説明

炊飯材料

【課題】食味がよく、好みの堅さの米飯を作ることができる炊飯材料を提供する。
【解決手段】炊飯材料10では、所定量のトレハロース水溶液21を吸水した吸水生米12の複数個がプラスチックフィルムから作られた袋11に真空包装された状態で冷凍され、袋11の内部で凍結したそれら吸水生米12が所定の表面積および所定の厚みを有する凍結米集合物18を形成している。凍結米集合物18では、隣り合う吸水生米12どうしが互いに密着した状態で凍結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水生米を冷凍して作られた炊飯材料に関する。
【背景技術】
【0002】
所定量の水分を含む吸水生米を冷凍して作られた第1炊飯材料がある(特許文献1参照)。この炊飯材料は、白米に浄水やミネラルウォーターを吸水させた吸水生米をプラスチックフィルム製の袋に入れた後、その袋を冷凍庫に収容し、冷凍庫において−20〜−40℃の温度でそれら吸水生米を冷凍することから作られている。第1炊飯材料は、凍結した吸水生米を袋から取り出し、その吸水生米を炊飯器に入れ、水を加えた後、浸け置きすることなく吸水生米を炊飯器で炊飯し、米飯を作ることができる。
【0003】
また、所定量の水分を含む吸水生米と炊飯時の蒸発量相当分の水および吸水生米のα化に要する水とを冷凍して作られた第2炊飯材料がある(特許文献1参照)。この炊飯材料は、白米に浄水やミネラルウォーターを吸水させた吸水生米と炊飯時の蒸発量相当分の水および吸水生米のα化に要する水とをプラスチックフィルム製の袋に入れた後、その袋を冷凍庫に収容し、冷凍庫において−20〜−40℃の温度でそれら吸水生米と加えた水とを冷凍することから作られている。第2炊飯材料は、凍結した吸水生米と水とを袋から取り出し、その吸水生米と水とを炊飯器に入れ、吸水生米を炊飯器で炊飯し、米飯を作ることができる。
【特許文献1】特開平7−33175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示の第1炊飯材料は、吸水生米を冷凍庫で所定時間冷凍することでその生米を凍結させるから、凍結過程において吸水生米に含まれる水分が生米から奪われ、吸水生米に含まれる水分量が減少する。また、冷凍後の吸水生米の保存過程において吸水生米に含まれる水分が生米から次第に奪われ、吸水生米に含まれる水分量がさらに減少する。吸水生米の水分量が減少すると、吸水生米の炊飯過程において生米を確実に加水分解させることができず、生米のα化が不十分になる場合がある。ゆえに、第1炊飯材料では、それを炊飯することで作られた米飯に芯が残る場合があり、水気が不足した食味が悪い米飯となる場合がある。
【0005】
前記特許文献1に開示の第2炊飯材料は、加えた水が凍結するまで吸水生米が凍結せず、その生米の凍結が緩やかに進むから、生米の内部において凍結した水分の氷結晶が大きくなり、冷凍時に生米の細胞が破壊される場合がある。また、吸水生米の凍結が緩やかに進むと、生米に含まれる水分が凍結時に膨張し、膨張して凍結した水分の作用によって生米に不規則な亀裂が生じる場合がある。吸水生米の細胞が破壊され、または、生米に亀裂が生じると、炊飯材料を炊飯して作る米飯の食味が著しく低下する。この第2炊飯材料は、その炊飯時の蒸発量相当分の水および吸水生米のα化に要する水が加えられているから、それを炊飯するときに炊飯器に入れる水の量を調節して堅めに炊飯したり、柔らかめに炊飯することが難しく、好みの堅さの米飯を作ることができない。
【0006】
本発明の目的は、食味がよく、好みの堅さの米飯を作ることができる炊飯材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための本発明の前提は、吸水生米を冷凍することから作られた炊飯材料である。
【0008】
前記前提における本発明の特徴として、吸水生米には、水に所定量のデンプン糖を溶解させた水溶液が吸水され、炊飯材料では、水溶液を吸水した吸水生米の複数個がプラスチックフィルムから作られた袋に真空包装された状態で冷凍され、袋の内部で凍結したそれら吸水生米が所定の表面積および所定の厚みを有する凍結米集合物を形成している。
