説明

炊飯器

【課題】ご飯の食味を落とさず、炊飯器から発生される蒸気を低減し、回収した蒸気の水
滴は保温中の加湿に役立てる。
【解決手段】本体1と、本体1内に着脱自在に収納される内釜2と、内釜2を加熱する加熱手段4と、本体1の上部を覆う外蓋3とを備え、外蓋3には内釜2の上部開口を覆う内蓋6と、内蓋6に設けられ内釜2内部を所定の圧力に維持する調圧弁8と、調圧弁8を通して内釜2内で発生する蒸気を外部に排出する蒸気通路9と、調圧弁8から蒸気通路9を経て外部に排出される前に蒸気23を回収する蒸気回収ユニット10とを備え、蒸気回収ユニット10は、上ケース10aと下ケース10bから構成され、上ケース10aには上面から垂下する枠で囲まれた蒸気23が停滞する空間21を設け、空間21の上部側に熱吸収部20を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯中の蒸気の排出量を抑え、蒸気を冷却して水で回収し、保温中にその水
を利用して保湿する蒸気回収構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、炊飯器は、キッチンのレンジ台に組込み壁に囲まれた環境だけでなく、食卓や、キッチンに隣接するリビングなどでも使用されている。そのため、炊飯器からの蒸気の排出量を抑えて、周囲環境を加湿せずに使用でき、しかも省エネルギー性を向上させるものが望まれている。
【0003】
従来から蒸気の排出量を低減する目的の発明として、特許文献1〜3などが知られている。特許文献1及び2は、排出した蒸気を冷却ユニット(水容器)に導いて冷却し、水にするものである。特許文献3は、排出した蒸気を送風空気と混合して排気することで付近への結露を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−192134号公報
【特許文献2】特開2008−253650号公報
【特許文献3】特開2009−28513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に示す炊飯器では、蒸気の冷却ユニットが必要で、冷却ユニットを収納するため炊飯器が大きくなりコンパクト性が犠牲となる。また、水容器に冷却用に水を使用するため水を入れる手間が掛かり、冷却ユニットの清掃が必要で、冷却した水を廃棄する負荷が増えるため地球環境上は好ましくないなどの問題がある。
【0006】
また、特許文献3では、排出蒸気温度を低下させて排出するため、炊飯器付近の壁などで、結露はしにくくなるが、室内の湿度を上昇させ室内環境が湿っぽくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、請求項1では、本体と、該本体内に着脱自在に収納される内釜と、前記内釜を加熱する加熱手段と、前記本体の上部を覆う外蓋とを備え、該外蓋には前記内釜の上部開口を覆う内蓋と、該内蓋に設けられ前記内釜内部を所定の圧力に維持する調圧弁と、該調圧弁を通して前記内釜内で発生する蒸気を外部に排出する蒸気通路と、前記調圧弁から前記蒸気通路を経て外部に排出される前に前記蒸気を回収する蒸気回収ユニットとを備え、該蒸気回収ユニットは、上ケースと下ケースから構成され、前記上ケースには上面から垂下する枠で囲まれた蒸気が停滞する空間を設け、該空間の上部側に熱吸収部を設けたものである。
【0008】
請求項2では、前記熱吸収部には、雰囲気温度が40℃未満で固体であり、40〜90℃の範囲で固体から液体に変化する物質を収めたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の請求項1によれば、炊飯時に、内釜内部で発生する蒸気の流出を抑えることができ、さらにその蒸気を蒸気回収ユニットで蒸気を回収するので、排出される蒸気はほとんど無いため室内の湿度は変わりなく室内環境が良好に維持される。
【0010】
