説明

炭化水素の製造方法

再生可能な原料からの原料油が、骨格異性化ならびに、水素化脱酸素化またはその代わりに脱炭酸化および脱カルボニル化反応を組み合わせることによって行われた脱酸素化によって、ヘテロ原子を有さない、ディーゼル燃料の蒸留範囲にある、分岐の飽和炭化水素に転換された。この反応によって、水素の消費量は減少される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化水素であって、特に再生可能な原料からの分岐の炭化水素の製造のための方法、およびディーゼル燃料のプールに適した炭化水素の製造のための方法に関する。該方法は、骨格異性化段階および脱炭酸化/脱カルボニル化または水素化脱酸素化によって行われる脱酸素化段階を包含する。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸は、化学産業における様々な用途にて、一般的には潤滑油、重合体、燃料および溶媒から化粧品にいたるまでの範囲の製品の製造において、原料として使用されている。脂肪酸は一般的には、木材のパルプ化過程から、また植物もしくは動物由来のトリグリセリドの加水分解によって得られる。天然由来のトリグリセリドは通常、グリセロールと直鎖状の10〜26の偶数の炭素原子を有するカルボン酸とのエステルである。最も一般的な脂肪酸は16個、18個、20個または22個の炭素原子を含有する。脂肪酸は飽和していてもよく、または1もしくは複数の不飽和結合を含有していてもよい。不飽和脂肪酸はしばしばシス型立体配置をもつ炭素−炭素二重結合を有するオレフィンである。不飽和中心は炭素鎖の指定の位置に見られる。最も一般的な位置は、オレイン酸(C18:1)およびエルカ酸(C22:1)のように、ω9である。多価不飽和酸は一般的に、複数のシス型オレフィンの二重結合がメチレンで中断された配置を有している。
【0003】
長い直鎖状飽和脂肪酸(C10:0およびそれ以上)は室温で固体であり、様々な応用においてそれらの処理および使用を困難にしている。オレイン酸などの不飽和長鎖脂肪酸は、室温で容易に処理可能な液体であるが、その二重結合のために不安定である。
【0004】
分岐の脂肪酸は、多くの点で直鎖状不飽和脂肪酸の特性に類似しているが、より安定である。例えば、イソステアリン酸として知られる分岐のC18:0脂肪酸は室温で液体であるが、分岐のC18:0には不飽和結合が存在しないので、C18:1酸のように不安定ではない。これゆえ、分岐の脂肪酸は多くの応用にとって直鎖脂肪酸と比較してより好ましい。
【0005】
生物由来材料をもとにしたディーゼル燃料は一般的にバイオディーゼルと言われる。「バイオディーゼル」の定義はOriginal Equipment Manufacturer (OEM)ガイドラインの中に次のように定められている。バイオディーゼルは、植物油または動物脂肪由来の長鎖脂肪酸モノアルキルエステルであって、次の表1に示されるように、ディーゼルエンジン中での使用のためのASTM D6751またはEN14214規格に一致するエステルである。バイオディーゼルはディーゼル燃料(B100)と混合前は純燃料と呼ばれる。
【0006】
【表1】

【0007】
高いセタン価、適切な粘度範囲および良好な低温特性が良質なディーゼル燃料のためには必要である。セタン価(CN)は、ディーゼル燃料またはその成分の発火性を表すために定められた。分岐および鎖長はCNに影響を及ぼし、CNは、鎖長が減少し分岐が増加するにつれて低下する。ヘキサデカンC1634のCN値は100であり、2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナンC1634のCN値は15である。構造的特徴から二重結合もまたCNを低下させる。さらに、不飽和結合を有する化合物はエンジンにガミングを引き起こしうる。
【0008】
CNに加えて、化合物の総燃焼熱(HG)は、ディーゼル燃料として用いられる化合物の適合性を規定するために不可欠である。比較のためにパラフィン系およびエステルのバイオディーゼルのHGを挙げると、ヘキサデカンのHGは、20℃で2559kg cal/molであり、メチルパルミテイト(C16:0)のHGは、2550kg cal/molである。
【0009】
曇点は、ASTM D2500規格に記載されているように、石油製品が標準検査条件下で冷却されたときにワックス結晶の曇りまたはかすみをちょうど呈する温度を表している。曇点は、フィルターおよび供給ラインの目詰まりをおこすことなく寒冷気候において使用されるための燃料の能力を評価するものである。
【0010】
流動点は、ASTM D97規格に記載されているような条件下で試験されたときに燃料がまさに流動する最も低い温度である。エンジンの製造業者によって、曇点は使用温度未満であるべきであること、および流動点より6℃以上高くないことが推奨されている。分岐、飽和度および鎖長はまた、曇点および流動点に影響を及ぼし、そしてそれらは、鎖長が短くなるにつれて、不飽和度が増加するにつれておよび分岐が増加するにつれて、減少する。
【0011】
植物油の粘度は、従来のディーゼル燃料の粘度に比べて約1桁大きい。高粘度は燃焼室における噴射不良を招き、従ってノズルのコーキングおよび堆積物の原因となる。
【0012】
