説明

炭化水素油の水素化処理触媒の再生方法

【課題】使用済み水素化処理触媒の脱硫活性を一層十分に復活できる再生方法を提供すること。
【解決手段】 炭化水素油の水素化処理に使用して活性の低下した使用済みの、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリンを担持した水素化処理触媒を、油分除去処理する油分除去工程、前記油分除去工程後の水素化処理触媒を、300〜600℃で焼成する焼成工程、前記焼成工程により得られた焼成物に、有機酸とリンを、〔有機酸〕/〔周期律表第8族金属〕のモル比率が0.6〜1、かつ、〔前記焼成工程後担持工程前の焼成物中に含まれていたリンを除くリン(P換算)〕/〔周期律表第6族金属〕のモル比率が0.05〜0.3となるように担持させる担持工程、及び前記担持工程後の焼成物を、200℃以下で乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする使用済みの炭化水素油の水素化処理触媒の再生方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素油の水素化処理に使用して活性の低下した使用済み水素化処理触媒の再生方法に関する。より詳しくは、使用済み水素化処理触媒を、従来の方法で再生した水素化処理触媒よりも一層優れた脱硫活性を有し、使用していない水素化処理触媒と同等程度まで再生する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気環境改善のために、石油製品の品質規制値が世界的に厳しくなる傾向にある。特に、軽油中の硫黄分は、排気ガス対策として期待されている窒素酸化物(NOx)還元触媒、連続再生式ディーゼル排気微粒子除去フィルター等の後処理装置の耐久性に影響を及ぼすため、軽油中の硫黄化合物の低減が要請されている。
【0003】
このような状況下で、運転条件を過酷にすることなしに炭化水素油の超深度脱硫を達成し得る、優れた脱硫活性を有する水素化処理触媒が開発されてきた。
水素化処理触媒は、一定期間使用すると、触媒表面上に炭素質が析出し、活性が低下する。このため、当該使用済み水素化処理触媒を、その優れた脱硫活性が十分復活するように再生し、複数回、商業装置で使用することが可能な水素化処理触媒の再生方法の開発が喫緊の課題となっている。
【0004】
近年、脱硫触媒の再生方法について多くの検討が多方面において進められている。例えば、優れた使用済みの水素化処理触媒の再生方法として、使用済み触媒中の油分を除去した後、焼成し、その後、所定量の有機物を触媒に担持させ、乾燥する方法が提案されている。(特許文献1参照。)。この方法は、失活した使用済み触媒の活性を復活させるための方法として、簡易的に所定の性能が得られる点で、有用な方法といえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−290071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
廃棄物削減など環境政策が重視されている現況下、使用済み触媒の再生後の活性を更に向上させ、また、再生後においても触媒物性にあまり影響を与えず、ほぼ新触媒と同様の物性を維持することができるような再生方法の開発が切望されている。
【0007】
本発明の目的は、上記従来の状況に鑑み、再生後の触媒の脱硫活性をより一層向上させることができ、かつ再生後にも新触媒とほぼ同様の触媒物性を維持することを可能とする使用済み水素化処理触媒の再生方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意研究した結果、使用済みの水素化処理触媒を焼成して触媒上の炭素質を除去した後、得られた焼成物に、有機酸とリン酸化合物を、〔有機酸〕/〔周期律表第8族金属〕(モル比)、〔P〕/〔周期律表第6族金属〕(モル比)を特定の範囲となるように担持させることにより、未使用の触媒とほぼ同様の物性を維持しつつ、未使用の触媒とほぼ同等の脱硫活性領域まで向上できる再生方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、 炭化水素油の水素化処理に使用して活性の低下した使用済みの、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリンを担持した水素化処理触媒を、油分除去処理する油分除去工程、
前記油分除去工程後の水素化処理触媒を、300〜600℃で焼成する焼成工程、
前記焼成工程により得られた焼成物に、有機酸とリンを、〔有機酸〕/〔周期律表第8族金属〕のモル比率が0.6〜1、かつ、〔前記焼成工程後担持工程前の焼成物中に含まれていたリンを除くリン(P換算)〕/〔周期律表第6族金属〕のモル比率が0.05〜0.3となるように担持させる担持工程、
