説明

炉心溶融物の処理方法

【課題】放射性物質、Fe、Zrをそれぞれ別々に分離して回収する炉心溶融物の処理方法を提供する。
【解決手段】炉心溶融物の処理方法は、炉心溶融物を陽極に装荷し(S11)、陰極に金属Zrを電解析出させる工程(S12)と、交換した陰極に金属Feを電解析出させる工程(S13)と、第1ガスをバブリングして陽極の雰囲気の酸化性を高める工程(S14)と、交換した陰極にU酸化物を電解析出させる工程(S15)と、第2ガスをバブリングして陽極の雰囲気の酸化性をさらに高める工程(S16)と、交換した陰極にU酸化物及びPu酸化物の混合物を電解析出させる工程(S17)と、陽極に残留する残留物を回収する工程(S18)と、電解浴12に含まれる核分裂生成物を回収する工程(S19)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力事故により発生した炉心溶融物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ウランの採鉱、精錬、同位体の分離濃縮、燃料集合体への加工、原子力発電所での発電、使用済み核燃料の再処理、及び放射性廃棄物の処分といった通常の核燃料サイクルにおける放射性物質の処理技術が知られている(例えば、特許文献1〜10)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3940632号公報
【特許文献2】特許第3868635号公報
【特許文献3】特許第4533514号公報
【特許文献4】特許第3519557号公報
【特許文献5】特許第3524234号公報
【特許文献6】特許第3120002号公報
【特許文献7】特許第3199937号公報
【特許文献8】特許第3486044号公報
【特許文献9】特許第3763980号公報
【特許文献10】特許第3864203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力事故により冷却能力が喪失すると、核燃料の崩壊熱により、燃料集合体及び炉心構造物が過熱融解し、炉心溶融物が発生する可能性がある。
このような炉心溶融物は、圧力容器や格納容器を切断し、これらと一体化して取り出される。このため炉心溶融物は、圧力容器を構成するFe系材料と、格納容器を構成するコンクリート材料と、被覆管やチャンネルボックスを構成するZr材料と、核燃料を構成する酸化ウラン及び酸化プルトニウムと、が混在している。
しかし、このような放射性物質を含む炉心溶融物の処理方法については、石棺処理を除き、これまで提案されていない。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、放射性物質、Fe、Zrをそれぞれ別々に分離して回収する炉心溶融物の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る炉心溶融物の処理方法は、炉心溶融物を陽極に装荷し陰極に金属Zrを電解析出させる工程と、交換した陰極に金属Feを電解析出させる工程と、第1ガスをバブリングして前記陽極の雰囲気の酸化性を高める工程と、交換した陰極にU酸化物を電解析出させる工程と、第2ガスをバブリングして前記陽極の雰囲気の酸化性をさらに高める工程と、交換した陰極にU酸化物及びPu酸化物の混合物を電解析出させる工程と、前記陽極に残留する残留物を回収する工程と、電解浴に含まれる核分裂生成物を回収する工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また本発明に係る炉心溶融物の処理方法は、炉心溶融物を陽極に装荷し陰極に金属Zrを電解析出させる工程と、交換した陰極に金属Feを電解析出させる工程と、前記陽極に残留する金属酸化物を陰極として電解還元する工程と、前記電解還元された金属を陽極としてこの金属を陰極に電解析出させる工程と、前記陽極に残留する残留物を回収する工程と、電解浴に含まれる核分裂生成物を回収する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、放射性物質、Fe、Zrをそれぞれ分離して別々に回収する炉心溶融物の処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る炉心溶融物の処理方法の第1実施形態を示すフローチャート。
【図2】第1実施形態に係る炉心溶融物の処理システムにおいて炉心溶融物から金属Zrを電解析出させる工程の説明図。
【図3】第1実施形態に係る炉心溶融物の処理システムにおいて炉心溶融物から金属Feを電解析出させる工程の説明図。
【図4】第1実施形態に係る炉心溶融物の処理システムにおいて炉心溶融物からU酸化物を電解析出させる工程の説明図。
