説明

火花点火式内燃機関の燃焼状態判定方法

【課題】プラズマを生成して着火する内燃機関において、プラズマが燃焼室内に残っている場合には、そのプラズマに含まれるイオンによりイオン電流が流れるため、イオン電流に基づいて失火状況を検出することが困難なことがある。
【解決手段】点火プラグを備え、点火プラグに接続される点火コイルを介して印加される高電圧により生じる火花放電と燃焼室内に生成される電界とを反応させてプラズマを生成して混合気に着火する火花点火式内燃機関の燃焼状態判定方法であって、火花放電後の点火プラグに火花放電に関連して二次的に生じる二次的電圧の変化を検出し、検出した二次的電圧の変化が所定範囲を逸脱している場合に失火を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室内に生成される電界と点火プラグによる火花放電とを反応させてプラズマを生成して混合気に着火する火花点火式内燃機関の燃焼状態判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車用の内燃機関では、失火しないように、例えばイオン電流を用いて燃焼状態を監視し、燃焼状態の変化から失火の発生を検出するようにしている。例えば特許文献1には、燃焼に対応して発生するイオン電流の発生(持続)している時間(発生時間)と、イオン電流として検出したノイズによる電流の持続している時間(持続時間)とを合計し、発生時間と持続時間との検出回数により合計した時間を除し、商の値により失火の有無を判定するものが記載されている。失火と燃焼との判定は、あらかじめ設定する判定値と商との比較により行われるもので、商が判定値より大なる場合に正常燃焼と判定し、商が判定値より小である場合に失火と判定するものである。
【0003】
一方、燃焼状態を良好にするために、点火プラグの火花放電を補うことが試みられている。例えば特許文献2に記載のもののように、点火プラグの放電領域にプラズマ雰囲気を生成しておき、プラズマ雰囲気中にアーク放電を行うことにより、従来に比べて高い電圧を印加することなく燃焼室内の混合気に確実に着火し、安定した火炎を得ることができるように構成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008‐51031号公報
【特許文献2】特開2007‐32349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献2のもののようなプラズマを用いる着火方式にあっては、プラズマを生成するために、点火プラグの中心電極と接地電極とが電界中に位置するように、電界を生成する。この場合、例えば中心電極を電界生成のための手段として中心電極に交流電圧を印加すると、中心電極と接地電極との間に火花放電を生成している間は、イオン電流の検出ができなくなる。このため、上述した特許文献1のような、イオン電流を用いて失火を検出することが困難になる。しかも、プラズマが燃焼室内に残っている場合には、そのプラズマに含まれるイオンによりイオン電流が流れるため、イオン電流に基づいて失火状況を検出することが困難なことがある。
【0006】
そこで本発明は、このような不具合を解消することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の火花点火式内燃機関の燃焼状態判定方法は、点火プラグを備え、点火プラグに接続される点火コイルを介して印加される高電圧により生じる火花放電と燃焼室内に生成される電界とを反応させてプラズマを生成して混合気に着火する火花点火式内燃機関の燃焼状態判定方法であって、火花放電後の点火プラグに火花放電に関連して二次的に生じる二次的電圧の変化を検出し、検出した二次的電圧の変化が所定範囲を逸脱している場合に失火を判定することを特徴とする。
【0008】
このような構成によれば、失火している場合は、プラズマは生成されているが、そのプラズマを中心として火炎が燃焼室内に拡大しないため、点火プラグを介して測定される火花放電に関連して生じる二次的電圧の変化が所定範囲を逸脱するので、失火を判定することが可能になる。つまり、プラズマは形成されているものの、失火すると火炎核の形成が不安定あるいはないことになり、プラズマを媒体にして点火プラグに生じる二次的電圧に対する燃焼室内における電気抵抗が高くなることで、二次的電圧の変化が所定範囲を逸脱する。したがって、イオン電流により失火を判定する方法に比較して、精度よく失火を判定することが可能になる。
