説明

炭素繊維チョップ、及びその製造方法

【課題】耐熱性が高く、且つ集束性が高く、フリーファイバー率5%以下で、成形性、作業性に優れる炭素繊維チョップを製造する。
【解決手段】炭素繊維の単繊維が3000〜50000本集束されて交絡されている炭素繊維チョップであって、フリーファイバー率が8%以下であり、サイズ剤の付着量が0.1〜1.5質量%である炭素繊維チョップを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解ガスの発生量が少なく、集束性に優れる炭素繊維チョップ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維チョップは、繊維束を所定長さに切断してなる、樹脂成型品等の補強用の繊維束である。炭素繊維チョップは、例えば熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする複合材料の製造等に用いられ、炭素繊維チョップを用いて、シート・モールディング・コンパウンド(SMC法)、バルク・モールディング・コンパウンド(BMC)法、ハンドレイアップ法等により複合材料が製造される。
【0003】
また、炭素繊維チョップは、熱可塑性樹脂、特にエンジニアリングプラスチックをマトリックス樹脂とする複合材料の製造に多用される。
【0004】
上記炭素繊維チョップは、通常、長さ3〜15mmの単繊維数3,000本(3K)乃至50,000本(50K)程度をサイズ剤で束状に集束されている。
【0005】
炭素繊維チョップは、樹脂ペレットと共に直接射出成型機に投入され、射出成形されたり、或は樹脂ペレットあるいは樹脂パウダーとともに押出機で溶融混練されて予めペレット化され、このペレットを射出成形する等の方法により、複合材料が製造される。
【0006】
炭素繊維チョップは、射出成型機やペレット製造用の押出機等に定量的かつ安定的に供給できるように、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の種々のサイズ剤により集束されている。サイズ剤の付着量は、通常2〜10質量%の場合が多い。
【0007】
上記サイズ剤が付着した炭素繊維チョップと熱可塑性樹脂とを用いて、これらを押出し、射出成形する場合、又は上記ペレットを製造する場合、炭素繊維チョップに付着しているサイズ剤が、高温の押出機、射出成形機のシリンダー内部で熱変性され、その結果シリンダー内で熱分解ガスが発生し易い。その結果、成形性、作業性等が悪化する問題がある。
【0008】
この対策として、炭素繊維チョップのサイズ剤付着量を下げると、分解ガスの発生量は低下する。しかし、炭素繊維チョップの集束性が低下して押出機、射出成形機のホッパー内部でファイバーボールを作り、うまくフィードされない問題を新たに生じる。
【0009】
ファイバーボールの発生を防ぐため、特許文献1には、炭素繊維束にサイズ剤を1〜20質量%付与した後、炭素繊維束を3〜20/m撚る技術が開示されている。
【0010】
一方、サイズ剤が通常量付着した炭素繊維チョップを、予め押出し、射出成形温度以上の高温で熱処理した炭素繊維チョップが提案されている(特許文献2)。この炭素繊維チョップの場合は、前記分解ガスの発生量は低下する。しかし、この熱処理はかなり長時間を要するため、炭素繊維チョップの生産性は低下する。
【0011】
特許文献3には、炭素繊維束を10〜70(1/m)の交絡処理をした後、1〜10%のサイズ剤を付与する炭素繊維チョップの製造方法が開示されている。なお、特許文献3の実施例、比較例に記載されているサイズ剤付着量は、3%のみである。この炭素繊維チョップは、交絡数が少ないので、サイズ剤の付着量を3%よりも少量にすると、押出し機等のホッパー内でばらけてファイバーボールを形成しやすい。従って、実際には、サイズ剤付着量は、3%以上にする必要がある。しかし、この場合は、前記分解ガスの発生量を低減させることは期待できない。
【特許文献1】特開昭53−106752号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平10−1877号公報(請求項2)
