説明

炎症を処置するための組成物および方法

本発明は、効果的なテトラサイクリン吸収阻害剤(例えば、多価金属)と共にテトラサイクリン化合物を投与することによって広範な炎症性疾患を処置するための、改良された処置法に関する。当該方法に使用される薬学的組成物もまた、開示されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の背景〕
本願は、2007年3月23日にファイルされた米国特許出願60/896,564に関連するとともに当該米国特許出願に対して優先権を主張する。なお、当該米国特許出願は、本明細書において参考として援用される。
【0002】
炎症は、外傷、毒素、新生組織形成または細菌の侵入に対する局所的な反応である。炎症は、赤み、熱、腫れ、および痛みなどの症状によって、特徴づけられる。炎症には、細胞成分、滲出成分および分子成分が関与する。上記細胞成分は、血管から炎症組織内への白血球の移動に関与する。上記滲出成分は、タンパク質(例えば、フィブリン、サイトカインおよび抗体など)を含む流体(fluid)の移動に関与する。上記分子成分は、分子群(サイトカイン、プロスタグランジン、一酸化窒素、免疫グロブリンおよび細胞接着分子を含む)の多様なシリーズに関与する。
【0003】
分子レベルの炎症の症状には、以下の1)および2)が含まれる。つまり、
1)細胞成分および代謝産物(イオンチャンネル、サイトカイン、ケモカイン、受容体、細胞接着分子、先天性の結合分子(innate binding molecules)、転写因子、および一酸化窒素を含む信号伝達分子を含む)の変化;および、
2)血液循環内の炎症マーカー(白血球、赤血球の沈降速度、C反応性タンパク質、リウマチ因子、免疫グロブリンE、および、腫瘍壊死因子αとインターロイキン6とを含むサイトカイン)のレベルの上昇。
【0004】
過度の炎症または炎症過程の長期化は、炎症性疾患および炎症を生じている臓器の機能障害を引き起こし得る。炎症性疾患には、糖尿病、肥満症、アテローム性動脈硬化症、ウイルス性疾患、白内障、再潅流傷害、癌およびサルコイドーシス、感染後髄膜炎およびリウマチ熱、全身性エリテマトーデスを含むリウマチ性疾患、骨関節炎、関節リウマチ、にきびおよび酒さ(rosacea)の様々な形態を含む皮膚炎症性疾患、過敏性腸症候群およびクローン病を含む腸炎症性疾患のような多様な疾患が含まれる。このような多様な疾患プロセスにおける炎症反応の重要性は、当該炎症反応の制御を、ヒト疾患の予防、管理または治療における主要な要素にしている。Gallinらによって発表された包括的な概論(1999)、および、参考文献(Hansson,2005、Wellen,2005、Karin,2005、Popovic,2005、米国特許5,919,775、米国特許7,122,578、米国特許出願公開2005/0164993、米国特許出願公開2006/0194773)中に記載された炎症ならびに炎症性疾患の更なる例は、炎症および炎症性疾患を規定するための参考文献として、本明細書中に援用される。加えて、中枢神経系(CNS)内の炎症が、多くの急性および慢性の変性疾患、並びに、恐らくは幾つかの精神病の原因であることに関して、現在、多くの証拠が存在する。炎症と関連のあるCNS疾患および疾病として、てんかん、脳損傷、多発性硬化症、パーキンソン病およびアルツハイマー病を挙げることができる(Lucas,2006)。
【0005】
炎症の病因としては、炎症を起こした部位におけるプロ炎症性サイトカインの生産が挙げられる。プロ炎症性サイトカインの生産は、局所的な傷、代謝プロセスの局所的な変化、または、細菌および/または他の微生物の感染によって引き起こされ得る(Day,2005;Golub,2006)。これらの観察によれば、炎症性疾患に対するほとんどの処置では、炎症性の変化が観察される部位または組織に焦点が当てられている。結果的に、抗炎症薬の投与によって、炎症が生じている部位内への、浸透的および/または局所的な薬剤の運搬が達成される。例えば、関節リウマチの処置は、血液の循環を介した、実際に炎症が発生している患部への抗炎症薬の運搬に基づいている(Gallin,1999)。薬剤の局所的な運搬もまた、炎症の処置に用いられている。例えば、局所投与が、皮膚炎症性疾患(例えば、酒さ、および、にきびなど)の処置に用いられている(米国特許7,078,048)。
【0006】
関節炎は、最も研究されている炎症性疾患の1つである。多くの研究にもかかわらず、関節炎の病因の正確なメカニズムは、いまだに多くが未知である。特化された白血球、および、白血球と協同して機能する細胞が、様々な形態の関節炎の病因および処置に関係していると、一般的に考えられている。炎症細胞およびプロ炎症性分子に関する増大しつつあるリストには、様々な種類のT細胞、B細胞、抗原提示細胞(樹状細胞を含む)、および、プロ炎症性サイトカイン(例えば、TNFαおよびIL−1など)の多数のリストが含まれる。上記リストに近年加えられたものとしては、関節リウマチの病因に関係するインターロイキンIL−32が挙げられる(Joosten,2006)。
【0007】
炎症性疾患の処置に用いられる薬剤としては、ステロイド化合物および非ステロイド化合物を挙げることができる。テトラサイクリンは本発明に用いられる薬剤であるが、非ステロイド化合物に分類される。
【0008】
テトラサイクリンは、細菌および哺乳類細胞内において多面的な活性を備える、抗生物質の際立った分類(class)を形成する。テトラサイクリンは、天然物、テトラサイクリン半合成化合物、および、化学的に修飾されたテトラサイクリンとして使用可能である(Chopra,2001,米国特許7,008,631,米国特許出願公開2006/0194773)。最も一般的に用いられているテトラサイクリンは、天然物(テトラサイクリンおよびオキシテトラサイクリン)並びに半合成物(ドキシサイクリンおよびミノサイクリン)である。合成テトラサイクリン化合物は、抗生物質のテトラサイクリンと構造的に関連しているが、抗生物質としての活性を大幅にまたは完全に失っている。
【0009】
抗菌作用の面では、テトラサイクリンは、リボソームのレベルで細菌のタンパク質合成を阻害する広域抗生物質(broad-spectrum antibiotics)として作用する。細菌菌株の生育を阻害するテトラサイクリンの最小阻害濃度(MIC)は、一般的には0.1μg/ml〜32μg/mlである。Petersenら(1999)は、1)Escherichia coli、Staphylococcus aureusおよびSalmonella sp.を含む様々な菌株に対するテトラサイクリンのMICが0.12μg/ml〜32μg/mlであること、2)ミノサイクリンのMICは、菌株の感受性に依存して0.06μg/ml〜32μg/mlであること、を報告している。Websterら(1982)は、Propionobacterium acnesの感受性株と非感受性株とに対するMICが、テトラサイクリンでは、それぞれ0.6μg/mlと5〜10μg/mlとであり、ミノサイクリンでは、それぞれ、0.3μg/mlと5μg/mlとであることを報告している。Agwuchら(2006)は、ヒトにおけるドキシサイクリンの抗生物質MIC50が0.1〜25μg/mlであることを報告している。
【0010】
テトラサイクリンの抗菌作用は、カルシウムおよびマグネシウムによって著しく阻害される。D’Amato(1975)は、Pseudomonas sp.に対するテトラサイクリンのMICが、2.1mMのカルシウム塩または1.4mMのマグネシウム塩の存在下では8倍にまで増加し、両方のカチオンが細菌の培養培地中に存在する場合には32倍にまで増加することを報告している。
【0011】
哺乳類系(mammalian systems)内におけるテトラサイクリンの作用としては、炎症、タンパク質分解、血管形成、アポトーシスおよび骨代謝への効果が挙げられる(Chopra,2001,Roberts,2003,Sapadin,2006)。テトラサイクリンの抗炎症作用は、特別な関心事である。その理由は、テトラサイクリンの抗炎症作用が、関節炎、癌、ぜんそく、心臓血管疾患および皮膚疾患と関連しているからである。テトラサイクリンの抗細菌作用とは対照的に、哺乳類細胞内におけるこれらの化合物の抗炎症作用のメカニズムに対する理解は、いまだに進んでいない。実験データは、テトラサイクリンが炎症に関連する幾つかのプロセスに影響を与えることを示している。当該影響の幾つかは、非常に高濃度のテトラサイクリン存在下で、in vitroにて観察され得る。上記高濃度としては、例えば、>20μg/mlの濃度であるが、標準的な治療では、血液中を当該濃度にまで近づけることはできない。典型的には、血清中におけるテトラサイクリンの最高濃度は、2〜5μg/mlである(Agwuh,2006)。
【0012】
テトラサイクリンの抗炎症作用が、どの程度テトラサイクリンの抗生物質活性と関係するかは解明されていない。例えば、にきびでは、P.acnesの存在が炎症性病変の形成と関連していると考えられ、抗生物質によるにきびの上手い処置は、P.acnes固体群(population)の減少に関与する。しかしながら、皮膚上におけるP.acnesの密度は、炎症の程度、または、にきびの重症度とは相関しない。抗生物質治療の後のP.acnes数の減少の程度は、また、臨床効果とは相関しない。
【0013】
米国特許出願2006/0293290では、ミノサイクリンによるにきび処置の効果を、この薬剤の抗生物質効果に帰結している。
【0014】
食作用の阻害、好中球の移動(migration)および走化性(chemotaxis)の抑制、Tリンパ球の活性化の阻害、ホスホリパーゼA2の阻害、一酸化窒素シンターゼの発現の阻害、メタロプロテアーゼ活性の阻害、プロ炎症性サイトカインの分泌の阻害、および、抗炎症性サイトカインの分泌の刺激によって、テトラサイクリンが、患部において炎症を緩和することが提案されている(Dreno,2004;Sapadin,2006;米国特許出願公開2006/0194773,パラグラフ0060)。テトラサイクリンの抗炎症作用は、略0.3μg/ml〜略40μg/mlの範囲にて観察される(Krakauer,2003,Amin,1996,Kuzin,2001,Golubら,1998)。テトラサイクリンの抗炎症作用にとって効果的な濃度範囲は、テトラサイクリン薬剤の抗菌性にとって効果的な範囲と重なっている。
