説明

炭化水素の精製回収のための改良された蒸留シーケンス

本発明は、分解ガスからのエチレンの分離精製のための改良された蒸留シーケンスである。炭化水素供給物はC2分配器塔に入る。C2分配器塔の頂部はエチレン分配器塔に熱的結合されており、C2分配器塔の塔底流は脱エタン装置塔に送液される。C2分配器塔は慣用の再沸器を利用する。エチレン分配器の頂部は脱メタン装置塔に熱的結合されており、エチレン分配器の塔底液体はC2スプリッター塔に送液される。エチレン分配器塔は慣用の再沸器を利用する。脱エタン装置及びC2スプリッター塔もまた熱的結合されていて、C2分配器塔、エチレン分配器塔及び脱メタン装置塔よりも実質的に低い圧力で運転される。あるいは、炭化水素供給物は脱エタン装置塔に入る。脱エタン装置の頂部はエチレン分配器塔に熱的結合されていて、エチレン分配器塔は慣用の再沸器を利用する。エチレン分配器塔の頂部は脱メタン装置塔と熱的結合されていて、エチレン分配器塔の塔底液体はC2スプリッター塔に送液される。C2スプリッター塔は、エチレン分配器塔、脱メタン装置塔及び脱エタン装置塔よりも実質的に低い圧力で運転する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
オレフィン類プラントからの製造物を精製するために蒸留を使用することは当該分野で周知である。慣用の蒸留スキームは、各蒸留塔を用いて均質系の隣接する成分間を厳格に分離させる「シャープスプリット(sharp-split)」蒸留を典型的に利用している。シャープスプリット蒸留シーケンスにおいて、各成分は塔頂流又は塔底流のいずれかとして単一生成物流で蒸留塔を出る。シャープスプリット蒸留における固有の非効率性が、回収可能な炭化水素成分を製造するために必要な相変化数を考慮することにより観察され得る。例えば、エチレンなどのC1+炭化水素類を典型的に含む炭化水素ガス供給物は、脱メタン装置(demethanizer)内で最初に凝縮され、次いで脱エタン装置(deethanizer)内で再度気化されて、最後にC2スプリッターからの液体生成物として再び凝縮される。全エチレンについて全3種の完全相変化が達成されなければならない。同数の相変化がエタン及びプロピレンに当てはまる。
【0002】
エチレンなどの炭化水素成分を製造するために必要な相変化数は、慣用のシャープスプリット(sharp-spli)蒸留における改善を利用することにより減少され得る。このような改善は分配型(distributed)蒸留として知られている。分配型蒸留シーケンスにおいて、1種以上の供給物成分は、1以上の蒸留塔の頂部及び底部の間で分散される。このようなシーケンスは、慣用のシャープスプリットシーケンスよりも運転するために要するエネルギーは少ない。さらに、エネルギー最適化、すなわち各塔内に分配する成分の構成比のために追加の自由度を与える。最後に、塔の熱的結合のコンセプトもまたオレフィン類分離プラントに適用することができ、エネルギー要求をさらに減少させる。熱的結合された塔は、1塔用の再沸又は凝縮量の少なくとも幾分かが他の塔からの気体又は液体サイド抜き出しにより与えられるような塔である。そうすることで、熱力学的に望ましくない「再混合(remixing)」現象を最小化することができる。
【0003】
熱的結合の特徴を組み入れる分配型蒸留の議論は、Manley(米国特許U. S. Patent No. 5,675, 054号明細書)に見られる。Manleyは、C2類分配器とエチレン分配器との完全な熱的結合を利用するフロントエンド脱プロパン装置(depropanizer)エチレン回収精製プロセスを示す実施形態を含むエチレン分離用の完全に結的結合した実施形態を記載する。塔の熱的結合は、この従来のプロセスの請求されたエネルギー効率に不可欠である。Manlyの実施形態に挙げられた塔のすべてが、塔、交換器及び配管を通じての典型的な流体圧力降下に起因する圧力の差を伴い、実質的に同じ圧力で運転することに留意することが重要である。塔間の実質的な圧力差は、塔間での蒸気圧縮又は液体ポンピングを必要とするであろう。
【0004】
Manleyは、このような完全に結合された分配型蒸留システムが熱的に結合されていないシステムよりも少ないエネルギー要求量であると記載する。このような完全に熱的結合された配置は、結合を持たないか又はわずかに部分的に熱的結合されたシーケンスよりもエネルギー効率がよいだろうと慣用の知見は示唆する。
【0005】
驚くべきことに、このような完全分配型蒸留シーケンスは本発明ほどエネルギー効率がよくないことを我々は見いだした。Manleyにより教示される熱的結合の2種、特にC2分配器塔と脱エタン装置塔との間の熱結合及びエチレン分配器及び脱エタン装置もしくはC2スプリッターの間の熱的結合は、慣用の分解反応塔に慣用の冷蔵設備を組み入れる場合に、実際にプロセスのエネルギー要求量を増加させる。したがって、本発明の蒸留システムは、これらの結合を含まず、エネルギー節約の点でManleyのものと比較して予測できなかった改良を示す。
