炊飯釜
【課題】作業者への負担を軽減できる炊飯釜を提供する。
【解決手段】炊飯釜2は、炊飯装置の加熱室に入れてカーボンヒータで加熱する。炊飯釜2は、平面視矩形状をなす有底筒状の釜本体部51を備えている。矩形環状の鍔部52が釜本体部51の上端部から外方に向かって突出している。作業者が炊飯釜2を加熱室から出す際に手を掛ける前手掛け突出部53が鍔部52の前側部分52aから下方に向かって突出している。作業者が炊飯釜2を持ち上げる際に手を掛ける左手掛け突出部55および右手掛け突出部56が鍔部52の左側部分52cおよび右側部分52dから下方に向かって突出している。
【解決手段】炊飯釜2は、炊飯装置の加熱室に入れてカーボンヒータで加熱する。炊飯釜2は、平面視矩形状をなす有底筒状の釜本体部51を備えている。矩形環状の鍔部52が釜本体部51の上端部から外方に向かって突出している。作業者が炊飯釜2を加熱室から出す際に手を掛ける前手掛け突出部53が鍔部52の前側部分52aから下方に向かって突出している。作業者が炊飯釜2を持ち上げる際に手を掛ける左手掛け突出部55および右手掛け突出部56が鍔部52の左側部分52cおよび右側部分52dから下方に向かって突出している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者への負担を軽減できる炊飯釜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された炊飯釜が知られている。
【0003】
この従来の炊飯釜は、炊飯装置の加熱室に扉体によって開閉される前面開口部から出し入れ可能に入れられ、炊飯用熱源によって加熱されるものである。
【0004】
そして、この炊飯釜は、平面視円形状をなす有底筒状の釜本体部と、この釜本体部の前部に設けられた略コ字状の前部引手と、釜本体部の後部に設けられた略コ字状の後部引手とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−85628号公報(図2、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の炊飯釜では、炊飯装置の加熱室から炊飯釜を出し入れするため、前部引手が必ず前面開口部側に向けられた状態で加熱室内に収納されており、例えば作業者が、この一般的にはリベットにより炊飯釜と固着している前部引手を把持して炊飯釜を炊飯装置の加熱室から出した後に、この出した炊飯釜を持ち上げる場合には、作業者はその炊飯釜を90度回動させて前後方向の位置にある前部引手および後部引手を左右方向の位置に毎回向け直さなければならず、作業者への負担となる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、作業者への負担を軽減できる炊飯釜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の炊飯釜は、炊飯装置の加熱室に出し入れ可能に入れられ、電気式ヒータによって加熱される炊飯釜であって、有底筒状の釜本体部と、この釜本体部の上端部から外方に向かって突出する環状の鍔部と、この鍔部の前側部分から下方に向かって突出し、作業者が前記炊飯釜を前記加熱室から出す際に手を掛ける前手掛け突出部と、前記鍔部の左側部分および右側部分から下方に向かって突出し、作業者が前記炊飯釜を持ち上げる際に手を掛ける左手掛け突出部および右手掛け突出部とを備えるものである。
【0009】
請求項2記載の炊飯釜は、請求項1記載の炊飯釜において、前手掛け突出部、左手掛け突出部および右手掛け突出部の各突出量は、作業者の手の指先が引っ掛かる程度の量であるものである。
【0010】
請求項3記載の炊飯釜は、請求項1または2記載の炊飯釜において、前手掛け突出部は、左右方向長手状のものであり、左手掛け突出部および右手掛け突出部の各々は、前後方向長手状のものであるものである。
【0011】
請求項4記載の炊飯釜は、請求項1ないし3のいずれか一記載の炊飯釜において、鍔部の後側部分から下方に向かって突出する後手掛け突出部を備えるものである。
【0012】
請求項5記載の炊飯釜は、請求項1ないし4のいずれか一記載の炊飯釜において、電気式ヒータは、カーボンヒータであるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば作業者が前手掛け突出部に手を掛けて炊飯釜を炊飯装置の加熱室から出した後にこの出した炊飯釜を持ち上げる際に、作業者は左手掛け突出部および右手掛け突出部に手を掛けて炊飯釜を持ち上げることができるため、加熱室から出した炊飯釜を90度回動させる必要がなく、作業者への負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る炊飯釜の平面図である。
【図2】同上炊飯釜の正面図である。
【図3】同上炊飯釜の側面図である。
【図4】同上炊飯釜の部分断面図である。
【図5】同上炊飯釜が炊飯装置の加熱室に入れられた状態時の正面図である。
【図6】同上炊飯釜が炊飯装置の加熱室に入れられた状態時の側面視断面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る炊飯釜の部分断面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施の形態に係る炊飯釜の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図5および図6において、1は加熱調理装置である炊飯装置で、この炊飯装置1は、前面開口部4を通して加熱室3に出し入れ可能に入れられた業務用の炊飯釜2を加熱手段としての複数本の電気式ヒータであるカーボンヒータ6によって加熱して炊飯を行うものである。
【0017】
炊飯装置1は、前面開口部4を介して前方に向かって開口しその前面開口部4を通して炊飯釜2を出し入れ可能な直方体形状の空間である1つの加熱室3を内部に有する箱形状の装置本体11と、この装置本体11に左右方向の軸13を中心として上下方向に回動可能に設けられ前面開口部4を開閉する扉体12とを備えている。加熱室3の大きさは、1つの炊飯釜2と略同じ大きさである。
【0018】
装置本体11は、左右方向長手状でかつ矩形状の底板部15を有し、この底板部15の左右方向両端部には側板部16が立設されている。左右の両側板部16の上端部相互が上板部17にて連結され、左右の両側板部16の後端部相互が後板部18にて連結されている。
【0019】
