炊飯器
【課題】鍋に振動を加える際に、米と水をほぐすための最適な振動や回転動作を与えないと米と水の水分分布むらが生じ炊きむらの原因となること。
【解決手段】米と水が入れられる鍋2と、鍋2内に入れられた被調理物を加熱する加熱装置4の加熱動作を制御し、少なくとも米に水を吸水させる前炊き工程と、米の糊化を促進する加熱工程を含む炊飯工程を行う炊飯制御部6とを備え、炊飯制御部6は、鍋2を可変回転させる回転手段17で鍋2を鍋2の中心軸周りに正反転させて微振動させ、鍋2内に入れられた米が遠心方向に偏らない程度に振動を与えることにより、米と水の接触率を増やすことで吸水と糊化を促進し、水蒸発後には、米粒に圧力を付与することで吸水と糊化を促進し、鍋中心付近米も十分に火通りのよいご飯に炊き上げることができる。
【解決手段】米と水が入れられる鍋2と、鍋2内に入れられた被調理物を加熱する加熱装置4の加熱動作を制御し、少なくとも米に水を吸水させる前炊き工程と、米の糊化を促進する加熱工程を含む炊飯工程を行う炊飯制御部6とを備え、炊飯制御部6は、鍋2を可変回転させる回転手段17で鍋2を鍋2の中心軸周りに正反転させて微振動させ、鍋2内に入れられた米が遠心方向に偏らない程度に振動を与えることにより、米と水の接触率を増やすことで吸水と糊化を促進し、水蒸発後には、米粒に圧力を付与することで吸水と糊化を促進し、鍋中心付近米も十分に火通りのよいご飯に炊き上げることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯性能の向上を図る炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器は、昇温速度を遅くしたり、鍋に振動や回転動作を加えたり、加減圧を繰り返す構成を有している(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
図11は、特許文献1に記載された従来の炊飯器の断面図を示すものである。図11に示すように、炊飯器の本体1、鍋2、鍋加熱手段(誘導コイル)4、回転台23から構成されている。鍋2は回転台23上に載置されて、本体1内に回転可能で取出し自在に収納されている。回転機構20は鍋2を回転するためのもので、回転台23とモータ21及びシャフト22で構成されている。
【0004】
モータ21が回転するとシャフト22を介して回転台23が回転し、回転台23に載置された鍋2が回転する。鍋2に米と水を入れて炊飯を開始すると、鍋加熱手段(誘導コイル)4が通電して鍋2が加熱され、回転用のモータ21が駆動されて鍋2がゆっくり間欠回転を始め、この鍋2の間欠回転に伴い内部の水と米が流動を開始する。
【0005】
鍋2内の水と米の流動で、加熱された鍋2の熱が鍋2内の各部分に行き渡り、鍋2表面付近の米の温度と鍋2中心付近の米の温度差が小さくなって水と米の温度が均一に上昇し、炊き上がり御飯にムラができないよう図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−115355号公報
【特許文献2】特開平7−23851号公報
【特許文献3】特開平6−225832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、以下のような課題を有していた。
【0008】
昇温速度を遅くすると炊飯時間が長くなったり食味が低下するという課題があり、加減圧を繰り返して米と水を撹拌して温度を均一にできるのは沸騰してからであり沸騰前の工程では困難である。
【0009】
また、鍋に振動や回転動作を加える際に、米と水をほぐすための最適な振動や回転動作を与えないと米と水の水分分布むらが生じ、炊きむらの原因となる。特に、回転動作の場合には、炊飯工程における米の状態に応じて、最適な回転を与える必要があり、また鍋内の残水の有無を考慮して動作させることが重要である。
【0010】
詳述すると、回転動作の場合には、遠心方向に米が偏るため炊飯開始から炊飯終了まで米が攪拌されるほどの回転動作をさせた場合には、炊き上がりの中央上部付近のご飯が水っぽい食味となる。
【0011】
よって、中央上部付近のご飯とその他の部位とのご飯では炊き上がりの食感や味にばらつきが生じ、むらのあるご飯となる。ユーザーが炊き上がったご飯をほぐした場合は、食
感や味の悪い部位が全体に行きわたることで総合的に美味しくないご飯という食味評価結果となる。
【0012】
以上の現象は、各工程の時間が短くなる短時間炊飯において特に顕著となる。言い換えれば、以上の課題を解決することによって短時間炊飯しても炊きむらのない美味しいご飯を炊くことができるものである。
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、温度むらや水分分布むら等の炊きむらのない美味しいご飯を炊飯する炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、炊飯制御部が、鍋を可変回転させる回転手段で鍋を鍋の中心軸周りに正反転させて微振動させ、鍋内に入れられた米が遠心方向に偏らない程度に振動を与えるものである。
【0015】
これによって、鍋内で米が偏ったり、振動が部分的に集中すること無く、米と水が攪拌されて加熱効率を向上させることができ、振動や騒音の低減を図ることも容易で、鍋内に加熱媒体である水が存在する間は、強制対流による均温化で米への熱伝達率が向上すると共に米と水の接触機会を増やすことで米粒の吸水と糊化を促進させ、水が蒸発した後は、米粒に正反転動作による圧力が付与されて米粒の吸水と糊化を促進させることができる。
【0016】
また、回転方向への微振動であるため、鍋内で米と水が偏在することなく、加熱効率を向上させることができる。
【0017】
したがって、鍋内のご飯全体において芯や水っぽさがなく炊きむらのないご飯とすることができ、味むらがなく甘みのあるご飯を提供することができる。また、短時間炊飯において各工程の時間が短くなることで、加熱量の増加に起因して各工程の設定温度に達するまでの鍋内温度のさらなる不均一化と、各工程の設定温度に達してから保持する時間が短いことに起因して温度差の緩和が十分でないことによる炊きむらの増大に対しても、炊きむらと味むらのない美味しいご飯を炊くことができるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の炊飯器は、鍋内のご飯全体において芯や水っぽさがなく炊きむらのないご飯とすることができ、味むらがなく甘みのあるご飯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における鍋の断面図
【図3】炊飯工程シーケンスにおける(a)は鍋検知温度遷移図(b)は米飯温度の遷移図
【図4】米粒群の周りを水が通る様子を示す模式説明図
【図5】米粒間を水が通る様子を示す模式説明図
【図6】本発明の実施の形態1における炊飯器の鍋内の米と水の状態を示す(a)は模式説明上面図(b)は模式説明断面図
【図7】本発明の実施の形態1における炊飯器の別態様の鍋内の米と水の状態を示す(a)は模式説明上面図(b)は模式説明断面図
【図8】本発明の実施の形態1における炊飯器の炊飯終了後の鍋内の米と水の状態を示す(a)は模式説明上面図(b)は模式説明断面図
【図9】本発明の実施の形態1における沸騰維持工程での糊化度と従来の早炊きコースによる炊飯工程での糊化度の経時変化を比較したグラフ
【図10】(a)は本発明の第1の実施の形態における追い炊き工程での吸水率と従来の早炊きコースによる炊飯工程での吸水率の経時変化を比較したグラフ(b)は本発明の第1の実施の形態における追い炊き工程での糊化度と従来の早炊きコースによる炊飯工程での糊化度の経時変化を比較したグラフ
【図11】従来の炊飯器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の発明は、米と水が入れられる鍋と、前記鍋内に入れられた被調理物を加熱する加熱装置と、前記鍋内の前記被調理物の温度を検知する温度検知部と、前記温度検知部の検知温度に基づいて前記加熱装置の加熱動作を制御し、少なくとも米に水を吸水させる前炊き工程と、米の糊化を促進する加熱工程を含む炊飯工程を行う炊飯制御部とを備え、前記炊飯制御部は、前記鍋を可変回転させる回転手段で前記鍋を前記鍋の中心軸周りに正反転させて微振動させ、前記鍋内に入れられた前記米が遠心方向に偏らない程度に振動を与えることにより、鍋内で米が偏ったり、振動が部分的に集中すること無く、米と水が攪拌されて加熱効率を向上させることができ、振動や騒音の低減を図ることも容易で、鍋内に加熱媒体である水が存在する間は、強制対流による均温化で米への熱伝達率が向上すると共に米と水の接触機会を増やすことで米粒の吸水と糊化を促進させ、水が蒸発した後は、米粒に正反転動作による圧力が付与されて米粒の吸水と糊化を促進させることができる。
【0021】
また、回転方向への微振動であるため、鍋内で米と水が偏在することなく、加熱効率を向上させることができる。
【0022】
したがって、鍋内のご飯全体において芯や水っぽさがなく炊きむらのないご飯とすることができ、味むらがなく甘みのあるご飯を提供することができる。また、短時間炊飯において各工程の時間が短くなることで、加熱量の増加に起因して各工程の設定温度に達するまでの鍋内温度のさらなる不均一化と、各工程の設定温度に達してから保持する時間が短いことに起因して温度差の緩和が十分でないことによる炊きむらの増大に対しても、炊きむらと味むらのない美味しいご飯を炊くことができるものである。
【0023】
第2の発明は、特に、第1の発明の炊飯制御部は、前記鍋を第1の所定時間に第1の回転数で回転する第1の回転を行い、その後、前記鍋を第2の所定時間に第2の回転数で前記第1の回転と反転する第2の回転を行うことにより、炊飯工程が進むにつれて米の状態が変化することに対応して、最適な攪拌によって効率よく米と水をほぐすことができ、米の吸水と糊化を促進し、十分に火通りのよいご飯を提供することができる。
【0024】
