説明

火災監視システム

【課題】ネットワークを簡便かつ迅速に構築することができる火災監視システムを提供する。
【解決手段】 監視領域10には1個の親モジュール14と多数の子モジュール12が分散配置されており、これらの複数のモジュールが通信部を介して相互間でアドホックネットワークを自立形成している。子モジュール12のセンサ部で検出された火災検知情報がアドホックネットワークを介して親モジュール14に収集され、サーバ16に伝送される。子モジュール12と親モジュール14はアドホックネットワークを形成するためのプログラムを格納している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は火災監視システムに係り、特に比較的広域な施設又は地域における火災の監視に好適な火災監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の高層ビルやインテリジェントビルにおいては有効な火災監視システムが設置、運用されている。しかしながら、旧型のビルでは火災監視システムがないか又は不十分である場合が多い。このような火災監視システムが不十分な施設において火災監視網を充実しようとすれば、大掛かりな配線工事などが必要となり、システムの構築に多大な手間とコストかかる。また、イベント会場などでは通常、多くの入場者があり、万一火災が発生すると大惨事を招く恐れがある。このため、使用期間限定型の簡易火災監視システムを緊急に構築しなければならないケースがしばしばある。
【0003】
特許文献1には、火や煙を感知する複数のセンサと、これらのセンサからの火災検知情報を回線を介して多重伝送記号として受け取り火災検知を行う受信機とからなる火災監視システムが開示されている。また、特許文献2には、複数のエリア毎に配設した火災監視装置からの火災検知情報を無線LANによって遠隔監視装置に伝送するようにした火災監視システムが開示されている。
【特許文献1】特許第2784008号公報
【特許文献2】特開2001−126171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された火災監視システムは、回線を使用するため、回線の敷設に多大な手間とコストを必要とする。また、地震や火災などによって回線が遮断された場合にシステムが機能しなくなるという問題点があった。また、特許文献2に開示された火災監視システムは、火災監視装置からの火災検知情報の伝送を無線LANによって行うので、上記の問題点は解消されるが、複数のエリア毎に火災監視装置を配設する必要があり、システムの構築は大掛かりな工事となる。このため、システムの構築に緊急性が要請される場合には役に立たないという問題点があった。
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を改善し、センサネットワークを簡便かつ迅速に構築することができる火災監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る火災監視システムは、通信部とセンサ部を備えて監視領域内に分散配置された複数のモジュールが前記通信部を介して当該モジュール相互間でアドホックネットワークを自律形成しており、前記複数のモジュールの内、少なくとも1つのモジュールが前記各モジュールのセンサ部で検出された火災検知情報を前記アドホックネットワークを介して収集し、サーバに伝送する伝送手段とされたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る火災監視システムは、1個の親モジュールと複数の子モジュールによって前記アドホックネットワークを形成しているネットワーク単位を少なくとも1つ具備しており、各ネットワーク単位の親モジュールが前記伝送手段とされたことを特徴とする。また、前記各モジュールは前記アドホックネットワークを形成するためのプログラムを格納していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る火災監視システムは、監視領域内に分散配置された複数のモジュールが通信部を介して当該モジュール相互間で瞬時にアドホックネットワークを自律形成している。そして、前記モジュールのセンサ部で検出された火災検知情報が形成したアドホックネットワークを介してサーバに収集可能とされている。このため、専用線を敷設することなく、広域の監視ネットワークを簡便かつ迅速に構築することができる。また、用済み後も簡便かつ迅速に撤去できる。したがって、使用期間限定型の簡易火災監視システムとして特に有用である。
【0008】