また、左右の両側板部16の前側下部相互が連結部19にて連結され、この連結部19には複数(例えば6つ)のヒータ被取付部であるヒータ被取付前側孔部21が形成されている。後板部18のうち連結部19と対向する部分には、ヒータ被取付前側孔部21と対応する複数(例えば6つ)のヒータ被取付部であるヒータ被取付後側孔部22が形成されている。連結部19には左右1対の釜搬送用のローラ体23が左右方向の支軸(図示せず)を中心として回転可能に取り付けられ、この各ローラ体23の上部が連結部19の上面から突出している。
【0020】
さらに、後板部18の上端部には、加熱室3に連通する左右方向長手状の排気口部26が後板部18の内外面(前後面)に貫通して形成されている。加熱室3の上部には、排気用孔部27が中央部に形成された板部材28が配設されており、加熱室3のうち板部材28と上板部17との間に位置する部分が排気用空間部29となっている。そして、炊飯時に炊飯釜2から発生した水蒸気等の排気は、排気用孔部27、排気用空間部29および排気口部26を順次流れて外部、すなわち装置本体11の周囲へ排出される。
【0021】
また、後板部18の内面上部には、炊飯時に加熱室3内の炊飯釜2と近接した状態でこの炊飯釜2から吹きこぼれた汁を受ける左右方向長手状で上方開口状をなす断面略コ字状の汁受け部材31が脱着可能に取り付けられている。汁受け部材31の左右両側の2箇所には、炊飯釜2の後端部が当接する板状の被当接部材32が固設されている。
【0022】
さらに、各側板部16の内面上部には、炊飯時に加熱室3内の炊飯釜2と近接した状態でこの炊飯釜2から吹きこぼれた汁を受ける前後方向長手状で上方開口状をなす断面略コ字状の汁受け部材33が脱着可能に取り付けられている。また、各側板部16の内面上部の複数箇所(例えば3箇所)には、釜搬送用のローラ体34が左右方向の支軸35を中心として回転可能に取り付けられている。つまり、ローラ体34は、支軸35を介して側板部16の内面から離隔するとともに側板部16の内面上部に回転可能に取り付けられ、汁受け部材33の上方に配設されている。そして、炊飯時には加熱室3内において炊飯釜2が左右両側の複数のローラ体34にて支持される。
【0023】
扉体12は、装置本体11の側板部16の前端部の下部に軸13を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた扉本体部37と、この扉本体部37の外面(前面)に突設された取手部38とを有している。
【0024】
扉本体部37の内面(後面)には左右1対の釜搬送用のローラ体39が左右方向の支軸(図示せず)を中心として回転可能に取り付けられ、この各ローラ体39の一部が扉本体部37の内面から突出している。
【0025】
そして、扉体12は、鉛直姿勢の閉状態となって装置本体11の前面開口部4を閉鎖し、水平姿勢の開状態となって装置本体11の前面開口部4を開口させる。なお、扉体12の開状態時には、扉本体部37から上方に突出するローラ体39と連結部19から上方に突出するローラ体23とが同一面(略同一面を含む)上に位置するようになっている。
【0026】
また、加熱調理装置1は、加熱室3内の炊飯釜2の下方に位置してこの炊飯釜2を加熱する複数本(例えば6本)のカーボンヒータ6を備えている。つまり、加熱室3の下部には、前後方向長手状(直線状)である棒状の複数本の電気式ヒータであるカーボンヒータ(炊飯用熱源)6が配設されている。これらカーボンヒータ6は、左右方向に等間隔(略等間隔を含む)をおいて互いに平行に並設されている。このような複数のカーボンヒータ6によって、加熱室3内では、平面視矩形状の範囲から熱が発せられるようになっている。
【0027】
各カーボンヒータ6は、いずれも、直線状で細長円筒状をなす直管形の収納管部であるガラス管部43と、このガラス管部43内に不活性ガスとともに収納され水平状に位置する細長い平板状のカーボン発熱部であるカーボン繊維部(発熱体)44と、ガラス管部43の長手方向両端部である前後方向両端部に設けられた取付部45とを有している。そして、前側の取付部45が装置本体11のヒータ被取付前側孔部21に挿入により取り付けられかつ後側の取付部45が装置本体11のヒータ被取付後側孔部22に挿入により取り付けられている。
【0028】
また、全長にわたって厚さが一定である薄肉平板状で矩形状をなすカーボン繊維部(カーボン部)44には、このカーボン繊維部44の幅方向に長手方向を有する複数の長手状のスリットである切込部(図示せず)が幅方向端縁から幅方向中央側に向かって交互に切り込み形成されている。なお、カーボンヒータ6の長手方向長さ寸法と、炊飯釜2の出し入れ方向長さ寸法とは、同じ(略同じを含む)である。
【0029】
そして、電源オンにより水平状のカーボン繊維部44に電流が流れると、カーボン繊維部44から熱線である赤外線(主として中赤外線および遠赤外線)が放射され、この赤外線によって炊飯釜2が加熱される。
【0030】
なお、加熱室3の下部には、炊飯釜2の底面と接触してこの炊飯釜2の底面の温度を検知する温度検知手段である温度センサ50が配設されている。また、加熱室3の底部には、カーボンヒータ6からの赤外線を反射する汁受兼用の反射体49が配設されている。
【0031】
また、炊飯釜2は、炊飯装置1の加熱室3に出し入れ可能に入れられ、この加熱室3内でカーボンヒータ6によって加熱されるものである。
【0032】
炊飯釜2は、例えば鋳物によって一体形成されているもので、図1ないし図4にも示されるように、上面開口部70を介して上方に向かって開口する平面視矩形状をなす有底4角筒状の釜本体部51と、この釜本体部51の上端部(上周端部)から外方に向かって水平状に突出する矩形環状で板状の鍔部52とを備えている。なお、鍔部52のうち外端部以外の部分における上下面は、平坦な水平面に構成されており、この下面がローラ体34にて支持される。また、鍔部52は、釜本体部51の上面開口部70の周囲に配設されている。
【0033】
また、炊飯釜2は、鍔部52の前側部分52aの前端部から下方に向かって突出し作業者が炊飯釜2を加熱室3から出す際に手を掛ける前手掛け突出部53と、鍔部52の後側部分52bの後端部から下方に向かって突出し作業者が前後逆の状態で入れられた炊飯釜2を加熱室3から出す際に手を掛ける後手掛け突出部54と、鍔部52の左側部分52cの左端部および右側部分52dの右端部から下方に向かって突出し作業者が加熱室3外で炊飯釜2を持ち上げる際に左右の手をそれぞれ一斉に掛ける左手掛け突出部55および右手掛け突出部56とを備えている。
【0034】
なお、炊飯釜2の前後方向が加熱室3に対する出し入れ方向となっている。また、鍔部52の左側部分52cの下面が加熱室3内の左側に位置するローラ体34に載置され、鍔部52の右側部分52dの下面が加熱室3内の右側に位置するローラ体34に載置される。
