説明

炊飯器

【課題】本体サイズのアップやコストアップすることなく、蓋が開いたときに、本体が跳ね上がったり、本体自体が移動したりしない炊飯器を提供する。
【解決手段】本体1の底部となる底板4には、本体1を設置安定させるために複数の脚部5が突設されている。また、底板4のうち、ヒンジ部32が設けられた本体1の後部に対応する部分には凸部81が突設されている。蓋体31が開く際には、蓋体31はヒンジ部32のシャフト33の位置を中心に回転軌跡を描きながら後部方向に開き始め、ヒンジ部32の鍋11側の壁86に当たり止まる。この時の衝撃により、本体1の前側が浮き上がろうとする。このとき、本体1の前側が浮き上がる前に、底板4の最後部に設けられた凸部81が先に床面80に当接して、当該衝突力に抗して凸部81が本体1を支持することにより、本体1の前側の浮き上がりを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭にて使用する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、蓋のロックが解除され、バネの力により蓋が自動で開くタイプの炊飯器がある(例えば特許文献1)。このような炊飯器は、炊飯器本体底部から突出した脚部により炊飯器本体が支持されているが、バネの力が強すぎると蓋が開くときの衝撃により、例えば本体前側が跳ね上がったり、本体自体が後退したりするという問題があった。当該炊飯器において、高価な装置や構造、金属製のバネ等により蓋が開くバネ構造等が考案されている。
【特許文献1】特開2004−160184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の技術では装置によるコストアップおよび本体サイズの大型化、また他の構造やバネ構造でも、部品点数の増加によりコストアップの要因となっていた。
【0004】
そこで本発明は上記問題点に鑑み、本体サイズのアップやコストアップすることなく、蓋が開いたときに、本体が跳ね上がったり、本体自体が移動したりしない炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における請求項1の炊飯器では、フック部による係合を解除すると蓋弾性部材の付勢力により蓋が開き、この蓋が開ききった際には蓋の軸支部ひいては本体に対して蓋が開く方向向きの力が加わるが、当該力に抗して凸部が本体を支持するため、本体の浮き上がりや移動を防止することができる。
【0006】
本発明における請求項2の炊飯器では、凸部が炊飯器を設置した面に当接した際の衝撃を弾性部材により緩和することができると共に、本体自体の後退を防止することができる。
【0007】
本発明における請求項3の炊飯器では、蓋の回転角度が多い場合には蓋が開くときの衝撃が大きくなるにもかかわらず、本体の浮き上がりや移動を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1によると、本体のサイズやコストがアップすることなく、蓋が開いたときに、本体が跳ね上がったり、本体自体が移動したりしない炊飯器を提供することができる。
【0009】
本発明の請求項2によると、凸部を設けた効果を向上させることができる。
【0010】
本発明の請求項3によると、蓋の回転角度が多く蓋が開くときの衝撃が大きいものでも、本体の浮き上がりや移動を効果的に防止した炊飯器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明における炊飯器の好ましい各実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、図1に基づき、本発明の一例である炊飯器の構成について説明する。
【0013】
