説明

炭化物製造方法及び炭化物製造装置

【課題】発火・火災を起こさないような安全性の高い炭化物を製造するための、炭化物製造方法及び炭化物製造装置を提供する。
【解決手段】炭化炉1で生成後に水洗処理された発熱性を有する炭化物を、水洗槽4と貯留槽30の間に設けられた滞留装置6内へ導き、この滞留装置6内において、炭化物の低温酸化等の発熱反応を促進させた後に、貯留槽30に投入する。滞留装置内6の温度情報、乾燥機4の出口の温度情報、乾燥機用サイクロン5の出口の温度情報、滞留装置6出口の温度情報、貯留槽30内部の温度情報、滞留装置6内の酸素濃度情報に基づき、滞留装置6内への気体供給量、窒素等不活性ガス供給量、炭化物の加熱量、炭化物への水蒸気等供給量、炭化物の冷却量のいずれか又は2以上を制御して、炭化物の低温酸化等の発熱反応を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を処理して、発火・火災を起こさないような安全性の高い状態の炭化物を製造するための、炭化物製造方法及び炭化物製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ごみ等の廃棄物を処理するにあたり、最終処分場(埋立地)の延命化を図るために、焼却やガス化溶融方法等により廃棄物の減量化が図られている。一方、最近では温室効果ガス(例えばCO)の削減の要請から、ごみ等の廃棄物を焼却処理するのではなく、炭化炉で炭化処理して炭化物として回収し、有効利用を可能とする方法が提案されている。この炭化物は、例えば燃料としての石炭、コークス等の代替材や、金属の電気炉における溶湯表面の保温材等として利用できるため、更に省資源化に有効である。一般的に炭化炉で生成された炭化物は、回収器で回収され、炭化物に含まれる塩素等の有害物質を除去するために、水洗槽で水洗処理が施され、水洗処理された炭化物の水分を固液分離機及び乾燥機で除去した後に、貯留槽で貯留され、フレキシブルコンテナ等へ小分けされて、保管・搬送される。
【0003】
一方、この炭化物は、遊離基・官能基等の反応性に富んだ基を多く含んでおり、低温酸化反応等により発熱する性質を持つ。従って、フレキシブルコンテナ等で保管・搬送中に、炭化物の放熱量より発熱量の方が大きくなると、炭化物が蓄熱し、この熱により炭化物の低温酸化等の発熱反応がより促進され、ある一定の温度を超えると熱暴走して、最悪の場合発火し、火災に至る可能性がある。
【0004】
このため、フレキシブルコンテナ等の貯蔵容器で貯蔵、搬送中の炭化物が、発火・火災を起こさないようにするために、初期の最も反応性に富む低温酸化等の発熱反応が進行し、安定した状態になるまで、炭化物をある程度の時間(例えば150時間)貯蔵容器で貯蔵し、かつ貯蔵中は熱暴走しないように監視することが必要であった。
【0005】
そして、炭化物が熱暴走した場合は緊急に水をかけて冷却するしかなく、水がかけられた炭化物は含水率が高くなり有姿発熱量(低位発熱量)が小さくなるため、燃料代替製品としての価値が著しく低下したものとなるという問題があった。
【0006】
このような炭化物の熱暴走を防止するために、放熱しやすいように少ない容量の貯蔵容器に炭化物を小分けして貯留する方法も考えられるが、多数の貯蔵容器が必要で、この貯蔵容器の保管スペースを確保する必要があることからコストが高くなり、また炭化物を小容量で多数の貯蔵容器で貯蔵することから、取り扱いに不便であるという問題がある。
【0007】
従って、炭化物の製造時において、低温酸化等の発熱反応が十分に促進されて、安全性の高い炭化物として製造することができる、新たな炭化物の炭化物製造方法の開発が要望されていた。
【0008】
また、上記問題を解決するために、特許文献1に示すような炭化物生成施設が提案されている。この炭化物生成施設は、炭化物に脱酸素剤及び脱酸素水溶液の少なくとも一方を供給し、脱気を行い袋内の酸素濃度を低減した状態で袋詰めをする施設である。しかしながら、この方法によって炭化物の発熱を防止するには、大掛かりな設備が必要となり、また脱酸素剤や脱酸素水溶液が必要でありランニングコストが高くなるという問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開2004−256122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記のような問題点を解決して、発火・火災を起こさないような安全性の高い炭化物を製造するための、炭化物製造方法及び炭化物製造装置を提供することを目的として完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明は、炭化炉で生成後に水洗処理された発熱性を有する炭化物を、水洗槽と貯留槽の間に設けられた滞留装置内へ導き、この滞留装置内において、炭化物の低温酸化反応等の発熱反応を促進させることを特徴とするものである。