また、蒸気の排出量を抑えるのに、水を必要とする冷却ユニットを必要としないため、炊飯器のコンパクト性が確保される。また、熱と蒸気を閉じ込めて炊飯するので、不要な水が蒸気として放出されない分、水加減も少なくできるため、使用する水も減り、環境負荷も少なくなる。
【0011】
さらに、炊飯中に熱を吸収して固体から液体に変わった熱吸収部は熱吸収材を密閉した容器に収められ、冷めれば再び固体に変わって何度でも使用できる。使用後は内蓋などを水洗いするのと同じ要領で、蒸気回収ユニットを水洗いするだけでよく、熱吸収部の交換や補給も不要で簡単に取り扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施例の炊飯器の断面図。
【図2】一実施例の炊飯器の蒸気回収ユニットを開放して内部を示す説明図。
【図3】一実施例の炊飯器の蒸気回収ユニットを流入口の高さで水平方向に切断した断面の説明図。
【図4】一実施例の炊飯器の蒸気回収ユニット内部で、熱吸収体が(a)固体から(b)液体に変体し、蒸気が水へ状態変化することを示す構造説明図。
【図5】一実施例の炊飯器の蒸気回収ユニットから内蓋へ流れる水の流れを示す断面説明図。
【図6】一実施例の炊飯器の制御部との接続を示す構成図。
【図7】一実施例の炊飯器の炊飯時のお米の温度と各部の動作を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例について添付図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
まず、図1を用いて説明する。本体1には内釜2が着脱自在に挿入され、本体1にはその上部を覆う外蓋3が開閉自在に取り付けられている。本体1には加熱手段4と制御部5が設けられ、制御部5の制御によって加熱手段4が内釜2を加熱する。
【0015】
外蓋3には内釜2の上部開口を覆う内蓋6が取り付けられ、内蓋6に取り付けられたパッキン7が内釜2の上端全周に当接して内釜2と内蓋6で構成する空間を密閉状態に保っている。
【0016】
内蓋6の略中央部には調圧弁8が設けられており、調圧弁8は、内蓋6上面にすり鉢状に傾斜するビード状の出口体6kと、前記すり鉢状部に内蓋6を貫通する出口6jが設けられ、出口6jにはステンレス鋼製の球体8aが載置されている。
【0017】
図5において、内蓋6の上面には、出口体6kの球体8aの動きを規制する三方に開口したゲート状の保持部6fと、内部に安全弁を包む固定部6gと一体に成形した略小判形の水受け台6hを取り付けている。水受け台6hの外周は水を溜める立上げ部6nを備える。
【0018】
図1において、球体8aは、保持部6fの中で、出口体6kのすり鉢状の傾斜部で自在に転がって移動でき、すり鉢状の底部に球体8aが収まった状態では、出口6jが塞がるものである。
【0019】
球体8aは、加熱手段4により内釜2が加熱されて前記密閉空間内に発生する蒸気圧によって動作し、所定の圧力(本実施例では1.3気圧)に調整しながら内釜2の蒸気を出口6jから排出する。排出された蒸気は、外蓋3に設けられた蒸気通路9を経て外蓋3に着脱自在に取り付けた後述する蒸気回収ユニット10へ導かれる。
【0020】
外蓋3に固定された調圧弁制御部13は、制御部5に接続されている。この調圧弁制御部13は、球体8aの動きを規制して、出口6jを開放のまま保持する場合と、内釜2に発生する蒸気圧によって球体8aが自在に動けるようにするものである。また、調圧弁制御部13は、バネ13bで本体後側に付勢されるロッド13cの先端はゲート状の保持部6fの開口部に挿入されていて、コイル13aに通電することによりロッド13cを本体前側に移動させる。バネ13bで本体後側に付勢されるロッド13cの先端は球体8aを本体1後側方向に押しのけるため、出口6jは開放して保持される。一方、コイル13aに通電することによりロッド13cを本体前側に移動されて、球体8aが自在に動けるようになり、すり鉢状の底部に球体8aが収まった状態で出口6jが塞がるものである。