【特許文献3】特開2000−248432号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、上記問題を解決するために種々検討しているうちに、炭素繊維チョップの交絡数を極端に高くすることに想到した。即ち、本発明者は以下のように考えた。炭素繊維チョップの交絡数が極端に高い場合は、簡単に開繊されたり、ばらけたりし難い。従って、サイズ剤の付着量を低減でき、その結果押出し機等のシリンダー内における分解ガス生成量は低減される。一方、シリンダー内においては、炭素繊維チョップを構成している炭素繊維は押し出される際に機械的に折られて短くなる。これにより、炭素繊維チョップは、短い炭素繊維になり、樹脂中に十分混和されていく。
【0013】
本発明は、上記発想を基礎として完成するに至ったものである。
【0014】
従って、本発明の目的とするところは、上記問題を解決する炭素繊維チョップ、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
〔1〕 炭素繊維の単繊維が3000〜50000本集束されて交絡されている炭素繊維チョップであって、フリーファイバー率が8%以下であり、サイズ剤の付着量が0.1〜1.5質量%である炭素繊維チョップ。
〔2〕 長さが3〜15mmである〔1〕に記載の炭素繊維チョップ。
〔3〕 交絡数が80〜200/mで、300℃で30分加熱する際の質量減少率が0.5%以下である〔1〕に記載の炭素繊維チョップ。
〔4〕 炭素繊維ストランド中の炭素繊維同士を交絡数が80〜200/mで互いに交絡させる交絡工程と、交絡された炭素繊維ストランドに0.1〜1.5質量%のサイズ剤を付与するサイズ剤付与工程と、サイズ剤を付与した炭素繊維ストランドを所定長さに切断する切断工程とを有する〔1〕に記載の炭素繊維チョップの製造方法。
〔5〕 炭素繊維ストランドに0.1〜1.5質量%のサイズ剤を付与するサイズ剤付与工程と、炭素繊維ストランド中の炭素繊維同士を交絡数が80〜200/mで互いに交絡させる交絡工程と、サイズ剤を付与した炭素繊維ストランドを所定長さに切断する切断工程とを有する〔1〕に記載の炭素繊維チョップの製造方法。
〔6〕 炭素繊維ストランドに0.1〜1.5質量%のサイズ剤を付与しながら交絡数80〜200/mで交絡するサイズ剤付与交絡工程と、炭素繊維ストランドを所定長さに切断する切断工程を有する〔1〕に記載の炭素繊維チョップの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の炭素繊維チョップは、耐熱性が高く、且つ集束性が高く、フリーファイバー率8%以下で、成形性、作業性に優れる炭素繊維チョップである。本炭素繊維チョップは、高温時においてサイズ剤の分解に基因して生成する熱分解ガスの量が少ない。従って、本炭素繊維チョップを補強材とする複合材料を高温の押出機、射出成形機等を用いて製造する場合に、シリンダー内部で熱分解ガスの発生が少なく、高品位の複合材料を簡単に製造できる。本発明の製造方法によれば、上記優れた特性を有する炭素繊維チョップを安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明の炭素繊維チョップは、複数の炭素繊維の単繊維が集束されてなる、炭素繊維ストランドを所定長さに切断したチョップである。
【0019】
炭素繊維チョップの長さは、3〜15mmで、3〜10mmが好ましい。長さが3mm未満の炭素繊維チョップは、複合材料を製造する場合、補強性能が不足する。15mmを超える炭素繊維チョップは、ホッパーからシリンダーへの供給安定性が低下するため好ましくない。
【0020】
炭素繊維チョップを構成する単繊維は、特に制限がなく、各種の公知の炭素繊維を用いることが出来る。例えば、レーヨン、ポリアクリロニトリル、ピッチ、リグニン、炭化水素ガスを用いて製造された炭素繊維や黒鉛質繊維等が例示される。これらの中でも、ポリアクリロニトリルを原料とするアクリル系炭素繊維が、強度、弾性率等の物性の良さ、及び入手の容易さの点で好ましい。
【0021】
炭素繊維径は特に限定されないが、汎用性、製造コスト、性能の点で4〜10μmが好ましく、4〜8μmがより好ましい。
炭素繊維チョップを構成する単繊維の集束数は3000〜50000本が好ましく、12000〜24000本がより好ましい。
【0022】
炭素繊維チョップを構成する単繊維は、炭素繊維チョップ内で単繊維相互間で交絡されている。交絡数は、80〜200/mで、100〜180/mがより好ましい。交絡数が80/m未満の場合は、集束性が不足し、押出し機等のホッパー内でばらけてファイバーボールを形成しやすくなる。交絡数が200/mを超える場合は、特に問題は生じないが、交絡数を増やす利点が無い。
【0023】
