説明

炭化水素改質触媒、該触媒の製造方法および該触媒を用いる改質方法

【解決手段】本発明は、炭化水素から水素を製造するための、改質触媒であって、その構成は以下の通りである:(a)マグネシウムとアルミニウムを、Mg/Al原子比で0.3〜0.6の割合で含有する、Mg−Al複合酸化物で構成された成形体;(b)前記成形体の表面に固定された皮膜状の触媒層;および(c) 前記触媒層に含まれる活性金属;を含んでなる、炭化水素改質成形触媒。
【効果】特定の成形体材料を選択することにより、機械的強度が高く、高温、高湿下の使用でも耐久性に優れた球形など成形体の触媒であって、しかも表面層にのみ薄膜状の触媒層を設けることにより、活性に優れ、しかも貴金属の使用量を低減することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭化水素の改質触媒に関し、さらに詳しくは、マグネシウムとアルミニウムとを含むMg−Al複合酸化物を用いて作成された成形体を担体とし、該担体の表面部位に活性金属を選択的に担持した炭化水素改質触媒、その製造方法ならびに該触媒を用いた改質方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
固定床の反応装置で、炭化水素と改質剤とを改質触媒の存在下に接触させて水素を製造する場合、成形体の改質触媒が用いられる。改質反応は、通常700〜900℃の温度下、水蒸気雰囲気下で行われる。そのため高温多湿条件による、成形体の構造変化やコーキングによる、活性低下という問題が生じやすい。さらに活性金属は高価なため、その使用量を低減することも重要な課題である。以上、成形体の改質触媒には、活性低下の防止や貴金属量の低減のほか、成形性、強度(クラックや粉化などの防止)など、粉状の触媒とは異なる各種課題の解決が求められる。
【0003】
(従来技術)
Mg−Al複合酸化物であるハイドロタルサイト系酸化物に活性金属を担持した改質触媒が提案されている;例えば、
Mgの一部をNiで置換したハイドロタルサイトを焼成し、活性金属を内部から表面へ染み出させて、高分散化した、微粒子を担持した改質触媒が紹介されている(特許文献1参照)。しかしながらハイドロタルサイト(Mg/Al 原子比が3)を焼成して得られる酸化物を使用した成形体は、粉の剥離やひび割れの発生など、機械的強度に問題がある。
【0004】
ハイドロタルサイトを焼成して得られるMg−Al酸化物粉末を用いて成形体をつくり、その表層部にNiを担持した、エッグ−シェル構造の触媒が紹介されている(特許文献2参照)。この触媒は、粉末状のほか、円柱状やハニカム状の形状で使用できること、および無機化合物等で被覆処理することにより、成形性や強度を向上させることができるとされている。しかしながら成形体を構成する材料と成形体の強度の関係についての記載はない。[0023]および[0040]にはMgとAlとの原子比1.0:1.10〜4.0:1.0が好ましいことが、また、これらの原子比の場合、Ni水溶液を含浸させやすいと記載されている。具体例の触媒は、Mg:Al原子比が2.5:1(実施例1、実施例2)、1.67:1(実施例3、実施例4)のハイドロタルサイト粉末を加圧成形して得られる触媒が示されている。しかしながら機械強度や耐久性に関する記載はない。
【0005】
活性金属含有ハイドロタルサイト化合物を焼成することにより、活性金属の微粒子が担持された触媒組成物を調製できることが記載されている(特許文献3参照)。この微粒子は、球状などの成形体原料として使用することができると記載されているが、成形体の強度などに関する記載は全くない。ちなみに実施例に記載されているハイドロタルサイトの焼成生成物はMgAl(Mg/Al原子比が3)の粉末である。
【0006】
Mgの一部をNi置換したハイドロタルサイト化合物(触媒前駆体)を加熱して形成された、MgOとMgAlとNiOを含むMg−Al−Ni複合酸化物からなる粉末状改質触媒が紹介されている(特許文献4参照)。しかしながら成形体触媒や表面担持触媒や耐久性などに関する記載はない。
【0007】
Niを含むハイドロタルサイトの粉末から成形体を作り、これを焼成して、得られた焼成体にRuを含浸法で担持した成形触媒が報告されているが、耐熱性などは不明である(特許文献5参照)。
【0008】
Mgの一部をNi置換したハイドロタルサイト様化合物から得られるMg−Al−Ni複合酸化物に、貴金属を含浸し、次いで焼成と還元を繰り返して得られた触媒が紹介されている。ここで用いるハイドロタルサイト様化合物の[Mg]/([Mg]+[Al]比)は、0.5以上(注;Mg/Al原子比は3以上に相当する。)であれば十分な強度を有する多孔質担体が得られるとされている(特許文献6[0012]等参照)。しかしながら、成形体の強度などに関する記載はない。また該触媒は、成形体内部まで貴金属が分散されている。
【0009】
アルミナを用いて作った成形体の表面に、ハイドロタルサイト焼成生成物の皮膜を固定化した触媒は、活性金属の使用量が低減できるという、利点を有する。すなわちαーアルミナ担体に、ルテニウム化合物とジルコニウム化合物およびマグネシウム化合物を含む溶液を含浸し、その後焼成することによって、触媒表面からその半径の3分の1の距離までの外周部分に活性金属が58〜87%分布した触媒が得られることが報告されている(特許文献7参照)。半径3分の1の表面層は、全体積の50%以上を占めるため、担体の表面層への金属分散度合いが、中心部よりやや大きい程度の分布に過ぎず、活性金属が十分活用できているとはいえない。
【0010】
本出願人は先に、貴金属をハイドロタルサイトに担持した粒子を用いた成形体改質触媒を提案した。機械的強度を高め、耐コーキングを有し、しかも活性金属を成形体の表面層のみに、分散させた触媒である(特許文献8参照)。この触媒はアルミナの成形体を芯(コア)として、その表面に、ハイドロタルサイトを加熱して得られるMg酸化物とAl酸化物のスピネル型複合酸化物で出来た、極めて薄い皮膜層(レイヤー)を緊密に固着し、その皮膜層のみにRh、Ru、Pd、Ni等の活性金属を担持した、成形体の触媒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−276893号公報
【特許文献2】特開2003−225566号公報
【特許文献3】特開2003−290657号公報
【特許文献4】特表2003−511328号公報
【特許文献5】特開2008-237955号公報
【特許文献6】特開2008−80246号公報
【特許文献7】特開2001−276623号公報
【特許文献8】特開2006−181399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のべたように、従来のハイドロタルサイトを加熱して得られるスピネル型Mg−Al複合酸化物(Mg/Al原子比が3である。)、あるいはMg/Al原子比が1〜2のハイドロタルサイト様化合物を焼成して得られる複合酸化物を用いて成形体を製造してみると、強度の高い成形体が得られず、該成形体に貴金属を担持した触媒は、改質反応中に、活性低下を起こしやすい。とりわけ、表面に薄膜状の触媒層を形成するためには、この点は重要な解決すべき課題である。
【本発明の目的】
【0013】
