説明

炭素繊維および活性炭素繊維の製造方法

【課題】高収率で炭素繊維や活性炭素繊維を製造でき、特に活性炭素繊維として、比表面積とメソ孔の総容積がともに大きなものを低コスト、高収率で製造する。
【解決手段】複合繊維を炭化して炭素繊維を製造したり、炭化、賦活して活性炭素繊維を製造したりする際に、複合繊維の紡糸原液として、溶媒により樹皮から抽出された樹皮抽出組成物や、樹皮抽出組成物に熱硬化性樹脂やアルデヒド類を反応させた反応生成物を、繊維形成性高分子化合物とともに含有する混合液を使用する。紡糸原液には、熱硬化性樹脂が含まれていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合繊維を製造し、その複合繊維から炭素繊維を製造する方法と活性炭素繊維を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維は、強度、耐磨耗性、弾性などの性質に優れることから、種々の分野で広く使用されている。このような炭素繊維は、通常、ピッチ系繊維、アクリル繊維、フェノール樹脂系繊維、レーヨン繊維などの繊維を原料とし、これを必要に応じて酸化性雰囲気下で加熱した後、不活性雰囲気下で高温処理し、炭化する方法で製造されている。
また、多数の細孔が形成された比表面積の大きな繊維として、活性炭素繊維がある。活性炭素繊維は、そのような特性を利用して、吸着材、電気二重層キャパシタ用電極などに好適に利用されている。このような活性炭素繊維は、炭素繊維の場合と同様に上述の各繊維を炭化した後、さらに賦活する方法により製造されている。賦活は、活性炭素繊維の細孔を形成するための処理であって、通常、高温条件下で特定のガスや薬品と反応させる方法で行われる。賦活は活性化と呼ばれることもある。
また、炭素繊維や活性炭素繊維の他の製造方法としては、ピラノース環系やリグニン系の高分子材料から製造された繊維を原料に使用する方法なども検討されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−38334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の炭素繊維の製造方法では、原料の繊維が高温での炭化工程において高い割合で焼失してしまい、十分な炭素繊維収率が得られないという問題があった。
また、活性炭素繊維を製造する際には、繊維を高温で炭化するだけでなく、さらに賦活する必要もあるため、高い活性炭素繊維収率を達成することはより困難であった。
さらに、活性炭素繊維を製造しようとして繊維を炭化、賦活した場合、繊維の種類によっては、炭化、賦活中に繊維形状を失ってしまう場合があった。また、良好な繊維形状の活性炭素繊維が得られたとしても、その比表面積が不十分である場合や、活性炭素繊維の性能に大きな影響を与えるメソ孔の総容積が小さい場合があり、活性炭素繊維としての特性が十分ではないことがあった。なお、本明細書においては、窒素吸着等温線よりBJH法などの解析法を用いて算出した細孔径が3〜30nmの細孔をメソ孔という。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、高収率で炭素繊維や活性炭素繊維を製造でき、特に活性炭素繊維として、比表面積とメソ孔の総容積がともに大きなものを低コストで製造できる方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、炭素繊維や活性炭素繊維を製造する際の原料に、溶媒により樹皮から抽出された樹皮抽出組成物や該組成物の反応生成物を含む紡糸原液が紡糸された複合繊維を使用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の炭素繊維の製造方法は、複合繊維を製造する工程と、製造された複合繊維を炭化する工程とを有する炭素繊維の製造方法において、前記複合繊維を製造する工程は、紡糸原液を細孔から吐出し固化させる紡糸工程を有し、前記紡糸原液として、溶媒により樹皮から抽出された樹皮抽出組成物と、少なくとも1種の繊維形成性高分子化合物とを含有する混合液を使用することを特徴とする。
前記混合液は、さらに熱硬化性樹脂を含有してもよい。
また、紡糸原液として、溶媒により樹皮から抽出された樹皮抽出組成物の反応生成物と、少なくとも1種の繊維形成性高分子化合物とを含有する混合液を使用することもできる。
前記反応生成物としては、前記樹皮抽出組成物に熱硬化性樹脂またはアルデヒド類を反応させた反応生成物が好ましい。
前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂およびこれらの共重合体からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記繊維形成性高分子化合物は、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステルおよびこれらの共重合体からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記樹皮は、アカシア、ケブラコ、ラジアータパインからなる群より選ばれる1種以上の樹皮であることが好ましい。
本発明の活性炭素繊維の製造方法は、複合繊維を製造する工程と、製造された複合繊維を炭化、賦活する工程とを有する活性炭素繊維の製造方法において、前記複合繊維を製造する工程は、紡糸原液を細孔から吐出し固化させる紡糸工程を有し、前記紡糸原液として、溶媒により樹皮から抽出された樹皮抽出組成物と、少なくとも1種の繊維形成性高分子化合物とを含有する混合液を使用することを特徴とする。
前記紡糸原液として、溶媒により樹皮から抽出された樹皮抽出組成物の反応生成物と、少なくとも1種の繊維形成性高分子化合物とを含有する混合液を使用することもできる。
前記反応生成物としては、前記樹皮抽出組成物に熱硬化性樹脂またはアルデヒド類を反応させた反応生成物が好ましい。
前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂およびこれらの共重合体からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記繊維形成性高分子化合物は、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステルおよびこれらの共重合体からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
前記樹皮は、アカシア、ケブラコ、ラジアータパインからなる群より選ばれる1種以上の樹皮であることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高収率で炭素繊維や活性炭素繊維を製造でき、特に活性炭素繊維として、比表面積とメソ孔の総容積がともに大きなものを低コストで製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<炭素繊維の製造方法>
