説明

炊飯器

【課題】簡素な構成で、蒸気処理に際し、震動や騒音の発生や水の逆流を防止することができる炊飯器を提供する。
【解決手段】炊飯器100は、本体20と、本体20に回動自在に設置された蓋体10と、本体20に載置される内釜30と、本体20に着脱自在に設置される水タンク60と、水タンク60に着脱自在に設置される空気溜まり手段70と、蓋体10と空気溜まり手段70とを連通するガス誘導手段50とを有する。炊飯が始まると、内釜30内の空気はガス誘導手段50を経由して空気溜まり手段70に注入され、その上方に空気溜まり部Tが一旦形成され、その後、内釜30において発生した水蒸気Vは空気溜まり部Tに注入され、水Wによって冷却され凝縮(復水)する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炊飯器、特に、炊飯中に発生する水蒸気を凝縮させる手段を有する炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯中に発生する水蒸気を炊飯器の周囲に放出させないようにするために、水蒸気を凝縮(結露または腹水に同じ)させる熱交換手段を有する炊飯器、たとえば、水タンクの底に設けた穴から水蒸気を水中に流入させる水蒸気回収装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、水槽の中に侵入する水蒸気排出路の水蒸気排出口を、水槽の底面近くに配置して水中に水蒸気を排出する水蒸気回収装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、蓄熱材が封入されている容器を貫通する水蒸気パイプを設け、水蒸気パイプを通過する水蒸気の温熱を蓄熱材に伝達して、水蒸気を凝縮(結露)させる加熱調理機器が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−106532号公報(第2―4頁、図1)
【特許文献2】特開平03−231613号公報(第2頁、図1)
【特許文献3】特開平03−182212号公報(第2―3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に開示された発明には、以下のような問題があった。
(i)特許文献1および特許文献2に開示された発明は、水蒸気を水中に注入して凝縮させるものであるため、水蒸気を水中に注入する際、水中に気泡(正確には、泡状の水蒸気の塊)が一旦形成され、その後、気泡が消滅するから、かかる気泡の発生および消滅の繰返しによって震動や騒音が発生するという問題がある。
(ii)また、特許文献1に開示された発明は、炊飯前に、水タンクの底に設けた穴から水が水タンクの外に流出しないようにする逆止弁を設けたり、水タンクの底に水蒸気を導く通路を水タンクと一体的に形成したりする必要があり、装置の構成が複雑になるという問題があった。このため、製造コストが上昇すると共に、使用後の洗浄が面倒になっていた(屈曲した奥部に洗い残しが生ずる)。
【0005】
(iii)また、特許文献2に開示された発明は、水蒸気を水中に強制的に吐出するための送風機を設けるため、部品点数が増すという問題があった。また、内釜および水蒸気排出路の温度が下がって減圧した際、水蒸気排出路に水が逆流するという問題があった。
(iv)さらに、特許文献3に開示された発明は、前記「震動や騒音が発生するという問題」や前記「水が逆流するという問題」は解消されるものの、装置の構成が複雑になるという問題があった。このため、製造コストが上昇すると共に、使用後の洗浄が困難になっていた(特に、水蒸気パイプを容器から分離して、水蒸気パイプの内面を洗うことができない)。
【0006】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、簡素な装置構成でありながら、前記「震動や騒音が発生するという問題」や前記「水が逆流するという問題」を解消することができる炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炊飯器は、
被炊飯物を収納する内釜と、
被炊飯物を加熱する加熱手段と、
前記内釜が載置され前記加熱手段を装備する本体と、