及び前記担持工程後の焼成物を、200℃以下で乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする使用済みの炭化水素油の水素化処理触媒の再生方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の再生方法によれば、使用済み炭化水素油の水素化処理触媒の脱硫活性を一層十分に復活させることができ、以って本発明は、一層脱硫活性に優れた炭化水素油の水素化処理触媒を提供することができる。また、再生された水素化処理触媒を用いれば、過酷な運転条件を必要とせずに、新触媒とほぼ同一の運転条件下で、炭化水素油中の硫黄化合物を高度に脱硫することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の触媒の再生方法は、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリンが担持されており、かつ炭化水素油の水素化処理に使用して活性の低下した使用済みの水素化処理触媒を再生する方法であり、下記の工程を含むことを特徴とする。
炭化水素油の水素化処理に使用して活性の低下した使用済みの、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリンを担持した水素化処理触媒を、油分除去処理する油分除去工程、
前記油分除去工程後の水素化処理触媒を、300〜600℃で焼成する焼成工程、
前記焼成工程により得られた焼成物に、有機酸とリンを、〔有機酸〕/〔周期律表第8族金属〕のモル比率が0.6〜1、かつ、〔前記焼成工程後担持工程前の焼成物中に含まれていたリンを除くリン(P換算)〕/〔周期律表第6族金属〕のモル比率が0.05〜0.3となるように担持させる担持工程、
及び前記担持工程後の焼成物を、200℃以下で乾燥させる乾燥工程。
【0012】
本発明では、担体に、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリンが担持されており、かつ炭化水素油の水素化処理に使用された水素化処理触媒であれば、その製造由来や使用由来を問うことなく、種々の製造方法で製造され、また、種々の炭化水素油の水素化処理に用いられた、種々の使用済み水素化処理触媒の再生を行うことができる。
【0013】
なお、本発明において、「周期律表第6族金属」とは、長周期型周期表における第6A族金属を意味し、「周期律表第8族金属」とは、長周期型周期表における第8族金属を意味する(「化学大辞典」、第1版第3刷、株式会社東京化学同人、1994年4月1日、p.1079−1081)。
【0014】
本発明で再生対象とする水素化処理触媒としては、無機酸化物担体に、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリンが担持された触媒であることが好ましい。
水素化処理触媒中の無機酸化物担体としては、各種無機酸化物を用いることができるが、主成分がアルミナである無機酸化物が好ましい。
【0015】
担体に用いるアルミナは、α−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、アルミナ水和物等の種々のアルミナを使用することができるが、多孔質で高比表面積であるアルミナが好ましく、中でもγ−アルミナが適している。アルミナの純度は、約98質量%以上、好ましくは約99質量%以上のものが適している。アルミナ中の不純物としては、SO2-、Cl-、Fe、NaO等が挙げられるが、これらの不純物はできるだけ少ないことが望ましく、不純物全量で2質量%以下、好ましくは1質量%以下で、成分毎では、SO2-<1.5質量%、Cl-、Fe、NaO<0.1質量%であることが好ましい。
【0016】
担体に用いるアルミナには、他の酸化物成分を添加することが好ましく、他の酸化物成分としては、ゼオライト、ボリア、シリカ及びジルコニアから選ばれる一種以上が好ましい。これらを複合化させることにより、脱硫活性点を形成する二硫化モリブデンの積層化が有利になる。このうちゼオライトは、好ましくは、コールカウンター法(1質量%NaCl水溶液、アパーチャ−30μm、超音波処理3分)での測定による平均粒子径が2.5〜6μm、更に好ましくは3〜4μmのものである。また、このゼオライトは、粒子径6μm以下のものがゼオライト全粒子に対して占める割合が、約70〜98%、好ましくは約75〜98%、より好ましくは約80〜98%のものが望ましい。
【0017】
また、水素化処理触媒中の無機酸化物担体としては、リン酸化物を含有するものであってもよい。無機酸化物担体にリン酸化物を含有させる方法は、特に限定されるものではなく、平衡吸着法、共沈法、混練法等により行うことができるが、脱硫活性の高い触媒が得られる点で、担体の原料のアルミナ水和物中にリン酸化物の原料を混練する混練法によることが好ましい。
【0018】
