説明

炭水化物の熱分解方法

本発明は、炭水化物及び炭水化物混合物の、非晶質炭素の添加での工業的熱分解のための方法に、得られる熱分解生成物に、及び特に高温でシリカ及び炭素からのケイ素の製造における還元剤としてのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭水化物の、特に糖の熱分解のための工業方法に、得られる熱分解生成物に、及び有利には、高温でのシリカと炭素からのケイ素、より有利にはソーラーシリコンの製造におけるそれらの使用に関する。
【0002】
炭水化物、例えば単糖、オリゴ糖及び多糖を、ガスクロマトグラフで熱分解することができることは公知である。
【0003】
US 5,882,726は、炭素−炭素配合物を製造するための方法を開示しており、低融点の糖の熱分解を実施している。
【0004】
GB 733 376は、糖溶液を精製し、かつ300〜400℃で熱分解するための方法を開示している。
【0005】
糖を、電子伝導性物質を得るために高温で熱分解することができることが同様に公知である(WO 2005/051840)。
【0006】
炭水化物の工業規模の熱分解において、それらは、管理及びプロセスの操作を著しく中断しうるカラメル化及び泡形成の結果として問題があってよい。DE 10 2008 042 498は、熱分解前にシリカを炭水化物に添加することによってこの問題を解決することを提案しており、その際該シリカは、消泡剤として作用し、かつカラメル化を低減することを意図している。このプロセスの欠点は、シリカで汚れた熱分解生成物が得られ、かつ熱分解生成物の使用によって、再度精製される必要があることである。
【0007】
糖及び他の物質が、少ない割合の不純物を有する還元剤として(US 4,294,811、WO 2007/106860)、又はバインダーとして(US 4,247,528)、純ケイ素の製造において使用されうる。
【0008】
本発明の目的は、泡形成を減少し、又は理想的には避け、あったとしても低減された程度に対してのみ先行技術の方法の欠点を有する、炭水化物、特に糖の改良された熱分解方法を提供することであった。
【0009】
本発明の特定の目的は、ソーラーシリコンにおける純度及び安定性の要求を満たしているが、しかし木材チップ、すなわち変化の膠着を妨げることの機能をさらに満たす、ケイ素製品中で木材チップに対する当量を提供することである。
【0010】
明確に挙げられていないさらなる課題は、以下の発明の詳細な説明、実施例及び特許請求の範囲の全体の脈絡から明らかである。
【0011】
前記目的は、発明の詳細な説明、実施例及び特許請求の範囲による発明に従って達せられる。
【0012】
従って、驚くべきことに、熱分解されるべき非晶質の炭素の炭水化物への添加は、泡の形成効果を減少又は完全に抑制することができる。この方法において、殆ど完全に炭素からなり、従って非常に低い灰分を有する熱分解生成物が得られる。これは、消泡剤としてシリカで製造された熱分解物と比較して非常に有利である。本発明の熱分解物は、従って、高純度生成物を製造するために使用されうる。
【0013】
本発明による方法は、問題となる泡形成なしに、及び問題となる最終生成物におけるシリカ不純物なしに、単純で経済的な実施可能な方法で炭水化物の熱分解のための工業的方法を操作するために使用されうる。
【0014】
さらに、本発明による方法の性能において、カラメル化を低減又は抑制することができることが見出されている。
【0015】
冶金学上の方法でのその場での熱分解の特定の一実施態様において、本発明による方法は、さらに、形成したガスが、金属のバルキングを導く、すなわち、膠着を防ぐ利点を有する。
【0016】
本発明による方法は、非常に低い温度で熱分解を実施することができる。従って、特に省エネルギー(低温モード)のために、本発明による方法において上は1600℃〜1700℃から下は800℃未満までの熱分解温度を下げることが利点である。従って、本発明による方法は、第一の一実施態様において、有利には250〜800℃、より有利には300〜800℃、さらにより有利には350〜700℃及び特に有利には400〜600℃の温度で操作される。この方法は、極めてエネルギー効率がよく、かつさらに、カラメル化を低減し、そしてガス状反応生成物の取扱いが容易である利点を有する。
【0017】
しかしながら、原則として、第二の一実施態様において、800〜1700℃、より有利には900〜1600℃、さらにより有利には1000〜1500℃、及び特に1000〜1400℃で反応を実施することも可能である。一般に、これは、特定の適用のための有利な特性を有するグラファイト含有熱分解生成物を提供する。グラファイト含有熱分解生成物が好ましい場合に、1300〜1500℃の熱分解温度で遂行する。
【0018】