本発明の炭素繊維の製造方法は、複合繊維を製造する工程と、製造された複合繊維を炭化する工程とを有する方法であって、複合繊維を製造する工程は、紡糸原液を細孔から吐出し固化させる紡糸工程を有するものである。そして、本発明では、この紡糸工程において、特定の紡糸原液を使用することを特徴としている。
以下、まず本発明の炭素繊維の製造方法について、実施形態例を挙げて詳細に説明する。
【0008】
[第1実施形態例]
(複合繊維を製造する工程)
本実施形態例の炭素繊維の製造方法では、複合繊維を製造する工程(以下、複合繊維製造工程という。)中の紡糸工程において、溶媒により樹皮から抽出された樹皮抽出組成物と、少なくとも1種の繊維形成性高分子化合物とを含有する混合液を紡糸原液として使用する。
【0009】
紡糸原液を調製する際に使用する樹皮としては、例えば、アカシア、ケブラコ、マングローブ、ユーカリ、ラジアータパイン、スギ、カラマツ、ヒノキ、ヒバ、カシなど種々の樹木の樹皮が使用できるが、より強度の強い複合繊維が得られ、また、炭素繊維とした際に繊維形状を保持しやすく、活性炭素繊維前駆体として好適なものが得られやすいことから、アカシア、ケブラコ、ラジアータパインからなる群より選ばれる1種以上の樹皮を使用することが好ましい。また、樹皮抽出組成物にはフラボノイド類などのポリフェノール類が含まれるが、ポリフェノール類の含有量が高く、また、成長が早く入手しやすい点、樹脂抽出組成物の抽出率が高い点、高い繊維強度が発現する点などからは、アカシアの樹皮を使用することが好ましい。アカシアには、具体的には、ミモザアカシア、モリシマアカシア、アカシアマンギューム、アカシアアウリカリフォルミス、これらの一代雑種であるアカシアハイブリッドなどがある。
【0010】
樹皮から樹皮抽出組成物を抽出する際には、樹皮の表面積を大きくして抽出効率を高めるために、樹皮をあらかじめハンマーミルなどで物理的に粉砕し、チップ状にしておくことが好ましい。ここでのチップの形状や大きさには特に制限はないが、5〜60メッシュの粒度としたものが好ましい。より好ましくは30〜60メッシュであり、さらに好ましくは50〜60メッシュである。
【0011】
樹皮と溶媒とを混合した混合物を加熱することにより、樹皮中の溶媒可溶成分が溶媒へ移行する。その後、混合物を固液分離し、得られた液体から溶媒を除去することにより、固体の樹皮抽出組成物を得ることができる。
こうして得られた樹皮抽出組成物には、フラボノイド類、タンニン類などのポリフェノール類が少なくとも含まれる他、抽出に使用する溶媒の種類にもよるが、樹皮に元々含まれるカリウム、ケイ素、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、リン、イオウ、ホウ素、マンガン、バリウム、アルミニウム、鉄、亜鉛など、灰分(無機成分)の一部も含まれる。さらに、樹皮抽出組成物には、通常、糖類やその誘導体、テルペノイド類なども含まれる。
【0012】
樹皮から樹皮抽出組成物を抽出する際に使用する溶媒としては、水の他、メタノール、エタノール、ヘキサノール、エーテル、アセトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、2−メチルピロリドン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの有機溶媒が挙げられ、これらのうち1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよいが、取扱性などの点から水やメタノール、アセトンを使用することが好ましい。さらに、メタノールやアセトンを使用すると、水を使用した場合よりも樹皮抽出組成物の抽出率が向上する点でも好ましい。また、活性炭素繊維前駆体としての炭素繊維を製造する場合であって、特にその活性炭素繊維の用途が例えば電気二重層キャパシタ用電極などのように、低い灰分量であることが要求されるものである場合にも、樹皮抽出組成物を樹皮から抽出する際の溶媒として、メタノールやアセトンを使用することが好ましい。これは、水とメタノールやアセトンとを比較すると、メタノールやアセトンを使用した方が得られる樹皮抽出組成物中における灰分量が低くなり、その結果、より少ない灰分量の活性炭素繊維が得られる傾向にあるためである。
【0013】
抽出の具体的な方法や使用する装置などには特に制限はないが、還流冷却器を具備した抽出装置を用いて、樹皮と溶媒との混合物を溶媒の沸点程度の温度で加熱し、溶媒を還流させながら抽出する方法が好ましい。抽出時間としては、0.5〜24時間が好ましく、より好ましくは0.5〜3時間である。また、ここで混合する樹皮と溶媒との質量比は、樹皮:溶媒=1:2〜10が好ましい。抽出時間や質量比がこのような範囲であると、効果的な抽出が行える。特に、工業的観点や経済面からは、1:2程度がより好ましい。
また、こうして加熱された後の混合物を固液分離する方法にも特に制限はなく、ろ過、遠心分離などで行えばよい。固液分離により得られた液体から溶媒を除去する方法にも特に制限はなく、蒸発乾固などの公知の方法を採用すればよい。
【0014】
こうして得られた樹皮抽出組成物を、少なくとも1種の繊維形成性高分子化合物とともに有機溶剤に加えて、これらを含有する紡糸原液を調製する。
そして、この紡糸原液を細孔から吐出し固化させ(紡糸工程)、その後、得られた紡糸原糸を延伸して繊維状物を得て(延伸工程)、ついで、この繊維状物を硬化する(硬化工程)ことにより、複合繊維を製造できる。
【0015】
繊維形成性高分子化合物は、繊維形成能を有する高分子化合物であって、これを樹皮抽出組成物とともに使用することにより、繊維形成が可能となる。このような繊維形成性高分子化合物としては、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステルおよびこれらの共重合体が挙げられ、これらのうち1種以上を選択して用いることが好ましいが、特に二酢酸セルロースを用いると、より強度の高い複合繊維が効率的に得られるため、炭素繊維を製造する際のハンドリング性や、さらにはこの炭素繊維を活性炭素繊維前駆体として活性炭素繊維を製造する際のハンドリング性が優れ、効率的である。
【0016】
このような繊維形成性高分子化合物と上述の樹皮抽出組成物とを有機溶媒に加えることにより、紡糸原液が調製できる。
例えば、繊維形成性高分子化合物として二酢酸セルロースおよび/または三酢酸セルロースを使用する場合、有機溶剤として2−メチルピロリドン(NMP)、ジオキソラン、塩化メチレン、テトラクロロメタンを使用すると、二酢酸セルロースと三酢酸セルロースとをともに溶解することができ好適である。二酢酸セルロースを単独で使用する場合には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、メチルグリコールアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロホルム、ジメチルスルホキシドも、二酢酸セルロースを溶解することができるために好ましい。これらのなかでは、NMPやアセトンを選択すると、取扱いが容易である点で好ましい。また、有機溶媒は1種単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0017】