【0006】
さらに、これら2つの熱的結合を除くことで脱エタン装置/C2スプリッターを蒸留シーケンスの残りの部分よりも低くより最適な圧力で運転することができることを知見した。一方、Manleyにより記載された完全な熱的結合は、すべての塔をほぼ同じ圧力で運転すること又は塔間のエネルギー集約的蒸気再圧縮を利用することを必要とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面において、水素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン及び場合によってはより重い成分を含む炭化水素供給物はC2分配器に導入されて、第1塔頂流及び第1塔底流を形成する。第1塔頂流はエチレン分配器に導入され、第1塔底流は脱エタン装置に導入される。C2分配器及びエチレン分配器は熱的結合されているが、C2分配器及び脱エタン装置は熱的結合されていない。C2分配器は慣用の再沸交換器を利用し、エチレン分配器からの液体サイド抜き出し流で還流される。エチレン分配器への炭化水素供給物は、第2塔頂流及び第2塔底流として分配される。第2塔頂流は脱メタン装置に導入されて、第4塔頂流及び第4塔底流を製造し、第2塔底流はC2スプリッターに導入される。エチレン分配器及び脱メタン装置は熱的結合されているが、エチレン分配器及びC2スプリッターは熱的結合されていない。第4塔頂流は水素回収のために送られ、第4塔底流はエチレンとして回収される。エチレン分配器は慣用の再沸交換器を利用し、脱メタン装置からの液体サイド抜き出し流で還流される。脱エタン装置への炭化水素供給物は第3塔頂流及び第3塔底流として分配される。第3塔頂流はC2スプリッターに導入され、第3塔底流はプロパン及びプロピレン成分回収のためにC3スプリッターに導入され得る。脱エタン装置及びC2スプリッターは熱的結合されている。C2スプリッターへの炭化水素供給物は、回収可能なエチレンとしての第5塔頂流及びエタン回収用の第5塔底流として分配される。
【0008】
本発明の別の側面において、水素、メタン、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン及び場合によってはより重い成分を含む炭化水素供給物は脱エタン装置に導入されて、第1塔頂流及び第1塔底流を製造する。第1塔頂流はエチレン分配器に導入されて、第2塔頂流及び第2塔底流を製造する。脱エタン装置はエチレン分配器からの液体抜き出し流で還流される。第2塔頂流は脱メタン装置に導入されて、第3塔頂流及び第3塔底流を製造する。第3塔頂流は水素回収のために送られ、第3塔底流はエチレンとして回収される。エチレン分配器は脱メタン装置からの液体抜き出し流で還流される。加えて、エチレン分配器は再沸交換器で再沸される。第2塔底流はC2スプリッターに導入され、第4塔頂流及び第4塔底流を製造する。第4塔頂流はエチレンとして回収され、第4塔底流はエタン回収のために送液される。
【0009】
ある種の実施形態に関して説明のためにのみプロセスを記載する。しかし、本発明の範囲内において、説明された実施形態に対して種々の変更、追加及び改良が当業者によりなされてもよいことが認められる。
【実施形態】
【0010】
図1を参照すると、プロセスへの供給物流は脱プロパン装置塔(図示せず)からの塔頂流として始まり、流100を介してプロセスに流入する。流100は水素、メタン、エタン、エチレン、プロパン及びプロピレンの混合物を含む。流100は、場合によっては、アセチレンの本質的に全量並びにメチルアセチレン及びプロパジエンの部分を除くことを目的として水添反応器を通過したものでもよい。脱プロパン装置塔頂流は、場合によっては、流101として塔C101に流入する前に交換器E101内で冷却される。
【0011】
塔C101は、C2類分配器として作用する蒸留装置であり、棚段式塔もしくは充填式塔のいずれでもよい。塔頂流は流102に流出し、塔供給物中に存在する水素及びメタンの本質的に全量並びにエタン及びエチレンの一部を含む。塔C101は、プロパンもしくはプロピレンが流102内にほとんど含まれないか又は含まれないように制御される。C101の塔底流は流112内に流出し、塔供給物内に存在するプロパン及びプロピレンの本質的に全量並びにエチレン及びエタンの残余を含む。塔C101は、塔底流中にメタンがほとんど含まれないか又は含まれないように制御される。
【0012】
流102は、エチレン分配器として作用する塔C102に送られる。塔C101及びC102は熱的結合されており、流103として示されるC102からの液体サイド抜き出し流がC101への還流を与える。流112は、流103として示される脱エタン装置塔として作用する流103として示される塔C104に送液される。塔C101として示されるC2類分配器及び塔C104として示される脱エタン装置は熱的結合されていない。塔C101は、再沸交換器E102で慣用の態様で再沸される。驚くべきことに、塔C101及びC104の間の熱的結合を除くことがプロセスのエネルギー効率を実際に改良することを見いだした。また、本発明にとって重要なことは、流112の圧力が塔C104に送液される前に減少することである。図は、この圧力減少が圧力降下弁V102を通して達成されることを示すが、他の方法を利用することもでき、当業者に知られている。