同図において、1は炊飯器の外郭をなす本体で、この本体1は、その上面と上側面を構成する上枠2と、側面を構成するほぼ筒状の外枠3とにより形成され、外枠3の底部開口を覆う底板4が設けられている。そして、上枠2や底板4は、PP(ポリプロピレン)などの合成樹脂で形成される一方で、外枠3は清掃性や外観品位を向上させるために、例えばステンレスなどの金属部材で形成される。また、上枠2の上面内周部から一体に垂下させて形成されるほぼ筒状の鍋収容部6と、この鍋収容部6の下面開口を覆って設けられ、PET(ポリエチレンテレフタレート)などの合成樹脂で形成される内枠8とにより、後述する鍋11を収納する有底筒状で非磁性材料からなる鍋収容体9が形成される。
【0014】
前記鍋収容体9内には、米や水などの被炊飯物を収容する有底筒状の鍋11が着脱自在に収容される。この鍋11は、熱伝導性のよいアルミニウムを主材料とした鍋本体12と、この鍋本体12の外面の側面下部から底面部にかけて接合されたフェライト系ステンレスなどの磁性金属板からなる発熱体13とにより構成される。鍋11の側面中央から上部に発熱体13を設けないのは、鍋11の軽量化を図るためである。また、鍋11の上端周囲には、その外周側に延出する円環状のフランジ部14が形成されている。なお、鍋収容部6の外周には加熱手段を設けない構成となっている。
【0015】
炊飯器の本体外観は、その上部と側部を一体化した外側枠と、当該外側枠の底部を覆う底板で構成してもよい。また本体外観を、上部を覆う上枠と、側部と底部を一体化した底側枠とにより構成したり、あるいは本実施例のように、上部を覆う上枠2と、側部を覆う側枠(外枠3)と、底部を覆う底板4とにより構成してもよい。その場合、外側枠,底板,上枠,底側枠は、いずれもPPなどの合成樹脂で形成されるが、側枠は上述したステンレスなどの金属板の他に、PPなどの合成樹脂でもよい。
【0016】
前記内枠8は、鍋11の発熱体13に対向して位置しているが、この内枠8の外面の発熱体13に対向する側面下部および底面部には、鍋11の特に底部を電磁誘導加熱する加熱手段としての加熱コイル16が設けられている。この加熱コイル16は、鍋収容体9の外周囲には設けられていない。そして、この加熱コイル16に高周波電流を供給すると、加熱コイル16から発生する交番磁界によって鍋11の発熱体13が発熱し、鍋11ひいては鍋11内の水や米などの被炊飯物が加熱されるようになっている。
【0017】
また、内枠8の底部中央部には、鍋11の底部外面と弾発的に接触するように、鍋温度検出手段としての温度センサ21が配置され、鍋11の温度を検知し、加熱コイル16による鍋11の底部の加熱温度を主に温度管理するようになっている。
【0018】
前記鍋収容体9の上端には、鍋11の側面上部、特にフランジ部14を加熱するためのコードヒータ26が、鍋11のフランジ部14の下側に位置して円環状に配置されている。このコードヒータ26は電熱式ヒータからなり、鍋収容体9の上端に載置するようにして取り付けられた熱放散抑止部材としてのヒータリング27上に保持されると共に、コードヒータ26を上から覆うようにしてヒータリング27に取り付けられ、かつ熱伝導性に優れた例えばアルミ板からなる固定金具と放熱部とを兼用する金属板29を備えて、フランジヒータ30を構成している。この金属板29は、炊飯器本体1と蓋体31との隙間に対向して位置している。そして、前記金属板29の上面に鍋11のフランジ部14の下面が載置し、これにより、鍋11が本体1の上枠2に吊られた状態で、鍋収容体9内に収容されるようになっている。したがって、鍋11とこの鍋11が収容された鍋収容体9の上端との間における隙間がほとんどない構成になる。しかも、鍋11のフランジ部14は、外形がコードヒータ26と同等以上の大きさに形成されており、これにより、コードヒータ26が鍋11のフランジ部14で上から覆われるようになっている。但し、図示していないが、鍋11の持ち手部(フランジ部14)は非接触にし、部分的に隙間を形成することで、鍋11の外面に水が付着した状態で炊飯したときに、当該隙間から蒸気が排出されるようにしてある。
【0019】