本発明による方法は、有利には、保護ガス下で及び/又は減圧(真空)下で実施される。従って、本発明による方法は、有利には、1mbar〜1bar(雰囲気圧)、特に1〜10mbarの圧力で実施される。適切には、使用される熱分解装置を、熱分解の開始前に乾燥し、そして実際には、不活性ガス、例えば窒素又はアルゴン又はヘリウムでのパージングによって酸素を有さないためにパージする。本発明による方法における熱分解時間は、該熱分解時間で、所望の熱分解時間に到達するまでの加熱時間が、さらに同様の大きさの程度の範囲内、特に15分〜8時間であってよい場合に、一般に1分〜48時間、有利には15分〜18時間、特に30分〜12時間である。本発明の方法は、一般的に、バッチ式で実施されるが、しかしながら、連続的にも実施することができる。
【0019】
炭水化物は一般的に非常に高い純度を有し、かつ非晶質の炭素でさえ高純度で使用可能であるために、本発明による方法で、木炭、特にグラファイト成分及び場合により他の炭素状の成分、例えばコークスを含有するCを基礎とする熱分解生成物を得ることが可能である。特に、不純物、例えばB、P、As及びAlの化合物が少ない生成物を得ることが可能である。本発明の熱分解生成物を、有利には、高温でシリカからのケイ素、特に冶金学的ケイ素、及びさらにソーラーシリコンの製造における還元剤として使用することができる。さらに特に、本発明のグラファイト含有熱分解生成物を、その伝導性の特性のために、光アーク反応器中で使用することができる。
【0020】
原則的に、熱分解生成物を、しかしながら、例えば、炭化金属製造(炭化ホウ素、炭化ケイ素等)又はグラファイト成形体、有利には電極、特に高純度電極、炭素ブラシ、発熱体、熱交換器の製造における純粋な炭素を要求する使用の全ての他の分野において、又は鋼鉄のためのもしくはダイアモンド製造における浸炭剤として、又は超硬合金製造(W、Mo、Cr、Ti、Ta、Co、V等)におけるもしくはジルコニウム製造における還元剤として、又は金属溶融物のためのブランケットとして、又は冶金学的方法における木片のための代替品として、使用することもできる。
【0021】
本発明は、従って、非晶質炭素の添加での、炭水化物又は炭水化物混合物の工業的熱分解のための方法を提供する。
【0022】
本発明による方法において使用される炭水化物又は炭水化物混合物の成分は、有利には、単糖、すなわちアルドース又はケトース、例えばトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、特にグルコース及びフルクトース、しかし前記モノマー、例えばいくつか挙げただけでもラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノース、又はそれらの誘導体を基礎とし、及びデンプンを含み、アミロース及びアミロペクチンを含み、いくつか多糖を挙げただけでもグリコーゲン、グリコサン及びフルクトサンを基礎とする相応するオリゴ糖及び多糖を含む。
【0023】
特定の純粋な熱分解生成物を要求する場合に、本発明による方法は、有利には、前記炭水化物を、さらにイオン交換体を使用する処理によって精製する効果に改良される。この場合炭水化物を、適した溶剤、有利には水、より有利には脱イオン水又は脱塩水中で溶解し、そしてイオン交換樹脂、有利にはアニオン又はカチオン樹脂で満たしたカラムを介して導入し、得られた溶液を、例えば加熱によって(特に減圧下で)溶剤成分を除去することによって濃縮し、そして精製した炭水化物を、例えば溶液を冷却して、そして結晶成分を濾過又は遠心処理を含む方法によって取り除くことによって、結晶型で得る。当業者は、異なるイオンを取り除くための種々のイオン交換体を承知している。原則的に、糖溶液の所望の純度に達するために連続してイオン交換工程の十分な数を結合することが可能である。イオン交換体による精製の代わりに、しかしながら、炭水化物反応物を精製するために当業者に公知の他の方法を取ることができる。ここでの例は、錯化剤の添加、電気化学的精製法、クロマトグラフ法を含む。
【0024】
本発明による方法において、少なくとも2つの前記炭水化物の混合物を、炭水化物又は炭水化物成分として使用することも可能である。本発明による方法において、経済的に実施可能な量で使用可能な結晶糖、それ自体公知の方法で、例えばサトウキビもしくはビーツからの溶液又はジュースの結晶化によって得られるような糖、すなわち市販の結晶糖、例えば精製糖、有利には物質の特定の融点/軟化点範囲及び1μm〜10cm、有利には10μm〜1cm、特に100μm〜0.5cmの平均粒子サイズを有する結晶糖を提供することが特に好ましい。粒子サイズを、例えば(しかし排他的にではなく)スクリーン解析、TEM、SEM又は光学顕微鏡によって測定することができる。しかしながら、溶解した形で、例えば(しかし排他的にではなく)水溶液で、炭水化物を使用することも可能であり、この場合、溶剤は、明白に、多かれ少なかれ急速に、実際の熱分解温度の達成前に蒸発する。
【0025】
使用される非晶質炭素は、活性炭素又はカーボンブラック又は熱分解炭水化物、特に熱分解糖、又はそれらの混合物である。
【0026】