【0009】
本発明の一例として、凍結米集合物では、隣り合う吸水生米どうしが互いに密着した状態で凍結している。
【0010】
本発明の他の一例として、凍結米集合物では、それら吸水生米がアルコール凍結を利用した急速冷凍によって凍結している。
【0011】
本発明の他の一例としては、吸水生米の冷凍温度が−20〜−25℃の範囲にあり、吸水生米の凍結に要する時間が10〜20分の範囲にある。
【0012】
本発明の他の一例としては、吸水生米1粒の単位体積あたりにおける水溶液の吸水率が25〜31%の範囲にある。
【0013】
本発明の他の一例としては、水溶液におけるデンプン糖の濃度が3〜6%の範囲にある。
【0014】
本発明の他の一例として、吸水生米では、3〜5℃の温度に保持された水溶液に所定時間浸漬させることで、芯を含むその全体に水溶液が吸水されている。
【0015】
本発明の他の一例としては、デンプン糖がトレハロースである。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる炊飯材料によれば、所定量のデンプン糖を含む水溶液が吸水生米に吸水されているから、デンプン糖の保水力を利用することで、吸水生米に適度の水分を継続して保持させることができ、吸水生米における水分の減少を防ぐことができる。また、吸水生米の複数個がプラスチックフィルムから作られた袋に真空包装された状態で冷凍されるから、冷凍過程において吸水生米に含まれる水分が生米から奪われることはなく、吸水生米における水分の減少を防ぐことができる。この炊飯材料は、吸水生米の冷凍過程や保存過程において生米の水分量が減少することはなく、凍結米集合物を炊飯したときにそれら吸水生米が確実に加水分解し、吸水生米を十分にα化することができ、芯が残らず、食味のよい米飯を作ることができる。この炊飯材料は、凍結米集合物を袋から取り出してその凍結米集合物を炊飯器に入れ、所定量の水を加えた後、炊飯器で炊飯することで米飯を作ることができるから、凍結米集合物を炊飯するときに加える水の量を調節することで、堅めに炊飯することや柔らかめに炊飯することができ、好みの堅さの米飯を作ることができる。この炊飯材料は、凍結米集合物がプラスチックフィルムから作られた袋に真空包装されているから、長期間の冷凍保存が可能であり、長期間保存した後に凍結米集合物を炊飯しても米飯の食味が低下することはない。
【0017】
隣り合う吸水生米どうしが互いに密着した状態で凍結している炊飯材料は、吸水生米どうしの間に間隙が形成されている場合と比較して凍結米集合物の強度が高く、凍結米集合物に衝撃が加えられたとしても、吸水生米が折損することはなく、凍結米集合物が破損することはないから、凍結米集合物の形態を確実に維持することができる。この炊飯材料は、凍結米集合物を炊飯したときに吸水生米どうしがばらけ難く、それら吸水生米すべてを満遍なく均一に炊飯することができ、吸水生米の炊きムラをなくすことができる。
【0018】
吸水生米がアルコール凍結を利用した急速冷凍によって凍結している炊飯材料は、アルコール凍結によって吸水生米を急速に凍結させるから、冷凍時における吸水生米の細胞破壊を防ぐことができ、吸水生米における亀裂の発生を防ぐことができる。この炊飯材料は、吸水生米における細胞破壊や亀裂の発生がないから、食味のよい米飯を作ることができる。
【0019】
吸水生米の冷凍温度が−20〜−25℃の範囲にあり、吸水生米の凍結に要する時間が10〜20分の範囲にある炊飯材料は、吸水生米を急速に凍結させるから、冷凍時における吸水生米の細胞破壊を防ぐことができ、吸水生米における亀裂の発生を防ぐことができる。この炊飯材料は、吸水生米における細胞破壊や亀裂の発生がないから、食味のよい米飯を作ることができる。
【0020】