前記本体1と蓋体31は、その一端となる後部において軸支部としてのヒンジ部32(本体ヒンジ部と蓋体ヒンジ部)を設けている。ヒンジ部32は、より詳しくは本体1のヒンジ部である本体ヒンジ部と、蓋体31のヒンジ部である蓋体ヒンジ部とにより構成され、これらの本体1のヒンジ部と蓋体31のヒンジ部とを軸支する回転軸としてのシャフト33を備えており、このシャフト33に巻装されてヒンジ部32に収納されると共に、蓋体31に引掛けられたねじりコイルバネにより形成された蓋弾性部材としてのヒンジバネ34の力により、シャフト33を支点として蓋体31を常時開く方向に付勢している。また、上枠2の前部上側に設けられたクランプ36に、蓋体31の前部に配置されたフック部37が係脱自在に係合することにより、前記ヒンジバネ34の付勢力に抗して蓋体31が閉じた状態に保持される。
【0020】
蓋体31は、本体1の上部、つまり鍋11の上部を開閉自在に覆うもので、その上面外郭をを形成する例えばプラスチック製の外蓋41と、外蓋41の上面開口部を覆う三次元形状の金属蓋42と、蓋体31の内面である下面を形成する蓋下面材としての放熱板43と、外蓋41および放熱板43を結合させて蓋体31の骨格を形成する蓋ベース材としての外蓋カバー44とを主たる構成要素としている。また、蓋体31の内面である下面には、この下面との間に所定の隙間を形成して、前記鍋11の上部開口部を直接覆う内蓋47が着脱自在に装着される。前記放熱板43および内蓋47はともに金属製であり、例えば、ステンレスやアルミニウムをアルマイトした材料からなっている。また、前記内蓋47の外周部には、前記フック部37を形成したパッキンベース48が固定されており、パッキンベース48と内蓋47とにより挟まれて蓋パッキン49が固定されている。これにより、内蓋47と蓋パッキン49はシール保持部材であるパッキンベース48で一体化され、蓋パッキン49も内蓋47と共に蓋体31の内面に着脱可能に設けられる。シール部材としての蓋パッキン49は、シリコーンゴムやフッ素ゴムなどの弾性部材により環状に形成され、前記鍋11の内側上面に当接してこの鍋11と内蓋47との間の隙間を塞ぎ、鍋11から発生する蒸気を密閉するものである。そして、蓋パッキン49における鍋11への当接部は、フランジ部14を挟んで前記コードヒータ26に対向している。
【0021】
また、前記蓋体31の内部にあって、放熱板34の上面には、蓋加熱手段としての蓋ヒータ51が設けられている。この蓋ヒータ51は、コードヒータなどの電熱式ヒータや、電磁誘導加熱式による加熱コイルでもよい。さらに前記放熱板43には、蓋体31の特に内蓋47の温度を検知する蓋温度検知手段として、蓋ヒータ51による内蓋47の温度管理を行なうためのサーミスタ式の蓋温度センサ52が設けられている。前記蓋体31の上面中央部には、鍋11内で発生した蒸気を外部へ放出するための蒸気口53が、蓋体31の上面側から着脱可能に取り付けられている。また、前記放熱板43および内蓋47における蒸気口53の下方の位置には、蒸気通過用の開口孔(蒸気排出口:図示せず)がそれぞれ開口形成されており、蒸気口53の下端部には蒸気口パッキン54が設けられている。
【0022】
前記本体1の前部には操作パネル55が設けられている。この操作パネル55の内側には時間や選択したメニューを表示するLCD56や、他にいずれも図示しないが、現在の行程を表示するLEDや、炊飯を開始させたり、メニューを選択させるためのスイッチなどを表示基板57の表面に実装した表示部58が配設される。操作部に相当する操作パネル55はボタン名などを表示するもので、電子部品である制御手段にほこりや水が付着することも防止している。なお、操作パネル55を蓋体31の正面側に設けてもよい。
【0023】
61は、本体1の内部前方に設けられた加熱制御手段である。この加熱制御手段61は、加熱手段である加熱コイル16を駆動させるための発熱素子(図示せず)を基板に備えて構成される。この加熱コイル16を駆動する素子は、加熱コイル16の発振と共に加熱されるが、動作状態を保証する使用条件温度を有するので、一定温度以下で使用する必要がある。そのために、加熱コイル16を駆動する素子は、例えばアルミニウムのような熱伝導性の良好な材料で構成されるフィン状の放熱器62に熱的に接続され、冷却手段である冷却ファン63から発する風を放熱器62に当てて熱を奮うことにより、使用条件温度内で素子を駆動するようにしている。