紡糸原液における樹皮抽出組成物と繊維形成性高分子化合物との質量比は、樹皮抽出組成物:繊維形成性高分子化合物=1:99〜99:1であることが好ましい。この範囲であると繊維状に形成しやすく、紡糸工程、延伸工程、硬化工程を安定に行いやすいとともに、強度の良好な複合繊維が得られやすい。ただし、繊維形成性高分子化合物の比率が40質量%を超えると、炭化する工程において繊維形状を保てなくなる可能性があり、ハンドリング性が低下することから、その点も考慮すれば、より好ましくは樹皮抽出組成物:繊維形成性高分子化合物=70:30〜95:5である。
また、紡糸原液における有機溶剤の割合は、紡糸原液中、20〜50質量%であると、紡糸工程をより安定に行うことができる。これより少ない場合は、複合繊維中にボイドが形成されやすく、これより多い場合には、粘度が高くなりゲル化しやすくなるとともに、紡糸中に糸切れが発生し、紡糸工程の効率を低下させる傾向にある。
【0018】
繊維形成性高分子化合物と上述の樹皮抽出組成物とを有機溶媒に溶解させ、紡糸原液である混合液を得る方法には特に制限はなく、例えば、還流冷却器を具備した容器内に有機溶媒と繊維形成性高分子化合物とを投入し、これを有機溶媒の沸点程度の温度に加熱しつつ撹拌、混合して繊維形成性高分子化合物の溶液を調製し、ついで、これに樹皮抽出組成物を加え、ホモジナイザーなどで撹拌し、樹皮抽出組成物を溶解させる方法などが挙げられる。
なお、紡糸原液には、目的に応じて、分散剤、界面活性剤、顔料、染料、帯電防止剤等のその他の成分を添加してもよい。
【0019】
ついで、このような紡糸原液を例えば孔径0.08〜0.4mm程度の細孔から吐出し、脱溶媒により固化させることにより、紡糸原糸を製造する(紡糸工程)。なお、ここでの細孔の孔径は、目的とする繊度に応じて適宜設定できる。。
具体的な方法としては、紡糸原液を細孔から空気や不活性ガスなどのガス気相中に一旦吐出してから、凝固浴中に導入する乾湿式紡糸法、紡糸原液を細孔から凝固液中に直接吐出する湿式紡糸法、紡糸原液を気相中に吐出して固化させる乾式紡糸法などを採用できる。また、吐出には、ギアポンプなどの吐出量制御装置を備えた紡糸口金(紡糸ノズル)を使用すればよい。
【0020】
紡糸工程を乾湿式紡糸法や湿式紡糸法で行う場合、凝固浴には、紡糸原液中の繊維形成性高分子化合物に対して固化能を有する凝固液を使用する。凝固液の種類は、繊維形成性高分子化合物の種類に応じて選択する。
例えば、繊維形成性高分子化合物として二酢酸セルロースおよび/または三酢酸セルロースを用いる場合には、凝固液には水が好適に使用できる。また、凝固速度を適度に制御するために、紡糸原液に用いられる溶媒を添加することも可能である。さらには、塩析・脱水効果により凝固速度を調整するために、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの無機塩類を添加するなど、一般の湿式紡糸でとられる手法を採用できる。
紡糸原液の温度、凝固浴の温度、凝固浴への浸漬時間には特に制限はないものの、紡糸を定常的、安定的に行うためには、ある程度の管理を要する。例えば、紡糸原液の温度は0〜60℃の範囲内で、かつ、含有する溶媒の沸点未満が好ましく、凝固浴の温度は−15〜30℃が好ましい。ただし、紡糸原液、凝固浴の温度は凝固に及ぼす影響が大きいため、実験的に定めることが好ましい。また、凝固浴への浸漬時間は、吐出繊速度、吐出繊数、凝固浴のサイズなどの影響を受けるため、適宜実験的に定めればよい。
【0021】
また、凝固浴から紡糸原糸を巻き取る速度は、凝固浴への紡糸原液の吐出繊速度に応じて、凝固浴中での延伸倍率が好ましくは1〜5倍、より好ましくは1〜3倍となるように決定される。このような速度で巻き取ることにより安定に紡糸原糸を得ることができる。
【0022】
一方、紡糸原液を気相中に吐出して固化させる乾式紡糸法により紡糸工程を行う場合には、気相として、紡糸原液に含まれる有機溶媒の沸点以上に加熱された空気や不活性ガス雰囲気が通常採用される。
【0023】
このような紡糸工程後には、得られた紡糸原糸をより細繊化する目的で延伸し、繊維状物を得る延伸工程を行う。
延伸工程の具体的な方法としては、湿熱法や乾熱法がある。
湿熱法で延伸する場合は、例えば凝固浴や紡糸原液に用いたものと同じ溶媒を10〜80質量%含有する液(延伸浴)に、紡糸原糸を浸漬しながら、延伸浴の沸点未満の温度範囲において1〜5倍、好ましくは1〜3倍に延伸する。
乾熱法で延伸する場合には、紡糸原液に使用した繊維形成性高分子化合物のガラス転移温度(Tg)以上であって、かつ、紡糸原液中の他の成分(この例では、樹皮抽出組成物)が急速に自己重縮合する温度(およそ60〜80℃程度)未満の温度において、気相中、2〜8倍、好ましくは2〜4倍に延伸すればよい。ここでの温度を樹皮抽出組成物が急速に自己重縮合する温度以上とすると、延伸自体が困難となる。
このように延伸工程としては、湿式法を採用しても乾熱法を採用してもよいが、乾熱法では上述したような特定の温度範囲での延伸が必要であり、紡糸原液の組成によっては、このような温度範囲自体が存在しないケースも多い。このような観点からみれば、湿式法の採用が好ましい。湿式法では一般に、延伸倍率を大きくとることが困難であることから、1〜2倍の延伸を繰り返し行うことで、最終的な延伸倍率を上述の1〜5倍、好ましくは1〜3倍とする方法も有効である。また、湿式法を採用した場合には、得られた繊維状物中には多量の溶媒が残っているため、溶媒を乾燥する(脱溶媒)ことなくボビン巻きなどの操作を行うと、繊維状物の表面に溶媒が染み出し、その結果、繊維状物同士が膠着してしまうことがある。そこでこれを防止するために、得られた繊維状物を加熱して脱溶媒したり、飽和水蒸気処理により水洗するなどしてもよい。この場合、飽和水蒸気の好ましい温度範囲は90〜98℃である。
【0024】
このような延伸工程で得られた繊維状物は、繊維中の成分が未硬化の状態であるため、ついで硬化工程を行い、複合繊維とする。硬化工程により、繊維状物は強度の優れた複合繊維となり、炭素繊維や活性炭素繊維の原料として好適なものとなる。
硬化工程としては、繊維状物を例えば80℃以上の温度で加熱する方法が簡便であり好適であるが、場合によっては、酸−ホルマリン混合液などを使用した化学的処理による硬化を行ってもよい。