水素化処理触媒において、担体に担持されている6族金属は、モリブデン、タングステンが好ましく、より好ましくは、モリブデンである。6族金属の担持量は、触媒基準、酸化物換算で、10〜40質量%が好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。10質量%以上であれば、6族金属に起因する効果を発現させるのに十分であり、好ましい。また、40質量%以下であれば、6族金属の含浸(担持)工程で6族金属化合物の凝集が生じず、6族金属の分散性が良くなり、また、効率的に分散する6族金属担持量の限度を超えず、触媒表面積が大幅に低下しない等により、触媒活性の向上がみられ、好ましい。
【0019】
水素化処理触媒において、担体に担持されている8族金属は、コバルト、ニッケルが好ましい。8族金属の担持量は、触媒基準、酸化物換算で、1〜15質量%が好ましく、より好ましくは、3〜8質量%である。1質量%以上であれば、8族金属に帰属する活性点が十分に得られ、好ましい。また、15質量%以下であれば、8族金属の含有(担持)工程で8族金属化合物の凝集が生じず、8族金属の分散性が良くなることに加え、不活性なコバルト、ニッケル種等の8族金属種であるCo種、Ni種等の前駆体であるCoO種、NiO種等や担体の格子内に取り込まれたCoスピネル種、Niスピネル種等が生成しないと考えられるため、触媒能の向上が見られ、好ましい。また、8族金属としてコバルトとニッケルを使用するときは、〔Co〕/〔Ni+Co〕のモル比が0.6〜1の範囲、より好ましくは、0.7〜1の範囲になるように使用することが望ましい。この比が0.6以上では、Ni上でコーク前駆体が生成せず、触媒活性点がコークで被覆されず、その結果活性が低下しないため、好ましい。
【0020】
8族金属と6族金属の上記した含有量において、8族金属と6族金属の最適質量比は、好ましくは、酸化物換算で、〔8族金属〕/〔8族金属+6族金属〕の値で、0.1〜0.25である。この値が0.1以上であれば、脱硫の活性点と考えられるCoMoS構造、NiMoS構造等の生成が抑制されず、脱硫活性向上の度合いが高くなるため、好ましい。0.25以下であれば、上記の不活性なコバルト、ニッケル種等(Co種、Ni種等)の生成が抑制され、触媒活性が向上されるので好ましい。
【0021】
なお、無機酸化物担体への、6族金属、8族金属、及びリンの担持成分の担持は、一般に、これらの担持成分を含む原料化合物を含有する含浸溶液を調製し、それを、得られる触媒の担持成分の担持量が所望の範囲となるように、担体に含浸させる含浸法により行われる。
【0022】
例えば、6族金属を担持させるに用いる6族金属を含む原料化合物としては、三酸化モリブデン、モリブドリン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸等が挙げられる。また、8族金属を担持させるに用いる8族金属を含む原料化合物としては、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、硝酸コバルト6水和物、硝酸ニッケル6水和物等が挙げられる。さらに、リンを担持させるのに用いるリンを含む原料化合物としては、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等のリン酸化合物が挙げられる。
【0023】
また、本発明で再生対象とする水素化処理触媒は、担体に、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリン以外の成分、例えば有機酸ないし有機物由来の炭素を担持した触媒であっても良い。当該水素化処理触媒として、例えば、ゼオライトを含有した無機酸化物担体に周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリン以外に、有機酸ないし有機物由来の炭素を担持した触媒等が挙げられる。より具体的には、ゼオライトを含有した無機酸化物担体に周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリン以外に、クエン酸ないしクエン酸由来の炭素を担持した触媒が挙げられる。
【0024】
本発明では、上記した水素化処理触媒を軽油などの炭化水素油の水素化処理に用いた後の使用済み触媒の再生を好適に行うことができる。
以下、本発明の触媒の再生方法の各工程について詳細に説明する。
【0025】
本発明では、まず、使用済み触媒を油分除去処理する(油分除去工程)。この油分除去処理は、一般に窒素、水蒸気、二酸化炭素、空気等を使用できる。例えば、使用済み触媒を300〜400℃の加熱空気に接触させることにより、当該使用済み触媒表面の油分等の揮発分を除去する場合、加熱空気中の酸素濃度は、多くの処理条件によって最適な濃度は異なるが、一般に21容量%以下、好ましくは、20容量%以下である。
【0026】