本発明の目的は成形体改質触媒を提供することであり、具体的には、機械的強度が高い成形体触媒であり、高温、多湿条件下の使用で耐久性が高く、貴金属の使用量を低減させた成形体触媒を提供することにある。さらに、本発明の目的は、前記触媒の製造方法および前記触媒を使用する改質方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的を達成するために、本発明者は成形体を構成するための材料および触媒層の形成方法を研究した結果、本発明を完成した。すなわち、本発明は、成形体の形状を有する改質触媒であって、
(a) マグネシウムとアルミニウムを、Mg/Al原子比で0.3〜0.6の割合で含有する、Mg−Al複合酸化物で構成された成形体;
(b) 前記成形体の表面に固定された皮膜状の触媒層;および
(c) 前記触媒層に含まれる活性金属;
を含んでなる、炭化水素改質触媒にある。
【0015】
さらに本発明は、上記炭化水素改質触媒の製造方法(含浸法)であって、下記の工程:
工程1) 下記式(1)で表され、Mg/Al原子比が0.3〜0.6の(i)ハイドロタルサイト様化合物、もしくは(ii)前記ハイドロタルサイト様化合物とアルミナ前駆体との混合物の、いずれかを用いて、成形体を形成する工程;
式(1)・・・[Mg(1−X) AlX(OH)]・(A)X/n・mHO
(式1中、xは0.63〜0.77であり、Aは電荷nのアニオンであり、nは1または2であり、mは0または正数である。)
工程2) 工程1で得られた成形体を乾燥する工程;
工程3) 工程2で得られた成形体を、500〜1400℃の範囲の温度に加熱して、Mg/Al 原子比が0.3〜0.6のMg−Al複合酸化物に変換する工程;
工程4) 工程3で得られた成形体の表面に、Ni、RhおよびRuの少なくとも1種の活性金属の前駆体を含む溶液を含浸して、皮膜を形成する工程;および
工程5) 工程4で得られた皮膜付着成形体を、600〜950℃の範囲の温度に加熱して皮膜を固定化して触媒層を形成する工程;
を含む、前記炭化水素改質触媒の製造方法にある。
【0016】
また、本発明は、上記炭化水素改質触媒の製造方法(スラリーコート法)であって、下記の工程:
工程I) 下記式(1)で表され、Mg/Al(原子比)0.3〜0.6のハイドロタルサイト様化合物、もしくは該ハイドロタルサイト様化合物とアルミナ前駆体との混合物を用いて、成形体を形成する工程;
式(1)・・・[Mg(1−X) AlX(OH)]・(A)X/n・mHO
(式1中、xは0.63〜0.77であり、Aは電荷nのアニオンであり、nは1または2であり、mは0または正数である。)
工程II) 工程Iで得られた成形体を乾燥する工程;
工程III) 工程IIで得られた成形体に、Ni、RuおよびRhの少なくとも1種の活性金属を担持した耐熱性無機酸化物よりなる触媒粒子を含むスラリーを塗布して皮膜を形成する工程;および、
工程IV) 工程IIIで得られた皮膜付着成形体を、600〜950℃の範囲の温度で加熱して、成形体を、Mg/Al(原子比)0.3〜0.6の割合で含有する、Mg−Al複合酸化物に変換するとともに、成形体の表面に、触媒粒子の皮膜を固定化して触媒層を形成する工程;
を含む、前記炭化水素改質触媒の製造方法にある。
【0017】
さらに本発明は、上記炭化水素改質触媒と、炭化水素成分及び改質剤を含む原料ガスとを接触反応させる工程を含む、炭化水素の改質方法にある。
【発明の効果】
【0018】
Mg/Al(原子比)0.3〜0.6のMg−Al複合酸化物で構成された成形体の表面に薄い皮膜状の触媒層を設けた、成形体をした炭化水素改質触媒は、機械的強度が極めて高く、高温多湿下の使用でも耐久性に優れ、しかも貴金属の使用量を低減しても優れた改質活性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】焼成温度をパラメータとして、成形体の構成材料(Mg−Al複合酸化物)のMg/Al原子比と成形体の圧壊強度の関係を示す。
【図2】成形体の圧壊強度と比表面積の関係を示す。
【図3A】CAT1のEPMA分析チャートである。
【図3B】CAT1のEPMA分析チャートである。
【図4A】CAT2のEPMA分析チャートである。
【図4B】CAT2のEPMA分析チャートである。
【図5】CAT3のEPMA分析チャートである。
【図6】CAT4のEPMA分析チャートである。
【図7】CAT1でのATR−DSS試験結果である。
【図8】CAT3でのATR−DSS試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
前記本発明の触媒は成形体であって、しかも成形体の表面部位に、薄膜状の触媒層が固定化された、いわゆるコア・レイヤー型をなしている。以下本発明をさらに詳しく説明する。
【0021】
成形体
本発明における成形体は、マグネシウムとアルミニウムを、Mg/Al原子比で0.3〜0.6の割合で含有する、Mg−Al複合酸化物で構成されており、本発明の炭化水素改質触媒のコア部を形成する。本発明の炭化水素改質触媒は、前記成形体(コア部)上にレイヤーとして皮膜状の触媒層を含む。本明細書では、このように成形された形の改質触媒を成形体触媒という場合がある。
【0022】
成形体の構成材料として、Mg/Al原子比が0.3〜0.6、好ましくは0.35〜0.50、より好ましくは0.35〜0.48、特に好ましくは0.40〜0.45のMg−Al複合酸化物を使用することにより、従来公知の例えば原子比が1.0や3.0のハイドロタルサイトの焼成物を用いた成形体に比べて、5m/g以上、更には10m/g以上の、高い比表面積を有するとともに、機械的強度が圧倒的に高い成形体が得られる。したがって該成形体に触媒層を固定化してなる改質触媒も、高温多湿の反応条件における耐久性が向上する。
【0023】
本発明の成形体の構成で使用される成分であるMg−Al複合酸化物の主成分はMgAl(Mg/Al原子比0.5のスピネル型酸化物)であって、機械的強度を一層高めるには、該Mg−Al複合酸化物中に、Alが1〜35重量%、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜25重量%含有されても良い。該Mg−Al複合酸化物の具体例は、MgAl:Al(重量比)が65:35〜99:1の混合物(Mg/Al原子比=0.30〜0.49)、より好ましい例は、前記重量比が70:30〜95:5の混合物(Mg/Al原子比=0.35〜0.48)、特に好ましい例は、前記重量比が75:25〜90:10の混合物(Mg/Al原子比が0.40〜0.45)である。このようなMg−Al複合酸化物を用いて作られた成形体は、強度が高く、そのため該成形体の表面部位に薄い触媒層を設けてなる成形体触媒は、高温下での使用において、優れた耐久性を発揮する。
【0024】
一方、本発明のMg−Al複合酸化物中に含まれるMgO含有量が増加すると、成形体の機械的強度は低下するとともに、成形体の表面に含浸法で薄膜状の触媒層を形成することが困難になる。したがってMgOの含有量は少ないほうが好ましく、具体的には20重量%以下、好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下〜ゼロである。
【0025】
本発明の成形体は、球状、半球状、柱状、ペレット、円筒状、あるいはハニカム構造体など、固定床による改質反応に適した形の構造を有する。例えば、球状成形体の大きさは、直径0.5mm〜20mm、柱状あるいは棒状成形体では、直径1mm〜20mm、長さ1mm〜30mmが例示される。