【0035】
ここで、釜本体部51は、左右方向長手状でかつ矩形状の底板61と、底板61の前端部に立設された側壁である前板62と、底板61の後端部に立設された側壁である後板63と、底板61の左端部に立設された側壁である左板64と、底板61の右端部に立設された側壁である右板65とを有している。
【0036】
前板62の上端部から鍔部52の前側部分52aが前方に向かって水平状に突出し、前側部分52aの前端部下面から前手掛け突出部53が下方に向かって突出し、前側部分52aの前端部上面から前上方突出板部66が上方に向かって突出している。後板63の上端部から鍔部52の後側部分52bが後方に向かって水平状に突出し、後側部分52bの後端部下面から後手掛け突出部54が下方に向かって突出し、後側部分52bの後端部上面から後上方突出板部67が上方に向かって突出している。左板64の上端部から鍔部52の左側部分52cが左方に向かって水平状に突出し、左側部分52cの左端部下面から左手掛け突出部55が下方に向かって突出し、左側部分52cの左端部上面から左上方突出板部68が上方に向かって突出している。右板65の上端部から鍔部52の右側部分52dが右方に向かって水平状に突出し、右側部分52dの右端部下面から右手掛け突出部56が下方に向かって突出し、右側部分52dの右端部上面から右上方突出板部69が上方に向かって突出している。
【0037】
また、前手掛け突出部53、後手掛け突出部54、左手掛け突出部55および右手掛け突出部56の各突出量は、いずれも同じで、例えば作業者が厚手の手袋状の鍋つかみを手に装着していてもその作業者の手の指先が引っ掛かる程度の量であって、例えば板状の鍔部52の厚さ寸法と同程度であり、具体的には例えば4mmである。
【0038】
なお、この突出量は、炊飯釜2を加熱室3に入れる際に後手掛け突出部54が汁受け部材31の鉛直状の板部31aに接触しない量である(図6参照)。また、この突出量は、炊飯釜2を加熱室3に入れる際に左右の手掛け突出部55,56が支軸35に接触しない量である(図5参照)。
【0039】
さらに、前手掛け突出部53および後手掛け突出部54の各々は、真直ぐな左右方向長手状のもので、断面四角形状(断面略四角形状を含む)に形成されている。左手掛け突出部55および右手掛け突出部56の各々は、真直ぐな前後方向長手状のもので、断面四角形状(断面略四角形状を含む)に形成されている。
【0040】
前手掛け突出部53は、鍔部52の前側部分52aの前端部における左右方向中央側に設けられている。後手掛け突出部54は、鍔部52の後側部分52bの後端部における左右方向中央側に設けられている。左手掛け突出部55は、鍔部52の左側部分52cの左端部における前後方向中央側に設けられている。右手掛け突出部56は、鍔部52の右左側部分52dの右端部における前後方向中央側に設けられている。
【0041】
なお、前手掛け突出部53の左右方向長さ寸法および後手掛け突出部54の左右方向長さ寸法は、炊飯釜2を加熱室3内に入れる場合に、各手掛け突出部53,54の左右方向両端部が側板部16に取り付けられているローラ体34に当接しない寸法に設定されている。また、左手掛け突出部55の断面四角形状の厚さ寸法および右手掛け突出部56の断面四角形状の厚さ寸法は、炊飯釜2を加熱室3内に入れる場合に、各手掛け突出部55,56が側板部16に取り付けられているローラ体34と側板部16の内面との間の間隙を通過できる寸法に設定されている。
【0042】
また、炊飯釜2は、図4に示されるように、釜本体部51の上面開口部70を開閉する平面視矩形状の蓋部71を備えている。蓋部71は、蓋本体部72と、この蓋本体部72の外周端部から下方に向かって突出する下方突出部73とを有している。蓋本体部72の下面のうち下方突出部73よりも外方に位置する部分が載置部74となっている。
【0043】
そして、載置部74が鍔部52の上面に載置されかつ下方突出部73が釜本体部51の上端部内面に当てられることにより蓋部71が釜本体部51に対してセットされ、このセットされた蓋部71にて釜本体部51の上面開口部70が閉鎖される。
【0044】
次に、炊飯装置1および炊飯釜2を使用して炊飯を行う場合について説明する。
【0045】
作業者は、洗米および水等を釜本体部51内に投入して上面開口部70を蓋部71で閉鎖した閉蓋状態の炊飯釜2を、ローラ体23,34,39を利用して後方へ移動させながら、開口した前面開口部4から加熱室3内に入れる。
【0046】
つまり、炊飯釜2は、釜本体部51の底板61の下面がローラ体23,39に載置されかつ鍔部52の左側部分52cおよび右側部分52dが左右のローラ体34に載置された状態で、これらローラ体23,34,39にて加熱室3内の所定位置まで搬送される。
【0047】
このとき、左手掛け突出部55および右手掛け突出部56は、側板部16の内面とその内面から離隔しているローラ体34との間の間隙を通過する。
【0048】
次いで、作業者は、扉体12を軸13を中心として上方に回動させて開状態から閉状態に切り換えることにより、この扉体12にて前面開口部4を閉鎖する。
【0049】
このとき、加熱室3のうち炊飯釜2の鍔部52よりも下方の部分は、鍔部52の前側部分52aと近接する前側の扉体12、鍔部52の後側部分52bと近接する後側の汁受け部材31および両側板部7の上部付近と近接する左右両側の汁受け部材33によって囲繞されることから、熱気で包まれるように、熱気が充満可能な略密閉した密閉空間となる。
【0050】
そして、作業者が操作設定手段の炊飯開始用操作部を操作すると、各カーボンヒータ6のカーボン繊維部44に電流が流れる。すると、カーボン繊維部44が瞬時に所定温度(例えばフィラメント温度:約1100℃)に達するとともに、カーボン繊維部44から赤外線が炊飯釜2の平面視矩形状としている底板部分の全面に向けて放射され、この赤外線によって炊飯釜2が加熱される。
【0051】
こうしてカーボンヒータ6にて炊飯釜2が加熱されて炊飯が完了し、所定時間蒸らした後、作業者は、扉体12を閉状態から開状態に切り換えて装置本体11の前面開口部4を開口させてから、炊飯釜2を加熱室3内から取り出す。
【0052】
この際、作業者は、例えば手袋状の鍋つかみを手に装着した状態で、その手の指先を前手掛け突出部53に引っ掛けて、この前手掛け突出部53を手前に引くようにして炊飯釜2全体を加熱室3から扉体12上に引き出す。
【0053】
