説明

火災警報器

【課題】室内における布団等の繊維製品の燻焼火災において、燻焼火災初期段階で発生する一酸化炭素の濃度上昇を早期に検知し、住民等にいち早く火災の発生を報知することができる煙・一酸化炭素複合型の火災警報器を提供する。
【解決手段】本体1と、煙検知部2と、一酸化炭素検知部3とを備えた煙・一酸化炭素複合型の火災警報器であって、前記本体1と前記一酸化炭素検知部3とを別体に構成し、当該一酸化炭素検知部3を前記煙検知部2より下方に設けてある火災警報器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本体と、煙検知部と、一酸化炭素検知部とを備えた煙・一酸化炭素複合型の火災警報器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の火災警報器として、本体に煙検知部と一酸化炭素検知部とを備えた一体構造のタイプのものが知られている。
その一例として、一酸化炭素センサ(一酸化炭素検知部)と煙感知センサ(煙検知部)とを一体のケーシング内に配置したガス火災警報器があった(例えば、特許文献1を参照)。
特許文献1のガス火災警報器は、一酸化炭素センサと煙感知センサとを一体のケーシング内部に設けることにより、各センサからの信号を統合的に処理する。この処理は、一酸化炭素の検出濃度および煙の検出濃度の両方が閾値を超えた場合に「火災」と判定するものである。従って、例えば、料理によって発生した煙のみを検出しても「火災」と判定されることはない。このようにして、ガス警報器の誤報を防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−30165号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
火災が発生すると、通常、その燃焼部から一酸化炭素とともに煙が発生する。
しかし、住宅やホテル等の居室内における布団等の繊維製品の火災では、例えば、寝タバコが原因である場合、火元が布団に覆われ空気が遮断された状態で火元が燻り続ける、いわゆる燻焼火災となることがある。このような燻焼火災が繊維製品において発生すると、一酸化炭素は火災初期段階から発生するのに対し、煙は燻焼火災がある程度進行しなければ殆んど発生することはない。これは、一酸化炭素は繊維製品を構成する繊維を直ちに通過することができるが、これよりもサイズが大きい粒子である煙は繊維によって移動が阻害されて容易に通過することができず、繊維製品の内部に滞留するためである。
【0005】
繊維製品の燻焼火災においては、火災がある程度進行して本格的な燻焼状態になると、繊維製品の表面から一酸化炭素とともに煙が大量に発生する。そして、この段階では火災の熱によって大きな上昇気流が形成されているため、一酸化炭素および煙の双方が比較的速く居室の上方に移動することが知られている。
従って、燻焼火災がある程度進行した段階であれば、一酸化炭素センサと煙感知センサとを一体のケーシング内に配置した特許文献1のガス火災警報器を、警報器が通常設置される天井付近に取り付けた場合であっても、居室の天井付近に一酸化炭素および煙の双方が到達しているため、火災を検知することができる。ただし、この時点では、すでに居室全体に一酸化炭素が拡散している可能性もある。
【0006】
一方、繊維製品の燻焼火災の初期段階においては、繊維製品から発生する一酸化炭素の挙動はこれまで十分に解明されていなかった。つまり、初期段階から発生した一酸化炭素は、居室中をどのように移動し、どのように拡散していくかについて、ほとんど知られていないのが現状であった。
この点に関して、特許文献1のガス火災警報器は、一酸化炭素センサと煙感知センサとを一体のケーシング内に配置した構成であるため、これを天井付近に取り付けた場合、居室内で繊維製品の燻焼火災が発生しても、火災初期段階で発生する一酸化炭素を早期に検知できるか分からないという問題がある。
なお、火災警報器は、居室の天井を基準として所定の上方位置に本体を取り付けることが義務付けられているため、特許文献1のガス火災警報器の取り付け位置を変更することには問題がある。
【0007】
従って、一台の火災警報器によって特性の異なる複数種のガス等(例えば、一酸化炭素と煙)の検知を行う場合、特許文献1のように複数の検知部を一体のケーシング内に配置した一体構造のガス火災警報器では、すべての検知対象を早期に検知し、住民等に対して火災の発生を迅速に報知することは困難である。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、特に、室内における布団等の繊維製品の燻焼火災において、燻焼火災初期段階で発生する一酸化炭素の濃度上昇を早期に検知し、住民等にいち早く火災の発生を報知することができる煙・一酸化炭素複合型の火災警報器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る火災警報器の特徴構成は、本体と、煙検知部と、一酸化炭素検知部とを備えた煙・一酸化炭素複合型の火災警報器であって、前記本体と前記一酸化炭素検知部とを別体に構成し、当該一酸化炭素検知部を前記煙検知部より下方に設けた点にある。