【0015】
テトラサイクリンの抗炎症作用の複雑性は、テトラサイクリンのin vivoにおける作用の根本的なメカニズムの決定を困難にしている。このことは、これらの作用が炎症性成分(inflammatory component)を伴った様々な疾患(例えば、様々な形態の関節炎、皮膚疾患、自己免疫疾患およびアレルギー疾患、心臓血管疾患、並びに、癌など)にて観察される場合に、特にいえることである。
【0016】
経口投与に引き続いて、主として胃および近位小腸(proximal small intestine)内において、テトラサイクリンの血中への吸収が生じる。上記テトラサイクリンの吸収は、キレート剤および界面活性剤によって刺激されるが、食物、ミルク、および、二価金属または三価金属(例えば、カルシウム、マグネシウム、亜鉛および鉄など)が存在することによって阻害される。テトラサイクリンおよびオキシテトラサイクリンの吸収は、食物によって、略50〜70%減少する。ドキシサイクリンおよびミノサイクリンの吸収に対する食物の阻害効果は、より小さく、略20%〜30%の減少となる。テトラサイクリンの吸収に対する非常に高い阻害が、カルシウムおよびマグネシウム補助食品、並びに、酸中和組成物(antacid compositions)によって引き起こされ、この時の阻害効果は略85%である(Welling,1977,Leyden,1985,およびDepperman,1989)。
【0017】
多価カチオンは、テトラサイクリン化合物と複合体を形成する。2つのカルシウムカチオンまたは1つのマグネシウムカチオンが、1つのテトラサイクリン分子と複合体を形成する。金属−テトラサイクリン複合体の細胞内摂取は、テトラサイクリン化合物のみの場合の細胞内摂取と比較して、低い。このことは、テトラサイクリンの吸収を阻害することとなる(Chopra,2001)。経口投与による処置では、テトラサイクリン吸収の阻害、および、その結果として生じる血中におけるこれら薬剤の濃度低下は、テトラサイクリンの抗炎症作用に対して負の影響を与える因子であると考えられている。
【0018】
食物によるテトラサイクリンの吸収阻害を回避するために標準的に推奨されている方法は、食物の摂取(consumption)、または、高水準の二価カチオンを含む薬剤若しくは金属補助食品の投与の1時間前または2時間後に、テトラサイクリン化合物を摂取することである。これらの予防措置は、抗菌処置および抗炎症処置の両方において推奨されている。US Patent 5,250,442では、食物を避けるための極端な予防措置として、関節リウマチの処置において、テトラサイクリンの経口投与の12時間前に絶食することが推奨されている。
【0019】
血清濃度(serum level)が、抗炎症薬としてのテトラサイクリン化合物の、全身的な効果(systemic effectiveness)の指標であると信じられている。通常の経口投与量(250〜500mg bid)にて投与された後の血清中のテトラサイクリン濃度は、略2〜5μg/mlである。ほとんどのテトラサイクリンは、血清中の治療濃度を維持するために、最大4回まで投与される必要がある(Chopra,2001)。テトラサイクリンの標準的な薬用量は、テトラサイクリンの場合には略250mg〜500mgであり、半合成テトラサイクリンの場合には略100mg〜200mgである。
【0020】
標準用量のテトラサイクリンを用いた場合の副作用としては、吐き気、胃腸の炎症、および、目まいが挙げられる。これらの問題を軽減するために、より少量のテトラサイクリンを有する治療剤形(therapeutic formulations)が開発された。コラーゲンの減少、マトリックス分解、および、歯肉組織内における炎症の減少を示す研究に基づいて、成人性歯周炎を処置するための小用量のドキシサイクリン(20mg bid)が、米国食品医薬品局(FDA)によって承認された(Golub,1998,およびDelRosso,2004)。
【0021】
一連の米国特許の中でも、Ashleyは、にきび、および酒さの処置において、小用量であって抗生物質としての効果を示さない(non-antibiotic)(抗菌薬としての効果を示さない(subantimicrobial))用量のテトラサイクリン化合物の使用を記載している。US Patent 7,008,631(Ashley,March 7,2006)は、にきびと眼の酒さ(ocular rosacea)とを同時に処置する方法を記載しており、米国特許7,014,858(Ashley,March 21,2006)は、にきびと毛細血管拡張症とを処置する方法を記載しており、米国特許出願公開2005/0209202(Ashley,September 22,2005)は、酒さを処置する方法を記載している。これらの刊行物において、テトラサイクリン化合物の活性および有効性は、血清中のテトラサイクリン濃度と関連しており、テトラサイクリンの投与経路は、経口投与または静脈注射の何れであってもよい。幾つかの場合には、局所への使用が検討されている(US Patent 7,008,631、第9カラム、第40行目参照)。
【0022】
大人の患者における酒さの炎症性病変(丘疹(papules)および小膿疱(pustules))の処置に対しては、近年、ドキシサイクリンの小用量の投与がFDAによって承認された。上記剤形は、迅速に放出される30mgのドキシサイクリンと、遅れて放出される10mgのドキシサイクリンとを含み、Collagenex Pharmaceuticals,Incによって商標名Oraceaにて販売されている(NDA50−805,2006;米国特許5,789,395および米国特許 5,919,775)。Oraceaに用いられている、迅速に放出される/持続して放出されるドキシサイクリン化合物の40mgの経口用量は、血清中においてドキシサイクリンが抗菌効果を示す濃度(Cmax0.6±0.2μg/ml)を達成する。Oraceaの試験では、略10%の被験者が治った(clear)、または、ほぼ治った(almost clear)と判定され、病変数の減少の平均は略50%であった。食物と一緒にOraceaの1回分の用量を投与した場合、ドキシサイクリン吸収の速度(rate)および程度(extent)の減少は、それぞれ、45%および22%であった(Oracea,処方箋の情報)。上記処方箋の情報には、Oraceaは食事の1時間前または2時間後に服用しなければならない旨の注意が含まれている。
【0023】
炎症性のにきびおよび酒さに対する小容量のドキシサイクリンの効果は、部分的には、直に標的部位内における、炎症プロセスに対する効果に起因し得る。そして、当該効果は、細菌の化学走化性因子の生産阻害、メタロプロテアーゼ活性の阻害、および、プロ炎症性サイトカインの生産の阻害によるものである(Bikowski,2003,Weinberg,2004,米国特許5,789,395)。
【0024】
半合成テトラサイクリン(例えば、ドキシサイクリンおよびミノサイクリンなど)は、テトラサイクリンよりも脂肪親和性である。このことは、より効果的な細胞浸透性を可能にするとともに、半合成テトラサイクリンのより効果的な血液中への吸収を可能にする。半合成テトラサイクリンはまた、多価金属による自身の吸収阻害に関して、天然テトラサイクリンよりも感受性が低い。これらの特性の故に、ドキシサイクリンおよびミノサイクリンは、細菌感染および炎症の両方の処置に好んで用いられる。炎症に対する処置では、ドキシサイクリンおよびミノサイクリンの効果的な用量は、テトラサイクリンの効果的な用量よりも少ない。
【0025】
1971年から、テトラサイクリンは、関節炎の処置に試験的に用いられてきた。これらの試験の概説は、テトラサイクリンを3ヶ月間以上投与すれば、関節リウマチ(RA)において、疾患活動性および急性期反応物質を穏やかに減少させることを示している。ミノサイクリンを用いた試験において、有益な効果が観察された(Stone,2003)。テトラサイクリンを用いた関節炎の処置では、顕著な利点は何も観察されなかった(Skinner,1971)。これらの試験における1日あたりの用量は、ドキシサイクリンが50〜200mgであり、ミノサイクリンが10〜200mgであり、テトラサイクリンが250mgであった。
【0026】
変形性関節症の処置は、患部における炎症性サイトカインの生産阻害、および、メタロプロテアーゼの阻害に焦点が当てられてきた。インデックス側(on index)ではなく反対側のひざにおいて、ドキシサイクリンの穏やかな効果が観察された(Pelletier,2006)。
【0027】
別の例では、関節炎の処置において、テトラサイクリンの抗菌作用と、抗ウイルス薬としてのアシクロビル、および、抗原虫薬としてのメトロニダゾールまたはニトロイミダゾールとが組み合わされている(米国特許7,053,073および米国特許出願公開2006/0172956)。
【0028】
今日まで、テトラサイクリンを用いた関節炎の処置は、確立されていない。テトラサイクリンを用いた関節炎の処置は、全て、実験的な基盤に基づいて行われてきた。
【0029】
浸透性の運搬のために、テトラサイクリンは、経口にて、または非経口(静脈注射、筋肉注射および皮下注射を含む)にて投与される。最も一般的なのは、経口投与である。
【0030】
テトラサイクリンは、錠剤、丸薬、カプセルおよび液体の剤形にて経口投与され得る。例えば、経口投与のためのドキシサイクリンは、Vibramycin(登録商標)として、Pfizer Inc,NYによって販売されている。Vibramycinは、感染症の処置または予防、および、マラリアの予防に用いられる。Vibramycinは、様々な形態(50mgまたは100mgのドキシサイクリンを含むカプセル(NDC 0069−0940−50 at fda.com)、100mgのドキシサイクリンを含む錠剤(NDC 0069−0990−50 at fda.com)、および、コーティングされた錠剤(Vibra−Tabs,NDC 0069−0990))にて利用可能である。これらの錠剤は、ドキシサイクリンの持続性の放出をもたらす。上記放出は、20分遅れて、胃の中で始まる。Vibramycinの別の剤形はシロップ(NDC 0069 B0871−93 at fda.com)であって、当該シロップは、5mlあたり50mgのドキシサイクリンのカルシウム塩と、塩化カルシウムからなる不活性成分と、を含んでいる。
