説明

炭化水素アミンと環状カーボネートとから誘導した摩擦調整剤及び/又は摩耗防止剤

【課題】摩耗防止性および摩擦調整性能が改善された潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】主要量の潤滑粘度の基油、および少量の、環状カーボネートと下記式の炭化水素アミン:
12NH
(式中、R1は水素または炭素原子1乃至40個を含む炭化水素基であり、そしてR2は炭素原子1乃至40個を含む炭化水素基である)とを反応させることにより得られた反応生成物を含む添加剤を含む潤滑油組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物の一部として用いて摩耗防止性および摩擦調整性を改善するカルバメート類に関する。
【背景技術】
【0002】
摩耗を防ぎ、燃料消費量を減らし、また機械類の作動寿命を長引かせるために、耐摩耗性添加剤および摩擦調整用添加剤が潤滑剤に頻繁に混合される。グリセロールエステル類、例えばグリセロールモノオレエートが、摩擦調整剤や摩耗防止剤として当該分野ではよく知られている。これらの化合物に関わる問題としては、エステル官能基が容易に加水分解されて、その結果腐食剤である遊離オレイン酸の生成が起こることが挙げられる。
【0003】
本発明では、オレイルアミンをグリセロールカーボネートまたはエチレンカーボネートと反応させることによって、安定性が向上したカルバメート類を製造することができた。驚くべきことには、オレイルアミンとグリセロールカーボネートとの反応生成物が優れた耐摩耗性能および優れた摩擦性能を示すことが、我々より見い出された。以前には、グリセロールモノオレエート(モノオレイン酸グリセリン)のみが満足できる耐摩耗性能を示していた。また、2−エチルヘキシルアミンとエチレンカーボネートとの反応生成物、もしくはオレイルアミンとエチレンカーボネートとの反応生成物も、優れた摩擦性能を示すことが見い出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、潤滑油組成物の一部として使用した場合に摩耗防止性および摩擦調整性を改善するカルバメート類に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、主要量(相対的に多量)の潤滑粘度の基油、および少量の、環状カーボネートと下記式の炭化水素アミン:

12NH

(式中、R1は、水素または炭素原子1乃至40個を含む炭化水素基であり、そしてR2は、炭素原子1乃至40個を含む炭化水素基である)
とを反応させることにより得られる反応生成物を含む添加剤を含む潤滑油組成物に関する。好ましい態様では、環状カーボネートはグリセロールカーボネートであって、炭化水素アミンはオレイルアミンであり、そしてその反応生成物はグリセロールカルバメートである。グリセロールカルバメート類は、潤滑油組成物の一部として用いると摩耗防止性および摩擦調整性を改善する。別の態様では、カルバメート類は、エチレンカーボネートなどの環状カーボネートと、2−エチルヘキシルアミンまたはオレイルアミンなどの炭化水素アミンとの反応生成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、環状カーボネートと炭化水素アミンとの反応生成物を含むカルバメート系添加剤であって、潤滑油組成物に混合することができる添加剤に関する。この添加剤を有する潤滑油組成物は、トラクタ用油圧作動液として摩耗を低減するのに特に有益であり、そしてエンジン油やギヤ油など他の潤滑油用途にも使用することができる。また、この添加剤を含有する潤滑油組成物は、上記の用途で非常に優れた摩擦低減性ももたらすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[定義]
「炭化水素基」は、炭素原子が当該分子の残部に直接結合していて、主として炭化水素の特性を有する基を意味する。そのような基としては次のものが挙げられる:(1)炭化水素基、すなわち、脂肪族基(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式基(例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル)、芳香族基、脂肪族及び脂環式置換芳香族基、および芳香族置換脂肪族及び脂環式基等。そのような基は当該分野の熟練者にも知られていて、限定的ではない例としては、メチル、エチル、オクチル、デシル、オクタデシル、シクロヘキシル、フェニル等、個々でもそれらの組合せでも、が挙げられる;(2)置換炭化水素、すなわち基の主な炭化水素特性を変えない非炭化水素置換基を含む基。当該分野の熟練者であれば好適な置換基も分かり、限定的ではない例としては、ハロ、ヒドロキシル、ニトロ、シアノ、アルコキシ、アシル等が挙げられる;そして任意に、(3)ヘテロ基、本発明での特性に関しては、主として炭化水素であるけれども、炭素以外の原子を炭素原子からなる鎖又は環に含む基。好適なヘテロ原子も当該分野の熟練者には明らかであり、限定的ではない例としては、窒素、酸素および硫黄が挙げられる。
【0008】
「環状カーボネート類」としては、下記の(I)式を有するものが挙げられる。R3およびR4が水素である環状カーボネートの例が、エチレンカーボネートである。プロピレンカーボネートは、R3が水素でR4がメチル基である環状カーボネートの例である。グリセロールカーボネートは、R3が水素でR4がCH2−OH基である環状カーボネートの例である。
【0009】
【化1】

【0010】
カルバメート類は、炭化水素アミンと環状カーボネートの反応により製造される。炭化水素アミンは、下記の(II)式で示される。

(II)式 R12NH
【0011】
式中、R1は、水素、または炭素原子1乃至40個、好ましくは炭素原子8乃至28個を含む炭化水素基であり、そしてR2は、炭素原子1乃至40個、好ましくは炭素原子8乃至28個を含む炭化水素基である。R1およびR2の炭化水素基は、線状の及び/又は分枝したアルキル及び/又はアルケニル基であってよい。好ましい態様では、環状カーボネートはグリセロールカーボネートであり、炭化水素アミンはオレイルアミンであり、そしてカルバメートはグリセロールカルバメートである。
【0012】
グリセロールカルバメート類は、グリセロールカーボネートを、第一級、任意に第二級炭化水素アミン、例えば飽和又は不飽和モノアミン類、もしくは脂肪酸から誘導された炭化水素アミンの混合物、例えばヤシ油、オレイル又は牛脂のアミン、好ましくはオレイルアミンと反応させることにによって得られる。第一級及び第二級炭化水素アミン類の限定的ではない例としては、オクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ベンジルアミン、フェニルアミン、オレイルアミン(例えば、アクゾ・ノベル(Akzo Nobel)社製のアーミーン(Armeen、商標)OLD)、ステアリルアミン(例えば、アクゾ・ノベル社製のアーミーン18D)、ヤシ油アミン、2−エチルヘキシルアミン、イソトリデシルアミン、2−ブチルオクチルアミン、2−ヘキシルデシルアミン、2−オクチルドデシルアミン、シクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ジフェニルアミン、ジヤシ油アミン(例えば、アクゾ・ノベル社製のアーミーン2C)、ジ−2−エチルヘキシルアミン、およびN−メチルシクロヘキシルアミンを挙げることができる。
【0013】
別の態様では、エチレンカーボネートと第一級炭化水素アミン、好ましくは2−エチルヘキシルアミンとの反応により、カルバメート類が得られる。別の態様では、エチレンカーボネートと第一級炭化水素アミン、好ましくはオレイルアミンとの反応により、カルバメート類が得られる。
【0014】
グリセロールカーボネートは、先行技術で知られている方法、例えば米国特許第6025504号明細書に記載されている方法により製造することができ、それも全て参照内容として本明細書の記載とする。エチレンカーボネートは、先行技術で知られている方法、例えば米国特許第4314945号及び米国特許第4233221号の各明細書に記載されている方法により製造することができ、それらも全て参照内容として本明細書の記載とする。
【0015】
好ましい態様ではグリセロールカルバメート類は、下記反応式(I)で、オレイルアミン1とグリセロールカーボネート2との反応によって製造される。オレイルアミンとグリセロールカーボネートのモル比が0.5:1乃至2:1、好ましくは0.75:1乃至1.5:1、特には1:1で、また温度範囲が60℃から180℃の間、より好ましくは80℃から120℃の間で、反応を生じさせる。生成物の混合物が得られる。主生成物はグリセロールカルバメート類であり、それらの一部の一般構造を3および4として示す。少量の生成物としては、グリセロール、ヒドロキシエチルアミン類およびジオレイル尿素が挙げられる。炭化水素溶媒または他の不活性溶媒、例えばベンゼン、トルエンおよびキシレンを反応に使用してもよい。
【0016】
【化2】

【0017】
本発明のカルバメート化合物を生成させた後、潤滑粘度の基油と他の添加剤成分を含む潤滑油組成物に、カルバメート化合物を直接混合することにより、それらを潤滑油組成物に添加することができる。潤滑油組成物におけるカルバメート添加剤化合物の量は、「少量」であり、それは潤滑油組成物中の添加剤の濃度が約40質量%未満であることを意味する。態様によっては「少量」の添加剤は、潤滑油組成物中の添加剤の濃度が約30質量%未満、約20質量%未満、約10質量%未満、約1質量%未満、又は約0.5質量%未満であることを意味する。
【0018】
[潤滑粘度の基油]
本発明に用いられる潤滑粘度の基油は、鉱油であっても合成油であってもよい。粘度が40℃で少なくとも10cSt(mm2/s)で流動点が20℃未満、好ましくは0℃以下である基油が望ましい。基油は合成原料からでも天然原料からでも誘導することができる。本発明に基油として使用される鉱油としては例えば、潤滑油組成物に通常使用されているパラフィン系、ナフテン系及びその他の油が挙げられる。合成油としては例えば、所望の粘度を有する炭化水素合成油と合成エステル類両方およびそれらの混合物が挙げられる。炭化水素合成油としては例えば、エチレンまたは高級アルファオレフィンの重合により製造された油(ポリアルファオレフィン(PAO))、もしくはフィッシャー・トロプシュ法におけるような一酸化炭素ガスと水素ガスを用いた炭化水素合成法により製造された油を挙げることができる。使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファオレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用なものはC6〜C12アルファオレフィンの水素化液体オリゴマー類、例えば1−デセン三量体である。同様に、適正な粘度のアルキルベンゼン類、例えばジドデシルベンゼンも使用することができる。使用できる合成エステル類としては、モノカルボン酸およびポリカルボン酸とモノヒドロキシアルカノールおよびポリオールとのエステル類が挙げられる。代表的な例としては、ジドデシルアジペート、ペンタエリトリトールテトラカプロエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、およびジラウリルセバケート等がある。モノ及びジカルボン酸とモノ及びジヒドロキシアルカノールとの混合物から製造された複合エステル類も使用することができる。鉱油と合成油のブレンドも使用できる。例えば、10質量%乃至25質量%の水素化1−デセン三量体と、75質量%乃至90質量%の150SUS(100°F)鉱油とのブレンドは、非常に優れた潤滑油基油になる。
【0019】
[他の添加剤成分]
以下の添加剤成分は、本発明に好ましく用いることができる他の添加剤成分の一部の例である。これら添加剤の例は、本発明を説明するために記載するのであって、本発明を限定しようとするものではない。
【0020】
(1)無灰分散剤:アルケニルコハク酸イミド類、他の有機化合物で変性したアルケニルコハク酸イミド類、およびホウ酸で変性したアルケニルコハク酸イミド類、アルケニルコハク酸エステル。
【0021】
(2)酸化防止剤:(a)フェノール型酸化防止剤:4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)。(b)ジフェニルアミン型酸化防止剤:アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、およびアルキル化アルファ−ナフチルアミン。(c)その他の型:金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、オキシ硫化モリブデン・コハク酸イミド錯体、およびメチレンビス(ジブチル−ジチオカルバメート)。
【0022】
(3)さび止め添加剤(さび止め剤):(a)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。(b)その他の化合物:ステアリン酸および他の脂肪酸類、ジカルボン酸類、金属石鹸類、脂肪酸アミン塩類、重質スルホン酸の金属塩類、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0023】
(4)抗乳化剤:アルキルフェノールとエチレンオキシドの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0024】
(5)極圧剤(EP剤):ジアルキルジチオリン酸亜鉛(アリール亜鉛、第一級アルキル及び第二級アルキル型)、硫化油類、ジフェニルスルフィド、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、およびナフテン酸鉛。
【0025】
(6)多機能添加剤:硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン・モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物。
【0026】
(7)粘度指数向上剤:ポリメタクリレート型重合体、エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、水和スチレン・イソプレン共重合体、ポリイソブチレン、および分散型粘度指数向上剤。
【0027】
(8)流動点降下剤:ポリメチルメタクリレート。
【0028】
(9)消泡剤:アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシリコーン重合体。
【0029】
(11)金属清浄剤:硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート類、アルキル又はアルケニル芳香族スルホネート類、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩類、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート類、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート類、アルカノール酸の金属塩類、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩類、およびそれらの化学的及び物理的混合物。好適な金属類の限定的ではない例としては、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類および遷移金属類が挙げられる。態様によっては、金属はCa、Mg、Ba、Sr、K、Na、またはLi等である。
【0030】
本発明の基油は「主要量」で存在する。「主要量」の潤滑粘度の基油は、潤滑油組成物中の油の濃度が少なくとも約40質量%であることを意味する。態様によっては「主要量」の潤滑粘度の基油は、潤滑油組成物中の油の濃度が少なくとも約50質量%、少なくとも約60質量%、少なくとも約70質量%、少なくとも約80質量%、又は少なくとも約90質量%であることを意味する。
【0031】
本発明の添加剤および潤滑油組成物について更に説明するために、下記の限定的ではない実施例を記載する。
【実施例】
【0032】
[実施例1] オレイルアミンとグリセロールカーボネートとの反応生成物
撹拌器を備えた1Lガラス反応器に、オレイルアミン(473.96g、アミン価:213mgKOH/gに基づき1.80モル、アクゾ・ノベル社製のアーミーン(商標)OLD)を窒素雰囲気中で充填し、そして100℃に加熱した。グリセロールカーボネート(212.47g、1.80モル、ハンツマン(Huntsman)社製のジェフソル(JEFFSOL、商標)グリセロールカーボネート)を、添加漏斗で2時間かけて加えた。反応混合物を更に5時間100℃で加熱した。
【0033】
[実施例2] オレイルアミンとグリセロールカーボネートとの反応生成物
撹拌器を備えた500mLガラス反応器に、オレイルアミン(221.63g、アミン価213mgKOH/gに基づき0.84モル)を窒素雰囲気中で充填し、そして100℃に加熱した。グリセロールカーボネート(99.35g、0.84モル)を、添加漏斗で数分かけて加えた。反応混合物を更に4時間100℃で加熱した。
【0034】
[実施例3] オレイルアミンとグリセロールカーボネートとの反応生成物
撹拌器を備えた500mLガラス反応器に、オレイルアミン(217.53g、アミン価213mgKOH/gに基づき0.826モル)を窒素雰囲気中で充填し、そして155℃に加熱した。グリセロールカーボネート(97.52g、0.826モル)を、注射器ポンプで2時間かけて加えた。反応混合物を更に4時間160℃で加熱した。
【0035】
[実施例4] ドデシルアミンとグリセロールカーボネートとの反応生成物
撹拌器を備えた500mLガラス反応器に、ドデシルアミン(281.35g、1.52モル)を窒素雰囲気中で充填し、そして約70℃に加熱した。グリセロールカーボネート(179.24g、1.52モル)を、添加漏斗で数分かけて加えた。反応混合物を更に2.5時間70℃で加熱した。
【0036】
[実施例5] オレイルアミンとグリセロールカーボネートとの反応生成物
撹拌器を備えた1Lガラス反応器に、オレイルアミン(462.61g、1.76モル)を窒素雰囲気中で充填し、そして約160℃に加熱した。グリセロールカーボネート(207.38g、1.76モル)を、添加漏斗で数分かけて加えた。反応混合物を更に4.5時間160℃で加熱した。
【0037】
[実施例6] オレイルアミンとグリセロールカーボネートとの反応生成物
撹拌器を備えた500mLガラス反応器に、オレイルアミン(256.15g、アミン価213mgKOH/gに基づき0.97モル)を窒素雰囲気中で充填し、そして約70℃に加熱した。反応器を冷却水浴に入れて反応の熱を取り除き、反応混合物の温度を90℃未満で維持した。グリセロールカーボネート(114.83g、0.97モル)を、添加漏斗で数分かけて加えた。反応混合物を更におよそ3時間70℃で加熱した。
【0038】
[実施例7] オレイルアミンとエチレンカーボネートとの反応生成物
撹拌器を備えた500mLガラス反応器に、オレイルアミン(327.20g、アミン価213mgKOH/gに基づき1.24モル)を窒素雰囲気中で充填し、そして約70℃に加熱した。反応器を冷却水浴に入れて反応の熱を取り除き、反応混合物の温度を約70℃で維持した。エチレンカーボネート(109.38g、1.24モル)を、注射器ポンプで数分かけて加えた。反応混合物を更におよそ4時間70℃で加熱した。
【0039】
[実施例8] 2−エチルヘキシルアミンとエチレンカーボネートとの反応生成物
撹拌器を備えた500mLガラス反応器に、オレイルアミン(164.06g、1.27モル)を窒素雰囲気中で充填し、そして約70℃に加熱した。反応器を冷却水浴に入れて反応の熱を取り除き、反応混合物の温度を約70℃で維持した。エチレンカーボネート(111.8g、1.27モル)を、注射器ポンプで数分かけて加えた。反応混合物を更におよそ4時間70℃で加熱した。
【0040】
[性能評価例]
(耐摩耗性)
下記の例における耐摩耗性について基本配合油で評価を行った。この配合油は潤滑油と各目的において一般的な量の添加剤とからなり、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、カルシウム含有清浄剤の混合物、シール膨潤剤および腐食防止剤がこれに含まれている。
【0041】
次に、基本配合油に、実施例2のグリセロールカルバメート0.3質量%、もしくは標準的な耐摩耗性添加剤のグリセロールモノオレエート0.3質量%を配合した。その後、三種類の配合物について、ZFフリードリッヒシャフェン社(ZF Friedrichshafen)製のZF−標準V3、S19−2摩耗試験法にて評価した。第1表に、その結果をまとめて示す。
【0042】
第 1 表
ZF標準ギヤ摩耗試験の結果
───────────────────────
配合物 質量損失(mg)
───────────────────────
基本 577
基本+グリセロールモノオレエート 8
基本+実施例2 13
───────────────────────
【0043】
実施例2のグリセロールカルバメートを含有する潤滑油組成物は、グリセロールモノオレエートを含有する潤滑油組成物に匹敵する耐摩耗性を示した。
【0044】
(摩擦調整性能)
下記の例の摩擦特性について基本配合油で評価を行った。この配合油は45NII種潤滑油と特定の目的に一般的な量の添加剤とからなり、コハク酸イミド4.0質量%、カルシウム含有清浄剤の混合物48.5ミリモル、第一級及び第二級ジチオリン酸亜鉛混合物7ミリモル、酸化防止剤1.2質量%、硫化/モリブデン酸化コハク酸イミド錯体0.5質量%、流動点降下剤0.3質量%、消泡剤10ppm、および粘度指数向上剤4.8質量%がこれに含まれていた。
【0045】
次に、基本配合油に、実施例2のもの0.5質量%、もしくは従来の摩擦調整剤のホウ酸化グリセロールモノオレエート0.5質量%を配合した。その後、三種類の配合物について、PCSインスツルメンツ(PCS Instruments)社製の小型摩擦機(MTM)による摩擦試験にて評価した。このMTM摩擦試験では、鋼球とディスク間に一定の荷重を掛ける。球はディスクに対して回転しながら滑っている。荷重も速度も、ガソリンエンジンのあらゆる摩擦条件を包含するプロファイルになるよう設計されている。試験の間、球とディスクを潤滑油に浸漬してこの油の潤滑効果を評価する(このプロファイルで潤滑油を用いて球とディスク間の摩擦係数を測定することを意味する)。第2表に、その結果をまとめて示す。
【0046】
第 2 表
MTM摩擦試験の結果
────────────────────────────
配合物 全摩擦の積算値
────────────────────────────
基本 139.67
基本+ホウ酸化グリセロールモノオレエート 101.24
基本+実施例2 83.27
基本+実施例8 83.36
基本+実施例7 09.62
────────────────────────────
【0047】
グリセロールカルバメートを含有する潤滑油組成物は、グリセロールモノオレエートを含有する潤滑油組成物よりも非常に優れた摩擦低減性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要量の潤滑粘度の基油、および少量の、環状カーボネートと(I)式の炭化水素アミン:

12NH (I)

(式中、R1は、水素または炭素原子1乃至40個を含む炭化水素基であり、そしてR2は、炭素原子1乃至40個を含む炭化水素基である)
とを反応させることにより得られる反応生成物を含む添加剤を含む潤滑油組成物。
【請求項2】
1が、水素または炭素原子8乃至28個を含む炭化水素基である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
該炭化水素基が、線状及び/又は分枝状のアルキル及び/又はアルケニル基を含む請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
2が、炭素原子8乃至28個を含む炭化水素基である請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
該炭化水素基が、線状及び/又は分枝状のアルキル及び/又はアルケニル基を含む請求項4に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
該炭化水素アミンが第一級アミンである請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
該環状カーボネートが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートおよびグリセロールカーボネートからなる群より選ばれるものである請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
さらに、(a)無灰分散剤、(b)酸化防止剤、(d)抗乳化剤、(e)極圧剤、(f)多機能添加剤、(g)粘度指数向上剤、(h)流動点降下剤、(i)消泡剤および(j)乳化剤から選ばれる少なくとも一種の補助添加剤を含む請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
該環状カーボネートと該炭化水素アミンとの反応を、炭化水素アミン対環状カーボネートとしてのモル比0.5:1乃至2:1で、温度範囲60℃乃至180℃で生じさせる請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
該炭化水素アミンがオレイルアミンを含み、そして該環状カーボネートがグリセロールカーボネートを含む請求項9に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
該炭化水素アミンが2−エチルヘキシルアミンを含み、そして該環状カーボネートがエチレンカーボネートを含む請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
該炭化水素アミンがオレイルアミンを含み、そして該環状カーボネートがグリセロールカーボネートを含む請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
該潤滑粘度の基油に添加する前に該反応生成物を生成させる請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
該添加剤が摩耗防止剤または摩擦調整剤である請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2012−512945(P2012−512945A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542247(P2011−542247)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/067253
【国際公開番号】WO2010/080308
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】