第3の発明は、特に、第2の発明の第1の所定時間及び第2の所定時間は、0.01秒〜0.5秒の範囲とし、前記第1の回転数及び前記第2の回転数は、10rpm〜60rpmの範囲としたことにより、炊飯工程が進むにつれて米の状態が変化することに対応して、最適な攪拌によって効率よく米と水をほぐすことができ、米の吸水と糊化を促進し、十分に火通りのよいご飯を提供することができる。
【0025】
第4の発明は、特に、第2または第3の発明の炊飯制御部は、前記第1の回転(正転)と前記第2の回転(反転)の切り替え時に所定時間、前記鍋を停止させることにより、米と水を効率よく攪拌し、米の吸水と糊化を更に促進させることができる。
【0026】
具体的には、右回転(正転)を開始し、遠心力によって鍋中心部から鍋側面に向かった米が、回転が停止することで遠心力が低下し、鍋側面から鍋中心部に戻される時に左回転(反転)に転じると、回転方向の加速度が変化することで米が回転方向へ移動する。よって、一粒の米に着目した場合、米の遠心方向への移動と回転方向への移動が組み合わさることで3次元的な軌跡をたどることになり、より攪拌が促進されるものである。
【0027】
第5の発明は、特に、第2〜4のいずれか1つの発明の炊飯制御部は、前記鍋内の被調理物の量に応じて、前記第1の回転(正転)と前記第2の回転(反転)の少なくともいずれかを変更させることにより、鍋表面と米との摩擦力及び米全体の慣性力が炊飯量によって変化することに対応し、最適な攪拌によって効率よく米と水を攪拌することができる。
【0028】
具体的には、例えば、炊飯量1合の場合には、炊飯量5合の場合と比べて鍋表面と米との摩擦力及び米全体の慣性力が共に小さいため、第1及び第2の所定時間を短く設定し、第1及び第2の回転数を小さく設定することで効率よく米と水を攪拌することができる。
【0029】
第6の発明は、特に、第5の発明の炊飯制御部は、前記鍋内の前記水の有無に応じて、前記第1の回転(正転)と前記第2の回転(反転)の少なくともいずれかを変更させることにより、沸騰前及び水の蒸発後とで、それぞれ最適な微振動を与えることで、米の吸水と糊化を更に促進し、ご飯の食味を向上させることができる。
【0030】
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明の鍋は、内底面と内周面を繋ぐ緩やかな曲面形状を有し、前記内周面は前記鍋開口部に向かって径が拡大する形状としたことにより、回転させた場合に鍋内の米がより均一に攪拌されるようにすることができ、遠心力によって鍋中心部から鍋側面部に向かう米の動きの中で、緩やかな曲面形状に沿って米が移動しながら上昇することで効率よく攪拌される。
【0031】
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明の加熱工程は、前炊き工程終了から水と米を沸騰温度まで加熱する炊き上げ工程と、沸騰から沸騰温度より高い温度に加熱する沸騰維持工程と、米の糊化をさらに促進し余分な水分を蒸発させる追い炊き工程からなり、前記炊飯制御部は、前記前炊き工程と前記炊き上げ工程と前記沸騰維持工程において微振動による攪拌を行い、前記追い炊き工程において前記鍋の回転数を他工程より大きくすることにより、それぞれの炊飯工程において水と米の攪拌効果を効果的に作用させることができ、炊飯工程別に鍋の回転数や動作と非動作の程度を設定することでユーザーの望みどおりに炊飯を行うことで、炊飯時間の短縮、ユーザー好みの美味しさを実現することができる。
【0032】
前炊き工程において微振動させる場合には、米同士が癒着することを防止し、水を常時米と接触させることで米と水の接触効率を向上させ吸水性能を向上することができる。よって、前炊き工程において、短時間で十分に米に吸水させることができるため、従来のように吸水不足に起因して米の中心部まで糊化が進展していない炊き上がりのご飯になることが無い。
【0033】
炊き上げ工程において微振動させる場合には、炊きむらが生じ易い工程の一つである炊き上げ工程での炊きむらを無くし食味低下を防ぐことができる。すなわち、鍋加熱のための入力電力が大きい炊き上げ工程において鍋に接した米が急激な温度上昇によって、米の内部まで十分に吸水していない状態で一気に米の表面のみ糊化が進んでしまうことにより、芯が残ったご飯が炊き上がり、これが炊きむらの原因の一つとなっていた。そこで、米と水を攪拌することによって鍋に接した米を掻き混ぜて常時同じ米が鍋に接している状態を回避することで炊きむらを無くすとともに、米と水の接触効率を向上させることで吸水を促進することができる。
【0034】
また、沸騰維持工程において鍋を微振動させることによって、沸騰による熱伝達に加えて、微小対流による熱伝達を与えることができるため、吸水と糊化を促進し、十分に火通りのよいご飯にすることができる。
【0035】
また、追い炊き工程において鍋を微振動させることによって、吸水と糊化の度合いは微振動なしの場合と比較して大きくなり、米粒への吸水と加熱継続による糊化を促進し、これによって主に粘りが向上し、ご飯の物性が良化する。
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0037】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の断面図、図2は、本発明の第1の実施の形態における鍋の断面図を示すものである。
【0038】
図1及び図2において、炊飯器の本体1は、着脱自在の鍋2を内装する。鍋2は内底面と内周面を繋ぐ緩やかな曲面形状Rを有し、かつ内周面は鍋開口部に向かって径が拡大する形状である。図2に示すように、鍋開口部近傍の内径Aは鍋底近傍の内径Bより大きくなっている。
【0039】
本体1には、その上面を覆う蓋3が開閉自在に配設されている。本実施の形態の炊飯器は後述する方法で鍋2を誘導加熱し、鍋2内の米と水を加熱調理する。本体1は、鍋2の底部を誘導加熱する鍋加熱手段4(誘導加熱コイルである)、鍋2の温度を検知する鍋温度検知手段5、および炊飯制御部6を有する。蓋3は更に、鍋2の開口部を覆う加熱板7、加熱板7を誘導加熱する加熱板加熱手段8(誘導加熱コイルである)、加熱板7の温度を検知する加熱板温度検知手段9を有する。
【0040】
加熱板7は、加熱板シールパッキン10が付いた着脱式の加熱板であり、蓋3の下面に取り付けられる。加熱板7は、中心部に蒸気孔11を有する。加熱板温度検知手段9は、加熱板7に圧接される。加熱板シールパッキン10は、摩擦抵抗の小さいフッ素樹脂製とする。
【0041】
また、本体1は鍋2を収納する保護枠12を有し、鍋2を回転させるためのモータ13が保護枠12に取り付けられている。鍋2は、モータ13の回転動力をゴムローラ14を介して伝達され回転する。鍋2の中心軸に対しゴムローラ14と対向する部位には受けローラ15が保護枠12に取り付けられ、鍋2の回転による軸方向への振れを防止している。
【0042】
また、鍋2の動作を滑らかにするために、保護枠12に支持ローラ16が取り付けられ鍋2の底部に当接し、鍋2の回転に伴う振動や騒音の発生を防止している。鍋2の回転数は、モータ13への入力を可変させることによってゴムローラ14の回転数を変えることで任意の回転数を得ることができる。本実施の形態における回転手段17は、モータ13、ゴムローラ14、受けローラ15、支持ローラ16から構成されている。
【0043】
尚、本実施の形態では、鍋2を回転させるためのモータ13の回転動力の伝達にゴムローラ14を用いたが、鍋2に円筒ギアを配し、モータ13の回転動力をギアを介して鍋2に伝達するようにしても同様の効果が得られる。
【0044】
炊飯制御部6は、回路基板(図示しない)に搭載されたマイクロコンピュータを有する。炊飯制御部6(マイクロコンピュータ)はソフトウェアにより、ユーザーが操作パネル(図示しない)を介して入力する操作指令、鍋温度検知手段5、加熱板温度検知手段9から入力される信号に基づき、あらかじめマイクロコンピュータに記憶された炊飯プログラムにより、鍋2、加熱板7の加熱制御およびモータ13の動作制御を行う。
【0045】
炊飯制御部6は、鍋加熱手段4、加熱板加熱手段8の加熱量およびモータ13の動作を、各加熱手段およびモータの通電率及び/又は通電量によって制御する。本実施の形態では、鍋2、加熱板7を加熱することによって、被調理物たる米と水を加熱調理しており、鍋加熱手段4や加熱板加熱手段8を鍋内に入れられた被調理物を加熱する加熱装置として利用している。
【0046】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0047】
ユーザーが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、本体1に内装する。更にユーザーが目的とする炊飯メニューを選び、炊飯開始スイッチ(図示しない)を操作すると、炊飯工程が実施される。
【0048】
炊飯工程は、時間順に前炊き、炊き上げ、沸騰維持、追い炊きに大分される。
【0049】
図3は、炊飯工程シーケンスにおける(a)は鍋検知温度遷移図、(b)は米飯温度の遷移図を示すものである。
【0050】
図3に示すように、鍋検知温度と米飯温度には相関関係があり、鍋温度の検知によって米飯温度を検知することができる。従って、本実施の形態では、鍋温度検知手段5が鍋内の被調理物の温度を検知する温度検知部として作用するものである。
【0051】
前炊き工程Aにおいて、米の温度を糊化温度よりも低温の60℃前後に維持することで吸水を促進させて、以降の工程で米の中心部まで十分に糊化させたり、米の温度を63℃〜70℃範囲内にすることで白米の酵素の活性化を図り、甘みの増したご飯を得るといった炊飯制御を行う。本実施の形態では、米の吸水に適した第一の所定温度T1(60℃)になるように、鍋温度検知手段5、加熱板温度検知手段9で検知した温度値信号に基づき、炊飯制御部6は鍋加熱手段4を制御し、鍋内の米と水とを加熱する。
【0052】
次に、炊き上げ工程Bにおいて、鍋2の温度が第二の所定温度T2(水の沸点。通常100℃近傍)になるまで鍋加熱手段4によって鍋2を所定の熱量で加熱し、鍋2内の水を沸騰させる。この時の温度上昇速度(加熱板温度検知手段9から入力される信号)によって、炊飯量の判定も行う。
【0053】