【0024】
冷却ファン63は、加熱制御手段61に取り付けられた放熱器62の下方、若しくは側部に配置されている。また、本体1の底部若しくは側部には、冷却ファン63から発し、加熱制御手段61に取り付けられた放熱器62から熱を奪って温かくなった風を、本体1の外部へ排出するための孔64が複数設けられている。加熱制御手段61は製品内部すなわち本体1内に収納されるが、鍋11の外周囲のどの位置に配置してもよい。また、本体1の底部若しくは側部に設けた孔64も、どの位置に配置してもよい。しかし、近年は製品の小形化設計が求められている背景もあり、加熱制御手段61や冷却ファン63と、温かな風を排出する孔64は、鍋11をはさんで略反対位置に配置するのが好ましい。
【0025】
本体1の内部には、電源プラグ(図示せず)を巻き取るためのコードリール66が設けられる。また67は、本体1の両側部を跨ぐように設けられた運搬用の回転可能なハンドルである。
【0026】
次に制御系統について、図10を参照しながら説明する。同図において、71は前述の加熱制御手段で、これは前記鍋温度センサ21および蓋温度センサ52からの各温度情報を受信して、炊飯時および保温時に鍋11の底部を加熱する加熱コイル16と、鍋11の側部を加熱するコードヒータ26と、蓋体31を加熱する蓋ヒータ51とを各々制御するものである。特に本実施例の加熱制御手段61は、鍋温度センサ21の検出温度に基づいて主に加熱コイル16が制御されて鍋11の底部を温度管理し、蓋温度センサ52の検出温度に基づいて主に蓋ヒータ51が制御されて放熱板43ひいては内蓋47を温度管理するようになっている。加熱制御手段61は、自身の記憶手段(図示せず)に記憶されたプログラムの制御シーケンス上の機能として、被調理物の調理加熱を制御する調理制御手段を備えており、ここでは炊飯時に前記鍋11内の被調理物を炊飯加熱する炊飯制御手段70と、保温時に銅11内のご飯を所定の保温温度に保温加熱する保温制御手段71とをそれぞれ備えている。
【0027】
72は、加熱制御手段61からの制御信号を受けて、加熱コイル16に所定の高周波電流を供給する高周波インバータ回路などを内蔵した加熱コイル駆動手段である。またこれとは別に、加熱制御手段61の出力側には、加熱制御手段61からの制御信号を受けて、放熱板43や内蓋47を加熱するように蓋ヒータ51を駆動させる蓋ヒータ駆動手段73と、加熱制御手段61からの制御信号を受けてコードヒータ26をオンにするコードヒータ駆動手段74が各々設けられる。前記炊飯制御手段70による炊飯時、および保温制御手段71による保温時には、鍋温度センサ21と蓋温度センサ52からの各温度検出により、加熱コイル16による鍋11の底部への加熱と、コードヒータ26による鍋11の側面への加熱と、蓋ヒータ51による蓋体31ヘの加熱が行なわれるように構成する。また、前記炊飯制御手段70による炊飯が終了し、鍋11内の被調理物がご飯として炊き上がった後は、保温制御手段71による保温に自動的に移行し、鍋温度センサ21の検知温度に基づき、加熱コイル16やコードヒータ26による鍋11への加熱を調節することで、ご飯を所定の保温温度(約70℃〜76℃)に保温するように構成している。
【0028】
特に前記コードヒータ26による加熱について補足説明すると、炊飯後にご飯の温度が約100℃から約73℃の保温温度に低下するまでと、約73℃の保温安定時に、コードヒータ26を発熱させて、蓋体31と本体1との隙間の空聞に金属板29から熱放射して、この隙間からの外気の侵入による冷えを抑制すると共に、鍋11のフランジ部14を加熱する。また、保温時にご飯を再加熱するあつあつ再加熱を実行している期間にもコードヒータ26により鍋11のフランジ部14を加熱し、ご飯の加熱により発生する水分が鍋11の内面上部に結露することを防止するように構成している。