加熱により硬化工程を行う場合には、風乾または加熱により繊維状物を十分に乾燥させた後、80℃以上の温度で加熱して、硬化させる。このときの具体的な温度は、繊維形成性高分子化合物のTgを考慮して決定すればよい。硬化に要する時間は1〜24時間程度であるが、使用する加熱炉の性能、繊維状物の収束太さ、加熱炉中の繊維状物の供給量などに左右される。一般的には、加熱温度が高くなると、硬化に要する時間は短縮される傾向にある。このような硬化工程により、繊維状物の強度が非常に向上し、高強度の複合繊維が得られる。この際、硬化工程の温度、時間などの条件は、得られる複合繊維の強度と相関があることから、必要な強度に応じて、実験的に決定すればよい。また、加熱時の雰囲気は空気でよいが、必要があれば不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。
酸−ホルマリン液を使用して硬化を実施する場合には、塩酸、硫酸などの酸触媒を加えたホルマリン中に繊維状物を浸し、加熱すればよい。ただし、このような方法は、温度管理が難しいとともに、生産工程をバッチ式にする必要があり生産性が良好ではない。よって、硬化工程は上述したように加熱による方法で行うことが好ましい。
【0025】
(複合繊維を炭化する工程)
このようにして得られた複合繊維に対して、これを炭化する工程(以下、炭化工程という。)を実施することによって、炭素繊維が製造できる。
炭化工程は公知の方法で実施すればよく、例えば、複合繊維を不活性雰囲気下、400〜600℃で数時間程度加熱して炭化すればよい。炭化時間は、具体的には、炭素繊維収率などに応じて、実験的に決定すればよい。
なお、炭化工程の前に、複合繊維を酸化性雰囲気下で加熱する不溶不融化処理(例えば250〜300℃にて0.5〜8時間)を行ってもよい。このような前処理を行うと、繊維形成性高分子化合物として、加熱により溶融するものを採用した場合、その溶融を抑制でき、炭化工程における繊維形状の保持しやすさが向上する。また、このような前処理により複合繊維の架橋密度が向上するため、炭化工程後には、より高い収率で高強度の炭素繊維が得られる。
【0026】
このように、溶媒により樹皮から抽出された樹皮抽出組成物と、少なくとも1種の繊維形成性高分子化合物とを含有する混合液を紡糸原液として使用して複合繊維を製造し、得られた複合繊維を炭化することにより、炭化中に焼失する複合繊維の割合が低く、高い収率で炭素繊維が得られる。
また、このような方法は、従来は廃棄される場合が多かった樹皮を使用する方法であるため、廃棄物の有効利用という観点やコスト面からも好ましい。
【0027】
また、このような方法では、樹皮抽出組成物を紡糸原液に使用するにあたって、精製などの煩雑な処理をする必要がない点でも好ましい。ただし、樹皮抽出組成物を紡糸原液に使用する前に、必要に応じて塩酸、硫酸、リン酸、蟻酸、酢酸、シュウ酸、酪酸、乳酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ホウ酸や、塩化亜鉛や酢酸亜鉛のような金属塩のうちの1種以上を酸触媒として使用して、樹皮抽出組成物を常温〜120℃の温度下に保持して、樹皮抽出組成物に含まれるポリフェノール類の少なくとも一部を自己重縮合させる前処理を行ってもよい。このような前処理を行うと、紡糸原液中のモノマー成分が減少するために、紡糸工程での紡糸安定性が向上するばかりでなく、硬化工程に要する時間も短縮することができる。よって、必要に応じて、このような前処理を実施してもよい。
【0028】
[第2実施形態例]
本実施形態例では、複合繊維製造工程中の紡糸工程において、紡糸原液として使用する混合液が、樹皮抽出組成物および繊維形成性高分子化合物に加えて、熱硬化性樹脂を含有している点で、第1実施形態例と異なっている。紡糸原液を紡糸する紡糸工程や、その後の延伸工程、硬化工程の具体的方法、さらに炭化工程の具体的方法としては、第1実施形態例で説明した方法を同様に採用できる。
熱硬化性樹脂としては、レゾール型またはノボラック型のフェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂およびこれらの共重合体の1種以上が使用できるが、フェノール樹脂はポリフェノール類と類似の骨格を有し、樹皮抽出組成物と均一になりやすい傾向にあるため好ましい。
【0029】
このように、さらに熱硬化性樹脂を含有する混合液を紡糸原液として使用した場合には、熱硬化性樹脂を使用しているために、紡糸原液中において樹皮抽出組成物中の低分子量成分と熱硬化性樹脂とが一部反応し、より高分子量な成分を含む紡糸原液となる。その結果、紡糸工程での紡糸安定性が向上するとともに、硬化工程もより効率的に進行することとなる。また、熱硬化性樹脂を使用して得られた炭素繊維を活性炭素繊維前駆体とすると、第1実施形態例で得られた炭素繊維を活性炭素繊維前駆体とした場合に比べて、比表面積やメソ孔の総容積はやや低いものの、灰分量が低減された活性炭素繊維をより高収率で得ることができる傾向にある。
【0030】
使用する熱硬化性樹脂の量には特に制限はないが、樹皮抽出組成物と熱硬化性樹脂の合計量を100質量%とした場合、樹皮抽出組成物を10質量%以上とすることが好ましく、40質量%以上とすることがより好ましい。このような範囲であると、紡糸安定性が優れる。また、熱硬化性樹脂の量が増加すると、得られた炭素繊維を活性炭素繊維前駆体とした場合に、得られる活性炭素繊維の細孔径が小さくなる傾向があるとともに、上述したように、比表面積やメソ孔の総容積はやや低いものの、灰分量が低減された活性炭素繊維がより高収率で得られる傾向にある。よって、活性炭素繊維前駆体としての炭素繊維を製造する場合には、これらのバランスを考慮して、熱硬化性樹脂の量を決定することが好ましい。
また、紡糸原液における繊維形成性高分子化合物の使用量は、樹皮抽出組成物と熱硬化性樹脂の合計:繊維形成性高分子化合物=1:99〜99:1であることが好ましく、より好ましくは60:40〜95:5、さらに好ましくは80:20〜90:10である。この範囲であると繊維状に形成しやすく紡糸工程、延伸工程、硬化工程を安定に行いやすいとともに、強度の良好な複合繊維が得られやすい。
また、延伸工程には、第1実施形態例の場合と同様に、湿式法を採用しても乾熱法を採用してもよいが、本実施形態例の場合に乾熱法を採用しようとすると、その温度条件を決定するにあたって、紡糸原液中の熱硬化性樹脂が急速に硬化する温度(およそ60〜80℃程度)についても考慮する必要があるため、このような観点からみれば、湿式法の採用が好ましい。
【0031】
[第3実施形態例]
本実施形態例では、紡糸原液を調製する際に、繊維形成性高分子化合物とともに樹皮抽出組成物をそのまま使用するのではなく、樹皮抽出組成物に他の物質を反応させた反応生成物を使用する点で、第1実施形態例と異なっている。紡糸原液を紡糸する紡糸工程や、その後の延伸工程、硬化工程の具体的方法、さらに炭化工程の具体的方法としては、第1実施形態例で説明した方法を同様に採用できる。
他の物質としては、樹皮抽出組成物中のポリフェノール類と付加反応や縮合反応を起こし、このポリフェノール類よりも高分子量の反応生成物を生成するものであればよく、好適な例としては、アルデヒド類や熱硬化性樹脂が例示できる。また、反応は、無触媒で進行するものもあるが、触媒を使用することがより好ましい。
