説明

炭化水素フラクションを生物由来の混合物から製造する方法

ディーゼル燃料又はディーゼル燃料の成分として用いることのできる炭化水素フラクションを、脂肪酸エステルを含有し、場合によって遊離脂肪酸も含有する生物由来の混合物から出発して製造する方法であって、以下の工程:1)生物由来の混合物の水素化脱酸素化工程;2)可能な精製処理後に工程(1)から生じる混合物の水素化異性化工程、該水素化異性化工程は、以下の成分:a)30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500m2/gより大きい表面積、0.3〜1.3ml/gの細孔容積、40Åより小さい平均細孔直径を有する完全にアモルファスなマイクロ-メソポーラスシリカアルミナを含む酸性キャリア、b)VIII群の1種以上の金属を含有し、場合によってはVIB群の1種以上の金属と混合される金属成分を含む触媒システムの存在下で行われる工程を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼル燃料又はディーゼル燃料の成分として用いることのできる炭化水素フラクションを、脂肪酸のエステルと場合によって一定量の遊離脂肪酸を含有する生物由来の混合物から出発して製造するための方法に関する。該方法は少なくとも1種の脱酸素工程及び水素化異性化工程を含む。植物油のディーゼルエンジンにおける使用はRudolf Dieselまで遡り、彼は1900年にピーナッツ油で機能するディーゼルエンジンの能力を示した。
【背景技術】
【0002】
第二次世界大戦中、アフリカではヤシ油及びピーナッツ油が共に軍事車両の燃料として用いられた。戦後、技術的な発展は石油由来の燃料のほぼ排他的な使用に至った。さらに、ディーゼルエンジンは特に注入及び制御システムに関して、ガスオイルとは異なる燃料の使用に柔軟性がなくなるような程度まで大きく改善された。現代では、植物油は生成物の高い製造コスト及び質の不安定性により次第に廃れていった。
1970年代の石油危機の間、植物油のディーゼル燃料としての使用が再び注目されたが、これは種々の理由(内燃エンジンにおける痂皮の形成、インジェクターの封鎖、潤滑剤の希釈)により困難であった。植物油から出発するメチル又はエチルエステルの調製及びディーゼルエンジンにおけるそれらの使用を意図した研究がなされた。脂肪酸のメチル及びエチルエステルが、植物油からメタノール又はエタノールによるエステル交換反応によって得られる。植物油の転化のための別のアプローチが1980年代に提案され、これらの強制的な水素化からなり、オイルからディーゼル燃料と適合性のある沸点を有する炭化水素フラクションを製造する。植物油の強制的な水素化は、酸素の除去をH2O、CO2及びCOの混合物の同時形成と共に、操作条件によって変化する逆比で引き起こす。従って、出発エステルは一般的に脂肪酸及びグリセリンの両方の炭化水素に変形する。少量の遊離アルコールは炭化水素と一緒に形成することができる。
【0003】
液体燃料を製造するための脂肪オイルの強制的な水素化反応は例えば1980年代にはNunesらによってすでに研究されており、表題“Hydrocraquage sous pression d'une huile de soja: procede d'etude et allure generale de la transformation”(Rev. Inst. Fr. Pet. 1986, vol. 41, page 421 onwards)の文献において、大豆油の二官能性触媒による水素化分解を記載している。673Kより高い温度では、脂肪酸の脱カルボニル反応及び脱炭酸反応が、金属触媒の存在により独特な水素添加分解と共に観察される。主要生成物は直鎖炭化水素である。
J. Gusmaoら(Utilization of vegetable oils as an alternative source for diesel-type fuel: hydrocracking on reduced Ni/SiO2 and sulphided Ni-Mo/Al2O3, Catalysis Today 5 of 1989 page 533 onwards)は、大豆油の水素化において得られた炭化水素フラクションが主に直鎖パラフィン(96モル%のC15-C16-C17-C18)からなることを説明している。
【0004】
米国特許第4,992,605号明細書は、炭化水素フラクションをC15-C18範囲で植物油、例えばヒマワリ油、菜種油、カノーラ油、ヤシ油、又は松ノ木のパルプに含有される脂肪油(トール油)の水素化によって製造する方法を記載している。この炭化水素フラクションは、一般的に直鎖パラフィン(C15-C18)からなって高いセタン価を特徴とし、これはセタン価を向上させるものとして用いることができる。
“Hydroprocessed vegetable oils for diesel fuel improvement”, Bioresources Technology 56 (1996), pages 13 to 18において、米国特許第4,992,605号明細書に記載されている用途が実験室スケールで要約されており、カノーラ油から出発する水素化生成物を製造する。炭化水素フラクションは、ディーゼル燃料の蒸留範囲内で蒸留する直鎖パラフィン及びフラクションからほぼ排他的に構成され、55〜90のセタン価を有する。他の水素化生成物は、軽質なC1-C5炭化水素、水及びCO2を含む。ディーゼルフラクションは“スーパーセタン”として定義される。密度(0.790g/ml)はディーゼル燃料と適合性があり、粘度はわずかに高い。しかし、このフラクションの本当の制限は、パラフィン直鎖と関連する乏しい冷却温度特性(曇り温度及び鋳込み温度)に関し、20℃を超える。この理由のため、“スーパーセタン”フラクションは従来のディーゼルとの混合物で用いることができるが、冬の期間は使えない。
【0005】
欧州特許第1396531号明細書は、炭化水素成分の植物又は動物由来の混合物からの製造のための方法を記載している。73%のイソ-パラフィンの含有量を有する混合物の形成が記載されている。該方法は、向流原理で操作する前水素化工程、水素化脱酸素化工程(HDO)及び異性化工程を含む。穏やかな条件下で行われる前水素化工程は、存在する二重結合を飽和し、望ましくない副作用をその後の処理工程で回避するのに必要である。異性化工程では、向流で操作して先のHDO工程から生じる供給物に含有される水によって引き起こされる失活から該触媒を保護するのが絶対に不可欠である。向流で操作するときは、炭化水素供給物に含有される水の一部を、前記供給物が触媒床の全触媒と接触する前に除去する。
【発明の概要】
【0006】
ここで、ディーゼル燃料又はガス油のための成分として用いることのできる炭化水素混合物の、脂肪酸エステルを場合によって一定量の遊離脂肪酸、例えば植物油、例えばヒマワリ、菜種、カノーラ、パーム油、又は松ノ木のパルプに含有される脂肪油(トール油)と共に含有する生物由来の混合物の水素化脱酸素化と、その後に行われるイソパラフィン含有量が80%を超えて残りがn-パラフィンである炭化水素混合物を得るための水素化異性化による製造方法が見出された。
