説明

炭化装置

【課題】小さいサイズや熱伝導性に劣る炭化用材料を、高い燃焼効率により短時間で炭化が完了し、炉内全体の均等な炭化進行でむら焼けのない高品質の炭化物を製出する構造的に簡素で高い熱効率が得られる炭化装置の提供。
【解決手段】底部側に着火口11及び給気量調整可能な空気導入口12を設けた炉本体1と、蓋板2と、炉本体1内に配設された炉内排気管路3とを有する炭化炉Fを備え、炉内排気管路3は、炉本体の中央部に立設された中央放熱筒31と、複数本の周辺放熱筒32と、中央放熱筒31の上端部から各周辺放熱筒32の上端部に連通接続する分岐管33とで構成され、炉本体1内に装填された炭化用材料Mを酸素不足状態で自発燃焼させて炭化する際、発生する燃焼ガスGが排気導入孔31aから中央放熱筒31内に流入し、燃焼ガスGが中央放熱筒31内を上昇して周辺放熱筒32内を下降する過程での放熱により、炉本体1内の炭化用材料Mを加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば木材や竹材の粉砕物、ペレット、チップ、削り屑等を始めとする種々の有機質原料を酸素不足状態で自発燃焼させて炭化するための炭化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木炭を始めとする炭は、その調湿作用、脱臭作用、マイナスイオン放出作用、有害物質吸着作用、防黴性、防ダニ性等の優れた性質が注目され、一般家庭では室内各所や床下に配置したり、炊飯器内に入れたり、飲料水や風呂水等に浸漬して用いている。また、細片化ないし粉末化したものを各種の建築資材や建具、畳等にサンドイッチ状態にしたものや、布団等の寝具類の内部に納めたものも商品化され、更に土壌改質に用いたり、樹脂やセラミック材料等に混入する等、様々な方面に用途が拡がりつつあり、その需要はますます増大する傾向にある。
【0003】
しかるに、古典的な炭焼き釜によって製造される炭は、備長炭に代表されるように緻密で固いため、例えば脱臭剤や吸着剤あるいは土壌改質剤等の用途には不向きであり、しかも製造に時間と手間がかかって量産性に乏しい上、原料的にも限定されて高コストに付き、また釜の設置場所にも大きく制約を受けるという難点があった。
【0004】
そこで、本発明者は先に、炭化装置として、上部側を開閉蓋付きの材料出入口とする炉本体の内部に、下部に熱気導入孔を備えた炭化用加熱筒が炉本体の中心部に立設されると共に、その上端側が横切り筒を介して外部の排気筒が接続配管され、炉本体の底部に空気取入れ口を有するものを提案している(特許文献1)。そして更に改良型の炭化装置として、前記の炭化用加熱筒に代えて、下部に炉内空間に連通する排気導入孔を備えて上部が閉塞した外筒と、この外筒内に同心状に配置して下端が炉外への排気路に繋がる内筒とからなる二重筒状の排気加熱筒を設けたものも提案している(特許文献2)。
【0005】
上記前者の炭化装置では、炉本体内に装填された炭化用材料に底部側から着火して酸素不足状態で自発燃焼させるが、その燃焼ガスの吸入によって炭化用加熱筒が赤熱状態になり、上位の炭化用材料は下方から上昇してくる熱気と赤熱した炭化用加熱筒から周囲への放熱とで加熱されて熱分解し、更に自燃温度に達して自発燃焼し、この自発燃焼・熱分解の領域の拡大に伴う燃焼ガスの増加が炭化用加熱筒を更に高温化して熱放射を増大させる相乗効果を生み、もって炭化用材料の炭化が著しく促進される。また、上記後者の改良型の炭化装置では、炭化用材料の自発燃焼にて発生する高温の燃焼排ガスが二重筒状の排気加熱筒内を上下往復して炉外へ出ることになり、燃焼排ガスから加熱排気筒への熱伝播量の増大によって高い熱効率が得られる上、加熱排気筒全体の蓄熱による赤熱化が急速に進行し、その熱放射によって炉内温度がより早く上昇し、もって炭化用材料の熱分解及び自発燃焼がより促進され、完全炭化に要する時間がより短縮される。
【0006】