【0031】
米国特許4,126,680および米国特許4,081,527は、ドキシサイクリン、オキシテトラサイクリンおよびクロルテトラサイクリンの、カルシウム塩およびマグネシウム塩を含む液体状の組成物に関して記載している。当該組成物において、テトラサイクリン化合物に対する金属のモル比は、略1:1〜略2:1である。米国特許3,957,980は、リン酸塩およびマグネシウム塩を含む注射可能なドキシサイクリン溶液について記載している。そして、当該溶液において、ドキシサイクリンに対する金属のモル比は、最大で8:1である。米国特許3,275,513は、テトラサイクリン化合物、尿素、アルコールおよびカルシウム塩を含む経口用組成物に関して記載しており、当該経口用組成物では、テトラサイクリンに対するカルシウムのモル比が2:1である。
【0032】
米国特許2,736,725には、テトラサイクリン化合物、アルミニウム、金属イオン(カルシウムイオンおよび亜鉛イオンを含む)およびα−ヒドロキシカルボン酸(alpha-hydroxy carboxylic acid)を最大モル比1:8:10:24にて含む、水可溶性複合体が記載されている。上記複合体を含む溶液は、抗生物質として筋肉内注射に用いられている。‘725特許が刊行されて以来、アルミニウムはヒトに対して毒性を示すとともに、当該金属の可溶性塩は、製剤中に投入されるべきではないとされている。
【0033】
米国特許4,060,605は、金属塩(カルシウムおよびマグネシウムを含む)の形態にて投与される水可溶性ドキシサイクリン誘導体を開示している。
【0034】
米国特許4,061,676は、テトラサイクリンのカルシウム塩が、安定な経口懸濁液の調製に用いられ得ることを示している(col.4,par.40)。
【0035】
ドキシサイクリンと金属との複合体を含む固形組成物が、米国特許出願公開2005/0019396内に記載されている。上記ドキシサイクリン−金属複合体は、一価金属および二価金属を含んでいる。発明者は、ドキシサイクリンに対する金属の好ましい比率は、1.5〜2.5と仮定している。米国特許出願公開2006/0183719は、テトラサイクリン化合物−金属複合体を含む、別の固形組成物について記載している。当該複合体における金属の部分は、一価金属および二価金属を含んでいる。上記複合体では、テトラサイクリン化合物に対する金属のモル比は、略3:1〜略1:3である。
【0036】
金属およびテトラサイクリン化合物の組成物が、細菌感染の処置のために設計されている。血中へのテトラサイクリンの吸収は、感染部位を抗菌処置する上で、重要な過程である。特許出願‘396および‘719は、組成物中に用いられている金属塩の量は、テトラサイクリンの吸収を著しくは妨げないことを開示している。特許出願‘396は、治療に有効な量(therapeutic amount)のドキシサイクリンは、固形剤形のドキシサイクリン−カルシウム複合体から吸収され得ることを開示しており、当該固形剤形において、ドキシサイクリンに対するカルシウムのモル比は、最大で3:1である(パラグラフ0021−0023)。特許出願‘719には、体が、固形剤形の金属複合体から効果的にテトラサイクリンを吸収できることを開示している(パラグラフ0030)。
【0037】
テトラサイクリンおよび硫酸カルシウムを含む組成物が、テトラサイクリンおよび他の薬物を長期(日)にわたって放出するための移植物に用いられた(米国特許6,753,007および米国特許5,807,567)。
【0038】
半合成テトラサイクリンの投与が胃腸管の炎症および吐き気を引き起こす場合には(Vibramycin)、胃腸の炎症および吐き気を避けるために、少量の食物、ミルクおよびリンゴジュースが許容される。細菌感染をテトラサイクリンによって処置したときに引き起こされる胃腸の炎症を抑える別の手段は、溶解度が制限されたテトラサイクリン塩を使用することである。これらの組成物は米国特許5,538,954内に概説されており、当該米国特許は、本明細書中で参考として援用される。
【0039】
米国特許4,837,030は、ミノサイクリンを含む、制御された放出性組成物(release composition)を開示している。抗菌治療時の経口投与に起因する吐き気または目まいを避けるために、ミノサイクリンは、胃内にて部分的に放出されるとともに、腸内にて部分的に放出される。
【0040】
米国特許6,638,532は、細菌感染を処置するために、テトラサイクリンおよびドキシサイクリンを含む、迅速に放出する組成物と遅れて放出する組成物とを組み合わせた3つの投薬形態を開示している。
【0041】
経口投与のためのテトラサイクリン化合物を含む別の製品はMinocin MRであって、当該製品は、にきびの処置に用いられる。Minocin MRカプセルはWyeth(Wyeth,2005)の製品であって、丸薬中に100mgのミノサイクリン塩酸塩を含んでいる。これらのカプセルは“二重運搬”システム(“double delivery” system)として製剤されており、一服分のミノサイクリンの一部分は胃内へ運搬され、一服分のミノサイクリンの第2の部分は、十二指腸内および上部胃腸管(upper GI tract)内の吸収に利用される(Wyeth,2005,p.5.2)。
【0042】
腸溶性の組成物もまた、マグネシウムの運搬に用いられている(米国特許6,887,492および米国特許4,150,111)。
【0043】
テトラサイクリンの薬学的製剤は、添加物および不活性な化合物(胃腸管内へのテトラサイクリン化合物の運搬および溶解を促進する、基材(carrier)、結合剤および錠剤化剤(tableting agent)が挙げられる)を含む。多価カチオンはテトラサイクリンの吸収を阻害するので、テトラサイクリンを含む薬学的製剤は、これらのカチオンの可溶性塩を多量には含まない。一服あたり10mg未満という少量のマグネシウムステアレートまたはカルシウムステアレートは、湿潤剤として添加される。
【0044】
炎症は、様々な疾患にて観察される主要な病的状態の一つである。部位および病状の観点からみた炎症性疾患の多様な結果(outcome)は、共通した1つの決定要因を有している。これらの疾患の原因に関する明確な説明は存在しない。有力な説は、炎症の多要因説(multi-factorial origin)である。現在、炎症に含まれる様々な過程を処置するために、ステロイド薬および非ステロイド薬が用いられている(Day,2005)。これらは、ある程度の効果はあるが、上記疾患を回復させたり、満足できるほど抑制することは無い。何百万もの人々が炎症を患っており、炎症のより良い処置法の開発が急務である。炎症の処置法に首尾よく到達するためには、炎症を引き起こす主要な要因をより良く理解すること、および、炎症性疾患を著しく緩和または回復させる新たな処置法を開発することが必要である。
【0045】
本明細書内に記載されている全ての特許、特許出願および他の参考文献は、参考として本明細書内に援用される。
【0046】
〔本発明の要約〕
本発明は、炎症性疾患の処置のための新たなアプローチを開示している。新たな処置法は、腸内にて生じる過程が、末梢部位における炎症性疾患に非常に影響するという発見に基づいている。例えば、末梢部位におけるテトラサイクリン化合物の抗炎症作用は小腸に由来しており、このことが、これら化合物の抗炎症作用において重大な過程であることが開示されている。本発明の効果的な組成物は、テトラサイクリン化合物、および、腸から血液中へのテトラサイクリンの運搬の阻害剤である多価金属を含んでいる。以前の仮説に反して、テトラサイクリンの運搬の阻害剤は、抗炎症処置におけるテトラサイクリンの効果を増大させる。
【0047】
本発明の組成物および方法は、天然テトラサイクリン、半合成テトラサイクリン、合成テトラサイクリン、および、薬学的に許容可能なテトラサイクリン塩を含む。
【0048】
本発明の組成物は、単一のテトラサイクリン化合物、または、テトラサイクリン化合物の混合物を含む。
【0049】
本発明の組成物は、経口投与される。本発明の組成物は、単独で用いられることも可能であり、他の薬と組み合わせて用いられることも可能である。
【0050】
本発明のテトラサイクリン化合物の薬学的使用は、炎症性疾患および様々な程度で炎症を生じている疾患(例えば、関節炎、癌、糖尿病、炎症性皮膚疾患、心臓血管疾患、およびCNS疾患など)の処置を含む。
【0051】
〔発明の詳細な説明〕
以下に規定する用語は、本発明を示すために、請求項を含む明細書中に用いられている。
【0052】
「a」、「an」および「the」にても示される単数形は、明細書中で明確に異なることを示さない限り、複数形をも含む。明細書中の幾つかの文中では、単語の最後に記載された(s)によって、このことを示す。
【0053】
「対称(subject)」または「患者(patient)」は脊椎動物であって、好ましくは哺乳類であり、より好ましくはヒトである。
【0054】
「効果的な化合物(effective compound)」、「効果的な量(effective amount)」は、疾患の少なくとも1つの症状における所望の変化にとって十分な、および/または、生物学的過程における所望の変化にとって十分な化合物または化合物量が意図される。効果的な量または効果的な化合物に起因する変化は、効果的な量または効果的な化合物が無い場合の値の少なくとも略15%である。
【0055】
「炎症(inflammation)」は、損傷、外傷、毒素、新生組織形成または細菌の侵入に対する生きた組織の応答であって、赤み、熱、腫れおよび痛みという特徴の1つ以上を含む。炎症は、細胞成分、滲出成分(exudative components)および分子成分を含む。特許出願中および全ての参考文献中に記載されている炎症に関連する更なる定義、例示および症状が、本願に含まれる。
【0056】
「炎症性疾患(inflammatory disorder)」は、疾患の主要な要素または付加的な要素として、炎症を伴う疾患が意図される。当該用語は、テトラサイクリンに感受性である状態をも包含する。そして、当該状態では、薬理学的に活性なテトラサイクリン化合物が、炎症部位において、抗菌作用以外の作用にて疾患を治療、緩和または予防する。特許出願中および全ての参考文献中に記載されている炎症に関連する更なる定義、例示および症状が、本願に含まれる。