【0013】
C102の塔頂流は流104として除かれ、塔底流は流108として除かれる。C102の塔頂流は水素、メタン及びエチレンを含み、脱メタン装置塔C103へ送液される。塔C102及びC103は熱的結合されており、流105として示されるC103からの液体サイド抜き出し流はC102への還流を与える。塔C103は、図1にE104として示されている1以上のサイド凝縮器を用いることもできる。
【0014】
C102の塔底流は、エチレン及びエタンを含み、エチレン/エタン(C2)スプリッター塔C105へ送液される。塔C102は、C104又はC105のいずれとも熱的結合されていない。代わりに、塔C102は、再沸交換器E103で慣用の態様で再沸される。驚くべきことに、塔C102及びC104又はC102及びC105の間の熱的結合を除くことがプロセスのエネルギー効率を実際に改良することが見いだされた。また、本発明にとって重要なことは、流108の圧力が塔C105に送液される前に減少することである。図は、この圧力減少が圧力降下弁V101を通して達成されることを示すが、他の方法を利用することもでき、当業者には知られている。
【0015】
C104の塔頂流はエチレン及びエタンの混合物を含み、流114内に流出する。この流は塔C105に送られる。塔C104及びC105は熱的結合されており、流115として示されるC105からの液体サイド抜き出し流はC104への還流を与える。塔C104及びC105は、塔C101、C102及び/又はC103の圧力よりも大幅に低い圧力で運転される。流116として示される塔C104の塔底流は、プロピレン及びプロパンの本質的に全量を含み、C3スプリッター(図示せず)に送液される。
【0016】
C105の塔頂流は製品品質エチレンを含み、流110として取り出される。塔C105は復水交換器E107で慣用の態様で還流される。塔C105は交換器E108で再沸され、塔底流は分解炉に再循環され得るエタンを含む。塔C105を設計することができる多くの方法がある。図1は、C105が再沸交換器E108を用いて慣用の態様で再沸される単純な設計を示す。
【0017】
C103の塔頂流は水素、メタン及び少量のエチレンを含む。これらは冷却され、少なくとも部分的に凝縮されてC103への還流を与える。図1は、これが標準的な分縮交換器E105及び分離ドラムで達成されることを示す。還流を提供する他の方法を用いることもでき(例えば、デフレグメーター)、当業者にはよく知られている。分縮器からの塔頂蒸気は流106内に流出し、低温区域に送られて冷凍有価値製品(refrigeration value)及び場合によっては水素製品を回収する。
【0018】
【表1】

【0019】
従来技術に反して、塔C103及びC105は熱的結合されていない。C103の塔底流は、再沸交換器E106で慣用の態様で再沸される。塔底流107は製品品質エチレンを含む。図1に示す実施形態は従来技術の設計を凌駕する顕著なエネルギー益を有する。このようなエネルギー節約の原因となる特徴は、C2類分配器の底部と脱エタン装置との熱的結合の欠落、エチレン分配器の底部とC2スプリッターとの熱的結合の欠落及び脱エタン装置とC2スプリッターの他の塔よりも実質的に低圧での運転である。Table 1は、図2から選択した流の組成及び特性を示す。
【0020】
Table 1に示されるように、脱エタン装置及びC2スプリッターは他の塔の圧力よりも実質的に低い圧力で運転する。
C2分配器と脱エタン装置との間の熱的結合をC2分配器における別個の再沸器で置換することは、エネルギーの観点から有益であり、総エネルギーで382.1馬力(HP)の節約となる。このエネルギー節約は、脱エタン装置再沸器負荷(比較的高温の熱を必要とする)の部分を50゜F(10.0℃)プロピレン冷媒を凝縮するための有用な熱溜となるC2分配再沸器におけるより低温レベルまでシフトさせた結果である。エネルギー消費変化はTable 2に見られる。
【0021】
【表2】

【0022】
加えて、エチレン分配器とC2スプリッターとの間の熱的結合をエチレン分配器における別個の再沸器で置換することは、熱的結合を取り除くことは非常に少ないエネルギーを失わせるだけで顕著なエネルギー節約を提供する他のプロセス変化を可能にする、という点でエネルギー観点から有益である。エチレン分配器とC2スプリッターとの間の熱的結合を取り除くことによりもたらされるエネルギー消費変化は、Table 3に見ることができる。
【0023】
【表3】

【0024】