【0032】
樹皮抽出組成物にアルデヒド類を反応させる場合、アルデヒド類としてはホルムアルデヒド、トリオキサン、フルフラール、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、メチルヘミホルマール、エチルヘミホルマール、プロピルヘミホルマール、サリチルアルデヒド、ブチルヘミホルマール、フェニルヘミホルマール、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、α−フェニルプロピルアルデヒド、β−フェニルプロピルアルデヒド、クロトンアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、o−クロロベンズアルデヒド、o−ニトロベンズアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、o−メチルベンズアルデヒド、m−メチルベンズアルデヒド、p−メチルベンズアルデヒド、p−エチルベンズアルデヒド、p−n−ブチルベンズアルデヒドが挙げられ、これらを1種以上使用できる。これらのなかでは、工業的観点、反応性などの点から、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒドが好ましく、特にホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。
触媒としては、第1実施形態例で例示した酸触媒の他、塩基触媒が使用でき、塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化リチウムのようなアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物や水酸化アンモニウム、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミンなどのアミン類が挙げられ、これらを1種以上使用できる。
これら触媒の存在下で、樹皮抽出組成物とアルデヒド類とをメタノールなどの溶媒中、常温〜120℃の温度下に保持すると、樹皮抽出組成物中のポリフェノール類にアルデヒド類が付加し、さらに付加により生成した付加生成物とポリフェノール類とが縮合する。そして、このような付加と縮合とが繰り返されることにより、より高分子量の反応生成物が得られる。
【0033】
また、樹皮抽出組成物に熱硬化性樹脂を反応させる場合、熱硬化性樹脂としては、レゾール型またはノボラック型のフェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、ウレタン樹脂およびこれらの共重合体の1種以上が使用できるが、フェノール樹脂はポリフェノール類と類似の骨格を有し、樹皮抽出組成物と均一になりやすい傾向にあるため好ましい。
触媒としては、アルデヒド類を反応させる場合に例示した酸触媒やアルカリ触媒を同様に使用できる。
そして、これら触媒の存在下で、樹皮抽出組成物と熱硬化性樹脂とをメタノールなどの溶媒中、常温〜120℃の温度下に保持すると、樹皮抽出組成物中のポリフェノール類と熱硬化性樹脂とが反応し、より高分子量の反応生成物が得られる。
この際進行する反応は、熱硬化性樹脂としてフェノール樹脂を使用した場合には、樹皮抽出組成物中に含まれるポリフェノール類とフェノール樹脂との縮合反応である。
【0034】
この例の方法によれば、反応生成物を使用しているために、第1実施形態例にくらべて、より高分子量な成分を含む紡糸原液となる。その結果、紡糸工程での紡糸安定性が向上するとともに、硬化工程もより効率的に進行することとなる。また、このような反応生成物を使用して得られた炭素繊維を活性炭素繊維前駆体とすると、第1実施形態例で得られた炭素繊維を活性炭素繊維前駆体として使用した場合に比べて、比表面積やメソ孔の総容積はやや低いものの、活性炭素繊維をより高収率で得ることができる傾向にある。
【0035】
樹皮抽出組成物とこれに反応させるアルデヒド類との質量比には特に制限はないが、高分子化による紡糸安定性と、反応制御の観点からは、樹皮抽出組成物とアルデヒド類との合計量100質量%中、樹皮抽出組成物を50質量%以上とすることが好ましい。
また、樹皮抽出組成物とこれに反応させる熱硬化性樹脂との質量比には特に制限はないが、高分子化による紡糸安定性と、反応制御の観点からは、樹皮抽出組成物と熱硬化性樹脂との合計量を100質量%とした場合、樹皮抽出組成物を20質量%以上とすることが好ましく、40質量%以上とすることがより好ましい。
また、アルデヒド類や熱硬化性樹脂の量が増加すると、得られた炭素繊維を活性炭素繊維前駆体とした場合に、得られる活性炭素繊維の細孔径が小さくなる傾向にあるとともに、上述したように、比表面積やメソ孔の総容積はやや低いものの、活性炭素繊維がより高収率で得られる傾向にある。よって、活性炭素繊維前駆体としての炭素繊維を製造する場合には、これらのバランスを考慮して、アルデヒド類や熱硬化性樹脂の量を決定することが好ましい。
なお、紡糸原液における繊維形成性高分子化合物の使用量は、反応生成物:繊維形成性高分子化合物=1:99〜99:1であることが好ましく、より好ましくは60:40〜95:5、さらに好ましくは80:20〜90:10である。この範囲であると繊維状に形成しやすく紡糸工程、延伸工程、硬化工程を安定に行いやすいとともに、強度の良好な複合繊維が得られやすい。
また、延伸工程には、第1実施形態例の場合と同様に、湿式法を採用しても乾熱法を採用してもよいが、本実施形態例の場合に乾熱法を採用しようとすると、その温度条件を決定するにあたって、紡糸原液中の反応生成物が急速に硬化する温度(およそ60〜80℃程度)についても考慮する必要があるため、このような観点からみれば、湿式法の採用が好ましい。
【0036】
以上説明した炭素繊維の各製造方法によれば、高収率で炭素繊維を製造することができ、こうして得られた炭素繊維は、例えば、ブレーキ、クラッチなどの摩擦材、アブレーション材などに好適に使用できる。
また、目的によっては、繊維形成性高分子化合物とともに、樹皮抽出組成物と樹皮抽出組成物の反応生成物とを併用したり、樹皮抽出組成物の反応生成物と熱硬化性樹脂とを併用したりすることも可能である。
【0037】
次に、本発明の活性炭素繊維の製造方法について、詳細に説明する。
<活性炭素繊維の製造方法>
本発明の活性炭素繊維の製造方法は、上述した複合繊維製造工程で製造された複合繊維に対して、炭化、賦活する工程(以下、炭化・賦活工程という。)を実施することにより、活性炭素繊維を製造する方法である。
複合繊維製造工程としては、炭素繊維の製造方法において、第1〜第3実施形態例で例示した方法をいずれも好ましく採用でき、特に樹皮抽出組成物として、アカシア、ケブラコ、ラジアータパインの樹皮の抽出組成物を使用すると、良好な繊維形状を保持し、フェルト、クロスなどに加工しやすい活性炭素繊維が得られる。