【0012】
また、滞留装置内に空気等の酸素供給源となり得る気体を供給するか、炭化物を加熱するかのいずれか又は両方により、炭化物の低温酸化反応等の発熱反応を促進させることが好ましい。
【0013】
また、滞留装置内への空気等の酸素供給源となり得る気体の供給を遮断するか、滞留装置内へ不活性ガスを供給するか、炭化物に水及び水蒸気の少なくとも一方を供給するか、炭化物を冷却するかのいずれか又は2以上により、炭化物の熱暴走を防止しつつ、低温酸化反応等の発熱反応を促進させることが好ましい。
【0014】
また、滞留装置内の温度情報、乾燥機の出口の温度情報、乾燥機用サイクロンの出口の温度情報、滞留装置出口の温度情報、貯留槽内部の温度情報、滞留装置内の酸素濃度情報のいずれか又は2以上に基づき、滞留装置内への空気等の酸素供給源となり得る気体の供給量、滞留装置内へ不活性ガス供給量、炭化物の加熱量、炭化物への水又は水蒸気供給量、炭化物の冷却量のいずれか又は2以上を制御して、炭化物の低温酸化反応等の発熱反応を制御することが好ましい。
【0015】
一方、本発明を具現化するための装置は、炭化物を生成する炭化炉と、得られた炭化物を水洗処理する水洗槽を備えた炭物製造装置において、前記水洗槽と炭化物の製造後に貯留する貯留槽の間に、発熱性を有する炭化物を、酸素供給源となり得る気体と接触させて低温酸化反応等の発熱反応を促進させる滞留装置を設けたことを特徴とする。
【0016】
なお、滞留装置は、水洗処理後の炭化物を乾燥処理する乾燥装置の後段に設けられていることが好ましい。
【0017】
なお、滞留装置は、水洗処理後の炭化物を乾燥処理する乾燥装置及び、前記乾燥装置で発生する粉塵をガス分と固形分に分離する設けられた乾燥装置用サイクロンの後段に設けられていることが好ましい。
【0018】
なお、滞留装置には、滞留装置内に空気等の酸素供給源となり得る気体を供給する気体供給装置、滞留装置内への不活性ガス供給装置、炭化物を加熱する加熱装置、炭化物に水及び水蒸気の少なくとも一方を供給する水蒸気等供給装置、炭化物を冷却する冷却装置のいずれか又は2以上が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の炭化物製造方法及び炭化物製造装置によれば、炭化炉で生成後に水洗処理された発熱性を有する炭化物を、水洗槽と貯留槽の間に設けられた滞留装置内へ導き、この滞留装置内において、炭化物の低温酸化反応等の発熱反応を促進させることとしたので、サイロ等の貯留槽やフレキシブルコンテナ等の貯蔵容器で貯蔵している間に炭化物が熱暴走しないように監視する手間を省き、大掛かりな設備によらずに、ランニングコストが低く、安全性の高い炭化物を製造することが可能となる。
【0020】
また、滞留装置内の温度情報、乾燥機の出口の温度情報、乾燥機用サイクロンの出口の温度情報、滞留装置出口の温度情報、貯留槽内部の温度情報、滞留装置内の酸素濃度情報のいずれか又は2以上に基づき、滞留装置内への空気等供給量、滞留装置内への窒素等不活性ガス供給量、炭化物の加熱量、炭化物への水蒸気等供給量、炭化物の冷却量のいずれか又は2以上を制御して、炭化物の低温酸化等の発熱反応を制御することとすると、炭化物の熱暴走を防止しつつ、効率よく且つ安全に炭化物の低温酸化等の発熱反応を十分に促進させて、安全性の高い炭化物を製造することが可能となる。
【0021】