該本体に設置され、前記内釜の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体と、
前記被炊飯物が加熱された際、前記内釜から排出される空気および前記被炊飯物から生じる蒸気を誘導するガス誘導手段と、
該ガス誘導手段によって誘導された前記空気および蒸気が注入される空気溜まり手段と、
内部に水が貯留されるとともに該空気溜まり手段を収納する水タンクと、
を有し、
前記空気溜まり手段は、
前記水タンクに水が貯留された状態において、この空気溜まり手段の上方に所定の高さの水の層が形成される位置に設けられ、
炊飯を開始すると、前記ガス誘導手段を介して注入された空気によって前記空気溜まり手段内に空気溜まり部を形成する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る炊飯器は、炊飯時に発生する水蒸気が空気溜まり部に注入されるから以下の効果を奏する。
(1)水中で気泡(空気の泡および水蒸気の泡を総称する)が、ひとまとまりになるから、細かな気泡の消滅による震動や騒音が発生しない。
(2)水タンクのタンク天板またはタンク側板のタンク天板に近い、ガス注入口を形成するだけであるから、水タンクの構成が簡素になり、製造コストの低廉化に供すると共に、使用後の洗浄が容易になる。
(3)また、発生した水蒸気の圧力によって、内釜に閉じ込められていた空気や発生した水蒸気は、自然(強制的に駆動されることなく)に水タンクに注入されるから、部品点数を最小に抑えることができる。
(4)また、水面の上部には空気溜まり部が形成されるから、内釜およびガス誘導手段の内部が減圧した際、ガス誘導手段に水が逆流することがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態1に係る炊飯器の構成を模式的に示す正面図。
【図2】本発明の実施形態1に係る炊飯器の構成を模式的に示す側面視の断面図。
【図3】図1に示す炊飯器の水タンクを模式的に示す平面図と側面視の断面図。
【図4】図1に示す炊飯器の空気溜まり手段を模式的に示す斜視図。
【図5】図5に示す空気溜まり手段の平面図、側面視の断面図、背面視の断面図。
【図6】本発明の実施形態2に係る炊飯器の構成を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1:空気溜まり部注入式]
図1〜図5は本発明の実施形態1に係る炊飯器の構成を模式的に示す構成図である。図1は正面図、図2の(a)および(b)は側面視の断面図、図3の(a)は水タンクの平面図、図3の(b)は水タンクの側面視の断面図、図4は空気溜まり手段の斜視図、図5の(a)は空気溜まり手段の平面図、図5の(b)は空気溜まり手段の側面視の断面図、図5の(c)は空気溜まり手段の背面視の断面図である。
【0011】
(炊飯器)
図1および図2において、炊飯器100は、上部が開口したコップ状の本体20と、本体20に設置され、被炊飯物Rを収納する内釜30と、本体20に回動自在に軸支され、内釜30の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体10と、被炊飯物Rを加熱する図示しない加熱手段と、加熱手段(図示しない)を制御する図示しない制御手段と、を有している。
さらに、被炊飯物Rが加熱された際(正確には被炊飯物Rと共に水Wも加熱された際)、内釜30から排出される空気Aを誘導すると共に被炊飯物Rおよび水Wから生じる水蒸気Vを誘導するガス誘導手段50と、ガス誘導手段50によって誘導された空気Aおよび水蒸気Vが注入される空気溜まり手段70と、空気溜まり手段70が着脱自在に設置され、本体20に着脱自在(引き出し自在)に設置される水タンク60と、を有している。
【0012】
(ガス誘導手段)
ガス誘導手段50は、蓋体10に形成された蓋体部ガス流路51と、本体20に形成された本体部ガス流路52と、水タンク60に形成された水タンク部ガス流路53と、空気溜まり手段に固定された空気溜まり手段部ガス流路54と、を具備している。