【図5】第1実施形態に係る炉心溶融物の処理システムにおいて炉心溶融物からU酸化物及びPu酸化物の混合物(MOX)を電解析出させる工程の説明図。
【図6】本発明に係る炉心溶融物の処理方法の第2実施形態を示すフローチャート。
【図7】第2実施形態に係る炉心溶融物の処理システムにおいてU酸化物、Pu酸化物を含む混合物を電解還元させる工程の説明図。
【図8】第2実施形態に係る炉心溶融物の処理システムにおいて金属Uを電解析出させる工程の説明図。
【図9】第2実施形態に係る炉心溶融物の処理システムにおいて金属U、金属Pu及びマイナーアクチニド金属の合金を電解析出させる工程の説明図。
【図10】各実施形態において電解浴(溶融塩)に含まれる核分裂生成物(FP)を回収する工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1のフローチャートに示される第1実施形態に係る炉心溶融物の処理方法は、図2〜図5に例示される炉心溶融物の処理システム(処理システム10(10A,10B,10C,10D))を用いて具体的に実施される。
【0011】
第1実施形態に係る炉心溶融物の処理方法は、図2に示すように炉心溶融物15Aを陽極13に装荷し(図1;S11)、陰極14Aに金属Zrを電解析出させる工程(図1;S12)と、図3に示すように交換した陰極14Bに金属Feを電解析出させる工程(図1;S13)と、図4に示すように第1ガス18Cをバブリングして陽極13の雰囲気の酸化性を高める工程(図1;S14)と、交換した陰極14CにU酸化物を電解析出させる工程(図1;S15)と、図5に示すように第2ガス18Dをバブリングして陽極13の雰囲気の酸化性をさらに高める工程(図1;S16)と、交換した陰極14DにU酸化物及びPu酸化物の混合物(MOX)を電解析出させる工程(図1;S17)と、陽極13に残留する残留物(主にコンクリート)を回収する工程(図1;S18)と、図10に示すように電解浴12に含まれる核分裂生成物を回収する工程(図1;S19)と、を含む。
【0012】
炉心溶融物15Aは、圧力容器を構成するFe系材料と、格納容器を構成するコンクリート材料と、被覆管やチャンネルボックスを構成するZr材料と、核燃料を構成するU酸化物及びPu酸化物と、が崩壊熱により溶融し混合した後に冷却固化した一体化物である。
【0013】
図2(図1;S12も適宜参照)に示す処理システム10Aは、炉心溶融物15Aから金属Zrを電解析出させるもので、電解浴12Aを収容する電解槽11と、この電解浴12Aに溶解しない鉄系もしくは炭素系材料で形成されたバスケット状の陽極13と、鉄系の材料からなる陰極14Aおよび直流電源20と、から構成されている。
【0014】
ここで電解浴12Aは、炉心溶融物15Aの水分除去が不充分であり又はその表面が酸化されていることを鑑みて、リチウムを含まずに、水分もしくは酸素と反応し難い組成であることが望ましい。さらに、Zrイオンが安定に存在することができる溶融塩組成であることが求められる。
そのような電解浴12Aとして、NaCl−KCl、RbCl−NaCl、CsCl−NaCl、RbCl−KCl、CsCl−KCl、NaCl−MgCl2、NaCl−CaCl2、KCl−SrCl2、KCl−CaCl2、NaF−KF、LiF−KF、NaF−LiF、NaCl−NaF、KCl−KF等の混合塩が挙げられる。
【0015】
処理システム10A(図2)に、電圧が印加されると、式(1)に示すように陽極13から酸化還元電位がより貴である金属Zrがまずイオン化して電解浴12Aに溶出する。そして、式(2)に示すように溶出したZrイオンが陰極14Aに析出し金属Zrが高純度で回収される。
【0016】
陽極: Zr → Zr4+ + 4e- (1)
陰極: Zr4+ + 4e- → Zr (2)
【0017】
図3(図1;S13も適宜参照)に示す処理システム10Bは、処理システム10A(図2)の状態を引き継ぎ、新しい陰極14Bに交換し印加電圧を大きく設定する。そして、Zrの回収された炉心溶融物15Bから陰極14Bに、今度は金属Feを電解析出させる。
なお、処理システム10B(図3)における電解浴12B、陽極13及び陰極14Bは、処理システム10A(図2)における電解浴12A、陽極13及び陰極14Aと同じでよいが、電解浴12Bは、Feの不均化反応が生じない温度、具体的には融点が800℃以下の溶融塩組成であることが望ましい。
【0018】
処理システム10B(図3)に、電圧が印加されると、式(3)に示すように陽極13から金属Feがイオン化して電解浴12Bに溶出する。そして、式(4)に示すように溶出したFeイオンが陰極14Bに析出し金属Feが高純度で回収される。そしてU酸化物、Pu酸化物及び核分裂生成物(FP)等が陽極13のバスケットの底に脱落する。