本発明の炭化物製造方法により、炭化物を比較的低温酸化等の発熱反応性に富んだ状態から、反応を促進させて安全性の高い状態とした場合には、炭化物の可燃分及び有姿発熱量の低下率は実績によると3%以内となり、燃料代替製品等としての製品価値はほとんど低下しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は本発明の実施の形態を示す炭化物製造装置の説明図である。1は炭化炉であり、炭化炉1内の空気比を1以下として、廃棄物を450℃〜600℃に保たれた砂層で、炭化物と熱分解ガスに熱分解するものである。これらの炭化物と熱分解ガスは炭化炉1上部から、炭化炉1の側方に設けられた回収器2に送られ、遠心力の作用により分離される。この熱分解ガスは、焼却炉に導かれ、燃焼後は大気に放出される。なお、この熱分解ガスを系内に利用してもよい。一方、回収器2で回収された炭化物は、塩素分等の有害物質を洗浄除去するための水洗槽3に搬送され、水洗処理される。回収器2で回収された炭化物は、例えば400〜700℃であるが、水洗槽3に投入されると、この炭化物は急冷されて、低温酸化等の反応が抑制される。
【0023】
水洗槽3で水洗された炭化物は水分を含んでいるために、水洗槽3の後段に設けられたスクリュー脱水機等の固液分離機(図示せず)に導かれ、水分を除去する。しかしながら、この固液分離機では十分に水分を除去することができないので、炭化物は固液分離機の後段に設けられた乾燥機4に導かれ乾燥される。この乾燥機4はロータリーキルン等であり、この乾燥機4に供給される熱風の温度は直接加熱熱風式の場合100℃〜800℃である。なお、回収器2で分離した熱分解ガスをこの乾燥機4の熱源としてもよい。乾燥機4内の炭化物からはガス分を含む粉塵が発生し、この粉塵は乾燥機4の後段に設けられた乾燥機用サイクロン5に導かれ、遠心力の作用でガス分と炭化物を含む固形分に分離され、ガス分は焼却炉で燃焼され、大気に放出される。なお、このガス分を乾燥機4の熱源として利用したり、系内の熱源として循環利用したりしてもよい。
【0024】
乾燥機4で水分が除去された炭化物及び乾燥機用サイクロン5で回収された炭化物は低温酸化反応が十分に進行していない状態であるが、通常は貯留槽30に投入されて、フレキシブルコンテナ31に袋詰するまで貯留される。炭化物は貯留槽30で密な状態で貯留され、また酸素の供給も不十分であるので低温酸化反応が十分には進行しない。一方で、貯留槽30で炭化物が低温酸化等の発熱反応を起こした場合には、貯留槽30から熱が放熱されにくいことから、貯留槽30内の炭化物が蓄熱によって昇温し、熱暴走してしまう危険性もある。このように、貯留槽30内で低温酸化等の発熱反応による蓄熱が起こると熱暴走してしまう危険性があるため、貯留槽30内で炭化物を貯留しながら、低温酸化反応を促進させることは困難であり、貯留槽30内で炭化物の低温酸化等の発熱反応が十分に進行していないので、フレキシブルコンテナ31に袋詰めされた状態では、炭化物は低温酸化反応が十分に進行していない。
【0025】
そこで、乾燥機4で乾燥処理された炭化物及びサイクロン装置5で回収された炭化物を、乾燥機4及びサイクロン装置5の後段に設けられた滞留装置6に導いて、この滞留装置6内で炭化物の低温酸化等の発熱反応を十分に進行させてから、貯留槽30に投入することとした。
【0026】
この滞留装置6は、例えば図1に示すような、コンベヤ7により、回収器2で回収された炭化物を貯留槽30に搬送するものである。なお、この滞留装置6は水平状、垂直状、斜面状のいずれか又は2以上の組合せに構成されたものである。コンベヤ7の具体例としては、ベルトコンベヤ、エプロンコンベヤ、バケットコンベヤ、パンコンベヤ、フライトコンベヤ、スクリューコンベヤ、スパイラルコンベヤ、振動コンベヤ、フレックスコンベヤ等である。また気体搬送式として炭化物を搬送することとしても差し支えない。また、コンベヤ7には乗り継ぎを利用して、搬送中の炭化物を積極的に撹拌して、空気等の酸素供給源なり得る気体と接触させる機能を持たせてもよい。
【0027】
炭化物は、この滞留装置6内部に設けられたコンベヤ7で搬送中に、滞留装置6内の空気等の酸素供給源となり得る気体と接触することにより低温酸化等の発熱反応が促進される。十分に炭化物の低温酸化等の発熱反応を促進させるために、滞留時間は制御されることが好ましい。コンベヤ7が、スクリューコンベヤやスパイラルコンベヤである場合や、気体搬送方式の場合、コンベヤ7に振動を加える機能を持たせた場合には、炭化物が搬送中に撹拌され、更に低温酸化等の発熱反応の促進に効果がある。また、滞留装置6内部で搬送する途中に、炭化物を一時的に滞留させておくスペース(図示せず)を設け、このスペースで炭化物の低温酸化等の発熱反応を促進させることとしてもよい。
【0028】