【0057】
「処置する(treating)」、「処置(treatment)」は、治療上の処置、および/または、予防上の処置を含む。
【0058】
「炎症の処置(treatment of inflammation)」または「抗炎症処置(anti-inflammatory treatment)」には、炎症および/または炎症性疾患に起因または関連する少なくとも1つの症状が所望の方向へ向かうように、治療、予防、緩和または効果をもたらすこと、が含まれる。
【0059】
「抗炎症作用(anti-inflammatory action)」には、炎症および/または炎症性疾患に起因または関連する少なくとも1つの症状が所望の方向へ向かうように、治療、予防、緩和または効果をもたらしている間の、生物作用および/または生化学作用、あるいは、薬学的化合物の作用が含まれる。当該用語は、上記化合物をその抗炎症作用を発揮する部位へ運搬すること、および、運搬に関連する過程は含まない。
【0060】
「末梢部位(peripheral site)」は、胃腸管に対して末梢側にある、ヒト組織内または哺乳類組織内の部位を意図する。
【0061】
「テトラサイクリン化合物(tetracycline compound(s))」、「テトラサイクリン(tetracyclines)」。これらの用語は、直鎖状に連結した4つのヘキササイクリック環構造(hexacyclic-ring structure)を有する化合物を含み、当該ヘキササイクリック環構造には様々な官能基が付加している。これらの化合物の代表的な構造は、以下のような化学構造を有するテトラサイクリンである。つまり、4−(ジメチルアミノ)−1,4,4α,5,5α,6,11,12α−オクタハイドロ−3,6,10,12,12α−ペンタハイドロキシ−6−メチル−1,11−ジオキソ−2−ナフタセンカルボキサミド(Merck Index 8913)。テトラサイクリン化合物は、天然の構造、半合成の構造、および、合成の構造を含む。テトラサイクリン化合物の例は、Chopra,2001,米国特許出願公開2006/0166945内、および、米国特許出願公開2006/0194773内に記載されている。
【0062】
「テトラサイクリンの吸収(absorption of tetracycline)」。テトラサイクリン化合物は、ヒト、他の哺乳類および脊椎動物内において、胃腸管から血中へと運搬される。別の生体系におけるテトラサイクリンの吸収過程は、別の特定の条件(例えば、細菌細胞内へのテトラサイクリンの吸収)にて記載されている。
【0063】
「テトラサイクリン吸収阻害剤(inhibitor of tetracycline absorption)」。化合物または化合物の混合物は、胃腸管から血液中へのテトラサイクリンの運搬を、少なくとも10%に阻害できる。薬学的組成物からのテトラサイクリンの放出を阻害する化合物(例えば、腸溶性のコーティング化合物、および、遅延放出化合物など)は、当該定義中には含まれない。
【0064】
「テトラサイクリン吸収の効果的な阻害剤(effective inhibitor of tetracycline absorption)」。当該用語は、多価金属カチオンなどのテトラサイクリン吸収阻害剤であって、テトラサイクリンの吸収を少なくとも略15%、多くても略85%未満阻害することができるテトラサイクリン吸収阻害剤を含む。
【0065】
「テトラサイクリン吸収阻害剤の効果的な量(effective amount of inhibitor of tetracycline absorption)」。当該用語は、テトラサイクリンの吸収を少なくとも略15%、多くても略85%未満阻害する、多価金属カチオンおよび他の化合物の量を意図する。
【0066】
「消化管吸収阻害剤(inhibitor of gastric absorption)」は、テトラサイクリン等の化合物の胃から血液内への運搬を、少なくとも50%阻害することができる化合物を意図する。薬学的組成物からのテトラサイクリンの放出を阻害する化合物(例えば、腸溶性のコーティング化合物、および、遅延放出化合物など)は、当該定義中には含まれない。
【0067】
「腸免疫システム(intestine immunosystem)」。当該用語は、免疫応答に関与するとともに、腸内および腸間膜腺(mesenteric gland)内に存在する組織、細胞および分子成分を包含する。上記腸免疫システムは、腸壁(intestine wall)、パイエル板(Peyer’s patches)および腸間膜腺内に存在する、特化した上皮細胞およびリンパ球を含む。上記特化した細胞およびリンパ球としては、樹状細胞、マクロファージ、好中球、T細胞(CD4+T細胞、CD8+T細胞およびヘルパーT細胞を含む)、B細胞、IgAおよびIgE生産細胞、ならびに、マイクロフォールド上皮細胞(M細胞)が挙げられる。
【0068】
「胃組成物(gastric composition)」は、胃の中で自身の活性成分の50%〜100%を放出し、活性成分の残量の幾分かを腸の中に放出するように製剤された経口投与用の薬学的組成物を意図する。
【0069】
「腸溶性組成物(enteric composition)」は、胃の中で自身の活性成分の0〜50%を放出し、胃を通過した後で、活性成分の残量を小腸の中に放出するように製剤された経口投与用の薬学的組成物を意図する。腸溶性組成物は、単一の経口投与用組成物内に一体化された、更に小さなユニット群(小粒群)を含み得る。腸溶性組成物は、腸溶コーティング、遅延放出化合物、または、これらの組み合わせを備えた組成物からなる。腸溶性組成物は、2つ以上の活性成分の多段階放出を制御するために設けられた2つ以上の層内に封入された組成物を包含する。上記多段階放出は、腸内において、部分的に胃内において、および、部分的に腸内において生じ得る。
【0070】
「腸溶コーティング(enteric coating)」は、組成物の活性成分の胃内放出を少なくとも90%抑制する、経口投与用の薬学的組成物のコーティング(コート)を意図する。胃を通過した後で、上記腸溶コーティングは、小腸内で上記組成物の活性成分を放出する。腸溶コーティングは、単一の丸薬、錠剤またはカプセルの形態をした組成物をコートするために、または、単一の経口投与用組成物の中で一体化され得る更に小さなユニット群(小粒群)をコートするために用いられ得る。
【0071】
「遅延放出組成物(delayed release composition)」は、活性成分を持続的に放出するように製剤された経口投与用の薬学的組成物を意図する。持続的な放出は、胃内にて始まり、少なくとも30分間持続する。上記遅延放出組成物は、成分の多段階放出(一部分を胃の中に放出し、一部分を腸の中に放出する)を制御するために設計された2つ以上の層を備える組成物を包含する。
【0072】
「%」。溶液中の化合物の濃度を「%」にて記載する場合には、化合物が溶解されている溶媒の重量あたりの、化合物の重量の割合を意図する。
【0073】
炎症性疾患の処置は、炎症を生じている部位に焦点が当てられる。このような処置は効果的が十分であるとはいえない。そして、場合によっては(例えば、変形性関節症)、外科的処置のみによって、患者に対して単に一時的ではあるが、有意な治療効果(relief)を与え得る。本願は、腸内で生じる過程が炎症性疾患に非常に影響を与えることを開示している。当該開示は、新規でありかつより効果的な炎症性疾患の処置法の基盤を提供する。
【0074】
本発明の抗炎症組成物および処置法は、腸を標的としており、より具体的には小腸および小腸の免疫システムを標的としている。上述した新たなアプローチにおいて、炎症性疾患の処置に用いる化合物の一例として、テトラサイクリンが示されている。テトラサイクリンを腸に作用させることによって、腸および末梢部位における炎症性疾患が、効果的に処置される。
【0075】
経口投与された場合には、テトラサイクリン化合物は、胃内および小腸の近位部内において、血液中に吸収される。「発明の背景」の欄で説明したように、胃腸管から血液内へのテトラサイクリン化合物の吸収は、食物および多価金属カチオンによって、略85%〜15%阻害される。その結果、食物および多価カチオンは、腸内におけるテトラサイクリンの残留を増大させるとともに、血中のテトラサイクリン濃度を減少させる。ヒトに関しては、タンパク食(protein diet)と共に同時にテトラサイクリン化合物を投与した場合の血清中の濃度は、タンパク食を摂取しない場合に計測される4.4〜4.7μg/mLの濃度から、テトラサイクリン濃度は1.8μg/mLにまで減少し、ドキシサイクリン濃度は2.6μg/mLにまで減少する(Welling,1977)。酸中和剤(アルミニウム−マグネシウム水酸化物)の投与は、ドキシサイクリンの血清中の濃度を、投与しない場合に計測される2.7μg/mLの濃度から0.45μg/mLにまで減少させる(Depperman,1989)。テトラサイクリンの吸収の阻害は、テトラサイクリンの抗炎症作用に対する、食物および多価カチオンの負の効果として考えられてきた。
【0076】
本発明は、予想に反して、食物および多価金属カチオンが、経口投与されたテトラサイクリンの効果を実際には増大させることを開示している。本発明の組成物および方法では、腸内にテトラサイクリンを保持するために、および、効果的な抗炎症処置を容易にするために、多価金属塩が用いられ得ることも開示されている。
【0077】
本発明の組成物および方法は、天然テトラサイクリン、半合成テトラサイクリン、合成テトラサイクリン、および、薬学的に許容可能なテトラサイクリン塩を包含する。
【0078】
本発明の組成物は、単一のテトラサイクリン化合物、または、テトラサイクリン化合物の混合物を含む。
【0079】
本発明の組成物は、経口投与され、単独または他の薬剤と組み合わせて用いられ得る。
【0080】
本発明において効果的なテトラサイクリン化合物は、以下のような化学的特徴点を備えている。つまり、1)水性環境下において細胞に対して効果を及ぼすための十分な水溶解性(例えば、略10μg/mLなど)、2)多価金属カチオンと複合体を形成する能力、3)胃腸管からの自身の吸収が、多価金属カチオンによって、少なくとも略15%阻害されること。
【0081】