【0009】
二次的電圧とは、火花放電後に点火コイルの二次側の回路において測定可能な電圧、及び電界を生成するための電界生成手段の出力側において測定可能な電圧を指すもので、具体的には、点火コイルの二次側巻線に流れる電流に基づいて測定する電圧、及び点火コイルの二次側巻線に発生する電圧、並びに電界生成手段の出力段において測定可能な電圧である。したがって、失火を判定するに際しては、これらの電圧の変化が、所定範囲にあるか否かを判定することで行えばよい。
【0010】
上記の電界生成手段としては、各種の周波数の電磁波を発生させる電磁波発生装置、燃焼室内に配置される一対の電極に交流電圧を印加する交流電圧発生装置、及び同じく一対の電極に脈流電圧を印加する脈流電圧発生装置などが挙げられる。
【0011】
電磁波発生装置が発生する電磁波としては、マイクロ波、各種無線通信例えばアマチュア無線において使用される周波数を含む高周波などが挙げられる。
【0012】
交流電圧発生装置が出力する交流電圧は、上述の高周波と等しい周波数のものである。
【0013】
脈流電圧発生装置は、周期的に電圧が変化する直流電圧を発生させるものであればよく、その直流電圧の波形は任意であってよい。すなわち、本願における脈流電圧は、0ボルトを含む基準となる電圧から、一定周期で一定電圧まで変化するパルス電圧や、一定周期で順次増減する電圧まで変化する、例えば交流電圧を半波整流したような波形の直流電圧、さらには交流に直流バイアスをかけた直流電圧などを含むものである。この場合において、一定周期は、上述の高周波における周波数に対応するものであってよい。なお、波形は、上述したものに限定されるものではなく、正弦波、鋸歯状波、三角波などであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、本発明は、以上説明したような構成であり、失火した際に火炎核の形成が不安定あるいはないことに起因して、プラズマにより点火プラグに生じる二次的電圧に対する燃焼室内における電気抵抗が高くなって、二次的電圧の変化が所定範囲を逸脱することを判定するので、イオン電流により失火を判定する方法に比較して、精度よく失火を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の概略構成を示す構成説明図。
【図2】同実施形態の制御手順を示すフローチャート。
【図3】本発明の実施形態において使用できる電磁波発生装置の構成を示すブロック図。
【図4】本発明の実施形態において使用できる交流電圧発生装置の構成を示すブロック図。
【図5】図4におけるHブリッジ回路の一例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
図1に1気筒の構成を概略的に示したエンジン100は、自動車用の3気筒のものである。エンジン100の吸気系1には、図示しないアクセルペダルに応動して開閉するスロットルバルブ2が配設され、そのスロットルバルブ2の下流にはサージタンク3が設けられている。サージタンク3が連通するシリンダヘッド4側の端部近傍には、さらに燃料噴射弁5が設けてあり、この燃料噴射弁5を電子制御装置6により制御するようにしている。そして、燃焼室7の天井部分には、点火プラグ8が取り付けてある。点火プラグ8には、イグナイタを一体に備える点火コイル9が交換可能に取り付けられている。この実施形態では、点火プラグ8の中心電極8aを、電界を生成するための電界生成手段の一部としている。中心電極8aは、電界生成手段であるマイクロ波発生装置11に図示しない導波管及び同軸ケーブルを介して接続されている。また、排気系12には、図示しないマフラに至るまでの管路に三元触媒(以下、触媒13と称する)が配設され、その上流にはO2センサ14が取り付けられている。なお、イグナイタは、点火プラグ8をセンサとして、プラズマの生成及び混合気の燃焼に伴って生じるイオン電流を検出するイオン電流検出回路を備えるものである。
【0018】