水素化異性化工程に用いられる特別な触媒組成物は公知な方法で得られるカットよりもディーゼル燃料として高質な生成物を得るだけでなく、それらを水の存在下で失活することなく用いるか、又はいかなる場合にも穏やかな温度上昇によって水素化異性化の最中に容易に再生させる特徴も有する。
【0007】
従って、本発明の目的は、ディーゼル燃料又はディーゼル燃料の成分として用いることのできる炭化水素フラクションを、脂肪酸エステルを含有し、場合によって遊離脂肪酸も含有する生物由来の混合物から出発して製造する方法であって、以下の工程:
1)生物由来の混合物の水素化脱酸素化工程;
2)可能な精製処理後に工程(1)から生じる混合物の水素化異性化工程、該水素化異性化工程は、以下の成分:
a)30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500m2/gより大きい表面積、0.3〜1.3ml/gの細孔容積、40Åより小さい平均細孔直径を有する完全にアモルファスなマイクロ-メソポーラスシリカアルミナを含む酸性キャリア、
b)VIII群の1種以上の金属を含有し、場合によってはVIB群の1種以上の金属と混合される金属成分、
を含む触媒システムの存在下で行われる、
を含む方法に関する。
【0008】
本発明の方法に用いられる生物由来の混合物は脂肪酸エステルと場合によって一定量の遊離脂肪酸を含有し、それらは植物又は動物由来の混合物にすることができる。一定量の脂肪酸は、例えば生物由来の全混合物に対して2〜20質量%で変化し得る。前記混合物に含有される脂肪酸エステルは典型的には脂肪酸トリグリセリドであり、脂肪酸の炭化水素鎖が12〜24個の炭素原子を含有し、モノ-又はポリ-不飽和にすることができる。生物由来の混合物は、植物油、植物脂肪、動物脂肪、魚油又はそれらの混合物から選択することができる。植物油又は脂肪は、ヒマワリ、菜種、カノーラ、パーム、大豆、ヘンプ、オリーブ、リンシード、ピーナッツ、ヒマシ、からし菜、ココナッツ油又は松ノ木のパルプに含有される脂肪油(トール油)、又はそれらの混合物にすることができる。動物油又は脂肪は、ベーコン脂肪、ラード、獣脂、乳脂、及びそれらの混合物から選択することができる。食品産業のリサイクルされた脂肪又は油を動物又は植物由来でも用いることができる。植物油又は脂肪は、遺伝子操作によって選択される植物から誘導することもできる。
本発明の方法に用いられる生物由来の混合物は、該方法に供給される前に他の成分、例えば1種以上の炭化水素と混合することもできる。
第一の工程(HDO工程)では、生物由来の混合物が水素化脱酸素化触媒の存在下で水素により水素化脱酸素される。
この工程では、トリグリセリドのエステル鎖に存在する二重結合の水素化、トリグリセリド構造のクラッキング、及び脱炭酸反応及び水素化の両方と水の形成による脱酸素化がある。
【0009】
用いることのできる触媒は、好適には担持されているVIII群及びVIB群の金属から選択される1種以上の金属を含有する当技術分野で公知の全ての水素化触媒である。このために好適な担体は、1種以上の金属酸化物、好ましくはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア又はそれらの混合物からなる。金属は、好ましくはPd、Pt、Ni又は金属Ni-Mo、Ni-W、Co-Mo及びCo-Wの組から選択され、Ni-Mo及びCo-Moが好ましい。これらの触媒は、典型的には酸化物キャリアの金属の好適な塩の溶液による含浸によって調製される。含浸に続き、前駆体塩を分解して担持された金属を得るのに好適な雰囲気中の熱処理を行う。連続的な含浸を行って所望の充填濃度の金属に到達し、種々の金属の場合にはそれらの担持を差別化することもできる。前記触媒の製造方法は含浸以外にも、金属自体の塩水からの金属前駆体をキャリア上に沈殿させるか、又は種々の触媒成分、すなわち金属及びキャリアの共沈殿させることも知られている。
触媒組成物はゼオライト上のNi-Mo-P、Pd/ゼオライト、Pt/MSAなども用いることができ、この中でMSAは特別な性質を有するシリカアルミナであり、これは欧州特許第340868号、第659478号、第812804号明細書に記載されており、それに続く水素化異性化工程に用いられる触媒組成物のためのキャリアとしても用いられる。本発明のHDO工程に良く用いることのできる触媒は、例えばJ.T. Richardson, “Principal of catalyst development”, Plenum Press, New York, 1989, Charter 6に記載されている。
Ni-Mo、Ni-W、Co-Mo及びCo-Wタイプの触媒は予め硫化される。前硫化手順は、公知の技術で行われる。
【0010】
該触媒を硫化形態で保つために、硫化剤、例えばジメチルジスルフィドを生物由来の充填物を前記充填物の可能な精製工程の後に0.02〜0.5質量%(140-3400 ppmS)の量で同時に供給する。
あるいは、充填物内の同じ全S含有量にほぼ相当するような高い濃度のS含有量(S>1%)を有する"直留"ガスの共供給で行うことができる。
HDO反応は1つ以上の触媒床を含む反応領域、1つ以上の反応器で行う。好ましい特徴では、典型的な固定床水素処理用反応器で行われる。水素及び生物由来のフィードストックの流れは、並流又は向流で送ることができる。該反応器は断熱触媒床を2つ以上有することができる。発熱反応の場合、熱の製造によって各触媒床の温度が上昇する。触媒床の間に決まった温度で水素流及び/又は液体フィードを供給することにより、一定又は上昇温度プロフィールを得ることができる。この操作手順は通常は“分割フィード”として示される。
【0011】
それとは別に断熱層反応器に、チューブ-束反応器を手段として用いることができる。触媒は好適にはチューブ内に充填され、ジアテルミー液体(ダウサーム油)をマントル側に送り、反応熱を除去する。
断熱層又はチューブ束である反応器における熱的プロフィールのより良い調整のために、反応器自体を流出液の一部の再循環を、リサイクル用反応器として公知な類型で行うことができる。リサイクル機能は反応器における新鮮なフィードを希釈し、それによって反応の発熱により熱ピークを制限することである。リサイクル比率、すなわちリサイクルされたフラクションの新鮮な充填物に対する量は、0.5〜5質量/質量にすることができる。
本用途に用いることのできるさらなる反応器配置は懸濁液反応器であり、該水素化脱酸素化触媒は好適には微小球で形成され、反応環境下で分散される。この場合の気体-液体-固体混合は、機械的攪拌又は反応流体の強制的な再循環によって行うことができる。
【0012】