本発明では、多価金属カチオンは、テトラサイクリンの吸収を阻害する。このことは、腸内、より具体的には小腸内におけるテトラサイクリンの蓄積を招く。多価金属カチオンはまた、細胞の代謝に影響を与えることによって、テトラサイクリンと協働し得る。例えば、カルシウムカチオンは、細胞内シグナル伝達において重要な役割を担っており、例えば、白血球T活性化(leukocyte T activation)のシグナル経路に関与していることが知られている(Gallin,1999)。カルシウムカチオンは、カルシウム感受性レセプターを介して、腸上皮細胞の増殖および分化を調節することもまた知られている(Herbert,2004)。加えて、人体内における低濃度のマグネシウムは、炎症のマーカーであるC反応性タンパク質の上昇と相関がある(Guerro−Romero,2002)。
【0082】
腸内におけるテトラサイクリンの蓄積は、胃における放出を阻害して小腸においてテトラサイクリン化合物を放出させる腸溶性組成物を使用することによって、更に容易に行い得る。
【0083】
本発明では、効果的な多価金属カチオンは、以下の(1)〜(3)を行う能力を備えている。つまり、(1)金属−テトラサイクリン化合物複合体の形成、(2)テトラサイクリンの吸収の阻害、(3)テトラサイクリンの抗炎症作用効果の増大。
【0084】
二価金属または三価金属の薬学的に許容可能な塩(例えば、塩化物、酢酸塩、カルシウムのグルコン酸塩および炭酸塩、マグネシウム、亜鉛および鉄など)が、本発明に用いられ得る。クエン酸塩またはEDTAなどのキレートアニオン(chelating anions)は、利用可能な金属カチオンの濃度を低下させるので、本発明の組成物中には用いられるべきではない。
【0085】
多価金属塩は、薬学的組成物および/または食物の一部であり得る。本発明の組成物中に含まれる多価金属塩の1日あたりの量は、特定の金属に対する、1日あたりの推奨摂取量(RDA)の上限以内であることが好ましい。米国食品医薬品局によって算出された現在のRDAは、カルシウムが1gであり、マグネシウムが0.4gであり、他の全ての多価金属は、20mgよりも低い。例えば、鉄、亜鉛、マンガンおよび銅のRDAは、それぞれ、18mg、15mg、2mgおよび2mgである。
【0086】
本発明の組成物を製剤するためには、1日の食事における、RDAおよび過剰量の金属が潜在的に有する毒性を考慮することが重要である。RDAが十分に高いが故に、本発明における効果的な多価金属カチオンは、カルシウムおよびマグネシウムである。好ましいアニオンは、塩化物および炭酸塩である。最も好ましいカチオンは、カルシウムであり、本発明における最も好ましい塩は、炭酸カルシウムおよび塩化カルシウムである。本発明のカルシウム組成物は、別の多価金属化合物によって補われ得る。
【0087】
本発明の最も好ましい組成物は、カルシウム塩およびマグネシウム塩を含んでいる。経口投与用のカルシウム補助食品が、便秘を引き起こすことが知られている。経口投与用のカルシウム含有組成物へのマグネシウムの添加は、このカルシウムの影響を緩和する。本発明では、マグネシウムに対するカルシウムの好ましいモル比は、略1:1〜略3:1である。
【0088】
好ましくは、本発明のテトラサイクリン−カルシウム組成物は、食事とともに投与される。
【0089】
カルシウムは、植物および動物に由来する一般的な食物成分である。食事における食物由来のカルシウムの量は、著しく変化する。カルシウムの吸収速度は、胃内におけるカルシウムの溶解性に依存する。溶解したカルシウムは、大部分は胃にて吸収される。高濃度の溶解したカルシウムを含む食事(例えば、ミルクドーナツ)を摂取した後のヒト胃内における溶解性カルシウムの濃度は、略20〜30mMであって、そして、消化された食物が回腸に達した時には3〜5mMに減少することを、1966年にFordtranが報告している。比較対照としてステーキを摂取した後のヒト胃内における溶解性カルシウムの濃度は、略3〜4mMであって、そして、食物が小腸を通過した時でも当該濃度を維持している。
【0090】
溶解した金属カチオンの胃における吸収は速いので、本発明では、テトラサイクリンおよび溶解した多価金属塩を含む液体状(aqueous)の組成物は好ましくない。
【0091】
本発明の組成物では、多価金属塩の効果的な量は、テトラサイクリンのモル量の略10倍よりも高いモル量であり、より好ましくは略15倍よりも高いモル量である。一般的には、当該割合の好ましい上限値は、多価金属のモル量が略40倍高い値である。40倍よりも高い多価金属の量は、少量のテトラサイクリン(40〜60mg)を含む組成物に適用し得る。そして、これによって、胃および腸内に十分量の多価金属カチオンを供給できるとともに、食物(例えば、酸性の果物)、または、高濃度のキレート剤およびテトラサイクリンの吸収を促進する他の化合物を含む食品添加物の消費を相殺することができる。
【0092】
米国特許2,806,789は、テトラサイクリンの吸収速度は、食物中に存在する物質(例えば、エチレン四酢酸、クエン酸、アスコルビン酸、ポリリン酸、ピロリン酸(pyrophosporic acids)、および、これら化合物の塩)によって可溶状態になるカルシウムによって、増大され得ることを開示している。植物中には、更なるキレート剤であるフェノールおよびポリフェノールが含まれる。恐らくは相互作用する金属イオンを沈殿させることによって、リン酸塩が、腸におけるテトラサイクリンの吸収を増強することも知られている(Sompolinsky,1972)。テトラサイクリンの吸収を増大させる他の化合物は、界面活性剤である。
【0093】
テトラサイクリンの吸収を増大させる化合物は、本発明の組成物中に少量だけ存在するか、あるいは、本発明の組成物中に含まれるべきではない。
【0094】
本発明における炎症性疾患の処置は、天然テトラサイクリン化合物、半合成テトラサイクリン化合物または合成テトラサイクリン化合物の使用を包含する。「発明の背景」の欄で説明したように、幾つかのテトラサイクリン(例えば、テトラサイクリンおよびオキシテトラサイクリンなど)は、半合成テトラサイクリン(例えば、ミノサイクリンおよびドキシサイクリンなど)と比較して、多価カチオン阻害作用に対して感受性が高い。この特性の故に、テトラサイクリンおよびオキシテトラサイクリンは、本発明におけるより好ましいテトラサイクリン化合物となる。最も好ましい化合物は、テトラサイクリンであり、最も好ましい塩は、テトラサイクリン塩酸塩である。
【0095】
最も好ましい化合物であるテトラサイクリンおよびオキシテトラサイクリンは、他の好ましい化合物であるクロルテトラサイクリンと同様に、半合成テトラサイクリンおよび化学的に修飾された非抗菌性テトラサイクリン(CMT)(例えば、ドキシサイクリン、ミノサイクリンおよびCMT−3など)と比較して幾つかの副作用を有している。ドキシサイクリン、ミノサイクリンおよびCMT−3は、in vitroおよびin vivoにおいて、様々な種類の細胞の増殖を阻害する(Banack,1979、Lokeshwar,1998およびBendeck,2002)。腸上皮細胞は、増殖速度が速い。それ故に、特に治療が長期にわたった場合には、半合成テトラサイクリンまたは合成テトラサイクリンの抗増殖作用は、副作用を引き起こす可能性がある。ヒト腸細胞株CCL−221を用いた我々の試験では、ドキシサイクリン(5μg/mL)は細胞増殖を略60%阻害したが、テトラサイクリン(5μg/mL)は細胞増殖を全く阻害しなかった。ヒトリンパ腫Molt−4細胞を用いた試験では、ドキシサイクリン(5μg/mL)は当該細胞の増殖を略80%阻害したが、テトラサイクリン(5μg/mL)は当該細胞の増殖を略20%しか阻害しなかった。
【0096】
加えて、ミノサイクリンを用いた長期にわたる処置(「にきび」の処置)は、「薬剤誘導性狼瘡(drug-induced lupus)」と呼ばれる症状を誘導することが示された。
【0097】
胃組成物。
【0098】
本発明の胃組成物は、多価金属塩と共に、胃内にテトラサイクリン化合物を放出するように製剤される。
【0099】
本発明の好ましい胃組成物は、一服につき、体重1kgあたり略1μmole〜略15μmoleという、テトラサイクリン化合物の効果的な量を含む。テトラサイクリンの量がより多ければ効果的ではあるが、毒性の副作用を示す恐れがある。
【0100】
カルシム添加物無しで食事と共に投与する場合、または、食事無しでカルシウム添加物と共に投与する場合のテトラサイクリン化合物の好ましい量は、一服につき、体重1kgあたり略0.5μmolle〜略10μmoleである。
【0101】
食事およびカルシウム添加剤と共に投与する場合のテトラサイクリン化合物の好ましい量は、一服につき、体重1kgあたり略2μmole〜略5μmoleである。これは、70kgの体重あたり略67mg〜略168mgのテトラサイクリン塩酸塩の量に対応する。
【0102】
胃組成物中に使用される多価金属塩は、pHが略1〜略8.5の範囲にて水中にて可溶性であるとともに、テトラサイクリン化合物と複合体を形成し得るカチオンに解離しなくてはならない。好ましい多価金属塩は、塩化物である。他の塩(例えば、酢酸塩、グルコン酸(gluconates))も使用され得る。カルシウム塩および/またはマグネシウム塩を含む組成物は、薬学的に許容し得る量の亜鉛および鉄塩、並びに、多価金属微量元素を補い得る。
【0103】
本発明に用いられ得る、水不溶性またはわずかに可溶性である塩または化合物の幾つかは、胃の酸性環境下において反応して水可溶性塩を形成する。例えば、実質的に水中にて不溶性である炭酸カルシウムは、胃のでHClと反応して、水中にて溶解性が高い塩化カルシウムへ変換される。解離した塩化カルシウムは、胃の中の酸性pH環境下、および腸の中の中性〜アルカリpH環境下においてテトラサイクリン化合物と複合体を形成するカルシウムイオンを提供する。本発明に用いられ得る、水中にてわずかに可溶性を示す化合物の例は、酸化マグネシウムである。酸化マグネシウムは胃の中で水に溶けて水酸化マグネシウムを形成し、当該水酸化マグネシウムは、胃の中の酸性pH環境下において塩化マグネシウムへ変換される。
【0104】