【0019】
陽極: Fe → Fe2+(3+) + 2e-(3e-) (3)
陰極: Fe2+(3+) + 2e-(3e-) → Fe (4)
【0020】
図4(図1;S14,S15も適宜参照)に示す処理システム10Cは、処理システム10B(図3)の状態を引き継ぎ、新しい陰極14Cに交換してからガス導入管17を挿入し酸化性の第1ガス18Cをバブリングする。そして、Zr及びFeの回収された炉心溶融物15Cから陰極14CにU酸化物を電解析出させる。
【0021】
なお、処理システム10C(図4)における電解槽11、陽極13及び陰極14Cは、酸化性の第1ガス18Cに対し耐食性を有する材料で構成されることが望ましい。具体的には、パイログラファイトのような炭素系材料や、ジルコン(ZrSiO4)を使用することができる。電解浴12C(図4)は、電解浴12A(図2)又は電解浴12B(図3)と同じでよい。
【0022】
処理システム10C(図4)において、第1ガス18C(例えば、Cl2)をバブリングすると、陽極13の雰囲気の酸化性が高まり、式(5)に示すように陽極13からU酸化物がイオン化して電解浴12Cに溶出する。そして、式(6)に示すように溶出したU酸化物イオンが陰極14Cに析出しU酸化物が高純度で回収される。
なお、この工程(図1;S14,S15)は、次のS16,S17の工程で回収されるU酸化物及びPu酸化物の混合物(MOX)の組成を調整する意味もある。
【0023】
陽極: UO2 → UO2 2+ + 2e- (5)
陰極: UO22+ + 2e- → UO2 (6)
【0024】
図5(図1;S16,S17も適宜参照)に示す処理システム10Dは、処理システム10C(図4)の状態を引き継ぎ、新しい陰極14Dに交換してガス導入管17から酸化性のさらに高い第2ガス18Dをバブリングする。そして、Zr、Fe及び一部のU酸化物の回収された炉心溶融物15Dから、陰極14Dに、U酸化物及びPu酸化物の混合物(MOX)を電解析出させる。
なお、処理システム10D(図5)における電解槽11、陽極13及び陰極14Dは、処理システム10C(図4)の構成と同様に、酸化性の高い第2ガス18Dに対し耐食性を有する材料で構成されることが望ましい。電解浴12D(図5)は、電解浴12A(図2)、電解浴12B(図3)又は電解浴12C(図4)と同じでよい。
【0025】
処理システム10D(図5)において、第2ガス18D(例えば、Cl2,O2,Arの混合ガス)をバブリングすると、陽極13の雰囲気の酸化性が高まり、式(7)に示すように陽極13からU酸化物及びPu酸化物がイオン化して電解浴12Dに溶出する。そして、式(8)に示すように溶出したU酸化物イオン及びPu酸化物イオンが陰極14Dに析出し混合物(MOX)が高純度で回収される。
【0026】
陽極: UO2 + PuO2 → UO22+ + PuO22+ + 4e- (7)
陰極: UO22+ + PuO22+ + 4e- → UO2 + PuO2 (8)
【0027】
第1実施形態に係る炉心溶融物の処理方法によれば、Puが単独で回収されないために核不拡散性の高いプロセスとなる。また、U酸化物及びPu酸化物の混合物(MOX)を回収した後の陽極13のバスケットには、格納容器に由来するコンクリート材を主とする残留物が残存する。
この残留物は、そのまま取り出すか、もしくは電解終了後に電解槽11のヒータを切り、自然冷却して溶融塩を凝固させると、コンクリート等の残留物と溶融塩とが分離して容易に回収することができる。
【0028】
(第2実施形態)
図6のフローチャートに示される第2実施形態に係る炉心溶融物の処理方法は、図2、図3、図7、図8、図9に例示される炉心溶融物の処理システム(処理システム10(10A,10B,10E,10F,10G))を用いて具体的に実施される。
なお、図6のS21〜S23,S27及びS28は、それぞれ図1のS11〜S13,S18及びS19と同一工程であり、詳細説明の重複記載を省略する。
【0029】
第2実施形態に係る炉心溶融物の処理方法は、図2に示すように炉心溶融物15Aを陽極13に装荷し(図6;S21)、陰極14Aに金属Zrを電解析出させる工程(図6;S22)と、図3に示すように交換した陰極14Bに金属Feを電解析出させる工程(図6;S23)と、図3に示す陽極13に残留する金属酸化物(UO2,PuO2)を図7に示すように陰極14Eとして電解還元する工程(図6;S24)と、図8に示すように電解還元された金属(U,Pu)を陽極13として金属Uを陰極14Fに電解析出させる工程(図6;S25)と、図9に示すように陽極13に残留する金属Puを陰極14Gに電解析出させる工程(図6;S26)と、陽極13に残留する残留物(主にコンクリート)を回収する工程(図6;S27)と、図10に示すように電解浴12に含まれる核分裂生成物を回収する工程(図6;S28)と、を含む。