本発明では、上記のように油分除去処理された使用済み触媒を300〜600℃、好ましくは400〜500℃で焼成する(焼成工程)。焼成時間は、焼成温度にもよるが、一般に、15分間〜10時間、好ましくは30分間〜9時間である。焼成温度が300℃未満では、触媒上に析出して炭素分を十分に除去できないため、活性を十分に回復させることができない。一方、600℃を超える高温では、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属がシンタリングしてしまうため、活性を十分に回復させることができない。また、焼成温度にもよるが、一般に、焼成時間が15分間以上であれば、触媒上に析出した炭素を除去することが可能であり、また、10時間以下であれば、設備規模を拡張することなく、必要量の触媒再生が可能である。
【0027】
本発明では、上記のように油分除去処理された使用済み触媒を焼成して得られた焼成物(すなわち、焼成工程後に得られた焼成物)に、有機酸とリンを担持させて(担持工程)、しかる後200℃以下、好ましくは80〜200℃で乾燥する(乾燥工程)。
【0028】
この使用済み触媒の焼成物への有機酸の担持は、有機酸が担持された後の焼成物中の、周期律表第8族金属の担持量に対する有機酸の担持量のモル比率(〔有機酸〕/〔周期律表第8族金属〕のモル比率)が0.6〜1、好ましくは0.6〜0.8となるように行われる。
【0029】
〔有機酸〕/〔周期律表第8族金属〕のモル比率が0.6以上であれば、触媒表面で8族金属が有機酸と錯体化合物を十分に形成して、予備硫化工程において、8族金属に帰属する脱硫活性点が十分に得られるため好ましい。また、当該モル比率が1以下であれば、触媒表面で8族金属が有機酸と十分に錯体化合物を形成でき、一方で、過剰な有機酸が6族金属と錯体化合物を形成することを抑制することができると考えられるため好ましい。
【0030】
使用済み触媒の焼成物に担持させる有機化合物としては、一般的に、多価アルコールなど種々の有機物が用いられているが、本発明では、特に有機酸を用いている。有機酸は、周期律表第8族金属と水溶性錯体を形成する点で好適である。
【0031】
本発明で用いることのできる有機酸としては、脂肪族多価カルボン酸類、例えばクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、コハク酸、グルタン酸、グルコン酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、マロン酸等が挙げられ、特に周期律表第8族金属イオンと極めて安定な水溶性錯体を生成する点で、クエン酸が好ましい。
これらの有機酸は、硫黄を実質的に含まない化合物を使用することが好ましい。これらの有機酸は、必要に応じて、1種用いることも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0032】
本発明では、使用済み触媒の焼成物に、有機酸とともに新たにリンを担持させることが必要である。リンの担持は、リンが担持された後の焼成物中において、周期律表第6族金属の担持量に対する、新たに担持されるリンのP換算による担持量のモル比率(〔前記焼成工程後担時工程前の焼成物中に含まれていたリンを除くリン(P換算)〕/〔周期律表第6族金属〕のモル比率)が0.05〜0.3、好ましくは0.07〜0.2、より好ましくは0.1〜0.2の範囲となる量とする。
【0033】
周期律表第6族金属に対する、当該担持工程において新たに担持されたリンのP換算による担持量(以下、単に「P換算量」ということがある。)のモル比率が0.05以上であれば、触媒表面上でヘテロポリ酸を形成し、なおかつヘテロポリ酸を形成しないリンは、アルミナ表面上に分散するため、予備硫化工程で高分散かつ多層な二硫化モリブデン結晶が形成されて、脱硫活性点を十分に配置できると推測されるため好ましい。また、当該モル比率が0.3以下であれば、触媒表面上で6族金属が十分にヘテロポリ酸を形成し、かつヘテロポリ酸を形成しないリンはアルミナ表面に分散し、予備硫化工程で高品質な脱硫活性点を被覆しないと推測されるため、活性低下を引き起こさないため好ましい。
【0034】
さらに、使用済み触媒の焼成物に、〔P換算量〕/〔周期律表第6族金属〕のモル比率が0.05〜0.3の範囲となるようにリンを担持させることにより、再生後の触媒の側面機械的強度(Side Crashing Strength:SCS)の劣化を抑制することができる。
【0035】
なお、再生後の触媒中に過剰量のリンが存在する場合には、予備硫化工程において脱硫活性点がリンによって被覆されてしまい、脱硫活性が低下するおそれがある。このため、再生後の触媒中に含まれるリンの量は、10質量%程度以下であることが好ましい。
【0036】