そして、蓋体10の回動によって、蓋体10が内釜30を閉じた際、蓋体部ガス流路51の下流側と本体部ガス流路52の上流側とが連通すると共に、蓋体10が本体部ガス流路52を押し下げることによって、本体部ガス流路52の下流側端部が水タンク60(正確には、水タンク部ガス流路53)内に挿入される(図2の(a)参照)。
このとき、本体部ガス流路52の下流側の外周と水タンク部ガス流路53の内周とは略気密的に当接(摺動)し、水タンク部ガス流路53の下流側端部と空気溜まり手段部ガス流路54の上流側端部とは、略気密的に当接しているから、内釜30から空気溜まり手段70に至るガス流路が形成されることになる。
【0013】
また、本体20には、本体部ガス流路52を上方に押し上げる付勢手段(たとえば、コイルスプリング)40が設置されている。したがって、蓋体10の回動によって、蓋体10が内釜30を開いた際に蓋体10が本体部ガス流路52から離れると、本体部ガス流路52は付勢手段40の付勢力によって持ち上げられる。
そうすると、本体部ガス流路52の下流側端部は水タンク60(正確には、水タンク部ガス流路53)から抜き出る(図2の(b)参照)。すなわち、かかる状態において、水タンク60を本体20から水平方向に引き出す(図2において左方向に移動)ことができる。
【0014】
なお、ガス誘導手段50に、たとえば、蓋体部ガス流路51に、水蒸気V中に含まれる「お粘」を除去する「お粘取り手段」を設けてもよい。また、ガス誘導手段50には、内部のガス圧(水蒸気Vの圧力)が所定の値を超えた場合に内部のガスを大気中に放出するガス放出弁(図示しない、安全弁に同じ)が設置されている。
さらに、蓋体部ガス流路51の下流側と本体部ガス流路52の上流側とを、可撓性を具備する継手手段によって連結してもよい。
また、蓋体部ガス流路51の下流側端部に斜面を(円錐状に)形成して、蓋体部ガス流路51を付勢手段40によって常時下方向に押し下げるようにしてもよい。このとき、水タンク60を本体20の後方に押し込むと、蓋体部ガス流路51の下流側端部は水タンク部ガス流路53に押し込められ、一方、水タンク60を前方に引き出す際、蓋体部ガス流路51は上方に持ち上げられるようにしてもよい。
【0015】
(水タンク)
図1〜図3において、水タンク60は、上方が開口した函状の水タンク本体61と、水タンク本体61の開口部を略気密的に覆う水タンク蓋(水タンク天板に相当する)62と、水タンク本体61の水タンク前面63に形成された水タンク手掛かり64と、を有する。そして、水タンク60が本体20の前面開口部22から最後方位置にまで押し込まれた際、本体前面21と水タンク前面63とは略同一面を形成するから意匠性が担保されている。なお、水タンク手掛かり64の形状は、図示するものに限定するものではない。
【0016】
さらに、水タンク蓋62には内フランジ66を具備する貫通孔65が形成され、これによって水タンク部ガス流路53が形成されている。また、水タンク本体61と水タンク蓋62との当接部には、環状のシール手段67が配置されている。
また、水タンク60は、良熱伝導性材料(たとえば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属)によって形成され、図示しない制御手段を冷却するための冷却ファン(図示しない)が形成する風路内に配置されている。したがって、水タンク60内に貯蔵された水Wが加熱された際、温熱の放熱が促進されている。
【0017】
(空気溜まり手段)
図4および図5において、空気溜まり手段70は、空気溜まり天板71および空気溜まり前面側板72aおよび空気溜まり横面側板72b、72dおよび空気溜まり後面側板72c(以上まとめて「空気溜まり側板72」と称す)と、からなる下面が開口した函体である。空気溜まり天板71は空気溜まり後面側板72cとの接合部に向かって高くなるように傾斜し、空気溜まり後面側板72cの上端の近くに、スリット状のガス注入口75が形成されている。
一方、空気溜まり手段部ガス流路54は、略鉛直方向に配置されたガス流路鉛直部54aと、略水平方向に配置され、スリット状のガス注入口75を貫通する厚さが薄く水平方向に長いガス流路扁平部54c(スリット状のガス注入口を具備する)と、ガス流路鉛直部54aとガス流路扁平部54cとを連結するガス流路扁平移行部54bと、から形成されている。
【0018】