このとき、加熱室3内の炊飯釜2は、平坦な水平面に構成されている鍔部52の下面で、ローラ体34によって支えられ、前後方向には容易に移動可能となっていることから、手で握って引き出す取手のようなものでなく、鍔部52の下面から下方に突出させて、手の指先が引っ掛かる程度の前手掛け突出部53によって、加熱室3内から容易に引き出すことができる。
【0054】
なお、炊飯釜2が加熱室3内に投入された状態時において、鍔部52の左側部分52cの左端部と左側の側板部16の内面との間にはほとんど空間がなく、同様に、鍔部52の右側部分52dの右端部と右側の側板部16の内面との間にはほとんど空間がない。さらに、その他の炊飯釜2の側端部と側板部16との間においても、手を挿入して炊飯釜2を掴んで引き出すことはできない。
【0055】
次いで、作業者は、扉体12上に載った炊飯釜2の左手掛け突出部55には左手の指先を引っ掛けかつ右手掛け突出部56には右手の指先を引っ掛けた状態で、鍔部52の左側部分52cおよび右側部分52dを下方から支えながら鍔部52を握るようにして、炊飯釜2全体を持ち上げて所定位置まで運ぶ。このとき、開状態の扉体12上で、炊飯釜2を90度回動させる必要はない。
【0056】
そして、このような炊飯釜2によれば、作業者が引き出し用の手掛け部である前手掛け突出部53に手を掛けて炊飯完了した炊飯釜2を炊飯装置1の加熱室3から出した後にこの出した炊飯釜を持ち上げる際に、作業者はそれぞれ持ち上げ用の手掛け部である左手掛け突出部55および右手掛け突出部56に手を掛けて炊飯釜2をそのまま持ち上げることができるため、加熱室3から出した炊飯釜2を扉体12上で90度回動させる必要がなく、作業者への負担を軽減できる。
【0057】
また、鍔部52から下方へ突出しているだけの左手掛け突出部55および右手掛け突出部56に各手の指先が引っ掛っている感触を得た状態で、鍔部52の左側部分および右側部分を握って炊飯釜2を持ち上げるため、鍔部52を握る手が滑ることなく、炊飯釜2の運搬を安定して行うことができる。
【0058】
また、各手掛け突出部53,54,55,56の各突出量は作業者の手の指先が引っ掛かる程度の量であるため、炊飯釜2の重量の増加を抑制でき、作業者への負担をより一層軽減でき、しかも、手袋状の鍋つかみを嵌めた手であっても指先を手掛け突出部53,54,55,56に適切に引っ掛けることができる。
【0059】
さらに、炊飯釜2は前後対称の形状で、鍔部52の前側部分52aに前手掛け突出部53が下方に向かって突設されかつ鍔部52の後側部分52bに後手掛け突出部54が下方に向かって突設されているため、炊飯釜2を前後逆にして加熱室3に入れてもよく、作業者への負担をより一層効果的に軽減できる。
【0060】
また、各手掛け突出部53,54,55,56は、従来のような指先を挿入する略コ字状の引手(取手)に比べて、指先を引っ掛け易いので、炊飯釜2を前方に容易に引き出すことができるとともに、炊飯釜2を安全に持ち上げることができ、しかも、従来の炊飯釜にリベットで固着している引手とは異なり、がたつくことがなく、さらには炊飯釜2自体の形状を簡素化することができる。
【0061】
なお、炊飯釜2の釜本体部51は、加熱室3内で炊飯釜2を加熱する加熱手段として、複数本の棒状のカーボンヒータ6を並設して、平面視矩形状の範囲から熱を発するようにしていることから、炊飯釜2を効率よく加熱させるために平面視矩形状の底板61としているが、平面視で左右方向に長手方向を有する矩形状には限定されず、例えば平面視で正方形状でもよく、平面視で円形状でもよい。
【0062】
また、炊飯釜2は、前上方突出板部66、後上方突出板部67、左上方突出板部68および右方突出板部69を有する構成には限定されず、例えば図7に示すように、これら上方突出板部66,67,68,69を有しない構成でもよい。
【0063】
さらに、炊飯釜2は、これら上方突出板部66,67,68,69が鍔部52の外端部(外周端部)に上方に向かって突設された構成には限定されず、例えば図8に示すように、上方突出板部66,67,68,69が釜本体部51の上端部に上方に向かって連続して突設された構成でもよい。この場合、蓋部71の載置部74は、鍔部52の上面ではなく、上方突出板部66,67,68,69の上面に載置される。
【0064】
また、炊飯釜2は、後手掛け突出部54を有しない構成や、蓋部71を有しない構成等でもよい。
【0065】
また、炊飯釜2の鍔部52の下面の所定部位から下方へ突出している各手掛け突出部53,54,55,56は、例えば鋳物等によって鍔部52の下面に一体に設けられたものには限定されず、例えば溶接等によって固設されたものでもよい。
【0066】
さらに、炊飯釜2を支持するローラ体23,34,39の代わりに、炊飯釜2をスライド可能に支持するガイドレールを設けてもよい。
【0067】
また、例えば左手掛け突出部55や右手掛け突出部56がローラ体34の側面に当接することによって、加熱室3内での炊飯釜2の横ずれが防止されるようにしてもよい。
【0068】
さらに、電気式ヒータは、カーボンヒータ6には限定されず、例えばシーズヒータやハロゲンヒータ等でもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 炊飯装置
2 炊飯釜
3 加熱室
6 電気式ヒータであるカーボンヒータ
51 釜本体部
52 鍔部
52a 前側部分
52b 後側部分
52c 左側部分
52d 右側部分
53 前手掛け突出部
54 後手掛け突出部
55 左手掛け突出部
56 右手掛け突出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者への負担を軽減できる炊飯釜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された炊飯釜が知られている。
【0003】
この従来の炊飯釜は、炊飯装置の加熱室に扉体によって開閉される前面開口部から出し入れ可能に入れられ、炊飯用熱源によって加熱されるものである。
【0004】