上記焼成物にリンを担持させるためには、リンを含む原料化合物としてリン酸化合物を用いる。当該リン酸化合物としては、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸等が挙げられ、中でもオルトリン酸が好ましい。これらのリン酸化合物は、必要に応じて、1種用いることも、2種以上を混合して用いることもできる。
【0037】
使用済み触媒の焼成物へ有機酸及びリンを担持させる方法は、特に限定されるものではなく、当該技術分野で公知のいずれの手法で行ってもよい。例えば、使用済み触媒の焼成物への有機酸及びリンの担持は、有機酸とリン酸化合物を含有する溶液を用いて行うことができる。具体的には、使用済み触媒の焼成物を、有機酸とリン酸化合物を含有する溶液に含浸させて行われる。この有機酸とリン酸化合物を含有する含浸溶液の調製は、常法により行うことができる。有機酸とリン化合物を溶解させるために用いる溶媒は、一般に水である。
【0038】
また、上記使用済み触媒の焼成物への有機酸とリン酸化合物の含浸溶液の含浸も、常法により行うことができる。含浸条件は、種々の条件を採ることができるが、通常、含浸温度は0℃を超え100℃未満が適しており、含浸時間は15分から3時間が適している。
含浸温度が上記範囲であれば、含浸中に乾燥が起こり、有機酸とリン酸化合物の分散度が低下することがない。また、含浸時間が上記範囲であれば、上記焼成物中に有機酸、リンが均一となる。
【0039】
有機酸とリン酸化合物の含浸溶液を含浸させて、有機酸とリンを担持させた上記使用済み触媒の焼成物を、200℃以下で乾燥させたものが、再生された水素化処理触媒である。有機酸とリンを担持させた上記使用済み触媒の焼成物の乾燥は、200℃以下で行われる手法であれば、特に限定されるものではない。例えば、一般に、常温〜約80℃、窒素気流中、空気気流中、あるいは真空中で、水分をある程度〔LOIが50%以下となるように〕除去し、その後、空気気流中、窒素気流中、あるいは真空中で200℃以下、好ましくは80〜200℃、5時間〜20時間の乾燥を行う。ここで、真空中で乾燥を行う場合は、圧力760mmHg換算で上記の温度範囲になるようにして乾燥を行うことが好ましい。
【0040】
有機物を担持させた上記使用済み触媒の焼成物においては、担持させた有機酸は、使用済み触媒に担持されている周期律表第8金属と錯体化し、担持させたリン化合物は使用済み触媒に担持されている周期律表第6族金属とヘテロポリ化していると考えられる。
また、乾燥を200℃以下の温度で行うと、この使用済み触媒に担持されている周期律表第8族金属と錯体化している有機酸、及び、周期律表第6金属とヘテロポリ化しているリンが金属から脱離せず、その結果、得られる触媒を硫化処理したときに上記の活性点と考えられるCoMoS構造、NiMoS構造の形成の精密制御が容易になるためと推測され、好ましい。
【0041】
本発明により上記の如くして再生された水素化処理触媒は、脱硫活性が十分に復活されており、使用前の水素化処理触媒と同様に、炭化水素油の水素化処理に好適に用いることができる。すなわち、本発明の再生方法によって再生された水素化処理触媒は、過酷な運転条件を必要とせずに、炭化水素油中の硫黄化合物を超深度脱硫することができる。
なお、触媒の側面機械的強度(Side Crashing Strength:SCS)としては、通常、2lbs/mm以上が要求される。
【0042】
本発明により再生された水素化処理触媒は、例えば、直留ナフサ、接触改質ナフサ、接触分解ナフサ、接触分解ガソリン、直留灯油、直留軽油、接触分解軽油、熱分解軽油、水素化処理軽油、脱硫処理軽油、減圧蒸留軽油(VGO)等の留分の水素化処理に好適に用いることができる。本発明により再生された水素化処理触媒により好適に水素化処理がなされ得る炭化水素油の代表的な性状例として、沸点範囲が30〜560℃、硫黄化合物濃度が5質量%以下のものが挙げられる。
【0043】
また、本発明により再生された水素化処理触媒による上記のような炭化水素油の水素化処理は、一般に、水素分圧0.7〜20MPa、温度220〜420℃、液空間速度0.3〜10hr−1、水素/オイル比20〜1000m(normal)/klの条件により好適に行うことができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
[実施例1]
<水素化処理触媒の製造>
国際公開第2004/054712号パンフレットにおいて実施例1に記載されている方法に従って、次のようにして触媒イを製造した。
即ち、SiO/Alモル比6のSHYゼオライト粉末(平均粒子径3.5μm、粒子径6μm以下のものがゼオライト全粒子の87%)と、アルミナ水和物を混練、押出成形後、600℃で2時間焼成して直径1.5mmの柱状成形物のゼオライト−アルミナ複合担体(ゼオライト/アルミナ質量比:5/95、細孔容積:0.79ml/g、比表面積:311m/g、平均細孔直径:93Å)を得た。
【0046】