しかして、これらの炭化装置は、脱臭性能や吸着性能に優れて粉砕容易な柔らかな消し炭状態の炭化物を短時間で量産でき、しかも構造的に簡単で設置場所に制約を受けないという多くの利点を有することから、既に実用に供されて好評を博している。
【特許文献1】特開2003−119468号公報
【特許文献2】特許第4017556号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記炭化装置に供される炭化用材料は、従来では木材や竹材のチップとして数cmから十数cm程度のサイズが主流であったが、最近では間伐材や伐採竹材を粉砕処理したものや、おが屑からのプレス処理でペレット化したもの等、概して10mm以下の細かいものが多くなっている。これは、炭化物を燃料化したり、他の材料に混合したり、土壌改質材として土に混ぜたりする上で、粒度が小さい方が使い易いことによる。
【0008】
しかしながら、炭化用材料のサイズが小さくなると、炭化炉に装填した際に材料密度が高くなることから、隙間に存在する空気量が減って燃焼しにくくなると共に、通気性の低下で燃焼に伴う熱気が浸透しにくい上、中央の排気加熱筒からの放熱も伝播しにくくなる。また、炭化用材料として処理形態や材質によって熱伝導性の低いものもあり、このような材料は当然に燃焼性が悪くなる。従って、前記従来の炭化装置では、炭化用材料としてサイズの小さいものや熱伝導性に劣るものを用いた場合、炭化に要する時間が長くなることに加え、炉内の中央側と周辺側とで炭化の進行度合の差が大きいため、むら焼けによる炭化物の品質低下を生じ易いという難点があった。
【0009】
本発明は、上述の情況に鑑み、炭化用材料としてサイズの小さいものや熱伝導性に劣るものを用いても、高い燃焼効率によって短時間で炭化が完了する上、炉内全体の均等な炭化進行によってむら焼けのない高品質の炭化物を製出でき、また構造的に簡素で高い熱効率が得られる炭化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る炭化装置は、図面の参照符号を付して示せば、底部側に着火口11及び給気量調整可能な空気導入口12を設けた炉本体1と、該炉本体1の上部側の材料出入口1aを開閉する蓋板2と、該炉本体1内に配設された炉内排気管路3とを有する炭化炉Fを備え、炉内排気管路3は、炉本体の中央部に立設された中央放熱筒31と、該中央放熱筒から離間して炉本体1内に立設された複数本の周辺放熱筒32と、中央放熱筒31の上端部から分岐して各周辺放熱筒32の上端部に連通接続する分岐管33とで構成され、中央放熱筒31の下部に炉内空間10に連通する複数の排気導入孔31aを備えると共に、周辺放熱筒32の下端側が炉外排気管路4に接続され、炉本体1内に装填された炭化用材料Mを着火口11からの着火によって酸素不足状態で自発燃焼させて炭化する際に、発生する燃焼ガスGが排気導入孔31aから中央放熱筒31内に流入し、この燃焼ガスが中央放熱筒31内を上昇して周辺放熱筒32内を下降する過程での放熱によって炉本体1内の炭化用材料Mを加熱するように構成されてなる。
【0011】
請求項2の発明は、上記請求項1の炭化装置において、空気導入口12が炉本体1の底部側の周辺部に沿う複数箇所に設けられてなる構成としている。
【0012】
請求項3の発明は、上記請求項1又は2の炭化装置において、周辺放熱筒32が炉本体1の周方向に幅広の中空帯板状をなす構成としている。
【0013】
請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかの炭化装置において、3本以上の周辺放熱筒32が炉本体1の中心から略1/2半径の周方向に沿って等配してなる構成としている。
【発明の効果】
【0014】