ただし、活性炭素繊維として、例えば電気二重層キャパシタ用電極用途などのように、低い灰分量であることが要求されるものを製造する場合には、樹皮抽出組成物を樹皮から抽出する際の溶媒として、メタノールやアセトンを使用することが好ましい。これは、水とメタノールやアセトンとを比較すると、メタノールやアセトンを使用した方が得られる樹皮抽出組成物中における灰分量が低くなり、その結果、より少ない灰分量の活性炭素繊維が得られる傾向にあるためである。
また、繊維形成性高分子化合物として、特に二酢酸セルロースを用いると、より強度の高い複合繊維が効率的に得られるため、活性炭素繊維を製造する際のハンドリング性にも優れ、効率的である。
【0038】
炭化・賦活工程は、公知の方法で実施すればよく、炭化により一旦炭素繊維を製造した後、この炭素繊維を賦活する方法でもよいし、炭化と賦活とを1つの工程で行ってもよい。また、賦活には、薬品を使用した薬品賦活法やガスを使用したガス賦活法などがあるが、いかなる方法を採用してもよい。
例えば、賦活方法として薬品賦活法を採用する場合には、複合繊維に塩化亜鉛、リン酸などの薬品や、水酸化カリウムなどのアルカリを含浸させ、不活性雰囲気下、400〜1000℃で数時間程度加熱すればよい。具体的な加熱時間は、活性炭素繊維に求められる比表面積などに応じて、実験的に決定すればよい。このような方法によれば、賦活とともに炭化も進行するため、炭化と賦活とが一工程で行える。
また、賦活方法としてガス賦活法を採用する場合には、複合繊維を不活性雰囲気下、400〜600℃で数時間程度加熱して炭化し、得られた炭素繊維を水蒸気、二酸化炭素などの賦活ガスと750〜1100℃、数十分間〜数時間程度反応させて賦活(ガス賦活)すればよい。この際、炭化と賦活とを同一の装置内で連続的に実施してもよいし、それぞれ独立に実施してもよい。この際の炭化時間や賦活時間も、具体的には、活性炭素繊維収率や活性炭素繊維に求められる比表面積などに応じて、実験的に決定すればよい。
また、薬品賦活法とガス賦活法を比較すると、灰分量の少ない活性炭素繊維が得られる点からは、ガス賦活法を採用することが好ましい。
【0039】
このように樹皮抽出組成物を原料として使用した複合繊維を炭化、賦活することにより、良好な繊維形状を有するとともに、比表面積が1000m/g以上であるとともにメソ孔の総容積が0.1ml/g以上の高比表面積、かつ高メソ孔総容積の活性炭素繊維が得られる。
また、このような方法によれば、非常に短時間の処理で賦活が効果的に進行する傾向にあり、賦活に要する消費エネルギーを抑制でき、コスト面で好適である。また、このような方法によれば、賦活中の焼失も抑えられ、高い収率で活性炭素繊維が得られる。
このように樹皮抽出組成物を原料として使用した複合繊維を炭化、賦活することにより、比表面積とメソ孔の総容積がともに大きい活性炭素繊維を効率的に製造できる理由は明らかではないが、樹皮抽出組成物に含まれるポリフェノール類の骨格構造に起因するものと推察できる。
【0040】
また、このような方法では、複合繊維を製造するための紡糸原液の製造にあたって、樹皮をそのまま使用するのではなく、抽出操作により樹皮に元々含まれる灰分の一部が分離、除去された樹皮抽出組成物を使用するため、灰分量の少ない活性炭素繊維が得られる。従来は、得られた活性炭素繊維が灰分を多く含むものであると、これをそのままでは電気二重層キャパシタ用電極などには使用できないため、場合によっては、莫大な費用を投じて灰分を除去する必要があった。しかしながら、樹皮抽出組成物を原料として使用した複合繊維を炭化、賦活して製造された活性炭素繊維の場合には、このような除去処理も不要である。
【0041】
以上説明した活性炭素繊維の製造方法によれば、比表面積とメソ孔の総容積がともに大きく、繊維形状も良好な活性炭素繊維を低コスト、高収率で製造でき、こうして得られた活性炭素繊維は、吸着材、電気二重層キャパシタ用電極などをはじめとした種々の用途に好適に使用できる。さらに、紡糸原液の調製に際して、繊維形成性高分子化合物の他に樹皮抽出組成物を単独で使用する第1実施形態例の製造方法によれば、より高い比表面積とメソ孔の総容積とを備える活性炭素繊維を製造でき、一方、樹皮抽出組成物の混合物や反応生成物を使用した第2および3実施形態例の製造方法によれば、灰分が少ない活性炭素繊維をより高収率で製造できる傾向にある。よって、用途、要求されるグレードに応じた活性炭素繊維の設計、製造も適宜可能である。
また、目的によっては、繊維形成性高分子化合物とともに、樹皮抽出組成物と樹皮抽出組成物の反応生成物とを併用したり、樹皮抽出組成物の反応生成物と熱硬化性樹脂とを併用したりすることも可能である。
【実施例】
【0042】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1]
アカシア樹皮チップ:600gとメタノール:1800gとの混合物をフラスコに入れ、これをマントルヒーターで65℃に加熱し、メタノールの還流状態を保ったまま1時間攪拌してポリフェノール類を含有する樹皮抽出組成物を抽出するための操作を行った。
ついで、この混合物を常温に冷却後、固体(樹皮)と液体(抽出液)とにろ別し、得られた抽出液をロータリーエバポレータに投入した。なお、得られた液体は赤黒色であった。そして、60℃で減圧状態を保ちメタノールを蒸発させ(蒸発乾固)、固体の樹皮抽出組成物240gを得た。
一方、酢化度55%、重合度120の二酢酸セルロース100gを900gのアセトンに入れ、常温で約1時間攪拌した後、還流器付きフラスコで60℃に保ったまま30分間の攪拌混合を行い、完全に溶解させた。その後、この溶液を冷却して二酢酸セルロース溶液(固形分10質量%)を得た。
ついで、この二酢酸セルロース溶液の中に、上述の樹皮抽出組成物を固形分の質量比が樹皮抽出組成物:二酢酸セルロース=70:30になるように加え、小型ホモジナイザーで攪拌し、均一な赤褐色混合液である紡糸原液を調製した。
そして、この紡糸原液を孔径0.1mm、ホール数80の紡糸口金から一定の吐出量を保ちながら押出し、25℃のアセトン水溶液(アセトン濃度10質量%)からなる凝固浴中に吐出し、紡糸工程を行った。この際、凝固浴中で延伸倍率が2〜3倍になるよう、巻取りローラーの回転数を調整した。また、凝固浴への浸漬時間は約60秒であった。
ついで、巻き取った紡糸原糸を50℃のアセトン水溶液(アセトン濃度10質量%)中で延伸する延伸工程を行い、繊維状物とした。ここでの延伸倍率は2倍とした。
その後、延伸工程での緊張状態を保ったまま、繊維状物を室温で5分間風乾し、さらに130℃、30分間の乾熱処理を行う硬化工程を実施し、複合繊維を得た。
なお、紡糸工程〜延伸工程は連続式装置で行い、この連続式装置とは別の連続式装置を用いて風乾と硬化工程を実施した。
【0043】