Table 3に示されているように、この熱的結合を取り除くことによりエネルギー損失(energy penalty)を引き起こすかもしれないが、たとえあったとしてもわずかである。しかし、この結合を取り除くことは、顕著なエネルギー節約を結果として生じさせるより低くより効率的な圧力で脱エタン装置及びC2スプリッターを運転させる。上述の熱的結合が設計から除かれる場合には、残りの塔よりも低い圧力で脱エタン装置及びC2スプリッターを運転することが可能となる。完全に結合された従来の技術では、C2スプリッターの圧力を低下させることは他のすべての塔もまたより低い圧力で運転させることを必要とし、低圧C2スプリッターからのエネルギー節約はシステムのどこかで生じるエネルギー損失(energy penalties)によって相殺されるから、これらの塔をより低い圧力で運転することは可能ではない。C2スプリッター及び脱エタン装置を他の塔よりも低い圧力で運転することは、結果的に顕著なエネルギー節約をもたらす。なぜなら、凝縮器及び再沸器負荷を減少させ、塔再沸及び供給物気化をより低温で生じさせ、よってより大きな回復能を提供するからである。これらのエネルギー節約は下記Table 4に見ることができる。
【0025】
【表4】

【0026】
Table 5は、同等の総エチレン製造用の2種の設計に必要とされるプロピレン及びエチレン系冷却馬力を比較する。
【0027】
【表5】

【0028】
図1に示されるように、本発明は従来技術の設計よりも多量のエネルギーを節約する。当業者は、図1の発明が塔の間のより少ない熱的結合を含むために、従来技術の設計よりも運転及び制御がより容易であることをも認めるであろう。
【0029】
図2を参照すると、プロセスへの供給物流は脱プロパン装置塔(図示せず)からの塔頂流で始まり、流200を介してプロセスに流入する。流200は水素、メタン、エタン、エチレン、プロパン及びプロピレンの混合物を含む。流200は、場合によっては、アセチレンの本質的に全量並びにメチルアセチレン及びプロパジエンの部分を取り除くために水添反応器を通過したものでもよい。脱プロパン装置塔頂流は場合によっては、流201として塔C201に流入する前に、交換器E201内で冷却される。
【0030】
塔C201は脱エタン装置塔として作用する蒸留装置であり、棚段式塔もしくは充填式塔のいずれでもよい。塔頂流は水素、メタン、エタン及びエチレンの本質的に全量を含む流202として流出する。C201の塔底流は流204として流出し、塔C201に流入するプロパン及びプロピレンの全量を含む。この塔底流は、所望により、さらに下流精製塔に送られてもよい。
【0031】
流202は、エチレン分配器として作用する塔C202に流入する。塔C201及びC202は熱的結合されており、流203として示されるC202からの液体サイド抜き出し流はC201への還流液体を与える。C202の塔頂流は流205として流出し、塔に流入する水素及びメタンの本質的に全量並びにエチレンの一部を含む。流205内でのエチレンとエタンとの比率は、製品品質エチレンがエチレン及びエタンのさらなる分離なしに製造され得るような比率である。
【0032】
塔C202の塔底流は流207内に流出し、残留エチレン及びC202に流入するエタンの本質的に全量を含む。流207の圧力は圧力降下弁V201により減少されるが、他の方法を利用することもでき、当業者には公知である。流207はエチレン/エタン分離塔として作用する塔C204に送液される。塔202及び204は熱的結合されていない。塔202は慣用の再沸交換器E203を用いて再沸される。場合によっては、図2に示すように、塔C204への送液は分割されて、交換器E208内で部分的に気化されてもよい。
【0033】
C204の塔頂流は流212内に流出し、製品品質エチレンを含む。C204の塔底流は流213内に流出し、エタンを含み、少量のエチレンを含み得る。流205として示される塔C202の塔頂流は、脱メタン装置として作用する塔C203に流入する。塔C202及びC203は、流206として示されるC203からの液体サイド抜き出し流がC202への還流液体を提供するように、熱的結合されている。塔C203は、E204として図2に示される1以上のサイド凝縮器を用いてもよい。
【0034】
C203の塔頂流は水素、メタン及び少量のエチレンを含む。これらは冷却され、少なくとも部分的に凝縮されてC203への還流を与える。図2はこれが標準的な分縮交換器E205及び分離ドラムでなされることを示す。還流を提供する他の方法(例えばデフレグメーター)を用いることもでき、当業者にはよく知られている。分縮器からの塔頂蒸気は流208内に流出して、低温区域に送られ、冷凍有価値製品(refrigeration value)及び場合によっては水素製品を回収する。塔C203及びC204は熱的結合されていない。C203の塔底流は再沸交換器E206で慣用の態様で再沸される。流209として示されるC203の塔底流は製品品質エチレンを含む。
【0035】
図2は、エチレン分配器の底部区域の熱的結合の欠落及びC2スプリッターの他の塔よりも実質的に低い圧力での運転を含む図1の重要な特徴を保有する。Table 6は、図2の選択された流の組成及び特性を示す。