吸水生米1粒の単位体積あたりにおける水溶液の吸水率が25〜31%の範囲にある炊飯材料は、吸水生米の芯を含むその全体に水溶液が十分に浸透しているから、炊飯時に米に水分を含ませる浸け置きの必要がなく、凍結米集合物に水を加えて直ちに炊飯することができ、炊飯時間を大幅に短縮することができる。この炊飯材料は、凍結米集合物を炊飯したときにそれら吸水生米が確実に加水分解し、それら吸水生米を十分にα化することができる。この炊飯材料は、凍結米集合物を炊飯して作られた米飯に芯が残ることはなく、食味のよい米飯を作ることができる。
【0021】
水溶液におけるデンプン糖の濃度が3〜6%の範囲にある炊飯材料は、デンプン糖の保水力を十分に利用することができ、吸水生米が適度の水分を継続して保持するから、生米における水分の減少を確実に防ぐことができる。この炊飯材料は、吸水生米の冷凍過程や保存過程において生米の水分量が減少することはなく、凍結米集合物を炊飯したときにそれら吸水生米が確実に加水分解し、吸水生米を十分にα化することができ、食味のよい米飯を作ることができる。
【0022】
3〜5℃の温度に保持された水溶液に所定時間浸漬させることで、吸水生米の芯を含むその全体に水溶液が満遍なく吸水されている炊飯材料は、水溶液の温度を前記範囲に保持することで、水溶液が生米に容易に浸透し、吸水生米の芯を含むその全体に水溶液が満遍なく吸水される。この炊飯材料は、吸水生米に水溶液が十分に含まれるから、炊飯時に米に水分を含ませる浸け置きの必要がなく、凍結米集合物に水を加えて直ちに炊飯することができ、炊飯時間を大幅に短縮することができる。この炊飯材料は、凍結米集合物を炊飯したときに吸水生米全体が確実に加水分解し、吸水生米全体を十分にα化することができ、凍結米集合物を炊飯して作られた米飯に芯が残ることはなく、芯が残らず、食味のよい米飯を作ることができる。
【0023】
デンプン糖がトレハロースである炊飯材料は、トレハロースの優れた水和力を利用することで、吸水生米に適度の水分を継続して保持させることができ、吸水生米における水分の減少を確実に防ぐことができる。この炊飯材料は、吸水生米の冷凍過程や保存過程においてその生米の水分量が減少することはなく、凍結米集合物を炊飯したときにそれら吸水生米が確実に加水分解し、吸水生米を十分にα化することができ、芯が残らず、食味のよい米飯を作ることができる。この炊飯材料は、トレハロースが吸水生米に適度な甘味を付与し、凍結米集合物を炊飯して作られた米飯が適度な甘味を有するから、食味がよい米飯を作ることができる。この炊飯材料は、トレハロースが吸水生米に含まれる脂質を酸素から保護するから、吸水生米における過酸化脂質や揮発性アルデヒドの発生を抑制することができ、食味がよく風味がよい米飯を作ることができる。また、トレハロースが吸水生米に含まれるデンプン質の老化を抑制するとともに、吸水生米の水分活性を低下させるから、吸水生米の酸化や腐敗を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
添付の図面を参照し、本発明に係る炊飯材料の詳細を説明すると、以下のとおりである。図1は、一例として示す炊飯材料10の斜視図であり、図2は、図1の2−2線端面図である。図3は、袋11から取り出した状態で示す凍結米集合物18の斜視図である。図1,2では、縦方向を矢印L、横方向を矢印Mで示し(図1のみ)、厚み方向を矢印Nで示す(図2のみ)。それら図では、凍結米集合物18の中央において吸水生米12の図示を一部省略している。炊飯材料10は、袋11と、それに収納されて凍結した複数個の吸水生米12とから形成されている。
【0025】
袋11は、可撓性かつ不透液性の真空包装用プラスチックフィルムから作られている。袋11は、その平面形状が縦方向へ長い長方形であり、吸水生米12を入れる開口13が形成された上端部14と、下端部15および両側縁部16とを有する。袋11の上端部14と下端部15とでは、互いに重なり合うフィルムどうしが直線上に延びる熱融着線17によって固着されている。開口14は、熱融着線17によって閉じられている。プラスチックフィルムは、熱可塑性合成樹脂を一軸延伸または二軸延伸して作られた延伸フィルムが使用されている。熱可塑性合成樹脂には、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルデン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール等を使用することができる。フィルムには、酸素透過度が10ml/m・day・MPa以下のポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンの複合フィルム、1ml/m・day・MPa以下のバリヤー性複合フィルムを使用することが好ましい。
