説明

炭スポンジ

【課題】 空気や水の流通を阻害しないでVOCなどの化学物質や土埃などの比較的に大きな粒子まで吸着できる高効率のフィルターを得るためになされたものであり、
【解決手段】 スポンジの骨格構造部全部に炭塗料を接着して乾燥したものであり、スポンジ骨格構造部全てが炭粉混合物で覆われていて、スポンジの多孔質で柔軟な特性と、炭の吸着作用、遠赤外線放出作用などの特性を併せて有することが特徴である炭スポンジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
炭スポンジフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
特願2004−115972に、一端面から他端面に貫通する多数の通気路を有するハニカム構造又はダンボール構造の板状部材の表面及び通気路内面に、木炭粉末とヨウ素化合物の皮膜を形成した複数枚のフィルター基材を、該複数枚のフィルター基材の通気路同士が、ズレるように積層したフィルター基材積層体として構成されるものがある。
【0003】
特願2007−013529には、上記特願2004−115972に発電機または接地電極のいずれか一方または両方を接続させることによって、木炭の効力を長時間に渡って維持しようと試みたものがある。
【0004】
特願2004−046953には、パルプ2と活性炭粉末とを水中で攪拌混合し、この混合物を成形型内に入れて所定形状に圧縮成形し、乾燥固化するものはある。
【0005】
このように、従来はより優れた吸着性能を得ようとすると、炭層を厚くしなければ成らず、厚くすると気体や液体の流通を著しく阻害するため、炭層を有するハニカム構造フィルターがよりよいものであった。
【0006】
しかし、気体や液体の流通を妨げない点では、貫通した穴を有するハニカム構造物が望ましいが、一定の距離が無ければ優れた吸着機能を得ることができなかった。
【特許文献1】特願2004−115972
【特許文献2】特願2004−046953
【特許文献3】特願2007−013529
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
理想的なフィルターは、空気や液体の流通を妨げないで、少ない体積で空気や水を浄化できる高効率浄化機能を有し、凹凸がある面に対応できる柔軟性を有し、目詰まりが無く、粉落ちしない、コストの安いものであり、耐水性を有していて液体、空気双方の浄化ができるものである。
【0008】
このようなフィルターは現存しない理想的なものであるが、スポンジのような柔らかい連続気泡体構造であって、骨格構造部が炭であれば前記の理想的なフィルターの条件を概ね満足できる。
【0008】
スポンジは、本来は水生生物の海綿、特に加工して入浴用などに用いられるモクヨクカイメンおよびその加工品のことであるが、現在の日本社会では、これを模した人工物の製品をもっぱら指し、合成スポンジと称している。現在はほとんどのものがポリウレタン等のプラスチックを発泡成形して作られている。本発明で表すスポンジは厳密には合成スポンジである。
【0009】
スポンジは内部に細かな孔が無数に開いた多孔質の柔らかい物質であり、一般的なスポンジでは、孔の直径は約0.3〜0.6mmで、孔を形成する骨格構造部の骨格径は約10〜20マイクロメートルであり、孔が連続している連続気泡体である。ハニカム構造物のような貫通した穴と違って、それぞれ独立した孔が連続して連なった構造であるため、空気や液体が通過するときには孔を形成しているスポンジ骨格構造部に接触、衝突しながら移動することが特徴である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
炭塗料をスポンジ骨格構造部に接着させて乾燥すると、スポンジ骨格構造部は炭粉混合物で覆われる。空気や液体は炭粉混合物に接触、衝突しながら移動するため、例えば厚み10mmのスポンジを通過する空気は孔径を0.4mmとすると、概ね25回炭混合物層に衝突する。このように、貫通した穴を有するハニカム構造物に比べ吸着性が飛躍的に向上する。
【0011】
孔が比較的に大きいために炭粉混合物の含有量を多くすることができ、40g重量のスポンジに120g重量の炭粉混合物を接着しても、多孔質性を維持し、優れた通気性を確保できる。
【0012】
また、スポンジは、液体にひたすと孔内の空気と置換される形で液体を吸い取り、また外部からの力で容易に放出する特性を有する。
【0013】
炭塗料中で圧縮開放すると、空気と置換される形で炭塗料が吸着されスポンジ全般に含まれる。空中に出たところで絞ると、余分な炭塗料が放出され、スポンジ構造骨格部周辺にだけは塗料が残り接着して、スポンジ骨格構造部を炭塗料が覆う。この時、炭塗料の濃度や絞りを調整すれば、炭粉混合物量を調節することが出来るため、通気性を阻害しないで吸着性に優れるような炭粉混合物量に設定することができる。
【0014】
近年、発明者によって、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤と炭粉で構成された炭塗料が開発された。この炭塗料は接着性に優れていて、多くのものに接着可能であり、柔軟性に富むためスポンジの柔軟性に順応して伸縮し剥離しない。炭粉混合物中の炭粉比率は60パーセント以上であり、吸着性も確保できる。
【0015】
スチレン・ブタジエンゴム系ラテックス接着剤と炭粉で構成された炭塗料も柔軟性に優れているため、スポンジの柔軟性に順応して伸縮し剥離しない。炭粉混合物中の炭粉比率は60パーセント以上であり、吸着性も確保できる。