次に、本発明の効果について、図面を参照して具体的に説明する。まず、請求項1の炭化装置では、炉本体1内に装填された炭化用材料Mを着火口11からの着火によって酸素不足状態で自発燃焼させて炭化する際、この自発燃焼によって発生する燃焼ガスGが排気導入孔31aから炉内排気管路3の中央放熱筒31内に流入し、この燃焼ガスGが中央放熱筒31内を上昇して周辺放熱筒32内を下降して炉外排気管4より排気されるが、燃焼ガスGは高温であるため、その熱によって炉内排気管路3の管壁が加熱されて赤熱し、この赤熱した管壁から炉内空間10へ熱気が放射される。しかして、炉内排気管路3の中央放熱筒31は炉内空間10の中央に位置する一方、これから分岐した複数本の周辺放熱筒32が該中央放熱筒31から離間して配置しているから、排気上昇筒31からの放熱によって炉内の中央側にある炭化用材料Mが加熱されると共に、複数本の周辺放熱筒32からの放熱によって炉内の周辺側にある炭化用材料Mが加熱され、もって炉内排気管路3からの熱放射が炉本体1内に装填された炭化用材料Mの全体に行き渡ることになる。
【0015】
従って、この炭化装置によれば、炭化用材料Mとしてサイズの小さいものや熱伝導性に劣るものを用いても、炉内排気管路3からの熱放射によって炉本体1内の全体が加熱されるため、装填時の空気量の少なさや熱気の浸透性の低さ、更には熱伝導性の悪さを補って高い燃焼効率が得られ、これによって短時間で炭化が完了して高い炭化処理能率を達成できる上、その炭化が炉内全体に均等に進行するから、むら焼けのない高品質の炭化物を製出できる。また、この炭化装置は、炉内排気管路3全体の放熱面積が広いため、該炉内排気管路3に流入した燃焼ガスGによって炉外へ持ち出される熱量が少なくなり、それだけ高い熱効率が得られることに加え、構造的に簡素であるために安価に製作できるという利点もある。
【0016】
請求項2の発明によれば、空気導入口12が炉本体1の底部側の周辺部に沿う複数箇所に設けられているから、炉内へ取り入れられる空気が炉本体1の周辺側から中央側へ向かう形になって全体に行き渡り、もって全体に均等な燃焼状態で炭化が進行するから、むら焼けが確実に防止され、より高品質な炭化物が得られる。
【0017】
請求項3の発明によれば、周辺放熱筒32が炉本体1の周方向に幅広の中空帯板状をなすため、該周辺放熱筒32の放熱面積が広くなり、それだけ炉本体1内の周辺側にあって量的に多い炭化用材料Mに対する放熱量が増大すると共に、該周辺側での加熱作用が均等化し、もって炉本体1内の炭化用材料Mの全体にわたって均等な熱放射で効率よく炭化が進行する結果、より短い炭化時間でより高品位の炭化物が得られる。
【0018】
請求項4の発明によれば、3本以上の周辺放熱筒32が炉本体1の中心から略1/2半径の周方向に沿って等配しているから、炉本体1内の周辺側にあって量的に多い炭化用材料Mが3本以上の周辺放熱筒32からの放熱によって効率よく且つ均等に加熱され、もって炉本体1内の炭化用材料Mの全体にわたる加熱作用も均等化して効率よく炭化が進行し、より短い炭化時間でより高品位の炭化物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明に係る炭化装置の一実施形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は炭化炉全体の縦断側面図、図2は蓋板を開放した状態での平面図を示す。
【0020】
図1及び図2に示すように、炭化炉Fは、有底縦円筒状に形成されて上端開口部を材料出入口1aとする金属製の炉本体1と、この炉本体1の材料出入口1aを開閉する金属製の蓋板2と、該炉本体1内に配設された炉内排気管路3と、炉本体1の下面側に設けた配管室5内に配置する炉外排気管路4とを有している。
【0021】
炉本体1は、内周面及び内底面にロックウールからなる断熱材13が金属製押さえネット14を介して張設されており、底部側の周辺部の一カ所に着火口11が設けられると共に、同じく底部側の周辺部における中心角120度の位相差の3カ所に、それぞれ炉外側に給気調整バルブ15を介在させた空気導入口12が設けられている。また、蓋板2は、その上面側に固着されて側方へ張出するくの字形の支持アーム21を介して、炉本体1の上部外周面に固設されたブラケット16に保持された水平枢軸17に、上下回動自在に枢着されている。