【0021】
調圧弁8から排出された蒸気は外蓋3に設けられた蒸気通路9を経て、蒸気回収ユニット10へ導かれる。蒸気通路9には調圧弁8近傍に蒸気温度センサー11が設けられている。
【0022】
図6に示すように、制御部5には蒸気温度センサー11と内釜2の底部の温度を検出する釜底温度センサー12(図1)が接続されて、制御部5は加熱手段4と調圧弁制御部13の動作を制御している。
【0023】
図2,図3において蒸気回収ユニット10を説明する。蒸気回収ユニット10は、上ケース10aと下ケース10bからなり、上ケース10aと下ケース10bをヒンジ部10qで組合わせてロックボタン10cにて結合する。ユニットパッキン10dが下ケース10bの外周部10rに当接して蒸気が漏れないように構成されている。
【0024】
下ケース10bには筒10eが設けられ、筒10e上部側面にヒンジ部10qに向かって蒸気通路9から流れてきた蒸気の入る流入口10fが設けられている。
【0025】
上ケース10aには筒10eを囲うように第一枠10gが設けられ、上ケース10aと下ケース10bを結合させた状態では第一枠10gの先端10sは、下ケース10bの底面10uと近接した状態になる。第一枠10gには、流入口10fと反対側のロックボタン10cの向きに第一切欠部10hがある。
【0026】
そして下ケース10bには第一枠10gを囲うようにU字枠10mが設けられ、上ケース10aと下ケース10bを結合させた状態ではU字枠10mの先端10yは、上ケース10aの天面10vに設けた後記する熱吸収部20と近接した状態になる。U字枠10mには、流入口10fと同じヒンジ部10qの向きに開口部10wがある。
【0027】
更に、上ケース10aにはU字枠10mを囲うように第二枠10jが設けられ上ケース10aと下ケース10bを結合させた状態では、第二枠10jの先端10xは、下ケース10bの底面10uと近接した状態になる。第二枠10jには、ロックボタン10cの向きに第二切欠部10kがある。
【0028】
上ケース10aの天面10vの第二枠10jの外側には外気と連通する穴10n(例えば3×15mmのスリット穴が2個)を設けている。
【0029】
下ケース10bの底面10uの筒10eのロックボタン10c側には水戻し穴10p(例えばφ3mmを1コ)を設け、蒸気回収ユニット10内に結露した水を蒸気通路9に戻す。
【0030】
前記した第二枠10jと第一枠10gに挟まれて成す略ドーナツ形の天面10vに熱吸収部20を設けている。第二枠10jと第一枠10gで挟まれU字枠10mを挟んで形成する空間21に充満する蒸気23(図4)に、熱吸収部20は直接触れて作用する。
【0031】
図4に示すように、熱吸収部20は、熱吸収材20aがケース20bで密閉されて設けられている。熱吸収材20aは一般に蓄熱材として用いられているものであり、固体が液体に相変化する際に潜熱として周囲の熱を奪い、反対に液体から固体に戻る際に熱を発して蓄熱材として機能するものを用いている。この相変化は水(氷)では0℃で生じるものであるが、例えばパラフィンや酢酸ナトリウム三水和物などでは、雰囲気温度が40℃未満で固体であり、40〜90℃の範囲で固体から液体に相変化するものが知られている。ケース20bはアルミなどを施して熱伝導を良くした耐熱樹脂,耐熱ビニルなどで成形した袋を用いている。
【0032】
炊飯前および開始直後の状態では、図4(a)に示すように、蒸気回収ユニット10内部で、熱吸収部20の熱吸収材20aは固体で存在し、炊飯開始により、前記したように調圧弁が動作する1.3気圧を越えた時点から蒸気23で序所に温度が上昇していく。炊飯中には図4(b)に示すように、蒸気回収ユニット10に蒸気23が流入して相変化温度まで上昇すると蒸気23の熱を奪いながら熱吸収部20の熱吸収材20aは液体へと変化し、蒸気23が水22へ状態変化する。
【0033】