沸騰維持工程Cにおいて、図3(a)に示すように、鍋2に水が有る間は、鍋温度検知手段5の検知温度Taが第二の所定温度T2(水の沸点。通常100℃近傍)で沸騰状態を維持するように、炊飯制御部6が鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段8を制御し、鍋加熱手段4が鍋2を加熱して米と水を加熱する。
【0054】
そして、沸騰維持工程Cが経過し、鍋2内の水が蒸発して鍋2内に水がなくなると、鍋2の温度が上昇する。鍋温度検知手段5の検知温度Taが、第三の所定温度T3(水の沸点以上)に到達すると、鍋2内に水がなくなったと判断し工程の終了とする。この工程は、米澱粉を糊化させる工程であり、炊飯後の飯の糊化度は100%近くに達するが、この工程終了時には糊化度は50〜60%程度となる。
【0055】
最後に追い炊き工程Dにおいて、図3(a)に示すように、第二の所定時間t2(通常15分前後)経過するまで、鍋温度検知手段5の検知温度Taが第二の所定温度T2(通常100℃近傍)で維持するように、炊飯制御部6が、炊飯量に応じて鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段8を制御し、鍋加熱手段4による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。
【0056】
追い炊き工程は沸騰維持工程に引き続き、米澱粉の糊化をさらに促進し余分な水分を蒸発させる工程であり、追い炊き工程の開始時には糊化度は50〜60%程度であったものが、追い炊き工程終了時、すなわち、炊飯終了時には、糊化度は100%近くに達するのである。
【0057】
このような炊飯工程を実行すると、鍋温度検知手段5の検知温度Taが図3(a)に、鍋2内の温度Tb、すなわち、米の温度が図3(b)に示すように温度推移する。
【0058】
通常、前炊き工程の60℃〜70℃付近から強火で加熱する際に、米の糊化が急激に促進され米粒同士が癒着して米粒群となり、沸騰時に米粒同士が癒着して米粒群のままで加熱されるために、鍋面付近の米は過加熱によって硬めのご飯となり、鍋中心付近の米は水っぽいご飯となりこれが炊きむらの原因となっていた。
【0059】
また、加熱工程では水を沸騰し続けることで米と水を撹拌し米の吸水と糊化促進を行うが、沸騰中に米粒同士が癒着したままでは、米粒群の内部の米は水と接触する機会が減ることで吸水と糊化が阻害される。水が蒸発した後、鍋面付近の米は更に過加熱によって硬めのご飯となり、鍋中心付近の米は加熱不足気味のご飯となっていた。
【0060】
図4は、米粒群の周りを水が通る様子を示す模式説明図を示すものである。
【0061】
図4に示すように、複数の米粒R1が互いに付着して米粒群RG1が形成されているとき、水W1は、図4の点線矢印で示すように、米粒群RG1の外側を移動する。このため、1つの米粒R1当たりの水W1の接触面積が小さくなり、米R1の吸水が悪くなる。
【0062】
本実施の形態では、前炊き、炊き上げ、沸騰維持、追い炊きの各工程別に、ユーザーが目的とする米の炊き上がり状態になるようにモータ13を制御し、鍋2を鍋の中心軸周りに正反転させて微振動させ、鍋2内に入れられた米が遠心方向に偏らない程度に振動を与え、鍋2内の米と水に最適な動きを与える。
【0063】
図5は、米粒間を水が通る様子を示す模式説明図である。図5に示すように、鍋2内の米と水に最適な動きが与えられることで、米に分散力が付与されて米粒集合体の形成が阻害され、米粒R1,R1同士が互いに付着せずにバラバラの状態となる。従って、鍋2内の水W1は、図5の点線矢印で示すように、互いに隣接する米粒R1,R1間を移動し、1つの米粒R1当たりの水W1の接触面積が大きくなる。
【0064】
図6は、本発明の第1の実施の形態の炊飯器の鍋内の米と水の状態を示す(a)は模式説明上面図、(b)は模式説明断面図を示すものである。
【0065】
前炊き工程において、鍋2が第1の回転数(60rpm)で右回りに第1の所定時間(0.5秒)第1の回転(正転)を行い、その後、第2の回転数(30rpm)で左回りに第2の所定時間(0.5秒)第2の回転(反転)する動作を繰り返し行うことにより、図6に示すように米の鍋内の相対位置を常に変化させて、米の吸水を促進させることができる。
【0066】
また、米の鍋内の相対位置を常に変化させることで、前炊き工程で米同士の癒着を無くすことができ、より吸水を促進し、加熱工程において米粒同士が癒着していないため沸騰による米と水の撹拌によって米の吸水と糊化をさらに促進させることができる。
【0067】
すなわち、60rpmで右回りに0.5秒回転(正転)させることで、遠心力によって鍋中心部から鍋側面に向かった米が、左回り回転(反転)に転じる際に遠心力が低下し、
鍋側面から鍋中心部に戻される。左回り回転(反転)の回転数が、右回り回転(正転)の回転数(60rpm)より小さい30rpmであるため、一粒の米に着目した場合、その米は反転に転じる際に元の位置に戻ることが無く、この正反転を繰り返すことで、米の鍋内の相対位置を常に変化させることができ、米の吸水を促進させることができる。
【0068】
前炊き工程では、米はまだ十分に吸水しておらず、米の糊化も進んでいないため、おねばの溶出による米表面の粘りは少ない状態である。この米の状態では、鍋表面と米の間の摩擦力は大きくないため、第1の所定時間と第2の所定時間を異なる時間に設定するか、第1の回転数と第2の回転数を異なる回転数に設定することで、微振動で米の相対位置を常に変化させるようにすることができ、これによって、米と水の接触機会が増えて吸水を促進することができる。
【0069】
前炊き工程の後半では、米の吸水がある程度進み、米表面の糊化も進み始めているため、おねばの溶出による米表面の粘りが発生している状態である。この状態では、鍋表面と米の間の摩擦力は大きくなってきているため、第1の所定時間と第2の所定時間を短くすることで、第1の回転(正転)が第2の回転(反転)に転じる際に、軸方向への米の攪拌を促進し、効率よく米と水をほぐすことができ、米と水の接触機会が増えて吸水と糊化を促進することができる。
【0070】
また、第1の所定時間および第2の所定時間を、0.01秒〜0.5秒の範囲とし、第1の回転数及び第2の回転数を、10rpm〜60rpmの範囲とすることにより、炊飯工程が進むにつれて米の状態が変化することに対し、最も効率のよい状態で、米と水を撹拌することができる。
【0071】
第1の所定時間および第2の所定時間を0.01秒〜0.5秒の範囲とした場合、第1の回転数及び第2の回転数が10rpmより小さいと米と水の撹拌効果が小さく、60rpmよりも大きいと米の表面からおねばが加速度的に溶出し、加熱媒体である水の粘度が上がりすぎて、米への吸水と糊化を阻害してしまう。
【0072】
一方、第1の回転数及び第2の回転数を10rpm〜60rpmの範囲とした場合、第1の所定時間および第2の所定時間が0.01秒より小さいと米と水の撹拌効果が小さく、0.5秒よりも大きいと米の表面からおねばが加速度的に溶出し、加熱媒体である水の粘度が上がりすぎて、米への吸水と糊化を阻害してしまう。
【0073】
よって、第1の所定時間および第2の所定時間を0.01秒〜0.5秒の範囲とし、かつ第1の回転数及び第2の回転数を10rpm〜60rpmの範囲とすることで、効率的な攪拌ができて米への吸水と糊化を促進し、十分に火通りのよいご飯にすることができる。
【0074】
また、図7は、本発明の第1の実施の形態の炊飯器の別態様の鍋内の米と水の状態を示す(a)は模式説明上面図、(b)は模式説明断面図を示すものである。
【0075】
鍋2の正転と反転の切り替え時に、一定時間鍋2を停止することにより、図7に示すように3次元的に米が攪拌されることで前炊き工程で米同士の癒着を無くすことができ、より吸水を促進し、加熱工程において米粒同士が癒着していないため沸騰による米と水の撹拌によって米の吸水と糊化をさらに促進させることができる。
【0076】
本実施の形態では、例えば、鍋2が第1の回転数(60rpm)で、0.5秒右回りに回転(正転)し遠心力によって鍋中心部から鍋側面に向かった米は、0.1秒間、回転が停止することで遠心力と慣性力が低下し、動きが止まろうとする時に、第2の回転数(3
0rpm)で、0.5秒左回りに回転(反転)に転じると回転方向の加速度が変化することで米が回転方向へ移動する。
【0077】
よって、一粒の米に着目した場合、米の遠心方向への移動と回転方向への移動が0.1秒間の回転の停止によって、効果的に組み合わさることで3次元的な軌跡をたどり、移動方向が周期的に変化するとともに回転周期毎の移動距離が長くなることになり、より攪拌が促進されるものである。
【0078】
また、鍋2内の被調理物の量に応じて、第1の回転(正転)と第2の回転(反転)の少なくともいずれかを変更させることにより、鍋表面と米との摩擦力および米全体の慣性力が炊飯量によって変わっても、最適な攪拌で効率よく米同士をほぐすことができ、米の吸水と糊化をさらに促進させることができ、十分に火通りのよいご飯にすることができる。
【0079】
本実施の形態では、例えば、被調理物の炊飯量が1合の場合、鍋表面と米との摩擦力および米全体の慣性力が共に比較的小さいため、第1の所定時間および第2の所定時間を0.1秒間程度と比較的短く設定し、かつ第1の回転数及び第2の回転数を10rpm程度と比較的小さく設定することで、最適な攪拌で効率よく米同士をほぐすことができ、米の吸水と糊化をさらに促進させることができ、十分に火通りのよいご飯にすることができる。
【0080】
一方、被調理物の炊飯量が5合の場合には、鍋表面と米との摩擦力および米全体の慣性力が共に比較的大きいため、第1の所定時間および第2の所定時間を0.5秒間程度と比較的長く設定し、かつ第1の回転数及び第2の回転数を50rpm程度と比較的大きく設定することで、最適な攪拌で効率よく米同士をほぐすことができ、米の吸水と糊化をさらに促進させることができ、十分に火通りのよいご飯にすることができる。
【0081】
前炊き工程に続く炊き上げ工程において、鍋2を微振動させることにより、炊きむらが生じ易い工程の一つである炊き上げ工程での炊きむらを無くし食味低下を防ぐことができる。
【0082】