【0022】
炉内排気管路3は、全体が鉄鋼の如き金属製であり、炉本体1の中心に立設された円筒状の中央放熱筒31と、この中央放熱筒31を取り巻くように炉本体1の略1/2内半径の周方向に沿って等配して立設された3本の周辺放熱筒32と、中央放熱筒31の上端部から各周辺放熱筒32の上端部に連通接続する水平な3本の分岐管33とで構成されている。そして、中央放熱筒31及び周辺放熱筒32は上端が炉本体1の天井部近傍に達する高さに設定され、中央放熱筒31の下部周囲には筒内外に透通する多数の排気導入孔31aが穿設されている。また、各周辺放熱筒32は、炉本体1の略1/2内半径の周方向に沿って幅広で、且つ該周方向に沿って湾曲した中空帯板状をなし、その下端部が炉本体1の底部を貫通する接続管6を介して炉外排気管路6に連通接続している。
【0023】
なお、炉外排気管路4は、各周辺放熱筒32に繋がる円環状の合流管4aと、この合流管6aから配管室5外へ延出する排出管4bとで構成され、この排出管4bの外端を後処理工程の排気ファンが介在する外部配管(図示省略)に接続するようになっている。
【0024】
上記構成の炭化炉Fを備えた炭化装置によって炭化処理を行うには、所要の炭化用材料Mを炉本体1内に投入し、蓋板2で材料出入口1aを閉鎖した状態で、外部配管の排気ファン(図示省略)を駆動して炉外排気管路4及び炉内排気管路3を通して吸引排気することにより、炉本体1内を減圧状態に維持しつつ、3カ所の空気導入口12より外気を給気調整バルブ15による設定流量で流入させ、着火口11よりガスバーナー(図示省略)の火炎等の着火熱源を導入し、炎を吹き込んで着火させる。そして、炉本体1内の最下部の炭化用材料Mが自発燃焼し始めるのを確認した上で、着火口11を閉鎖する。
【0025】
上記自発燃焼の開始に伴い、発生する高温の燃焼ガスが炭化用材料M間の隙間を通って上昇して熱気を下から上へ伝播させると共に、該燃焼ガスGの一部は排気導入口31aより炉内排気管路3の中央放熱筒31内に吸い込まれる。そして、吸い込まれた燃焼ガスGは、該中央放熱筒31内を頂部まで上昇して3本の分岐管33に分流し、それぞれ周辺放熱筒32内に流入して下降し、接続管6を経て炉外排気管路4の合流管4aに入って合流し、排出管4bより外部配管へ排出される。このように高温の燃焼ガスGが継続して炉内排気管路3を通って排出されることにより、まず中央放熱筒31の下部が、内部を通過する燃焼ガスGの熱気と、周囲の炭化用材料Mの自発燃焼による熱気とで内外両側から熱せられて赤熱する。そして更に炉内空間10での自発燃焼が拡がるにしたがい、増加する燃焼ガスの熱気と蓄熱によって中央放熱筒31の赤熱部分が次第に上方へ拡大してゆくと共に、周辺放熱筒32も内外両側から熱せられて下部から赤熱し始め、遂には炉内排気管路3の全体が赤熱状態になる。
【0026】
これにより、炉内空間10に堆積している炭化用材料Mは、下方から上昇してくる熱気と、炉内排気管路3の赤熱した中央放熱筒31及び周辺放熱筒32から周囲へ放射される熱気とで加熱され、該炉内空間10の中央側から周辺側までの全体にわたって均等に、下部側から次第に上方へ移行する形で熱分解が進行し、更に自燃温度に達して自発燃焼する。そして、この自発燃焼・熱分解の領域が上方へ拡がるに伴い、炉内排気管路3は流入する燃焼ガスGの増加によって更に高温化して周囲への熱放射を増し、その相乗効果で炭化用材料Mの熱分解反応の進行と自発燃焼領域の拡大が速められ、やがて炉内空間10全体が均一な高温状態になり、装填した炭化用材料Mの全てが熱分解して炭化する。
【0027】
この炭化処理においては、炉内排気管路3からの燃焼ガスGの排出に伴い、底部周辺3カ所の空気導入口12より炉本体1内へ外気が吸入されるが、この空気吸入量は給気調整バルブ15によって炉内空間10が酸素不足状態を維持するように制限される。これにより、炭化用材料Mは、不完全燃焼によって炭素成分が殆ど燃焼しない状態で熱分解を継続し、もって最終的に内部まで完全に炭化することになる。