次に図5において水22の流れについて説明する。水戻し穴10pから蒸気通路9に戻った水22は下方の内蓋6の上面に設けた水受け台6hに導かれる。内蓋6に固定された水受け台6hには、保持部6fと固定部6gの間に傾斜部6aが設けられている。
【0034】
傾斜部6aの最も低い箇所に内蓋水戻し穴6bを設けているので、蒸気通路9から流れた水22と、調圧弁8の球体8a(図1)と出口体6k(図1)と保持部6fから流れた水22は、傾斜部6aによって内蓋水戻し穴6bに導かれ、もれなく集められる。
【0035】
内蓋水戻し穴6bには、大気圧で水封を開放するゴム製の弁を備える。さらに、内蓋6の下部には内蓋水戻し穴6bに対向する位置に水受け皿6dを設ける。水受け皿6dは、水22を溜める平面部と、内釜2内部と連通する孔が並んでいる。水受け皿6dは、内蓋水戻し穴6bからの水22を、保温中に蒸発して孔6pから蒸気を出して内釜2内部空間を加湿する働きをするものである。
【0036】
以上の構成においてその動作を図7および図1を用いて説明する。使用者が内釜2に適量の米と水を入れ、操作部の炊飯開始ボタン(図示せず)を操作すると制御部5の働きによって炊飯が開始する。
【0037】
予め定められた炊飯工程に従い、最初に米への吸水を促進させる浸し工程が実施される。釜底温度センサー12が所定温度(本実施例では60℃)になるように加熱手段4が内釜2を加熱(本実施例では400W)して、内釜2内部の水温を55〜60℃に維持し、米への吸水を促進する。
【0038】
所定時間(本実施例では15分)が経過すると、制御部5は加熱工程に移行し、加熱手段4の加熱量を増大(本実施例では1000W)させる。それとともに、調圧弁制御部13のコイル13aに通電されバネ13bで本体後側に付勢されていたロッド13cが本体前側に移動する。
【0039】
調圧弁制御部13の動作により調圧弁8の球体8aが、蒸気の出口6jを開放されていた状態から塞ぐように出口6jの真上に転がってセットされる。球体8aが出口6jを塞ぎ内釜2と内蓋6jによる密閉空間内に発生する蒸気圧によって、圧力が高い場合に出口6jを開放するように移動して圧力を調整するように動作する。
【0040】
水温が上昇すると蒸気の発生によって内釜2内部の圧力が高まり、本実施例の調圧弁8の動作圧である1.3気圧まで高まると、1.3気圧に応じた107℃の沸点で沸騰を開始する。それとともに、調圧弁8の動作で放出された蒸気が蒸気通路9へと放出される。
【0041】
蒸気通路9には調圧弁8近傍に蒸気温度センサー11が設けられているので、蒸気によって加熱された蒸気温度センサー11の温度上昇により、制御部5は一定温度以上になることで蒸気の流入を検出する。
【0042】
次に、制御部5は加熱手段4の加熱量を低下(本実施例では500W)させるが、この加熱量は内釜2内部の圧力が調圧弁8の動作圧である1.3気圧で所定熱量を維持し、この気圧の沸点である107℃での沸騰を継続、または断続的にでも継続させる熱量に設定されている。
【0043】
沸騰により、調圧弁8の動作で出口6jが開放されて放出された蒸気が蒸気通路9内に流入する。このときに流入する蒸気の量について以下説明する。
【0044】
「米」が「ご飯」になるにはβ澱粉をα澱粉にする必要があり、これには98℃以上を20分保つ必要がある。調圧弁8の無い非圧力式炊飯器では1気圧での沸点100℃を維持するために、内釜の隅々まで98℃以上を維持するためには、大きな電力を投入し続けて、激しい沸騰を継続させないと対流の悪い部位が98℃まで上がらない。従って多量の蒸気が発生する。
【0045】
これに対し、本実施例では熱量を抑えて1.3気圧により107℃での沸騰を継続、または断続的にでも継続させており、仮に1.3気圧の沸点107℃を下回る103℃の部位が存在しても、β澱粉をα澱粉にする温度98℃以上を維持しているため、問題はない。
【0046】