マイクロ波発生装置11は、マグネトロン15とマグネトロン15を制御する制御回路16とを備えてなる。マグネトロン15が出力するマイクロ波は、導波管及び同軸ケーブルにより点火プラグ8に印加される。又、制御回路16には、電子制御装置6から出力されるマイクロ波発生信号nが入力される構成で、制御回路16は、入力されるマイクロ波発生信号nに基づいてマグネトロン15が出力するマイクロ波の出力時期及び出力電力を制御するものである。
【0019】
電子制御装置6は、中央演算処理装置18と、記憶装置19と、入力インターフェース20と、出力インターフェース21とを具備してなるマイクロコンピュータシステムを主体に構成されている。中央演算処理装置18は、記憶装置19に格納された後述の燃焼状態判定プログラムを実行して、エンジン100の運転制御を行うものである。また電子制御装置6は、燃焼状態判定プログラムを実行するにあたって必要な、点火コイル9の二次側電圧gを測定する電圧測定回路を備える。
【0020】
そしてエンジン100の運転制御を行うために必要な情報が入力インターフェース20を介して中央演算処理装置18に入力されるとともに、中央演算処理装置18は出力インターフェース21を介して制御のための信号を燃料噴射弁5などに出力する。具体的には、入力インターフェース20には、サージタンク3内の吸入空気の圧力を検出するための吸気圧センサ22から出力される吸気圧信号a、エンジン回転数を検出するための回転数センサ23から出力される回転数信号b、スロットルバルブ2の開閉状態を検出するためのアイドルスイッチ24から出力されるIDL信号c、エンジン100の冷却水温を検出するための水温センサ25から出力される水温信号d、燃焼室7から排気弁を介して排出された排気ガス中の酸素濃度を検出するためのO2センサ14から出力される電圧信号f、及び後述する二次側電圧gなどが入力される。一方、出力インターフェース21からは、燃料噴射弁5に対して燃料噴射信号p、イグナイタ10に対して点火信号m及びマイクロ波発生装置11に対してマイクロ波発生信号nなどが出力されるようになっている。
【0021】
電子制御装置6には、吸気圧センサ22から出力される吸気圧信号aと回転数センサ23から出力される回転数信号bとを主な情報とし、エンジン100の運転状態に応じて決まる各種の補正係数で基本噴射時間を補正して燃料噴射弁5の開成時間、すなわちインジェクタ最終通電時間を決定し、その決定された通電時間により燃料噴射弁5を制御して、エンジン負荷に応じた燃料を該燃料噴射弁5から吸気系1に噴射させるためのプログラムが内蔵してある。
【0022】
このエンジン100にあっては、マイクロ波発生装置11が発生するマイクロ波を上述した出力時期に合わせて中心電極8aから燃焼室7内に放射し、それにより生成される電界と点火プラグ8による火花放電とを反応させてプラズマを生成し、混合気に着火するように構成されている。プラズマを生成する場合、マイクロ波が中心電極8aに印加されることにより、燃焼室7内には、点火プラグ8による火花放電に対して直交する方向に電界が生成される。
【0023】
点火に際しては、点火プラグ8に点火コイル9により火花放電を発生させて、火花放電開始とほぼ同時あるいは火花放電開始直後あるいは火花放電開始直前にマイクロ波により電界を発生させ、火花放電と電界とを反応させてプラズマを生成させることにより、燃焼室7内の混合気を急速に燃焼させる構成である。なお、火花放電開始直後とは、遅くとも火花放電を構成する誘導放電の開始時が好ましい。
【0024】
具体的には、点火プラグ8による火花放電が電界中でプラズマになり、当該プラズマにて混合気に着火を行うことで火炎伝播燃焼の始まりとなる火炎核が火花放電のみの点火に比べて大きくなるとともに燃焼室7内に大量のラジカルが発生することで燃焼が促進される。
【0025】
これは、火花放電による電子の流れ及び火花放電によって生じたイオンやラジカルが、電界の影響を受け振動、蛇行することで行路長が長くなり、周囲の水分子や窒素分子と衝突する回数が飛躍的に増加することによるものである。イオンやラジカルの衝突を受けた水分子や窒素分子は、OHラジカルやNラジカルになると共に、イオンやラジカルの衝突を受けた周囲の気体は電離した状態、言換するとプラズマ状態となることで、飛躍的に混合気への着火領域が大きくなり、火炎伝播燃焼の始まりとなる火炎核も大きくなるものである。
【0026】