イオン交換水22.3gに、クエン酸第一コバルト10.27gとリン酸(85%水溶液)2.24gを投入し、80℃に加温して10分間攪拌した。次いで、モリブドリン酸17.61gを投入し溶解させ、同温度で15分間攪拌して含浸用の溶液を調製した。
ナス型フラスコ中に、上記のゼオライト−アルミナ複合体の無機酸化物担体30.0gを投入し、そこへ上記の含浸溶液の全量をピペットで添加し、約25℃で3時間浸漬した。その後、窒素気流中で風乾し、マッフル炉中、空気気流中・大気圧・120℃で約16時間乾燥させ、触媒イを得た。
【0047】
<水素化処理触媒の使用>
この触媒イを、原料軽油(硫黄分:1.61質量%、密度(15/4℃):0.8570g/cm)を用いて、圧力(水素分圧):4.9MPa、液空間速度:1.5hr-1の条件で生成油硫黄分が10ppm以下になるように水素化処理を施し、その活性が許容されないレベルに低下するまで使用した。
【0048】
<使用済み水素化処理触媒の再生>
当該触媒を反応装置から抜き出し、空気雰囲気中において300℃、3時間処理することでこの使用済み触媒に残存している炭化水素油を除去した。さらに、この残存炭化水素油を除去した使用済み触媒上に析出している炭素を主成分とする不純物を、430℃で、4時間焼成して除去した。
【0049】
その後、得られた焼成物に、有機酸としてクエン酸・1水和物5.34gとリン酸化合物としてオルトリン酸(85%水溶液)3.09gを含む26.00gの水溶液を含浸させることにより、当該焼成物(触媒)に含まれるコバルトに対し、〔クエン酸〕/〔CoO〕のモル比率が0.67となり、かつ当該焼成物に含まれるモリブデンに対し、〔P換算量〕/〔MoO〕のモル比率が0.15となるように、当該焼成物に有機酸とリンを担持させた。さらに、含浸後の焼成物をマッフル炉で120℃、16時間乾燥させて触媒Aを得た。
【0050】
[実施例2]
焼成物に含浸させる含浸液として、クエン酸・1水和物5.34gとリン酸化合物としてオルトリン酸(85%水溶液)3.86gを含む26.00gの水溶液を用いて、焼成物に含まれるコバルトに対し、〔クエン酸〕/〔CoO〕のモル比率が0.67となり、かつ当該触媒に含まれるモリブデンに対し、〔P換算量〕/〔MoO〕のモル比率が0.19となるように焼成物にクエン酸とリンを担持させた以外は実施例1と同様にして、触媒Bを得た。
【0051】
[実施例3]
焼成物に含浸させる含浸液として、有機酸としてクエン酸・1水和物5.34gとリン酸化合物としてオルトリン酸(85%水溶液)1.54gを含む26.00gの水溶液を用いて、触媒(含浸後の焼成物)に含まれるコバルトに対し、〔クエン酸〕/〔CoO〕のモル比率が0.67となり、かつ当該触媒に含まれるモリブデンに対し、〔P換算量〕/〔MoO〕のモル比率が0.08となるように焼成物にクエン酸とリンを担持させた以外は実施例1と同様にして、触媒Cを得た。
【0052】
[実施例4]
焼成物に含浸させる含浸液として、有機酸としてクエン酸・1水和物7.21gとリン酸化合物としてオルトリン酸(85%水溶液)3.09gを含む26.00gの水溶液を用いて、触媒(含浸後の焼成物)に含まれるコバルトに対し、〔クエン酸〕/〔CoO〕のモル比率が0.90となり、かつ当該触媒に含まれるモリブデンに対し、〔P換算量〕/〔MoO〕のモル比率が0.15となるように焼成物にクエン酸とリンを担持させた以外は実施例1と同様にして、触媒Dを得た。
【0053】
[実施例5]
焼成物に含浸させる含浸液として、有機酸としてクエン酸・1水和物4.88gとリン酸化合物としてオルトリン酸(85%水溶液)3.09gを含む26.00gの水溶液を用いて、触媒(含浸後の焼成物)に含まれるコバルトに対し、〔クエン酸〕/〔CoO〕のモル比率が0.61となり、かつ当該触媒に含まれるモリブデンに対し、〔P換算量〕/〔MoO〕のモル比率が0.15となるように焼成物にクエン酸とリンを担持させた以外は実施例1と同様にして、触媒Eを得た。
【0054】
[比較例1]
焼成物に含浸させる含浸液として、有機酸としてクエン酸・1水和物5.34gを含む26.00gの水溶液を用いて、触媒(含浸後の焼成物)に含まれるコバルトに対し、〔クエン酸〕/〔CoO〕のモル比率が0.67となるように焼成物にクエン酸のみを担持させた以外は実施例1と同様にして、触媒aを得た。
【0055】
[比較例2]
焼成物に含浸させる含浸液として、有機酸としてクエン酸・1水和物5.34gとリン酸化合物としてオルトリン酸(85%水溶液)6.96gを含む26.00gの水溶液を用いて、触媒(含浸後の焼成物)に含まれるコバルトに対し、〔クエン酸〕/〔CoO〕のモル比率が0.67となり、かつ当該触媒に含まれるモリブデンに対し、〔P換算量〕/〔MoO〕のモル比率が0.34となるように焼成物にクエン酸とリンを担持させた以外は実施例1と同様にして、触媒bを得た。
【0056】
[比較例3]