【0026】
本発明の成形体は、先ず目的のMg/Al原子比になるように調製したMg−Al複合酸化物の前駆体を用いて、公知の成形手段により、生成形体(未焼成)を作り、次いで該生成形体を加熱処理することにより、前記の前駆体をMg−Al複合酸化物へ転換させて、製造される。以下、生成形体の製造方法について、詳しく説明する。
【0027】
本発明の成形体の材料であるMg/Al原子比0.3〜0.6のMg−Al複合酸化物は、限定的ではないが、例えば下記式(1)で表されるハイドロタルサイト様化合物を前駆体として使用して、これを熱処理して、得られる。
【0028】
式(1)・・・ [Mg(1−X) AlX(OH)]・(A)X/n・mHO
(式1中、xは0.63〜0.77であり、該数値はMgとAlの原子比(Mg/Al)が0.3〜0.6に相当する値であり、Aは電荷nのアニオンであり、ハイドロタルサイトの層間イオンと称され、具体的には炭酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、塩素イオン、リン酸イオンのいずれかであり、代表的には炭酸イオンであり、nは1または2であり、mは0または正数であり、具体的には0〜10である。)
式(1)の化合物の代表例は、下記式(2)で表されるマグネシウム・アルミニウム・ヒドロシキ・カーボネートである。
【0029】
式(2)・・・Mg(1−X) AlX(OH)・(COX/2・mHO
(式2中、xは0.63〜0.77であり、該数値はMgとAlの原子比(Mg/Al)が0.3〜0.6に相当する値であり、mは0または正数であり、具体的には0〜10である。)
式(1)あるいは式(2)で表されるハイドロタルサイト様化合物は、Al塩とMg塩の水溶液を用いて行う共沈法、あるいはAlとMgの各アルコキシドの混合溶液を加水分解する共沈法など、公知の方法で製造できる。
【0030】
式(2)に該当するマグネシウム・アルミニウム・ヒドロシキ・カーボネートは、例えば商品名PURAL MG−30 (SASOL社製)として販売されており、成形体製造用の前駆体として好ましい。該PURAL MG−30は、Mg/Al原子比が0.5のマグネシウム・アルミニウム・ヒドロシキ・カーボネートである。
【0031】
別の前駆体の好ましい例は、例えば、Mg/Al原子比が1.0〜0.5のマグネシウム・アルミニウム・ヒドロシキ・カーボネートとアルミナ前駆体とを、Mg/Al原子比が0.3〜0.6、好ましくは0.35〜0.50、より好ましく0.35〜0.48になるような割合で混合された混合物である。アルミナ前駆体の具体例として、ベーマイト、アルミナゾル、水酸化アルミニウムおよびアルミニウムアルコキサイドから選択される少なくとも1種のアルミニウム化合物が例示される。好ましい前駆体の具体例として、例えば前記のPURAL MG−30とベーマイトとの混合物、具体的にはMG−30:ベーマイトの混合物(重量比で98:2〜60:40、好ましくは95:5〜60:40、より好ましくは90:10〜70:30の混合物)であって、該混合物のMg/Al原子比が0.30〜0.48、好ましくは0.40〜0.48、より好ましくは0.40〜0.45を有する混合物が、生成形体を作るための好ましい成分(前駆体)である。
【0032】
成形体の製造
本発明の成形体は、前記ハイドロタルサイト様化合物を前駆体として用いて、水などの液体媒体、必要に応じてPVA、セルロース、メチルセルロースなどの成形助剤などを加えた混合物を用いて、前記の形状に応じて、押出し成形、打錠成形、転動造粒等など、公知の成形手段で、生(ナマ)成形体を作り、次いで熱処理して、前記前駆体をMg−Al複合酸化物に変換することにより製造することができる。なお本明細書において、乾燥前あるいは50〜200℃程度の温度での加熱によって乾燥した状態の成形体を、生(ナマ)成形体という場合がある。すなわち生成形体は、Mg−Al複合酸化物が前駆体の状態で残っている成形体である。
【0033】
熱処理
前記生成形体は、前記皮膜状の触媒層の形成前、形成と同時あるいは形成した後のいずれかの段階において、500〜1400℃、好ましくは800〜1300℃、より好ましくは900〜1250℃、特に好ましくは950〜1250℃の温度下で、3〜25時間加熱処理して、前駆体をMg−Al複合酸化物に変換させることにより本発明の成形体が得られる。
【0034】
生成形体を、1400℃を超える温度で加熱処理すると、成形体の機械強度は高まるが、BET比表面積が大幅に低下するため、活性の高い触媒を得にくくなる。一方、500℃を下回る温度での加熱処理では、前駆体の複合酸化物への変換が不十分になり、機械強度が向上せず、耐久性が低いため好ましくない。また含浸法による薄膜の触媒層を形成する場合、活性金属を含む含浸液が成形体の内部まで浸透してしまい、薄膜状の触媒層を形成することが困難となる。
【0035】
以上説明した生成形体の材料である前駆体をMg−Al複合酸化物に転化させるための加熱処理を第1次熱処理という場合がある。
【0036】
Mg/Al原子比が0.3〜0.6のMg−Al複合酸化物で構成された成形体は、圧壊強度(JIS Z 8841-1993試験法による。)が5kgf以上、好ましくは7kgf以上、特に好ましくは10kgf以上を有する。本発明の成形体は、従来のMg/Al原子比1〜3のハイドロタルサイト様化合物(前駆体)を焼成して得られる成形体あるいはアルミナで構成された成形体に比較して、5〜10倍、圧壊強度が高い。したがって、本発明の成形体触媒は、固定床触媒層を用いた自然熱体質(ATR)や水蒸気改質反応において、運転−停止の繰り返しにおける温度変動や水蒸気濃度の変動などによる、ストレスによる亀裂や剥離などの問題発生防止のために好ましい。
【0037】
以上説明したとおり、本発明における成形体は、(i)特定のMg/Al原子比を有するMg−Al複合酸化物の前駆体を用いて生成形体を作り、ついで(ii)これを熱処理することによって、前駆体を、特定のMg/Al原子比を有するMg−Al複合酸化物に変換することにより、製造される。
【0038】
触媒層
本発明の成形体触媒は、前記成形体と、該成形体の表面部位に固定された、厚さ20〜300μm、好ましくは50〜200μmの皮膜状の触媒層とから構成され、成形体触媒に含まれる活性金属の大部分が、該触媒層内に含まれる。例えば、直径4mmの球状成形体に、厚さ100μmの触媒層を設けた成形体触媒の場合、触媒層の体積割合は15%である。成形体触媒に含まれる活性金属の約60重量%以上、好ましくは70重量%、より好ましくは80重量%以上が、該触媒層中に担持されている。本発明の触媒層中の金属濃度は、成形体触媒全体に均一に担持した触媒に比べて、3〜6倍大きいことから、金属使用量の低減が可能なため、経済性の面での効果が顕著である。該触媒層の厚さが20μmよりも薄いと、必然的に活性金属の含有量が少なくなり、耐久性の低下が起こりやすい。すなわち、触媒層の厚さが20μmを下回ると、初期の活性は問題ないが、長期間の使用において、活性が低下しやすい。耐久性の維持のために、触媒層の厚さは好ましくは、50μm以上である。厚さが300μmを超える触媒層では、反応に寄与しない活性金属割合が増加し、そのため不経済である。活性、耐久性および経済性を考慮すると、触媒層の厚さは50〜200μmに設定することが好ましい。
【0039】
活性金属の担持量は、成形体触媒の重量に対して0.05〜15重量%の範囲から反応条件や使用時間などを考慮して、適宜定めればよい。