【0010】
居室内で布団等の繊維製品に燻焼火災が発生した場合、火元が繊維製品によって覆われていると、火災初期段階では繊維製品表面から煙よりも先に一酸化炭素が発生する。この火災初期段階では上昇気流を形成するための熱の発生量が少なく、しかも一酸化炭素はその分子量(28.01)が空気の平均分子量(28.97)に近いため、一酸化炭素が天井付近まで直ちに上昇することはない。このような理由から、燻焼火災の初期段階では、一酸化炭素は居室空間の高さ方向における中間領域に滞留する傾向があると考えられる。
一方、繊維製品の火災が進行して本格的な燻焼状態になると、繊維製品からは一酸化炭素とともに煙が大量に発生する。そして、この段階では火災の熱によって大きな上昇気流が形成されているため、一酸化炭素および煙の双方が比較的速く居室の天井付近にまで到達する。
このような居室内における繊維製品の燻焼火災に特有の現象に鑑みて、本構成の火災警報器では、本体と一酸化炭素検知部とを別体に構成し、当該一酸化炭素検知部を前記煙検知部より下方に設けている。この構成により、従来の居室の天井付近に設けられる煙検知部と一酸化炭素検知部とが一体となったガス火災警報器と比較して、居室内に局在している一酸化炭素が所定の濃度(例えば、約100ppm)に達したことを一酸化炭素検知部が早期に検知し、居室内外の住民等に対していち早く火災の発生を報知することが可能となる。
【0011】
本発明に係る火災警報器において、前記一酸化炭素検知部を床面から1.0〜1.5mの高さに設けることが好ましい。
【0012】
上述のように、布団等の繊維製品の燻焼火災の初期段階では、繊維製品表面から煙よりも先に一酸化炭素が発生し、この一酸化炭素は居室空間の高さ方向における中間領域に滞留する傾向がある。
そこで、本構成の火災警報器では、一酸化炭素検知部を床面から1.0〜1.5mの高さに設けている。この、1.0〜1.5mの高さは、一酸化炭素が居室空間において滞留し易い領域、すなわち、居室内に局在する一酸化炭素濃度が高まり易いと考えられる領域である。
従って、本構成の火災警報器のように、一酸化炭素検知部を床面から1.0〜1.5mの高さに設ければ、居室内に局在する一酸化炭素が所定の濃度(例えば、約100ppm)に達したことをさらに早期に検知し、居室内外の住民等に対して火災の発生をより迅速
に報知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】煙・一酸化炭素複合型の火災警報器を居室に取り付けた状態を示す概略図
【図2】燻焼火災試験を行った模擬居室の構成図
【図3A】綿布団を使用した燻焼火災試験における一酸化炭素濃度の経時変化を示す図
【図3B】綿布団を使用した燻焼火災試験における一酸化炭素濃度の経時変化を示す図
【図4A】羊毛・ポリエチレン混合布団を使用した燻焼火災試験における一酸化炭素濃度の経時変化を示す図
【図4B】羊毛・ポリエチレン混合布団を使用した燻焼火災試験における一酸化炭素濃度の経時変化を示す図
【図5】綿布団の燻焼火災試験における一酸化炭素濃度および煙濃度の経時変化を示すグラフ
【図6】ゴミ箱の燻焼火災試験における一酸化炭素濃度および煙濃度の経時変化を示すグラフ
【図7】生ゴミ入りゴミ箱の燻焼火災試験における一酸化炭素濃度および煙濃度の経時変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態および図面に記載される構成に限定されるものではなく、これらと均等な構成も含み得る。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態である煙・一酸化炭素複合型の火災警報器10を居室Aに取り付けた状態を示す概略図である。
【0016】
火災警報器10は、本体1と、煙検知部2と、一酸化炭素検知部3とを備えている。火災警報器10は、本体1と一酸化炭素検知部3とが別体に構成され、両者は信号線4により有線接続されている。図1のように、煙検知部2が本体1に内蔵されるものである場合、本体1を居室Aの上方に設け、一酸化炭素検知部3を煙検知部2より下方に設ける必要がある。具体的には、本体1を居室Aの天井付近、例えば、天井Rから0.15m〜0.50mの範囲内の側壁に設け、一酸化炭素検知部3を居室Rの床面Fから高さhの位置(h<本体1の高さ)の側壁に設ける。これは、先に説明したように、燻焼火災の初期段階において煙よりも先に発生した一酸化炭素は、居室空間の高さ方向における中間領域に滞留し易いという特性によるものである。