すなわち、鍋加熱のための入力電力が大きい炊き上げ工程では米が急激な温度上昇によって、米の内部まで十分に吸水していない状態で一気に米の表面のみ糊化が進んでしまい、米同士が癒着して米内部への吸水を阻害することにより、芯が残ったご飯が炊き上がり、これが炊きむらの原因の一つとなっていた。
【0083】
そこで、鍋2の微振動による米と水の攪拌によって、米を3次元的に掻き混ぜて、常時同じ米同士が接触している状態を回避することで炊きむらを無くすとともに、米と水の接触効率を向上させることで吸水を促進することができる。
【0084】
また、沸騰維持工程において、鍋2を米と水が遠心方向へ偏らない程度の微振動をさせることにより、より吸水促進と糊化促進することができる。
【0085】
すなわち、鍋2が第1の回転数(50rpm)で右回りに第1の所定時間(0.05秒)第1の回転(正転)を行い、その後、第2の回転数(50rpm)で左回りに第2の所定時間(0.05秒)第2の回転(反転)する動作を繰り返し行うことにより、沸騰による熱伝達に加えて、微小対流による熱伝達を与えることができる。
【0086】
沸騰対流による熱伝達率をhとし、微振動による微小対流の熱伝達率をhcとすると、熱伝達率はh+hcとなり、微振動なしの場合の熱伝達率hよりhcだけ大きくなり、米の吸水と糊化を促進させることができる。
【0087】
また、米粒同士が癒着しておらず、沸騰による米と水の撹拌による米の吸水と糊化をより促進させることができ、主に米粒の甘みと弾力が向上し、ご飯の味と物性がより改善される。
【0088】
更に沸騰維持工程では、米の吸水と糊化が進んでご飯が柔らかくなってきており、振動を大きくし過ぎると、米の表面からおねばが加速度的に溶出し、加熱媒体である水の粘度が急激に上がることで米の吸水と糊化を阻害してしまうことになるが、適度な微振動を与えることで、おねばの過度の溶出を抑え、水の粘度が急激に上がることを抑えることで、米の吸水と糊化をより促進させることができる。
【0089】
加えて沸騰維持工程では、沸騰による水の蒸発と米の吸水によって、鍋内の水分が減少してくるが、この時の鍋の動きは微振動であるため、米が遠心方向に偏って中央部に水分が多くなる偏在がなく、鍋内の水分分布が均一であるため、非常にむらの少ない炊きあがりとなる。また、炊き上がりのご飯表面はフラットで品位が良いものである。図8に炊飯器の炊飯終了後の鍋内の米と水の状態を示す模式説明図を示す。
【0090】
したがって、鍋内のご飯全体において芯や水っぽさがなく炊きむらのないご飯とすることができ、味むらがなく甘みのあるご飯を提供することができる。
【0091】
更に、短時間炊飯において各工程の時間が短くなることで、加熱量の増加に起因して各工程の設定温度に達するまでの鍋内温度のさらなる不均一化と、各工程の設定温度に達してから保持する時間が短いことに起因して温度差の緩和が十分でないことによる炊きむらの増大に対しても、本実施の形態では、炊きむらと味むらのない美味しいご飯を炊くことができる。
【0092】
図9は、本発明の第1の実施の形態における沸騰維持工程での糊化度と従来の早炊きコースによる炊飯工程での糊化度の経時変化を比較したグラフである。
【0093】
図9に示すように、本実施の形態では約10分で糊化度95%まで上昇しているが、従来の早炊きでは10分でも80%に達していないため糊化不足による食味低下が懸念される。
【0094】
これは、早炊き(短時間炊飯)では、短時間に加熱を行うために、米の内部まで十分に吸水していない状態で一気に米の表面のみ糊化が進んでしまい、更に表面の糊化により米同士が癒着して鍋の中で大きな米の塊になることで、沸騰維持工程初期において米への吸水が阻害され、糊化不足となっている現象を示している。
【0095】
本実施の形態では、前炊き工程及び炊き上げ工程において鍋の微振動による米と水の攪拌によって、米を3次元的に掻き混ぜて、常時同じ米が接触している状態を回避することで、炊きむらを無くすとともに、米と水の接触効率を向上させることで、短時間に米内部まで吸水を促進することができ、更に沸騰維持工程において鍋の微振動によって、沸騰による水の蒸発及び米の吸水に伴う鍋内の水分減少に関わらず、米と水分の偏在がなく、鍋内の水分分布が均一であるため、非常にむらの少ない炊きあがりとなり、且つ、炊き上がりのご飯表面はフラットで品位が良いものとなる。
【0096】
図10(a)は、本発明の第1の実施の形態における追い炊き工程での吸水率と従来の早炊きコースによる炊飯工程での吸水率の経時変化を比較したグラフ、(b)は本発明の第1の実施の形態における追い炊き工程での糊化度と従来の早炊きコースによる炊飯工程での糊化度の経時変化を比較したグラフである。
【0097】
図10に示すように、本実施の形態では、追い炊き工程において鍋を微振動させることで、約10分で吸水率65%、糊化度100%近くまで上昇しており、米の吸水と糊化の度合いは、従来の早炊きの場合(微振動なしの場合)と比較して、大きくなっていることが分かる。
【0098】
鍋の中心軸を通る半断面にかかる圧力をFとすると、圧力Fは鍋の回転に伴う慣性力を半断面で除した値となる。米粒に圧力Fを付与することによって、一般現象としての餅つきの際に生じる効果が現れるものである。
【0099】
即ち、米粒への吸水の促進と加熱継続による糊化の促進であり、これによって主に粘りが向上し、ご飯の物性が改善するものである。尚、追い炊き工程では、残水がないため、回転時間、回転数共に大きくすることで効果を最大限発揮させることができる。
【0100】
以上のように、前炊き工程で微振動を与えることで、米を常時、水と接触させることで米と水の接触効率を向上させ、吸水性能を向上させることができる。従って、前炊き工程で短時間に十分に米に吸水することができるので、従来のように吸水不足に起因して米の中心部まで糊化が進展せずに炊き上がって芯のあるご飯になることがない。
【0101】
次に、炊き上げ工程で微振動を与えることで、炊きむらが生じやすい工程の一つである炊き上げ工程での炊きむらを減じ、食味低下を防ぐことができる。
【0102】
即ち、鍋加熱のための入力電力が大きい炊き上げ工程において、従来は、鍋の温度上昇に伴い、鍋面に接した米が急激に温度上昇して米内部まで十分に吸水していない状態で、一気に米の表面のみ糊化が進んでしまうことにより、芯が残ったご飯が炊き上がり、これが炊きむらの原因の一つになっていたが、本実施の形態では、炊き上げ工程で微振動を与えることで、鍋面に接した米が攪拌され、常時同じ米が鍋に接することを回避させ、炊きむらを減じると共に、米と水の接触効率を向上させることで、吸水を促進することができる。
【0103】
次に、沸騰維持工程で微振動を与えることで、沸騰による熱伝達に加えて微小対流による熱伝達を付加することができるので、米の吸水と糊化を促進し、十分に火通りのよいご飯を炊き上げることができる。
【0104】
最後に、追い炊き工程で微振動を与えることで、米粒に圧力が付与され、米粒への吸水の促進と加熱継続による糊化の促進ができ、これによって主に粘りが向上し、ご飯の物性が改善する。
【0105】
以上のように、米と水が接触する機会を増やすことで、米の吸水と糊化を促進し、また、水が蒸発した後においても米粒に圧力を付与することで、米の吸水と糊化を促進し、鍋中心付近の米も十分に火通りのよいご飯にすることができるので、従来より炊きむらのない良食味のご飯を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、鍋内のご飯全体において芯や水っぽさがなく炊きむらのないご飯とすることが可能となるので、他の加熱調理機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0107】
1 本体
2 鍋
3 蓋
4 鍋加熱手段
5 鍋温度検知手段
6 炊飯制御部
7 加熱板
8 加熱板加熱手段
9 加熱板温度検知手段
10 加熱板シールパッキン
11 蒸気孔
12 保護枠
13 モータ
14 ゴムローラ
15 受けローラ
16 支持ローラ
17 回転手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯性能の向上を図る炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の炊飯器は、昇温速度を遅くしたり、鍋に振動や回転動作を加えたり、加減圧を繰り返す構成を有している(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
図11は、特許文献1に記載された従来の炊飯器の断面図を示すものである。図11に示すように、炊飯器の本体1、鍋2、鍋加熱手段(誘導コイル)4、回転台23から構成されている。鍋2は回転台23上に載置されて、本体1内に回転可能で取出し自在に収納されている。回転機構20は鍋2を回転するためのもので、回転台23とモータ21及びシャフト22で構成されている。
【0004】
モータ21が回転するとシャフト22を介して回転台23が回転し、回転台23に載置された鍋2が回転する。鍋2に米と水を入れて炊飯を開始すると、鍋加熱手段(誘導コイル)4が通電して鍋2が加熱され、回転用のモータ21が駆動されて鍋2がゆっくり間欠回転を始め、この鍋2の間欠回転に伴い内部の水と米が流動を開始する。
【0005】
鍋2内の水と米の流動で、加熱された鍋2の熱が鍋2内の各部分に行き渡り、鍋2表面付近の米の温度と鍋2中心付近の米の温度差が小さくなって水と米の温度が均一に上昇し、炊き上がり御飯にムラができないよう図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−115355号公報
【特許文献2】特開平7−23851号公報
【特許文献3】特開平6−225832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、以下のような課題を有していた。
【0008】
昇温速度を遅くすると炊飯時間が長くなったり食味が低下するという課題があり、加減圧を繰り返して米と水を撹拌して温度を均一にできるのは沸騰してからであり沸騰前の工程では困難である。
【0009】