滞留装置6内で炭化物が低温酸化等の発熱反応をすることにより、滞留装置6内の酸素が消費され、炭化物の低温酸化等の発熱反応が阻害される。そこで、滞留装置6の内部に外部から新鮮な空気等の酸素供給源となり得る気体を供給して、炭化物の低温酸化反応等を促進させるための、ブロア・ファン等の気体供給装置8が設けられていることが好ましい。この気体供給装置8は例えば、図1において、滞留装置6の一部に設けられた吸気口9から滞留装置6内に空気等の酸素供給源となり得る気体を供給するものであり、滞留装置6内に供給された空気等の酸素供給源となり得る気体は、滞留装置6内を流通し、滞留装置6の一部に設けられた排気口10から排気される。排気された空気等に同伴された炭化物はバグフィルタ等の集じん機(図示せず)で回収され滞留装置6へ戻る。なお、滞留装置6の通気性が良い場合は、滞留装置6内に新鮮な空気等の酸素供給源となり得る気体が供給されるので、気体供給装置8はなくても差し支えない。
【0029】
乾燥機4から排出される炭化物の温度は30〜100℃であり、また乾燥機用サイクロン5から排出される炭化物の温度は30〜100℃であるので、炭化物の低温酸化反応を効率よく促進させるには、温度が低すぎて処理時間がかかってしまう。また、滞留装置6の内部の温度が、例えば40℃以下に低下すると、炭化物の低温酸化等の発熱反応が促進されにくくなる。あるいは、炭化炉1や滞留装置6を起動させた初期の状態では、滞留装置6の内部の温度が低い場合もある。そこで、炭化物を加熱して、滞留装置6内の炭化物の低温酸化等の発熱反応を促進させるために、滞留装置6には加熱装置11が設けられていることが好ましい。この加熱装置11は例えば、滞留装置6に設けられた電熱線等により、熱を発生させて炭化物を加熱してもよいが、コンベヤ7自身に発熱する機能、例えばジャケット式コンベヤのジャケット部に加熱媒体を流通させる等の機能を持たせ、炭化物をコンベヤ5で搬送中に炭化物を加熱させてもよいし、気体供給装置8に加熱装置11を設けて、滞留装置6内に温風を供給して炭化物を加熱することとしてもよい。また、気体搬送方式で炭化物を搬送する場合には、この気体を温風として搬送中に炭化物の低温酸化反応を促進させることとしてもよい。
【0030】
一方で、炭化物はある一定以上の温度(例えば250℃)になると、熱暴走して、可燃分が燃焼して、炭化物の有姿発熱量が小さくなり、エネルギー価値が著しく低下しまう。そこで、炭化物がある一定以上の温度にならないように、滞留装置6内部の温度を調整するために、また炭化物が発火に至りそうな緊急時に炭化物を冷却するために、滞留装置6には、冷却装置12が設けられていることが好ましい。
【0031】
滞留装置6内の温度が、例えば200℃を超えた場合、冷却装置12を作動させて、炭化物を冷却し、炭化物の発火を防止する。この冷却装置12は、例えば図1に示すように、滞留装置6内に冷却管13を設け、この冷却管13内に冷却媒体を流通させるものである。この冷却管13の内部を流通する冷却媒体により、滞留装置6の内部を冷却して炭化物を冷却する。冷却管13の内部を流通する冷却媒体は、例えば水であり、エチレングリコールやプロピレングリコール等の液体でもよく、空気等の気体であっても差し支えない。また、冷却装置12は、コンベヤ7を冷却するものとし、コンベヤ7で搬送される炭化物をコンベヤ7上で冷却してもよいし、空気供給装置6から供給される空気を冷却して炭化物を冷却することとしてもよいし、滞留装置6内に、後述する水蒸気等供給装置14から水を噴霧することによって冷却してもよい。
【0032】
また、炭化物が燃焼した時の緊急時に、炭化物に水及び水蒸気の少なくとも一方を供給して、水の蒸発潜熱により炭化物の熱を奪って炭化物を冷却するための、又は不活性ガスである水蒸気を供給して滞留装置6内の酸素濃度を低下させるための、水蒸気等供給装置14が滞留装置6に設けられていることが好ましい。
【0033】
同様に、炭化物が発火した時の緊急時に、窒素等の不活性ガスを供給して、滞留装置6内の酸素濃度を低下させて、炭化物の燃焼を停止させる不活性ガス供給装置15が滞留装置6に設けられていることが好ましい。不活性ガスは必ずしも窒素に限定されず、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の不活性ガスであってもよい。
【0034】