【0017】
本発明では、前述の一酸化炭素検知部3を設ける高さhを適切な範囲に設定することにより、火災時における一酸化炭素の濃度上昇を迅速に検知することができる。この高さhについての好ましい範囲は、h=1.0〜1.5mであり、より好ましくはh=1.2〜1.3mである。これらの好適な数値範囲は、以下の実施例において説明する各種燻焼火災試験から実証される。
【実施例】
【0018】
図2は、燻焼火災試験を実施した模擬居室aの構成図である。模擬居室aは、幅3.6m×奥行き3.6m×高さ2.5mの空間を有する。この空間は、約8畳の広さに相当する一般住宅の居室を想定したものである。模擬居室a内には、床面fから天井rに達する4本のポールM、N、O、Pが設けられる。各ポールM、N、O、Pは、床面fおよび天井rの各隅部から0.9m×0.9mの位置に両端が固定される。さらに、各ポールM、N、O、Pには、床面fから0.25m、1.25m、2.25mの高さ位置に一酸化炭素検知素子(以下、COセンサと称する)が取り付けられる。ポールMに取り付けられるCOセンサを上から順にm1、m2、m3と命名する。ポールN、O、Pに取り付けられるCOセンサについても同様に命名する。燻焼火災の火源は、模擬居室aの床面fの中央に設置される。
【0019】
居住者が、一定濃度(例えば、約150〜200ppm)の一酸化炭素が存在する空間に一定時間(例えば、約30〜60分)以上留まると、人体に頭痛等の影響が及び始める。
従って、模擬居室a中の一酸化炭素の濃度が高まり易い領域において、上記一定濃度に達する前の段階である所定濃度(例えば、約100ppmの濃度であり、以後この濃度を警報濃度と称する)に達したときに住民等に報知する。これにより、居室a内における燻焼火災が本格化し、室内全体に一酸化炭素が拡散する前に火災報知が可能となる。本燻焼火災試験では、このような警報濃度の報知を迅速に行うことができる火災警報器10の設置条件を求めることを目的としている。
【0020】
本燻焼火災試験では、火災源Xとして綿布団および羊毛・ポリエチレン混合布団を使用し、夫々について燻焼火災を発生させ、ポールに取り付けられた各COセンサで一酸化炭素の濃度変化を経時的に測定した。そして、この測定結果から、一酸化炭素の濃度が高ま
り易い領域、および当該領域において警報濃度(約100ppm)に達する時間を求めた。
【0021】
(実施例1) 綿布団の燻焼火災試験
図3Aから図3Bにかけて示される(a)〜(y)は、火災源Xとして綿布団を使用した燻焼火災試験における模擬居室a内の一酸化炭素濃度の経時変化を示す図である。図3Aおよび図3Bの各図に示す長方形は、模擬居室aにおいて同一の側壁に対して平行に配置される2つのポール(例えば、ポールM、Nとする)と、それらのポールの上部のCOセンサ同士(例えば、m1とn1)および下部のCOセンサ同士(例えば、m3とn3)を結ぶ線とによって規定される領域を示している。センサの存在しない箇所における一酸化炭素濃度については、センサを設けた箇所(m1、m2、m3、n1、n2、n3)を適宜直線で結び、当該直線に沿って、各センサにおける一酸化炭素濃度検出値を比例配分することで補間している。また、補間によって求めた任意の2つの一酸化炭素濃度検出値に関して、さらに同様の補間をすることにより、さらに多くの地点における一酸化炭素濃度を計算的に求めている。
【0022】
燻焼火災が発生してから18分後に模擬居室aの中央付近(h=1.25m)から一酸化炭素濃度が上昇し始めた(図3A(c))。19〜20分後に一酸化炭素濃度が100ppmを超える領域が発生した(図3A(d)〜(e))。そして、21〜28分後において、一酸化炭素濃度が100ppm以上となる警報濃度の領域が徐々に拡大および持続した(図3A(f)〜(m))。このとき、警報濃度に達する一酸化炭素が存在する領域は、およそ0.6〜1.7mの高さ位置に分布していることが判明した。その後、さらに時間が経過すると、燻焼火災の熱による上昇気流によって一酸化炭素は模擬居室aの上方に拡散し(図3A(n)〜図3B(v))、最終的に模擬居室aの天井付近では一酸化炭素濃度が250ppm以上となった(図3B(w)〜(y))。
【0023】