本発明において実用的ではない塩の例は、リン酸カルシウムおよび硫酸カルシウム半水化物(calcium sulfate hemihydrate)である。硫酸カルシウム半水化物(乾燥石膏(dried gypsum))は、水中にて可溶性ではない。リン酸カルシウムは、少なくとも部分的には、胃の中の酸性pH環境下において溶解し得る。しかしながら腸の中の中性pH環境下では、リン酸カルシウムは水に対して不溶性となり、カルシウムイオンの効果的な供給源とはならない。また、リン酸塩が、腸におけるテトラサイクリンの吸収を促進することも知られている。
【0105】
本発明の胃組成物は、一服につき、体重1kgあたり略10μmole〜略150μmoleの量の多価金属塩を含んでいる。この範囲は、例えば、70kgの投与対象に対して、一服あたり28〜420mgのカルシウムに対応する。多価金属塩の好ましい量は、一服につき、体重1kgあたり18〜57μmoleである。この範囲は、70kgのヒトに対して、一服あたり50mg〜160mgのカルシウムに対応する。カルシウムの当該量は、カルシウムのRDAである1g以内の量であって、安全である。
【0106】
本発明では、多価金属添加物は、テトラサイクリン組成物の一部分として投与されることが可能であり、別の組成物として投与されることも可能であり、その組み合わせも可能である。別々に投与される場合には、多価金属添加物は、テトラサイクリン化合物の投与から略±20分以内に投与されるべきである。
【0107】
本発明の胃組成物では、金属の1日の合計量は、RDAの3倍量を超えないことが好ましい。本発明の組成物中に含まれる多価金属の1日あたりの量は、特定の金属のRDAを超えないことが更に好ましい。
【0108】
胃組成物では、10μmoles/kg/doseよりも少ないカルシウム量であれば、食物と共に摂取したとしてもあるいは単独で摂取したとしても、テトラサイクリンの効果に顕著な影響を与えない。
【0109】
胃組成物の例としては、丸薬、錠剤またはカプセルが挙げられ、これらは、以下の1)〜3)からなる。つまり、1)150mgテトラサイクリン塩酸塩、300mg炭酸カルシウム、50mg塩化カルシウム二水和物および100mg酸化マグネシウム;2)80mgドキシサイクリン、200mg炭酸カルシウム、50mg塩化カルシウムおよび75mg酸化マグネシウム;3)40mgテトラサイクリン塩酸塩、150mg炭酸カルシウム、50mg塩化カルシウムおよび75mg酸化マグネシウム。
【0110】
腸溶性組成物。
【0111】
本発明の腸溶性組成物には、遅延放出組成物および腸溶コーティング組成物が含まれる。腸溶性組成物は、広く用いられているとともに、当業者にとって周知である。腸溶性組成物に関する概説が米国特許6,887,492内(par.40)に記載されており、本明細書中に参考として援用される。腸溶コーティングは、胃の胃液中においても不溶性である無毒性の食用ポリマー(edible polymers)によって形成される。腸溶コーティングは、pH>5に溶解点を有し、胃の酸性環境に対して耐性を有するとともに、腸の近位部にて溶解する。
【0112】
本発明の腸溶性組成物は、多価金属塩と共に、テトラサイクリン化合物を小腸へ運搬する。テトラサイクリン化合物が多価金属塩と共に腸へ運搬されない場合には、本発明における効果は小さくなる。
【0113】
本発明の腸溶性組成物は、メタクリルポリマー(methacrylic polymer)であるEudragit 100−55(Rohm GmbH,Germany)によってコートされていることが好ましい。Eudragit L100−55によるコートは、胃内の一般的なpH条件下(pH2〜pH4)では実質的に不溶性であるが、小腸内の一般的なpH条件下(pHが5.5よりも高い)では可溶性である。
【0114】
多価金属塩を含む腸溶性組成物中のテトラサイクリン化合物の最小有効量は、一服につき、体重1kgあたり0.3μmoleである。テトラサイクリン化合物の上限値は、一服につき、体重1kgあたり5μmoleである。テトラサイクリンの量が更に多くなれば効果的ではあるが、毒性の副作用を示す恐れがある。好ましい範囲は、体重1kあたり略0.5μmole〜略2.5μmoleである。これは、70kgの体重に対して、一服あたり略17mg〜略84mgのテトラサイクリン塩酸塩に対応する。
【0115】
本発明の腸溶性組成物中に含まれる多価金属塩の効果的な量は、一服につき、体重1kgあたり略4μmole〜略80μmoleである。上記効果的な量は、一服につき、体重1kgあたり10〜50μmoleであることが好ましい。当該好ましい量は、70kgの体重に対して、一服あたり28mg〜140mgのカルシウムに対応する。
【0116】
腸溶性組成物の例としては、丸薬または錠剤が挙げられ、これらは、以下の1)または2)を含んでいる。つまり、1)75mgテトラサイクリン塩酸塩、200mg炭酸カルシウム、50mg塩化カルシウムおよび50mg塩化マグネシウム;2)40mgテトラサイクリン塩酸塩、200mg炭酸カルシウム、50mg塩化カルシウムおよび50mg塩化マグネシウム。
【0117】
炭酸カルシウムは、水中では実質的に不溶性である。しかしながら、炭酸カルシウムに由来するカルシウムカチオンは、キレート化合物によって可溶化し得る。我々の試験では、等モル量のナトリウムEDTAまたは3倍のモル量の過剰なクエン酸ナトリウムを添加することによって、pH7.5の条件下で、1mLあたり7.5mgの炭酸カルシウムを含む懸濁液(75mM)が完全に可溶化した。それ故に、胃組成物と同様に、特に植物性食物中の成分によって多価金属が隔離(sequestering)されることを防ぐために、炭酸カルシウムが腸溶性組成物中に用いられる。本発明の腸溶性組成物では、炭酸カルシウムは、カルシウムバッファー化合物(calcium-buffering compound)として機能する。消費された食物中のキレート能力の増加は、炭酸カルシウム由来の可溶化されたカルシウムカチオンによって中和される。過剰量のカルシウムが不溶性となり、腸を通過する。炭酸カルシウムを使用する更なる利点は、腸内に存在する抗菌ペプチドが有する抗菌作用にとって、炭酸イオンが重要であることである(Dorschner,2006)。
【0118】
多価金属を含まない腸溶性組成物中に用いられ得るテトラサイクリン化合物の量は、体重1kgあたり略2mole〜略8moleである。
【0119】
本発明の胃放出性組成物および腸放出性組成物は、好ましくは食事とともに、1日あたり1回、2回または3回投与され得る。必要であれば、本発明の胃放出性組成物および腸放出性組成物は、1日あたり4回投与され得る。本発明の組成物は、処置における維持量(maintenance dose)として、処置開始後の初めの4〜8週間は1日あたり2回または3回投与され、それに続く3〜6週間は1日あたり1回投与されることが好ましい。70kgの投与対象にとっての好ましい維持量は、胃組成物の場合は50mg〜40mgのテトラサイクリン化合物であり、腸溶性組成物の場合は30〜20mgのテトラサイクリン化合物である。上記維持量の例は、実施例4および8に示している。
【0120】
本発明におけるテトラサイクリン化合物の1日あたりの量および処方は、炎症の程度に依存する。進行した炎症性疾患を患っている70kgの治療対象の場合、好ましい量としては、胃組成物中のテトラサイクリン化合物は100mgよりも多い(>100mg)ことが好ましく、腸溶性組成物中のテトラサイクリン化合物は60mgよりも多い(>60mg)ことが好ましい。そして、初めの1週間は1日あたり3回投与し、それに続く4〜7週間は1日あたり2回投与することが好ましい。軽度の炎症性疾患を患っている70kgの治療対象の場合、効果的な処置を施すための好ましい量としては、胃組成物中のテトラサイクリン化合物は100mgよりも少ない(<100mg)ことが好ましく、腸溶性組成物中のテトラサイクリン化合物は60mgよりも少ない(<60mg)ことが好ましい。そして、4〜6週間、1日あたり2回投与することが好ましい。
【0121】
本発明の一実施形態では、軽度の酒さ(顔の10個未満の丘疹−吹出物)を煩っている70kgの治療対象には、1日あたり2個の丸薬を投与した。なお、当該丸薬の各々は、胃組成物中に75mgのテトラサイクリン化合物を含んでいる。重症の酒さに対しては、1日あたり2個の丸薬を投与した。なお、当該丸薬の各々は、胃組成物中に160mgのテトラサイクリン化合物を含んでいる。
【0122】
テトラサイクリン化合物を含む本発明の組成物は、丸薬、錠剤、カプセル、および、薬学的組成物としての別の形態へと製剤化され得る。テトラサイクリン化合物および多価金属に加えて、上記組成物は、他の薬学的に活性な化合物および不活性な賦形剤を含み得る。
【0123】
本発明の組成物中に活性な添加化合物として含まれ得る、薬学的に活性な化合物としては、例えば、抗生物質、ステロイド抗炎症薬、非ステロイド抗炎症薬、免疫抑制剤、および、ホルモンが挙げられる。活性な添加化合物の例としては、エリスロマイシン、ヒドロコルチゾン、アスピリン、サイクロスポリン、ヒドロコルチゾン、メトトレキサート、および、サイトカインIL−10が挙げられる。
【0124】
他の活性な添加化合物としては、健康補助食品、ビタミン、および、微量元素を挙げることができる。上記活性な添加化合物は、胃または腸内で放出するための1段放出式組成物、または、自身の組成の一部分を胃内で放出するとともに一部分を腸内でも放出する多段放出式組成物の一部分であり得る。
【0125】
本発明の方法では、上記活性な添加化合物を、本発明の組成物と同時または異なる時に投与され得る個別の組成物として投与し得る。
【0126】
本発明の組成物における不活性な成分としては、小腸内へのテトラサイクリン化合物の運搬および溶解を促進するための、賦形剤、基材、結合剤、および、錠剤化剤が挙げられる。本発明の組成物は、金属カチオンの供給源および溶解剤として加えられる、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムを含む。本発明の組成物には、少量の界面活性剤(例えば、湿潤剤としてのステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム(一服あたり25mg未満))が添加されることが好ましい。界面活性剤は、テトラサイクリンの吸収を促進することが知られている。
【0127】