バイオディーゼルは代替燃料であり、再生可能資源から製造され、そして石油を全く含まない。それは、バイオディーゼル混合物を作るために少量の石油ディーゼルと混合されうる。さらには、バイオディーゼルは毒性がなく基本的に硫黄および芳香族化合物を含まない。ほとんどあるいは全く改良されることなく、圧縮点火(ディーゼル)エンジンに用いられることが可能である。
【0013】
生物由来材料に基づいたディーゼル燃料は、地球温暖化の影響の軽減、排出削減、エネルギー自給の増加および農業への肯定的な影響といった点からみて重要な環境保全上の利点を示している。
【0014】
生物由来材料に基づいたディーゼル燃料の使用は、二酸化炭素排出を顕著に減少させるであろうことが示されている。米国エネルギー省および米国農務省が連帯で後援した1998年のバイオディーゼルのライフサイクル研究は、バイオディーゼルは正味の二酸化炭素排出量を石油ディーゼルに比べて78%減少させると結論づけている。これはバイオディーゼルの閉鎖式炭素循環が理由である。バイオディーゼルを燃焼する際に大気中に排出されるCO2は、植物の成長によってリサイクルされ、後にまた燃料に加工される。従って、生物由来材料に基づいたディーゼル燃料の使用の増加は、京都議定書のもと合意された排出削減目標を達成するための重要な段階に相当する。また、粒子状物質の排出および酸化窒素のようなその他の有害な排気が減少し、人間の健康上の問題を軽減すると信じられている。
【0015】
長鎖酸メチルエステルは、対応するトリグリセリドおよび従来のディーゼル燃料に比べ、より高い曇点および流動点を有する。曇点および流動点は、より寒冷な環境下でエンジンを作動させる際に重要な特徴である。
【0016】
熱分解と同様に、エステル交換、希釈、マイクロ乳化処理および共溶媒混合などのいくつかのアプローチが、植物油および他のトリアシルグリセローベースの原料油からディーゼル燃料を得るために提案されている。該アプローチの目的は、深刻な操作上の問題点および燃料の不適切な噴射を引き起こす、純植物油の高い動粘性率を減少させることである。
【0017】
エステル交換において、植物油における主成分を形成しているトリグリセリドは、触媒の存在下、アルコールとの対応するエステルに転換される。メタノールは、低費用性ならびに結果として生じるメチルエステルおよびグリセロール相から容易に分離できることから、最も一般的に使用されるアルコールである。
【0018】
従来のディーゼル燃料による植物油の0〜34%希釈は、結果として適切な噴射につながるが、純植物油でおこる問題と類似のエンジン問題を引き起こす。
【0019】
マイクロエマルジョン燃料は、従来のディーゼル燃料および/または植物油、単一のアルコール、界面活性剤およびセタン改良剤などの両親媒性の化合物を含む。微量の水が通常マイクロエマルジョンの形成に必要とされている。
【0020】
植物油、それらのメチルエステルおよび動物性脂肪などの生物由来材料の熱分解法、コルベ電気分解ならびに熱的および触媒的な加熱分解は、アルカン、アルケン、芳香族化合物およびカルボン酸などの広い範囲の生成物を結果として生じる。反応は一般的に非選択的であり、価値の低い副生成物も生成される。
【0021】
液体の留分に含まれる不飽和および芳香族炭化水素が、上記の方法によって得られた生成物をディーゼルプールとして魅力のないものにしている。生成物の低温特性の低さは、より低温の気候条件の地域におけるバイオディーゼルとしてのより幅の広い使用を制限している。加えて、エステル中の酸素の存在が、従来のディーゼル燃料に比べて、望ましくないより高い酸化窒素(NOx)排出という結果を招く。
【0022】
排気ガス中の二酸化硫黄を直接的に減少させるためだけでなく、現代の車における新しく効率的な公害防止技術の最大効果を得るために、ならびに、酸化窒素、揮発性の炭化水素および粒子状物質の排出を削減するために、硫黄を含まない燃料が必要とされている。欧州連合はこれらの製品は2005年から市販されなければならず、そして2009年からは店頭の唯一の形でなければならないと規定している。この新しい必要条件は、自動車燃料からの年間硫黄排出量を減少させるであろう。
【0023】
分岐の脂肪酸ならびに主にメチルおよびエチルエステルである脂肪酸エステルは、US5,856,539に記載されているように、直鎖状の不飽和脂肪酸および対応する鎖長を有する脂肪酸エステルの異性化によって得られる。例えば、分岐のC18:0酸は、直鎖のC18:1酸からまたはC18:2酸からも製造される。
【0024】
カルボン酸を不均一系触媒と接触させることによるカルボン酸の炭化水素への脱炭酸化は、Maier, W.F.ら(Chemische Berichte (1982), 115(2), 808-12)によって提案された。Ni/Al23およびPd/SiO2触媒が、いくつかのカルボン酸の脱炭酸化反応に試された。反応中、反応物の蒸気は180℃および0.1MPaで水素とともに触媒層を通過した。ヘプタン酸の脱炭酸化反応の主な生成物はヘキサンであった。水素の代わりに窒素が使用された場合には、脱炭酸化反応は見られなかった。
【0025】