加熱量は本実施例では500Wに下げて、107℃で内釜2内部を低い熱量で沸騰状態を保っているので、調圧弁8から蒸気通路9内に流入する蒸気は微量である。
【0047】
この微量の蒸気は、沸騰を維持して水が無くなり、内釜2底の温度が急激に上がるドライアップと呼ぶ状態を釜底温度センサー12で検知し、制御部5が蒸らし工程に移行させるまでの間継続する。この間に少しずつ流入する蒸気は、蒸気通路9を経て蒸気回収ユニット10へと導かれて行く。
【0048】
蒸らし工程でも温度を保つために制御部5は加熱手段4で微小熱量での加熱を行う。この蒸らし工程においても調圧弁8での圧力調整が有効な状態が継続されている。蒸らし工程の後半になると、制御部5は微小熱量での加熱を停止し、温度が下がり内釜2内部の圧力が大気圧に戻るのに十分な時間(例えば5分)を経過するのを待つ。
【0049】
その次に、調圧弁制御部13のコイル13aの通電が停止されるとバネ13bにより付勢されているロッド13cが調圧弁8の球体8aを本体1後側方向に押しのけるため、出口6jは開放して保持される。これにより、内釜2は、出口6jと調圧弁8の蒸気通路9,蒸気回収ユニット10の上ケース10aの穴10nを経て大気と通じた状態となる。
【0050】
内釜2内部の圧力が大気圧まで低下しているため、穴10nから排出する蒸気の勢いは弱く、茶碗に盛ったご飯から湯気が立つ程度である。この後、制御部5は蒸らし工程を終了し、炊飯全工程を終了する。
【0051】
次に図2,図3,図4を用いて蒸気回収ユニット10の内部での蒸気23の流れと水22に回収する動作について説明する。
【0052】
蒸気通路9からの蒸気は筒10eに設けられた流入口10fから蒸気回収ユニット10内の第一枠10gに囲われた空間に流入する。第一枠10gは上ケース10aから垂れ下がるように設けられており、蒸気は空気より軽いので第一枠10gの上部空間に滞留し、上ケース10aや第一枠10gに結露する。蒸気量が多くなると第一枠10gの空間下方まで蒸気が充満して、第一切欠部10hから流出する。蒸気は第一枠10gとU字枠10mで囲われた空間へと流出する。第一切欠部10hと反対側に設けられたU字枠10mの開口部10wへと、U字枠10mの内側に沿って流れる。
【0053】
次に、U字枠10mと第二枠10jで囲われた空間に蒸気が充満し、U字枠10mの外側に沿って流れ、第二切欠部10kまで蒸気が充満すると、第二切欠部10kから第二枠10jと上ケース10aと下ケース10bの外周部10rで囲われた空間に流れる。第二切欠部10kと反対側に設けられた穴10nへと流れて外気に放出される。蒸気の発生は微量になるように加熱手段4の加熱が調整されているので、ほとんどの蒸気は蒸気回収ユニット10で複数の枠で構成される通路を通る間に、温度が低下し、結露して水として回収される。
【0054】
特に、前記のように、第二枠10jと第一枠10gに挟まれて成す略ドーナツ形の天面10vに設けた熱吸収部20によって、空間21に充満する蒸気23に、熱吸収部20は直接触れて作用する。蒸気23の熱を奪って熱吸収部20は液体に変化し、多くの蒸気23を水22に状態を変化させる。そのため、穴10nから出る蒸気は僅かな量で、その温度は約70℃程度まで低下している。
【0055】
本実施例では第一枠10gとU字枠10mと第二枠10jの3個の枠体で、4個の通路で構成し、1つの熱吸収部20とするが、さらに多く設けると効果的である。
【0056】
図5を用いて、水22の移動について説明する。蒸気回収ユニット10で蒸気を結露させて回収した水は、水戻し穴10pから蒸気通路9を経て内蓋6の水受け台6hの傾斜部6aに導かれてもれなく集められ、内蓋水戻し穴6bに溜まる。内釜2の内部が大気圧まで下がるとき、すなわち炊飯が終了して内釜の内部が冷えて内部の蒸気が内釜2や内蓋6に結露して蒸気の体積が収縮するとき、あるいは使用者が外蓋3を開けようとして内釜2と内蓋6で構成する空間の容積が拡大するときに、弁が内蓋6に押し付けられないので、内蓋水戻し穴6bを開放されて水受け皿6dの上面側に水が移動する。水受け皿6dの上面に溜められた水は、保温中に蒸発し、孔6pから内釜2内部空間を加湿する働きをする。