炭素繊維チョップには、サイズ剤が付着している。サイズ剤の付着量はサイズ剤の正味の量として0.1〜1.5質量%であり、0.1〜1.2質量%が好ましく、0.1〜1質量%未満がより好ましい。サイズ剤の付着量は、可能な限り少ない方が好ましい。成型時の熱分解ガスの発生量を低減できるからである。
【0024】
ここで炭素繊維チョップを用いる複合材料の成型時に発生する分散ガスの発生量は、炭素繊維チョップを加熱した際に生じる炭素繊維チョップの質量減少率に比例すると言える。このため、本明細書においては、質量減少率を用いて分解ガス発生量の指標とする。
【0025】
サイズ剤は、複合材料を製造する際に用いるマトリックス樹脂との相溶性の高いものが好ましい。サイズ剤はマトリックス樹脂の種類に応じ適宜選択することが好ましい。
【0026】
サイズ剤としては特に制限がなく、公知のサイズ剤を使用できる。公知のサイズ剤としては、エポキシ樹脂系、ポリアミド樹脂系、ウレタン樹脂系、ポリエステル樹脂系、ポリイミド樹脂系、フェノール樹脂系等が例示される。ポリアミド樹脂は、高靭性で集束性に優れ、また通常融点を持つため、マトリックス樹脂への炭素繊維チョップの分散性を良好にする。
【0027】
サイズ剤は耐熱性の高いものが好ましい。サイズ剤は300℃で30分間大気中で加熱する場合、その質量減少率が30質量%以下のものが好ましく、20質量%以下のものがより好ましい。
【0028】
本炭素繊維チョップは、耐熱性が高く、大気中で300度で30分間加熱したときの質量減少率が、0.5%以下である。嵩密度は高く、250g/L以上で、好ましくは350g/Lである。更に、交絡数が高いので、フリーファイバー率は8%以下、好ましくは2%以下で、より好ましくは1%以下である。
【0029】
上記炭素繊維チョップは、何れの方法で製造しても良いが、以下に示す方法で製造することが好ましい。
【0030】
(第1の製造方法)
上記本発明の炭素繊維チョップの第1の製造方法は、炭素繊維ストランドに0.1〜1.5質量%のサイズ剤を付与するサイズ剤付与工程と、前記サイズ剤を付与した炭素繊維ストランドの炭素繊維同士を互いに交絡する交絡工程と、前記交絡工程で得られる炭素繊維ストランドを所定長さに切断する切断工程と、を有する。
【0031】
サイズ剤付与工程においては、炭素繊維ストランドにサイズ剤が付着しる。
【0032】
出発原料の炭素繊維ストランドは、前記炭素繊維チョップの説明において既に述べたように、種々の原料で製造された長尺の炭素繊維からなる単繊維を、3000〜50000本集束してなる連続した炭素繊維ストランドである。この炭素繊維ストランドにサイズ剤が付着しる。サイズ剤の付着量は、0.1〜1.5質量%であり、0.1〜1.2質量%が好ましく、0.1〜1質量%未満がより好ましい。
【0033】
サイズ剤の付与方法は、スプレー法、液浸法、転写法等の既知の方法を採択し得るが、液浸法が汎用性、効率性、付着の均一性に優れるので好ましい。
【0034】
液浸法においては、炭素繊維ストランドをサイズ剤液に浸漬する際に、サイズ剤液中に設けられた液没ローラ又は液浸ローラを用いて開繊と絞りが繰り返され、ストランドの中心部までサイズ剤が含浸されるようにすることが好ましい。
【0035】
サイズ剤の形態には、エマルジョン形態と溶剤形態とがある。エマルジョン形態のサイズ剤は、水にサイズ剤がエマルジョンの形態で分散されたものである。
溶剤形態のサイズ剤としては、アセトン、MEK等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、メチレンクロライド等の有機塩素化合物等にサイズ剤が溶解されたものがある。
【0036】
人体への安全性の面及び自然環境を汚さない環境対策の面からエマルジョン形態のサイズ剤が好ましい。
【0037】
サイズ剤が水エマルジョン形態の場合、炭素繊維ストランドに付着されるサイズ量を適正化する上で、サイズ剤の濃度は1〜100g/L、25℃での溶液粘度は0.1〜100ポアズに調節されることが好ましい。サイズ剤が付着しる際のサイズ剤浴温度は0〜50℃が好ましい。サイズ剤の付着量を制御するため、サイズ剤の付着した後、スクイズ処理工程が設けられていても良い。
【0038】
サイズ剤は、単独で付着しても良い。または二種類以上のサイズ剤が、二段階以上に分けて付着しても良い。
【0039】
サイズ剤が付着した上記炭素繊維ストランドは次いで交絡処理される。交絡処理は、繊維束に対して直角方向から空気等の流体を高速で吹き付けることにより行われる。交絡処理により、サイズ剤を付着した炭素繊維ストランドは、前述のように、交絡数が80〜200/mになる。