また、鍋に振動や回転動作を加える際に、米と水をほぐすための最適な振動や回転動作を与えないと米と水の水分分布むらが生じ、炊きむらの原因となる。特に、回転動作の場合には、炊飯工程における米の状態に応じて、最適な回転を与える必要があり、また鍋内の残水の有無を考慮して動作させることが重要である。
【0010】
詳述すると、回転動作の場合には、遠心方向に米が偏るため炊飯開始から炊飯終了まで米が攪拌されるほどの回転動作をさせた場合には、炊き上がりの中央上部付近のご飯が水っぽい食味となる。
【0011】
よって、中央上部付近のご飯とその他の部位とのご飯では炊き上がりの食感や味にばらつきが生じ、むらのあるご飯となる。ユーザーが炊き上がったご飯をほぐした場合は、食
感や味の悪い部位が全体に行きわたることで総合的に美味しくないご飯という食味評価結果となる。
【0012】
以上の現象は、各工程の時間が短くなる短時間炊飯において特に顕著となる。言い換えれば、以上の課題を解決することによって短時間炊飯しても炊きむらのない美味しいご飯を炊くことができるものである。
【0013】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、温度むらや水分分布むら等の炊きむらのない美味しいご飯を炊飯する炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記従来の課題を解決するために、本発明の炊飯器は、炊飯制御部が、鍋を可変回転させる回転手段で鍋を鍋の中心軸周りに正反転させて微振動させ、鍋内に入れられた米が遠心方向に偏らない程度に振動を与えるものである。
【0015】
これによって、鍋内で米が偏ったり、振動が部分的に集中すること無く、米と水が攪拌されて加熱効率を向上させることができ、振動や騒音の低減を図ることも容易で、鍋内に加熱媒体である水が存在する間は、強制対流による均温化で米への熱伝達率が向上すると共に米と水の接触機会を増やすことで米粒の吸水と糊化を促進させ、水が蒸発した後は、米粒に正反転動作による圧力が付与されて米粒の吸水と糊化を促進させることができる。
【0016】
また、回転方向への微振動であるため、鍋内で米と水が偏在することなく、加熱効率を向上させることができる。
【0017】
したがって、鍋内のご飯全体において芯や水っぽさがなく炊きむらのないご飯とすることができ、味むらがなく甘みのあるご飯を提供することができる。また、短時間炊飯において各工程の時間が短くなることで、加熱量の増加に起因して各工程の設定温度に達するまでの鍋内温度のさらなる不均一化と、各工程の設定温度に達してから保持する時間が短いことに起因して温度差の緩和が十分でないことによる炊きむらの増大に対しても、炊きむらと味むらのない美味しいご飯を炊くことができるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の炊飯器は、鍋内のご飯全体において芯や水っぽさがなく炊きむらのないご飯とすることができ、味むらがなく甘みのあるご飯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における炊飯器の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における鍋の断面図
【図3】炊飯工程シーケンスにおける(a)は鍋検知温度遷移図(b)は米飯温度の遷移図
【図4】米粒群の周りを水が通る様子を示す模式説明図
【図5】米粒間を水が通る様子を示す模式説明図
【図6】本発明の実施の形態1における炊飯器の鍋内の米と水の状態を示す(a)は模式説明上面図(b)は模式説明断面図
【図7】本発明の実施の形態1における炊飯器の別態様の鍋内の米と水の状態を示す(a)は模式説明上面図(b)は模式説明断面図
【図8】本発明の実施の形態1における炊飯器の炊飯終了後の鍋内の米と水の状態を示す(a)は模式説明上面図(b)は模式説明断面図
【図9】本発明の実施の形態1における沸騰維持工程での糊化度と従来の早炊きコースによる炊飯工程での糊化度の経時変化を比較したグラフ
【図10】(a)は本発明の第1の実施の形態における追い炊き工程での吸水率と従来の早炊きコースによる炊飯工程での吸水率の経時変化を比較したグラフ(b)は本発明の第1の実施の形態における追い炊き工程での糊化度と従来の早炊きコースによる炊飯工程での糊化度の経時変化を比較したグラフ
【図11】従来の炊飯器の断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の発明は、米と水が入れられる鍋と、前記鍋内に入れられた被調理物を加熱する加熱装置と、前記鍋内の前記被調理物の温度を検知する温度検知部と、前記温度検知部の検知温度に基づいて前記加熱装置の加熱動作を制御し、少なくとも米に水を吸水させる前炊き工程と、米の糊化を促進する加熱工程を含む炊飯工程を行う炊飯制御部とを備え、前記炊飯制御部は、前記鍋を可変回転させる回転手段で前記鍋を前記鍋の中心軸周りに正反転させて微振動させ、前記鍋内に入れられた前記米が遠心方向に偏らない程度に振動を与えることにより、鍋内で米が偏ったり、振動が部分的に集中すること無く、米と水が攪拌されて加熱効率を向上させることができ、振動や騒音の低減を図ることも容易で、鍋内に加熱媒体である水が存在する間は、強制対流による均温化で米への熱伝達率が向上すると共に米と水の接触機会を増やすことで米粒の吸水と糊化を促進させ、水が蒸発した後は、米粒に正反転動作による圧力が付与されて米粒の吸水と糊化を促進させることができる。
【0021】
また、回転方向への微振動であるため、鍋内で米と水が偏在することなく、加熱効率を向上させることができる。
【0022】
したがって、鍋内のご飯全体において芯や水っぽさがなく炊きむらのないご飯とすることができ、味むらがなく甘みのあるご飯を提供することができる。また、短時間炊飯において各工程の時間が短くなることで、加熱量の増加に起因して各工程の設定温度に達するまでの鍋内温度のさらなる不均一化と、各工程の設定温度に達してから保持する時間が短いことに起因して温度差の緩和が十分でないことによる炊きむらの増大に対しても、炊きむらと味むらのない美味しいご飯を炊くことができるものである。
【0023】
第2の発明は、特に、第1の発明の炊飯制御部は、前記鍋を第1の所定時間に第1の回転数で回転する第1の回転を行い、その後、前記鍋を第2の所定時間に第2の回転数で前記第1の回転と反転する第2の回転を行うことにより、炊飯工程が進むにつれて米の状態が変化することに対応して、最適な攪拌によって効率よく米と水をほぐすことができ、米の吸水と糊化を促進し、十分に火通りのよいご飯を提供することができる。
【0024】
第3の発明は、特に、第2の発明の第1の所定時間及び第2の所定時間は、0.01秒〜0.5秒の範囲とし、前記第1の回転数及び前記第2の回転数は、10rpm〜60rpmの範囲としたことにより、炊飯工程が進むにつれて米の状態が変化することに対応して、最適な攪拌によって効率よく米と水をほぐすことができ、米の吸水と糊化を促進し、十分に火通りのよいご飯を提供することができる。
【0025】
第4の発明は、特に、第2または第3の発明の炊飯制御部は、前記第1の回転(正転)と前記第2の回転(反転)の切り替え時に所定時間、前記鍋を停止させることにより、米と水を効率よく攪拌し、米の吸水と糊化を更に促進させることができる。
【0026】
具体的には、右回転(正転)を開始し、遠心力によって鍋中心部から鍋側面に向かった米が、回転が停止することで遠心力が低下し、鍋側面から鍋中心部に戻される時に左回転(反転)に転じると、回転方向の加速度が変化することで米が回転方向へ移動する。よって、一粒の米に着目した場合、米の遠心方向への移動と回転方向への移動が組み合わさることで3次元的な軌跡をたどることになり、より攪拌が促進されるものである。
【0027】
第5の発明は、特に、第2〜4のいずれか1つの発明の炊飯制御部は、前記鍋内の被調理物の量に応じて、前記第1の回転(正転)と前記第2の回転(反転)の少なくともいずれかを変更させることにより、鍋表面と米との摩擦力及び米全体の慣性力が炊飯量によって変化することに対応し、最適な攪拌によって効率よく米と水を攪拌することができる。
【0028】
具体的には、例えば、炊飯量1合の場合には、炊飯量5合の場合と比べて鍋表面と米との摩擦力及び米全体の慣性力が共に小さいため、第1及び第2の所定時間を短く設定し、第1及び第2の回転数を小さく設定することで効率よく米と水を攪拌することができる。
【0029】
第6の発明は、特に、第5の発明の炊飯制御部は、前記鍋内の前記水の有無に応じて、前記第1の回転(正転)と前記第2の回転(反転)の少なくともいずれかを変更させることにより、沸騰前及び水の蒸発後とで、それぞれ最適な微振動を与えることで、米の吸水と糊化を更に促進し、ご飯の食味を向上させることができる。
【0030】
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明の鍋は、内底面と内周面を繋ぐ緩やかな曲面形状を有し、前記内周面は前記鍋開口部に向かって径が拡大する形状としたことにより、回転させた場合に鍋内の米がより均一に攪拌されるようにすることができ、遠心力によって鍋中心部から鍋側面部に向かう米の動きの中で、緩やかな曲面形状に沿って米が移動しながら上昇することで効率よく攪拌される。
【0031】
第8の発明は、特に、第1〜7のいずれか1つの発明の加熱工程は、前炊き工程終了から水と米を沸騰温度まで加熱する炊き上げ工程と、沸騰から沸騰温度より高い温度に加熱する沸騰維持工程と、米の糊化をさらに促進し余分な水分を蒸発させる追い炊き工程からなり、前記炊飯制御部は、前記前炊き工程と前記炊き上げ工程と前記沸騰維持工程において微振動による攪拌を行い、前記追い炊き工程において前記鍋の回転数を他工程より大きくすることにより、それぞれの炊飯工程において水と米の攪拌効果を効果的に作用させることができ、炊飯工程別に鍋の回転数や動作と非動作の程度を設定することでユーザーの望みどおりに炊飯を行うことで、炊飯時間の短縮、ユーザー好みの美味しさを実現することができる。
【0032】