この結果、火花放電と電界とが反応し発生したプラズマにより混合気に着火するため、着火領域が拡大し、点火プラグ8のみの二次元的な着火から三次元的な着火になる。したがって、初期燃焼が安定し、上述したラジカルの増加に伴って燃焼が燃焼室7内に急速に伝播し、高い燃焼速度で燃焼が拡大する。
【0027】
このような構成において、火花放電後の点火プラグ8に火花放電に関連して二次的に生じる二次的電圧の変化を検出し、検出した二次的電圧の変化が所定範囲を逸脱している場合に失火を判定する燃焼状態判定プログラムが電子制御装置6に内蔵してある。この実施形態においては、二次的電圧は、点火コイル9の二次側において生じる二次側電圧を採用するものである。
【0028】
以下、このエンジン100の燃焼状態判定の概略手順を、図2に示すフローチャートにより説明する。この燃焼状態判定は、燃焼の促進している定常運転状態、失火限界に近い運転状態、及び過渡運転状態において実行する。これらの運転状態にあっては、マイクロ波を中心電極8aに印加している時間が、上記以外の運転状態に対する場合より長いものである。
【0029】
まず、ステップS1では、点火コイル9の二次側電圧の変化を点火毎に検出するために、二次側電圧gを測定してその変化幅を測定する。変化幅は例えば、二次側電圧gの最大値と最小値とを測定し、測定した最大値と最小値との差を演算することで測定する。この実施形態では、点火プラグ8の中心電極8aにマイクロ波を印加しているので、生成されたプラズマを媒体として点火プラグ8を介して点火コイル9の二次巻線に流れた電流に基づいて、二次側電圧gを測定する。二次側電圧gの変化幅の測定は、点火コイル8に点火信号が印加された後の所定時間だけ行う。電流は、プラズマ内におけるイオンに基づくイオン電流が、マイクロ波により変調された状態で流れるものである。
【0030】
ステップS2では、測定した二次側電圧gの変化幅が、所定範囲内に入っているか否かを判定する。所定範囲は、エンジンを定常運転した場合の二次側電圧gの変化幅を基準にして設定するもので、定常運転において、正常な燃焼である場合に測定した二次側電圧gの変化幅が範囲内に収まるように、定常運転における二次側電圧gの変化幅より大きい範囲に設定している。このような所定範囲は、エンジン100の運転領域、例えば低負荷低回転、低負荷高回転、高負荷低回転、高負荷高回転のように区画された運転領域に対応して設定される。
【0031】
測定した二次側電圧gが所定範囲を逸脱していると判定した場合は、ステップS3に進み、この時の点火は不良で、失火したと判定する。一方ステップS2において、測定した二次側電圧gが所定範囲内に収まっていた場合は、ステップS4に進み、正常な燃焼と判定する。
【0032】
このような構成において、例えば、排気ガス還流制御(EGR)における排気ガス還流量が多くなることで失火限界に近い運転状態にある場合、点火プラグ8の中心電極8aにマイクロ波を印加する時間が延びる。したがって、長時間にわたってプラズマが存在するものである。
【0033】
この状態で、正常に燃焼している場合は、プラズマが生成された後、火炎核が形成されて、火炎核を中心にして火炎が燃焼室7内に拡大する。このように、火炎が拡大した場合は、燃焼室7内にあるプラズマ及び燃焼ガスにより、点火プラグ8の中心電極8aにイオン電流が流れ込む。したがって点火プラグ8を介して測定される二次側電圧gは安定し、その変化は小さいものとなる。これは、プラズマが中心電極8a近傍に形成され、着火に十分な火炎核が形成されることで、イオン電流の流れる経路の電気抵抗が低くなることに起因する。
【0034】
すなわち、この場合、プログラムを実行すると、ステップS1及びステップS2を実行し、測定した二次側電圧gの変化幅が所定範囲内に収まるので、ステップS4にて失火しておらず正常な燃焼であると判定する。
【0035】
これとは逆に、失火している場合は、プラズマは生成されているが、そのプラズマを中心として火炎核が生成されない。このため、火炎が燃焼室7内に拡大しないため、点火プラグ8を介して測定される二次側電圧gの変化が所定範囲を逸脱する。この場合、上述とは異なり、プラズマは形成されているものの、失火すると火炎核の形成が不安定あるいはないことになる。したがって、イオン電流の燃焼室7内における電気抵抗が高くなることで、二次側電圧の変化幅が大きくなるものである。その結果、二次側電圧gの変化幅が所定範囲を逸脱する