【0026】
吸水生米12は、同一種類の白米(生米)に所定量のトレハロース水溶液21(水溶液)を吸水させることで作られている(図4参照)。トレハロース水溶液21は、浄水に所定量のトレハロース(デンプン糖)を溶解することで作られている。吸水生米12では、芯を含むその全体にトレハロース水溶液21が満遍なく吸水されている。なお、トレハロース水溶液21ではなく、他の水溶液を使用することもできる。他の水溶液としては、浄水に所定量のソルビトール(デンプン糖)を溶解させたソルビトール水溶液、浄水に所定量のマルチトール(デンプン糖)を溶解させたマルチトール水溶液、浄水に所定量のデキストリン(デンプン糖)を溶解させたデキストリン水溶液等を使用することができる。また、トレハロース水溶液、ソルビトール水溶液、マルチトール水溶液、デキストリン水溶液のうちの少なくとも2種類の水溶液を混合した複合水溶液を使用することもできる。トレハロース水溶液21や他の水溶液は、優れた保水力を有し、吸水生米12を乾燥から保護する。浄水には、水道水を浄水器で浄水した水や市販のミネラルウォーターを使用する。
【0027】
吸水生米12は、その複数個が袋11の内部に密集した状態で収納され、脱気された袋11に密閉されている。吸水生米12は、袋11に真空包装されている。吸水生米12は、隣り合う吸水生米12どうしが互いに密着した状態で凍結し、袋11の内部において所定の表面積および所定の厚みを有する凍結米集合物18を形成している。個々の吸水生米12は、それらに含まれるトレハロース水溶液21の凍結によって凍結している。凍結米集合物18は、図3に示すように、両端部19および両側部20を有し、その平面形状が長方形であって、その立体形状が平たい四角柱状に成形されている。なお、凍結米集合物18の立体形状を図示の四角柱状に限定するものではなく、その立体形状が平たい円柱状であってもよい。
【0028】
トレハロース水溶液21を吸水させる以前の白米23(図4参照)に特に限定はなく、新米、古米、古々米のいずれであってもよい。また、白米23の銘柄についても特に限定はない。ただし、新米ならば新米のみ、古米ならば古米のみ、古々米ならば古々米のみを使用することが好ましく、同一銘柄の白米23を使用することが好ましい。なお、新米と古米とを混合したブレンド米や新米と古々米とを混合したブレンド米、古米と古々米とを混合したブレンド米、複数種類の異なる銘柄の白米23を混合したブレンド米を使用することもできる。
【0029】
図4は、トレハロース水溶液21を入れたバット22の斜視図であり、図5は、一例として示すチャンバー式真空包装機24の斜視図である。図6は、一例として示すアルコール凍結装置28の斜視図であり、図7は、冷凍工程を経た後の炊飯材料10を収容した冷凍用保管箱33の斜視図である。図4では、バット22に複数個の白米23が収容され、それら白米23がトレハロース水溶液21に浸けられている。図5では、吸水生米12を収納した袋11が真空包装機24のテーブル26に載せられている。図6では、多数の炊飯材料10を収容した棚29がクレーン(図示せず)によってアルコールプール32の上方に吊り上げられている。この炊飯材料10を作る手順の一例を説明すると、以下のとおりである。炊飯材料10の製造工程には、水溶液作成工程、洗米工程、水溶液浸漬工程、袋詰め工程、真空包装工程、冷凍工程がある。それら工程は、前記順序で実施される。
【0030】