ついで、このようにして得られた複合繊維を10g採取し、105℃で1時間再乾燥を行った後、これを炭化炉に入れ、窒素気流中、常温から900℃まで5℃/分の速度で昇温し、900℃で30分間保持した。その後、これを窒素気流中で100℃まで冷却して取り出し、炭素繊維を得た。
一方、複合繊維10gを別途採取し、105℃で1時間再乾燥を行った後、これを炭化炉に入れ、窒素気流中、常温から900℃まで5℃/分の速度で昇温し、900℃で30分間保持した。その後、窒素気流中に水蒸気を混合し(水蒸気濃度:33体積%)、50分間のガス賦活を行った。その後、水蒸気の混合を停止し、窒素気流中で100℃まで冷却して活性炭素繊維を得た。
【0044】
得られた活性炭素繊維について、窒素吸着等温線よりBJH法を用いて算出される比表面積測定と、BJH法を用いて算出される細孔分布解析を行った結果を表1に示す。なお、全細孔容積とは活性炭素繊維に形成された全ての細孔の総容積であり、メソ孔容積率とは全細孔容積に対するメソ孔(細孔径3〜30nmの細孔)の総容積の割合[%]である。
また、炭化に供した複合繊維の質量に対する得られた炭素繊維の質量、炭化、賦活に供した複合繊維の質量に対する得られた活性炭素繊維の質量を、それぞれ炭素繊維の収率、活性炭素繊維の収率として表1に[%]で示した。
さらに、活性炭素繊維1gをめのう乳鉢で細かく粉砕したものと1mol/l塩酸50gと混合し、マグネチックスターラーで常温下24時間攪拌した後、活性炭素繊維をろ別し、ろ液中の灰分(K、Si、Ca、Mg、Na、P、S、B、Mn、Ba、Al、Fe、Zn)含有量をICP分析法により定量し、灰分量(ろ液中の金属含有量ppm)として表1に示した。
【0045】
[実施例2]
樹皮抽出組成物の代わりに樹皮抽出組成物とホルムアルデヒドとの反応生成物を使用し、二酢酸セルロース溶液の中に、この反応生成物(固形分)の量が質量比で反応生成物:二酢酸セルロース=90:10になるように加えた以外は実施例1と同様にして紡糸原液を調製し、実施例1と同様に各工程を実施して、複合繊維を製造した。そして、得られた複合繊維から実施例1と同様にして、炭素繊維と活性炭素繊維を製造し、これらについて実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
なお、樹皮抽出組成物とホルムアルデヒドとの反応生成物は次のようにして調製した。
まず、実施例1と同様の方法で樹皮抽出組成物を得た。ついで、この樹皮抽出組成物100gをフラスコ中でメタノール100gに溶解した後、この中にホルマリン(ホルムアルデヒド37質量%水溶液)200gを入れ十分に混合し、さらに酸触媒として塩酸0.1gを加え、70℃で1時間還流反応させた。その後、80mmHgの減圧下にて、内容物の内温が80℃に上昇するまで濃縮反応を行い、さらにそのまま80℃、80mmHg下に保持し、樹皮抽出組成物の反応生成物(固形分80質量%、粘度7000mPa・s)を得た。
【0046】
[実施例3]
樹皮抽出組成物の代わりに樹皮抽出組成物とレゾール型フェノール樹脂との混合物を使用し、二酢酸セルロース溶液の中に、この混合物(固形分)の量が質量比で混合物:二酢酸セルロース=90:10になるように加えた以外は実施例1と同様にして紡糸原液を調製し、実施例1と同様に各工程を実施して、複合繊維を製造した。そして、得られた複合繊維から実施例1と同様にして、炭素繊維と活性炭素繊維を製造し、これらについて実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
なお、樹皮抽出組成物とレゾール型フェノール樹脂との混合物は次のようにして調製した。
まず、実施例1と同様の方法で樹皮抽出組成物を得た。
一方、フェノール400gとホルマリン(ホルムアルデヒド50質量%水溶液)440gとを反応容器に仕込み、25質量%アンモニア水74gを加え、60℃で3時間反応させた。その後、80mmHgの減圧下にて、反応容器内の内容物の内温が80℃に上昇するまで脱水濃縮反応を行い、さらにそのまま80℃、80mmHgの条件下に保持し、常温では透明液状のレゾール型フェノール樹脂(固形分80質量%)を得た。
【0047】
[比較例1]
まず、フェノール樹脂系繊維を以下のようにして製造した。
平均分子量1200の熱可塑性ノボラック樹脂(溶融粘度150℃で36Pa・s)を180℃で溶融させ、これを吐出量が一定になるように調整したギアポンプを通して150℃に設定された紡糸パックへ導入し、100ホールの紡糸口金(孔径0.2mm、キャピラーのL/D=3)から吐出させた。
こうして得られた紡糸原糸をクエンチゾーンにて20℃の冷却風で冷却しながら、巻き取り速度を300m/分とし、繊度2.2dtex(デシテックス)の未硬化糸を得た(直接紡糸法)。
ついで、巻き取った未硬化糸をボビンから切り離し、長さを51mmにカットした。
そして、これを塩酸15質量%、ホルムアルデヒド10質量%の25℃混合水溶液に浸漬し1時間静置した後、温度コントローラー付きの加熱器内に入れ、6時間かけて98℃まで昇温し、更に98℃に保ったまま10時間保持し、硬化反応を行った。
その後、硬化した糸條を加熱器内から取り出し、60℃の温水に30分間浸漬した後、流水で1時間洗浄した。次に取り出した糸條を60℃に保持した3質量%のアンモニア水に3時間浸漬し、中和処理を行った。そして、中和後の糸條を60℃の温水に30分間浸漬した後、流水で1時間洗浄した。
その後、取り出した糸條を105℃、30分間の条件で乾燥し、黄色のフェノール樹脂系繊維を得た。
【0048】
そして、得られたフェノール樹脂系繊維から実施例1と同様にして、炭素繊維と活性炭素繊維を製造し、これらについて実施例1と同様にして評価した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から明らかなように、紡糸原液として、アカシアの樹皮抽出組成物を繊維形成性高分子化合物とともに含む混合液を使用した実施例1では、炭素繊維を高い収率で得ることができ、かつ、比表面積およびメソ孔の総容積が非常に高い活性炭素繊維を高い収率で得ることができた。また、樹皮抽出組成物にホルムアルデヒドやフェノール樹脂を反応させた反応生成物を使用した実施例2や、樹皮抽出組成物に熱硬化性樹脂を混合した混合物を使用した実施例3では、より高い収率で炭素繊維を得ることができ、かつ、比表面積およびメソ孔の総容積は実施例1よりもやや小さいものの、実施例1よりも灰分量の少ない活性炭素繊維をより高い収率で得ることができた。また、各実施例では、いずれの場合でも、良好な繊維形状を維持した活性炭素繊維が得られた。
一方、フェノール樹脂系繊維から炭素繊維や活性炭素繊維を製造した比較例1では、炭素繊維収率および活性炭素繊維収率がいずれも低かった。また、得られた活性炭素繊維は、比表面積はある程度大きいものの、メソ孔の総容積は小さく、活性炭素繊維としての特性は不十分であった。
【0051】
[実施例4]