そして、この炊飯釜は、平面視円形状をなす有底筒状の釜本体部と、この釜本体部の前部に設けられた略コ字状の前部引手と、釜本体部の後部に設けられた略コ字状の後部引手とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−85628号公報(図2、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の炊飯釜では、炊飯装置の加熱室から炊飯釜を出し入れするため、前部引手が必ず前面開口部側に向けられた状態で加熱室内に収納されており、例えば作業者が、この一般的にはリベットにより炊飯釜と固着している前部引手を把持して炊飯釜を炊飯装置の加熱室から出した後に、この出した炊飯釜を持ち上げる場合には、作業者はその炊飯釜を90度回動させて前後方向の位置にある前部引手および後部引手を左右方向の位置に毎回向け直さなければならず、作業者への負担となる。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、作業者への負担を軽減できる炊飯釜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の炊飯釜は、炊飯装置の加熱室に出し入れ可能に入れられ、電気式ヒータによって加熱される炊飯釜であって、有底筒状の釜本体部と、この釜本体部の上端部から外方に向かって突出する環状の鍔部と、この鍔部の前側部分から下方に向かって突出し、作業者が前記炊飯釜を前記加熱室から出す際に手を掛ける前手掛け突出部と、前記鍔部の左側部分および右側部分から下方に向かって突出し、作業者が前記炊飯釜を持ち上げる際に手を掛ける左手掛け突出部および右手掛け突出部とを備えるものである。
【0009】
請求項2記載の炊飯釜は、請求項1記載の炊飯釜において、前手掛け突出部、左手掛け突出部および右手掛け突出部の各突出量は、作業者の手の指先が引っ掛かる程度の量であるものである。
【0010】
請求項3記載の炊飯釜は、請求項1または2記載の炊飯釜において、前手掛け突出部は、左右方向長手状のものであり、左手掛け突出部および右手掛け突出部の各々は、前後方向長手状のものであるものである。
【0011】
請求項4記載の炊飯釜は、請求項1ないし3のいずれか一記載の炊飯釜において、鍔部の後側部分から下方に向かって突出する後手掛け突出部を備えるものである。
【0012】
請求項5記載の炊飯釜は、請求項1ないし4のいずれか一記載の炊飯釜において、電気式ヒータは、カーボンヒータであるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば作業者が前手掛け突出部に手を掛けて炊飯釜を炊飯装置の加熱室から出した後にこの出した炊飯釜を持ち上げる際に、作業者は左手掛け突出部および右手掛け突出部に手を掛けて炊飯釜を持ち上げることができるため、加熱室から出した炊飯釜を90度回動させる必要がなく、作業者への負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る炊飯釜の平面図である。
【図2】同上炊飯釜の正面図である。
【図3】同上炊飯釜の側面図である。
【図4】同上炊飯釜の部分断面図である。
【図5】同上炊飯釜が炊飯装置の加熱室に入れられた状態時の正面図である。
【図6】同上炊飯釜が炊飯装置の加熱室に入れられた状態時の側面視断面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る炊飯釜の部分断面図である。
【図8】本発明のさらに他の実施の形態に係る炊飯釜の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図5および図6において、1は加熱調理装置である炊飯装置で、この炊飯装置1は、前面開口部4を通して加熱室3に出し入れ可能に入れられた業務用の炊飯釜2を加熱手段としての複数本の電気式ヒータであるカーボンヒータ6によって加熱して炊飯を行うものである。
【0017】
炊飯装置1は、前面開口部4を介して前方に向かって開口しその前面開口部4を通して炊飯釜2を出し入れ可能な直方体形状の空間である1つの加熱室3を内部に有する箱形状の装置本体11と、この装置本体11に左右方向の軸13を中心として上下方向に回動可能に設けられ前面開口部4を開閉する扉体12とを備えている。加熱室3の大きさは、1つの炊飯釜2と略同じ大きさである。
【0018】
装置本体11は、左右方向長手状でかつ矩形状の底板部15を有し、この底板部15の左右方向両端部には側板部16が立設されている。左右の両側板部16の上端部相互が上板部17にて連結され、左右の両側板部16の後端部相互が後板部18にて連結されている。
【0019】
また、左右の両側板部16の前側下部相互が連結部19にて連結され、この連結部19には複数(例えば6つ)のヒータ被取付部であるヒータ被取付前側孔部21が形成されている。後板部18のうち連結部19と対向する部分には、ヒータ被取付前側孔部21と対応する複数(例えば6つ)のヒータ被取付部であるヒータ被取付後側孔部22が形成されている。連結部19には左右1対の釜搬送用のローラ体23が左右方向の支軸(図示せず)を中心として回転可能に取り付けられ、この各ローラ体23の上部が連結部19の上面から突出している。
【0020】
さらに、後板部18の上端部には、加熱室3に連通する左右方向長手状の排気口部26が後板部18の内外面(前後面)に貫通して形成されている。加熱室3の上部には、排気用孔部27が中央部に形成された板部材28が配設されており、加熱室3のうち板部材28と上板部17との間に位置する部分が排気用空間部29となっている。そして、炊飯時に炊飯釜2から発生した水蒸気等の排気は、排気用孔部27、排気用空間部29および排気口部26を順次流れて外部、すなわち装置本体11の周囲へ排出される。
【0021】
また、後板部18の内面上部には、炊飯時に加熱室3内の炊飯釜2と近接した状態でこの炊飯釜2から吹きこぼれた汁を受ける左右方向長手状で上方開口状をなす断面略コ字状の汁受け部材31が脱着可能に取り付けられている。汁受け部材31の左右両側の2箇所には、炊飯釜2の後端部が当接する板状の被当接部材32が固設されている。
【0022】
さらに、各側板部16の内面上部には、炊飯時に加熱室3内の炊飯釜2と近接した状態でこの炊飯釜2から吹きこぼれた汁を受ける前後方向長手状で上方開口状をなす断面略コ字状の汁受け部材33が脱着可能に取り付けられている。また、各側板部16の内面上部の複数箇所(例えば3箇所)には、釜搬送用のローラ体34が左右方向の支軸35を中心として回転可能に取り付けられている。つまり、ローラ体34は、支軸35を介して側板部16の内面から離隔するとともに側板部16の内面上部に回転可能に取り付けられ、汁受け部材33の上方に配設されている。そして、炊飯時には加熱室3内において炊飯釜2が左右両側の複数のローラ体34にて支持される。
【0023】
扉体12は、装置本体11の側板部16の前端部の下部に軸13を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた扉本体部37と、この扉本体部37の外面(前面)に突設された取手部38とを有している。
【0024】