水溶液作成工程では、水溶液作成用容器(図示せず)に浄水を入れた後、容器にトレハロースを入れて攪拌し、トレハロースを浄水に溶解させてトレハロース水溶液21を作る。水溶液21におけるトレハロースの濃度は、3〜6%の範囲に調節されている。なお、水溶液21におけるトレハロースの好ましい濃度は5%である。トレハロースの濃度が3%未満では、トレハロースの優れた水和力を十分に利用することができず、吸水生米12に適度の水分を継続して保持させることができない。また、吸水生米12に適度な甘味を付与することができないから、凍結米集合物を炊飯して作られた米飯に適度な甘味を付与することができないのみならず、吸水生米12に含まれる脂質を酸素から保護することができないから、吸水生米12における過酸化脂質や揮発性アルデヒドの発生を抑制することが難しい。さらに、吸水生米12に含まれるデンプン質の老化を抑制することができず、吸水生米12の水分活性を低下させることができないから、吸水生米12の酸化や腐敗を防止することが難しい。トレハロースの濃度が6%を超過すると、吸水生米12に必要以上の甘味が付与され、凍結米集合物18を炊飯して作られる米飯の食味が変わってしまう。
【0031】
トレハロース水溶液21を作成した後、それを収容した水溶液作成用容器を恒温恒湿の冷蔵庫(図示せず)に収納し、容器を冷蔵庫内で所定時間放置してトレハロース水溶液21を所定温度に冷却する。トレハロース水溶液21は、冷蔵庫においてその温度が3〜5℃に冷却され、その温度が保持される。なお、トレハロース水溶液21の好ましい温度は4℃であり、水溶液の温度を可能な限り4℃に保持することが好ましい。
【0032】
洗米工程では、白米23を計量器(図示せず)によって計量した後、所定量の白米23を洗米機(図示せず)に投入し、洗米機を利用して所定時間洗米した後、その米23を洗米機から取り出す。洗米機では、空気が注入された水を洗米機に流入させ、その水の洗米機内部における回転を利用して白米23を洗米する。洗米が終了すると、洗米後の白米23を洗米機から取り出し、白米23の表面についた水分を十分に落とした後、その米23をバット22に入れる。白米23は、洗米が終了した直後にトレハロース水溶液21に浸漬される。
【0033】
水溶液浸漬工程では、洗浄後の白米23を入れたバット22に水溶液作成用容器からトレハロース水溶液21を注入し、バット22を恒温恒湿の冷蔵庫に収納し、バット22を冷蔵庫内で所定時間放置して白米23に水溶液21を浸透させ、吸水生米12を作る。ソルビトール水溶液やマルチトール水溶液、デキストリン水溶液、複合水溶液を使用する場合は、白米23を入れたバット22にそれら水溶液を注入し、バット22を恒温恒湿の冷蔵庫に収納し、バット22を冷蔵庫内で所定時間放置して白米23にそれら水溶液を浸透させ、吸水生米12を作る。
【0034】
バット22に注入されたトレハロース水溶液21の温度は3〜5℃に保持される。なお、バット22におけるトレハロース水溶液21の好ましい温度は4℃であり、水溶液21の温度を可能な限り4℃に保持することが好ましい。トレハロース水溶液21における白米23の浸漬時間は約3時間〜約4時間である。トレハロース水溶液21は、時間の経過とともに白米23に次第に滲入し、約3時間〜4時間で白米23の芯まで浸透する。トレハロース水溶液21の温度が3℃未満では、水溶液21が白米23に十分に浸透せず、水溶液21が米23の芯まで滲入し難く、水溶液21の吸水に長時間を要する。トレハロース水溶液21の温度が5℃を超過すると、トレハロース水溶液21の吸収速度が速く、吸水生米12が水溶液21によって膨張し、吸水生米12を凍結させたときにその生米12に不規則な亀裂が生じる場合がある。
【0035】