特に、ファーネスブラック法、ガスブラック法、ランプブラック法、アセチレンブラック法又はサーマルブラック法によって製造されているカーボンブラックを使用することが好ましい。カーボンブラックを製造するためのこれらの方法は、当業者に十分によく知られている。カーボンブラックを製造するための公知の方法の1つの例は、ガスブラック法(German Reich Patent 29261, DE−C 2931907, DE−C 671739, Carbon Black, Prof. Donnet, 1993 by MARCEL DEKKER, INC, New York, page 57 ff.)であり、オイル蒸気で負荷した水素含有キャリヤーガスが、多数の出口穴で空気過剰量で燃焼される。その火炎は、燃焼反応を停止する水冷ローラーにあたる。火炎内部で形成したいくらかのカーボンブラックは、ローラー上で析出し、そしてそれらを削り落とす。オフガス流中に残っているカーボンブラックは、フィルター中で取り出される。チャネルブラック(Carbon Black, Prof. Donnet, 1993 by MARCEL DEKKER, INC, New York, page 57 ff.)も公知であり、天然ガスによって供給した多数の小さい火炎が水冷鉄チャネルに対して燃焼する。鉄チャネル上に堆積したカーボンブラックは、火炎中で削り落とされ、そして炉中で採取される。カーボンブラックの製造のための通常の反応器は、燃焼チャンバー中で1200℃〜2200℃より高い方法温度で操作される。本発明による方法は、一般的な方法で、全てのカーボンブラック製造方法、及びカーボンブラック製造に適した炉を含む。これらは、順に、異なるバーナー技術を備えている。それらの一例は、Huls光アーク炉(光アーク)である。バーナーの選択のための重大な要因は、火炎又はリッチな火炎中で高温が得られるべきかどうかである。反応器は、以下のバーナー装置:統合された燃焼送風機を有するガスバーナー、渦巻き状空気流のためのガスバーナー、周辺のプローブを介するガス注入を有するコンビネーションガスバーナー、高速度バーナー、Schoppeインパルスバーナー、平行拡散(parallel diffusion)バーナー、油−ガス混燃式バーナー、プッシャー炉バーナー、油蒸発バーナー、空気又は蒸気圧噴霧を有するバーナー、平炎バーナー、ガス燃料のジャケットジェットパイプ、並びにカーボンブラックの製造に又は炭水化物の熱分解に適している全てのバーナー及び反応器を含んでよい。
【0027】
本発明による方法において、ランプブラック又はガスブラック又はファーネスブラックを使用することが好ましい。非常に特に、ガスブラックを使用することが好ましい。同様に、非常に特に、特に低構造、すなわち75ml/(100g)以下のDBPでのファーネスブラック又は酸化ファーネスブラックが好ましい。
【0028】
本発明による方法において使用される非晶質炭素は、有利には、1〜1000m2/g、より有利には5〜800m2/g、殊に10〜700m2/gの内部表面積を有する。内部又は比表面積は、BET法(ASTM D 6556)によって測定される。
【0029】
また有利には、本発明による方法において使用される非晶質炭素は、1〜600m2/g、より有利には5〜500m2/g、特に10〜450m2/gのSTSA表面積を有する。STSA表面積は、ASTM D 6556で測定される。
【0030】
同様に、有利には、本発明による方法において使用される非晶質炭素は、10〜300ml/(100g)、より有利には20〜250ml/(100g)、特に30〜200ml/(100g)のDBP吸収を有する。DBP吸収は、ASTM D 2414で測定される。特に、ファーネスブラック又は酸化ファーネスブラックの場合において、それらが、比較的低い構造、すなわち75ml/(100g)未満、有利には10〜75ml/(100g)、より有利には20〜60ml/(100g)のDBP吸収を有する場合に、特に有利であることが見出されている。
【0031】
さらに、ASTM D 1512で測定される本発明に従って使用される非晶質炭素成分のpHが、有利には11以下、より有利には10以下であるべきであることが見出されている。
【0032】
特定の一実施態様において、本発明に従って使用される非晶質炭素成分は、前記物理化学的特性の組合せを有する。
【0033】
本発明による方法における最終生成物の純度が特に重要である場合に、反応物は、より有利には以下に定義した純度の特性を有する。本発明による方法において、炭素の質量部として算出される、炭水化物と消泡剤、すなわち非晶質炭素の混合比は、有利には1000:0.1〜0.1:1000の範囲内である。より特に、炭水化物成分と非晶質炭素成分との質量比は、しかしながら、800:0.1〜1:1、より有利には500:1〜20:1、さらにより有利には250:1〜10:1及び特に有利には200:1〜5:1に調整されうる。
【0034】
炭水化物成分と非晶質炭素からなる成分とを、有利には粉末状で混合することができ、そして混合物を熱分解することができる。しかしながら、混合物は熱分解前に成形加工を受けることも可能である。この目的のために、当業者に公知の全ての成形方法が使用される。適した方法、例えばブリケッティング、押出、プレス成形、タブレット化、ペレット化、顆粒化、及びそれ自体公知の他の方法は、当業者に十分によく知られている。安定な成形体を得るために、例えば炭水化物溶液又は糖蜜又はリグノスルホネート又は"ペンタラウゲ(pentalauge)"(ペンタエリトリトール生成物からの廃液)又はポリマー分散液、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、スチレン−ブタジエン、スチレン−アクリレート、天然ラテックス、又はそれらの混合物をバインダーとして添加することができる。