また、空気溜まり横面側板72b、72dの下端部には、載置用の空気溜まり脚73c、73dが設けられ、空気溜まり側板72の下端面は、水タンクの底面から離れている。すなわち、空気溜まり手段70と水タンク60との間で、水は行き来することができる。
さらに、空気溜まり天板71には、水Wが通過自在であってガス(空気Aおよび水蒸気Vを総称している。「泡状」に限定しない)が通過不能な微小孔74が形成されている。そして、水タンク本体61に空気溜まり手段70を設置して、水タンク蓋62を閉じたとき、空気溜まり手段部ガス流路54の上流側端部(ガス流路鉛直部54aの上流側端部に同じ)は、水タンク蓋62の内フランジ66の下端部に略気密的に当接する。
なお、空気溜まり天板71または空気溜まり側板72の一方または両方が、良熱伝導性材料(たとえば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属)によって形成されている。
【0019】
(水蒸気処理)
したがって、炊飯が始まると、ガス誘導手段50によって誘導された内釜30内の空気Aは、ガス流路扁平部54c(スリット状のガス注入口を具備する)から空気溜まり手段70内に注入され、上方を空気溜まり天板71に拘束された状態で空気溜まり部Tが形成される。すなわち、空気溜まり部Tは空気溜まり天板71と水面との間に、楔状に形成される。そして、さらに炊飯が進むと、内釜30において発生した水蒸気Vは、空気溜まり部Tに注入され、空気溜まり手段70内の水や、空気溜まり天板71を介して水タンク60内の水Wによって冷却され凝縮(復水)する。
このとき、空気溜まり天板71内の水W(凝縮した水を含む)は、微小孔74や、空気溜まり側板72と水タンクの底面との隙間を通過して空気溜まり部70の外に流出する。また、空気溜まり天板71と水面との間には所定の厚さの「水の層」が存在しているため、かかる水の層において対流が生じている。
【0020】
すなわち、水蒸気Vは空気溜まり部Tに注入され、水W中に注入されないため、水中に気泡(空気の泡および水蒸気の泡を総称する)が形成されないから、気泡の発生および消滅の繰返しによる震動や騒音が発生しない。
また、水タンク60に空気溜まり手段70を設置するだけであるため、構成が簡素になり、製造コストの低廉化に供すると共に、使用後の洗浄が容易になる。さらに、発生した水蒸気の圧力によって、内釜に閉じ込められていた空気や発生した水蒸気は、自然(強制的に駆動されることなく)に空気溜まり部Tに注入されるから、部品点数を最小に抑えることができる。さらに、ガス誘導手段50の下流側端部は空気溜まり部Tに位置しているため、内釜30およびガス誘導手段50の内部が減圧した際、ガス誘導手段50に水Wが逆流することがない。
【0021】
(その他のガス注入形態)
なお、以上は、空気溜まり手段部ガス流路54の下流端部であるガス流路扁平部54cが、空気溜まり手段70のスリット状のガス注入口75を貫通して内部に侵入しているが、本発明はこれに限定するものではなく、空気溜まり手段部ガス流路54がガス流路扁平部54cを欠き、ガス流路扁平移行部54bの下流側端部がガス注入口75を包囲して、空気溜まり後面側板72cに直接接合されてもよい。
さらに、ガス注入口75を空気溜まり天板71に形成して、空気溜まり手段部ガス流路54を、略鉛直方向に配置されたガス流路鉛直部54aと、略鉛直方向に配置されたガス流路扁平移行部54bと、から形成し、ガス流路扁平移行部54bの下流側端部をガス注入口75を包囲した状態で、空気溜まり天板71に接合してもよい。このとき、ガス注入口75に向かって高くなるように空気溜まり天板71を傾斜させておけば、あるいは、ガス注入口75の周囲が高くなるように空気溜まり天板71に凸出部を形成しておけば、炊飯を開始した初期の段階から、空気溜まり部Tが確実に形成される。
さらに、空気溜まり手段部ガス流路54をL字状の管体で形成し、該管体の水平部を空気溜まり横面側板72bを貫通して空気溜まり手段70の内部に配置し、該管体の水平部の管軸方向にスリット状のガス注入口を形成してもよい。
【0022】
[実施の形態2:水タンク注入式]