また、本発明に係る火災監視システムは、1個の親モジュールと複数の子モジュールからなるネットワーク単位を少なくとも1つ具備しており、それぞれのネットワーク単位がアドホックネットワークを形成している。そして、各ネットワーク単位の親モジュールが収集した火災検知情報をサーバに伝送する伝送手段とされる。このため、子モジュールが具備すべき機能を最小限に抑えることができ、コストを節減した火災監視システムを実現することができる。なお、各モジュールはアドホックネットワークを形成するためのプログラムとしてNCMS(Network Configuration Management System)を格納している。このため、迅速で簡潔なアドホックネットワークの形成を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基いて本発明に係る火災監視システムの実施形態を説明する。図1は本発明に係る火災監視システムの第1実施形態を示す全体構成図である。二点鎖線で囲われた火災監視を必要とする広域の監視領域10である。監視領域10には複数個の子モジュール12と1個の親モジュール14とが監視領域10の要所に分散配置されている。監視センタにはサーバ16が配置されており、親モジュール14はサーバ16に対する伝送手段として機能する。
【0010】
図2は子モジュール12の内部構成を示すブロック図である。子モジュール12は通信部18、データ処理部20、センサ部22、電力供給部24とによって構成される。通信部18は近距離の他の子モジュール12又は親モジュール14との間で必要な情報を無線によって送受信する。データ処理部20は通信部18で受信した情報に基いてアドホックネットワークを形成するための処理を実行する。また、データ処理部20はセンサ部22との間で情報を交換する。
【0011】
ネットワーク形成プログラム19は分散配置された複数の子モジュール12と親モジュール14がアドホックネットワークを形成するための専用プログラムである。複数の子モジュール12と親モジュール14が分散配置された初期の時点で、このネットワーク形成プログラム19が作動し、各モジュール相互間のアドホックネットワークを自律形成する。さらに、アドホックネットワークが形成された後に、幾つかの子モジュール12が故障するなどして、当初に形成されたネットワークが寸断された場合にも、ネットワーク形成プログラム19によって新たなアドホックネットワークを再形成することができる。
【0012】
センサ部22には火や煙を感知するセンサ(カメラを含む。)や雰囲気の温度や炭酸ガス、一酸化炭素の濃度などの火災情報を検知するセンサが少なくとも1つ組み込まれている。センサ部22のセンサはデータ処理部20からのセンシング指令によって、当該子モジュール12が配置された地点の火災検知情報を検出する。センサ部22で検出された火災検知情報はデータ処理部20に送られる。データ処理部20では、送られた情報を解析、判定する。これらの火災検知情報や処理結果は、必要な処理を受けた後に通信部18からアドホックネットワークを介して親モジュール14に無線送信される。また、センサ部22はGPSなどの自己位置の検出機能を備えている。このため、子モジュール12は自己位置と当該位置における火災検知情報をリンクさせて親モジュール14に送信することができる。
電力供給部24は通信部18、データ処理部20、センサ部22に電力を供給する。電力供給部24は各種の電池で構成することができる。
【0013】
子モジュール12には、必要時以外はセンサ部22の電源を切り、無線通信を行うときにのみセンサ部22の電源が入るように制御する機能を組み込むことができる。この電源の切入れはデータ処理部20に組み込んだクロック機能によって、又は親モジュール14からの指令によって行うことができる。このような制御機能を付与することによって、子モジュール12の消費電力を著しく低減することができ、電池を用いた場合でも電池交換なしに長時間にわたって子モジュール12を稼動させることができる。
【0014】
図3は親モジュール14の内部構成を示すブロック図である。親モジュール14は主に通信部26、ネットワーク形成プログラム28、データ処理部30、センサ部32、電力供給部34とによって構成され必要に応じてセンサ部32を備える。通信部26は近距離の複数の子モジュール12及びサーバ16との間で必要な情報を無線によって送受信する。
【0015】
ネットワーク形成プログラム28は当該親モジュール14が複数の子モジュール12との間でアドホックネットワークを形成するための専用プログラムである。親モジュール14及び複数の子モジュール12が分散配置された初期の時点で、このネットワーク形成プログラム28が作動し、各モジュール相互間のアドホックネットワークが自律形成される。さらに、アドホックネットワークが形成された後に、幾つかの子モジュール12が故障するなどして、当初に形成されたネットワークが寸断された場合にも、ネットワーク形成プログラム28によって新たなアドホックネットワークを再形成することができる。
【0016】
データ処理部30は主に通信部26を介して受信した複数の子モジュール12からの火災検知情報を記憶・整理し又は必要に応じて演算・加工する。これらの処理された火災検知情報又は処理結果は適当なタイミングで通信部26を介してサーバ16に無線送信される。また、データ処理部30は内蔵したカレンダに基いて子モジュール12に対するセンシング指令信号を定期的に作成することができる。
【0017】
上記のセンシング指令信号はセンサ部32による監視結果に基いて作成することもできる。又は、子モジュール12から送信された火災検知情報に異常値が発見された場合にセンシング指令信号を随時に作成することもできる。これらのセンシング指令信号は通信部26からアドホックネットワークを介してそれぞれ複数の子モジュール12に伝達され、前記したように子モジュール12のセンサ部22ではこのセンシング指令に基いて、センサによる火災検知情報の検出を実行する。