吸水生米12の1粒の単位体積(mm)あたりにおけるトレハロース水溶液21の吸水率は、25〜31%の範囲にある。トレハロース水溶液21の吸水率が25%未満では、トレハロースの優れた水和力を十分に利用することができず、吸水生米12に適度の水分を継続して保持させることができない。また、吸水生米12に適度な甘味を付与することができないから、凍結米集合物を炊飯して作られた米飯に適度な甘味を付与することができないのみならず、吸水生米12に含まれる脂質を酸素から保護することができないから、吸水生米12における過酸化脂質や揮発性アルデヒドの発生を抑制することが難しい。さらに、吸水生米12に含まれるデンプン質の老化を抑制することができず、吸水生米12の水分活性を低下させることができないから、吸水生米12の酸化や腐敗を防止することが難しい。なお、水溶液21におけるトレハロースの濃度やトレハロース水溶液21の温度、浸漬時間を調節することで、トレハロース水溶液21の吸水率を前記範囲で調節することができる。
【0036】
浸漬時間が経過すると、バット22を冷蔵庫から出し、吸水生米12の袋詰め作業を行う。袋詰め工程では、吸水生米12をバット22から笊(図示せず)に移し、吸水生米12のトレハロース水溶液21への浸漬を終了する。次に、計量カップ(図示せず)を利用して吸水生米12の計量を行いつつ、計量カップを使用して所定量の吸水生米12を袋11の開口14からその内部に入れる。袋11に入れる吸水生米12の分量に特に限定はないが、300〜400gが好ましい。袋詰め工程では、吸水生米12を詰めた複数個の袋11が作られる。
【0037】
吸水生米12の袋詰めが終わると、チャンバー式真空包装機24を利用して吸水生米12を真空包装する。真空包装工程では、吸水生米12を詰めたそれら袋11を真空包装機24のチャンバー25内部のテーブル26に載せた後、袋11に収容された吸水生米12の集合物を扁平に成形する。真空包装前の炊飯材料10は、その平面形状が長方形であって、所定の厚みを有する四角柱状に成形されている。真空包装前の複数個の炊飯材料10をテーブル26に載せた後、アッパーチャンバー27を閉める。次に、真空包装機24のスイッチを入れ、包装機24を稼動させる。真空包装機24では、チャンバー25内部を真空にした状態で、袋11の上端部14をインパルスシールによって熱融着する。真空包装工程では、空気が除去された状態にある袋11の内部に吸水生米12が密封され、吸水生米12が袋11に真空包装される。さらに、開口14が熱融着線17によって閉じられる。
【0038】
真空包装工程が終了すると、アッパーチャンバー27を開けてチャンバー25内部からそれら炊飯材料10を取り出し、吸水生米12の冷凍を行う。冷凍工程では、アルコール凍結装置28を利用して吸水生米12の冷凍が行われる。アルコール凍結装置28は、クレーンのフックに支持された棚29と、それら炊飯材料10を収容可能であって棚29に着脱可能に載置されるカゴ30と、アルコール31を満たしたアルコールプール32とから形成されている。アルコール凍結装置28では、棚29がクレーンに吊られており、クレーンを利用して棚29がアルコールプール31に挿脱される。
【0039】
冷凍工程では、真空包装工程が終了したそれら炊飯材料11を起立させた状態でカゴ30に一方向へ重ね合わせて並べた後、そのカゴ30を棚29に載せる。次に、クレーンを利用して棚29を下降させ、棚29をアルコールプール32に入れる。多数の炊飯材料10を載せたカゴ30は、その全体がアルコール31に浸漬される。その結果、炊飯材料の全体がアルコール31に浸かる。吸水生米12は、それを真空包装した袋11とともにアルコール31に所定時間浸漬され、急速に凍結する。アルコールプール32では、吸水生米12に含まれる水溶液21がアルコール31によって急速に凍結し、それによって生米12が凍結するとともに、隣り合う生米12どうしが密着した状態で互いに連結される。
【0040】
なお、棚29をアルコールプール32に入れた後、クレーンを介してアルコールプール32内の棚29を上下方向、左右方向、前後方向のうちの少なくとも一方向へ振動させることができる。アルコールプール32内において棚29を振動させることで、カゴ30に並ぶそれら炊飯材料10の間にアルコール31を確実に流通させることができ、アルコール31を利用して生米12全体を急速に凍結させることができる。
【0041】