【0029】
次に、上記構成についてその作用を説明する。鍋11内に被調理物である米および水を入れて、炊飯制御手段70による炊飯を開始すると、鍋温度センサ21による鍋11の底部の温度検知に基づいて、加熱コイル16とコードヒータ26で鍋11の底部と側面部をそれぞれ加熱し、鍋11内の水温を約45〜60℃に15〜20分間保持するひたし炊きが行なわれる。その後、加熱コイル16により鍋11を強加熱し、被調理物への沸騰加熱を行なう。この沸騰加熱時に鍋11の底部の温度が90℃以上になり、蓋体31の温度が90℃以上で安定したら、鍋11内が沸騰状態になったものとして、それまでよりも加熱量を低減した沸騰継続加熱に移行する。なお、蓋体31の温度が90℃以上で安定したことは、蓋温度センサ52からの検出温度の温度上昇率により検知される。また、この沸騰検知において、鍋温度センサ21と蓋温度センサ52とにより、鍋11の底部および蓋体31がいずれも90℃以上になったことを確認でき、完全に鍋11内が沸騰したことを精度よく検知できる。
【0030】
また、前記鍋11の底部,鍋11の側面部または蓋体31のいずれかが120℃以上の通常ではあり得ない検知温度になったら、加熱制御手段61は何らかの異常があると判断して炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を停止する切状態にするか、後述するむらしに移行するか、保温を行ない、異常加熱を防止する。逆に、前記鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃以上になって所定時間(例えば5分)経過しているのに、それ以外の鍋11の底部または蓋体31のいずれかが90℃未満で低い状態の場合、この温度の低い状態の鍋温度センサ21または蓋温度センサ52が、何らかの理由(汚れや傾きや接触不良など)で温度検知精度が悪化していると判断し、同様に炊飯加熱における加熱量を低減して全ての動作を序止する切状態にするか、むらしに移行するか、保温を行ない、これに対処する。
【0031】
沸騰継続に移行すると、炊飯制御手段70は蓋ヒータ51による蓋加熱を開始させる。ここでの蓋加熱は、内蓋47の温度が100〜110℃になるように、蓋温度センサ52の検知温度により管理される。そして、鍋11の底部が所定の温度上昇を生じたら、炊き上げを検知して、むらしに移行する。むらし中は蓋温度センサ52の検出温度による温度管理によって蓋ヒータ51を通断電し、内蓋47への露付きを防止すると共に、ご飯が焦げない程度に高温(98〜100℃)が保持されるように、鍋11の底部の温度を管理する。むらしは所定時間(15〜20分)続けられ、むらしが終了したら保温制御手段71による保温に移行する。
【0032】
保温になると、加熱コイル16にて鍋11の底部と側面下部を加熱すると共に、鍋11内に収容するご飯の温度よりも僅かに高く、蓋ヒータ51により蓋体31の下面を加熱し、さらに鍋11の側面をコードヒータ26でご飯が乾燥せず、かつ露が多量に付着しないように温度管理する。鍋11内のご飯の温度は70〜76℃に温度保持されるが、この保温時においても、鍋温度センサ21や蓋温度センサ52が相互に異常に高かったり、あるいは異常に低かったりした場合には、異常を検知してこの異常加熱を防止する。
【0033】
以下、本発明の特徴部となる本体1の細部の構成について、図1乃至図3を参照しながら詳述する。
【0034】
本体1の底部となる底板4には、本体1を設置安定させるために複数の脚部5が突設されている。例えば、脚部5が底板4の4箇所に各々が四角形の頂点を形成するようにバランスよく設けられることにより、炊飯器の設置面たる床面80においてこの4点で本体1が支持され、安定設置される。また、底板4のうち、ヒンジ部32が設けられた本体1の後部に対応する部分には凸部81が突設されている。とりわけ、図1では、凸部81が外枠3と連続するように、本体1の最後部に対応する部分の底板4に設けられている。凸部81は、図2及び図3に示すように、底板4に一体形成された舌片状のリブであり、本体1を床面80に設置した状態において床面80からその先端までの間に約0.3mm〜0.8mm程度の微小な隙間が開く長さに形成されている。