滞留装置6内の炭化物を燃焼、発火させることなく、かつ効率よく低温酸化等の発熱反応をさせなければならない。そこで、滞留装置6内に滞留装置内温度センサー16を、乾燥機4の出口に乾燥機出口温度センサー17を、乾燥機用サイクロン5の出口に乾燥機用サイクロン出口温度センサー18を、滞留装置6の出口に滞留装置出口温度センサー19を、貯留槽30の内部に貯留槽内部温度センサー20を設け、また、滞留装置6内に酸素濃度センサー21を設けるとともに、これらの温度センサー16、17、18、19から測定される温度情報及び、酸素濃度センサー21から測定される酸素濃度情報のいずれか又は2以上の情報に基づいて、コンベヤ7の搬送速度、気体供給装置8の空気供給量、加熱装置11の熱発生量、冷却装置12の冷却量、水蒸気等発生装置14の水又は水蒸気供給量、不活性ガス供給装置15の不活性ガス供給量を制御する制御装置22が設けられていることが好ましい。なお、滞留装置内温度センサー16を滞留装置6内に複数設け、これら複数の滞留装置内温度センサー16により、滞留装置6内の温度情報を測定することとしてもよく、同様に、酸素濃度センサー21を滞留装置6内に複数設け、これら複数の酸素濃度センサー21により、滞留装置6内の酸素濃度を測定することとしてもよい。
【0035】
制御装置22は、炭化物を十分に低温酸化させてから、貯留槽30に投入するために、前述したように、コンベヤ7の搬送速度を制御して、炭化物の滞留装置6内の滞留時間を調整する。
【0036】
制御装置22により、加熱装置11と冷却装置12を制御して、滞留装置6内の温度を例えば70℃〜200℃に制御することが好ましい。また、制御装置22により、気体供給装置8を制御して、炭化物が効率良く低温酸化等の発熱反応をし、かつ燃焼、発火しないように、滞留装置6内の酸素濃度を制御することが好ましい。更に、吸気口9及び排出口8には滞留装置6内への空気を遮断する遮断弁23を設け、制御装置22がこの遮断弁23を制御して、滞留装置6内の酸素濃度を制御することが好ましい。
【0037】
いずれかの温度センサー16、17、18、19で測定された温度が、規定の閾値(例えば200℃)を超えた場合、制御装置22は、「炭化物が燃焼しそうな状態」と判断する。もしくは、温度センサー16、17、18、19で測定された温度情報の組み合わせから、制御装置22は、「炭化物が燃焼しそうな状態」と判断する。
【0038】
前記判断に基づき、制御装置22は気体供給装置8及び遮断弁23を制御して、滞留装置6内への空気等の酸素供給源となり得る気体の供給を遮断して、炭化物の低温酸化等の発熱反応を抑制し、燃焼を防止する。
【0039】
また、前記判断に基づき、制御装置22は加熱装置11を制御し、炭化物の加熱を停止させて、炭化物の低温酸化等の発熱反応が促進されることを防ぎ、燃焼を防止する。
【0040】
また、前記判断に基づき、制御装置22は冷却装置12、水蒸気当供給装置14や不活性ガス供給装置15を動作させて、炭化物を冷却し、もしくは炭化物と接触する気体の酸素濃度を低下させ炭化物の低温酸化等の発熱反応を抑制し、燃焼を防止する。
【0041】
別の実施例として、コンベヤ7の代わりにロータリーキルン(図示せず)を滞留装置6に設けるか、もしくはコンベヤ7とともにロータリーキルンを滞留装置6に設けて、炭化物の低温酸化等の発熱反応を促進させることとしてもよい。ここで、本発明に使用するロータリーキルンは、円筒(例えば直径が約1m)を、傾斜をもたせたロール上に置き、この円筒がロール上で回転する構造のものである。炭化物が円筒の内部に投入されると、円筒が回転することにより、炭化物は撹拌されながら、円筒内の傾斜面を連続的に移動するので、空気等の酸素供給源となり得る気体と効率よく接触して、炭化物の低温酸化等の発熱反応が促進される。
【0042】
以上に説明したように、本発明によれば大規模な装置を用いることなく、低温酸化反応等による発熱性を有する炭化物を燃料代替品としての価値を低下させることなく早期に安定化させ、確実に炭化物の熱暴走による発火・火災を起こさないような、安全性の高い炭化物を製造することができる。
【0043】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う炭化物製造方法及び炭化物製造装置もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 炭化炉
2 回収器
3 水洗槽
4 乾燥機
5 乾燥機用サイクロン
6 滞留装置
7 コンベヤ