【0028】
また、炭化炉Fの炉内温度は、空気導入口12より供給される空気量の増減によって変化するため、給気調整バルブ15の開閉及び開度変更によって調整できる。しかして、この給気調整バルブ15の開閉及び開度調整は、予め得た試験データに基づいて使用する炭化用材料Mの種類と大きさ、含水率、装填量等に応じた処理温度条件を求めておき、炉外排気管路4を経て外部配管へ排出される排ガスの計測温度と炉内温度に関連付けた制御データとして制御装置(図示省略)に入力し、該制御装置からの指令信号によって自動的に行うように設定すればよい。なお、炉内温度は、通常350℃〜500℃程度で継続するように設定すればよいが、特に初期段階で自発燃焼を活発化させるために例えば処理開始から1時間内に一時的に1000℃近くに達するように条件設定してもよい。
【0029】
炭化用材料Mの熱分解が終息すれば、炉外へ排出されるガス温度が急速に低下するから、これを温度センサー等で検出することによって炭化の完了が判明する。この炭化完了後、生成した炭化物の温度がある程度低下するのを待って、炭化炉Fの全体を水平よりも若干下向きになるまで前方へ傾倒させ、生成した炭化物を流出させ、また要すれば適当な道具で掻き出せばよい。
【0030】
この炭化装置においては、炭化用材料Mの自発燃焼にて発生する高温の燃焼ガスGが炉内排気管路3を通って排出されることにより、その管壁が赤熱して周囲へ熱気を放射するが、その中央放熱筒31が炉内空間10の中央に位置し、これから分岐した3本の周辺放熱筒32が該中央放熱筒31を取り巻くように配置しているから、排気上昇筒31からの放熱によって炉内の中央側にある炭化用材料Mが加熱されると共に、複数本の周辺放熱筒32からの放熱によって炉内の周辺側にある炭化用材料Mが加熱され、もって炉内排気管路3からの熱放射が炉本体1内に装填された炭化用材料Mの全体に行き渡る。
【0031】
従って、炭化用材料Mとしてサイズの小さいものや熱伝導性に劣るものを用いても、炉内排気管路3からの熱放射によって炉本体1内の全体が偏りなく均等に加熱される結果、装填時の空気量の少なさや熱気の浸透性の低さ、更には熱伝導性の悪さを補って高い燃焼効率が得られ、短時間で炭化が完了して高い炭化処理能率を達成できる上、炭化が炉内全体に均等に進行するから、むら焼けが防止されて高品位で均質な炭化物を製出できる。また、この炭化装置では、炉内排気管路3全体の放熱面積が広いため、これを通過する燃焼ガスGによって炉外へ持ち出される熱量が少なくなり、それだけ高い熱効率が得られることになる。
【0032】
一方、この実施形態では、空気導入口12が炉本体1の底部側の周辺部に沿う複数箇所に設けられ、炉内へ取り入れられる空気が炉本体1の周辺側から中央側へ向かう形になって全体に行き渡るから、炉本体1の横断面で見た全体に均等な燃焼状態で炭化が進行し、製出する炭化物がより高品位で均質なものとなる。これに対し、炉本体1の底面部の全体から空気を取り入れる構成では、炉内に入った空気が中央に集まって周辺側には行き渡らず、中央側と周辺側との燃焼度合の差によってむら焼けを生じ易くなる。
【0033】
なお、炉内排気管路3の周辺放熱筒32は、本発明では複数本であればよいが、周辺側の炭化用材料Mへの放熱を均等にする上で、3本以上を周方向に等配して配置することが推奨される。また、各周辺放熱筒32の形状についても、中央側よりも量的に多くなる周辺側の炭化用材料Mに対して充分な放熱量を確保するために、単なる円筒状よりも、炉本体1の周方向に幅広の中空帯板状とすることが、大きな放熱面積で且つ均等な熱放射を行える点から好ましく、この中空帯板状においても実施形態のように周方向に沿って湾曲した形が最適である。また、これら複数本の周辺放熱筒32の配設位置は、熱効率より、炉本体1の中心から略1/2半径の周方向に沿う位置がよい。更に、上記の湾曲した中空帯板状をなす周辺放熱筒32の3本以上を周方向に等配する場合、その周方向に沿う総延長が周全長の半分以上、特に60〜75%を占めるように設定するのがよい。