前炊き工程において微振動させる場合には、米同士が癒着することを防止し、水を常時米と接触させることで米と水の接触効率を向上させ吸水性能を向上することができる。よって、前炊き工程において、短時間で十分に米に吸水させることができるため、従来のように吸水不足に起因して米の中心部まで糊化が進展していない炊き上がりのご飯になることが無い。
【0033】
炊き上げ工程において微振動させる場合には、炊きむらが生じ易い工程の一つである炊き上げ工程での炊きむらを無くし食味低下を防ぐことができる。すなわち、鍋加熱のための入力電力が大きい炊き上げ工程において鍋に接した米が急激な温度上昇によって、米の内部まで十分に吸水していない状態で一気に米の表面のみ糊化が進んでしまうことにより、芯が残ったご飯が炊き上がり、これが炊きむらの原因の一つとなっていた。そこで、米と水を攪拌することによって鍋に接した米を掻き混ぜて常時同じ米が鍋に接している状態を回避することで炊きむらを無くすとともに、米と水の接触効率を向上させることで吸水を促進することができる。
【0034】
また、沸騰維持工程において鍋を微振動させることによって、沸騰による熱伝達に加えて、微小対流による熱伝達を与えることができるため、吸水と糊化を促進し、十分に火通りのよいご飯にすることができる。
【0035】
また、追い炊き工程において鍋を微振動させることによって、吸水と糊化の度合いは微振動なしの場合と比較して大きくなり、米粒への吸水と加熱継続による糊化を促進し、これによって主に粘りが向上し、ご飯の物性が良化する。
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0037】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の断面図、図2は、本発明の第1の実施の形態における鍋の断面図を示すものである。
【0038】
図1及び図2において、炊飯器の本体1は、着脱自在の鍋2を内装する。鍋2は内底面と内周面を繋ぐ緩やかな曲面形状Rを有し、かつ内周面は鍋開口部に向かって径が拡大する形状である。図2に示すように、鍋開口部近傍の内径Aは鍋底近傍の内径Bより大きくなっている。
【0039】
本体1には、その上面を覆う蓋3が開閉自在に配設されている。本実施の形態の炊飯器は後述する方法で鍋2を誘導加熱し、鍋2内の米と水を加熱調理する。本体1は、鍋2の底部を誘導加熱する鍋加熱手段4(誘導加熱コイルである)、鍋2の温度を検知する鍋温度検知手段5、および炊飯制御部6を有する。蓋3は更に、鍋2の開口部を覆う加熱板7、加熱板7を誘導加熱する加熱板加熱手段8(誘導加熱コイルである)、加熱板7の温度を検知する加熱板温度検知手段9を有する。
【0040】
加熱板7は、加熱板シールパッキン10が付いた着脱式の加熱板であり、蓋3の下面に取り付けられる。加熱板7は、中心部に蒸気孔11を有する。加熱板温度検知手段9は、加熱板7に圧接される。加熱板シールパッキン10は、摩擦抵抗の小さいフッ素樹脂製とする。
【0041】
また、本体1は鍋2を収納する保護枠12を有し、鍋2を回転させるためのモータ13が保護枠12に取り付けられている。鍋2は、モータ13の回転動力をゴムローラ14を介して伝達され回転する。鍋2の中心軸に対しゴムローラ14と対向する部位には受けローラ15が保護枠12に取り付けられ、鍋2の回転による軸方向への振れを防止している。
【0042】
また、鍋2の動作を滑らかにするために、保護枠12に支持ローラ16が取り付けられ鍋2の底部に当接し、鍋2の回転に伴う振動や騒音の発生を防止している。鍋2の回転数は、モータ13への入力を可変させることによってゴムローラ14の回転数を変えることで任意の回転数を得ることができる。本実施の形態における回転手段17は、モータ13、ゴムローラ14、受けローラ15、支持ローラ16から構成されている。
【0043】
尚、本実施の形態では、鍋2を回転させるためのモータ13の回転動力の伝達にゴムローラ14を用いたが、鍋2に円筒ギアを配し、モータ13の回転動力をギアを介して鍋2に伝達するようにしても同様の効果が得られる。
【0044】
炊飯制御部6は、回路基板(図示しない)に搭載されたマイクロコンピュータを有する。炊飯制御部6(マイクロコンピュータ)はソフトウェアにより、ユーザーが操作パネル(図示しない)を介して入力する操作指令、鍋温度検知手段5、加熱板温度検知手段9から入力される信号に基づき、あらかじめマイクロコンピュータに記憶された炊飯プログラムにより、鍋2、加熱板7の加熱制御およびモータ13の動作制御を行う。
【0045】
炊飯制御部6は、鍋加熱手段4、加熱板加熱手段8の加熱量およびモータ13の動作を、各加熱手段およびモータの通電率及び/又は通電量によって制御する。本実施の形態では、鍋2、加熱板7を加熱することによって、被調理物たる米と水を加熱調理しており、鍋加熱手段4や加熱板加熱手段8を鍋内に入れられた被調理物を加熱する加熱装置として利用している。
【0046】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0047】
ユーザーが、炊飯を行う米とその米量に対応する水とを鍋2に入れ、本体1に内装する。更にユーザーが目的とする炊飯メニューを選び、炊飯開始スイッチ(図示しない)を操作すると、炊飯工程が実施される。
【0048】
炊飯工程は、時間順に前炊き、炊き上げ、沸騰維持、追い炊きに大分される。
【0049】
図3は、炊飯工程シーケンスにおける(a)は鍋検知温度遷移図、(b)は米飯温度の遷移図を示すものである。
【0050】
図3に示すように、鍋検知温度と米飯温度には相関関係があり、鍋温度の検知によって米飯温度を検知することができる。従って、本実施の形態では、鍋温度検知手段5が鍋内の被調理物の温度を検知する温度検知部として作用するものである。
【0051】
前炊き工程Aにおいて、米の温度を糊化温度よりも低温の60℃前後に維持することで吸水を促進させて、以降の工程で米の中心部まで十分に糊化させたり、米の温度を63℃〜70℃範囲内にすることで白米の酵素の活性化を図り、甘みの増したご飯を得るといった炊飯制御を行う。本実施の形態では、米の吸水に適した第一の所定温度T1(60℃)になるように、鍋温度検知手段5、加熱板温度検知手段9で検知した温度値信号に基づき、炊飯制御部6は鍋加熱手段4を制御し、鍋内の米と水とを加熱する。
【0052】
次に、炊き上げ工程Bにおいて、鍋2の温度が第二の所定温度T2(水の沸点。通常100℃近傍)になるまで鍋加熱手段4によって鍋2を所定の熱量で加熱し、鍋2内の水を沸騰させる。この時の温度上昇速度(加熱板温度検知手段9から入力される信号)によって、炊飯量の判定も行う。
【0053】
沸騰維持工程Cにおいて、図3(a)に示すように、鍋2に水が有る間は、鍋温度検知手段5の検知温度Taが第二の所定温度T2(水の沸点。通常100℃近傍)で沸騰状態を維持するように、炊飯制御部6が鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段8を制御し、鍋加熱手段4が鍋2を加熱して米と水を加熱する。
【0054】
そして、沸騰維持工程Cが経過し、鍋2内の水が蒸発して鍋2内に水がなくなると、鍋2の温度が上昇する。鍋温度検知手段5の検知温度Taが、第三の所定温度T3(水の沸点以上)に到達すると、鍋2内に水がなくなったと判断し工程の終了とする。この工程は、米澱粉を糊化させる工程であり、炊飯後の飯の糊化度は100%近くに達するが、この工程終了時には糊化度は50〜60%程度となる。
【0055】
最後に追い炊き工程Dにおいて、図3(a)に示すように、第二の所定時間t2(通常15分前後)経過するまで、鍋温度検知手段5の検知温度Taが第二の所定温度T2(通常100℃近傍)で維持するように、炊飯制御部6が、炊飯量に応じて鍋加熱手段4及び加熱板加熱手段8を制御し、鍋加熱手段4による加熱(追い炊き)と加熱の停止(休止)を繰り返す。
【0056】
追い炊き工程は沸騰維持工程に引き続き、米澱粉の糊化をさらに促進し余分な水分を蒸発させる工程であり、追い炊き工程の開始時には糊化度は50〜60%程度であったものが、追い炊き工程終了時、すなわち、炊飯終了時には、糊化度は100%近くに達するのである。
【0057】
このような炊飯工程を実行すると、鍋温度検知手段5の検知温度Taが図3(a)に、鍋2内の温度Tb、すなわち、米の温度が図3(b)に示すように温度推移する。
【0058】
通常、前炊き工程の60℃〜70℃付近から強火で加熱する際に、米の糊化が急激に促進され米粒同士が癒着して米粒群となり、沸騰時に米粒同士が癒着して米粒群のままで加熱されるために、鍋面付近の米は過加熱によって硬めのご飯となり、鍋中心付近の米は水っぽいご飯となりこれが炊きむらの原因となっていた。
【0059】
また、加熱工程では水を沸騰し続けることで米と水を撹拌し米の吸水と糊化促進を行うが、沸騰中に米粒同士が癒着したままでは、米粒群の内部の米は水と接触する機会が減ることで吸水と糊化が阻害される。水が蒸発した後、鍋面付近の米は更に過加熱によって硬めのご飯となり、鍋中心付近の米は加熱不足気味のご飯となっていた。
【0060】
図4は、米粒群の周りを水が通る様子を示す模式説明図を示すものである。
【0061】
図4に示すように、複数の米粒R1が互いに付着して米粒群RG1が形成されているとき、水W1は、図4の点線矢印で示すように、米粒群RG1の外側を移動する。このため、1つの米粒R1当たりの水W1の接触面積が小さくなり、米R1の吸水が悪くなる。
【0062】
本実施の形態では、前炊き、炊き上げ、沸騰維持、追い炊きの各工程別に、ユーザーが目的とする米の炊き上がり状態になるようにモータ13を制御し、鍋2を鍋の中心軸周りに正反転させて微振動させ、鍋2内に入れられた米が遠心方向に偏らない程度に振動を与え、鍋2内の米と水に最適な動きを与える。
【0063】
図5は、米粒間を水が通る様子を示す模式説明図である。図5に示すように、鍋2内の米と水に最適な動きが与えられることで、米に分散力が付与されて米粒集合体の形成が阻害され、米粒R1,R1同士が互いに付着せずにバラバラの状態となる。従って、鍋2内の水W1は、図5の点線矢印で示すように、互いに隣接する米粒R1,R1間を移動し、1つの米粒R1当たりの水W1の接触面積が大きくなる。
【0064】
