cの先端が露出するように図示されているが(図5)、先端が覆われてもよく、これにより、何らかの当接物があっても、誤短絡されにくくなる。
【0021】
本実施の形態によれば、火災感知器を防水や防ガス機能を充足させる密閉構造にすることができると共に、所定の機能を外部から切換選択することができる。また、表カバー2と裏カバー3との間はシール部材5で封止し、複数の電極ピン19a〜19cの基部側と裏カバー3との間は樹脂封止して収納部4内部を密閉構造としているため、収納部4内部を樹脂充填する従来の密閉構造の場合と比較して、作業性や保守性に優れる。さらに、スイッチ本体21の基部側は樹脂封止された状態で収納部4内に設けられているので、従来のようにスイッチ内部構造を介して収納部4内部にガスなどが侵入することがなく、腐食ガスなどの環境下であっても長期的な信頼性に優れる。このため、火災感知器を、船内のように防水が要求される部屋内に取り付けるような場合にも、効果的である。
【0022】
上記の説明では、火災感知器にはシール部材5として接着剤を用いたが、Oリングその他のシール部材を用いてもよい。
また、火災感知器としては炎感知器について説明したが、熱感知器等のその他の火災感知器に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る火災感知器の一実施の形態の縦断面図である。
【図2】図1の下面図である。
【図3】図1の上面図である。
【図4】図1のA矢視図である。
【図5】図1のスイッチ部近傍の斜視図である。
【図6】本発明のスイッチ部の組み立て状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 本体ケース、2 表カバー、3 裏カバー、3a 凹部、3b 凹部の底面、4 収納部、5 シール部材、8 プリント基板、18 スイッチ部、19a〜19c 第1〜第3の電極ピン、21 スイッチ本体、22 コネクタ、23 樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表カバーと、所定の機能を選択するスイッチ部が電気的に接続されたプリント基板と、前記表カバーの裏側から前記プリント基板の収納部をシール部材を介して密閉する裏カバーとを備えた密閉構造の火災感知器において、
前記スイッチ部は、複数の電極ピンを有し該複数の電極ピン同士の電気的接続状態によって所定の機能が切換選択されるスイッチ本体と、前記複数の電極ピン間に嵌合して所定の電気的接続状態を与えるコネクタとによって構成され、前記スイッチ本体の電極ピンを前記裏カバーから収納部外に露出させ、前記電極ピンの基部側と裏カバーとの間を樹脂封止したことを特徴とする火災感知器。
【請求項2】
前記裏カバーに凹部を形成してスイッチ本体の電極ピンを該凹部より収納部外に露出させ、前記裏カバーの凹部底面とプリント基板との間に樹脂を介装して前記電極ピンの基部側と裏カバーとの間を樹脂封止したことを特徴とする請求項1記載の火災感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−119832(P2006−119832A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305811(P2004−305811)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】