図6は本発明の実施形態2に係る炊飯器の構成を模式的に示す構成図であって、(a)は側面視の断面図、(b)は水タンクの平面視の断面図である。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
【0023】
(炊飯器)
図6において、炊飯器200は、上部が開口したコップ状の本体20と、本体20に設置され、被炊飯物Rを収納する内釜30と、本体20に回動自在に軸支され、内釜30の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体10と、被炊飯物Rを加熱する図示しない加熱手段と、加熱手段(図示しない)を制御する図示しない制御手段と、を有している。
さらに、被炊飯物Rが加熱された際(正確には被炊飯物Rと共に水Wも加熱された際)、内釜30から排出される空気Aを誘導すると共に被炊飯物Rおよび水Wから生じる水蒸気Vを誘導するガス誘導手段250と、ガス誘導手段250によって誘導された空気Aおよび水蒸気Vが注入される水タンク260と、を有している。
【0024】
(ガス誘導手段)
ガス誘導手段250は、蓋体10に形成された蓋体部ガス流路251と、本体20に形成された本体部ガス流路252と、本体部ガス流路252の下流側先端に形成されたガス流路拡大部253と、ガス流路拡大部253の下流側先端に形成されたガス流路フランジ254と、を具備している。すなわち、ガス流路拡大部253の下流側先端に形成されたスリット状のガス流出口255を包囲するようにガス流路フランジ254が設置されている。そして、蓋体部ガス流路251の下流側と本体部ガス流路252の上流側とは、可撓性を具備する管継手(図示しない)によって連結されている。また、ガス流路フランジ254は本体20の前面に向かって高くなるように傾斜している。
なお、ガス誘導手段250の形状等は、図示するものに限定するものではなく、「お粘取り手段」やガス放出弁等は、適宜設置されてもよい。
【0025】
(水タンク)
図6において、水タンク260は、上方が開口した函状の水タンク本体261と、水タンク本体261の開口部を略気密的に覆う水タンク蓋(水タンク天板に相当する)262と、水タンク本体61の水タンク前面263に形成された水タンク手掛かり264と、を有する。そして、水タンク260が本体20の前面開口部22から所定位置に押し込まれた際、本体前面21と水タンク前面263とは略同一面を形成するから意匠性が担保されている。なお、水タンク手掛かり264の形状は、図示するものに限定するものではない。
【0026】
さらに、水タンク蓋262には、一方に向かって前面側が高くなるように傾斜し、略水平方向(本体前面21に略平行)にスリット状の貫通孔(以下「ガス注入口」と称す)265が形成されている。
そして、水タンク260が本体20の所定位置に設置された際、水タンク蓋262の上面と、ガス誘導手段250のガス流路フランジ254の下面とは、略気密的に当接し、前者のガス注入口265は、後者のガス流出口255に連通する。なお、前者の上面と後者の下面との間に、シール手段を配置してもよい。
また、水タンク60は、良熱伝導性材料(たとえば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属)によって形成され、図示しない制御手段を冷却するための冷却ファン(図示しない)が形成する風路内に配置されている。したがって、水タンク60内に貯蔵された水Wが加熱された際、温熱の放熱が促進されている。
【0027】
(水蒸気処理)
したがって、炊飯が始まると、ガス誘導手段250によって誘導された内釜30内の空気Aや発生した水蒸気Vは、ガス流出口255およびガス注入口265を通過して、水タンク260の上部に形成されている空気溜まり部T内に注入される。そして、注入された水蒸気Vは、水タンク260内の水Wによって冷却され凝縮(復水)する。
【0028】
すなわち、水蒸気Vは空気溜まり部Tに注入され、水W中に注入されないため、水中に気泡(空気の泡および水蒸気の泡を総称する)が形成されないから、気泡の発生および消滅の繰返しによる震動や騒音が発生しない。