扉本体部37の内面(後面)には左右1対の釜搬送用のローラ体39が左右方向の支軸(図示せず)を中心として回転可能に取り付けられ、この各ローラ体39の一部が扉本体部37の内面から突出している。
【0025】
そして、扉体12は、鉛直姿勢の閉状態となって装置本体11の前面開口部4を閉鎖し、水平姿勢の開状態となって装置本体11の前面開口部4を開口させる。なお、扉体12の開状態時には、扉本体部37から上方に突出するローラ体39と連結部19から上方に突出するローラ体23とが同一面(略同一面を含む)上に位置するようになっている。
【0026】
また、加熱調理装置1は、加熱室3内の炊飯釜2の下方に位置してこの炊飯釜2を加熱する複数本(例えば6本)のカーボンヒータ6を備えている。つまり、加熱室3の下部には、前後方向長手状(直線状)である棒状の複数本の電気式ヒータであるカーボンヒータ(炊飯用熱源)6が配設されている。これらカーボンヒータ6は、左右方向に等間隔(略等間隔を含む)をおいて互いに平行に並設されている。このような複数のカーボンヒータ6によって、加熱室3内では、平面視矩形状の範囲から熱が発せられるようになっている。
【0027】
各カーボンヒータ6は、いずれも、直線状で細長円筒状をなす直管形の収納管部であるガラス管部43と、このガラス管部43内に不活性ガスとともに収納され水平状に位置する細長い平板状のカーボン発熱部であるカーボン繊維部(発熱体)44と、ガラス管部43の長手方向両端部である前後方向両端部に設けられた取付部45とを有している。そして、前側の取付部45が装置本体11のヒータ被取付前側孔部21に挿入により取り付けられかつ後側の取付部45が装置本体11のヒータ被取付後側孔部22に挿入により取り付けられている。
【0028】
また、全長にわたって厚さが一定である薄肉平板状で矩形状をなすカーボン繊維部(カーボン部)44には、このカーボン繊維部44の幅方向に長手方向を有する複数の長手状のスリットである切込部(図示せず)が幅方向端縁から幅方向中央側に向かって交互に切り込み形成されている。なお、カーボンヒータ6の長手方向長さ寸法と、炊飯釜2の出し入れ方向長さ寸法とは、同じ(略同じを含む)である。
【0029】
そして、電源オンにより水平状のカーボン繊維部44に電流が流れると、カーボン繊維部44から熱線である赤外線(主として中赤外線および遠赤外線)が放射され、この赤外線によって炊飯釜2が加熱される。
【0030】
なお、加熱室3の下部には、炊飯釜2の底面と接触してこの炊飯釜2の底面の温度を検知する温度検知手段である温度センサ50が配設されている。また、加熱室3の底部には、カーボンヒータ6からの赤外線を反射する汁受兼用の反射体49が配設されている。
【0031】
また、炊飯釜2は、炊飯装置1の加熱室3に出し入れ可能に入れられ、この加熱室3内でカーボンヒータ6によって加熱されるものである。
【0032】
炊飯釜2は、例えば鋳物によって一体形成されているもので、図1ないし図4にも示されるように、上面開口部70を介して上方に向かって開口する平面視矩形状をなす有底4角筒状の釜本体部51と、この釜本体部51の上端部(上周端部)から外方に向かって水平状に突出する矩形環状で板状の鍔部52とを備えている。なお、鍔部52のうち外端部以外の部分における上下面は、平坦な水平面に構成されており、この下面がローラ体34にて支持される。また、鍔部52は、釜本体部51の上面開口部70の周囲に配設されている。
【0033】
また、炊飯釜2は、鍔部52の前側部分52aの前端部から下方に向かって突出し作業者が炊飯釜2を加熱室3から出す際に手を掛ける前手掛け突出部53と、鍔部52の後側部分52bの後端部から下方に向かって突出し作業者が前後逆の状態で入れられた炊飯釜2を加熱室3から出す際に手を掛ける後手掛け突出部54と、鍔部52の左側部分52cの左端部および右側部分52dの右端部から下方に向かって突出し作業者が加熱室3外で炊飯釜2を持ち上げる際に左右の手をそれぞれ一斉に掛ける左手掛け突出部55および右手掛け突出部56とを備えている。
【0034】
なお、炊飯釜2の前後方向が加熱室3に対する出し入れ方向となっている。また、鍔部52の左側部分52cの下面が加熱室3内の左側に位置するローラ体34に載置され、鍔部52の右側部分52dの下面が加熱室3内の右側に位置するローラ体34に載置される。
【0035】
ここで、釜本体部51は、左右方向長手状でかつ矩形状の底板61と、底板61の前端部に立設された側壁である前板62と、底板61の後端部に立設された側壁である後板63と、底板61の左端部に立設された側壁である左板64と、底板61の右端部に立設された側壁である右板65とを有している。
【0036】
前板62の上端部から鍔部52の前側部分52aが前方に向かって水平状に突出し、前側部分52aの前端部下面から前手掛け突出部53が下方に向かって突出し、前側部分52aの前端部上面から前上方突出板部66が上方に向かって突出している。後板63の上端部から鍔部52の後側部分52bが後方に向かって水平状に突出し、後側部分52bの後端部下面から後手掛け突出部54が下方に向かって突出し、後側部分52bの後端部上面から後上方突出板部67が上方に向かって突出している。左板64の上端部から鍔部52の左側部分52cが左方に向かって水平状に突出し、左側部分52cの左端部下面から左手掛け突出部55が下方に向かって突出し、左側部分52cの左端部上面から左上方突出板部68が上方に向かって突出している。右板65の上端部から鍔部52の右側部分52dが右方に向かって水平状に突出し、右側部分52dの右端部下面から右手掛け突出部56が下方に向かって突出し、右側部分52dの右端部上面から右上方突出板部69が上方に向かって突出している。
【0037】
また、前手掛け突出部53、後手掛け突出部54、左手掛け突出部55および右手掛け突出部56の各突出量は、いずれも同じで、例えば作業者が厚手の手袋状の鍋つかみを手に装着していてもその作業者の手の指先が引っ掛かる程度の量であって、例えば板状の鍔部52の厚さ寸法と同程度であり、具体的には例えば4mmである。
【0038】
なお、この突出量は、炊飯釜2を加熱室3に入れる際に後手掛け突出部54が汁受け部材31の鉛直状の板部31aに接触しない量である(図6参照)。また、この突出量は、炊飯釜2を加熱室3に入れる際に左右の手掛け突出部55,56が支軸35に接触しない量である(図5参照)。
【0039】
さらに、前手掛け突出部53および後手掛け突出部54の各々は、真直ぐな左右方向長手状のもので、断面四角形状(断面略四角形状を含む)に形成されている。左手掛け突出部55および右手掛け突出部56の各々は、真直ぐな前後方向長手状のもので、断面四角形状(断面略四角形状を含む)に形成されている。