US4,554,397は、ニッケルならびに鉛、スズおよびゲルマニウムからなる群より選択される少なくとも1つの金属を含む触媒システムを用いて、脱炭酸化反応によって飽和脂肪酸またはエステルから、直鎖状のオレフィンを製造するための方法を開示している。添加物が上記に記載した触媒中に含まれてもよく、例えば硫黄誘導体が、ニッケルの水素添加能を減少させるためにおよび反応をよりオレフィン生成反応に選択的にするために添加されてもよい。水素の存在は、触媒の活性を維持するために必要であった。反応は300〜380℃の温度で行われ、圧力は大気圧またはそれ以上であった。
【0026】
オキソ化合物の水素化にともなう脱炭酸化は、Laurent, EおよびDelmon, B(Applied Catalysis, A: General (1994), 109(1), 77-96および97-115)に記載されており、硫化CoMo/Al23およびNiMo/Al23触媒に対して、生物資源由来の熱分解油の水素化脱酸素化反応が調べられている。水素処理の条件は、水素中で260〜300℃および7MPaであった。硫化水素の存在は、特にNiMo触媒が使用された場合に脱炭酸化反応を促進した。
【0027】
上記に記載した方法の副反応で生成される不飽和炭化水素および芳香族炭化水素は、得られた生成物をディーゼルプールとして魅力のないものにしている。加えて、分岐を有さない高度に飽和した構造は、低温特性の低さの原因となる。
【0028】
FI100248は、n−パラフィンを製造するために、市販の硫黄除去触媒(NiMoおよびCoMo)を使用して植物油の脂肪酸またはトリグリセリドを水素化することによって、そしてその後、分岐鎖を有するパラフィンを得るために、モレキュラーシーブまたはゼオライトを含む金属を用いて該n−パラフィンを異性化することによって、植物油からの中間の留分を製造するための2段階の方法について記載している。水素処理は330〜450℃の反応温度で行われた。
【0029】
上記を踏まえて、高品質なバイオディーゼルとして適切な、再生可能資源からの分岐の飽和炭化水素の製造のための新しい代替方法の必要性があることがみてとれる。
【発明の開示】
【0030】
本発明の目的は、分岐の飽和炭化水素を再生可能資源から製造する方法である。
【0031】
さらなる本発明の目的は、ディーゼル燃料プールに適した分岐の飽和炭化水素を製造するための方法である。
【0032】
本発明による方法の特性は請求項に規定されている。
【0033】
定義
骨格異性化とは、化合物の炭素数が変わることなしに、炭素主鎖に分岐が形成されることを意味すると解される。
【0034】
脱酸素化とは、脂肪酸または脂肪酸エステルの酸素などのカルボキシル基の酸素を除去することを意味すると解される。脱酸素化は、水素化脱酸素化(HDO)または脱炭酸化/脱カルボニル化によって行われうる。
【0035】
脱炭酸化/脱カルボニル化とは、CO2(脱炭酸化)および/またはCO(脱カルボニル化)を介してカルボキシル基の酸素を除去することを意味すると解される。
【0036】
水素化脱酸素化(HDO)とは、水素を用いて水として酸素を除去することを意味する。
【0037】
「分岐の脂肪酸」という用語は、本明細書において、炭素鎖のどの位置にも付加されうる1または複数のアルキル側基を含む脂肪酸を包含すると解される。該アルキル基は一般的に、C1〜C4のアルキル鎖である。
【0038】
圧力とは、本明細書において、大気圧を超える過圧を意味すると解される。
【0039】
発明の要約
本発明は、草木、植物、動物ならびに魚類の脂肪および油ならびに脂肪酸といった再生可能資源から、ディーゼル燃料プールとして適切な、分岐の飽和炭化水素の製造のための触媒方法に関する。本発明は、脂肪酸または低級アルコールとの脂肪酸エステルを含む原料油を、酸性触媒を用いて分岐の脂肪酸または脂肪酸エステルに変換すること、それに続いて、得られた分岐の脂肪酸または脂肪酸エステルを、脱炭酸化/脱カルボニル化不均一系触媒または水素化脱酸素化触媒のどちらかと接触させることによって、分岐の炭化水素に変換することに関する。
【0040】
脱炭酸化/脱カルボニル化反応を経て形成された分岐の炭化水素生成物は、元の脂肪酸より1つ少ない炭素数を有し、水素化脱酸素化反応を経て形成された分岐の炭化水素生成物は、元の脂肪酸と比べて等しい数の炭素数を有する。
【0041】
良好な低温特性および高セタン価を有する高品質な炭化水素生成物は、方法中、最小限度の水素を作用させることによって得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
驚くべきことに、バイオディーゼル燃料として適した、飽和した分岐の炭化水素が、骨格異性化、続いて、脱炭酸化/脱カルボニル化または水素化脱酸素化により行われる脱酸素化を用いる酸素の除去によって、再生可能資源由来の酸素を含有する原料油から得られることが判明した。
【0043】
製法の第一の段階では、不飽和脂肪酸または低級アルコールとの脂肪酸エステル、またはそれらの混合物を含む原料油が、炭素鎖に短いアルキル基の分岐を含む脂肪酸または脂肪酸アルキルエステルへ異性化される骨格異性化に付される。続くその後の製法の段階で、分岐の生成物は脱酸素化される。脱酸素化は、異性化された脂肪酸または脂肪酸アルキルエステルから、酸素がCOおよびCO2の形で除去される脱炭酸化/脱カルボニル化、または代わりに、酸素がH2Oの形で除去される水素化脱酸素化によって行われる。製法はまた、骨格異性化の後、不飽和を除去するためおよび水素化脱酸素化における低級アルコールを遊離するために、脱酸素化段階の前に、任意の前水素化段階を含んでも良い。