8 気体供給装置
9 吸気口
10 排気口
11 加熱装置
12 冷却装置
13 冷却管
14 水蒸気等供給装置
15 不活性ガス供給装置
16 滞留装置内温度センサー
17 乾燥機出口温度センサー
18 乾燥機用サイクロン出口温度センサー
19 滞留装置出口温度センサー
20 貯留槽内部温度センサー
21 酸素濃度センサー
22 制御装置
23 遮断弁
30 貯留槽
31 フレキシブルコンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化炉で生成後に水洗処理された発熱性を有する炭化物を、水洗槽と貯留槽の間に設けられた滞留装置内へ導き、この滞留装置内において、炭化物の発熱反応を促進させることを特徴とする炭化物製造方法。
【請求項2】
滞留装置内に酸素供給源となり得る気体を供給するか、炭化物を加熱するかのいずれか又は両方により、炭化物の発熱反応を促進させることを特徴とする請求項1に記載の炭化物製造方法。
【請求項3】
滞留装置内への酸素供給源となり得る気体の供給を遮断するか、滞留装置内へ不活性ガスを供給するか、炭化物に水及び水蒸気の少なくとも一方を供給するか、炭化物を冷却するかのいずれか又は2以上により、炭化物の熱暴走を防止しつつ、発熱反応を促進させることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の炭化物製造方法。
【請求項4】
滞留装置内の温度情報、乾燥機の出口の温度情報、乾燥機用サイクロンの出口の温度情報、滞留装置出口の温度情報、貯留槽内部の温度情報、滞留装置内の酸素濃度情報のいずれか又は2以上に基づき、滞留装置内への酸素供給源となり得る気体の供給量、滞留装置内へ不活性ガス供給量、炭化物の加熱量、炭化物への水又は水蒸気供給量、炭化物の冷却量のいずれか又は2以上を制御して、炭化物の発熱反応を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炭化物製造方法。
【請求項5】
発熱反応は、低温酸化反応であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の炭化物製造方法。
【請求項6】
酸素供給源となり得る気体は、空気であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の炭化物製造方法。
【請求項7】
炭化物を生成する炭化炉と、得られた炭化物を水洗処理する水洗槽を備えた炭物製造装置において、前記水洗槽と炭化物の製造後に貯留する貯留槽の間に、発熱性を有する炭化物を、酸素供給源となり得る気体と接触させて発熱反応を促進させる滞留装置を設けたことを特徴とする炭化物製造装置。
【請求項8】
滞留装置は、水洗処理後の炭化物を乾燥処理する乾燥装置の後段に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の炭化物製造装置。
【請求項9】
滞留装置は、水洗処理後の炭化物を乾燥処理する乾燥装置及び、前記乾燥装置で発生する粉塵をガス分と固形分に分離する乾燥装置用サイクロンの後段に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の炭化物の製造装置。
【請求項10】
滞留装置には、滞留装置内に酸素供給源となり得る気体を供給する気体供給装置、滞留装置内への不活性ガス供給装置、炭化物を加熱する加熱装置、炭化物に水及び水蒸気の少なくとも一方を供給する水蒸気等供給装置、炭化物を冷却する冷却装置のいずれか又は2以上が設けられていることを特徴とする請求項7乃至請求項9のいずれかに記載の炭化物製造装置。
【請求項11】
酸素供給源となり得る気体は、空気であることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の炭化物製造装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−302834(P2007−302834A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134626(P2006−134626)
【出願日】平成18年5月15日(2006.5.15)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】