また、水タンク60は極めて簡素な構成であるから製造コストの低廉化に供すると共に、使用後の洗浄が容易になる。さらに、発生した水蒸気の圧力によって、内釜に閉じ込められていた空気や発生した水蒸気は、自然(強制的に駆動されることなく)に空気溜まり部Tに注入されるから、部品点数を最小に抑えることができる。さらに、ガス誘導手段250の下流側端部は水タンク260の上部(空気溜まり部Tに同じ)に位置しているため、内釜30およびガス誘導手段250の内部が減圧した際、ガス誘導手段50に水Wが逆流することがない。
【0029】
(その他のガス注入形態)
なお、以上は、ガス流路フランジ254および水タンク蓋262を傾斜させているが、本発明はこれに限定するものではなく、両者を水平にしてもよい。また、水タンク260を本体20の下部(内釜30の下方に同じ)に配置したり、本体部ガス流路252を略鉛直方向に配置してもよい。
さらに、炊飯の開始時に、空気溜まり部Tがないようにしてもよい。このとき、炊飯の開始時に水タンク蓋262の下面が水Wに接しているから、空気溜まり部Tの形成によって押し出された水を受け止める補助水タンクを設け、水タンク260の底面の近くから抜き出した水が補助水タンクに流入するようなオーバーフロー手段を設けてもよい。なお、補助水タンクは、水タンクの一部であって、堰によって仕切って形成された所定範囲であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上より、本発明の炊飯器は、簡素な構成によって、発生した水蒸気を水面上に形成される空気溜まり部に注入して凝縮(復水)させるため、気泡の発生および消滅の繰返しによる震動や騒音が発生しないから、家庭用または業務用の各種炊飯器および各種調理器と共に、炊飯や調理以外を目的としながら水蒸気が発生する各種装置に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10:蓋体、20:本体、21:本体前面、22:前面開口部、30:内釜、40:付勢手段、50:ガス誘導手段、51:蓋体部ガス流路、52:本体部ガス流路、53:水タンク部ガス流路、54:空気溜まり手段部ガス流路、54a:ガス流路鉛直部、54b:ガス流路扁平移行部、54c:ガス流路扁平部、60:水タンク、61:水タンク本体、62:水タンク蓋、63:水タンク前面、65:貫通孔、66:内フランジ、67:シール手段、70:空気溜まり手段、71:空気溜まり天板、72:空気溜まり側板、72a:空気溜まり前面側板、72b:空気溜まり横面側板、72c:空気溜まり後面側板、72d:空気溜まり横面側板、73c:空気溜まり脚、73d:空気溜まり脚、74:微小孔、75:ガス注入口、100:炊飯器(実施の形態1)、200:炊飯器(実施の形態2)、250:ガス誘導手段、251:蓋体部ガス流路、252:本体部ガス流路、253:ガス流路拡大部、254:ガス流路フランジ、255:ガス流出口、260:水タンク、261:水タンク本体、262:水タンク蓋、263:水タンク前面、265:ガス注入口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被炊飯物を収納する内釜と、
被炊飯物を加熱する加熱手段と、
前記内釜が載置され前記加熱手段を装備する本体と、
該本体に設置され、前記内釜の上部開口部を開閉自在に覆う蓋体と、
前記被炊飯物が加熱された際、前記内釜から排出される空気および前記被炊飯物から生じる蒸気を誘導するガス誘導手段と、
該ガス誘導手段によって誘導された前記空気および蒸気が注入される空気溜まり手段と、
内部に水が貯留されるとともに該空気溜まり手段を収納する水タンクと、
を有し、
前記空気溜まり手段は、
前記水タンクに水が貯留された状態において、この空気溜まり手段の上方に所定の高さの水の層が形成される位置に設けられ、
炊飯を開始すると、前記ガス誘導手段を介して注入された空気によって前記空気溜まり手段内に空気溜まり部を形成する
ことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記水タンクに水が貯留された状態において、前記空気溜まり手段の上方に形成された前記所定の高さの水の層の範囲において水の対流が促進される
ことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。
【請求項3】