【0040】
本発明の成形体触媒の触媒層に使用される活性金属は、Ru、RhおよびNiから選択される1種または2種以上であるが、これら以外の使用を排除するものではない。
【0041】
Niを選択する場合、以下の触媒層の形成の項で述べるスラリーコート法において、触媒粒子をNi−ハイドロタルサイト相間化合物で形成することも有効である。Niと共にPtおよびPdのいずれかを併用した触媒層を設けると、コーキングによる活性低下の抑制に一層効果的である。
【0042】
なお本発明の目的に照らして、本発明の成形体触媒において、活性金属の大部分は成形体の表面部位に固定されている皮膜状の触媒層内に含有されているが、成形体の内部への活性金属の混入を排除するものではない。
【0043】
触媒層の形成
成形体表面へ薄膜状触媒層を固定化するには、以下に述べる(1)含浸法、および(2)スラリーコート法のいずれかの方法が採用されるが、目的の触媒層が形成される限り、これらに限定されるものではない。
【0044】
≪含浸法≫
含浸法は、前記Mg/Al原子比0.3〜0.6のMg−Al複合酸化物で構成された、比表面積(BET)が5m/g以上、好ましくは10〜150m/g、しかも圧壊強度が5kgf/cm以上を有する成形体に、活性金属を含む水溶液を含浸することにより、成形体の表面に薄膜状触媒層を固定化する方法である。
【0045】
以下、具体的に詳述する;
<工程1>(i) 下記式(1)で表され、Mg/Al原子比0.3〜0.6、好ましくは0.35〜0.50、より好ましくは0.35〜0.48、特に好ましくは0.40〜0.45の、(i)ハイドロタルサイト様化合物、もしくは(ii)前記ハイドロタルサイト様化合物と、アルミナ前駆体、具体的にはベーマイト、アルミナゾル、水酸化アルミニウムおよびアルミニウムアルコキサイドからなるアルミニウム化合物群から選択される少なくとも1種との混合物を使用して、成形体を形成する工程;
式(1)・・・[Mg(1−X) AlX(OH)]・(A)X/n・mHO
(式1中、xは0.63〜0.77であり、該数値はMgとAlの原子比(Mg/Al)が0.3〜0.6に相当する値であり、Aは電荷nのアニオンであり、nは1または2であり、mは0または正数であり、具体的には0〜10である。)
<工程2> 工程1で得られた成形体を乾燥する工程;
工程3) 工程2で得られた成形体を、500〜1400℃の範囲の温度に加熱して、Mg/Al 原子比が0.3〜0.6のMg−Al複合酸化物に変換する工程;
工程4) 工程3で得られた成形体に、Ni、RhおよびRuの少なくとも1種の活性金属の前駆体を含む溶液を含浸し皮膜を形成する工程;および
工程5) 工程4で得られた皮膜付着成形体を、600〜950℃の範囲の温度に加熱して皮膜を固定化して触媒層を形成する工程;
を含む、炭化水素改質触媒の製造方法である。
【0046】
工程4で使用する活性金属含有溶液は、改質触媒に通常使用されている活性金属を含有する化合物の溶液であり、通常水溶液が使用されるが、特に限定されるものではない。活性金属種の具体例はNi、RhあるいはRuが通常使用されるが、特に限定されるものではない。更にNiとPtあるいはNiとPdの併用も好ましい。これら化合物として活性金属の塩、錯体あるいはキレート化合物が使用される。
【0047】
上記水溶液の酸性度によっては、成形体に含浸した際、成形体表面からMg酸化物あるいはAl酸化物が溶出する危険があるため、その防止のために、水溶液にアルカリ水溶液を少量ずつ混合して、水酸化物の沈殿を形成しない程度のpHに制御して、含浸処理を行うのが好ましい。
【0048】
厚さ20〜300μm、好ましくは50〜200μmの薄膜状触媒層を形成するためには、予め定めた成形体の吸水量(成形体の吸水率と成形体の重量の積)に相当する溶液量に、活性金属を含有させた水溶液を成形体に含浸させる、いわゆるポアフィリング法を採用するのが好ましい。具体的には成形体表面にアンモニア水などアルカリ水溶液を含浸させ、乾燥させた後、前記予め定めた量の活性金属水溶液を複数に分割し、噴霧等の方法で含浸し、次いで乾燥する、という操作を繰り返ことで、目的の触媒層を形成することが出来る。次いで、以下の工程5の焼成操作を実施する。
【0049】
(焼成操作)
含浸処理した成形体は、熱処理をし、さらに必要に応じ還元処理を行うことで、本発明の成形体触媒を得る。ここでの熱処理は活性発現のために行い、これを第2次熱処理という場合がある。この熱処理により、成形体の表面全体を覆う薄い触媒層を形成する。
【0050】
第2次熱処理温度は、600〜950℃、好ましくは700〜950℃、特に好ましくは800〜950℃である。950℃を超える温度では、担持した活性金属が凝集して、活性低下をもたらす危険がある。一方、600℃未満の熱処理では、焼成が不十分になり、活性が発揮されない。
【0051】
≪スラリーコート法≫
別の触媒層の形成方法は、以下に述べるスラリーコート法である;
工程I) 下記式(1)で表され、Mg/Al(原子比)0.3〜0.6、好ましくは0.35〜0.50、より好ましくは0.35〜0.48、特に好ましくは0.40〜0.45の、(i)ハイドロタルサイト様化合物、もしくは(ii)前記ハイドロタルサイト様化合物と、アルミナ前駆体、具体的にはベーマイト、アルミナゾル、水酸化アルミニウムおよびアルミニウムアルコキサイドからなるアルミニウム化合物群から選択される少なくとも1種、との混合物を用いて、成形体を形成する工程;
式(1)・・・[Mg(1−X) AlX(OH)]・(A)X/n・mHO
(式1中、xは0.63〜0.77であり、Aは電荷nのアニオンであり、nは1または2であり、mは0または正数であり、具体的には0〜10である。)
工程II) 工程Iで得られた成形体を乾燥する工程;
工程III) 工程IIで得られた成形体に、Ni、RuおよびRhの少なくとも1種の活性金属を担持した耐熱性無機酸化物よりなる触媒粒子を含むスラリーを塗布して皮膜を形成する工程;および、
工程IV) 工程IIIで得られた皮膜付着成形体を、600〜950℃の範囲の温度で加熱して、成形体を、Mg/Al(原子比)0.3〜0.6の割合で含有する、Mg−Al複合酸化物に転化するとともに、成形体の表面に、触媒粒子の皮膜を固定化して触媒層を形成する工程;
を含む、前記炭化水素改質触媒の製造方法。
【0052】
該スラリーコート法では、Mg/Al原子比0.3〜0.6、好ましくは0.35〜0.50、より好ましくは0.35〜0.48、特に好ましくは0.40〜0.45のMg−Al複合酸化物前駆体で構成された成形体の表面に、触媒粒子を含むスラリーを皮膜状に塗布し、次いで加熱焼成して、前駆体をMg−Al複合酸化物に転換すると共に、成形体表面に薄い触媒層を固定化することによって、成形体触媒を製造する方法である。以下該製法についてより詳しく説明する。
【0053】
(触媒粒子)
工程Iおよび工程IIは、前記含浸法工程1および工程2で述べたとおりである。本製法の工程IIIで用いられる触媒粒子は、活性金属を担持させた耐熱性無機酸化物粒子であり、触媒層の厚さと塗布性に照らし、その粒子の平均粒径(レーザー法)は0.1〜50μm、好ましくは0.1〜20μmが適当である。
【0054】