図6は、本発明の第1の実施の形態の炊飯器の鍋内の米と水の状態を示す(a)は模式説明上面図、(b)は模式説明断面図を示すものである。
【0065】
前炊き工程において、鍋2が第1の回転数(60rpm)で右回りに第1の所定時間(0.5秒)第1の回転(正転)を行い、その後、第2の回転数(30rpm)で左回りに第2の所定時間(0.5秒)第2の回転(反転)する動作を繰り返し行うことにより、図6に示すように米の鍋内の相対位置を常に変化させて、米の吸水を促進させることができる。
【0066】
また、米の鍋内の相対位置を常に変化させることで、前炊き工程で米同士の癒着を無くすことができ、より吸水を促進し、加熱工程において米粒同士が癒着していないため沸騰による米と水の撹拌によって米の吸水と糊化をさらに促進させることができる。
【0067】
すなわち、60rpmで右回りに0.5秒回転(正転)させることで、遠心力によって鍋中心部から鍋側面に向かった米が、左回り回転(反転)に転じる際に遠心力が低下し、
鍋側面から鍋中心部に戻される。左回り回転(反転)の回転数が、右回り回転(正転)の回転数(60rpm)より小さい30rpmであるため、一粒の米に着目した場合、その米は反転に転じる際に元の位置に戻ることが無く、この正反転を繰り返すことで、米の鍋内の相対位置を常に変化させることができ、米の吸水を促進させることができる。
【0068】
前炊き工程では、米はまだ十分に吸水しておらず、米の糊化も進んでいないため、おねばの溶出による米表面の粘りは少ない状態である。この米の状態では、鍋表面と米の間の摩擦力は大きくないため、第1の所定時間と第2の所定時間を異なる時間に設定するか、第1の回転数と第2の回転数を異なる回転数に設定することで、微振動で米の相対位置を常に変化させるようにすることができ、これによって、米と水の接触機会が増えて吸水を促進することができる。
【0069】
前炊き工程の後半では、米の吸水がある程度進み、米表面の糊化も進み始めているため、おねばの溶出による米表面の粘りが発生している状態である。この状態では、鍋表面と米の間の摩擦力は大きくなってきているため、第1の所定時間と第2の所定時間を短くすることで、第1の回転(正転)が第2の回転(反転)に転じる際に、軸方向への米の攪拌を促進し、効率よく米と水をほぐすことができ、米と水の接触機会が増えて吸水と糊化を促進することができる。
【0070】
また、第1の所定時間および第2の所定時間を、0.01秒〜0.5秒の範囲とし、第1の回転数及び第2の回転数を、10rpm〜60rpmの範囲とすることにより、炊飯工程が進むにつれて米の状態が変化することに対し、最も効率のよい状態で、米と水を撹拌することができる。
【0071】
第1の所定時間および第2の所定時間を0.01秒〜0.5秒の範囲とした場合、第1の回転数及び第2の回転数が10rpmより小さいと米と水の撹拌効果が小さく、60rpmよりも大きいと米の表面からおねばが加速度的に溶出し、加熱媒体である水の粘度が上がりすぎて、米への吸水と糊化を阻害してしまう。
【0072】
一方、第1の回転数及び第2の回転数を10rpm〜60rpmの範囲とした場合、第1の所定時間および第2の所定時間が0.01秒より小さいと米と水の撹拌効果が小さく、0.5秒よりも大きいと米の表面からおねばが加速度的に溶出し、加熱媒体である水の粘度が上がりすぎて、米への吸水と糊化を阻害してしまう。
【0073】
よって、第1の所定時間および第2の所定時間を0.01秒〜0.5秒の範囲とし、かつ第1の回転数及び第2の回転数を10rpm〜60rpmの範囲とすることで、効率的な攪拌ができて米への吸水と糊化を促進し、十分に火通りのよいご飯にすることができる。
【0074】
また、図7は、本発明の第1の実施の形態の炊飯器の別態様の鍋内の米と水の状態を示す(a)は模式説明上面図、(b)は模式説明断面図を示すものである。
【0075】
鍋2の正転と反転の切り替え時に、一定時間鍋2を停止することにより、図7に示すように3次元的に米が攪拌されることで前炊き工程で米同士の癒着を無くすことができ、より吸水を促進し、加熱工程において米粒同士が癒着していないため沸騰による米と水の撹拌によって米の吸水と糊化をさらに促進させることができる。
【0076】
本実施の形態では、例えば、鍋2が第1の回転数(60rpm)で、0.5秒右回りに回転(正転)し遠心力によって鍋中心部から鍋側面に向かった米は、0.1秒間、回転が停止することで遠心力と慣性力が低下し、動きが止まろうとする時に、第2の回転数(3
0rpm)で、0.5秒左回りに回転(反転)に転じると回転方向の加速度が変化することで米が回転方向へ移動する。
【0077】
よって、一粒の米に着目した場合、米の遠心方向への移動と回転方向への移動が0.1秒間の回転の停止によって、効果的に組み合わさることで3次元的な軌跡をたどり、移動方向が周期的に変化するとともに回転周期毎の移動距離が長くなることになり、より攪拌が促進されるものである。
【0078】
また、鍋2内の被調理物の量に応じて、第1の回転(正転)と第2の回転(反転)の少なくともいずれかを変更させることにより、鍋表面と米との摩擦力および米全体の慣性力が炊飯量によって変わっても、最適な攪拌で効率よく米同士をほぐすことができ、米の吸水と糊化をさらに促進させることができ、十分に火通りのよいご飯にすることができる。
【0079】
本実施の形態では、例えば、被調理物の炊飯量が1合の場合、鍋表面と米との摩擦力および米全体の慣性力が共に比較的小さいため、第1の所定時間および第2の所定時間を0.1秒間程度と比較的短く設定し、かつ第1の回転数及び第2の回転数を10rpm程度と比較的小さく設定することで、最適な攪拌で効率よく米同士をほぐすことができ、米の吸水と糊化をさらに促進させることができ、十分に火通りのよいご飯にすることができる。
【0080】
一方、被調理物の炊飯量が5合の場合には、鍋表面と米との摩擦力および米全体の慣性力が共に比較的大きいため、第1の所定時間および第2の所定時間を0.5秒間程度と比較的長く設定し、かつ第1の回転数及び第2の回転数を50rpm程度と比較的大きく設定することで、最適な攪拌で効率よく米同士をほぐすことができ、米の吸水と糊化をさらに促進させることができ、十分に火通りのよいご飯にすることができる。
【0081】
前炊き工程に続く炊き上げ工程において、鍋2を微振動させることにより、炊きむらが生じ易い工程の一つである炊き上げ工程での炊きむらを無くし食味低下を防ぐことができる。
【0082】
すなわち、鍋加熱のための入力電力が大きい炊き上げ工程では米が急激な温度上昇によって、米の内部まで十分に吸水していない状態で一気に米の表面のみ糊化が進んでしまい、米同士が癒着して米内部への吸水を阻害することにより、芯が残ったご飯が炊き上がり、これが炊きむらの原因の一つとなっていた。
【0083】
そこで、鍋2の微振動による米と水の攪拌によって、米を3次元的に掻き混ぜて、常時同じ米同士が接触している状態を回避することで炊きむらを無くすとともに、米と水の接触効率を向上させることで吸水を促進することができる。
【0084】
また、沸騰維持工程において、鍋2を米と水が遠心方向へ偏らない程度の微振動をさせることにより、より吸水促進と糊化促進することができる。
【0085】
すなわち、鍋2が第1の回転数(50rpm)で右回りに第1の所定時間(0.05秒)第1の回転(正転)を行い、その後、第2の回転数(50rpm)で左回りに第2の所定時間(0.05秒)第2の回転(反転)する動作を繰り返し行うことにより、沸騰による熱伝達に加えて、微小対流による熱伝達を与えることができる。
【0086】
沸騰対流による熱伝達率をhとし、微振動による微小対流の熱伝達率をhcとすると、熱伝達率はh+hcとなり、微振動なしの場合の熱伝達率hよりhcだけ大きくなり、米の吸水と糊化を促進させることができる。
【0087】
また、米粒同士が癒着しておらず、沸騰による米と水の撹拌による米の吸水と糊化をより促進させることができ、主に米粒の甘みと弾力が向上し、ご飯の味と物性がより改善される。
【0088】
更に沸騰維持工程では、米の吸水と糊化が進んでご飯が柔らかくなってきており、振動を大きくし過ぎると、米の表面からおねばが加速度的に溶出し、加熱媒体である水の粘度が急激に上がることで米の吸水と糊化を阻害してしまうことになるが、適度な微振動を与えることで、おねばの過度の溶出を抑え、水の粘度が急激に上がることを抑えることで、米の吸水と糊化をより促進させることができる。
【0089】
加えて沸騰維持工程では、沸騰による水の蒸発と米の吸水によって、鍋内の水分が減少してくるが、この時の鍋の動きは微振動であるため、米が遠心方向に偏って中央部に水分が多くなる偏在がなく、鍋内の水分分布が均一であるため、非常にむらの少ない炊きあがりとなる。また、炊き上がりのご飯表面はフラットで品位が良いものである。図8に炊飯器の炊飯終了後の鍋内の米と水の状態を示す模式説明図を示す。
【0090】
したがって、鍋内のご飯全体において芯や水っぽさがなく炊きむらのないご飯とすることができ、味むらがなく甘みのあるご飯を提供することができる。
【0091】
更に、短時間炊飯において各工程の時間が短くなることで、加熱量の増加に起因して各工程の設定温度に達するまでの鍋内温度のさらなる不均一化と、各工程の設定温度に達してから保持する時間が短いことに起因して温度差の緩和が十分でないことによる炊きむらの増大に対しても、本実施の形態では、炊きむらと味むらのない美味しいご飯を炊くことができる。
【0092】
図9は、本発明の第1の実施の形態における沸騰維持工程での糊化度と従来の早炊きコースによる炊飯工程での糊化度の経時変化を比較したグラフである。
【0093】
図9に示すように、本実施の形態では約10分で糊化度95%まで上昇しているが、従来の早炊きでは10分でも80%に達していないため糊化不足による食味低下が懸念される。
【0094】
これは、早炊き(短時間炊飯)では、短時間に加熱を行うために、米の内部まで十分に吸水していない状態で一気に米の表面のみ糊化が進んでしまい、更に表面の糊化により米同士が癒着して鍋の中で大きな米の塊になることで、沸騰維持工程初期において米への吸水が阻害され、糊化不足となっている現象を示している。
【0095】