【0030】
図7(図6;S24も適宜参照)に示す処理システム10Eは、処理システム10A,10B(図2、図3)でZr及びFeの回収された炉心溶融物15Bを引き上げて、引き続き処理を実施するものである。そして、陰極14Eに装荷された炉心溶融物15Eは、含まれるU酸化物及びPu酸化物が電解還元されて金属U及び金属Puとなる。
処理システム10Eでは、陰極14Eに炉心溶融物15Eが収容されるバスケットを接続し、陽極13Eに炭酸ガスの発生を防止する観点から炭素系材料以外の材料、例えば白金を使用する。
【0031】
そして、適用される電解浴12Eは、LiClにLi2Oを溶解させた溶融塩、MgCl2にMgOを溶解した溶融塩、CaCl2にCaOを溶解した溶融塩を使用することができる。
【0032】
処理システム10E(図7)に、電圧が印加されると、式(9)に示すように陰極14EにおいてU酸化物及びPu酸化物が還元され金属U及び金属Puが生成する。さらに生成した酸素イオンが陽極13Eに移動し、式(10)に示す電極反応によりO2ガスが発生する。これにより、陰極14Eのバスケットには、金属U、金属Pu及びマイナーアクチニド金属(MA;Np,Am,Cm等)が残留する。
【0033】
陰極: UO2 + PuO2 + 8e- → U + Pu + 4O2- (9)
陽極: 4O2- → 2O2 + 8e- (10)
【0034】
図8(図6;S25も適宜参照)に示す処理システム10Fは、処理システム10E(図7)で電解還元された炉心溶融物15Eを引き上げて、引き続き処理を実施するものである。そして、陽極13に装荷された炉心溶融物15Fに含まれる金属U、金属Pu及びマイナーアクチニド金属(MA)のうち、金属Uを陰極14Fに電解析出させる。
【0035】
処理システム10Fは、電解浴12Fを収容する電解槽11と、金属U及び金属Puを含む炉心溶融物15Fを収容するバスケット状の陽極13と、金属Uを電解析出させる陰極14Fと、から構成されている。
【0036】
ここで電解浴12Fは、LiCl−KClの共晶塩である場合の他に、LiCl−NaCl、LiCl−RbCl、LiCl−CsCl、LiCl−MgCl2、LiCl−CaCl2、LiCl−SrCl2、NaCl−KCl、RbCl−NaCl、CsCl−NaCl、RbCl−KCl、CsCl−KCl、NaCl−MgCl2、NaCl−KCl、KCl−SrCl2、KCl−CaCl2、NaF−KF、LiF−KF、NaF−LiF、NaCl−NaF、KCl−KF等の混合塩が挙げられる。
【0037】
処理システム10F(図8)に、電圧が印加されると、式(11)に示すように陽極13から酸化還元電位がより貴である金属Uがまずイオン化して電解浴12Fに溶出する。そして、式(12)に示すように溶出したUイオンが陰極14Fに析出し金属Uが高純度で回収される。
【0038】
陽極: U → U4+ + 4e- (11)
陰極: U4+ + 4e- → U (12)
【0039】
図9(図6;S26も適宜参照)に示す処理システム10Gは、処理システム10F(図8)の状態を引き継ぎ、新しい陰極14Gに交換してから印加電圧を高く設定する。そして、炉心溶融物15Gから陰極14Gに、金属U、金属Pu及びマイナーアクチニド金属の合金を電解析出させる。
この陰極14Gは、セラミック製るつぼに、液体カドミウムを収容させて構成されている。
なお、処理システム10G(図9)における電解浴12G及び陽極13は、処理システム10F(図8)における電解浴12F及び陽極13と同じでよい。
【0040】
処理システム10G(図9)に、電圧が印加されると、式(13)に示すように陽極13から金属Puがまずイオン化して電解浴12Gに溶出する。そして、式(14)に示すように溶出したPuイオンが陰極14Gに析出し金属Puが回収される。
なお、電極反応式の記載を省略するがこの工程においては、前工程において回収されなかった金属Uやマイナーアクチニド金属(MA)も共に回収され、陰極14Gには、U−Pu−MA合金が電解析出する。
【0041】
陽極: Pu → Pu4+ + 4e- (13)
陰極: Pu4+ + 4e- → Pu (14)
【0042】
第2実施形態に係る炉心溶融物の処理方法によれば、Puが単独で回収されないために核不拡散性の高いプロセスとなる。また、金属U、金属Pu及びマイナーアクチニド金属(MA)を回収した後の陽極13のバスケットには、格納容器に由来するコンクリート材を主とする残留物が残存する。