【0018】
なお、子モジュールに対するセンシング指令は上記の方法に限らない。各子モジュール12が親モジュールからの指令がなくとも、それぞれが内蔵したクロック機能に基いてセンシングを自発的に実行するようにしてもよい。
【0019】
センサ部32には子モジュール12と同様に火や煙を感知するセンサや雰囲気の温度や炭酸ガス、一酸化炭素の濃度を感知するセンサが少なくとも1つ組み込まれている。なお、このセンサ部32に組み込むセンサは、好ましくは上記センシング指令信号を作成する上で大きな動機付けとなるような監視項目を検出できるものが選択される。センサ部32で検出された火災検知情報は継続的にデータ処理部30に送られ、データ処理部30では送られた火災検知情報に閾値を越えた変化を発見した時に、子モジュール12に対するセンシング指令信号を作成することもできる。
電力供給部34は通信部26、ネットワーク形成プログラム28、データ処理部30、センサ部32に電力を供給する。この電力供給部34も子モジュール12における電力供給部24と同様に各種の電池によって構成することができる。
次にアドホックネットワークの形成過程について説明する。
【0020】
図4はアドホックネットワークの形成過程の第1段階を例示した説明図である。図4において監視領域10には1個の親モジュール14と多数の子モジュール12A、12B、12C、……が分散配置されている。これらの子モジュールは消費電力を節減する目的で半径rの無線交信限界距離を有している。すなわち、親モジュール14は多数の子モジュールの内、半径rの円形の無線交信限界範囲TA内の子モジュール12A、12B、12C、12D、12Eとのみ交信可能であり、その他の子モジュールとは交信できない。したがって、第1段階では情報の転送経路として、それぞれの子モジュール12A、12B、12C、12D、12Eと親モジュール14とを結ぶ5ルートの一次転送経路a、b、c、d、eが特定される。そして、これらの一次転送経路a、b、c、d、eが親モジュール14のネットワーク形成プログラム28のメモリーに記憶されるとともに、一次転送経路aは子モジュール12Aのデータ処理部20に記憶される。同様に一次転送経路b、c、d、eがそれぞれ子モジュール12B、12C、12D、12Eのデータ処理部20に記憶される。
【0021】
図5はアドホックネットワークの形成過程の第2段階を例示した説明図である。この第2段階では一次転送経路が特定された子モジュール12A、12B、12C、12D、12Eが、それぞれの無線交信限界範囲内の子モジュールを探索する。すなわち、子モジュール12Aは交信可能な子モジュールとして子モジュール12G、12Fを探索し、二次転送経路g、fを特定する。
【0022】
また、子モジュール12Bは交信可能な子モジュールとして子モジュール12S、12Uを探索し、二次転送経路s、uを特定する。また、子モジュール12Cは交信可能な子モジュールとして子モジュール12M,12Qを探索し、二次転送経路m、qを特定する。なお、子モジュール12Cは子モジュール12Sとも交信可能であるが、子モジュール12Sは既に子モジュール12Bとの間で二次転送経路sが特定されている。このため、アドホックネットワークの複雑化と錯綜を回避するために図中、破線で示した転送経路s’は予備転送経路として子モジュール12Cと子モジュール12Sのデータ処理部20に記憶されるに留まり、実際の転送経路としては利用されない。
【0023】
また、子モジュール12Dは交信可能な子モジュールとして子モジュールLを探索し、二次転送経路lを特定する。この子モジュール12Dは子モジュール12Mとも交信可能であるが、子モジュール12Mは既に子モジュール12Cとの間で二次転送経路mが特定されている。このため、破線で示した転送経路m’は予備転送経路として子モジュール12Dと子モジュール12Mのデータ処理部20に記憶されるに留まり、実際の転送経路としては利用されない。また、子モジュール12Eは交信可能な子モジュールとして子モジュールIと子モジュールJを探索し、二次転送経路i、jを特定する。この子モジュール12Eは子モジュール12Fや子モジュール12Lとも交信可能であるが、子モジュール12Fは既に子モジュール12Aとの間で二次転送経路fが特定され、子モジュール12Lは既に子モジュール12Dとの間で二次転送経路lが特定されている。このため、破線で示した転送経路f’、l’も予備転送経路として記憶されるに留まり、実際の転送経路としては利用されない。
【0024】
図6はアドホックネットワークの形成過程の第3段階を例示した説明図である。この第2段階でも上記と同様の考え方で三次転送経路h、k、n、r、tが特定され、また、予備転送経路が記憶される。その結果、監視領域10に分散配置された多数の子モジュール12A、12B、12C、……のすべてが転送経路を介して親モジュール14と繋がり、アドホックネットワークが完成する。監視領域10がより広域にわたり子モジュール12の配置数が多い場合には、上記と同様の手順により子モジュール相互間で四次、五次、……の転送経路が特定されて行く。