【0040】
本発明においては、交絡数は、フックドロップ法による交絡値(CF値)で定義される。フックドロップ法による交絡値の測定方法は以下の通りである。
すなわち、炭素繊維ストランドの下端に200gの重りを付けて垂下げる。この炭素繊維ストランドに10gの重りを付けた鉤針を刺し、落下する距離を測定する。50回測定し、最大の値から大きい順に10個、最小の値から小さい順に10個を除き、残る30個の測定値の平均値をX(cm)とする。下式(1)より交絡値(CF値)が算出される。
【0041】
CF値=100/X(1/m) (1)
上記交絡された炭素繊維ストランドは、切断工程に送られ、この工程で所定の長さに切断され、本発明の炭素繊維チョップが製造される。
【0042】
切断長さは、3〜15mmで、3〜10mmが好ましい。
【0043】
切断方法としては、ロービングカッター等のロータリー式カッターや、ギロチンカッター等の通常用いられているカッターを適宜用いることが出来る。
【0044】
なお、第1の製造方法においては、炭素繊維ストランドにサイズ剤を付与した後、交絡を行った。しかし、これに限られず、炭素繊維ストランドを交絡した後、サイズ剤を付与するようにしても良い。その他の条件は上記方法と同様である。
【0045】
(第2の製造方法)
第2の製造方法は、炭素繊維ストランドに0.1〜1.5質量%のサイズ剤を付与しながら、交絡を同時に行うサイズ剤付与交絡工程と、前記サイズ剤付与交絡工程で得られる炭素繊維ストランドを所定長さに切断する切断工程を有する。
【0046】
サイズ剤付与交絡工程は、サイズ浴中のサイズ剤液に浸漬しながら、サイズ液材の液流を炭素繊維ストランドに噴射することにより行われる。その他の構成は、第1の製造方法と同様である。
【0047】
本発明の炭素繊維チョップは、各種熱可塑性樹脂と混練してペレット化し、これを成形することにより各種複合材料を製造できる。或は、炭素繊維チョップとマトリックスになる熱可塑性樹脂とを、成型機のホッパーに直接供給し、成型することにより、複合材料を製造できる。
【0048】
複合材料のマトリックス樹脂として用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール等の汎用エンジニアリングプラスチックが多く採用される。また、ポリプロピレンやABS等の汎用プラスチックやポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性の芳香族ポリエステル等の耐熱性ポリマー類も使用される。本発明の炭素繊維チョップが補強材として使用できるマトリックス樹脂は特に限定されないが、成型温度の高い汎用エンジニアリングプラスチックが特に好ましい。
【0049】
本炭素繊維チョップの、マトリックス樹脂に対する配合量は、特に制限が無く、製造される複合材料に応じて、通常の公知の配合量が適宜選択される。一般的には、マトリックス樹脂100質量%に対して炭素繊維チョップは5〜30質量%が配合される。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
【0051】
各測定値は、下記方法により求めた。
【0052】
(サイズ剤付着量)
サイズ剤を付与した炭素繊維チョップを約5g採取し、質量(W1)を測定した。予め恒量にした坩堝の質量(W2)を量った後、前記炭素繊維チョップを坩堝に入れ、窒素雰囲気下450℃±5℃に保たれた熱風循環式乾燥機内で30分熱処理を行った。坩堝ごとデシケーターに入れ室温まで冷却し、炭素繊維チョップが入った坩堝の質量(W3)を測定した。サイズ剤付着量を次式(1)により求めた。
【0053】
サイズ剤付着量(%)=(W1+W2−W3)/(W3−W2)×100 (1)
(分解ガス発生量)
予め乾燥してあるルツボの質量を測定し(W1 mg)、これに約10gの炭素繊維チョップを入れて、その質量を測定した(W2 mg)。この炭素繊維チョップを入れたルツボを予め300℃に加温した熱風循環式の乾燥器(TABAIESPEC CORP.製STRH−100)の中に入れ、30分間熱処理した後、乾燥器から取り出した。このルツボをシリカゲル入りのデシケ−タ−中で室温まで自然冷却させた後、このルツボの質量を測定し(W3 mg)、質量減少率を次の式(2)により算出した。
【0054】
質量減少率(%)=[(W2 −W3)/(W2−W1)]×100 (2)