本実施の形態では、前炊き工程及び炊き上げ工程において鍋の微振動による米と水の攪拌によって、米を3次元的に掻き混ぜて、常時同じ米が接触している状態を回避することで、炊きむらを無くすとともに、米と水の接触効率を向上させることで、短時間に米内部まで吸水を促進することができ、更に沸騰維持工程において鍋の微振動によって、沸騰による水の蒸発及び米の吸水に伴う鍋内の水分減少に関わらず、米と水分の偏在がなく、鍋内の水分分布が均一であるため、非常にむらの少ない炊きあがりとなり、且つ、炊き上がりのご飯表面はフラットで品位が良いものとなる。
【0096】
図10(a)は、本発明の第1の実施の形態における追い炊き工程での吸水率と従来の早炊きコースによる炊飯工程での吸水率の経時変化を比較したグラフ、(b)は本発明の第1の実施の形態における追い炊き工程での糊化度と従来の早炊きコースによる炊飯工程での糊化度の経時変化を比較したグラフである。
【0097】
図10に示すように、本実施の形態では、追い炊き工程において鍋を微振動させることで、約10分で吸水率65%、糊化度100%近くまで上昇しており、米の吸水と糊化の度合いは、従来の早炊きの場合(微振動なしの場合)と比較して、大きくなっていることが分かる。
【0098】
鍋の中心軸を通る半断面にかかる圧力をFとすると、圧力Fは鍋の回転に伴う慣性力を半断面で除した値となる。米粒に圧力Fを付与することによって、一般現象としての餅つきの際に生じる効果が現れるものである。
【0099】
即ち、米粒への吸水の促進と加熱継続による糊化の促進であり、これによって主に粘りが向上し、ご飯の物性が改善するものである。尚、追い炊き工程では、残水がないため、回転時間、回転数共に大きくすることで効果を最大限発揮させることができる。
【0100】
以上のように、前炊き工程で微振動を与えることで、米を常時、水と接触させることで米と水の接触効率を向上させ、吸水性能を向上させることができる。従って、前炊き工程で短時間に十分に米に吸水することができるので、従来のように吸水不足に起因して米の中心部まで糊化が進展せずに炊き上がって芯のあるご飯になることがない。
【0101】
次に、炊き上げ工程で微振動を与えることで、炊きむらが生じやすい工程の一つである炊き上げ工程での炊きむらを減じ、食味低下を防ぐことができる。
【0102】
即ち、鍋加熱のための入力電力が大きい炊き上げ工程において、従来は、鍋の温度上昇に伴い、鍋面に接した米が急激に温度上昇して米内部まで十分に吸水していない状態で、一気に米の表面のみ糊化が進んでしまうことにより、芯が残ったご飯が炊き上がり、これが炊きむらの原因の一つになっていたが、本実施の形態では、炊き上げ工程で微振動を与えることで、鍋面に接した米が攪拌され、常時同じ米が鍋に接することを回避させ、炊きむらを減じると共に、米と水の接触効率を向上させることで、吸水を促進することができる。
【0103】
次に、沸騰維持工程で微振動を与えることで、沸騰による熱伝達に加えて微小対流による熱伝達を付加することができるので、米の吸水と糊化を促進し、十分に火通りのよいご飯を炊き上げることができる。
【0104】
最後に、追い炊き工程で微振動を与えることで、米粒に圧力が付与され、米粒への吸水の促進と加熱継続による糊化の促進ができ、これによって主に粘りが向上し、ご飯の物性が改善する。
【0105】
以上のように、米と水が接触する機会を増やすことで、米の吸水と糊化を促進し、また、水が蒸発した後においても米粒に圧力を付与することで、米の吸水と糊化を促進し、鍋中心付近の米も十分に火通りのよいご飯にすることができるので、従来より炊きむらのない良食味のご飯を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、鍋内のご飯全体において芯や水っぽさがなく炊きむらのないご飯とすることが可能となるので、他の加熱調理機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0107】
1 本体
2 鍋
3 蓋
4 鍋加熱手段
5 鍋温度検知手段
6 炊飯制御部
7 加熱板
8 加熱板加熱手段
9 加熱板温度検知手段
10 加熱板シールパッキン
11 蒸気孔
12 保護枠
13 モータ
14 ゴムローラ
15 受けローラ
16 支持ローラ
17 回転手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米と水が入れられる鍋と、前記鍋内に入れられた被調理物を加熱する加熱装置と、前記鍋内の前記被調理物の温度を検知する温度検知部と、前記温度検知部の検知温度に基づいて前記加熱装置の加熱動作を制御し、少なくとも米に水を吸水させる前炊き工程と、米の糊化を促進する加熱工程を含む炊飯工程を行う炊飯制御部とを備え、前記炊飯制御部は、前記鍋を可変回転させる回転手段で前記鍋を前記鍋の中心軸周りに正反転させて微振動させ、前記鍋内に入れられた前記米が遠心方向に偏らない程度に振動を与える炊飯器。
【請求項2】
前記炊飯制御部は、前記鍋を第1の所定時間に第1の回転数で回転する第1の回転を行い、その後、前記鍋を第2の所定時間に第2の回転数で前記第1の回転と反転する第2の回転を行う請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記第1の所定時間及び前記第2の所定時間は、0.01秒〜0.5秒の範囲とし、前記第1の回転数及び前記第2の回転数は、10rpm〜60rpmの範囲とした請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記炊飯制御部は、前記第1の回転(正転)と前記第2の回転(反転)の切り替え時に所定時間、前記鍋を停止させる請求項2または3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記炊飯制御部は、前記鍋内の被調理物の量に応じて、前記第1の回転(正転)と前記第2の回転(反転)の少なくともいずれかを変更させる請求項2〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記炊飯制御部は、前記鍋内の前記水の有無に応じて、伴前記第1の回転(正転)と前記第2の回転(反転)の少なくともいずれかを変更させる請求項5に記載の炊飯器。
【請求項7】
鍋は、内底面と内周面を繋ぐ緩やかな曲面形状を有し、前記内周面は前記鍋開口部に向かって径が拡大する形状とした請求項1〜6のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項8】
加熱工程は、前炊き工程終了から水と米を沸騰温度まで加熱する炊き上げ工程と、沸騰から沸騰温度より高い温度に加熱する沸騰維持工程と、米の糊化をさらに促進し余分な水分を蒸発させる追い炊き工程からなり、前記炊飯制御部は、前記前炊き工程と前記炊き上げ工程と前記沸騰維持工程において微振動による攪拌を行い、前記追い炊き工程において前記鍋の回転数を他工程より大きくする請求項1〜7のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項1】
米と水が入れられる鍋と、前記鍋内に入れられた被調理物を加熱する加熱装置と、前記鍋内の前記被調理物の温度を検知する温度検知部と、前記温度検知部の検知温度に基づいて前記加熱装置の加熱動作を制御し、少なくとも米に水を吸水させる前炊き工程と、米の糊化を促進する加熱工程を含む炊飯工程を行う炊飯制御部とを備え、前記炊飯制御部は、前記鍋を可変回転させる回転手段で前記鍋を前記鍋の中心軸周りに正反転させて微振動させ、前記鍋内に入れられた前記米が遠心方向に偏らない程度に振動を与える炊飯器。
【請求項2】
前記炊飯制御部は、前記鍋を第1の所定時間に第1の回転数で回転する第1の回転を行い、その後、前記鍋を第2の所定時間に第2の回転数で前記第1の回転と反転する第2の回転を行う請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記第1の所定時間及び前記第2の所定時間は、0.01秒〜0.5秒の範囲とし、前記第1の回転数及び前記第2の回転数は、10rpm〜60rpmの範囲とした請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
前記炊飯制御部は、前記第1の回転(正転)と前記第2の回転(反転)の切り替え時に所定時間、前記鍋を停止させる請求項2または3に記載の炊飯器。
【請求項5】
前記炊飯制御部は、前記鍋内の被調理物の量に応じて、前記第1の回転(正転)と前記第2の回転(反転)の少なくともいずれかを変更させる請求項2〜4のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項6】
前記炊飯制御部は、前記鍋内の前記水の有無に応じて、伴前記第1の回転(正転)と前記第2の回転(反転)の少なくともいずれかを変更させる請求項5に記載の炊飯器。
【請求項7】
鍋は、内底面と内周面を繋ぐ緩やかな曲面形状を有し、前記内周面は前記鍋開口部に向かって径が拡大する形状とした請求項1〜6のいずれか1項に記載の炊飯器。
【請求項8】
加熱工程は、前炊き工程終了から水と米を沸騰温度まで加熱する炊き上げ工程と、沸騰から沸騰温度より高い温度に加熱する沸騰維持工程と、米の糊化をさらに促進し余分な水分を蒸発させる追い炊き工程からなり、前記炊飯制御部は、前記前炊き工程と前記炊き上げ工程と前記沸騰維持工程において微振動による攪拌を行い、前記追い炊き工程において前記鍋の回転数を他工程より大きくする請求項1〜7のいずれか1項に記載の炊飯器。
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【公開番号】特開2012−19810(P2012−19810A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157477(P2010−157477)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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