使用される耐熱性無機酸化物の具体例としては、Mg/Al原子比が0.3〜3.5のMg−Al複合酸化物であり、具体的には、前述のMG−30(SASOL社、Mg/Al原子比=0.5)、MG−50(同、Mg/Al原子比=1.0)、MG−70(同、Mg/Al原子比=3.5)、ハイドロタルサイト(Mg/Al原子比=3.0)が例示される。この他、ZnO、Al、ZrO、CeO、SiO、コージェライトあるいはこれらの複合酸化物が例示され、これらの群から選択される1種または2種以上が使用される。
【0055】
以下Mg−Al複合酸化物を使用した触媒粒子の使用例について具体的に説明する。以下活性金属[M]を担持した触媒粒子を、[M]/Mg・Al(O)と表記する。
【0056】
[M]/Mg・Al(O)
[M]/Mg・Al(O)粒子は、たとえば、下記の触媒粒子製法A〜触媒粒子製法Cで製造することが出来る:
<触媒粒子製法A>
(1)Mg/Al 原子比0.3〜3.0の前駆体粒子に、活性金属化合物(M)の水溶液を含浸させる工程1;および
(2)含浸した前駆体粒子を乾燥する工程2、を含む触媒粒子の製法。
工程1において、前駆体としてはMg/Al原子比が0.3〜0.6を有する、たとえば、MG−30を使用すると、成形体への触媒層との密着性向上に好ましい。
<触媒粒子製法B>
(i)Mg/Al 原子比0.3〜3.0の前駆体を加熱して、Mg−Al複合酸化物の固溶体(HT/S)を製造する工程i;
(ii)前記HT/Sに活性金属化合物の水溶液を含浸させることにより、活性金属(M)が結晶層間に挿入された、ハイドロタルサイト(M−HT)を得る工程ii、および
(iii)前記M−HTを450−900℃、好ましくは500〜800℃に加熱して、M含有固溶体(M−HT/S)に変換する工程iii、を含む触媒粒子の製法。
<触媒粒子製法C>
(a)Mg/Al 原子比0.3〜3.0、好ましくは0.3〜1.0のハイドロタルサイト(HT)を加熱して、Mg−Al複合酸化物粒子を得る工程a、および
(b)活性金属(M)化合物の水溶液を、上記Mg−Al複合酸化物粒子に含浸し、その後乾燥する工程b;を含む触媒粒子の製法。
【0057】
上記触媒製法A〜製法Cで得られる[M]/Mg・Al(O)粒子は、以下に述べるスラリー成分として使用される。
【0058】
スラリーコート法による触媒層の形成
スラリーコート法による、触媒層の形成方法は以下のとおりである。
(i) [M]/Mg・Al(O)粒子を水に分散してスラリーを用意する。水スラリーの濃度に特に制限はないが、希薄すぎると目的の量を塗布しにくく、濃度が高すぎると塗布作業が困難であるため、水1L当たり該粒子150〜300gであることが好ましい。
(ii) ついで、前記の生成形体の表面に、スラリーをスプレーコート法で塗布する。スラリーの濃度と塗布量を調整することにより、触媒層の厚さと活性金属含有量を調整することができる。塗布量は重量を計測し、余剰スラリーは空気流を噴射して、取り除くことによって、目的の触媒層を得ることが出来る。
(iii) ついで、スラリーを塗布した成形体を乾燥させた後、加熱処理する。
【0059】
加熱処理温度は600〜950℃、好ましくは700〜950℃、より好ましくは800〜950℃である。950℃を超える温度での焼成は、担持された活性金属が凝集して、金属粒子の分散性が低下することにより、活性低下をもたらす危険がある。一方、600℃未満の熱処理では、焼成が不十分になり、活性が発揮されない。以上の工程により、本発明の成形体触媒が得られる。
【0060】
この加熱処理によって、前駆体は、Mg−Al複合酸化物に転化するとともに、[M]/Mg・Al(O)粒子は成形体表面に固定化され、触媒層が形成される。
【0061】
以上の工程により、本発明の成形体触媒が得られる。
【0062】
改質方法
本発明は、本発明の成形体改質触媒を用いる炭化水素の改質方法にも関する。具体的には、前掲の本発明の成形体改質触媒を用いて作製した固定床反応層のもとで、炭化水素および改質剤を含む原料ガスを接触反応させる工程を含む、水蒸気改質、自己熱改質(ATR)あるいは炭酸ガス改質を行う改質方法に関する。
【0063】
本改質方法で使用される改質剤は、水蒸気改質においては水蒸気が、ATRにおいては、水蒸気及び酸素や空気等が挙げられる。
【0064】
改質反応に用いられる原料としての炭化水素は、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキンサン、天然ガス、都市ガス、プロパンガス、ナフサ、灯油、又は軽油留分など、炭素数が1〜16程度の直鎖状または分岐状の飽和炭化水素あるいは脂環式飽和炭化水素が挙げられる。
【0065】
[水蒸気改質]
本発明の触媒を用いる水蒸気改質の反応条件としては、反応温度は、通常、200〜900℃、好ましくは250〜900℃、さらに好ましくは300〜800℃である。反応圧力は、通常0〜3MPa・G、好ましくは0〜1MPa・Gである。本発明の触媒に接触させる水蒸気(スチーム)および炭化水素のガス空間速度(GHSV)は、500hr−1〜300000hr−1が好ましい。またスチーム/カーボン比(モル比)は1.5〜10、好ましくは1.5〜5、より好ましくは2〜4となるように炭化水素量と水蒸気量を決定すればよい。このようにスチーム/カーボン比(モル比)を調整することにより、水素含有量の多い生成ガスを効率よく得ることができる。
【0066】
[自己熱改質(ATR)]
本発明の触媒を用いるATRの反応条件としては、反応温度が500〜1,300℃、好ましくは600〜1,200℃、より好ましくは600〜900℃である。反応圧力は、通常、0〜10MPa・G、好ましくは0〜5MPa・G、より好ましくは0〜3MPa・Gである。スチーム/カーボン比(モル比)は、通常、0.1〜10、好ましくは0.4〜4である。酸素/カーボン比(モル比)は、通常、0.1〜1、好ましくは0.2〜0.8である。
【0067】
上記のような条件で、炭化水素改質触媒を用いて、改質反応を行わせることにより、水素を含む混合物を得ることができ、該混合物は燃料電池の水素製造プロセスに好適に使用される。
【実施例】
【0068】
以下、実施例に基づき、本発明をより詳細に説明する。
【0069】
本実施例で採用した評価試験機、評価方法および測定方法は以下のとおりである;
<圧壊強度>
「造粒物の強度試験方法」( JIS Z8841−1993)に基づいて、成形体各30個につき強度試験を行い、その平均値をkgfで表す。
【0070】
<比表面積>
比表面積/細孔分布測定装置(ASAP2010、マイクロメリテック社製)を用いて、成形体の比表面積を測定した。
【0071】
<触媒層の厚さ>
成形体触媒を切断し、断面の電子プルーブマイクロアナライザー線分析(EPMA)により成形体の表面層を測定した。ここでは1触媒につき6試料の分析値の平均値で表す。
【0072】
<触媒層中の金属含有量>
成形体触媒中の活性金属の重量を、ICP分析装置によって測定した。
【0073】
(実施例1)
<成形体の調製>
球状の生成形体を、以下のとおり調製した。なお成形体の符号の−Rは、未焼成を意味する。
<成形体A1 −R>
Mg/Al原子比が0.5のマグネシウム・アルミニウム・ヒドロシキ・カーボネート(商品名;MG−30、SASOL社製)の粉末を転動造粒装置の原料投入口に投入して、回転皿を回転させながら、適量の水を粉末へ散布することによって、造粒核を形成した。前記粉末と水を継続的に投入して、造粒核を成長させて、直径約4.5mmの球状成形体を調製した。成形体を乾燥器中に入れ、温度100℃にて10時間保持することにより乾燥させて、生成形体Al −Rを得た。