ケブラコ樹皮チップ:1500gとアセトン:4500gとの混合物をフラスコに入れ、これをマントルヒーターで56℃に加熱し、アセトンの還流状態を保ったまま1時間攪拌してポリフェノール類を含有する樹皮抽出組成物を抽出するための操作を行った。
ついで、この混合物を常温に冷却後、固体(樹皮)と液体(抽出液)とにろ別し、得られた抽出液をロータリーエバポレータに投入した。なお、得られた液体は赤黒色であった。そして、55℃で減圧状態を保ちアセトンを蒸発させ(蒸発乾固)、固体の樹皮抽出組成物270gを得た。
以降の工程は実施例1と同様にして複合繊維を得て、さらに得られた複合繊維から実施例1と同様にして炭素繊維と活性炭素繊維を製造し、これらについて実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
【0052】
[実施例5]
樹皮抽出組成物の代わりに樹皮抽出組成物とホルムアルデヒドとの反応生成物を使用し、二酢酸セルロース溶液の中に、この反応生成物(固形分)の量が質量比で反応生成物:二酢酸セルロース=90:10になるように加えた以外は実施例4と同様にして複合繊維を得て、さらに得られた複合繊維から実施例1と同様にして炭素繊維と活性炭素繊維を製造し、これらについて実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
なお、樹皮抽出組成物とホルムアルデヒドとの反応生成物の調製は、樹皮抽出組成物として実施例4で得たケブラコ樹皮からの樹皮抽出組成物を使用した以外は、実施例2と同じ方法で行い、樹皮抽出組成物とホルムアルデヒドとの反応生成物:160gを得た。
【0053】
【表2】

【0054】
[実施例6]
ラジアータパイン樹皮チップ:1500gとメタノール:4500gとの混合物をフラスコに入れ、以降、実施例1と同様の工程により、固体の樹皮抽出組成物300gを得て、さらに複合繊維を得て、さらに得られた複合繊維から実施例1と同様にして炭素繊維と活性炭素繊維を製造し、これらについて実施例1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0055】
[実施例7]
樹皮抽出組成物の代わりに樹皮抽出組成物とレゾール型フェノール樹脂との混合物を使用し、二酢酸セルロース溶液の中に、この混合物(固形分)の量が質量比で混合物:二酢酸セルロース=90:10になるように加えた以外は実施例6と同様にして複合繊維を得て、さらに得られた複合繊維から実施例1と同様にして炭素繊維と活性炭素繊維を製造し、これらについて実施例1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
なお、樹皮抽出組成物とレゾール型フェノール樹脂との混合物の調製は、樹皮抽出組成物として実施例6で得たラジアータパイン樹皮からの樹皮抽出組成物を使用した以外は、実施例3と同じ方法で行った。
【0056】
【表3】

【0057】
表2および3から明らかなように、樹皮としてケブラコやラジアータパインを使用した場合でも、炭素繊維を高い収率で得ることができ、かつ、比表面積およびメソ孔の総容積が非常に高い活性炭素繊維を高い収率で得ることができた。また、いずれの活性炭素繊維も、良好な繊維形状を維持していた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合繊維を製造する工程と、製造された複合繊維を炭化する工程とを有する炭素繊維の製造方法において、
前記複合繊維を製造する工程は、紡糸原液を細孔から吐出し固化させる紡糸工程を有し、前記紡糸原液として、溶媒により樹皮から抽出された樹皮抽出組成物と、少なくとも1種の繊維形成性高分子化合物とを含有する混合液を使用することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
【請求項2】
前記混合液は、さらに熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維の製造方法。
【請求項3】
複合繊維を製造する工程と、製造された複合繊維を炭化する工程とを有する炭素繊維の製造方法において、
前記複合繊維を製造する工程は、紡糸原液を細孔から吐出し固化させる紡糸工程を有し、前記紡糸原液として、溶媒により樹皮から抽出された樹皮抽出組成物の反応生成物と、少なくとも1種の繊維形成性高分子化合物とを含有する混合液を使用することを特徴とする炭素繊維の製造方法。
【請求項4】
前記反応生成物は、前記樹皮抽出組成物に熱硬化性樹脂またはアルデヒド類を反応させた反応生成物であることを特徴とする請求項3に記載の炭素繊維の製造方法。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂は、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂およびこれらの共重合体からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項4に記載の炭素繊維の製造方法。
【請求項6】
前記繊維形成性高分子化合物は、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエステルおよびこれらの共重合体からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法。
【請求項7】
前記樹皮は、アカシア、ケブラコ、ラジアータパインからなる群より選ばれる1種以上の樹皮であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の炭素繊維の製造方法。
【請求項8】
複合繊維を製造する工程と、製造された複合繊維を炭化、賦活する工程とを有する活性炭素繊維の製造方法において、
前記複合繊維を製造する工程は、紡糸原液を細孔から吐出し固化させる紡糸工程を有し、前記紡糸原液として、溶媒により樹皮から抽出された樹皮抽出組成物と、少なくとも1種の繊維形成性高分子化合物とを含有する混合液を使用することを特徴とする活性炭素繊維の製造方法。
【請求項9】
複合繊維を製造する工程と、製造された複合繊維を炭化、賦活する工程とを有する活性炭素繊維の製造方法において、
前記複合繊維を製造する工程は、紡糸原液を細孔から吐出し固化させる紡糸工程を有し、前記紡糸原液として、溶媒により樹皮から抽出された樹皮抽出組成物の反応生成物と、少なくとも1種の繊維形成性高分子化合物とを含有する混合液を使用することを特徴とする活性炭素繊維の製造方法。

【公開番号】特開2007−247123(P2007−247123A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76431(P2006−76431)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000165000)群栄化学工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】