炊飯材料10(吸水生米12)のアルコール31への浸漬時間(吸水生米12の凍結に要する時間)は10〜20分である。浸漬時間が10分未満では、吸水生米12を十分に凍結させることができず、凍結米集合物18を作ることができない。なお、凍結した吸水生米12の冷凍温度は−20〜−25℃の範囲にある。吸水生米12の冷凍温度が−20℃よりも高く、浸漬時間が20分を超過すると、吸水生米12の凍結が緩やかに進み、凍結時に吸水生米12の細胞破壊が生じたり、水溶液21の凍結時の膨張によって吸水生米12に亀裂が生じる場合がある。冷凍工程では、アルコール凍結によって吸水生米12が10〜20分で急速に凍結するから、吸水生米12の細胞破壊がなく、吸水生米12に亀裂が発生することもない。
【0042】
浸漬時間が経過すると、クレーンを利用して棚29を上昇させ、棚29をアルコールプール32から引き上げる。次に、棚29からカゴ30を取り出し、冷凍工程が終了したそれら炊飯材料10をカゴ30から冷凍用保管箱33に移し、その箱33を冷凍庫(図示せず)に収納する。冷凍工程が終了した炊飯材料10では、袋11の内部において吸水生米12どうしが互いに密着した状態で凍結し、それら吸水生米12が袋11の内部で平たい四角柱状の凍結米集合物18を形成している。したがって、袋11を破いて凍結米集合物18を取り出したとしても、集合物18を形成する吸水生米12がばらけることはなく、図3に示す凍結米集合物18の形態が維持される。
【0043】
この炊飯材料10を使用して米飯を作るには、袋11を破いて凍結米集合物18を袋11から取り出し、集合物18を炊飯器(図示せず)に入れるとともに、所定量の水を炊飯器に加え、炊飯器の電源を入れて集合物18を炊飯する。凍結米集合物18を炊飯すると、それを形成する吸水生米12が加水分解かつα化し、集合物18の形態とほぼ同様な平たい四角柱状の米飯(図示せず)を作ることができる。炊飯しない炊飯材料10は、冷凍庫内で冷凍保存される。
【0044】
炊飯材料10では、凍結米集合物18の密度が3〜8g/2cmの範囲にあり、凍結米集合物18の平均厚み寸法が3〜20mmの範囲にある。凍結米集合物18の密度が3g/2cm未満かつ平均厚み寸法が3mm未満では、凍結米集合物18の強度が低下し、集合物18に衝撃が加えられたときに、吸水生米12が容易に折損したり、集合物18が容易に破損し、集合物18の形態を維持することができない。凍結米集合物18の平均厚み寸法が20mmを超過すると、集合物18の中心近傍に位置する吸水生米12が急速に凍結せず、その位置の吸水生米12の凍結が緩やかに進み、冷凍工程において吸水生米12の細胞破壊が生じたり、トレハロース水溶液21の凍結時の膨張によって吸水生米12に亀裂が生じる場合がある。炊飯材料10は、凍結米集合物18の密度や平均厚み寸法が前記範囲にあるから、集合物18の形態を確実に維持することができ、吸水生米12の細胞破壊や亀裂の発生を確実に防ぐことができる。
【0045】
この炊飯材料10では、白米23にトレハロース水溶液21が25〜31%の吸水率で浸透しているから、炊飯時に米に水分を含ませる浸け置きの必要がなく、凍結米集合物18に水を加えて直ちに炊飯することができ、炊飯時間を大幅に短縮することができる。この炊飯材料10では、凍結米集合物18を炊飯するときに炊飯器に加える水の量を調節することで、堅めに炊飯することや柔らかめに炊飯することができ、好みの堅さの米飯を作ることができる。また、炊飯材料10は、吸水生米12が急速冷凍され、かつ、凍結した吸水生米12から形成された凍結米集合物18が袋11に真空包装されており、凍結時に吸水生米12の細胞破壊がないから、それを冷凍庫において保管することで長期間の保存が可能である。
【0046】
炊飯材料10は、隣り合う吸水生米12どうしが互いに密着した状態で凍結しているから、凍結米集合物18の強度が高く、集合物18に衝撃が加えられたとしても、吸水生米12が折損することや集合物18が破損することはなく、集合物18の形態を確実に維持することができる。この炊飯材料10は、凍結米集合物18を炊飯したときに吸水生米12どうしがばらけ難く、それら吸水生米12すべてを満遍なく均一に炊飯することができ、吸水生米112の炊きムラをなくすことができる。
【0047】