<成形体A2 −R>
Mg/Al原子比が1.0のマグネシウム・アルミニウム・ヒドロシキ・カーボネート(商品名;MG−50、SASOL社製)の粉末47重量部と、コロイダルアルミナ(日産化学製、製品名;アルミナゾル520 Al含有量は20重量%)53重量部(アルミナ基準)を混練機に投入して、攪拌しながら、加熱して水分を蒸発させて、混練物を調製した。該混練物をマルメライザーに投入して、直径約4.5mmの球状成形体に造粒し、成形体A1 −Rに記載した方法で、乾燥して、生成形体A2 −Rを調製した。該成形体A2 −RのMg/Al原子比は計算値で0.6である。
<成形体A3 −R>
成形体A1 −Rで用いたMg/Al原子比0.5のマグネシウム・アルミニウム・ヒドロシキ・カーボネート(MG−30)粉末の86重量部と、ベーマイト粉末の14重量部を機械式攪拌混合機で混合粉末を調製した。回転式造粒機を用いて、該混合粉に水を散布しながら、造粒核を形成し、更に該混合粉と水を投入して、球状成形体を調製した。成形体A1 −Rと同じ方法で乾燥して、直径約4.5mmの生成形体A3 −Rを調製した。該成形体A3 −RのMg/Al原子比は計算値で0.41である。
<成形体A4 −R>
成形体A1 −Rで用いたMg/Al原子比0.5のマグネシウム・アルミニウム・ヒドロシキ・カーボネート(MG−30)粉末73重量部と、ベーマイト粉末27重量部を機械式攪拌混合機で混合粉末を調製した。混合粉を回転式造粒機で、水を散布しながら核を形成し、更に該混合粉と水を追加投入して、直径約4.5mmの球状成形体を調製した。成形体A1と同じ方法で乾燥して、生成形体A4 −Rを調製した。該成形体A4 −RのMg/Al原子比は計算値で0.33である。
<比較成形体B1 −R>
Mg/Al原子比が1.0のマグネシウム・アルミニウム・ヒドロシキ・カーボネート(商品名MG−50、SASOL社製)の粉末を転動造粒装置にて、適量の純水を散布して核を形成し、さらに粉末と水を追加することによって、核を成長させて、直径約4.5mmの球状成形体を調製し、100℃で10時間乾燥し、Mg/Al原子比1.0で形成された比較生成形体B1 −Rを調製した。
比較成形体B1 −Rを950〜1350℃で焼成して得られる成形体は、表面を手で触ると粉が付着する、いわゆるチョーキング現象が見られた。圧壊強度が低くかった。活性金属溶液に浸漬すると、成形体から粉が剥離して、溶液が混濁した。
<比較成形体B2 −R>
Mg/Al原子比が1.0のマグネシウム・アルミニウム・ヒドロシキ・カーボネート(商品名MG−50、SASOL社製)粉末77重量部と、コロイダルアルミナ(日産化学製、商品名;アルミナゾル520、Alの含有量;20重量%)の23重量部(アルミナ基準)を混練機に投入して、攪拌しながら加熱して水分を蒸発させて、混練物を調製した。
該混練物をマルメライザーに投入して、直径約4.5mmの球状成形体に造粒し、成形体A1について記載した方法で乾燥して、比較生成形体B2 −Rを調製した。該比較成形体B2 −RのMg/Al原子比は計算値で0.85である。
該比較成形体B2 −Rを950〜1350℃で焼成して得られた成形体にはチョーキング現象はみられなかったが、圧壊強度は1〜2.5kgf/cmであり、成形体A1〜A4に比較して、数分の1ときわめて弱いものであった。
<比較成形体B3 −R>
Mg/Al原子比が3.5のマグネシウム・アルミニウム・ヒドロシキ・カーボネート(商品名MG−70、SASOL社製)の粉末を転動造粒装置の原料投入口に投入して、回転皿を回転させながら、適量の水を噴霧器にて散布することによって造粒核を形成した。さらに前記粉末と水を継続的に投入して、核を成長させて、直径約4.5mmの球状成形体を調製した。該成形体を乾燥器中で温度100℃にて10時間乾燥させて、比較生成形体B3 −Rを得た。
該比較生成形体B3 −Rを950〜1350℃で焼成して得られた成形体は、強度が弱く、表面が粉っぽく手で摺ると表面より容易に粉が剥離する現象が見られた。
【0074】
(実施例2)
≪焼成体の調製≫
実施例1で得られた各生成形体を、電気炉中、空気雰囲気のもとで、温度950℃、1050℃、1150℃および1350℃で5時間熱処理(焼成)して、成形体を得た。各成形体の圧壊強度(kgf)と比表面積(m/g)を測定した結果を表1(圧壊強度)および表2(比表面積)に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
各成形体の焼成温度に対する圧壊強度の関係を図1に、得られた成形体の圧壊強度と比表面積の関係を図2に示した。
【0078】
表1、表2および図1に示すとおり、Mg/Al原子比0.8〜3.5のMg−Al複合酸化物で形成された比較成形体(B1、B2およびB3)の圧壊強度は0.3〜2kgf/cmであった。これに対して、Mg/Al原子比0.3〜0.6のMg−Al複合酸化物で形成された本発明の成形体(A1〜A4)は、概して5kgf/cm以上の圧壊強度を有する。従来知られているスピネル(MgAlO)で出来た成形体では、1350℃に焼成したものでも、圧壊強度は5kgf未満であるのに対して、Mg/Al原子比0.3〜0.6のMg−Al複合酸化物を使用すると、圧壊強度が特に高い成形体触媒が得られることが明らかである。とりわけ、Mg/Al原子比が0.35〜0.48、特に0.40〜0.45のMg−Al複合酸化物で形成された成形体は、特に機械的強度が高く、しかも図2に示したように、5m/g以上はもちろん、10m/g以上のような、大きな比表面積の成形体である。
【0079】
(実施例3) (CAT1〜CAT4の調製)
<成形体触媒CAT1>
実施例1で得た成形体A1(MG−30、1250℃で焼成したもの。直径;3.0mmの球体)を丸底フラスコに100CC採取した。ポアフィリング法による含浸を行うために、予め測定された該成形体の吸水率に基づいて計算された水溶液の量に合致する水溶液を準備した。Rh(NOの水溶液(Rhの濃度;4.48重量%)5.14gに対して、2重量%のNaOH水溶液11.2gと純水32gを加えて調製した<Rh水溶液1>を用意した。前記フラスコを回転させながら、成形体A1にRh水溶液1の全量をゆっくり滴下した。80℃で1時間保持した後、120℃で5時間、乾燥を行った。その後500℃で3時間焼成を行った。次いで500℃で水素還元を行い、ついで950℃、窒素雰囲気下で3時間加熱焼成して、成形体触媒CAT1を得た。
【0080】
得られたCAT1の触媒層の厚さをEPMA分析(図3Aおよび図3B参照)によって求めたところ、約50μmの薄膜状であり、成形体の内部にはRhは存在していないことが明らかである。該CAT1(触媒全体)のRh担持量は0.11重量%、また触媒層中のRh濃度は計算に基づき0.87重量%と算出された。
【0081】
<成形体触媒CAT2>
実施例2で得た成形体A2(1250℃で焼成)を使用し、またRh担持量を変えた以外は、前記CAT1の製法と同じ方法にて、成形体触媒CAT2を調製した。得られたCAT2の触媒層の厚さをEPMA分析した結果(図4Aおよび図4B参照)に基づき求めた結果では、約200μmであり、また成形体の内部にはRhは存在していないことが明らかである。該CAT2(触媒全体)のRH担持量は0.21重量%、また触媒層中のRh濃度は計算に基づき0.35重量%と算出された。
【0082】