【0035】
本発明による方法の実施のために使用される装置は、例えば、誘導化熱真空反応器であってよく、この場合反応器は、ステンレス鋼から製造されてよい。特に純粋な熱分解生成物が要求される場合に、反応器は、有利には反応に関して不活性である適した物質で被覆されるか又は内張りされる。例えば、高純度SiC、Si33、高純度石英ガラス又はシリカガラス、高純度炭素又はグラファイト、セラミックを使用することができる。しかしながら、他の適した反応容器、例えば適した反応るつぼ又は反応バットの収容のための真空チャンバーを備えた導入オーブンを使用することもできる。
【0036】
本発明の方法を、有利には以下のように実施する。
【0037】
反応器内部及び反応容器を、適切に乾燥し、そして例えば室温〜300℃の温度まで加熱してよい不活性ガスでパージする。続いて、熱分解されるべき混合物又は炭水化物又は炭水化物混合物から製造された成形体、及び消泡剤成分として非晶質炭素を、熱分解装置の反応チャンバー又は反応容器中に装填する。混合物の場合において、供給材料を、有利には、密接に事前に混合し、減圧下で脱ガスし、そして保護ガス下で製造した反応物中に移す。この場合において、反応器を、既にわずかに予熱してよい。続いて、温度を、連続して又は段階的に所望の熱分解温度に調整してよく、そして圧力を、できるだけ急速に反応混合物から逃げるガス状の分解生成物を除去することを可能にするために下げてよい。特に、非晶質炭素の添加の結果として、非常に実質的に反応混合物の泡形成を妨げることが利点である。熱分解反応が終了した後、熱分解生成物を、有利には1000〜1500℃の範囲の温度で、しばらくの間熱的に後処理してよい。
【0038】
一般に、これは、実際にもっぱら炭素を含有する熱分解生成物又は組成物を提供する。好ましい一実施態様において、この熱分解生成物は、0.5質量%未満、より有利には0.0000001〜0.1質量%、さらにより有利には0.000001〜0.01質量%及び特に有利には0.000001〜0.001質量%の非常に低い灰分に注目する。前記灰分は、ASTM D−1506−92で測定される。よりいっそう詳述すれば、本発明による熱分解方法の直接の方法生成物は、高純度反応物が使用される場合に、その高純度、及び多結晶ケイ素の、特に光起電性のシステムのための、しかし医療適用のためでもあるソーラーシリコンの製造のための有用性に注目する。高純度反応物及び熱分解生成物によって理解されるべきものを以下で説明する。
【0039】
述べられているとおり、本発明の組成物(短く熱分解物又は熱分解生成物ともいう)を、特に有利には、高温で特に光アーク炉中でのSiO2の製造によるソーラーシリコンの製造における供給材料として使用してよい。例えば、本発明の直接方法生成物を、単純に、及び経済的に実施可能な方法で、C含有還元剤として、例えばUS 4,247,528、US 4,460,556、US 4,294,811及びWO 2007/106860において開示されたような方法において使用することができる。
【0040】
特定の一実施態様において、本発明による方法は、しかしながら、未だ熱分解していない炭水化物又は炭水化物混合物と非晶質炭素成分とから形成される本発明の成形体を、特に有利には前記の質量比で還元炉中に直接導入する方法で、その場で炭水化物の熱分解がシリカの炭素での還元のために要求される炭素成分を生じるようにシリカの炭素還元と合されてもよい。
【0041】
言い換えれば、本発明の熱分解生成物は、ケイ素の製造のために使用されるべきである場合に、最初に本発明の熱分解を実施し、そして炭素での還元に最終の熱分解生成物を供給すること、又は前記のように、熱分解していない炭水化物又は炭水化物混合物と非晶質炭素とから形成される成形体を、要求される炭素還元剤がその場で本発明の熱分解反応によって形成される方法で還元反応器中に導入することが可能である。従って、本発明は、特に有利には前記の質量比で、高温で特に光アーク炉中でのSiO2の還元によるケイ素、有利には冶金学的ケイ素又はソーラーシリコンの製造における供給材料としての、本発明の熱分解生成物の使用、及び熱分解していない炭水化物又は炭水化物混合物と非晶質炭素とから形成される成形体使用を提供する。
【0042】
本発明の熱分解生成物を、高温でSiO2の還元によるケイ素、有利には冶金学的ケイ素又はソーラーシリコンの製造における供給材料として使用する場合に、最初に、例えば、少し例示しただけでも顆粒化、ペレット化、タブレット化、押出によって、他の成分、例えば純粋な又は高純度のSiO2、活性剤例えばSiC、バインダー例えばオルガノシラン、オルガノシロキサン、炭水化物、シリカゲル、天然又は合成樹脂、及び高純度加工助剤、例えば加圧助剤、タブレット助剤又は押出助剤、例えばグラファイトの任意の添加で、定義された形を有する成形体を製造することが好ましい。