焼成物に含浸させる含浸液として、有機酸としてクエン酸・1水和物5.34gとリン酸化合物としてオルトリン酸(85%水溶液)0.77gを含む26.00gの水溶液を用いて、触媒(含浸後の焼成物)に含まれるコバルトに対し、〔クエン酸〕/〔CoO〕のモル比率が0.67となり、かつ当該触媒に含まれるモリブデンに対し、〔P換算量〕/〔MoO〕のモル比率が0.04となるように焼成物にクエン酸とリンを担持させた以外は実施例1と同様にして、触媒cを得た。
【0057】
[比較例4]
焼成物に含浸させる含浸液として、有機酸としてクエン酸・1水和物4.00gとリン酸化合物としてオルトリン酸(85%水溶液)3.09gを含む26.00gの水溶液を用いて、触媒(含浸後の焼成物)に含まれるコバルトに対し、〔クエン酸〕/〔CoO〕のモル比率が0.30となり、かつ当該触媒に含まれるモリブデンに対し、〔P換算量〕/〔MoO〕のモル比率が0.15となるように焼成物にクエン酸とリンを担持させた以外は実施例1と同様にして、触媒dを得た。
【0058】
<再生された触媒の分析>
以上の実施例及び比較例で再生された触媒の化学組成及び物性を分析した。各触媒の元素分析値、物性価を表1に示す。
なお、触媒の分析に用いた方法及び分析機器を以下に示す。
【0059】
〔比表面積の測定〕
各触媒の比表面積は、窒素吸着によるBET法により測定した。窒素吸着装置は、日本ベル(株)製の表面積測定装置(ベルソープ28) を使用した。
【0060】
〔細孔容積、平均細孔直径、及び細孔分布の測定〕
各触媒の細孔容積、平均細孔直径、及び細孔分布は、水銀圧入法により測定した。
水銀圧入法は、毛細管現象の法則に基づく。水銀と円筒細孔の場合には、この法則は次式で表される。
D =−(1/P)4γcosθ
式中、Dは細孔直径、Pは掛けた圧力、γは表面張力、θは接触角である。掛けた圧力Pの関数としての細孔への進入水銀体積を測定する。なお、触媒の細孔水銀の表面張力は484dyne/cm とし、接触角は130度とした。細孔容積は、細孔へ進入した触媒グラム当たりの全水銀体積量であり、平均細孔直径は、Pの関数として算出されたDの平均値である。さらに、細孔分布は、Pを関数として算出されたDの分布である。
【0061】
具体的には、下記のようにして測定した。なお、水銀圧入装置は、ポロシメーター(MICROMERITICS AUTO−PORE9200:島津製作所製) を使用した。
(1) 真空加熱脱気装置の電源を入れ、温度400℃ 、真空度5×10−2Torr以下になることを確認した。
(2) サンプルビュレットを空のまま真空加熱脱気装置に掛けた。
(3) 真空度が5×10−2Torr以下となったなら、サンプルビュレットを、そのコックを閉じて真空加熱脱気装置から取外し、冷却後、重量を測定した。
(4) サンプルビュレットに試料(触媒)を入れた。
(5) 試料入りサンプルビュレットを真空加熱脱気装置に掛け、真空度が5×10−2Torr 以下になってから1時間以上保持した。
(6) 試料入りサンプルビュレットを真空加熱脱気装置から取外し、冷却後、重量を測定し、試料重量を求めた。
(7) AUTO−PORE9200用セルに試料を入れた。
(8) AUTO−PORE9200により測定した。
【0062】
〔化学組成の分析〕
a)金属及びリンの組成の分析
各職場意中の金属及びリンの組成を、酸化物換算で分析した。分析装置は、誘導結合プラズマ発光分析(ICPS−2000: 島津製作所製)を用いて行った。
具体的には、ユニシールに、触媒0.05g、塩酸(50%)1ml、フッ酸一滴、及び純水1ccを投入し、加熱して溶解させた。溶解後、ポリプロピレン製メスフラスコ(50ml)に移し換え、純水を加えて50mlに秤量した。得られた溶液をICPS−2000 により測定した。なお、金属及びリンの定量は、絶対検量線法にて行った。
【0063】
b)炭素組成の分析
各触媒中の炭素質量は、触媒を乳鉢にて粉砕した後、(株)柳本株式会社製CHN分析計(MT−5)を用い、950 ℃ で燃焼させ、燃焼生成ガスを差動熱伝導度計で測定した。
【0064】
【表1】

【0065】
CoO、MoO、P、及びCの測定値(質量%)から、各触媒の単位量当たりの、コバルト、モリブデン、リン(P換算)、及び有機酸の含有量(モル)を算出した。
なお、触媒aは、担持工程においてリンを担持させていないため、各触媒のリン含有量から触媒a中のリン含有量を差し引いた値を、各触媒において再生工程により新たに担持されたリンの量とした。
算出された各含有量から、各触媒の〔クエン酸〕/〔CoO〕のモル比率及び〔P換算量〕/〔MoO〕のモル比率を求めたところ、いずれの触媒においても、両モル比率が期待された数値(各実施例及び比較例に記載された数値)であることが確認された。
【0066】
〔直留軽油の水素化処理反応〕
上記の実施例及び比較例で調製した触媒A、B、C、D、E、a、b、c、dを用い、以下の要領にて、下記性状の直留軽油の水素化処理を行った。
先ず、触媒を高圧流通式反応装置に充填して固定床式触媒層を形成し、下記の条件で前処理を行った。