HDO工程は、好ましくは25〜70bar、好ましくは30〜50barの圧力、及び240〜450℃、好ましくは270〜430℃の温度で行われる。好ましくは、0.5〜2時間-1、さらに好ましくは0.5〜1時間-1のLHSVで操作する。H2/生物由来の混合物比率は好ましくは400〜2,000Nl/lである。
HDO工程の前に、生物由来のフィードストックを好適には処理し、場合によっては充填物に含有されるアルカリ金属(例えばNa、K)及びアルカリ土類金属(例えばCa)の含有物を除去することができる。この前処理は、吸着により好適な材料上で行うことができる。例えば、公知の浸透技術を、酸性白土又はクレイ、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、 スメクタイト、酸性海泡石などで充填されたカラムに用いることができる。このために、Filtrol、Tonsil、Bentolites H及びL、SAT-1などの市販の生成物を用いることができる。
あるいは、イオン交換樹脂を用いるか、又は例えば硫酸、硝酸又は塩酸との接触により、好ましくは室温及び大気圧下で微酸性洗浄を得ることができる。
【0013】
HDO工程(1)の流出液は、好ましくはその後の水素化異性化工程に送られる前に精製処理に付される。精製処理は分離工程及び洗浄工程を含むことができる。この好ましい特徴では、工程(1)の流出液は高圧ガス-液体分離器に送られる。本質的に水素、水、CO及びCO2及び軽質パラフィン(C4-)からなるガス相が回収される。NH3、PH3及びH2Sは少量で存在してもよい。分離後、ガス相を冷却して、水(場合によっては少量のアルコール及びカルボン酸を含有する)及び凝縮可能炭化水素を凝縮によって分離する。残りのガス相を精製し、水素の反応工程(1)へのリサイクルを可能にする。当技術分野で公知の方法が、例えばNaOH又はCa(OH)2の水溶液による苛性洗浄、又はアミン(例えばMEA、モノエタノールアミン、又はDEA、ジエタノールアミン)による既知の精製技術による精製に用いられる。精製終了後、CO2、H2S、PH3及びNH3を除去し、得られたガス状フラクションは本質的にH2と少量のCOからなる。リサイクルされたガスにおけるCOの蓄積を制限するために、キュプロアンモニア洗浄又はメタン生成により当業者に公知の技術で除去することができる。
高圧分離器で分離される液相は炭化水素フラクションからなり、本質的には14〜21個、一般的には15〜19個の数の炭素原子を有する直鎖パラフィンからなる。分離器の操作条件によって、液体フラクションは少量のH2O及び酸素化化合物、例えばアルコール及びカルボニル化合物などを含有し得る。残渣Sは10ppmよりも低くできる。液体フラクションはガス状炭化水素、例えばCH4又は窒素又は水素によりストリッパーで洗浄し、水含有量をさらに減少させることができる。
【0014】
得られた炭化水素混合物を、その後の水素化異性化工程(2)に供給する。水素化異性化工程は水素及び以下を含む触媒組成物の存在下で行われる。
a)30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500m2/gより大きい表面積、0.3〜1.3ml/gの細孔容積、及び40Åより小さい平均細孔直径を有する完全にアモルファスなマイクロ-メソポーラスシリカアルミナを含む酸性キャリア、
b)VIII群の1種以上の金属を含有し、場合によってVIB群の1種以上の金属と混合される金属成分。
本発明に用いられる触媒組成物の酸性キャリア(a)は、好ましくは50〜300のSiO2/Al2O3モル比を有するシリカアルミナを含む。
好ましい特徴では、酸性キャリア(a)が0.3〜0.6ml/gの多孔度を有するシリカアルミナを含む。
【0015】
本発明の水素化異性化工程における触媒組成物のキャリア(a)として用いることのできる完全にアモルファスなマイクロ-メソポーラスシリカアルミナは、米国特許第5,049,536号明細書、欧州特許第659478号、第812804号明細書に記載されており、MSAと呼ばれている。それらの粉末XRDパターンは結晶質構造を有さず、いかなるピークも示さない。米国特許第5,049,536号明細書、欧州特許第659478号、第812804号明細書はまた、キャリア(a)として好適なシリカアルミナを調製するための種々な方法も記載している。例えば本発明の方法に用いることのできるシリカアルミナは、欧州特許第659478号明細書のように、テトラ-アルキルアンモニウムヒドロキシド、Al2O3への加水分解をすることができるアルミニウム化合物、及びSiO2への加水分解をすることができるシリカン化合物から出発して調製することができ、前記テトラ-アルキルアンモニウムヒドロキシドはテトラ(C2-C5)アルキルアンモニウムヒドロキシドであり、前記加水分解性アルミニウム化合物はアルミニウムトリ(C2-C4)アルコキシドであり、及び前記加水分解性シリカン化合物はテトラ(C1-C5)アルキルオルトシリケートである。これらの試薬は加水分解反応の副生成物として生じる任意のアルコールの大気圧下沸点異常の温度で操作する加水分解及びゲル化に、前記アルコールを反応環境から除去又は実質的に除去することなく付す。製造されたゲルを乾燥及び焼成させ、好ましくは酸化性雰囲気中の500〜700℃の温度で6-10時間行う。好ましくは、テトラ-アルキルアンモニウムヒドロキシド及びアルミニウムトリアルコキシドの水溶液を調製することによって操作し、テトラ-アルキルオルトシリケートを前記水溶液に加えて加水分解温度よりも低い温度で操作し、30/1〜500/1のSiO2/Al2O3モル比、0.05/1〜0.2/1のテトラ-アルキルアンモニウムヒドロキシド/SiO2モル比、及び5/1〜40/1のH2O/SiO2モル比にあたるような量の試薬を用いる。加水分解及びゲル化を約65℃〜約110℃の温度まで加熱することによって引き起こし、オートクレーブ中の該系の自生圧力又は大気圧下コンデンサーに備えられた反応器中で操作する。
【0016】
欧州特許第812804号明細書では、水素化異性化工程のための触媒組成物の成分(a)として用いることのできるシリカアルミナは、以下の工程を含む方法によって調製することができる。
-混合物をテトラ-アルキルオルトシリケート、C3-C6アルキルアルコール又はジアルコール、式R1(R2)3NOHを有するテトラ-アルキルアンモニウムヒドロキシド(式中、R1はC3-C7アルキルであり、R2はC1又はC3-C7アルキルである)から出発して加水分解性アルミニウム化合物の存在下で調製する工程、モル比は以下の範囲にある:
アルコール/SiO220
R1(R2)3NOH/SiO2=0.05-0.4
H2O/SiO2=1-40
0より大きく0.02より小さいAl2O3/SiO2
-前記混合物を加水分解とそれに続いて存在するアルコール又はアルコールの混合物の沸点に近い温度のゲル化に付す工程;
-得られたゲルを乾燥及び焼成に付す工程。
【0017】