すなわち、この場合、プログラムを実行すると、ステップS1及びステップS2を実行し、測定した二次側電圧gの変化幅が所定範囲を逸脱するので、ステップS3にて失火していると判定する。したがって、プラズマを長時間にわたって生成するために、プラズマを生成しない着火方法において点火後に燃焼室7内に流れるイオン電流を用いて燃焼状態を判定する方法が利用ができない状態でも、そのようなイオン電流により失火を含む燃焼状態を判定する方法に比較して、精度よく失火を判定することができる。
【0036】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0037】
上述の実施形態にあっては、点火コイル9の二次側巻線に流れる電流に基づいて、二次的電圧である二次側電圧gを測定したが、二次側巻線に発生する二次側電圧を二次的電圧として測定するものであってもよい。この場合は、発生する電圧が高圧であるので、分圧回路により電圧を測定が容易な定圧の電圧にまで分圧した後、測定するものである。さらに、二次的電圧としては、この後に図3及び図4に示して詳述する電界生成手段としての電磁波発生装置30及び交流電圧発生装置40の出力段に、火花放電に関連して二次的に生じる電圧を採用するものであってもよい。このような二次的電圧を採用する場合は、上述の実施形態における二次側電圧gを測定する必要はない。
【0038】
マイクロ波発生装置としては、上述のようなマグネトロンに代えて、進行波管などであってよく、さらには半導体によるマイクロ波発振回路を備えるものであってもよい。
【0039】
さらには、点火プラグ8の中心電極8aをアンテナとして機能させて、高周波給電部とするものの場合、高周波を一定の電圧で中心電極に継続して印加すると、中心電極の温度が過剰に上昇するため、中心電極の耐熱温度に基づいて設定する上限温度を下回るように、高周波の電圧を制御するものである。
【0040】
点火プラグ8の中心電極8aをアンテナとして機能させるものを説明したが、中心電極8aをアンテナとして機能させることなく、モノポールアンテナやホーンアンテナなどの別体のアンテナに電界生成手段を接続する構成であってもよい。
【0041】
一方、電磁波発生装置における電磁波の周波数についてはマイクロ波の周波数帯に限られるものではなく、点火プラグ8の火花放電部分に電界を生成しプラズマを生成させることが可能な周波数であればよい。したがって、電磁波発生装置としては、例えば図3に示すような構成のものが好適である。
【0042】
図3に示す電磁波発生装置30は、例えば300MHzの電磁波を発振する送信機31と、送信機31の出力端に同軸ケーブル32で接続されるマッチングチューナ(又はアンテナチューナ)33と、マッチングチューナ33の出力端に不平衡ケーブル34で接続されるとともにイグナイタを一体に備える点火コイル35にも接続されるミキサ36とを備えている。この例にあっては、点火プラグ8の中心電極8aが電磁波を放射するアンテナとして機能するもので、したがって、ミキサ36は、マッチングチューナ33を介して送信機31が出力する電磁波を点火プラグ8の中心電極8aに印加するとともに、点火コイル35からの点火電圧を中心電極8aに印加する。ミキサ36は、送信機31からの電磁波と点火コイル35からの点火電圧とを混合するものである。このような電磁波発生装置30にあっては、電磁波の周波数を変化させることにより電磁波の出力を増減させる、あるいは周波数を一定にしておいて電磁波の出力を増減させることにより、生成する電界の強度を制御する。
【0043】
この例では、送信機31からの電磁波により、中心電極8aと接地電極8bとの間に電界が生成される。生成された電界と、中心電極8aと接地電極8bとの間に発生する火花放電とが反応してプラズマが生成され、混合気に着火するものである。そして、電磁波発生装置30の場合にあっては、二次的電圧が火花放電後に不平衡ケーブル34に現れるので、不平衡ケーブル34の位置で二次的電圧を測定すればよい。
【0044】
以上に説明した電磁波発生装置に代えて、交流電圧発生装置を使用するものであってもよい。図4に示す交流電圧発生装置40は、車両用のバッテリ41の電圧例えば約12V(ボルト)を昇圧回路であるDC−DCコンバータ42にて300〜500Vに昇圧し、その後、図5に例示するHブリッジ回路43にて周波数が約1MHz〜500MHz、好ましくは100MHzの交流に変化させ、さらに昇圧トランス44により約4kVp‐p〜8kVp‐pに昇圧する構成である。