【0016】
スポンジの孔径は約0.3mm以上であるため、炭粉の粒径が0.3mm未満の炭粉を使用すれば、スポンジの特性を利用して、満遍なく炭粉混合物がスポンジ骨格構造部を覆うように接着できる。
【0017】
請求項1はスポンジに炭塗料を吸収させて、スポンジ骨格構造部を炭粉混合物で覆ったもので、目視では炭で構成されている多孔質物と見えるものである。スポンジ骨格構造部全てが炭粉混合物で覆われていて、スポンジの多孔質で柔軟な特性と、炭の吸着作用、遠赤外線放出作用などの特性を併せて有する。
【0018】
通過する気体や液体と衝突、接触する炭混合物層の表面積が飛躍的に増加し、通気性に優れるため、浄化処理量、浄化機能伴に飛躍的に向上することが特徴である。更に、スポンジの多孔質で柔軟な特性と、炭の遠赤外線放出作用などの特性を併せて有することも特徴である。
【0019】
炭混合物重量はスポンジ重量の3倍程度が望ましいが、1.5倍以上であれば骨格構造部全てを炭混合物で覆うことができ、優れた浄化機能を得ることができる。
【0020】
請求項2はスポンジ骨格構造部を炭粉で覆うために使用する炭塗料であり、望ましくはエチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤を炭粉と混合したものであるが、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系ラテックス接着剤のいずれか又は混合したものと、炭粉を混合して得た炭塗料を使用する。
【0021】
炭粉は用途に応じて活性炭、木炭、竹炭のいずれか又は混合して使用する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の炭スポンジは、空気や液体の流通を妨げない、少ない体積で空気や水を浄化できる高効率浄化機能を有する、凹凸がある面にも使用できる柔軟性を有する、目詰まりが無い、粉落ちしない、水中で炭粉が溶出しない耐水性を有する、コストの安いものであり、概ね理想的なフィルターである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤が構成要素で樹脂固形物重量比率が30%重量の炭塗料(5)を使用して、図1に示すように、縦300mm、横300mm、厚み30mmで40g重量のスポンジ(1)を投入し、圧縮開放ロール(2)で2mmまで圧縮開放してスポンジ中の孔に炭塗料を充満する。次に、空気中に移動して、絞りロール(3)で3mmまで圧縮開放して余分な炭塗料を排出する。表面に出ている炭粉混合物を除いて平面に仕上げるため仕上げガイド(4)を通して、その後乾燥させると160g重量になり、結果スポンジ骨格構造部を覆う炭混合物重量は120g、炭粉重量は約83gである。
炭塗料は流動性を増すために、炭塗料に水を加えて、炭塗料:水=2:1に希釈したものを使用した。
【0024】
【実施例】
【0025】
アクリルエマルジョン接着剤と炭を混合した炭塗料で、上記発明を実施するための最良の形態と同様にして実施すると、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤やスチレン・ブタジエンゴム系ラテックス接着剤に比べると炭スポンジが硬くなるが、スポンジ骨格構造部を炭混合物で覆うことはでき、一定の柔軟性もあり通常に使用することには問題はない。しかし、スポンジを激しく曲げ圧迫すると順応できず炭混合物が剥離して粉塵が生じる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
主な用途は空気や水の浄化であるが、吸着機能、遠赤外線放出機能、吸湿機能、吸音機能、柔軟性を有するため、寝具や衣類や防音材に使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】は炭スポンジの概略製造工程を表す
【符号の説明】
【0028】
1 スポンジ
2 圧縮開放ロール
3 絞りロール
4 ガイド
5 炭塗料
6 炭塗料容器
7 仕上げガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポンジの内外面全ての骨格構造部を炭粉比率が60パーセント以上の炭粉混合物で覆い、重量の60パーセント以上が炭混合物で構成されたものである、スポンジの骨格構造を用いて、柔軟な炭混合物の連続気泡体構造を実現させたことが特徴である炭スポンジ。
【請求項2】
請求項1でスポンジの骨格構造部を覆う炭混合物を得るための炭塗料は、エチレン酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系ラテックス接着剤のいずれか又は混合したものと、炭粉を混合して得た炭塗料であり、炭塗料は乾燥するとスポンジの柔軟性に順応できる炭粉混合物になる性質を有している。

【図1】
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【公開番号】特開2010−84115(P2010−84115A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278840(P2008−278840)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(598095042)株式会社森林研究所 (24)
【Fターム(参考)】