本発明の方法で用いられる触媒の酸性キャリア(a)は、従来の結合剤、例えば酸化アルミニウム、ボヘマイト又は疑似ボヘマイトなどを含有する押出生成物の形態でよい。押出生成物は当業者に既知の技術で調製することができる。シリカアルミナ及び結合剤は、30:70〜90:10、好ましくは50:50〜70:30の質量比で前混合することができる。混合終了時に、得られた生成物を所望の最終形態、例えば押出ペレット又は錠剤に固める。好ましい実施態様では、欧州特許第550922号及び第665055号明細書に記載されている方法及び結合剤を用いることができ、後者が好ましく、その内容をここに参照として組み込む。
【0018】
押出生成物の形態の酸性成分(a)の典型的な調製方法(欧州特許第665055号明細書)は、以下の工程:
(A)テトラ-アルキルアンモニウムヒドロキシド(TAA-OH)、Al2O3に加水分解することのできる可溶性アルミニウム化合物、及びSiO2に加水分解することのできるケイ素化合物の水溶液を、以下のモル比:
SiO2/Al2O3を30/1〜500/1、
TAA-OH/SiO2を0.05/1〜0.2/1、
H2O/SiO2を5/1〜40/1、
で調製する工程、
(B)得られた溶液を加熱して、その加水分解及びゲル化を引き起こし、0.01〜100Pa秒の粘度を有する混合物Aを得る工程;
(C)混合物Aに、まずボヘマイト又は疑似ボヘマイトの群に属する結合剤を0.05〜0.5の混合物Aとの質量比で加え、それに続いて鉱酸又は有機酸を100gの結合剤当たり0.5〜8.0gの量で加える工程;
(D)温度(C)で得られた混合物を40〜90℃の温度に均一なペーストが得られるまで加熱し、これを押出及び顆粒化に付す工程;
(E)押出生成物を酸化性雰囲気中で乾燥及び焼成する工程、
を含む。
【0019】
可塑剤、例えばメチルセルロースも好ましくは工程(C)に加え、均一且つ容易に加工可能なペーストの形態を製造する。
この場合は顆粒状酸キャリアが得られ、好ましくは30〜70質量%の量の不活性無機結合剤を含有し、残りの量が結合剤を用いない同じシリカアルミナのための上記多孔度、表面張力及び構造に対して同じ特性を本質的に有するアモルファスシリカアルミナからなる。
本発明の方法の水素化異性化工程に用いられる触媒組成物の金属成分(b)に含有される金属に対して、これはVIII群の金属から選択され、任意にVIB群の1種以上の金属と混合される。VIII群の金属のみを含有する組成物が好ましい。VIII群の金属が、好ましくはPt、Pd、Ni及びCoから選択される。特に、金属成分がVIII群の金属のみを含有するとき、該金属は好ましくはPt、Pd及びNiから選択される。金属成分がVIII群の1種以上の金属及びVIB群の1種以上の金属の両方を含有し、VIII群の金属が好ましくはNi及びCoから選択される。VIB群の金属が好ましくはMo及びWから選択される。
【0020】
VIII群の金属は、好ましくは触媒組成物の全質量に対して0.1〜5質量%の量である。VIB群の金属が存在するときは、触媒組成物の全質量に対して1〜50質量%の量、さらに好ましくは5〜35質量%の量である。金属の質量%は金属成分として表現される金属含有量である。最終的な触媒では焼成後に前記金属が酸化物の形態である。
水素化異性化工程(2)に用いられる触媒組成物に含有されるVIII群及び任意にVI群の金属は、キャリア(a)上に当業者に公知の全ての技術で沈着させることができる。VIII群の1種以上の金属を含有する本発明の水素化異性化工程によく用いることのできる触媒組成物、及びそれらの調製は欧州特許第582347号、第1101813号及びWO 2005/103207に記載されている。
特に、欧州特許第582347号明細書はn-パラフィンの水素化異性化に用いることができ、VIII群の1種以上の金属及びX線でアモルファスなシリカ及びアルミナゲルのキャリアを含有し、30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500〜1000m2/gの表面積、0.3〜0.6ml/gの細孔容積及び一般的に10〜30Åの細孔直径を有する触媒組成物を記載している。欧州特許第1101813号明細書は、中間蒸留物の調製に用いることができ、VIII群の1種以上の金属及びX線でアモルファスな焼成されたシリカ及びアルミナゲルのキャリアを含有し、30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500〜1000m2/gの表面積、0.2〜0.8ml/gの細孔容積及び10〜40Åの平均細孔直径を有する触媒組成物を記載している。
【0021】
WO 2005/103207は、蒸留物を高質にするために用いることができ、Pt、Pd、Ir、Ru、Rh及びReから選択される1種以上の金属及びX線でアモルファスなシリカアルミナキャリアを含有し、30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500m2/gより大きい表面積、0.3〜1.3ml/gの細孔容積及び40Å未満の平均細孔直径を有する触媒組成物を記載している。
一般に、水素化異性化工程(2)に用いられ、VIII群の金属のみを含有する組成物では、該金属を上記特許文献に記載の調製に従って含浸又はイオン交換によって導入することができる。第一の技術では、酸性成分(a)、その押出形態、及び好ましくは欧州特許第665055号明細書に記載されている方法で調製される押出形態を、VIII群の金属の化合物の水溶液で湿らせ、例えば室温下で1〜4のpHで操作する。水溶液は好ましくは0.2〜2.0のg/lとして表される金属の濃度を有する。得られた生成物を好ましくは空気中の室温下で乾燥し、酸化性雰囲気中の200〜600℃の温度で焼成する。
【0022】
アルコール含浸の場合、酸成分(a)、その押出形態、及び好ましくは欧州特許第665055号明細書に記載されている方法で調製された押出形態を、該金属を含有するアルコール溶液に懸濁させる。含浸後、固体を乾燥させて焼成する。
イオン交換技術により、酸成分(a)、その押出形態、及び好ましくは欧州特許第665055号明細書に記載されている方法で調製された押出形態を、金属の複合体又は塩の水溶液に懸濁し、室温及び6〜10のpHで操作する。イオン交換後に固体を分離し、水で洗浄し、乾燥し、及び最後に不活性且つ酸化性雰囲気中で熱処理する。このために用いることのできる温度は200〜600℃である。
上記調製によく用いることのできる金属の化合物は、H2PtCl6、Pt(NH3)4(OH)2、Pt(NH3)4Cl2、Pd(NH3)4(OH)2、PdCl2、(CH3COO)2Ni、(CH3COO)2Coである。触媒組成物がVIII群の2種以上の金属を含むとき、含浸は以下のように行う。酸成分(a)、その押出形態、及び好ましくは欧州特許第665055号明細書に記載されている方法で調製された押出形態を第一の金属化合物の溶液で湿らせ、得られた生成物を乾燥させ、任意に焼成し、第二の金属化合物の溶液で含浸する。生成物を乾燥させ、続いて酸化性雰囲気中に200〜600℃の温度で焼成する。あるいは、異なる金属の2種以上の化合物を含有する単一の水溶液を、前記金属を同時に導入するのに用いることができる。