【0045】
このような交流電圧発生装置40において、例えば点火プラグ8の中心電極8aと接地電極8bとを、電界を生成するための一対の電極とする場合、上述の電磁波発生装置30と同様に、交流電圧の出力端部となる昇圧トランス44とイグナイタ及び点火コイルと点火プラグ8との間にはミキサが配置される。そして、中心電極8aと接地電極8bとの間に高圧の交流電圧を印加することで、放電域である点火プラグ8の間隙に上記周波数帯であって極性が交互に入れ替わる電界が生成される。したがって、生成された電界と火花放電とが反応してプラズマが点火プラグ8周辺に生成され、混合気を着火するものである。この例にあっては、二次的電圧が火花放電後に昇圧トランス44の二次側に現れるので、ミキサに至る配線部分で二次的電圧を測定すればよい。
【0046】
なお、この一対の電極を中心電極8aと接地電極8bとで構成するものの場合に、接地電極8bに代えて、シリンダヘッド、シリンダブロックあるいはピストンで代用するものであってもよい。なお、図3及び図4にて説明した構成におけるイグナイタにあっても、上述の実施形態におけるイグナイタと同等の構成を備えることは、言うまでもない。
【0047】
一対の電極は、上述した点火プラグ8の中心電極8aと接地電極8bとを使用する以外に、点火プラグ8を挟む位置に電極を配置する構成でもよい。すなわち、所定の距離離して、対向して一対の電極を配置する。この場合に、点火プラグ8がその電極間に位置するように、一対の電極は配置する。この場合においても、電極の一方を、接地電極、シリンダヘッド、シリンダブロックあるいはピストンで代用するものであってもよい。
【0048】
なお、このような交流電圧発生装置に代えて、脈流発生装置を使用するものであってもよい。つまり、一対の電極間に交流を印加する代わりに、パルス電圧などの脈流電圧を印加することにより、一対の電極間に電界を生成するものである。脈流発生装置は、交流電圧発生装置と同様に、バッテリから供給される直流をDC‐DCコンバータで昇圧し、高圧の直流を所定周期で断続することにより脈流とし、その脈流を昇圧トランスにより昇圧して一対の電極に印加する構成である。脈流発生装置の場合、Hブリッジ回路に代えて周期的にオン・オフするスイッチング回路を用いる。このような脈流発生回路を使用することによっても、一対の電極間に電界を生成することができ、上述の実施形態同様の効果を得ることができる。
【0049】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の活用例として、ガソリンや液化天然ガスを燃料として点火プラグによる火花放電を着火に必要とする火花点火式内燃機関に活用することができる。
【符号の説明】
【0051】
6…電子制御装置
7…燃焼室
8…点火プラグ
9…点火コイル
15…マグネトロン
18…中央演算処理装置
19…記憶装置
20…入力インターフェース
21…出力インターフェース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火プラグを備え、点火プラグに接続される点火コイルを介して印加される高電圧により生じる火花放電と燃焼室内に生成される電界とを反応させてプラズマを生成して混合気に着火する火花点火式内燃機関の燃焼状態判定方法であって、
火花放電後の点火プラグに火花放電に関連して二次的に生じる二次的電圧の変化を検出し、
検出した二次的電圧の変化が所定範囲を逸脱している場合に失火を判定する火花点火式内燃機関の燃焼状態判定方法。
【請求項2】
二次的電圧の変化を、点火コイルの二次側巻線に流れる電流に基づいて検出する請求項1記載の火花点火式内燃機関の燃焼状態判定方法。
【請求項3】
二次的電圧の変化を、点火コイルの二次側巻線に発生する電圧に基づいて検出する請求項1記載の火花点火式内燃機関の燃焼状態判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−64162(P2011−64162A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216913(P2009−216913)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】