【0044】
本発明による方法は、脂肪酸または低級アルコールとの脂肪酸エステルから、分岐の炭化水素の製造のための簡便な方法を提供する。脂肪酸および脂肪酸エステルは草木、植物、動物ならびに魚の油および脂肪といった生物起源の原料油に由来する。
【0045】
原料油
原料油は脂肪酸またはC1〜C5、好ましくはC1〜C3アルコールとの脂肪酸エステル、またはそれらの混合物を含む。原料油は好ましくは草木、植物、動物ならびに魚の油および脂肪といった生物由来原料に由来する。生物由来原料は、加水分解などの、脂肪酸または脂肪酸エステルを原料油として有用なものとして得るために、先行技術である、いかなる前処理または精製法を用いて処理されてもよい。原料油は少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも50重量%、そして特に好ましくは80重量%の不飽和の脂肪酸または脂肪酸エステルを含む。原料油は、脂肪酸および脂肪酸エステルの混合物を含むが、脂肪酸または脂肪酸エステルのどちらかを使用することが好ましい。
【0046】
原料油として使用される不飽和脂肪酸は、不飽和結合を有し、全炭素数が8〜26、好ましくは12〜20そして特に好ましくは12〜18である脂肪酸である。不飽和度、すなわち不飽和な炭素−炭素結合の数に関しては、1または複数の不飽和な炭素−炭素が分子中に存在する限り、いかなる不飽和脂肪酸も用いることができる。
【0047】
原料油は、上記記載の不飽和脂肪酸に対応する、8〜26、好ましくは12〜20そして特に好ましくは12〜18の全炭素数を有する不飽和脂肪酸の、C1〜C5、好ましくはC1〜C3のアルキルエステルを含む。適切なアルキルエステルの例としては、該不飽和脂肪酸のメチルエステル、エチルエステルおよびプロピルエステルが挙げられるが、好ましくはメチルエステルである。
【0048】
一般的には、原料油における不飽和結合の数は1〜3である。好ましくは、原料油は少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも70重量%のモノ不飽和脂肪酸または脂肪酸エステルを含む。原料油はまた、ポリ不飽和脂肪酸または脂肪酸エステルも含む。分子中の不飽和結合の存在が、中間体としての陽イオンの生成を引き起こし、それゆえ骨格異性化反応を可能にする。
【0049】
骨格異性化
本発明による方法の第一の段階では、分岐鎖を有する脂肪酸または脂肪酸のアルキルエステルが製造される。上記に記載した原料油が骨格異性化段階に付される。骨格異性化は150〜400℃の温度で、0〜5MPaの圧力下、好ましくは200〜350℃および0.1〜5MPaそして特に好ましくは220〜300℃および0.1〜2MPaで、酸性触媒を使用して行われた。適切な酸性触媒はシリコアルミノリン酸塩およびゼオライト、好ましくはフォージャサイト、オファールタイト、モンモリロナイトおよびモルデナイトである。特に好ましくは、触媒はモルデナイトである。
【0050】
水または低級アルコールが、脱水または脱アルコール化による酸無水物の生成を抑えるために原料油に添加されてもよい。原料油が不飽和脂肪酸を含む場合には水を、そして原料油が不飽和脂肪酸のエステルを含む場合にはアルコールを添加することが好ましい。一般的には、添加される水または低級アルコールの量は、全反応混合物を基にして0〜8重量%、そして好ましくは1〜3重量%である。低級アルコールはC1〜C5アルコールであり、そして好ましいアルコールはメタノール、エタノールおよびプロパノールであり、もっとも好ましくは異性化される出発原料の脂肪酸エステルと同じアルキル基を有するアルコールである。過剰な(10%を超える)水はエストライド生成を防止するために避けるべきである。骨格の異性化段階はまた、水または低級アルコールの非存在下で、行われる。
【0051】
骨格異性化段階は、反応圧力のもと閉鎖系バッチ反応器中で行われる。これは水、アルコールおよび触媒中に包含される物質を含む系中のその他の低沸点物質の蒸発を防ぐためである。反応時間は好ましくは24時間未満、さらに好ましくは12時間未満そして最も好ましくは30分未満である。
【0052】
一般的に、工程に使用される触媒の量は、全反応混合物を基準にして0.01〜30重量%であり、好ましくは使用される触媒の量は1〜10重量%である。
【0053】
連続的流通系反応器を用いる場合、空間速度WHSVは0.1〜100 l/h、より好ましくは0.1〜50 l/hそして最も好ましくは1〜10 l/hである。
【0054】
骨格異性化段階から得られる生成物は、不飽和だけでなく飽和な分岐の脂肪酸または脂肪酸エステルを含む。生成の可能性のある副生成物は、原料油が不飽和脂肪酸のエステルを含む場合、酸の2量体および脂肪酸エステルの重合体といった環状の酸および重合体の脂肪酸である。得られた分岐鎖の化合物は、通常1〜4の炭素原子を有する長さの短いアルキル側鎖を有し、様々な分岐位置を有する多くの異性体の混合物として得られる。
【0055】