次に、反応温度に加熱した原料油と水素含有ガスとの混合流体を、反応装置の上部より導入して、下記の条件で水素化反応を進行させ、生成油とガスの混合流体を、反応装置の下部より流出させ、気液分離器で生成油を分離した。
【0067】
<触媒の前処理条件>
触媒の硫化 :原料油による液硫化を行った。
圧力(水素分圧) :4.9MPa
雰囲気 :水素及び原料油(液空間速度:1.5hr−1、水素/オイル比:200m(normal)/kl)
温度 :常温約22℃で水素及び原料油を導入し、20℃/hrで昇温し、300℃にて24hr維持、次いで反応温度である350℃まで20℃/hrで昇温。
【0068】
<水素化反応条件>
反応温度 :350℃
圧力(水素分圧) :4.9MPa
液空間速度 :1.5hr−1
水素/オイル比 :200m3(normal)/kl
【0069】
<原料油の性状>
油種 :中東系直留軽油
密度(15/4℃):0.8570g/cm
蒸留性状 :初留点が212.5 ℃、50%点が303.5℃、90%点が354.0℃、終点が372.5℃
硫黄成分 :1.61質量%
窒素成分 :140質量ppm
動粘度(30℃) :5.857cSt
流動点 :−2.5℃
くもり点 :1.0℃
セタン指数 :54.5
セイボルトカラー :−6
【0070】
反応結果については、以下の方法で解析した。
350℃で反応装置を運転し、6日経過した時点で生成油を採取し、その性状を分析した。また、下記の如く脱硫率、脱硫反応速度定数、比活性を算出した。これらの結果を表2に示した。
【0071】
〔脱硫率(HDS)(%)の算出〕
原料中の硫黄分を脱硫反応によって硫化水素に転換することにより、原料油から消失した硫黄分の割合を脱硫率と定義し、原料油及び生成油の硫黄分析値から以下の式により算出した。式中、Sfは原料油中の硫黄分(質量%)、Spは反応生成油中の硫黄分(質量%)である。
脱硫率(%)=〔(Sf−Sp)/Sf〕×100
【0072】
〔脱硫反応速度定数(Ks)の算出〕
生成油の硫黄分(Sp)の減少量に対して、1.3次の反応次数を得る反応速度式の定数を脱硫反応速度定数(Ks)とした。なお、反応速度定数が高い程、触媒活性が優れていることを示している。式中、Sfは原料油中の硫黄分(質量%)、Spは反応生成油中の硫黄分(質量%)、LHSVは液空間速度(hr-1)である。
脱硫反応速度定数=〔1/(Sp)(1.3-1)−1/(Sf)(1.3-1)〕×(LHSV)×1/(1.3−1)
【0073】
〔比活性(%)の算出〕
触媒aの活性を基準として、各触媒の比活性を下記式より算出した。
比活性(%)=(各脱硫反応速度定数/比較触媒aの脱硫反応速度定数)×100
【0074】
【表2】

【0075】
この結果、触媒aに対する比活性は、いずれの触媒においても100%より高かった。これより、再生工程において、クエン酸のみを担持させた触媒aよりも、クエン酸とリン酸を共に担持させた触媒のほうが、再生によってより脱硫活性の高い水素化処理触媒が得られることが明らかである。
また、再生後の触媒において、〔クエン酸〕/〔CoO〕のモル比が0.6〜1の範囲内であり、かつ〔P換算量〕/〔MoO〕のモル比率が0.05〜0.3の範囲内である触媒A〜Eは、両モル比率の少なくともいずれか一方が当該範囲内から外れている触媒a〜dよりも、顕著に脱硫活性が高かった。これらの結果から、水素化処理触媒の再生において、触媒中の〔有機酸〕/〔周期律表第8族金属〕のモル比及び〔P換算量〕/〔周期律表第6族金属〕のモル比率を特定の範囲内となるように有機酸とリンを担持させることにより、脱硫活性が従来になく充分に復活された再生触媒が得られることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素油の水素化処理に使用して活性の低下した使用済みの、周期律表第6族金属、周期律表第8族金属、及びリンを担持した水素化処理触媒を、油分除去処理する油分除去工程、
前記油分除去工程後の水素化処理触媒を、300〜600℃で焼成する焼成工程、
前記焼成工程により得られた焼成物に、有機酸とリンを、〔有機酸〕/〔周期律表第8族金属〕のモル比率が0.6〜1、かつ、〔前記焼成工程後担持工程前の焼成物中に含まれていたリンを除くリン(P換算)〕/〔周期律表第6族金属〕のモル比率が0.05〜0.3となるように担持させる担持工程、
及び前記担持工程後の焼成物を、200℃以下で乾燥させる乾燥工程を含むことを特徴とする使用済みの炭化水素油の水素化処理触媒の再生方法。

【公開番号】特開2012−148215(P2012−148215A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6879(P2011−6879)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】