【0057】
なお、調圧弁8の球体8a,保持部6f,出口体6kに結露した水ももれなく水受け台6hの内蓋水戻し穴6bに導くように傾斜部6aを構成するので、清掃の際に内蓋を外したとき垂れる水が少なくなる。また、水受け皿6dに戻して保温の際に加湿する水量が増えて保温によるごはんの水分蒸発を抑えるのに有効である。
【0058】
本実施例によれば、調圧弁8により高い沸点温度で沸騰を維持させながら、内釜2内部で発生する蒸気の流出を最小に抑えることができる。さらにその蒸気23を蒸気回収ユニット10で蒸気を回収するので、沸騰しないことによるご飯の食味の低下をさせることなく蒸気23を室内に多量に放出することを防止できる。
【0059】
蒸気23の排出量を抑えるには水を必要とする冷却ユニットを必要としないため、炊飯器のコンパクト性が確保され、水容器に冷却する水を入れる手間も必要なく、冷却ユニットの清掃を必要としない。その上、冷却した水を廃棄する負荷が発生しないため、地球環境上は好ましい。
【0060】
排出蒸気はほとんど無いため室内の湿度は変わりなく室内環境が維持される。また、熱と蒸気23を閉じ込めて炊飯するので、不要な水が蒸気として放出されない分、水加減も少なくできるため、使用する水も減り、環境負荷も少なくなる。
【0061】
加えて、内釜2内部で発生した蒸気23は外蓋3の蒸気通路9を経て、外蓋3に取り付けられた蒸気回収ユニット10に導かれ、蒸気回収ユニット10内で熱吸収部20によって蒸気23の熱量を奪って水22に戻して回収するので、蒸気23を室内に多量に放出することを防止できる。
【0062】
また、熱吸収部20が固体から温度が上昇し、液体に変わる際には潜熱として熱を吸収する。この熱量は少ない体積で大きな熱量を吸収することができるので、省スペースの蒸気回収ユニット10で多くの蒸気23の熱量を回収できる。
【0063】
また、炊飯中に熱を吸収して固体から液体に変わった熱吸収部20は熱吸収材20aを密閉した容器20bに収められ、冷めれば再び固体に変わって何度でも使用できる。使用後は内蓋6などを水洗いするのと同じ要領で、蒸気回収ユニット10を水洗いするだけでよく、熱吸収部20の交換や補給も不要で簡単に取り扱うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1 本体
2 内釜
3 外蓋
4 加熱手段
6 内蓋
8 調圧弁
9 蒸気通路
10 蒸気回収ユニット
10a 上ケース
10b 下ケース
20 熱吸収部
21 空間
23 蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、該本体内に着脱自在に収納される内釜と、前記内釜を加熱する加熱手段と、前記本体の上部を覆う外蓋とを備え、該外蓋には前記内釜の上部開口を覆う内蓋と、該内蓋に設けられ前記内釜内部を所定の圧力に維持する調圧弁と、該調圧弁を通して前記内釜内で発生する蒸気を外部に排出する蒸気通路と、前記調圧弁から前記蒸気通路を経て外部に排出される前に前記蒸気を回収する蒸気回収ユニットとを備え、該蒸気回収ユニットは、上ケースと下ケースから構成され、前記上ケースには上面から垂下する枠で囲まれた蒸気が停滞する空間を設け、該空間の上部側に熱吸収部を設けたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記熱吸収部には、雰囲気温度が40℃未満で固体であり、40〜90℃の範囲で固体から液体に変化する物質を収めたことを特徴とする請求項1記載の炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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