<成形体触媒CAT3(参考例)>
Rh/α−Al改質触媒
Rhをα−アルミナに担持した成形体触媒(市販品)について、EPMA分析した結果を図5に示す。
【0083】
図5に見られるように、CAT3参考例ではRhは粒子の表面から内部まで、均一に存在していることが観察された。
【0084】
<成形体触媒CAT4>
スラリーコート法により、前記成形体A4の表面に触媒粒子よりなる触媒層を固定化して、本発明の成形体触媒を以下のとおり調製した。
触媒粒子および触媒粒子を含むスラリーの調製
MG−70粉末を500℃で焼成したMG/Al原子比3.5のMg−Al複合酸化物粒子(平均粒径;15μm)を用意した。硝酸ロジウム水溶液(苛性ソーダ水溶液を添加してpH4に調整したもの)に、前記粒子を投入して、24時間攪拌を行って、触媒粒子[Rh]/Mg・Al(O)を含むスラリーを調製した。次いで、ろ過分離を行い、触媒粒子のケーキを脱イオン水によって5回洗浄を繰り返して、Naを除去した。触媒粒子のケーキを脱イオン水に分散し、これにポリビニルアルコールを添加し、触媒粒子10重量%を含むスラリーを調製した。
コーテイング
前記生成形体A4 −R(直径3mm)を噴霧造粒機に投入し、これに前記スラリーを噴霧して、成形体の表面に触媒粒子を塗布した。得られた成形体を100℃で乾燥した後、水素流通下、500℃に加熱し、その後850℃で焼成を行って、Rhを含む薄い触媒層を設けた成形体触媒CAT4を調製した。
該CAT4の触媒層の厚さをEPMA分析した結果(図6参照)によれば、Rhは成形体触媒表面から厚さ100μmの範囲に集中的に分布していることが観察される。該CAT4のRh担持量は0.19重量%、触媒層中のRh濃度は計算に基づき0.25重量%と算出された。
【0085】
(実施例4)
本発明の成形体触媒CAT1および参考例触媒CAT3を用いて、下記に示すATR−DSS(Daily Start & Shutdown)試験法によって長期間の活性試験を行った。
<ATR−DSS試験法>
常圧固定床流通式反応装置(反応管の内径21.2mm)に、成形体触媒32mlを充填し、以下に示す条件で耐久試験を実施した:
(前処理条件)
水素と窒素の混合ガス雰囲気下で、常温から900℃まで昇温して2時間維持して、還元処理した後、同雰囲気のもと、700℃まで温度を下げる。
(サイクル試験条件)
反応装置の触媒層の温度を700℃に設定し、反応装置へn−ドデカンと酸素と水蒸気の混合ガス(モル比;1:6:30)を供給して、ATR改質反応を行った。反応の条件は以下のとおりである:
LHSV:25hr−1
水蒸気/カーボン比(S/C):2.5
酸素/カーボン比(O/C):0.5
上記条件にてATR改質反応を5時間行い(工程:1)、
次いで、前記混合ガスの供給量を中止し、その後水蒸気と窒素ガスの混合ガス(モル比=8:1)を投入して、20分間で200℃まで温度を下げ、次いで窒素ガスでパージした後、200℃で30分間保持し(工程:2)、
その後、700℃に昇温する(工程;3)。
以上の工程1と工程2と工程3を1サイクルとし、複数のサイクルを繰り返す。この間のサイクルごとの活性を評価した。
<ATR−DSS試験結果>
CAT1とCAT3を用いて行ったATR−DSS試験(改質反応の合計時間80時間)における、改質反応生成ガス中の水素とエチレンの含有量(モル%)の時間推移を、図7(CAT1の結果)および図8(CAT3の結果)に示す。
本発明の成形体触媒(CAT1)は、図7に示すとおり
生成ガス中の水素濃度は、初期から80時間後まで、61〜60モル%を持続した。
【0086】
生成ガス中のエチレン濃度は、反応開始初期(10時間以内)では0.005モル%、30時間後(6サイクル目)では0.01〜0.015モル%、60時間後(12サイクル目)で0.025〜0.03モル%であった。このエチレン濃度は参考例CAT3のそれに比べて、相対的に低い。エチレン濃度はコーキングの尺度であるから、本発明CAT1はコーキングを起こしにくい触媒である。
【0087】
12サイクルの試験終了後の触媒を目視観察したところ、CAT1には、割れや剥離は見られなかった。
【0088】
これに比較して、参考例CAT3(Rh/α−Al)を用いたDSS試験では、図8に示すとおり、各サイクルにおいて、反応開始直後において、生成ガス中のエチレン濃度が変動し、反応が安定しなかった。さらに約50時間以降では、エチレン濃度が0.08〜0.18モル%まで急上昇した。
【0089】
(実施例5)
<ATR試験>
実施例2で得られた触媒CAT1、CAT2およびCAT3を、ATR改質反応により評価した。参考例として、触媒CAT5(Ru/Al;Ruをα−アルミナに均一担持した成形体改質触媒。ズード社製RUA)を使用して同様の反応を実施した。
触媒反応管の上部より、原料炭化水素としてガス状の炭化水素(n−C12:ノルマルドデカン)、改質剤として水蒸気及び酸素を供給し、生成ガスの流量及び組成を分析した。
生成ガスの組成(H、CO、CO、O、CH、エチレン、エタン、プロパン、プロピレン)をガスクロマトグラフィー(FID、TCD)により分析した。また原料炭化水素転化率を以下の式により算出した。
原料炭化水素転化率=100−[(出口CH、CO及びCOモル数の総和/分)/(供給n−C12モル数/分)]×100
(注:n−C12の転化率は単位時間あたりにフィードしたn−C12のモル数、並びに、生成したCH、CO及びCOの合計モル数より上記式で計算した。)
ATR改質反応試験条件
原料炭化水素:n−C12
n−C12:酸素:水蒸気(モル比)=1:7.2:30
水蒸気/炭素(モル比)=2.5
酸素/炭素(モル比=0.6
触媒の充填量:32cc
LHSV=25hr−1
注:LHSV=[(n−C12の供給量(cc/hr)+HOの供給量(cc/hr)]/触媒量(cc)
圧力;常圧
ATR改質反応の結果
表3に示すとおり、CAT1(実施例5A)、CAT2(実施例5B)のいずれも、原料炭化水素(n−C12)の転化率は100%であり、また生成ガス中の水素濃度は60〜62.4モル%であり、700℃における平衡値にほぼ達している。CAT1およびCAT2のRh担持量(それぞれ0.11、0.21wt%)は、参考例1Bに示したCAT3(0.39wt%)に比較して約1/3〜1/2であるが、n−C12の転化率は同等またはそれ以上であり、生成ガス中のエチレン濃度も、CAT3と比較して、低い値であった。
CAT1およびCAT2の成形体の表面層(触媒層)中のRh含有量は、それぞれ0.87wt%、0.35wt%であり、表面に設けた薄膜状の触媒層に大部分のRhが担持されており、前記のような優れた効果を発揮したものと推定される。
【0090】
(実施例6)
<水蒸気改質試験>
実施例3で得られた触媒CAT4を用いて、以下の条件にて、メタンガスの水蒸気改質を実施した。
水蒸気改質反応試験条件
触媒の量 :CAT4(球状成形体触媒)、20ml
供給炭化水素 :メタン(CH
CH/HOモル比:1/3
GHSV :4000hr−1
GHSV=[(CHとHOの合計ガス供給量(cc/時)]/触媒量(cc)
温度 :700℃
圧力 :常圧
結果
表3にCAT4を用いて行った水蒸気改質反応の結果(実施例6)を示した。表中の原料炭化水素転化率および生成ガス組成の値は、反応開始から5時間の間の平均値で示した。原料メタンの転化率は100%であり、生成ガス中のエチレン濃度は検出されなかった。スプレーコート法で厚さ100μmの触媒層を設けた成形体触媒CAT4は、触媒全体としてのRh濃度は0.19wt%と、極めて低濃度であるが、優れた改質活性を発揮した。