【0025】
したがって、それぞれの子モジュール12のセンサ部22で検出された火災検知情報又は処理結果をすべてこの完成したアドホックネットワークを介して親モジュール14に収集することができる。そしてこれらの火災検知情報又は処理結果は親モジュール14の通信部26を経由して監視センタのサーバ16に無線により伝送される。サーバ16では親モジュール14から送信された火災検知情報又は処理結果を分析し、異常が発見された場合には警報を発し、また、必要に応じて消火装置や避難誘導装置を作動させる。また、消防署、警察署などの関係機関ではインターネット等を介して随時にサーバ16にアクセスし、監視領域10における監視状況を知ることができる。
【0026】
なお、上記した第1〜第3段階のアドホックネットワークの形成過程は数秒間のオーダで瞬時に実行される。また、アドホックネットワークが形成された後に、子モジュール12のいずれかが故障するなどして、当初に形成されたネットワークが寸断された場合にも、故障信号に基いてネットワーク形成プログラム28を稼動させ、新たなアドホックネットワークを再形成することができる。
【0027】
図7は上述した当該火災監視システムの構築と作動手順を示したフローチャートである。S100では監視領域10に親モジュール14と多数の子モジュール12が分散配置され、また、監視センタにはサーバ16を設置してシステム構築の準備が整えられる。S110では分散配置された親モジュール14と多数の子モジュール12とがそれぞれに格納したネットワークプログラム28に従って稼動し、アドホックネットワークを自律形成する。S120では親モジュール14又は子モジュール12が内蔵したクロック機能によって定期的に、又は随時に、センシング指令が子モジュール12のセンサ部22に対して発信される。S130ではセンシング指令に応答して子モジュール12ではセンサ部22による火災検知情報の検出が実行される。個々の子モジュール12で検出した火災検知情報が異常の時には、当該子モジュール12自身が警告音を発し、又は警告ランプを点灯して付近にいる人に異常を通知することも可能である。また、子モジュール12に避難誘導経路を表示させることも可能である。さらに、子モジュール12にマイクロホンを装備しておけば、逃げ遅れた人の発声音を当該マイクロホンがキャッチするので、その居場所を正確に把握することができる。
【0028】
S140では子モジュール12のID番号と関連付けた火災検知情報又は処理結果がアドホックネットワークを介して親モジュール14に収集される。S150では親モジュール14に収集された多数の火災検知情報又は処理結果がサーバ16に無線伝送される。S160ではサーバ16によって火災検知情報又は処理結果が分析され、異常が発見された場合には警報を発し、必要な措置が講じられる。また、分析結果がインターネット等を介して関係機関にも開示される。以降、S120〜S160が繰り返される。また、S140において収集された子モジュール12の火災検知情報又は処理結果に欠落が発見された場合には、当該欠落した子モジュール12が何らかの原因によって故障したと判定し、S110に戻ってアドホックネットワークを再形成する。
【0029】
上述のとおり、本実施形態に係る火災監視システムによれば、監視領域10内に分散配置された複数の子モジュール12が通信部18を介して当該子モジュール12相互間でアドホックネットワークを自律形成し、子モジュール12のセンサ部22で検出された火災検知情報が前記アドホックネットワークを介してサーバ16に収集可能とされている。このため、センサネットワークを簡便かつ迅速に構築することができる。
【0030】
また、1個の親モジュール14と複数の子モジュール12によってアドホックネットワークを形成しているネットワーク単位の親モジュール14がサーバ16への伝送手段として機能する。このため、子モジュール12が具備すべき機能を最小限に抑えることができ、コストを節減した火災監視システムを実現することができる。
また、子モジュール12と親モジュール14はアドホックネットワークを形成するためのプログラムを格納している。このため、迅速で簡潔なアドホックネットの自律形成を達成できる。
【0031】
図8は本発明に係る火災監視監視システムの第2実施形態を示す全体構成図である。図8において図1と同一の符号を付した要素は上記第1実施形態と同様の機能を有しており、その説明を省略する。この第2実施形態では無線交信可能距離内にあるすべての子モジュール12が転送経路zによって相互間で繋がることにより、複数の子モジュール12と1個の親モジュール14がアドホックネットワークを形成している。したがって、例えば子モジュール12Hのセンサ部で検出した火災検知情報は、子モジュール12H→12G→12A→親モジュール14の転送経路で親モジュール14に送信可能であり、又は子モジュール12H→12I→12E→親モジュール14の転送経路でも親モジュール14に送信可能とされる。さらに、上記以外の転送経路によっても子モジュール12Hの火災検知情報を親モジュール14に送信できる。このため、例えば転送経路中の子モジュール12Gが故障した場合でも他の転送経路によって火災検知情報を親モジュール14に送信できる。なお、親モジュール14のデータ処理部30には複数の転送経路から送信された同一子モジュール12からの火災検知情報を同一データとして処理する機能を持たせるとよい。