【0036】
【表6】

【0037】
図2に具現化された本発明は、従来技術の設計を凌駕する顕著なエネルギー益を有する。本発明の特徴であるエチレン分配器C202とC2スプリッターC204との間の熱的結合の欠落は、システムのエネルギー要求量を削減する多数のプロセスオプションを可能とする。Table 7は図2に示す設計の主たるエネルギー益のいくつかを説明する。
【0038】
【表7】

【0039】
Table 7は、Manley及び図2の実施形態のエチレン分配器及びC2スプリッターに対する負荷及び温度を示す。一つの利点は、エチレン分配再沸器において、50゜F(10.0℃)プロピレン冷却を追加的に回復することである。別の顕著なエネルギー節約は、C2スプリッター再沸器負荷を150psi蒸気から25゜F(-3.9℃)プロピレン冷却の回復にシフトさせることによりもたらされる。最後に、C2スプリッター凝縮器負荷を減少させて、-45゜F(-42.8℃)プロピレン冷却においてさらに節約がなされる。
【0040】
Table 2、3、4及び7において、Qconは凝縮器の熱負荷を意味し、Qrebは再沸器の熱負荷を意味することに留意されたい。
これらの節約はシステムのどこかで生じるエネルギー損失によって部分的に相殺されることに留意すべきである。例えば、C201の還流要求はC101の還流要求よりも大幅に高く、著しい低温での負荷が要求される。これはTable 6に概略を示す節約の一部を相殺するが、システム全体の厳格なエネルギー分析は従来技術と比較して図2のプロセスに対する正味エネルギー益があることを示す。Table 8は、同等の総エチレン製造のために従来技術設計及び図2の本発明の設計の両者に要求される総プロピレン及びエチレン系冷却馬力を比較する。従来技術設計を凌駕する図2のプロセスでの全体的なエネルギー節約があることが明らかである。
【0041】
【表8】

【0042】
すべての主たる分離、加熱及び冷却工程は、好ましい実施形態の記載に示されている。本発明の重要なコンセプトをより明らかに提示するために、気−液分離ドラム、プロセス制御弁、ポンプなどの当業者に周知のプロセス設計のいくつかの詳細は省略した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、C2分配器及びエチレン分配器の両者を含むフロントエンド脱プロパン装置エチレン回収精製設計を示す。
【図2】図2は、エチレン分配器を含むフロントエンド脱プロパン装置エチレン回収精製設計を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水素、メタン、エタン、エチレン、プロピレン、プロパン及び場合によってはより重い成分の混合物を含む炭化水素供給物を第1分離塔に導入して、第1塔頂流及び第1塔底流を得る工程;
(b)該第1塔頂流を第2分離塔に導入して、第2塔頂流及び第2塔底流を得る工程;
(c)該第1分離塔に該第2分離塔から抜き出した液体を還流させる工程;
(d)該第1分離塔を再沸交換器で再沸させる工程;
(e)該第1塔底流を第3分離塔に導入して、第3塔頂流及び第3塔底流を得る工程;
(f)該第2塔頂流を第4分離塔に導入して、第4塔頂流及び第4塔底流を得る工程;
(g)該第2分離塔に該第4分離塔から抜き出した液体を還流させる工程;
(h)該第2分離塔を再沸交換器で再沸させる工程;
(i)該第4塔頂流を冷やして、該第4分離塔用の還流を与える工程;
(j)該第2塔底流及び該第3塔頂流を第5分離塔に導入して、第5塔頂流及び第5塔底流を得る工程;
(k)該第3分離塔に該第5分離塔から抜き出した液体を還流させる工程;及び
(I)該第4塔底流及び該第5塔頂流を炭化水素成分として回収する工程
を含む炭化水素成分の分離回収方法。
【請求項2】
該第3分離塔及び第5分離塔は、該第1分離塔、第2分離塔及び第4分離塔の圧力レベルよりも実質的に低い圧力で運転する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該第1分離塔はC2分配器である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該第1塔頂流は水素、メタン、エタン及びエチレンの混合物を含み、さらに該第1塔底流はエタン、エチレン、プロパン,プロピレン及び場合によってはより重い成分の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該第2分離塔はエチレン分配器である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該第2塔頂流はエチレン、水素及びメタンの混合物を含み、さらに該第2塔底流はエチレン及びエタンの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該第3分離塔は脱エタン装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