本発明は、末梢部位における炎症性疾患の処置のために、腸および腸免疫システムを標的とした抗炎症薬を効果的に使用するための方法を包含する。実施例に制限されること無く、テトラサイクリンおよび多価金属を含む抗炎症組成物を使用することによって、新たな方法が体現される。本発明のテトラサイクリン−多価金属組成物の抗炎症作用は、炎症性疾患を十分に緩和または除去する。炎症性疾患は、ヒト集団および動物集団に影響を与える、最も煩う頻度の高い疾患の一つである。炎症性疾患の例としては、糖尿病、肥満症、アテローム性動脈硬化症、白内障、再潅流傷害、癌、サルコイドーシス、感染後髄膜炎、リウマチ熱、全身性エリテマトーデスを含むリウマチ性疾患、変形性関節症、関節リウマチ、にきびおよび酒さの様々な形態を含む皮膚疾患、自己免疫性脳炎、ブドウ膜炎、甲状腺炎、筋無力症、プラス非自己免疫性疾患(plus non-autoimmune diseases)(例えば、喘息、アレルギー、大腸炎および脳卒中)、過敏性腸症候群およびクローン病を含む腸炎症性疾患、てんかんを含むCNS疾患、脳損傷、多発性硬化症、パーキンソン病、および、アルツハイマー病が挙げられる。炎症性疾患の更なる例は、参考文献(Gallin,1999、Hansson,2005、Wellen,2005、Karin,2005、2005、Popovic,2005、米国特許7,122,578、米国特許出願公開2006/0194773)に記載されている。
【0128】
本発明の組成物および方法は、炎症および炎症性疾患のより効果的な処置を可能にする。例えば、実施例1の組成物(150mgのテトラサイクリン)を6週間服用した後の、関節炎および変形性関節症を患った患者は、病状が著しく緩和されているとともに、痛みおよび不快感も緩和されている。実施例5の組成物を4週間服用した後の、炎症性の酒さを患った患者は、当該疾患の顔面に出る症状の全てが、除去され得る。
【0129】
本発明の別の実施形態では、実施例1に記載されている150mgのテトラサイクリン塩酸塩を含む丸薬を1日2回服用する、関節リウマチを患った患者は、患者および医者の広範なアセスメント(関節の腫れおよび圧痛、赤血球の蓄積速度、および、患者による痛みの評価を含む)にて評価されるように、当該疾患を著しく緩和される。本発明のテトラサイクリン−多価金属処置の同様の有益な薬効が、変形性関節症の処置において観察される。
【0130】
本発明の組成物の別の利点は、胃腸管を刺激しないことである。これらの胃腸における副作用の防止は、本発明の組成物中に存在する多価金属に起因する。
【0131】
本発明の別の利点は、テトラサイクリン組成物と金属とが同時に服用されることである。これによって、胃腸の炎症を防止することができる。また、食事とテトラサイクリン服用との間に、1、2時間待つ必要が無い。このことは、特に朝の時間帯に都合が良い。必要であれば、本発明の組成物は、食事を伴わずに投与され得る。本発明における投与計画の柔軟性は、薬物療法のコンプライアンスを増加させる。
【0132】
長期にわたる抗生物質に使用は、胃腸管の微生物(microflora)を変化させる。本発明の処置は、当該副作用を最小限に抑える。多価金属(特に、カルシウムおよびマグネシウム)の存在は、小腸内の共生細菌に対するテトラサイクリンの抗菌作用を減少させる。幾つかの細菌に対して、テトラサイクリンは、カルシウム塩およびマグネシウム塩の存在下において30倍以上も効果が低い(D‘Amoto,1975)。カルシウムおよびマグネシウムの存在下では、感受性細菌株に対するテトラサイクリンの抗菌濃度(subantimicrobial concentration)は、予想よりも相当高い(例えば、米国特許7,008,631および米国特許7,014,858など)。
【0133】
加えて、本発明の組成物および方法は、メントールの使用を包含する。メントールは、副作用(例えば、本発明の組成物を服用した幾人かの患者において観察される、過剰な胃腸ガスおよび膨満感など)を緩和する。メントールは、公知の駆風薬である。本出願では、メントールは、腸内におけるガスの発生を抑制するために用いられる。メントールの最小有効量は、1日あたり1服3mgであり、当該量は、1日あたりの投与量にして略4mg〜8mgに対応する。メントールは、本発明の組成物の一部分であってもよく、別の組成物として独立して投与されてもよい。メントールは、様々な薬剤および処置によって誘導されるガスおよび膨満感に関連する不快感を軽減するために有用であり得、このことは、本発明の組成物および処置に制限されない。
【0134】
提案されたメカニズムに制限されること無く、抹消部位における炎症性疾患に対するテトラサイクリンの治療効果は、腸免疫システムと食物成分および/または細菌との相互作用に対するテトラサイクリンの効果によって実現されると仮定される。テトラサイクリン化合物の抗炎症作用は、腸免疫システムの特化された白血球および補助細胞の機能に影響を与えることが提案されている。
【0135】
食物成分および細菌が、腸内において抗原となることが周知である。抗原の経口投与は、有害な抗原に対する全身性および/または局所性の免疫寛容(経口免疫寛容)の発達を誘導する。経口免疫寛容では、細胞性応答および液性応答(IgE,IgGおよびIgM)は、容認されるようになる。経口免疫寛容および自己免疫疾患の試験では、過剰量のタンパク質抗原(例えば、コラーゲンおよびオボアルブミン(ovoalbumin))が経口投与された。これらの試験の結果は、哺乳類の自己免疫疾患(関節炎、1型糖尿病、および、アルツハイマー病のモデルを含む)の穏やかな抑制のみを示した(Worbs,2006、Faria,2005;Toussirot,2002;米国特許6,010,722)。今日まで、これらの知見に基づいた治療は、全く実施されていない。
【0136】
本発明は、食物によって誘導される別の現象も開示している。長期にわたる過剰量の特定の食物成分の摂取は、治療上良くなく、プロ炎症性の変化を引き起こし得る。このことは、例えば、炎症性の酒さを患っている人々にて観察され得る。1日で略150gのトマトペーストを含む食事を摂取した人は、当該食事の3週間後に、トマト製品に対する永続的に感受性となる。別の例では、過剰量のコーヒー(1日最大6カップ)を2ヶ月間摂取すると、この人は、コーヒーに対して感受性となる。両方の場合における獲得された感受性は、誘因物質(例えば、トマト製品またはコーヒーなど)の消費によって引き起こされる皮膚における炎症性変化として観察され、丘疹(papules)および吹出物(pustules)という形態をとる。これらの観察は、過剰量のコラーゲンおよびオボアルブミン(ovoalbumin)の長期にわたる投与の利点に対して問題を提起する。本発明では、食物によって引き起こされる炎症性の変化が、テトラサイクリン化合物によって、より好ましくはテトラサイクリン−多価金属組成物によって抑制され得ることを開示している。食物によって引き起こされる酒さを抑えるための1日あたりの量は、カルシウムおよびマグネシウムを含む組成物中に含まれるテトラサイクリンまたはドキシサイクリンに関していえば、50mg−150mgである(実施例1〜3および5〜7)。
【0137】
本明細書中には、テトラサイクリン化合物が、食物の攻撃に対する腸免疫システムの病的な応答を阻害し、その結果、抹消部位における炎症性疾患を緩和することが記載されている。本発明において開示されるテトラサイクリンの作用は、炎症性疾患を患った患者の体内における、プロ炎症性食物成分に対する腸免疫システムの寛容誘導として記載され得る。本明細書中にはまた、抹消部位に症状が出る炎症性疾患は、実際は腸免疫システムの疾患であって、そのように処置されるべきであることが記載されている。このメカニズム中では、炎症を生じている抹消部位内で検出される様々な病的因子および微生物は、炎症性疾患を引き起こす二次的因子である。抹消部位に焦点をあてた処置は、腸免疫システムの影響を顕著に受けている疾患を緩和することはできるが、大幅に抑制または治療することはできない。
【0138】
腸の免疫学的作用は、しばしば、正当に評価されない。しかしながら、腸は、体内において最もリンパ系組織に富んだ器官である。ヒトの腸は、1メートルあたり1012個のリンパ球細胞を含んでいる(Faria,2005)。腸のリンパ系組織は、パイエル板および腸間膜腺(mesenteric gland)内に存在し、腸壁内に特化されたリンパ球が存在している。特定の食物成分に対する腸免疫システムの病的応答は、活性化されたB細胞およびT細胞の蓄積を増進させ、血中および標的部位(例えば、酒さにおける皮膚、または、関節リウマチにおける関節)中のIgG、IgEおよび/またはIgMの濃度を上昇させ得る。健康な被験者では、UVによって皮膚中に誘導される病的な小さな変化、または、関節内への細菌感染は、正常な免疫反応を誘導し、当該変化は緩和される。過剰に応答する(over-responsive)免疫システムを有する被験者では、酒さまたは関節リウマチにおけるのと同様に、些細な変化が、白血球の蓄積の増大、腫れ、および、患部における他の炎症症状を引き起こす。抗生物質を用いた処置は、炎症部位において炎症過程を緩和することによって、幾分かは患者を救済し得る。しかしながら、炎症の根本的な原因である過剰に応答する腸免疫システムは、抗炎症化合物(例えば、テトラサイクリンなど)を腸に作用させることによって効果的に処置され得る。
【0139】
Pillemer,2003およびSt.Clair,2001に記載されている試行が物語っているように、炎症における腸の制御機能は、静脈注射を経口投与に換えることによってテトラサイクリンの効果を向上させることを目的とした試行が成功しないことを物語っている。〔発明の背景〕の欄にて示したように、テトラサイクリンの静脈内投与はしばしば、抗炎症薬としての、これら薬剤の運搬経路にゆだねられる。別の例は、米国特許5,919,775(column 10,par.10)である。静脈内注射は、腸をテトラサイクリンに曝すことを著しく制限し、それ故に、これら薬剤の抗炎症作用を減少させる。炎症性疾患の病因に対する理解がなければ、より効果的な炎症治療の実現を阻害し、そして、患者を不必要な処置に曝すことになる。
【0140】
本発明は、テトラサイクリンの抗炎症作用について記載している。テトラサイクリンの抗炎症作用は、細菌および微生物によって引き起こされる感染症の処置に、テトラサイクリン化合物を使用することとは関連していない。感染症の処置は、多価金属を同時に投与すること無く、テトラサイクリンの経口投与または静脈内投与の何れかを必要とし得る。