【0032】
図9は本発明に係る火災監視システムの第3実施形態を示す全体構成図である。図9において図1と同一の符号を付した要素は上記第1実施形態と同様の機能を有しており、その説明を省略する。この第3実施形態では監視領域10には2個の親モジュール14が配置されて、それぞれの親モジュール14が複数の子モジュール12との間でアドホックネットワークを形成しており、2つのネットワーク単位が存在している。この第3実施形態は監視領域10が広く、子モジュール12の設置数が多い場合に有効である。また、一方の親モジュール14が故障した際には、2つのネットワーク単位を転送経路x又はyで結ぶ。その結果、すべての子モジュール12の火災検知情報を故障していない方の親モジュール14に収集して、サーバ16に送信することができる。
【0033】
図10は本発明に係る火災監視システムの第4実施形態を示す全体構成図である。図10において図1と同一の符号を付した要素は上記第1実施形態と同様の機能を有しており、その説明を省略する。この第4実施形態では監視領域10には、子モジュール12、親モジュール14以外に中継専用モジュール40が分散配置され、ネットワーク単位の一部を構成している。この中継専用モジュール40は情報を中継する機能のみを保有しており、センサ部を有しない。このため、構造が簡単であり安価に製作できる。したがって、この第4実施形態によれば、まばらに配置した子モジュール12の火災検知情報を、中継専用モジュール40を用いて親モジュール14まで転送することにより、システムの効率化とコスト低減を図る場合に有効である。
【0034】
前記各実施形態は機能の異なる子モジュール12と親モジュール14を用いてアドホックネットワークを形成した火災監視システムであった。しかしながら、本発明はこれに限定されず、すべてのモジュールに同等の機能を保持させ、各モジュールが随意に親モジュール又は子モジュールの役割を分担できるようなシステム構成としてもよい。このような構成によれば、例えばサーバからの指示によって、分散配置された多数のモジュールの内、地理的な条件などによって最適なものを親モジュールに選択することができる。このため、システムの最適化、柔軟化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る火災監視システムの第1実施形態を示す全体構成図である。
【図2】子モジュール12の内部構成を示すブロック図である。
【図3】親モジュール14の内部構成を示すブロック図である。
【図4】アドホックネットワークの形成過程の第1段階を例示した説明図である。
【図5】アドホックネットワークの形成過程の第2段階を例示した説明図である。
【図6】アドホックネットワークの形成過程の第3段階を例示した説明図である。
【図7】当該火災監視システムの構築と作動手順を示したフローチャートである。
【図8】本発明に係る火災監視システムの第2実施形態を示す全体構成図である。
【図9】本発明に係る火災監視システムの第3実施形態を示す全体構成図である。
【図10】本発明に係る火災監視システムの第4実施形態を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0036】
10………監視領域、12………子モジュール、14………親モジュール、16………サーバ、18………通信部、19………ネットワーク形成プログラム,20………データ処理部、22………センサ部、24………電力供給部、26………通信部、28………ネットワーク形成プログラム、30………データ処理部、32………センサ部、40………中継専用モジュール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信部とセンサ部を備えて監視領域内に分散配置された複数のモジュールが前記通信部を介して当該モジュール相互間でアドホックネットワークを自律形成しており、前記複数のモジュールの内、少なくとも1つのモジュールが前記各モジュールのセンサ部で検出された火災検知情報を前記アドホックネットワークを介して収集し、サーバに伝送する伝送手段とされたことを特徴とする火災監視システム。
【請求項2】
1個の親モジュールと複数の子モジュールによって前記アドホックネットワークを形成しているネットワーク単位を少なくとも1つ具備しており、各ネットワーク単位の親モジュールが前記伝送手段とされたことを特徴とする請求項1に記載の火災監視システム。
【請求項3】
前記各モジュールは前記アドホックネットワークを形成するためのプログラムを格納していることを特徴とする請求項2に記載の火災監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−268162(P2006−268162A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−82243(P2005−82243)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】