【0040】
前手掛け突出部53は、鍔部52の前側部分52aの前端部における左右方向中央側に設けられている。後手掛け突出部54は、鍔部52の後側部分52bの後端部における左右方向中央側に設けられている。左手掛け突出部55は、鍔部52の左側部分52cの左端部における前後方向中央側に設けられている。右手掛け突出部56は、鍔部52の右左側部分52dの右端部における前後方向中央側に設けられている。
【0041】
なお、前手掛け突出部53の左右方向長さ寸法および後手掛け突出部54の左右方向長さ寸法は、炊飯釜2を加熱室3内に入れる場合に、各手掛け突出部53,54の左右方向両端部が側板部16に取り付けられているローラ体34に当接しない寸法に設定されている。また、左手掛け突出部55の断面四角形状の厚さ寸法および右手掛け突出部56の断面四角形状の厚さ寸法は、炊飯釜2を加熱室3内に入れる場合に、各手掛け突出部55,56が側板部16に取り付けられているローラ体34と側板部16の内面との間の間隙を通過できる寸法に設定されている。
【0042】
また、炊飯釜2は、図4に示されるように、釜本体部51の上面開口部70を開閉する平面視矩形状の蓋部71を備えている。蓋部71は、蓋本体部72と、この蓋本体部72の外周端部から下方に向かって突出する下方突出部73とを有している。蓋本体部72の下面のうち下方突出部73よりも外方に位置する部分が載置部74となっている。
【0043】
そして、載置部74が鍔部52の上面に載置されかつ下方突出部73が釜本体部51の上端部内面に当てられることにより蓋部71が釜本体部51に対してセットされ、このセットされた蓋部71にて釜本体部51の上面開口部70が閉鎖される。
【0044】
次に、炊飯装置1および炊飯釜2を使用して炊飯を行う場合について説明する。
【0045】
作業者は、洗米および水等を釜本体部51内に投入して上面開口部70を蓋部71で閉鎖した閉蓋状態の炊飯釜2を、ローラ体23,34,39を利用して後方へ移動させながら、開口した前面開口部4から加熱室3内に入れる。
【0046】
つまり、炊飯釜2は、釜本体部51の底板61の下面がローラ体23,39に載置されかつ鍔部52の左側部分52cおよび右側部分52dが左右のローラ体34に載置された状態で、これらローラ体23,34,39にて加熱室3内の所定位置まで搬送される。
【0047】
このとき、左手掛け突出部55および右手掛け突出部56は、側板部16の内面とその内面から離隔しているローラ体34との間の間隙を通過する。
【0048】
次いで、作業者は、扉体12を軸13を中心として上方に回動させて開状態から閉状態に切り換えることにより、この扉体12にて前面開口部4を閉鎖する。
【0049】
このとき、加熱室3のうち炊飯釜2の鍔部52よりも下方の部分は、鍔部52の前側部分52aと近接する前側の扉体12、鍔部52の後側部分52bと近接する後側の汁受け部材31および両側板部7の上部付近と近接する左右両側の汁受け部材33によって囲繞されることから、熱気で包まれるように、熱気が充満可能な略密閉した密閉空間となる。
【0050】
そして、作業者が操作設定手段の炊飯開始用操作部を操作すると、各カーボンヒータ6のカーボン繊維部44に電流が流れる。すると、カーボン繊維部44が瞬時に所定温度(例えばフィラメント温度:約1100℃)に達するとともに、カーボン繊維部44から赤外線が炊飯釜2の平面視矩形状としている底板部分の全面に向けて放射され、この赤外線によって炊飯釜2が加熱される。
【0051】
こうしてカーボンヒータ6にて炊飯釜2が加熱されて炊飯が完了し、所定時間蒸らした後、作業者は、扉体12を閉状態から開状態に切り換えて装置本体11の前面開口部4を開口させてから、炊飯釜2を加熱室3内から取り出す。
【0052】
この際、作業者は、例えば手袋状の鍋つかみを手に装着した状態で、その手の指先を前手掛け突出部53に引っ掛けて、この前手掛け突出部53を手前に引くようにして炊飯釜2全体を加熱室3から扉体12上に引き出す。
【0053】
このとき、加熱室3内の炊飯釜2は、平坦な水平面に構成されている鍔部52の下面で、ローラ体34によって支えられ、前後方向には容易に移動可能となっていることから、手で握って引き出す取手のようなものでなく、鍔部52の下面から下方に突出させて、手の指先が引っ掛かる程度の前手掛け突出部53によって、加熱室3内から容易に引き出すことができる。
【0054】
なお、炊飯釜2が加熱室3内に投入された状態時において、鍔部52の左側部分52cの左端部と左側の側板部16の内面との間にはほとんど空間がなく、同様に、鍔部52の右側部分52dの右端部と右側の側板部16の内面との間にはほとんど空間がない。さらに、その他の炊飯釜2の側端部と側板部16との間においても、手を挿入して炊飯釜2を掴んで引き出すことはできない。
【0055】
次いで、作業者は、扉体12上に載った炊飯釜2の左手掛け突出部55には左手の指先を引っ掛けかつ右手掛け突出部56には右手の指先を引っ掛けた状態で、鍔部52の左側部分52cおよび右側部分52dを下方から支えながら鍔部52を握るようにして、炊飯釜2全体を持ち上げて所定位置まで運ぶ。このとき、開状態の扉体12上で、炊飯釜2を90度回動させる必要はない。
【0056】
そして、このような炊飯釜2によれば、作業者が引き出し用の手掛け部である前手掛け突出部53に手を掛けて炊飯完了した炊飯釜2を炊飯装置1の加熱室3から出した後にこの出した炊飯釜を持ち上げる際に、作業者はそれぞれ持ち上げ用の手掛け部である左手掛け突出部55および右手掛け突出部56に手を掛けて炊飯釜2をそのまま持ち上げることができるため、加熱室3から出した炊飯釜2を扉体12上で90度回動させる必要がなく、作業者への負担を軽減できる。
【0057】
また、鍔部52から下方へ突出しているだけの左手掛け突出部55および右手掛け突出部56に各手の指先が引っ掛っている感触を得た状態で、鍔部52の左側部分および右側部分を握って炊飯釜2を持ち上げるため、鍔部52を握る手が滑ることなく、炊飯釜2の運搬を安定して行うことができる。
【0058】
また、各手掛け突出部53,54,55,56の各突出量は作業者の手の指先が引っ掛かる程度の量であるため、炊飯釜2の重量の増加を抑制でき、作業者への負担をより一層軽減でき、しかも、手袋状の鍋つかみを嵌めた手であっても指先を手掛け突出部53,54,55,56に適切に引っ掛けることができる。
【0059】
さらに、炊飯釜2は前後対称の形状で、鍔部52の前側部分52aに前手掛け突出部53が下方に向かって突設されかつ鍔部52の後側部分52bに後手掛け突出部54が下方に向かって突設されているため、炊飯釜2を前後逆にして加熱室3に入れてもよく、作業者への負担をより一層効果的に軽減できる。