【0035】
次に、凸部81の作用効果について説明する。クランプ36を押し下げてフック部37の係合を解除すると、ヒンジバネ34の付勢力により蓋体31が自動的に開く。蓋体31が開く際には、蓋体31はヒンジ部32のシャフト33の位置を中心に回転軌跡を描きながら後部方向に開き始め、ヒンジ部32の鍋11側の壁86に当たり止まる。この時の衝撃により、本体1の前側が浮き上がろうとする。すなわち、壁86ひいては本体1の後部に蓋体31の回転方向に衝突力が加わり、本体1が後部方向に転倒しようとする。このとき、本体1の前側が浮き上がる前に、底板4の最後部に設けられた凸部81が先に床面80に当接して、当該衝突力に抗して凸部81が本体1を支持することにより、本体1の前側の浮き上がりを防止することができる。
【0036】
底板4の最後部に設けられた凸部81の位置は、仮に本体1の最後部にあったとしても、蓋体31の軸支位置としてのヒンジ軸位置85より前側では、さほど大きな効果を発揮しない。ヒンジ軸位置85は、本体1に蓋体31を軸支しているヒンジ部32の軸位置であり、当該軸方向に直交する座標系を基準として決定される。図1では、蓋体31が本体1に対して前後方向に開閉する構成であり、その軸方向に直交する座標系は同前後方向となるため、この場合のヒンジ軸位置85は本体1におけるシャフト33の前後方向の位置関係を表している。そのため、底板4の最後部がヒンジ軸位置85より前側にある構造のものについては、底板4の最後部に設けられた凸部81の位置は、ヒンジ軸位置85より本体1外方側となる本体1後方の適当な位置に設けることにより、その効果を得ることができる。
【0037】
本第1施例の変形例として、図4乃至図6では、凸部81の先端に弾性部材83を装着している。弾性部材は例えば弾性ゴムなどからなり、凸部81の先端に形成された凹部82に例えば接着や嵌着等の周知の固着手段を用いて取り付けられることにより、弾性部材83の一部が凸部81の先端から突出する状態になっている。図6においては、弾性部材83には矢状突起85が一体成形されている。この矢状突起85を凹部82に穿設された取付孔84に弾性変形させながら差し込み、取付孔84を抜けて弾性復帰した矢状突起85の返しが凹部82が設けられた面の裏面となる凸部81の内壁に係合した状態で、弾性部材83が凸部81に取り付けられている。凸部81の先端に弾性部材83を設けることにより、蓋体31の開き時における、本体1自体の後退を防止する効果が得られる。また、凸部81が本体1を設置した床面80に当接した際の衝撃を弾性部材83により緩和することができるため、凸部81と床面80との衝突音の発生や、床面80に傷が付くのを抑制することができる。なお、本体1自体の後退を防止する効果のみ得られればよい場合には、凸部81の先端の摩擦係数を大きくすればよい。
【0038】
本発明の炊飯器では、ダンパー装置やコイルバネによるクッション、金属製のバネのような、高価な装置や取り付けるためにスペースを必要とする部品を追加することなく、蓋体31がスムーズに開き、かつ蓋体31が開いた時の本体1前側の浮き上がりや、本体1自体の後退を防止することができる。
【0039】
以上のように本第1実施例では、本体1内に収納される鍋11と、鍋11を加熱する加熱手段としての加熱コイル16と、鍋11の上面開口部を開閉自在に覆い本体1一端に設けられた軸支部としてのヒンジ部32により軸支された蓋体31と、蓋体31を常時開く方向へ付勢するべくヒンジ部32に収納された蓋弾性部材としてのヒンジバネ34と、蓋体31を閉状態に保持するために本体1と蓋体31とを係合させるフック部37を備えた炊飯器において、本体1を設置安定させるために設けられた脚部5以外に本体底部としての底板4に凸部81を設け、この凸部81は蓋体31の軸支位置としてのヒンジ軸位置85より本体1外方側に位置するよう構成している。
【0040】