【0091】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) マグネシウムとアルミニウムを、Mg/Al原子比で0.3〜0.6の割合で含有する、Mg−Al複合酸化物で構成された成形体;
(b) 前記成形体の表面に固定された皮膜状の触媒層;および
(c) 前記触媒層に含まれる活性金属;
を含んでなる、炭化水素改質触媒。
【請求項2】
Mg−Al複合酸化物が、(i)マグネシウムとアルミニウムをMg/Al原子比で0.3〜0.6の割合で含有する下記式(1)で表されるハイドロタルサイト様化合物、または(ii)前記ハイドロタルサイト様化合物とアルミナ前駆体との混合物、のいずれかを焼成することによって得られる生成物(焼成生成物)である、請求項1に記載の炭化水素改質触媒。
式(1)[Mg(1−X) AlX(OH)]・(A)X/n・mHO
(式1中、xは0.63〜0.77であり、Aは電荷nのアニオンであり、nは1または2であり、mは0または正数である。)
【請求項3】
Mg−Al複合酸化物が、(i)MgAl、または(ii)MgAlとアルミナとの混合物であって、該混合物のMg/Al原子比が0.3〜0.6である、請求項1〜2のいずれかに記載の炭化水素改質触媒。
【請求項4】
MgAlとアルミナの割合が、重量比で、100:0〜65:35である、請求項3に記載の炭化水素改質触媒。
【請求項5】
触媒層が、前記成形体(a)に活性金属を含む溶液を含浸して、形成された触媒層である、請求項1〜4のいずれかに記載の炭化水素改質触媒。
【請求項6】
触媒層が、耐熱性無機酸化物に活性金属を担持してなる触媒粒子を前記成形体(a)上に固定化して、形成された触媒層である、請求項1〜4のいずれかに記載の炭化水素改質触媒。
【請求項7】
活性金属が、Rh、RuおよびNiから選択される、いずれか1種または2種以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の炭化水素改質触媒。
【請求項8】
触媒全体に対する活性金属の担持量が、0.05〜15重量%である、請求項1〜8のいずれかに記載の炭化水素改質触媒。
【請求項9】
触媒層に含まれる活性金属の割合が、触媒全体に含まれる活性金属の60重量%以上である、請求項1〜8のいずれかに記載の炭化水素改質触媒。
【請求項10】
触媒層の厚さが20〜300μmである、請求項1〜9のいずれかに記載の炭化水素改質触媒。
【請求項11】
成形体が、球状、半球状、柱状、円筒状、ペレット、ハニカム構造体のいずれかである、請求項1に記載の炭化水素改質触媒。
【請求項12】
球状成形体触媒が少なくとも5kgf以上の圧壊強度(JIS Z 8841-1993)を有する、請求項11に記載の炭化水素改質触媒。
【請求項13】
炭化水素またはアルコールを水蒸気改質またはオートサーマル改質して、水素を製造するための触媒である、請求項1〜12のいずれかに記載の炭化水素改質触媒。
【請求項14】
(a) マグネシウムとアルミニウムを、Mg/Al原子比で0.3〜0.6の割合で含有する、Mg−Al複合酸化物で構成された成形体;
(b) 前記成形体の表面に固定された皮膜状の触媒層;および
(c) 前記触媒層に含まれる活性金属;
を含んでなる炭化水素改質触媒の製造方法であって、下記の工程:
工程1) 下記式(1)で表され、Mg/Al(原子比)0.3〜0.6の(i)ハイドロタルサイト様化合物、もしくは(ii)前記ハイドロタルサイト様化合物とアルミナ前駆体との混合物の、いずれかを用いて、成形体を形成する工程;
式(1)・・・[Mg(1−X) AlX(OH)]・(A)X/n・mHO
(式1中、xは0.63〜0.77であり、Aは電荷nのアニオンであり、nは1または2であり、mは0または正数である。)
工程2) 工程1で得られた成形体を乾燥する工程;
工程3) 工程2で得られた成形体を、500〜1400℃の範囲の温度に加熱して、Mg/Al 原子比が0.3〜0.6のMgAlまたはMgAlとアルミナとの混合物に変換する工程;
工程4) 工程3で得られた成形体に、Ni、RhおよびRuの少なくとも1種の活性金属の前駆体を含む溶液を含浸し皮膜を形成する工程;および
工程5) 工程4で得られた皮膜付着成形体を、600〜950℃の範囲の温度に加熱して皮膜を固定化して触媒層を形成する工程;
を含む、前記炭化水素改質触媒の製造方法。
【請求項15】
工程4の含浸処理を、ポアフィリング法で行う、請求項14に記載の炭化水素改質触媒の製造方法。
【請求項16】
(a) マグネシウムとアルミニウムを、Mg/Al原子比で0.3〜0.6の割合で含有する、Mg−Al複合酸化物で構成された成形体;
(b) 前記成形体の表面に固定された皮膜状の触媒層;および
(c) 前記触媒層に含まれる活性金属;
を含んでなる炭化水素改質触媒の製造方法であって、下記の工程:
工程I) 下記式(1)で表され、Mg/Al(原子比)0.3〜0.6のハイドロタルサイト様化合物、もしくは該ハイドロタルサイト様化合物とアルミナ前駆体との混合物を用いて、成形体を形成する工程;
式(1)・・・[Mg(1−X) AlX(OH)]・(A)X/n・mHO
(式1中、xは0.63〜0.77であり、Aは電荷nのアニオンであり、nは1または2であり、mは0または正数である。)
工程II) 工程Iで得られた成形体を乾燥する工程;
工程III) 工程IIで得られた成形体に、Ni、RuおよびRhの少なくとも1種の活性金属を担持した耐熱性無機酸化物よりなる触媒粒子を含むスラリーを塗布して皮膜を形成する工程;および、
工程IV) 工程IIIで得られた皮膜付着成形体を、600〜950℃の範囲の温度で加熱して、成形体を、Mg/Al(原子比)0.3〜0.6の割合で含有する、Mg−Al複合酸化物に転化するとともに、成形体の表面に、触媒粒子の皮膜を固定化して触媒層を形成する工程;
を含む、前記炭化水素改質触媒の製造方法。
【請求項17】
工程IIIで使用する耐熱性無機酸化物が、Mg/Al原子比が0.3〜3.5のMg−Al複合酸化物である、請求項16に記載の炭化水素改質触媒の製造方法。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれかに記載の触媒と、炭化水素成分及び改質剤を含む原料ガスとを接触反応させる工程を含む、炭化水素の改質方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−143361(P2011−143361A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6683(P2010−6683)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)(出願人による申告)「国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「水素安全利用等基盤技術開発 水素インフラに関する研究開発 膜式分離酸素利用オートサーマル改質水素製造技術の開発」委託研究、産業技術強化法第19条の適用を受ける特許出願)」
【出願人】(000226219)日揮ユニバーサル株式会社 (12)
【出願人】(509001630)国際石油開発帝石株式会社 (57)
【Fターム(参考)】