【0034】
本発明の炭化装置は、炭化炉Fの炉内排気管路3として上述のような形態を採用するだけで、他に格別な機構や特殊な構造部分を必要とせず、全体的に構造が簡素であるために安価に製作できるという利点もある。ただし、炉内排気管路3を経て排出される燃焼ガスは、炭化用材料Mの熱分解による揮発成分を含む乾留ガスであるから、この炭化処理の後工程として再燃焼を行ったり、ガス中の有用成分を回収する設備を付設してもよい。例えば、古くには木材乾留として工業的に行われていたように、木材や竹材の加熱に伴って気化する揮発成分中には酢酸を主として種々の有用な有機成分が含まれており、その凝縮によって木材からは木酢液、竹材からは竹酢液が得られるから、炉外排気管路4に繋がる外部配管を抽出器内を経由させ、木酢液や竹酢液を抽出して回収することができる。なお、このように炭化炉Fから排出される燃焼ガスを再燃焼させたり、木・竹酢液を抽出して回収するための好適な設備構成については、本出願人による先願特許公報(前記特許文献2)に具体的に開示しているため、ここでは説明を省略する。
【0035】
なお、炭化炉Fの空気導入口12の給気量調整については、例示した給気調整バルブ15を用いた自動調整に限らず、手動バルブやダンパー等による手動調整を行うようにしてもよい。その他、本発明の炭化装置では、炭化炉Fの設置構造、炉外排出管路4の管路構成、蓋板2の取付構造等、細部構成や付属設備について種々設定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る炭化装置全体の縦断側面図である。
【図2】同炭化装置の蓋板を開放した状態での平面図である。
【符号の説明】
【0037】
F 炭化炉
M 炭化用材料
1 炉本体
1a 材料出入口
10 炉内空間
2 蓋板
3 炉内排気管路
31 中央放熱筒
31a 排気導入孔
32 周辺放熱筒
33 分岐管
4 炉外排気管路
11 着火口
12 空気導入口
15 給気調整バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部側に着火口及び給気量調整可能な空気導入口を有する炉本体と、該炉本体の上部側の材料出入口を開閉する蓋板と、該炉本体内に配設された炉内排気管路とからなる炭化炉を備え、
前記炉内排気管路は、炉本体の中央部に立設された中央放熱筒と、該中央放熱筒から離間して炉本体内に立設された複数本の周辺放熱筒と、中央放熱筒の上端部から分岐して各周辺放熱筒の上端部に連通接続する分岐管とで構成され、
前記中央放熱筒の下部に炉内空間に連通する複数の排気導入孔を備えると共に、前記周辺放熱筒の下端側が炉外排気管路に接続され、
前記炉本体内に装填された炭化用材料を前記着火口からの着火によって酸素不足状態で自発燃焼させて炭化する際に、発生する燃焼ガスが前記排気導入孔から前記中央放熱筒内に流入し、この燃焼ガスが中央放熱筒内を上昇して周辺放熱筒内を下降する過程での放熱によって炉本体内の炭化用材料を加熱するように構成されてなる炭化装置。
【請求項2】
前記空気導入口が炉本体の底部側の周辺部に沿う複数箇所に設けられてなる請求項1に記載の炭化装置。
【請求項3】
前記周辺放熱筒が炉本体の周方向に幅広の中空帯板状をなす請求項1又は2に記載の炭化装置。
【請求項4】
3本以上の前記周辺放熱筒が炉本体の略1/2内半径の周方向に沿って等配してなる請求項1〜3のいずれかに記載の炭化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−70661(P2010−70661A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240203(P2008−240203)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(501379188)株式会社ビルメン鹿児島 (1)
【出願人】(503152185)
【Fターム(参考)】