以上の結果より、綿布団の燻焼火災時における一酸化炭素の濃度が高まり易い領域は、おおよそh=0.6〜1.7mの高さ位置に存在するという事実が今回初めて明らかとなった。この新事実に鑑みて、火災警報器10を居室内に設置する場合、本体1とは別体に構成される一酸化炭素検知部3を設置する高さ位置は、上記高さ位置(h=0.6〜1.7m)からある程度の余裕を考慮し、h=1.0〜1.5mの範囲とするのが好ましい。この範囲であれば、燻焼火災の発生から約20分後の比較的早期の段階で一酸化炭素が警報濃度(約100ppm)に達したことを迅速に検知し、住民等に対して火災の発生を報知することができる。
安全性をさらに高めるべく、火災警報器10による報知をもっと早期に行うためには、一酸化炭素検知部3の設置高さhを、h=1.2〜1.3mの範囲とするのがより好ましい。この範囲であれば、燻焼火災の発生から約18分後のさらに早期の段階で、一酸化炭素が警報濃度(約100ppm)に達したことを検知し、報知することができる。
【0024】
(実施例2) 羊毛・ポリエチレン混合布団の燻焼火災試験
図4Aから図4Bにかけて示される(a)〜(y)は、火災源Xとして羊毛・ポリエチレン混合布団を使用した燻焼火災試験における模擬居室a内の一酸化炭素濃度の経時変化を示す図である。図4Aおよび図4Bの各図に示す長方形の領域内の一酸化炭素濃度は、図3Aおよび図3Bと同様の手法によって求めたものである。
【0025】
燻焼火災が発生してから28分後に模擬居室aの中央付近(h=1.25m)から一酸化炭素濃度が上昇し始めた(図4A(a))。32分後に一酸化炭素濃度が100ppmを超える領域が発生した(図4A(c))。そして、34〜40分後において、一酸化炭素濃度が100ppm以上となる警報濃度の領域が徐々に拡大および持続した(図4A(d)〜(g))。このとき、警報濃度に達する一酸化炭素が存在する領域は、おおよそh
=0.7〜1.6mの高さ位置に分布していることが判明した。その後、さらに時間が経過すると、燻焼火災の熱による上昇気流によって一酸化炭素は模擬居室aの上方に拡散し(図4A(h)〜図4B(x))、最終的に模擬居室aの天井付近では一酸化炭素濃度が450ppm以上となった(図4B(y))。
【0026】
以上の結果より、羊毛・ポリエチレン混合布団の燻焼火災時においても、上記綿布団の燻焼火災と同様に、h=1.0〜1.5mの範囲とするのが好ましく、より好ましくはh=1.2〜1.3mの範囲である。
【0027】
(実施例3)
本発明の火災警報器10における一酸化炭素検知部3の高さ位置hに関して、上述の好適な範囲は、次に説明する燻焼火災試験によっても実証することができる。
【0028】
本燻焼火災試験では、綿布団、ゴミ箱、および生ゴミ入りゴミ箱を燻焼火災源とした。図2の模擬居室a内において、例えば、ポールMの上部(h=2.25m)のCOセンサm1、中部(h=1.25m)のCOセンサm2、下部(h=0.25m)のCOセンサm3で一酸化炭素濃度を経時的に測定する。もちろん、他のポールに取り付けられたCOセンサによって一酸化炭素濃度の測定を行うことも可能である。
【0029】
測定結果を図5〜7に示す。図5(a)は、綿布団の燻焼火災試験における一酸化炭素濃度の経時変化を示すグラフであり、図6(a)は、ゴミ箱の燻焼火災試験における一酸化炭素濃度の経時変化を示すグラフであり、図7(a)は、生ゴミ入りゴミ箱の燻焼火災試験における一酸化炭素濃度の経時変化を示すグラフである。また、各グラフには参考として、天井付近(h=2.4m)で測定した煙濃度の経時変化を図5(b)、図6(b)、図7(b)として併記した。COセンサm2の測定値が警報濃度(約100ppm)よりも高い一定濃度(本実施例では、約150ppmとする)に達した時点(図5〜7中の点線で示した時間)で、COセンサm1およびm3の測定値を読み取り、COセンサm1およびm2の間、ならびにCOセンサm2およびm3の間で測定濃度を直線補間し、一酸化炭素濃度が警報濃度(約100ppm)となる高さ位置を推定した。その推定結果を以下の表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
燻焼火災対象物によって多少の差はあるが、一酸化炭素濃度が警報濃度(約100ppm)となる上限高さ位置は約1.5〜1.7mの範囲であり、下限高さ位置は約0.6〜1.0mの範囲であることが判明した。
【0032】
従って、この燻焼火災試験からも一酸化炭素検知部3の高さ位置hは、h=1.0〜1.5mの範囲とするのが好ましい。また、安全性をさらに高めるべく、警報濃度に達したことの報知をより早期に行うためには、一酸化炭素検知部3の高さ位置hを、h=1.2〜1.3mの範囲とするのがより好ましい。
【0033】
ところで、上記実施例1〜3は、アパート、マンション、一戸建て住宅等の一般住宅の