【0043】
純粋な炭水化物又は純粋な非晶質炭素又は純粋なシリカ又は純粋な熱分解生成物は、以下の含有率を特徴とする:
a. 5ppm以下、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm〜0.0001ppt、有利には0.8ppm〜0.0001ppt、より有利には0.6ppm〜0.0001ppt、さらにより良好には0.1ppm〜0.0001ppt、さらにより有利には0.01ppm〜0.0001ppt、さらにより好ましくは1ppb〜0.0001pptのアルミニウム、
b. 10ppm未満〜0.0001ppt、特に5ppm〜0.0001pptの範囲、有利には3ppm〜0.0001pptの範囲又はより有利には10ppb〜0.0001pptの範囲、さらにより有利には1ppb〜0.0001pptの範囲のホウ素、
c. 2ppm以下、有利には2ppm〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001ppt、有利には0.01ppm〜0.0001ppt、より有利には1ppb〜0.0001pptのカルシウム、
d. 20ppm以下、有利には10ppm〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001ppt、有利には0.05ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt、及び最も有利には1ppb〜0.0001pptの鉄、
e. 10ppm以下、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に0.5ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのニッケル、
f. 10ppm未満〜0.0001ppt、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm未満〜0.0001ppt、有利には10ppb〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのリン、
g. 2ppm以下、有利には1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのチタン、
h. 3ppm以下、有利には1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptの亜鉛。
【0044】
高純度炭水化物又は非晶質炭素又はシリカ又は熱分解生成物は、前記不純物の合計が、10ppm未満、有利には5ppm未満、より有利には4ppm未満、さらにより有利には3ppm未満、特に有利には0.5〜3ppm及び非常に特に有利には1ppm〜3ppmであることに注意する。それぞれの元素に関して、その意図は、検出限界の範囲における純度であってよい。
【0045】
冶金学的ケイ素及びソーラーシリコンの定義は、一般に公知である。例えば、ソーラーシリコンは、99.999質量%以上のケイ素含有率を有する。
【0046】
不純物の検出は、ICP−MS/OES(誘導結合分光分析−質量分析/光学電子分光分析)及びAAS(原子吸光分光分析法)によって実施する。
【0047】
本発明を、以下の実施例及び比較例によって詳細に例示及び説明するが、本発明の目的を制限するものではない。
【0048】
実施例:
比較例1:
市販の精製糖5gを、長さ18cm及び直径18mmを有する試験管中で溶融し、そして約400℃に加熱した。その反応混合物は、熱せられてかなり実際に泡立つ。糖はカラメル化及び炭化する。形成した熱分解精製物は、反応容器の壁に付着する。試験管中の泡の高さは10cmである。
【0049】
実施例2〜10:
市販の精製糖を、種々の質量比でカーボンブラックと共に混合し、溶融し、そして約400℃まで加熱した。泡の形成は著しく減少し、又は存在しなかった。使用したカーボンブラックは、表面積、構造及び表面化学の点で異なる。
【0050】
結果を以下の表1において要約する。
【0051】
特に一般に非常に低いpHを有するガスブラック(FW1を参照)、及び低い構造、すなわち低いDBP数を有するファーネスブラック(Printex 30及びPrintex 3と比較したPrintex 35を参照)が、特定の良好な消泡特性を有することを表1から見出すことができる。しかしながら、使用した量に従って、良好な消泡作用を、他のカーボンブラックで達成することもできる。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭水化物又は炭水化物混合物の工業的熱分解のための方法において、該方法を、非晶質炭素を添加して実施することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記非晶質炭素が、活性炭素又はカーボンブラック又は熱分解炭水化物、特に熱分解糖、又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非晶質炭素が、有利にはBET表面積1〜1000m2/g及び/又はSTSA表面積1〜600m2/g及び/又はDBP10〜300ml/100g及び/又はpH11以下を有するカーボンブラック、有利にはガスブラック又はファーネスブラック又はランプブラック又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