この残留物は、そのまま取り出すか、もしくは電解終了後に電解槽11のヒータを切り、自然冷却して溶融塩を凝固させると、コンクリート等の残留物と溶融塩とを分離して容易に回収することができる。
【0043】
図10(図1;S19、図6;S28も適宜参照)に示す吸着塔19は、ゼオライトが収容され、各実施形態の各工程における使用済の電解浴12を通過させることにより、含まれる核分裂生成物(FP)を回収するものである。
この回収処理により、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素及び希土類元素の核分裂生成物(FP)が選択的に除去され、電解浴12を再利用することができる。また、核分裂生成物(FP)が吸着させたゼオライトは、熱をかけてソーダライトにした後、人工鉱物の形態にして処分する。もしくは核分裂生成物(FP)が吸着させたゼオライトに圧力をかけて(HIP処理をして)、ガラス材と混合し、ガラス固化体にして処分する。
【0044】
また、電解浴12(溶融塩)は、ホウケイ酸と反応させて酸化物に転換し、ガラス化材であるSiO2、CaO、Al23、ZnOなど加え、高温で反応させてホウケイ酸ガラスとすることにより、ガラス固化して処分することも可能である。
【0045】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の炉心溶融物の処理方法によれば、圧力容器のFe系材料、被覆管やチャンネルボックス等のZr材料及び酸化物燃料が混在した炉心溶融物から金属Zr、金属Fe、及び放射性物質(U酸化物、MOX、金属U、U−Pu−MA合金)をそれぞれ別々に回収することが可能となる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0047】
10(10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G)…炉心溶融物の処理システム、11…電解槽、12(12A,12B,12C,12D,12E,12F,12G)…電解浴、13(13E)…陽極、14(14A,14B,14C,14D,14E,14F,14G)…陰極、15(15A,15B,15C,15D,15E,15F,15G)…炉心溶融物、17…ガス導入管、18C…第1ガス、18D…第2ガス、19…吸着塔、20…直流電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心溶融物を陽極に装荷し陰極に金属Zrを電解析出させる工程を含むことを特徴とする炉心溶融物の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の炉心溶融物の処理方法において、
交換した陰極に金属Feを電解析出させる工程を、さらに含むことを特徴とする炉心溶融物の処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の炉心溶融物の処理方法において、
第1ガスをバブリングして前記陽極の雰囲気の酸化性を高める工程と、
交換した陰極にU酸化物を電解析出させる工程と、をさらに含むことを特徴とする炉心溶融物の処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の炉心溶融物の処理方法において、
第2ガスをバブリングして前記陽極の雰囲気の酸化性をさらに高める工程と、
交換した陰極にU酸化物及びPu酸化物の混合物を電解析出させる工程と、をさらに含むことを特徴とする炉心溶融物の処理方法。
【請求項5】
請求項2に記載の炉心溶融物の処理方法において、
前記陽極に残留する金属酸化物を陰極として電解還元する工程と、
前記電解還元された金属を陽極としてこの金属を陰極に電解析出させる工程と、をさらに含むことを特徴とする炉心溶融物の処理方法。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の炉心溶融物の処理方法において、
前記陽極に残留する残留物を回収する工程をさらに含むことを特徴とする炉心溶融物の処理方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の炉心溶融物の処理方法において、
電解浴に含まれる核分裂生成物を回収する工程をさらに含むことを特徴とする炉心溶融物の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−88117(P2013−88117A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225488(P2011−225488)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】