該第3塔頂流はエチレン及びエタンの混合物を含み、さらに該第3塔底流はプロピレン及びプロパン及び場合によってはより重い成分の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該第4分離塔は脱メタン装置である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
該第4塔頂流は水素及びメタンの混合物を含み、さらに該第4塔底流は回収可能なエチレン成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
デフレグメーターはエチレン回収時に該脱メタン装置を補助する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該第5分離塔はC2スプリッターである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
該第5塔頂流は回収可能なエチレン成分を含み、さらに該第5塔底流はエタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
該脱メタン装置は1個以上のサイド凝縮器を具備する、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
(a)水素、メタン、エタン、エチレン、プロパン及びプロピレン及び場合によってはより重い成分の混合物を含む炭化水素供給物を第1分離塔に導入して、第1塔頂流及び第1塔底流を作る工程;
(b)該第1塔頂流を第2分離塔に導入して第2塔頂流及び第2塔底流を作る工程;
(c)該第1分離塔に該第2分離塔からの抜き出し液体を還流させる工程;
(d)該第2塔頂流を第3分離塔に導入して、第3塔頂流及び第3塔底流を作る工程;
(e)該第2分離塔に該第3分離塔からのサイド抜き出し液体を還流させる工程;
(f)該第2分離塔を再沸交換器で再沸させる工程;
(g)該第2塔底流を第4分離塔に導入して、第4塔頂流及び第4塔底流を作る工程;及び
(h)該第3塔底流及び該第4塔頂流を炭化水素成分として回収する工程
を含む炭化水素成分の分離回収方法。
【請求項16】
該第4分離塔は、該第1分離塔、第2分離塔及び第3分離塔の圧力レベルよりも実質的に低い圧力にて運転する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該第1分離塔は脱エタン装置である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
該第1塔頂流はエチレン、エタン、水素及びメタンの混合物を含み、さらに該第1塔底流はプロピレン及びプロパン及び場合によってはより重い成分を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
該第2分離塔はエチレン分配器である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
該第2塔頂流はエチレン、水素及びメタンの混合物を含み、さらに該第2塔底流はエチレン及びエタンの混合物を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
該第3分離塔は脱メタン装置である、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
該第3塔頂流は水素及びメタンの混合物を含み、さらに該第3塔底流は回収可能なエチレン成分を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
デフレグメーターはエチレン回収時に該脱メタン装置を補助する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
該第4分離塔はC2スプリッターである、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
該第4塔頂流は回収可能なエチレン成分を含み、さらに該第4塔底流はエタンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
該脱メタン装置は1個以上のサイド凝縮器を含む、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−520785(P2006−520785A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507181(P2006−507181)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/007799
【国際公開番号】WO2004/085577
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】