【0060】
また、各手掛け突出部53,54,55,56は、従来のような指先を挿入する略コ字状の引手(取手)に比べて、指先を引っ掛け易いので、炊飯釜2を前方に容易に引き出すことができるとともに、炊飯釜2を安全に持ち上げることができ、しかも、従来の炊飯釜にリベットで固着している引手とは異なり、がたつくことがなく、さらには炊飯釜2自体の形状を簡素化することができる。
【0061】
なお、炊飯釜2の釜本体部51は、加熱室3内で炊飯釜2を加熱する加熱手段として、複数本の棒状のカーボンヒータ6を並設して、平面視矩形状の範囲から熱を発するようにしていることから、炊飯釜2を効率よく加熱させるために平面視矩形状の底板61としているが、平面視で左右方向に長手方向を有する矩形状には限定されず、例えば平面視で正方形状でもよく、平面視で円形状でもよい。
【0062】
また、炊飯釜2は、前上方突出板部66、後上方突出板部67、左上方突出板部68および右方突出板部69を有する構成には限定されず、例えば図7に示すように、これら上方突出板部66,67,68,69を有しない構成でもよい。
【0063】
さらに、炊飯釜2は、これら上方突出板部66,67,68,69が鍔部52の外端部(外周端部)に上方に向かって突設された構成には限定されず、例えば図8に示すように、上方突出板部66,67,68,69が釜本体部51の上端部に上方に向かって連続して突設された構成でもよい。この場合、蓋部71の載置部74は、鍔部52の上面ではなく、上方突出板部66,67,68,69の上面に載置される。
【0064】
また、炊飯釜2は、後手掛け突出部54を有しない構成や、蓋部71を有しない構成等でもよい。
【0065】
また、炊飯釜2の鍔部52の下面の所定部位から下方へ突出している各手掛け突出部53,54,55,56は、例えば鋳物等によって鍔部52の下面に一体に設けられたものには限定されず、例えば溶接等によって固設されたものでもよい。
【0066】
さらに、炊飯釜2を支持するローラ体23,34,39の代わりに、炊飯釜2をスライド可能に支持するガイドレールを設けてもよい。
【0067】
また、例えば左手掛け突出部55や右手掛け突出部56がローラ体34の側面に当接することによって、加熱室3内での炊飯釜2の横ずれが防止されるようにしてもよい。
【0068】
さらに、電気式ヒータは、カーボンヒータ6には限定されず、例えばシーズヒータやハロゲンヒータ等でもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 炊飯装置
2 炊飯釜
3 加熱室
6 電気式ヒータであるカーボンヒータ
51 釜本体部
52 鍔部
52a 前側部分
52b 後側部分
52c 左側部分
52d 右側部分
53 前手掛け突出部
54 後手掛け突出部
55 左手掛け突出部
56 右手掛け突出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炊飯装置の加熱室に出し入れ可能に入れられ、電気式ヒータによって加熱される炊飯釜であって、
有底筒状の釜本体部と、
この釜本体部の上端部から外方に向かって突出する環状の鍔部と、
この鍔部の前側部分から下方に向かって突出し、作業者が前記炊飯釜を前記加熱室から出す際に手を掛ける前手掛け突出部と、
前記鍔部の左側部分および右側部分から下方に向かって突出し、作業者が前記炊飯釜を持ち上げる際に手を掛ける左手掛け突出部および右手掛け突出部と
を備えることを特徴とする炊飯釜。
【請求項2】
前手掛け突出部、左手掛け突出部および右手掛け突出部の各突出量は、作業者の手の指先が引っ掛かる程度の量である
ことを特徴とする請求項1記載の炊飯釜。
【請求項3】
前手掛け突出部は、左右方向長手状のものであり、
左手掛け突出部および右手掛け突出部の各々は、前後方向長手状のものである
ことを特徴とする請求項1または2記載の炊飯釜。
【請求項4】
鍔部の後側部分から下方に向かって突出する後手掛け突出部を備える
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の炊飯釜。
【請求項5】
電気式ヒータは、カーボンヒータである
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の炊飯釜。
【請求項1】
炊飯装置の加熱室に出し入れ可能に入れられ、電気式ヒータによって加熱される炊飯釜であって、
有底筒状の釜本体部と、
この釜本体部の上端部から外方に向かって突出する環状の鍔部と、
この鍔部の前側部分から下方に向かって突出し、作業者が前記炊飯釜を前記加熱室から出す際に手を掛ける前手掛け突出部と、
前記鍔部の左側部分および右側部分から下方に向かって突出し、作業者が前記炊飯釜を持ち上げる際に手を掛ける左手掛け突出部および右手掛け突出部と
を備えることを特徴とする炊飯釜。
【請求項2】
前手掛け突出部、左手掛け突出部および右手掛け突出部の各突出量は、作業者の手の指先が引っ掛かる程度の量である
ことを特徴とする請求項1記載の炊飯釜。
【請求項3】
前手掛け突出部は、左右方向長手状のものであり、
左手掛け突出部および右手掛け突出部の各々は、前後方向長手状のものである
ことを特徴とする請求項1または2記載の炊飯釜。
【請求項4】
鍔部の後側部分から下方に向かって突出する後手掛け突出部を備える
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の炊飯釜。
【請求項5】
電気式ヒータは、カーボンヒータである
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の炊飯釜。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2012−254199(P2012−254199A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129030(P2011−129030)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000116699)株式会社アイホー (65)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000116699)株式会社アイホー (65)
【Fターム(参考)】
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