【0023】
用いられる前に、触媒は例えば還元処理、好ましくは乾燥及びその後の還元による公知の技術で活性化される。乾燥は不活性雰囲気中の25〜100℃の温度で行われ、還元が還元性雰囲気(H2)中の300〜450℃の温度、好ましくは1〜50barの圧力における触媒の熱処理によって得られる。本発明の水素化異性化工程によく用いることのでき、VIII群の1種以上の金属及びさらにVIB群の1種意所の金属を含有する触媒組成物、及びそれらの調製が欧州特許第908231号及び第1050571号明細書に記載されている。特に、欧州特許第908231は、VIB及びVIII群に属する金属及びX線でアモルファスなシリカ及びアルミナゲルのキャリアの混合物を含有し、30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500〜1000m2/gの表面積、0.3〜0.6ml/gの細孔容積及び10〜40Åの平均細孔直径を有する触媒組成物を記載している。水素化異性化触媒が金属層(b)におけるVIB群の金属も含有するとき、触媒は水又はアルコール含浸によって調製することができる。さらに詳細には、第一の技術により、シリカアルミナ、その押出形態、及び好ましくは欧州特許第665055号明細書に記載されている方法で調製される押出形態をVIB群の所望の金属の化合物の水溶液で湿らせ、室温又は室温に近い温度で操作する。水含浸後、固体を乾燥させ、新たな含浸をVIII群の所望の金属の化合物の水溶液で行う。水含浸後、固体を再び乾燥させて酸化性雰囲気中で熱処理する。この熱処理に好適な温度は200〜600℃である。金属相の水含浸を単一の工程で行うこともでき、シリカアルミナ-系の酸性キャリアをVIB及びVIII群の両方の金属化合物を含有する単一の水溶液で湿らせ、その後に上記と同じ操作手順で行う。アルコール含浸技術では、シリカアルミナ、その押出形態、及び好ましくは欧州特許第665055号明細書に記載されている方法で調製される押出形態を、VIB群の金属の化合物及びVIII群の金属の化合物のアルコール溶液に懸濁し、室温又は室温に近い温度で操作する。含浸後、固体を好ましくは空気中、約100℃の温度で乾燥させ、酸化性雰囲気中、好ましくは空気中で熱処理する。
【0024】
最終的な水素化異性化触媒を、例えば欧州特許第1101813号明細書に記載されているような異なる形態(例えば円筒状、三葉状など)を有する押出生成物で調合及び形成することができる。
本発明の水素化異性化工程に用いられる触媒組成物は水抵抗性を有する。水阻害効果は触媒活性で観察することができ、これは温度を上昇させることによって回復させることができるが不可逆的な失活が検出されない。3〜5の数℃の増加は、典型的には炭化水素充填物において1000-2000ppmのH2Oで引き起こされる活性減少を回復するのに十分である。好ましくは、約1000ppm、さらに好ましくは300ppm未満の濃度の水含有量で操作する。
水素化異性化工程のための反応器配置は固定床反応器である。この場合の熱制御は反応がわずかに発熱であるために重要ではない。このため、断熱層反応器が好適である。いかなる場合もチューブ束反応器を用いることもできる。
水素化脱酸素化工程から生じる液体フィードは、水素に対して並流又は向流で反応器に送ることができる。向流手段が好ましいのは、液体フィードが該方法の第一工程で転化されない有意な濃度の水及び/又は酸素化合物(酸素の>300ppm)を含有するときである。
【0025】
従って、存在する水又は酸素化合物によって水素化異性化中に形成される水が、ガス相において触媒床の第一部分で除去され、それによって触媒の残りとの接触時間が減少する。この触媒工程に特に好ましい配置は2層以上の数の層を有する反応器であり、その中で水素化脱酸素化工程から生じる液体炭化水素流で覆われ、それによってガス状の水素流で覆われている最後の層に対応する第一の層が、触媒だけでなく構造化された不活性物質の充填剤、例えばセラミック又はステンレス鋼、又は軽石、アルファ-アルミナ、ガラスなどの不活性物質のペレット又は小球からなる。充填剤の役割は気体-液体接触を行うことであり、異性化される炭化水素充填物が触媒床上を流れる前にガス状水素流と出合い、それによってさらに無水化される。
水素化異性化は、250〜450℃、好ましくは280〜380℃の温度、及び25〜70bar、好ましくは30〜50barの圧力で行うことができる。好ましくは0.5〜2時間-1のLHSVで操作する。H2/HCの比率は好ましくは200〜1000Nl/lである。
水素化異性化工程から生じる混合物を蒸留に付し、ディーゼル燃料として用いることのできる精製された炭化水素混合物を得る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ディーゼル燃料として用いることのできる炭化水素フラクションを、脂肪酸エステル及び任意に一定量の遊離脂肪酸を含有する生物由来の混合物(生物混合物)から出発して製造するための本発明の方法に用いることのできるプラントスキーム。
【図2】水の分離後にn-パラフィンからなる液体生成物の特徴及び分布を示す図。
【図3】実施例2及び3に関する方法の全物質平衡を示し、水素化脱酸素化工程は反応器DEOXで行われ、SEPはガス液体分離器であり、及びISOMは水素化異性化工程が行われる反応器。
【0027】
図1は、ディーゼル燃料として用いることのできる炭化水素フラクションを、脂肪酸エステル及び任意に一定量の遊離脂肪酸を含有する生物由来の混合物(生物混合物)から出発して製造するための本発明の方法に用いることのできるプラントスキームを説明している。図1のスキームは、水素化脱酸素化(DEOX反応器)、高圧分離器及び洗浄による精製(SEP)及び水素化異性化(ISOM反応器)工程に関する記載に従う。該スキームでは、水素化異性化反応器の後に分離器及び蒸留器による分離工程も存在し、得られたガス油を単離する。破線は第一の工程から生じる流出液の可能なリサイクルを示している。
【0028】
本発明の目的である該方法の一部の実際における実施態様例は、本発明の特別な特徴の単なる説明の目的のためのさらなる詳細な記載のために提供されるが、本発明の全範囲をそれに限定するとは考えない。
実施例1 触媒Pt/MSAの調製
試薬及び材料
以下の市販の試薬を以下に記載される調製に用いた。
テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPA-OH)SACHEM
アルミニウムトリ-イソプロポキシドFLUKA
テトラ-エチルシリケートDYNAMIT NOBEL
アルミナ(VERSAL 250、疑似ボヘマイト)LAROCHE
メチルセルロース(METHOCEL)FLUKA
上記されていないが用いた試薬及び/又は溶媒は広く用いられているものであり、当業者が容易に見出すことができる。
【0029】
調製例
(i)シリカアルミナゲルの調製