使用する炭水化物成分が、少なくとも1つの結晶糖であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭水化物及び非晶質炭素を、1000:0.1〜0.1:1000、有利には800:0.1〜1:1、より有利には500:1〜20:1、さらにより有利には250:1〜10:1及び特に有利には200:1〜5:1の質量比で使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
炭水化物と非晶質炭素との混合物が、熱分解前に、成形加工、有利にはブリケッティング、押出、プレス加工、タブレット化、ペレット化、顆粒化を受け、そして得られた成形体を熱分解することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記熱分解を、800℃未満の温度で、有利には300〜800℃で、さらにより有利には350〜700℃で及び特に有利には400〜600℃で、又は800〜1700℃、より有利には900〜1600℃、さらにより有利には1000〜1500℃及び特に1000〜1400℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱分解を、1mbar〜1barの圧力で、及び/又は不活性ガス雰囲気で実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記炭水化物成分及び/又は非晶質炭素成分を、純粋な又は高純度の形で、有利には以下:
a. 5ppm以下、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm〜0.0001ppt、有利には0.8ppm〜0.0001ppt、より有利には0.6ppm〜0.0001ppt、さらに良好には0.1ppm〜0.0001ppt、さらにより有利には0.01ppm〜0.0001ppt、さらにより好ましくは1ppb〜0.0001pptのアルミニウム、
b. 10ppm未満〜0.0001ppt、特に5ppm〜0.0001pptの範囲、有利には3ppm〜0.0001pptの範囲又はより有利には10ppb〜0.0001pptの範囲、さらにより有利には1ppb〜0.0001pptの範囲のホウ素、
c. 2ppm以下、有利には2ppm〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001ppt、有利には0.01ppm〜0.0001ppt、より有利には1ppb〜0.0001pptのカルシウム、
d. 20ppm以下、有利には10ppm〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001ppt、有利には0.05ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt、及び最も有利には1ppb〜0.0001pptの鉄、
e. 10ppm以下、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に0.5ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのニッケル、
f. 10ppm未満〜0.0001ppt、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm未満〜0.0001ppt、有利には10ppb〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのリン、
g. 2ppm以下、有利には1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのチタン、
h. 3ppm以下、有利には1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptの亜鉛
の含有率で使用し、
かつ、より有利には、10ppm未満、有利には5ppm未満、より有利には4ppm未満、さらにより有利には3ppm未満、特に有利には0.5〜3ppm及び非常に特に有利には1ppm〜3ppmの前記不純物の合計で使用することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載に従って得られる組成物(熱分解生成物)。
【請求項11】
少なくとも1つの炭水化物から形成される熱分解生成物であって、該熱分解生成物が、0.5質量%未満、より有利には0.0000001〜0.1質量%、さらにより有利には0.000001〜0.01質量%及び特に有利には0.000001〜0.001質量%の非常に低い灰分、又は以下:
a. 5ppm以下、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm〜0.0001ppt、有利には0.8ppm〜0.0001ppt、より有利には0.6ppm〜0.0001ppt、さらに良好には0.1ppm〜0.0001ppt、さらにより有利には0.01ppm〜0.0001ppt、さらにより好ましくは1ppb〜0.0001pptのアルミニウム、
b. 10ppm未満〜0.0001ppt、特に5ppm〜0.0001pptの範囲、有利には3ppm〜0.0001pptの範囲又はより有利には10ppb〜0.0001pptの範囲、さらにより有利には1ppb〜0.0001pptの範囲のホウ素、
c. 2ppm以下、有利には2ppm〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001ppt、有利には0.01ppm〜0.0001ppt、より有利には1ppb〜0.0001pptのカルシウム、
d. 20ppm以下、有利には10ppm〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001ppt、有利には0.05ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt、及び最も有利には1ppb〜0.0001pptの鉄、
e. 10ppm以下、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に0.5ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのニッケル、
f. 10ppm未満〜0.0001ppt、有利には5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm未満〜0.0001ppt、有利には10ppb〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのリン、
g. 2ppm以下、有利には1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptのチタン、
h. 3ppm以下、有利には1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001ppt、有利には0.1ppm〜0.0001ppt、より有利には0.01ppm〜0.0001ppt及び最も有利には1ppb〜0.0001pptの亜鉛
の含有率を有することを特徴とする、熱分解生成物。
【請求項12】
高温で、特に光アーク炉中でのSiO2の還元による、ケイ素、有利には冶金学的ケイ素又はソーラーシリコンの製造における供給材料としての、又はグラファイト成形体、有利には電極、特に高純度電極、炭素ブラシ、発熱体、熱交換器の製造のための、又は鋼鉄のためのもしくはダイアモンド製造における浸炭剤としての、又は超硬合金製造(W、Mo、Cr、Ti、Ta、Co、V等)におけるもしくはジルコニウム製造における還元剤としての、又は金属溶融物のためのブランケットとしての、又は冶金学的方法における木片のための代替品としての、請求項10又は11に記載の組成物(熱分解生成物)の使用。
【請求項13】
ケイ素、有利には冶金学的ケイ素又はソーラーシリコンの製造方法であって、炭水化物、有利にはイオン交換カラムによって精製した炭水化物と、非晶質炭素、有利には高純度非晶質炭素との混合物を、400〜700℃の温度で熱分解して、その熱分解生成物を、続いて、ケイ素、有利には高純度ケイ素、より有利にはソーラーシリコンを製造するために使用することを特徴とする、方法。
【請求項14】
ケイ素、有利には冶金学的ケイ素又はソーラーシリコンの製造方法であって、炭水化物、有利にはイオン交換カラムによって精製した炭水化物と、非晶質炭素、有利には高純度非晶質炭素との混合物を、熱分解していない形で還元反応器中に導入し、炭素還元剤をその場でその中で熱分解によって製造し、そして続いてシリカ又は炭化ケイ素と反応させて、ケイ素、有利には高純度ケイ素、より有利にはソーラーシリコンを得ることを特徴とする、方法。
【請求項15】
成形体を、最初に炭水化物と非晶質炭素との混合物から製造し、そして熱分解することを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
請求項12に記載のグラファイト電極又はグラファイト成形体を、装置の構成要素として使用することを特徴とする、ケイ素、有利にはソーラーシリコンの製造方法。

【公表番号】特表2013−510795(P2013−510795A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539259(P2012−539259)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066800
【国際公開番号】WO2011/057938
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】