前記空気溜まり手段に、水が通過自在であってガスが通過不能な微小孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の炊飯器。
【請求項4】
前記空気溜まり手段の側面の一部に前記ガス誘導手段によって誘導され空気および蒸気が通過するガス注入口が形成される
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の炊飯器。
【請求項5】
前記空気溜まり手段は、前記ガス注入口に向かって高くなるように傾斜している
ことを特徴とする請求項4記載の炊飯器。
【請求項6】
前記空気溜まり手段は、前記ガス注入口に近い範囲が上方に凸出している
ことを特徴とする請求項4または5記載の炊飯器。
【請求項7】
前記ガス注入口は、水平方向に長いスリット状である
ことを特徴とする請求項4乃至6の何れかに記載の炊飯器。
【請求項8】
前記空気溜まり手段の天面の一部に前記ガス誘導手段によって誘導され空気および蒸気が通過するガス注入口が形成される
ことを特徴とする請求項1または2記載の炊飯器。
【請求項9】
前記空気溜まり手段は、前記ガス注入口に向かって高くなるように傾斜している
ことを特徴とする請求項8記載の炊飯器。
【請求項10】
前記空気溜まり手段は、前記ガス注入口が形成された部分が上方に凸出している
ことを特徴とする請求項8または9記載の炊飯器。
【請求項11】
前記空気溜まり手段の内側に侵入するガス注入管が設置され、当該ガス注入管の先端が前記空気溜まり手段の天面の近傍に位置する
ことを特徴とする請求項1または2記載の炊飯器。
【請求項12】
前記空気溜まり手段の天面は、前記ガス注入管の先端の位置に相当する位置に向かって高くなるように傾斜している
ことを特徴とする請求項11記載の炊飯器。
【請求項13】
前記空気溜まり手段の天面は、前記ガス注入管の先端の位置に相当する位置が上方に凸出している
ことを特徴とする請求項11または12記載の炊飯器。
【請求項14】
前記ガス注入管の先端開口部の断面は、水平方向に長いスリット状である
ことを特徴とする請求項11乃至13の何れかに記載の炊飯器。
【請求項15】
前記空気溜まり手段が、前記水タンクに着脱自在に設置されている
ことを特徴とする請求項1乃至14の何れかに記載の炊飯器。
【請求項16】
前記空気溜まり手段が、良熱伝導性材料によって形成される
ことを特徴とする請求項1乃至15の何れかに記載の炊飯器。
【請求項17】
前記ガス誘導手段が、前記蓋体に形成された蓋体部ガス流路と、前記本体に形成された本体部ガス流路と、前記空気溜まり手段に固定され前記水タンク内に収納された空気溜まり手段部ガス流路と、から、構成され、
前記蓋体が前記内釜を閉じた際、蓋体部ガス流路の下流側と前記本体部ガス流路の上流側とが連通すると共に、前記蓋体が前記本体部ガス流路を押し下げることによって、前記本体部ガス流路の下流側端部が前記水タンク内に挿入され、前記本体部ガス流路の下流側と前記空気溜まり手段部ガス流路とが連通する
ことを特徴とする請求項1乃至16の何れかに記載の炊飯器。
【請求項18】
前記水タンクが、良熱伝導性材料によって形成される
ことを特徴とする請求項1乃至17の何れかに記載の炊飯器。
【請求項19】
前記水タンクが前記本体に着脱自在に設置される
ことを特徴とする請求項1乃至18の何れかに記載の炊飯器。
【請求項20】
前記加熱手段を起動する加熱起動手段と、
該加熱起動手段を冷却するための風路を形成する送風ファンと、
を有し、
前記水タンクが、前記風路内に配置される
ことを特徴とする請求項1乃至19の何れかに記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−50783(P2011−50783A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280358(P2010−280358)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【分割の表示】特願2007−198842(P2007−198842)の分割
【原出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】