100Lの反応器をテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPA-OH)の脱塩水における1質量%の溶液を75L用いて予め洗浄し、攪拌下で6時間120℃で液体を保持した。洗浄用溶液を排出し、23.5Lの脱塩水、14.4質量%のTPA-OH(13.8モル)水溶液を19.6kg、及び600gのアルミニウムトリ-イソプロポキシド(2.94モル)を導入した。混合物を60℃まで加熱して攪拌下のこの温度で1時間保持し、透明な溶液を得た。溶液温度を90℃まで上げ、31.1kgのテトラ-エチルシリケート(149モル)を素早く加えた。反応器を密閉し、攪拌速度を約1.2m/秒に調節して該混合物を攪拌下で3時間80〜90℃の温度に温度自動調節制御を用いて保持し、加水分解反応で製造された熱を除去した。反応器の圧力を約0.2MPagに上昇させた。最後に、反応混合物を放出して室温まで冷却させ、以下の組成モル比を有する均一で比較的流動体のゲル(粘度0.011Pa・s)を得た:
SiO2/Al2O3=101
TPA-OH/SiO2=0.093
H2O/SiO2=21
【0030】
ii)押出生成物の調製
1150gのアルミナ(VERSAL 150)を予め3時間空気中の150℃で乾燥し、190gのメチルセルロースを10Lのプラウミキサーに入れ、1分当たり70-80回転の攪拌速度で保持した。5kgのシリカアルミナゲルを上記のように調製して約20時間放置した後に約15分間かけて加え、混合物を攪拌しながら約1時間放置し、6gの氷酢酸を加えてミキサーの温度を約60℃にした後に均一なペーストが得られるまで攪拌を続け、その後の押出に望ましい堅さを与えた。
上記のように得られた均一なペーストをHUTTタイプの押出機に入れて押出し、所望のサイズ(約2×4mm)を有する円筒状ペレットに切り出した。生成物を約6-8時間放置し、乾燥させて100℃の空気流中に5時間保持した。最後に550℃のマッフルにおいて窒素流下で3時間、及び空気流下でさらに8時間焼成した。
酸性の多孔性固体が得られ、これは本質的にシリカ/アルミナからなり(各最初の試薬に対して収率95%)、608m2/gのBETを有した。
【0031】
iii)キャリアの白金による含浸
4.5g/Lのヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6、0.133mmoles)を含有する12.1mLの0.6M塩酸水溶液を、穏やかな攪拌下で上記のように調製した10gの多孔性固体を含有するガラス受けに滴下した。得られた混合物を攪拌下で16時間室温に放置した。60℃の空気流下で約1時間かけて水を蒸発させた。得られた固体を乾燥させて150℃で2時間保持し、マッフルで加熱して空気流中室温から500まで3時間かけて焼成した。最後に担持された触媒が得られ、これを以下の実施例3に記載された水素化異性化工程で用い、これは以下の特性を有した:
59.8質量%のアモルファスシリカアルミナ(SiO2/Al2O3モル比=102)
39.9質量%のアルミナ(疑似ボヘマイト)
0.3質量%の白金
細孔容積:0.6ml/g
BET:600m2/g
破砕強度:10kg/cm(放射状);
90kg/cm2(軸方向)
【0032】
実施例2 水素化脱酸素化工程(HDO)
実験は表1に示されている特徴を有する大豆油(精製大豆油Sipral)を供給する連続的反応器で行った。
植物油を、第一工程に水素と並流で硫化形態におけるNiMo/Al2O3に基づく市販の水素化触媒UOP UF 210の存在下で供給した。触媒の硫化は現場で行い、ジメチルジスルフィド(DMDS)を徐々に3〜9質量%で変化する濃度で含有するガス油を、徐々に230〜370℃の範囲内で変化する温度及び70barの圧力で、1300Nl/lのH2/ガス油比率及び0.8 時間-1のLHSVにより用いた。植物油を反応器に少量のDMDS(0.025%)の存在下で供給し、触媒を硫化形態に保持した。
フィード及び水素を反応器に下降流様式で通した。
用いた操作条件は以下である:
・平均温度:340-350℃
・LHSV:1時間-1
・圧力:35bar
・H2/油:1500Nl/l
【0033】
表1

*()内の最初の数は炭素原子数を意味し、第二の数は不飽和度を意味する。
流出液生成物は、気体/液体分離器でH2、CO/CO2及びほぼ全てがC3H8からなる軽質炭化水素からなるガス状フラクションから分離した。
液体生成物は、水の分離後にn-パラフィンからなり、その特徴及び分布を以下の表2及び図2に示す。
【0034】
表2

【0035】
実施例3 水素化異性化工程
実施例2に記載された脱酸素化工程で得られる生成物は100ppmの残渣H2Oを含有し、水素と並流で前述の実施例1で調製されたPt/MSA触媒の存在下で処理した。用いた操作条件を表3に示す。
【0036】
表3

【0037】
水素化異性化反応器からの流出液は気相及び液相からなり、該2種の相は気体/液体分離器で分離され、気相はC3/C4軽質パラフィン(LPG)からなるGCで分析され、分離された液相は5〜22個の数の炭素原子を有するパラフィンを含有し、GCによって分析して異性化濃度を評価するとこれらの操作条件下で79%であり、これを用いて蒸留曲線を評価した。
続いて炭化水素を蒸留カラムに送り、ガソリンフラクション(12.7%)をディーゼルフラクション(87.3%)から分離した。この後者のフラクションは12〜22個の数の炭素原子を有するパラフィンを含有することを特徴とし、主な特性を以下の表4に示す。
【0038】
表4

【0039】
図3は実施例2及び3に関する方法の全物質平衡を示しており、水素化脱酸素化工程は反応器DEOXで行われ、SEPはガス液体分離器であり、及びISOMは水素化異性化工程が行われる反応器である。水素化異性化反応器の後に蒸留カラムが記載されており、そこからディーゼルフラクションが回収される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル燃料又はディーゼル燃料の成分として用いることのできる炭化水素フラクションを、脂肪酸エステルを含有し、場合によって遊離脂肪酸も含有する生物由来の混合物から出発して製造する方法であって、以下の工程:
1)生物由来の混合物の水素化脱酸素化工程;
2)可能な精製処理後に工程(1)から生じる混合物の水素化異性化工程、該水素化異性化工程は、以下の成分:
a)30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500m2/gより大きい表面積、0.3〜1.3ml/gの細孔容積、40Åより小さい平均細孔直径を有する完全にアモルファスなマイクロ-メソポーラスシリカアルミナを含む酸性キャリア、
b)VIII群の1種以上の金属を含有し、場合によってはVIB群の1種以上の金属と混合される金属成分、
を含む触媒システムの存在下で行われる、
を含む方法。
【請求項2】