炊飯材料10は、トレハロース水溶液21が吸水生米12に含まれているから、トレハロースの優れた水和力を利用することで、吸水生米12に適度の水分を継続して保持させることができ、吸水生米12における水分の減少を確実に防ぐことができる。また、吸水生米12の複数個がプラスチックフィルムから作られた袋11に真空包装された状態で冷凍されるから、冷凍過程において吸水生米12に含まれる水分が生米12から奪われることはなく、吸水生米12における水分の減少を防ぐことができる。この炊飯材料10は、吸水生米12の冷凍過程や保存過程においてその生米12の水分量が減少することはなく、凍結米集合物18を炊飯したときにそれら吸水生米12が確実に加水分解し、吸水生米12を十分にα化することができ、芯が残らず、食味のよい米飯を作ることができる。
この炊飯材料10は、トレハロースが吸水生米12に適度な甘味を付与し、凍結米集合物18を炊飯して作られた米飯が適度な甘味を有するから、食味がよい米飯を作ることができる。この炊飯材料10は、トレハロースが吸水生米12に含まれる脂質を酸素から保護するから、吸水生米12における過酸化脂質や揮発性アルデヒドの発生を抑制することができ、食味がよく風味がよい米飯を作ることができる。また、トレハロースが吸水生米12に含まれるデンプン質の老化を抑制するとともに、吸水生米12の水分活性を低下させるから、吸水生米12の酸化や腐敗を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】一例として示す炊飯材料の斜視図。
【図2】図1の2−2線端面図。
【図3】袋から取り出した状態で示す凍結米集合物の斜視図。
【図4】トレハロース水溶液を入れたバットの斜視図。
【図5】一例として示すチャンバー式真空包装機の斜視図。
【図6】一例として示すアルコール凍結機の斜視図。
【図7】冷凍工程を経た後の袋を収容した冷凍用保管箱の斜視図。
【符号の説明】
【0049】
10 炊飯材料
11 袋
12 吸水生米
18 凍結米集合物
21 トレハロース水溶液
23 白米
24 チャンバー式真空包装機
28 アルコール凍結装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水生米を冷凍することから作られた炊飯材料において、
前記吸水生米には、水に所定量のデンプン糖を溶解させた水溶液が吸水され、前記炊飯材料では、前記水溶液を吸水した吸水生米の複数個がプラスチックフィルムから作られた袋に真空包装された状態で冷凍され、前記袋の内部で凍結したそれら吸水生米が所定の表面積および所定の厚みを有する凍結米集合物を形成していることを特徴とする炊飯材料。
【請求項2】
前記凍結米集合物では、隣り合う吸水生米どうしが互いに密着した状態で凍結している請求項1記載の炊飯材料。
【請求項3】
前記凍結米集合物では、それら吸水生米がアルコール凍結を利用した急速冷凍によって凍結している請求項1または請求項2に記載の炊飯材料。
【請求項4】
前記吸水生米の冷凍温度が、−20〜−25℃の範囲にあり、前記吸水生米の凍結に要する時間が、10〜20分の範囲にある請求項1ないし請求項3いずれかに記載の炊飯材料。
【請求項5】
前記吸水生米1粒の単位体積あたりにおける前記水溶液の吸水率が、25〜31%の範囲にある請求項1ないし請求項4いずれかに記載の炊飯材料。
【請求項6】
前記水溶液における前記デンプン糖の濃度が、3〜6%の範囲にある請求項1ないし請求項5いずれかに記載の炊飯材料。
【請求項7】
前記吸水生米では、3〜5℃の温度に保持された前記水溶液に所定時間浸漬させることで、芯を含むその全体に前記水溶液が吸水されている請求項1ないし請求項6いずれかに記載の炊飯材料。
【請求項8】
前記デンプン糖が、トレハロースである請求項1ないし請求項7いずれかに記載の炊飯材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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