【0141】
〔実施例〕
実施例中に記載された本発明の胃丸薬組成物および腸溶性丸薬組成物は、1日あたり2〜3回投与され、好ましくは、食事(朝食、昼食および夕食)と共に投与される。これらの組成物を投与してから4〜8週間後、炎症性疾患は、著しく緩和されている。
【0142】
以下に記載する実施例の組成物成分は、US FDA規則に従って、丸薬として製剤された。USP,NF品質の成分は、Spectrum,Gardena,CAから入手し、Eudragit L100 55は、Rhom GmbH.KG,Darmstadt,Germanyから入手した。腸溶性丸薬組成物は、当該組成物の表面1cmあたり、3mgのEudragit L100 55を用いてコーティングされた。
【0143】
〔実施例1〕胃丸薬組成物
150mgのテトラサイクリン塩酸塩、300mgのCaCO、50mgのCaCl二水和物、100mgの酸化マグネシウム、5mgのクロスカルメロース(croscarmellose)、15mgのステアリン酸、5mgのステアリン酸マグネシウム。
【0144】
〔実施例2〕胃丸薬組成物
80mgのドキシサイクリン塩酸塩、200mgのCaCO、50mgのCaCl二水和物、75mgの酸化マグネシウム、5mgのクロスカルメロース、15mgのステアリン酸、5mgのステアリン酸マグネシウム。
【0145】
〔実施例3〕胃丸薬組成物
50mgのドキシサイクリン塩酸塩、150mgの炭酸カルシウム、50mgのCaCl二水和物、75mgの酸化マグネシウム、5mgのクロスカルメロース、15mgのステアリン酸、5mgのステアリン酸マグネシウム。
【0146】
〔実施例4〕胃保全丸薬組成物
40mgのテトラサイクリン塩酸塩、150mgの炭酸カルシウム、50mgのCaCl二水和物、75mgの酸化マグネシウム、5mgのクロスカルメロース、15mgのステアリン酸、5mgのステアリン酸マグネシウム。
【0147】
〔実施例5〕腸溶性丸薬組成物
75mgのテトラサイクリン塩酸塩、200mgのCaCO、50mgのCaCl二水和物、50mgの塩化マグネシウム、50mgの微結晶性セルロース、4mgのクロスカルメロース、12mgのステアリン酸、4mgのステアリン酸マグネシウム。
【0148】
〔実施例6〕腸溶性丸薬組成物
40mgのテトラサイクリン塩酸塩、200mgのCaCO、50mgのCaCl二水和物、50mgの塩化マグネシウム、85mgの微結晶性セルロース、4mgのクロスカルメロース、12mgのステアリン酸、4mgのステアリン酸マグネシウム。
【0149】
〔実施例7〕腸溶性丸薬組成物
40mgのドキシサイクリン塩酸塩、200mgのCaCO、50mgのCaCl二水和物、50mgの塩化マグネシウム、85mgの微結晶性セルロース、4mgのクロスカルメロース、12mgのステアリン酸、4mgのステアリン酸マグネシウム。
【0150】
〔実施例8〕腸溶性腸保全丸薬組成物
30mgテトラサイクリン塩酸塩、200mgのCaCO、50mgのCaCl二水和物、50mgの塩化マグネシウム、50mgの微結晶性セルロース、4mgのクロスカルメロース、12mgのステアリン酸、4mgのステアリン酸マグネシウム。
【0151】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のテトラサイクリン化合物と、テトラサイクリン化合物の吸収を阻害する1つ以上の効果的な阻害剤とを含む、経口投与するための薬学的組成物。
【請求項2】
天然テトラサイクリン、半合成テトラサイクリン、合成テトラサイクリンおよびこれらの組み合わせから選択されるテトラサイクリン化合物を含む請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
1服あたり、上記テトラサイクリン化合物を略0.5mmole〜略4mmole含む請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
1服あたり、上記テトラサイクリン化合物を略0.2mmole〜0.5mmole含む請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
1服あたり、上記テトラサイクリン化合物を略0.02mmole〜0.2mmole含む請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
テトラサイクリンの吸収を阻害する阻害剤は、1つ以上の無毒性の多価金属を含み、
上記多価金属は、塩の形態であるか、または、胃もしくは腸の中で塩に変換され得る化合物である請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
上記多価金属のモル比が、テトラサイクリン化合物1moleあたり、略10moleよりも高く略75moleよりも低い請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
上記多価金属のモル比が、テトラサイクリン化合物1moleあたり、略15mole〜略40moleである請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
上記多価金属は、カルシウム、マグネシウム、またはこれらの組み合わせである請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
更に、無毒な量の鉄、亜鉛、またはこれらの組み合わせを含む請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
更に、薬学的に活性な添加物を含む請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
上記活性な添加物は、抗生物質、ステロイド抗炎症性化合物、非ステロイド抗炎症性化合物、ホルモン、健康補助食品、ビタミン、微量元素、メントール、およびこれらの組み合わせから選択される請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
更に、基材、結合剤、潤滑油、錠剤分解物質、錠剤化剤、およびこれらの組み合わせから選択される賦形剤を含む請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
固体状、ペースト状、粉末状、ゲル状、懸濁液状、または溶液状の形態である請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
胃組成物として製剤されている請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
腸溶性組成物として製剤されている請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
上記テトラサイクリン化合物および多価金属の腸内における放出は、pH依存的であり、
上記放出は、pHが略5〜略7の範囲において活性化される請求項16に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
非タンパク質性の抗炎症性化合物を投与して、当該抗炎症性化合物の抗炎症活性を小腸内で発揮させる工程を含む、末梢部位における炎症性疾患の処置法。
【請求項19】
上記炎症性疾患は、腸内に存在する食物由来または細菌由来の化合物によって誘導または亢進されたものである請求項18に記載の処置法。
【請求項20】
テトラサイクリン化合物と、当該テトラサイクリン化合物の胃における吸収を阻害する阻害剤とを含む成分を投与して、当該テトラサイクリン化合物の抗炎症活性を腸内で促進する工程を含む、末梢部位における炎症性疾患の処置法。
【請求項21】
上記成分は、経口投与される胃組成物または経口投与される腸溶性組成物の一部分である請求項20に記載の処置法。
【請求項22】
上記テトラサイクリン化合物は、当該テトラサイクリン化合物の胃における吸収を阻害する阻害剤を含む経口投与組成物の一部分である請求項20に記載の処置法。
【請求項23】
上記テトラサイクリン化合物は、天然テトラサイクリン、半合成テトラサイクリン、合成テトラサイクリンおよびこれらの組み合わせから選択される請求項20に記載の処置法。
【請求項24】
上記テトラサイクリン化合物は、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、ドキシサイクリン、薬学的に許容可能なこれらの塩、およびこれらの混合物の中から選択される請求項23に記載の処置法。
【請求項25】
上記テトラサイクリンの吸収を阻害する阻害剤は、1つ以上の無毒性の多価金属を含み、
上記多価金属は、塩の形態であるか、または、胃もしくは腸の中で塩に変換され得る化合物である請求項20に記載の処置法。
【請求項26】
上記成分は、食事とともに投与される請求項20に記載の処置法。
【請求項27】
上記成分は、食事とともに投与されない請求項20に記載の処置法。
【請求項28】
処置される上記疾患は、糖尿病、肥満症、アテローム性動脈硬化症、白内障、再潅流傷害、癌、感染後髄膜炎、リウマチ熱、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、にきび、酒さ、自己免疫性脳炎、ブドウ膜炎、甲状腺炎、筋無力症、喘息、アレルギー、結腸炎、脳卒中、てんかん、脳損傷、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、過敏性腸症候群、およびクローン病から選択される請求項20に記載の処置法。

【公表番号】特表2010−522240(P2010−522240A)
【公表日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501103(P2010−501103)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/057646
【国際公開番号】WO2008/118744
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(507059613)モレキュラー リサーチ センター インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】