生物由来の混合物が植物又は動物由来の混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
生物由来の混合物に含有される脂肪酸エステルが脂肪酸トリグリセリドであり、該脂肪酸の炭化水素鎖が12〜24個の炭素原子を含有し且つモノ-又はポリ-不飽和である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
生物由来の混合物が、植物油、植物脂肪、動物脂肪、魚油又はそれらの混合物から選択され得る、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
場合によっては遺伝子操作によって選択される植物から生じる前記植物油又は脂肪が、ヒマワリ、菜種、カノーラ、パーム、大豆、ヘンプ、オリーブ、リンシード、からし菜、ピーナッツ、ヒマシ、ココナッツの油又は松ノ木のパルプに含有される脂肪油(トール油)、食品産業のリサイクルされた油又は脂肪及びそれらの混合物から選択され、前記動物油又は脂肪が、ベーコン脂肪、ラード、獣脂、乳脂、食品産業のリサイクルされた油又は脂肪及びそれらの混合物から選択される、請求項4記載の方法。
【請求項6】
生物由来の混合物が、1種以上の炭化水素と工程(1)に供給される前に混合される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
工程(1)が、水素及びキャリア及びVIII群及びVIB群の金属から選択される1種以上の金属を含有する水素化触媒の存在下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
工程(1)の触媒のためのキャリアが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア又はそれらの混合物から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
工程(1)の触媒に含有される金属が、Pd、Pt、Ni又は金属Ni-Mo、Ni-W、Co-Mo及びCo-Wの組から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項10】
工程(1)の触媒が、触媒組成物であるゼオライト上のNi-Mo-P、Pd/ゼオライト、Pt/MSAから選択される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
工程(1)が、1つ以上の触媒床を含む反応領域において、1つ以上の反応器で行われる、請求項1又は7記載の方法。
【請求項12】
工程(1)が固定床水素処理用反応器で行われる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
工程(1)において水素流及び生物由来のフィードストックを並流又は向流で送ることができる、請求項7、11又は12記載の方法。
【請求項14】
前記反応器が2層以上の断熱層を有する、請求項7、11、12又は13記載の方法。
【請求項15】
一定温度の水素及び/又はフィードストック液体の流れが1つの触媒床ともう1つの触媒床の間に送られ、一定又は上昇温度プロフィールを製造する、請求項11、12又は14記載の方法。
【請求項16】
前記反応器がチューブ-束反応器であり、該チューブ内に充填された触媒及びマントル側に送られるジアテルミー液体を有する、請求項7又は11記載の方法。
【請求項17】
前記反応器が流出液の一部を再循環して操作される、請求項14又は16記載の方法。
【請求項18】
リサイクル比率、すなわち、リサイクルされたフラクションの新鮮なフィードストックに対する量が0.5〜5質量/質量である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
懸濁液反応器が用いられ、前記水素化脱酸素化触媒が微小球からなり反応環境下に分散され、混合工程が機械的攪拌又は反応流体の強制的な再循環によって行われる、請求項7記載の方法。
【請求項20】
工程(1)が、25〜70barの圧力及び240〜450℃の温度で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項21】
270〜430℃の温度で行われる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
圧力が30〜50barである、請求項20記載の方法。
【請求項23】
0.5〜2時間-1のLHSVで行われる、請求項20記載の方法。
【請求項24】
工程(1)において400〜2,000Nl/lのH2/生物由来の混合物の比率が用いられる、請求項20記載の方法。
【請求項25】
Ni-Mo、Ni-W、Co-Mo及びCo-Wに基づく触媒が用いられる前に硫化される、請求項7又は9記載の方法。
【請求項26】
前記触媒を硫化形態で保つために、硫化剤、或いは高い硫黄含有量を有する直留ガス油を前記生物由来の混合物に同時に供給される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記生物由来の混合物を工程(1)に供給する前に前処理に付し、該前処理が、吸収、イオン交換樹脂による処理又は微酸洗浄によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項28】
工程(1)から生じた混合物を水素化異性化に付す前に精製処理に付し、該精製処理が分離工程及び洗浄工程を含む、請求項1記載の方法。
【請求項29】
前記分離工程において、工程(1)から生じた混合物を高圧気体-液体分離器に送り、気相及び液相を回収する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
水素、水、CO、CO2及び軽質パラフィン(C4-)、及び場合によって少量のNH3、PH3及びH2Sを含有する気相が凝縮によって冷却されて水及び凝縮可能炭化水素が分離され、残りの気相が精製されて反応工程(1)にリサイクルされ得る水素を得る、請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記高圧分離器で分離された本質的には14〜21個の数の炭素原子を有する直鎖パラフィンからなる炭化水素フラクションの液相が、水素又は窒素又はガス状炭化水素によりストリッパーにおいてその後の水素化異性化工程(2)に供給される前に洗浄される、請求項29記載の方法。
【請求項32】
請求項1記載の方法であって、工程(2)が水素及び触媒システムの存在下で行われ、該触媒システムが、
a)30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500m2/gより大きい表面積、0.3〜1.3ml/gの細孔容積、40Åより小さい平均細孔直径を有する完全にアモルファスなマイクロ-メソポーラスシリカアルミナを含む酸性キャリア、
b)VIII群の1種以上の金属を含有し、場合によってVIB群の1種以上の金属と混合される金属成分、