好ましくは、得られた分岐鎖を有する脂肪酸または脂肪酸エステルは、例えば蒸留によって酸の2量体から分離され、その不飽和結合は前水素化され、そしてその後直鎖状飽和アルキル脂肪酸またはそのエステルから溶媒の分留によって分離される。蒸留、前水素化および分留の順序は変えられうる。蒸留および溶媒分留段階はまた、脱酸素化の後の工程の最後であってもよい。
【0056】
骨格異性化による生成物は、次に続く触媒段階において、触媒の表面にコークスの形成を引き起こす不飽和を除去するために任意に前水素化されうる。前水素化は、水素化触媒の存在下、50〜400℃の温度で、0.1〜20MPaの水素圧のもと、好ましくは150〜250℃および1〜10MPaで行われる。水素化不均一系触媒は、1または複数の第VIII族および/または第VIA族の金属を含む。好ましくは、水素化触媒は、酸化アルミニウムおよび/または酸化シリコン担持のPd−、Pt−、Ni−、NiMo−またはCoMo−触媒である。
【0057】
脂肪酸エステルが異性化段階において原料油として用いられる場合、骨格異性化からの分岐の生成物は、二重結合を飽和させ、そしてエステル化に用いている低級アルコールを遊離するための最終の脱酸素化段階の前に、任意に前水素化されうる。脂肪酸アルキルエステルは、水素化脱酸素化のために脂肪族アルコールに変換される。遊離された低級アルコールは蒸留後再利用されうる。脂肪酸アルキルエステルは、金属触媒によって、25〜30MPaの水素圧で、および200〜230℃の温度で、前水素化される。金属触媒は好ましくは亜クロム酸銅触媒またはクロム、第一鉄もしくはロジウム活性化ニッケル触媒である。
【0058】
脱酸素化
骨格異性化段階から得られた分岐の生成物はその後、脱炭酸化/脱カルボニル化または水素化脱酸素化によって行われる脱酸素化に付される。
【0059】
第一の実施様態において、飽和の分岐の脂肪酸または脂肪酸のエステルおよび任意的に溶媒または溶媒の混合物が、一または複数の周期系の第VIII族および/または第VIA族金属を含む担持触媒より選択される脱炭酸化/脱カルボニル化不均一系触媒と接触させられる。好ましくは、脱炭酸化/脱カルボニル化の触媒は、担持されたPd、Pt、Ni、NiMoまたはCoMo触媒であって、担体はアルミナおよび/またはシリカおよび/または炭素である。特に好ましくは炭素担持のPdおよびアルミナ担持の硫化NiMoが用いられる。水素が任意に用いられうる。脱炭酸化/脱カルボニル化反応条件は、使用される原料油によって様々である。反応は液相で行われる。脱炭酸化/脱カルボニル化反応は100〜400℃の温度で、好ましくは250〜300℃で行われる。反応は大気圧下で行われうる。しかしながら、反応を液相で持続させるためには、任意の温度における原料油の飽和蒸気圧より高い圧力を使用することが好ましい。これゆえ、反応圧力は、大気圧から、不活性気体/水素の混合物の20MPaまで、好ましくは0.1〜5MPaの範囲である。この実施様態より得られる生成物は、炭化水素の混合物であり、好ましくは180〜350℃の範囲の沸点、すなわちディーゼル燃料の範囲の沸点を有する分岐のパラフィンであって、出発原料の脂肪酸の鎖よりも1炭素原子少ないパラフィンである。
【0060】
第二の実施様態では、水素化脱酸素化段階において、骨格異性化段階にから得られる分岐の脂肪酸もしくはそのエステル、または任意の前水素化段階によって得られる脂肪族アルコール、および任意には溶媒または溶媒の混合物が、水素化脱酸素化の技術において公知の、周期系の第VIII族および/または第VIA族からの金属を含む任意に前処理された水素化不均一系触媒と接触させられる。好ましくは、水素化脱酸素化触媒は、担持されたPd、Pt、Ni、NiMoまたはCoMo触媒であって、担持体はアルミナおよび/またはシリカである。特に好ましくは、NiMo/Al23またはCoMo/Al23触媒が用いられる。水素化脱酸素化段階では、圧力範囲は1〜20Mpaの間で、好ましくは2〜10MPaの間で、温度は200〜500℃の間、好ましくは250〜350℃の間で様々である。
【0061】
それぞれの脱酸素化の実施様態における任意の溶媒は、150〜350℃の範囲の沸点を有するパラフィン、イソパラフィン、ナフテンおよび芳香族炭化水素などの炭化水素、ならびに炭化水素を含む再生処理蒸気、ならびにそれらの混合物、好ましくは本発明の工程から得られる再処理生成物蒸気からなる群より選択される。
【0062】
生成物
本発明による方法は、ディーゼル燃料プールに適切な分岐のパラフィン系炭化水素生成物を生じる。生成物は、一般的にはいくつかの短い炭素−炭素側鎖の分岐を含み、その結果、公知の方法によって得られた生成物に比べて、群を抜いた低い曇点および低温でのフィルター目詰まり点(cold filter plugging point)を有するにも関わらず、良好なセタン価をもつ。表2に示されるように、本発明による方法を用いて製造された生成物の特性(1)が公知の技術に基づく方法によって得られた生成物(2〜6)と比較された。全ての生成物は100%(B100)ディーゼル構成成分である。
【0063】
【表2】

【0064】
表2の生成物は次のように製造される。
(1)は本発明による方法によって、脂肪酸の骨格異性化および脱酸素化によって製造される。
(2)はトリグリセリドの水素化脱酸素化および水素化異性化によって製造される。
(3)は菜種油のエステル交換反応によって製造される脂肪酸メチルエステルである。
(4)は気体の液化および水素化異性化方法によって製造される天然ガス由来のディーゼル燃料である。
(5)および(6)は極寒の条件で使用される異なる規格をもつ鉱物油由来のディーゼル燃料である。
【0065】
本発明による方法を用いて得られた分岐の、飽和炭化水素生成物の構造は、例えばC16〜C22の通常のパラフィンを水素化異性化した際に得られる構造とは異なっている。本発明では、一般的なω9オレフィンの不飽和位置が分岐化を負っているため、分岐は主に炭素長鎖の中央に位置する。水素化異性化されたイソパラフィンにおいては、分岐は主に炭素主鎖の端に近い部分に位置する。本発明の炭化水素生成物の炭素数はC13〜C22、一般的にはC15〜C18であって、そして生成物の炭素数は、水素化脱酸素化および/または脱炭酸化/脱カルボニル化反応の条件を変えることによって調節されうる。
【0066】
分岐の飽和炭化水素生成物は80vol%より多い、一般的には99vol%より多いパラフィンを含む。
【0067】
分岐の飽和炭化水素生成物は30重量%未満、一般的には15重量%未満のn−パラフィンを含む。
【0068】
分岐の飽和炭化水素生成物は、IP−391の方法によって20vol%未満、一般的には10vol%未満の芳香族化合物を含む。
【0069】
バイオディーゼル組成成分はまた、燃料の生物起源の証拠として用いられうる14C−同位体も含む。典型的な分岐の飽和炭化水素生成物の14C含有量は、1950年の大気中の放射性炭素含有量と比べた放射性炭素含有量に基づいて少なくとも100%である。
【0070】
本発明の方法はいくつかの優位性をもつ。本方法を用いれば、分岐鎖を含みディーゼル燃料プールに適切である、分岐の飽和炭化水素生成物が、再生可能資源から得られる。炭化水素生成物中に不飽和が存在しないため、酸化に対する安定性は良好であり、従来の脂肪酸メチルエステルベースのバイオディーゼル化合物に比べて重合傾向が低い。
【0071】
パラフィン系炭素鎖における分岐は、曇点、流動点および低温でのフィルター目詰まり点といった低温特性を高める。極度に良好な低温特性は、分岐の飽和炭化水素生成物のディーゼル燃料または極寒用の燃料におけるディーゼル燃料の組成成分としての使用を可能にせしめる。
【0072】
本発明によって製造される分岐の飽和炭化水素生成物は、空気がディーゼル燃料の自動点火温度より高い温度に熱せられるまで圧縮され、その後、ディーゼルの引火性限界内に燃料−空気混合物を維持しながら燃料が高圧な噴霧として注入される、圧縮−点火エンジンに使用されることを想定されている。点火源がないために、ディーゼル燃料は高セタン価および低い自動点火温度をもつことが必要である。
【0073】
飽和と長いパラフィン系鎖長により、分岐の飽和炭化水素生成物のセタン価は高く、従って、生成物をセタン価改良剤として適切なものにせしめている。セタン価は、ディーゼル燃料が圧縮された際に自動点火するかどうかの容易さを評価するものである。高いセタン価は、より容易な自己発火とより良好なエンジン動作とを示す。
【0074】
分岐の飽和炭化水素生成物の高い引火点は、主として燃料の取り扱いという観点から重要である。エタノール/鉱物油ディーゼルまたはエタノール/植物油ディーゼルマイクロエマルジョンでは、引火点は著しく低い。低すぎる引火点は燃料を火災危険物、引火物にし、そして連続した引火と爆発を可能にする。加えて、低い引火点はガソリンのようなより揮発性の高い爆発性の燃料による混入を示している可能性がある。
【0075】
天然の脂肪酸ベースの原料であるため、分岐の飽和炭化水素生成物は硫黄を含まない。これゆえ、排気ガスの前処理において、触媒および粒子状物質のためのフィルターは容易に、本発明による硫黄を含有しない炭化水素化合物に適合されうる。触媒被毒は軽減され、触媒の耐用年数は顕著に延長される。
【0076】
分岐の飽和炭化水素生成物は、天然脂肪酸ベースの原料から製造されるにも関わらず、生成物は酸素を含有しない。従って、酸化窒素(NOx)排出は従来のバイオディーゼル燃料よりもはるかに少ない。
【0077】
本発明によって製造される分岐の飽和炭化水素生成物の組成成分は、従来のディーゼル燃料のもの非常に類似しているので、脂肪酸メチルエステルベースのバイオディーゼル化合物を用いた場合とは異なり、なんの改良もすることなしに、圧縮−点火(ディーゼル)エンジンに使用することができる。
【0078】
さらに、いかなる酸素含有化合物も含まない純粋なパラフィン系組成物であるため、燃料運搬システムにおいて粘性物質が生成しない。エンジン部分は脂肪酸メチルエステルベースのバイオディーゼル化合物を用いた場合のようにカーボンデポジットによって汚染されることはない。
【0079】
分岐の飽和炭化水素生成物は石油ディーゼルおよび脂肪酸メチルエステルベースのバイオディーゼル化合物といかなる水準にでも混合されうる。もし生成物の潤滑性が促進されなければならないならば、後者が好都合である。
【0080】
特に、工程が脱炭酸化/脱カルボニル化反応を用いて行われる場合、水素の消費量が顕著に低減される。脱炭酸化/脱カルボニル化反応は水素消費を20〜40%減少させる。
【0081】
本発明は、本発明のいくつかの好ましい実施様態を表している次の実施例によって例示される。しかしながら、当業者にとって本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるわけではないということは明らかである。
【実施例】
【0082】
実施例1
トール油脂肪酸の骨格異性化および脱酸素化
【0083】
蒸留されたトール油脂肪酸は、パール高圧反応器中、モルデナイトゼオライトを用いて異性化された。トール油脂肪酸の、全反応混合物から計算して5重量%の触媒および3重量%の水が反応器に入れられ、空気はオートクレーブから窒素をパージすることにより除去された。混合物は300rpmにて攪拌された。反応器は280℃まで加熱され、6時間1.8MPaの窒素雰囲気下に保持された。放冷後、得られた反応混合物はオートクレーブより取り出され、ゼオライトはろ過により取り除かれた。ろ液は減圧蒸留され単量体の酸が得られた。
【0084】
このようにして得られた単量体の酸はオートクレーブに入れられ、二重結合が5重量%の炭素担持Pdを含む触媒と150℃で3時間2MPaの水素雰囲気下、反応が完了するまで水素化された。触媒量は単量体の酸の2重量%であった。その後、反応混合物は放冷され、触媒はろ過によって除去された。
【0085】
得られた粗製分岐鎖を有する脂肪酸に従来の溶媒分留法を適用し、異性化した脂肪酸を得た。粗製分岐鎖をもつ脂肪酸に、重量%にして約2倍量のヘキサンが加えられた。この混合物が−15℃まで冷却された後、得られた結晶はろ過により取り出された。その後、ヘキサンがろ液より蒸留によって取り除かれて、精製異性化脂肪酸を得た。
【0086】
水素化脱酸素化によって行われた次の脱酸素段階において、異性化された脂肪酸はパール高圧反応器内で、乾燥され前もって硫化されたNiMo/Al23触媒を用いて、3.3MPaの水素圧および340℃の温度で、対応するパラフィンに水素化脱酸素化された。触媒量は脂肪酸の2.5重量%であった。
【0087】
生成物は、表2に示される特性をもつ、分岐の、主にパラフィン系の炭化水素混合物であった。生成物の色は淡い黄色であり、回分水素化脱酸素化に用いられたHDO触媒由来の硫黄を10ppm未満含有していた。
【0088】
実施例2
低温でのトール油脂肪酸の骨格異性化および脱酸素化
【0089】
蒸留されたトール油脂肪酸は異性化され、二重結合が水素化され、分岐の飽和脂肪酸が、水素化脱酸素化における反応器の温度がより低温の325℃で行われたこと以外、実施例1同様に水素化脱酸素化された。
【0090】
表3に示されるような特性をもつ透明な生成物が得られた。
【0091】
実施例3
水無添加でのトール油脂肪酸の骨格異性化、低温での脱酸素化および最終生成物の冷却下でのろ過
【0092】
骨格異性化段階において、トール油脂肪酸および5重量%のモルデナイトゼオライト触媒が混合され、空気がパール高圧オートクレーブから窒素をパージすることにより除去された。混合物は300rpmで攪拌された。反応器は275℃まで熱せられ、0.1MPaの窒素雰囲気下に6時間保持された。放冷後、得られた反応混合物はオートクレーブより取り出され、ゼオライトはろ過により除去された。ろ液を減圧蒸留し単量体の酸を得た。
【0093】
このように得られた単量体の酸の二重結合は実施例1同様に水素化された。
【0094】
脱酸素化段階において、異性化された脂肪酸はパール高圧反応器中で、乾燥され前もって硫化されたNiMo/Al23触媒を用いて、3.3MPaの水素圧および325℃の温度で、パラフィンに水素化脱酸素化された。触媒量は脂肪酸の2.5重量%であった。混合物は−15℃まで冷却され、得られた結晶はろ過により取り出された。
【0095】
生成物は、表3に示される特性を有する分岐の、主にパラフィン系の炭化水素混合物であった。生成物の色は透明であった。
【0096】
実施例4
水無添加でのトール油脂肪酸の骨格異性化、および脱炭酸化/脱カルボニル化による脱酸素化
【0097】
トール油脂肪酸は実施例3同様に異性化され、前水素化された。脱炭酸化/脱カルボニル化によって行われた脱酸素化段階において、異性化された脂肪酸はパール高圧反応器に入れられ、カルボキシル基が、乾燥され前もって硫化されたNiMo/Al23触媒を用いて除去された。
【0098】
異性化された脂肪酸は、0.3MPaの気体圧および335℃の温度で、パラフィンに脱炭酸化/脱カルボニル化された。触媒量は脂肪酸の2.5重量%であった。気体は窒素中10%の水素からなっていた。
【0099】
生成物は、表3に示される特性をもつ、典型的には水素化脱酸素化での生成物より1つ少ない炭素数である炭素鎖長をもつ、分岐の、主にパラフィン系の炭化水素混合物であった。生成物の色は透明であった。
【0100】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐の飽和炭化水素の製造方法であって、不飽和の脂肪酸もしくはC1〜C5アルコールとの脂肪酸エステル、またはそれらの混合物を含む原料油を骨格異性化段階およびその後の脱酸素化段階に付すことを特徴とする方法。
【請求項2】
原料油が、少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも50重量%の不飽和の脂肪酸またはC1〜C5アルコールとの脂肪酸エステルを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
原料油として使用される不飽和の脂肪酸またはC1〜C5アルコールとの脂肪酸エステルの全炭素数が、8〜26、好ましくは12〜20であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
原料油が、生物原料に由来することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
骨格異性化段階が、150〜400℃の温度で、0〜5MPaの圧力下、好ましくは200〜350℃および0.1〜5MPaで行われることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
骨格異性化段階が、シリコアルミノリン酸塩およびゼオライトより、好ましくはフォージャサイト、オファールタイト、モンモリロナイトおよびモルデナイトより選択される酸性触媒の存在下で行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
全反応混合物を基準にして、0〜8重量%、好ましくは1〜3重量%の水またはC1〜C5アルコールが原料油に添加され、好ましくは原料油が脂肪酸を含む場合には水が、そして原料油が脂肪酸エステルを含む場合にはアルコールが添加されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
骨格異性化段階の後に、前水素化段階が行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前水素化段階が、1または複数の第VIII族および/または第VIA族の金属を含む水素化触媒の存在下、50〜400℃の温度で0.1〜20MPaの水素圧の下、好ましくは150〜250℃および1〜10MPaで行われることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
原料油が脂肪酸エステルを含む場合に、前水素化段階が、金属触媒、好ましくは亜クロム酸銅触媒またはクロム、第一鉄もしくはロジウム活性化ニッケル触媒の存在下、25〜30MPaの水素圧、および200〜230℃の温度で行われることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項11】
骨格異性化および任意の前水素化段階から得られる生成物を、脱炭酸化/脱カルボニル化または水素化脱酸素化によって行われる脱酸素化段階に付すことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
脱炭酸化および/または脱カルボニル化において、生成物および任意には溶媒または溶媒の混合物を、1または複数の周期系の第VIII族および/または第VIA族の金属を含む担持触媒より選択される、脱炭酸化/脱カルボニル化不均一系触媒と、100〜400℃の温度で、好ましくは250〜350℃で、大気圧から、不活性気体/水素混合物の20MPaまでの圧力下、好ましくは0.1〜5MPaの圧力下で接触させることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
脱炭酸化および/または脱カルボニル化不均一系触媒が、炭素担持Pdまたはアルミナ担持硫化NiMoであることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
水素化脱酸素化において、生成物および任意には溶媒または溶媒の混合物を、周期系の第VIII族および/または第VIA族の金属を含む水素化触媒と、1〜20MPaの間、好ましくは2〜10MPaの間の圧力下、200〜500℃の間、好ましくは250〜350℃の間の温度で接触させることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項15】
水素化脱酸素化触媒が、担持されたPd、Pt、Ni、NiMoまたはCoMo触媒であって、かつ担持体が、アルミナおよび/またはシリカ、好ましくはNiMo/Al23またはCoMo/Al23であることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
脱炭酸化/脱カルボニル化および/または水素化脱酸素化段階において、溶媒が炭化水素、好ましくは150〜350℃の沸点範囲を有するパラフィン、イソパラフィン、ナフテンおよび芳香族炭化水素、ならびに炭化水素を含む再生処理蒸気、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の方法によって得られうる生成物。

【公表番号】特表2009−518533(P2009−518533A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545029(P2008−545029)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/FI2006/050551
【国際公開番号】WO2007/068798
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(505081261)
【Fターム(参考)】