このようにすると、フック部37による係合を解除するとヒンジバネ34の付勢力により蓋体31が開き、この蓋体31が開ききった際には蓋体31のヒンジ部32の壁86ひいては本体1に対して蓋体31が開く方向向きの力が加わるが、当該力に抗して凸部81が本体1を支持するため、本体1の浮き上がりや移動を防止することができる。従って、本体1のサイズやコストがアップすることなく、蓋体31が開いたときに、本体1が跳ね上がったり、本体1自体が移動したりしない炊飯器を提供することができる。
【0041】
また本第1実施例では、凸部81に弾性部材83を設けている。
【0042】
このようにすると、凸部81が炊飯器を設置した床面80に当接した際の衝撃を弾性部材83により緩和することができると共に、本体1自体の後退を防止することができる。従って、凸部81を設けた効果を向上させることができる。
【実施例2】
【0043】
本第2実施例の炊飯器は、本体1の形状が上記第1実施例の炊飯器と大きく異なっているが、炊飯器としての基本構成は同じである。図7において、本体1は、第1実施例ではその前部が下降傾斜したテーパ状になっていたが、本第2実施例では略矩形箱状になっている。これに伴い、操作パネル55は本体1の前部上面に設けられている。
【0044】
また、蓋体31を閉じるために設けられる、蓋体31と本体1とを係合するクランプ機構も相違している。とりわけ、クランプ機構の係合位置がヒンジ部32より下方に位置しており、第1実施例の炊飯器に比べて、蓋体31の開閉時における回転角度が多くなっている。
【0045】
以下、当該クランプ機構について説明する。蓋体31に設けた蓋体ヒンジ部の略反対側に位置して、外蓋カバー44の前方にはフック部としてのクランプ100を設ける。このクランプ100は、蓋体31の内部に設けたクランプシャフト(図示せず)を中心として、外蓋カバー44に対し回転自在に軸支される。なお、クランプシャフトは、その軸が蓋体31の水平左右方向にほぼ沿って配置される。蓋体31の前方上面には、蓋開ボタン101が露出状態で配設されており、この蓋開ボタン101の下側に、前記クランプ100の基端部100Aが配置される。また蓋体31の内部には、前記クランプ100の基端部100Aを蓋開ボタン101側に付勢するバネなどのクランプ付勢手段(図示せず)が設けられており、これにより蓋開ボタン101を常時上方に押し上げようとする力が作用する。
【0046】
クランプ100は、蓋開ボタン101に当接する基端部100Aの他に、外蓋カバー44の下面にあるクランプ用孔102から下方に突出する垂下部100Bと、クランプ100の実質的な先端部に相当し、垂下部100Bの下端を起点として、そこから本体1の内方に延出する係合部100Cとにより構成される。これらの垂下部100Bや係合部100Cは、クランプ100の下側にあって左右一対に設けられる。クランプ100の回転中心となるクランプシャフトは、垂下部100Bの上端に沿うように配置されており、係合部100Cは本体1のほぼ前後方向に遥動するようになっている。
【0047】
一方、上枠2に設けたヒンジ部32の略反対側に位置して、当該上枠2の前方には本体クランプ部としてのクランプ受け103が配設される。このクランプ受け103は、前記クランプ100の係合部100Cが当接するほぼ水平な被係合面103Aが形成されている。また、クランプ100の先端部に位置する係合部100Cは、クランプ受け103の下方から被係合面103Aに向けて当接するようになっており、クランプ受け103の下方には、係合部100Cの遥動を妨げないような空間が形成される。さらに上枠2の上面部には、蓋体31を本体1側に閉じたときに、係合部100Cが当接しながら前記空間に入り込むようなテーパー面を有する案内面103Bが設けられる。この案内面103Bは、前記クランプ用孔102に対向してそれぞれ配設される。前記クランプ100およびクランプ受け103が、蓋体31を閉状態に保持するクランプ機構に相当する。
【0048】