居室を想定した模擬居室aにおいて行ったものであるが、工場や店舗等のさらに大きな空間領域を有する居室、あるいはビジネスホテルの客室、ワンルームマンション等の比較的小さな空間領域を有する居室においても、上記実施例1〜3の結果から一酸化炭素検知部3の好ましい設置高さhを推定することができる。
【0034】
上記の一酸化炭素検知部3の好ましい設置高さhの下限値および上限値である1.0mおよび1.5mを、火災源Xから模擬居室aの壁部までの水平距離1.8mで除した比率は、それぞれ1.0m/1.8m≒0.56(下限比率)、1.5m/1.8m≒0.83(上限比率)となる。ここで、模擬居室aとは異なるスケールを有する居室で燻焼火災が発生した場合において、火災源から発生する煙および一酸化炭素は上記模擬居室aにおける実施例と略同様の挙動を示すと考えれば、火災源Xから居室の壁部までの水平距離をx(m)とすると、一酸化炭素検知部3の設置高さの下限h(L)および上限h(H)は、
[数1]
【0035】
h(L) = 0.56x ・・・ (1)
h(H) = 0.83x ・・・ (2)
となる。すなわち、居室中において火災源Xとなり得る位置を予測し、当該位置から居室の壁部までの距離x(m)を求めれば、居室スケールの大小に関わらず、一酸化炭素検知部3の好ましい設置高さhは、h=0.56x〜0.83x(m)と算出することができる。
なお、現実的には、h=0.6x〜0.8x(m)の範囲に設定すれば、一酸化炭素が警報濃度に達したことを迅速に検知し、居室内外の住民等に対して火災の発生を報知することができる。
【0036】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、火災警報器10の煙検知部2は本体1に内蔵されているが、煙検知部2を別体として構成することも可能である。例えば、一酸化炭素検知部3と同様に、本体1と有線接続される別体の煙検知部2を設けてもよい。このような構成では、本体1のみをコンセント差込口等の電源供給部の近傍に設ければよく、煙検知部2および一酸化炭素検知部3については設置する位置の制約は受けない。よって、煙検知部2および一酸化炭素検知部3を適切な位置に設置することにより、検知対象物の特性に応じた最適な検知が可能となる。
(2)火災警報器10の本体1とは別体で構成される一酸化炭素検知部3は、センサ素子と検知回路とを有した検知ユニットとして構成してもよいし、センサ素子のみで構成してもよい。後者の場合は主要な検知回路を本体1側に配置する。この場合、別体の一酸化炭素検知部3をより小型化することができるので、火災警報器10の配設がより簡単になる。
(3)上記実施形態では、火災警報器10の本体1と一酸化炭素検知部3とを信号線4により有線接続しているが、両者を赤外線や電波等により無線通信可能としてもよい。この場合、配線が不要となるので、複数の居室に跨って本体と複数の一酸化炭素検知部とを配設する場合等においては、取り回し等の点において特に有効となる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は煙・一酸化炭素複合型の火災警報器に関するが、本発明の技術思想はこのような火災警報器に限られず、他の種類のガス(例えば、硫化水素、アンモニア、塩素、ホスフィン等の有毒ガスや、天然ガス、炭化水素ガス、アルコール等の可燃性ガス)を検知する各種警報器においても適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 本体
2 煙検知部
3 一酸化炭素検知部
4 信号線
10 火災警報器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、煙検知部と、一酸化炭素検知部とを備えた煙・一酸化炭素複合型の火災警報器であって、
前記本体と前記一酸化炭素検知部とを別体に構成し、当該一酸化炭素検知部を前記煙検知部より下方に設けてある火災警報器。
【請求項2】
前記一酸化炭素検知部を床面から1.0〜1.5mの高さに設けてある請求項1に記載の火災警報器。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−142036(P2012−142036A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−103796(P2012−103796)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2007−247688(P2007−247688)の分割
【原出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【Fターム(参考)】