を含む、方法。
【請求項33】
工程(2)において、酸性キャリア(a)に含有されるシリカアルミナが50〜300のSiO2/Al2O3モル比を有する、請求項1又は32記載の方法。
【請求項34】
工程(2)において、酸性キャリア(a)に含有されるシリカアルミナが0.3〜0.6ml/gの多孔度を有する、請求項1又は32記載の方法。
【請求項35】
工程(2)において、前記触媒システムの酸性成分(a)が結合剤を含有する押出生成物の形態である、請求項1記載の方法。
【請求項36】
請求項35記載の方法であって、工程(2)において、結合剤を含有する押出生成物の形態の触媒システムの酸性成分(a)が、以下の工程:
(A)テトラ-アルキルアンモニウムヒドロキシド(TAA-OH)、Al2O3に加水分解することのできる可溶性アルミニウム化合物、及びSiO2に加水分解することのできるケイ素化合物の水溶液を、以下のモル比:
SiO2/Al2O3を30/1〜500/1、
TAA-OH/SiO2を0.05/1〜0.2/1、
H2O/SiO2を5/1〜40/1、
で調製する工程、
(B)得られた溶液を加熱してその加水分解及びゲル化を引き起こし、0.01〜100Pa秒の粘度を有する混合物Aを得る工程;
(C)混合物Aに、まずボヘマイト又は疑似ボヘマイトの群に属する結合剤を0.05〜0.5の混合物Aとの質量比で加え、それに続いて鉱酸又は有機酸を100gの結合剤当たり0.5〜8.0gの量で加える工程;
(D)攪拌しながら温度(C)で得られた混合物を40〜90℃の温度に均一なペーストが得られるまで加熱し、これを押出及び顆粒化に付す工程;
(E)押出生成物を酸化性雰囲気中で乾燥及び焼成する工程、
を含む方法によって調製される、方法。
【請求項37】
工程(2)のおいて、前記触媒システムが金属成分(b)としてPt、Pd、Ni、Coから選択されるVIII群の1種以上の金属を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項38】
前記触媒システムがVIII群からの金属のみを含有し、前記金属が好ましくはPt、Pd及びNiから選択される、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記触媒システムがVIII群の1種以上の金属及びVIB群の1種以上の金属を両方含有し、VIII群の金属がNi及びCoから選択される、請求項37記載の方法。
【請求項40】
工程(2)において、前記触媒システムが金属成分(b)としてVIII群の1種以上の金属及びVIB群の1種以上の金属を両方含有し、VIB群の金属がMo及びWから選択される、請求項1、37又は39記載の方法。
【請求項41】
工程(2)の触媒システムにおいて、VIII群の金属が該触媒の全質量に対して0.1〜5質量%の量である、請求項1記載の方法。
【請求項42】
工程(2)の触媒システムにおいて、VIB群の金属が該触媒の全質量に対して1〜50質量%の量である、請求項1記載の方法。
【請求項43】
VIB群の金属が5〜35質量%の量である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
工程(2)において、前記触媒システムがVIII群の1種以上の金属及びX線でアモルファスなシリカ及びアルミナゲルのキャリアを含み、30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500〜1000m2/gの表面積、0.3〜0.6ml/gの細孔容積、10〜30Åの範囲内の平均細孔直径を有する、請求項1記載の方法。
【請求項45】
工程(2)において、前記触媒システムがVIII群の1種以上の金属及びX線でアモルファスな焼成されたシリカ及びアルミナゲルのキャリアを含み、30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500〜1000m2/gの表面積、0.8ml/g以下の細孔容積、及び10〜40Åの範囲内の平均細孔直径を有する、請求項1記載の方法。
【請求項46】
工程(2)において、前記触媒システムがPt、Pd、Ir、Ru、Rh及びReから選択される1種以上の金属及びX線でアモルファスなシリカアルミナキャリアを含み、30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500m2/gより高い表面積、0.3〜1.3ml/gの細孔容積、及び40Å未満の平均細孔直径を有する、請求項1記載の方法。
【請求項47】
工程(2)において、前記触媒システムがVIB及びVIII群に属する金属の混合物及びX線でアモルファスなシリカ及びアルミナゲルのキャリアを含有し、30〜500のSiO2/Al2O3モル比、500〜1000m2/gの範囲内の表面積、0.3〜0.6ml/gの細孔容積、及び10〜40Åの範囲内の細孔直径を有する、請求項1記載の方法。
【請求項48】
前記水素化異性化工程(2)が固定床反応式で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項49】
前記反応器が断熱層を有する、請求項48記載の方法。
【請求項50】
水素化異性化に付された混合物が前記水素化異性化反応器に該水素に対して並流又は向流で供給される、請求項1、48又は49記載の方法。
【請求項51】
請求項50記載の方法であって、向流で2層以上の数の層を有する反応器において行われ、水素化異性化に付される混合物で覆われる第一の層が構造化された不活性物質又は不活性物質のペレット又は小球の充填剤からなる、方法。
【請求項52】
水素化異性化工程(2)が250〜450℃の温度、及び25〜70barの圧力で行われる、請求項1又は32記載の方法。
【請求項53】
280〜380℃の温度で行われる、請求項52記載の方法。
【請求項54】
30〜50barの圧力で行われる、請求項52記載の方法。
【請求項55】
0.5〜2時間-1のLHSV及び200〜1000時間-1のH2/HC比で行われる、請求項52記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−509472(P2010−509472A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536634(P2009−536634)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009668
【国際公開番号】WO2008/058664
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(599068430)エニ、ソシエタ、ペル、アチオニ (16)
【氏名又は名称原語表記】ENI S.P.A.
【出願人】(500459306)ユーオーピー・エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】