第2実施例における凸部は、凸部91として外枠3と連続するように、本体1の最後部に対応する部分の底板4に設けられている。凸部91の作用効果自体は凸部81と同様であるが、前述したように、当該炊飯器は、クランプ機構の係合位置がヒンジ部32より下方に位置しており、蓋体31の開閉時における回転角度が多くなっている。このような構成の炊飯器では、蓋体31の回転角度が多い場合には蓋体31が開くときの衝撃が大きくなるにもかかわらず、凸部91を設けることにより本体1の浮き上がりや移動を効果的に防止することができる。
【0049】
本第2実施例の変形例として、図8及び図9では、凸部91の先端に弾性部材93を装着している。弾性部材は例えば弾性ゴムなどからなり、凸部91の先端に形成された取付突起92に例えば接着や嵌着等の周知の固着手段を用いて取り付けられることにより、弾性部材93が凸部91の先端を被覆する状態になっている。弾性部材93の作用効果は弾性部材83と同様である。
【0050】
以上のように本第2実施例の炊飯器では、フック部としてのクランプ100の係合位置が、蓋体31のヒンジ部32より蓋体31の回転角度が多くなる方向側にある。
【0051】
このようにすると、蓋体31の回転角度が多い場合には蓋体31が開くときの衝撃が大きくなるにもかかわらず、本体1の浮き上がりや移動を効果的に防止することができる。従って、蓋体31の回転角度が多く蓋体31が開くときの衝撃が大きいものでも、本体1の浮き上がりや移動を効果的に防止した炊飯器を提供することができる。
【0052】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。凸部81,91はどのような形状としてもよく、あらゆるタイプの炊飯器に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一実施例における炊飯器の全体断面図である。
【図2】同上、炊飯器の底部に設けられた凸部を正面側から見た拡大断面図である。
【図3】同上、炊飯器の底部に設けられた凸部の斜視図である。
【図4】本発明の第一実施例における炊飯器の変形例を示す凸部の拡大断面図である。
【図5】同上、凸部を正面側から見た拡大断面図である。
【図6】同上、別の変形例を示す凸部を正面側から見た拡大断面図である。
【図7】本発明の第二実施例における炊飯器の全体断面図である。
【図8】同上、炊飯器の変形例を示す凸部の拡大断面図である。
【図9】同上、凸部を正面側から見た拡大断面図である。
【図10】本発明の各実施例における炊飯器の電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1 本体
4 底板(本体底部)
5 脚部
11 鍋
16 加熱コイル(加熱手段)
31 蓋体
32 ヒンジ部(軸支部)
34 ヒンジバネ(蓋弾性部材)
37 フック部
81,91 凸部
83,93 弾性部材
85 ヒンジ軸位置(軸支位置)
100 クランプ(フック部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に収納される鍋と、前記鍋を加熱する手段と、前記鍋の上部を開閉自在に覆い設けられた軸支部により軸支された蓋と、前記蓋を開く方向へ付勢する蓋弾性部材と、所定状態に保持するために係合させるフック部を備えた炊飯器において、前記本体を設置安定させるために設けられた脚部以外に前記本体底部に凸部を設け、この凸部は前記蓋の軸支位置より外方側に位置するものであることを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記凸部に弾性部材を設けたことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記フック部の位置が、蓋の回転角度が多くなる方向側にあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の炊飯器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate