説明

炊飯器

【課題】蒸気投入により澱粉の甘みと香りを増加させ、食味の向上したご飯を提供することを目的とする。
【解決手段】炊飯器本体1内に着脱自在に収納される鍋2と、前記炊飯器本体1の上部を開閉自在に覆う蓋体3と、前記鍋2を加熱する鍋加熱手段4と、蒸気発生手段6で発生させた蒸気を前記鍋2内に投入する蒸気投入口17とを具備し、前記蒸気投入口17には、100℃以上の温度によって開閉する蒸気投入口蓋18を設けた。したがって、高温の蒸気を鍋2内のご飯に投入することができ、乾燥を防いで十分な加熱を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍋加熱手段による加熱に加えて、鍋上方から蒸気を鍋内に供給して米飯および水の加熱を行う炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な家庭用の炊飯器においては、鍋底部に配置した鍋加熱手段が主な加熱手段である。
【0003】
一方、ご飯をおいしく炊くためには、米の澱粉を十分に糊化させることが重要で、特に、追い炊き時に高温で米を加熱することで澱粉の糊化が進み、ご飯の甘みと香りが増す。
【0004】
しかし、追い炊き時には水がほぼ無くなった状態であるため、鍋加熱手段による加熱を継続すると、鍋底付近のご飯が焦げてしまい、加熱を弱めざるを得なかった。
【0005】
そこで、鍋加熱手段による加熱に加えて、鍋上方から蒸気を鍋内に投入して米飯および水の加熱を行うものが提案されている。これは、炊きあげ終了後すぐに温度の高い蒸気を鍋内に供給して糊化を促進させるもので、これにより、ご飯の食味を向上させることができる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−144308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、蒸気の投入口が常に開いた状態であり、鍋内に供給される蒸気は、蒸気発生手段から蒸気投入口までの経路内で冷やされ、また蒸気を加熱する蒸気加熱手段の加熱不足で100℃を下回る温度になってしまう可能性があった。
【0007】
その結果、100℃未満の蒸気が鍋内に投入されて、ご飯の熱が奪われ、ご飯表面に結露し、水がかかったような状態になり、中は芯が残ったような加熱不足のご飯になり、ご飯の食味を落としてしまうという課題もあった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、より一層美味しいご飯が炊ける炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、炊飯器本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記炊飯器本体の上部を開閉自在に覆う蓋体と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、蒸気発生手段で発生させた蒸気を前記鍋内に投入する蒸気投入口とを具備し、前記蒸気投入口には、温度によって開閉する蒸気投入口蓋を設けたものである。
【0010】
これにより、高温の蒸気を鍋内のご飯に投入することができ、乾燥を防いだ十分な加熱を行うことができ、澱粉の甘みと香りが増え、食味の向上したご飯を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の炊飯器によれば、澱粉の甘みと香りが増え、食味の向上したご飯を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、炊飯器本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記炊飯器本体の上部を開閉自在に覆う蓋体と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、蒸気発生手段で発生させた蒸気を前記鍋内に投入する蒸気投入口とを具備し、前記蒸気投入口には、温度によって開閉する蒸気投入口蓋を設けた。
【0013】
したがって、高温の蒸気を鍋内のご飯に投入することができ、乾燥を防いだ十分な加熱を行うことができる。
【0014】
蒸気投入口蓋は100℃以上を検知した際に開くように設定するのが望ましく、また、下方に開放させれば、おねばの蒸気発生手段への逆流を防止する上で有効である。
【0015】
さらに、蒸気投入口蓋をキュリー点を有する感温金属で構成することも考えられる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1に示すように、炊飯器本体1は着脱自在に鍋2を収納するとともに、蓋体3で上方が開閉されるものである。
【0018】
本実施の形態にあっては、後述のように鍋2を誘導発熱させ、その中に収納されている米と水を加熱調理する。
【0019】
炊飯器本体1は、鍋2の底部を誘導発熱させる電磁誘導コイルからなる鍋加熱手段4、鍋2の温度を検知する鍋温度検知手段5、貯水部6と貯水部加熱手段7からなる蒸気発生手段8、前記貯水部6の温度を検知する貯水部温度検知手段9、および制御手段10を有する。
【0020】
蓋体3は、鍋2の開口部を覆う磁性材の加熱板11、この加熱板11を誘導発熱させる電磁誘導コイルからなる加熱板加熱手段12、加熱板11の温度を検知する加熱板温度検知手段13、蒸気発生手段8で発生した蒸気を鍋2内に導くための蒸気導入通路14を有する。
【0021】
加熱板11は、加熱板シールパッキン15を有する着脱式であり、蓋体3の下面に取り付けられる。
【0022】
加熱板11の中心部に蒸気孔16が形成され、その横部に蒸気投入口17を有する。この蒸気投入口17にはそれを下方から開閉する蒸気投入口蓋18が設けてある。
【0023】
蒸気投入口蓋18はフェライトなどキュリー点をもつ感温金属でできており、蒸気バネ19で開放方向に付勢されている。そして、設定温度以下の状態では吸着用磁石20に磁気吸着され閉成状態に保持されるようにしてある。
【0024】
具体的には、蒸気導入通路14を通って加熱板11に至る蒸気が100℃以上であれば、蒸気投入口蓋18がキュリー点に達して磁性が低下し、蒸気バネ18の反発力が吸着用磁石19の磁気吸着力を超えるため、蒸気投入口蓋18は前記吸着用磁石19より離脱して下方へ開動し、蒸気投入口17を開放し(図3)、逆に蒸気温度が低くなり、蒸気投入口蓋18の温度が低くなると、磁性が元に戻って、吸着用磁石19の吸着力が蒸気バネ18の反発力よりも大きくなるため、この蒸気投入口蓋18が吸着用磁石19に吸着されて
蒸気投入口17を密閉する(図2)。
【0025】
従って、蒸気投入口蓋18のキュリー点温度を適当に選択することにより、その開閉タイミングを自在に設定することが可能となる。
【0026】
本実施の形態では、120℃から130℃まで加熱された蒸気を鍋2内に投入するようにしたため、蒸気投入口蓋18のキュリー点は130℃に設定した。
【0027】
蓋体3の下面の中心部は穴が空いており、内鍋2内から発生した蒸気を外部へ逃がす役割をはたしており、加熱版10の蒸気孔16の周辺には、蓋シールパッキン21が設けられ、蓋体3内部に流出しないようにしている。
【0028】
また、加熱板温度検知手段13は加熱板11に圧接され、その温度を計測する。
【0029】
22は蒸気シールパッキンで、蒸気導入通路14を通った蒸気が、蓋体3内に侵入するのを防ぐ。
【0030】
制御手段10は、回路基板(図示しない)に搭載されたマイクロコンピュータを有するもので、ソフトウエアによりユーザが操作パネル(図示しない)を介して入力する操作指令、鍋温度検知手段5、加熱板温度検知手段13、貯水部温度検知手段9から入力される信号に基づき、あらかじめマイクロコンピュータに記憶された炊飯プログラムにより、鍋2、加熱板11、貯水部6の加熱制御への電圧制御を行う。
【0031】
制御手段10は、鍋加熱手段4、加熱板加熱手段12、貯水部加熱手段7の加熱量を各加熱手段の通電率および/または通電量によって制御する。
【0032】
次に、以上のように構成された炊飯器の炊飯工程における動作を説明する。
【0033】
ユーザが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、炊飯器本体1に収納する。さらに、ユーザが炊飯開始スイッチ(図示しない)を操作すると、炊飯工程が実施される。
【0034】
炊飯工程は、前炊き、炊き上げ、沸騰維持、蒸らし工程からなり、前炊き工程において、鍋2の温度が米の吸水に適した温度(40℃〜60℃)になるように鍋加熱手段4を制御し、鍋内の米と水とを加熱する。
【0035】
次に、炊き上げ工程において、鍋2の温度が一定値(100℃)になるまで鍋加熱手段4によってこの鍋2を一定の熱量で加熱(発熱)する。
【0036】
この時の温度上昇速度によって、炊飯量を判定する。沸騰維持工程において、鍋2の水が無くなり、鍋2の温度が100℃を超えた一定値になるまで、鍋加熱手段4および加熱板加熱手段12に通電し、米と水を加熱する。
【0037】
最後に蒸らし工程において、一定時間の間に複数回、炊飯量に応じた鍋加熱手段4および加熱板加熱手段12による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。
【0038】
蒸らし工程において、制御手段10は貯水部温度検知手段9からの信号に応じて、貯水部6内の水が100℃になるまで貯水部加熱手段7に通電し続ける。
【0039】
貯水部温度検知手段9が100℃を検知すると、貯水部6で発生した蒸気は蒸気導入通
路14を通り、蒸気投入口17から鍋2内に供給される。蒸気導入通路14と蒸気投入口17の間には蒸気シールパッキン22が設けられているので、蒸気は確実に蒸気投入口17を通って、鍋2内に供給される。
【0040】
蒸気投入口17に設けられた蒸気投入口蓋18により、蒸気導入通路14を通る途中で冷やされた蒸気は鍋2内に投入されず、加熱板11で120℃から130℃まで加熱される。
【0041】
120℃から130℃まで加熱された蒸気が蒸気投入口蓋18に触れることにより、蒸気バネ19の反発力が蒸気投入口蓋18と吸着用磁石20の吸着力を超えるため、この蒸気投入口蓋18は下降して蒸気投入口17を開放し、これにより、120℃から130℃まで加熱された蒸気が鍋2内に投入される。
【0042】
また、蒸気温度が120℃未満になると、蒸気投入口蓋18の磁性が元に戻り、吸着用磁石20の吸着力が蒸気バネ19の反発力を超えるため、前記蒸気投入口蓋18が上昇して蒸気投入口17を閉じる。
【0043】
従って、鍋2内に投入されるのは高温蒸気のみであり、ご飯の温度が高温に保たれて糊化が進み、甘み、および香りが増し、食味を向上させることができる。
【0044】
また、蒸気を供給しながら鍋加熱手段4および加熱板加熱手段112による追い炊き加熱を行うので、ご飯の乾燥と焦げを抑えることができる。
【0045】
仮に、貯水部6の水が全て蒸発すると、その貯水部6の温度が一定温度を超えるため、貯水部温度検知手段9がそれを検知して、貯水部加熱手段7への通電を止めて、貯水部6の空焚きなどを防止し、安全性の確保を図ることができる。
【0046】
また、ユーザは炊飯開始前に、炊飯器の操作パネル(図示しない)を操作し、炊飯する米の銘柄を制御手段10に指定できる。制御手段10は指定された銘柄が、柔らかく炊ける性質の米(魚沼産コシヒカリ、宮城産ササニシキなど)か、標準的な性質の米(一般のコシヒカリ、ササニシキ、夏場の魚沼産コシヒカリ、新米のきらら397など)か、硬く炊ける性質の米(きらら397、夏場のコシヒカリ、ササニシキなど)か、を判断し、蒸らし工程における蒸気の投入時間(即ち、蒸気の投入量)を制御する。
【0047】
制御手段10は蒸らし工程において、米が、柔らかく炊ける性質の米の場合、蒸気を3分間鍋2に供給し、標準的な性質の米の場合、蒸気を5分間内鍋2に供給し、硬く炊ける性質の米の場合、蒸気を8分間内鍋2に供給する。
【0048】
このように、本実施の形態における炊飯器は、米の性質に合わせて最適な炊飯を行える。
【0049】
なお、蒸気の投入タイミングに代えて、貯水部加熱手段7の入力を米の性質に応じて変化させることによって、蒸気の投入量を変化させる構成としても良い。
【0050】
このように、本実施の形態における炊飯器は、炊きあげ終了後の蒸らし工程で蒸気を投入し、100℃以上に加熱された高温の蒸気のみを鍋内のご飯に投入することができることにより、ご飯が冷やされてべたつくことはなく、乾燥を伴わずに糊化を促進でき、ご飯全体の食味を向上させることができる。
【0051】
なお、蒸気制御手段は、蒸気の投入時間もしくは投入量により調節する事で、最適な蒸
気加熱を行うことができ、よりおいしいご飯を炊く事ができ、また保温性能も向上させることができる。
【0052】
さらに、蒸気投入口蓋は、蒸気投入口の上部に配設してもよいが、その場合、鍋内の米と水が加熱されて発生するおねばにより、蒸気投入口蓋が上方に持ち上げられ、100℃未満の蒸気が鍋内に投入される可能性があるため、蒸気投入口蓋は蒸気投入口の下部に配設したほうがよい。
【0053】
さらにまた、蒸気投入口蓋はフェライトなどキュリー点をもつ感温金属の他、形状記憶材やバイメタル、或いは、サーミスタなどで温度を検知してその結果を受けて電気的な手段で応動させることも考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明の炊飯器は、100℃未満の蒸気がご飯に投入され、ご飯の熱が奪われ、表面が水のかかったような感じで、中は芯が残った感じの食味の悪いご飯を防ぐことができ、澱粉の甘みと香りが増した食味の良いご飯が提供できるので、家庭用または業務用の炊飯器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態1を示す炊飯器の断面図
【図2】同炊飯器の蒸気温度が低い時の蒸気投入口部の動作説明図
【図3】同炊飯器の蒸気温度が高い時の蒸気投入口部の動作説明図
【符号の説明】
【0056】
1 炊飯器本体
2 鍋
3 蓋体
4 鍋加熱手段
6 蒸気発生手段
17 蒸気投入口
18 蒸気投入口蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯器本体内に着脱自在に収納される鍋と、前記炊飯器本体の上部を開閉自在に覆う蓋体と、前記鍋を加熱する鍋加熱手段と、蒸気発生手段で発生させた蒸気を前記鍋内に投入する蒸気投入口とを具備し、前記蒸気投入口には、温度によって開閉する蒸気投入口蓋を設けた炊飯器。
【請求項2】
蒸気投入口蓋は100℃以上を検知した際に動作するように制御した請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
蒸気投入口蓋は、下方に開放するように配設した請求項1に記載の炊飯器。
【請求項4】
蒸気投入口蓋はキュリー点を有する感温金属から構成された請求項1〜3のいずれか1項に記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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