この質量減少率を、分解ガス発生量とした。
【0055】
(フリーファイバー率)
500mlのビーカーに、その上方30cmの高さより、炭素繊維チョップを落としてビーカー上端を超えて山盛り状態になるまで充填した。その後、500mlのビーカーの上端以上に盛上がっている炭素繊維チョップをガラス棒を用いてすり切りまで除去し、このときの炭素繊維チョップ(W6 g)の質量を測定した。さらに、この炭素繊維チョップを2000mlのメスシリンダーに移し、密閉し、メスシリンダーの軸を中心軸として、20分間25rpmで回転した。メスシリンダーの回転を停止し、試料を篩(チョップ長が1〜5mmの場合は5メッシュ、チョップ長が6〜10mmの場合は4メッシュ)に移し、試料が篩の目から落下しなくなるまで前後左右に動かして篩分けした。篩に残ったフリーファイバーを採取し、その質量(W7 g)を測定し、フリーファイバー発生率を次の式(3)により算出した。
【0056】
フリーファイバー発生率(%)=(W7/W6)×100 (3)
実施例1〜8
第1の製造方法により、本発明の炭素繊維チョップを製造した。表1に記載するように、炭素繊維径が7μm、24k(24000本の単繊維を集束)の炭素繊維ストランドにウレタン系サイズ剤を付与した。
【0057】
次に、高圧空気を用いてサイズ剤を付与した炭素繊維ストランドの交絡処理をした。
【0058】
ドーナツ状のリングの内周面に直径2mmの穴を内周に沿って60度離れて6箇配置した交絡処理器のリング中を耐炎化繊維束を通過させ、圧力0.4kgf/mmの空気を吹き付けて、交絡処理を行った。得られた炭素繊維ストランドを表1に記載の繊維長に切断し、炭素繊維チョップを製造した。
【0059】
製造した炭素繊維チョップを用いて、フリーファイバー率(%)、質量減少率(質量%)を測定した。結果を表1にまとめた。
【0060】
比較例1〜2
実施例を同様にして、フリーファイバー率(%)と質量減少率(質量%)を測定した。結果を表1にまとめた。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例9
第2の製造方法により本発明の炭素繊維チョップを製造した。
【0063】
ウレタン系サイズ剤の2質量%水エマルジョンをサイズ剤浴中で圧力0.05Paで炭素繊維に吹き付けて交絡とサイズ剤付与を同時に行った。その他の操作は実施例1と同様であった。交絡数175 1/m、サイズ剤付着量0.8質量%の炭素繊維チョップが得られた。質量減少率は0.3質量%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維の単繊維が3000〜50000本集束されて交絡されている炭素繊維チョップであって、フリーファイバー率が8%以下であり、サイズ剤の付着量が0.1〜1.5質量%である炭素繊維チョップ。
【請求項2】
長さが3〜15mmである請求項1に記載の炭素繊維チョップ。
【請求項3】
交絡数が80〜200/mで、300℃で30分加熱する際の質量減少率が0.5%以下である請求項1に記載の炭素繊維チョップ。
【請求項4】
炭素繊維ストランド中の炭素繊維同士を交絡数が80〜200/mで互いに交絡させる交絡工程と、交絡された炭素繊維ストランドに0.1〜1.5質量%のサイズ剤を付与するサイズ剤付与工程と、サイズ剤を付与した炭素繊維ストランドを所定長さに切断する切断工程とを有する請求項1に記載の炭素繊維チョップの製造方法。
【請求項5】
炭素繊維ストランドに0.1〜1.5質量%のサイズ剤を付与するサイズ剤付与工程と、炭素繊維ストランド中の炭素繊維同士を交絡数が80〜200/mで互いに交絡させる交絡工程と、サイズ剤を付与した炭素繊維ストランドを所定長さに切断する切断工程とを有する請求項1に記載の炭素繊維チョップの製造方法。
【請求項6】
炭素繊維ストランドに0.1〜1.5質量%のサイズ剤を付与しながら交絡数80〜200/mで交絡するサイズ剤付与交絡工程と、炭素繊維ストランドを所定長さに切断する切断工程を有する請求項1に記載の炭素繊維チョップの製造方法。

【公開番号】特開2010−126841(P2010−126841A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302993(P2008−302993)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000003090)東邦テナックス株式会社 (246)
【Fターム(参考)】