説明

炭酸飲料用ボトル容器

【課題】 開栓時に、ラムネ球が容器底部まで落下する底球方式であっても、炭酸ガスの大量発生による開口部からの液漏れを防止できる炭酸飲料用ボトル容器を提供する。
【解決手段】ラムネボトル本体1の側面を両側から内部に凹ませてくびれ部11を形成する。くびれ部11はボトル内部において、略8字形状の断面を成し、中央部が阻止部、両側が連通部となる。開栓によって落下するラムネ球3は、一旦阻止部に衝突して、その後ゆっくりと連通部を通過してボトル底部まで落下する。このように、くびれ部11でクッションしたのち落下するため、底球方式であっても、炭酸飲料の泡立ちを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭酸飲料用ボトル容器に関し、特に、開口部が球状栓部材で封止されるいわゆるラムネボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
旧来より、ラムネ飲料は、所謂ラムネ瓶といわれるボトル容器に容器詰して販売されていた。ラムネ瓶は、内部に栓部材であるガラス製の球体(ラムネ球)を収容したガラス瓶であり、内部に充填したラムネ飲料の炭酸の圧力により、ラムネ球がキャップ開口部に対して押しつけられて密封される独特の構造のものである。
【0003】
開栓は、ラムネ球を容器内部に押し込んで瓶の開口部を開くことによって行うが、内部に押し込まれたラムネ球がラムネ飲料内を落下する衝撃により炭酸ガスが吹き出す。このため、従来は、ラムネ瓶の開口部から所定の位置に狭窄部を形成し、落下したラムネ球がその狭窄部で停止させるようにしていた。これにより、ラムネ球が瓶の底部まで落ちて炭酸ガスが大量に発生することによる吹き出し・液漏れを防止している。
【0004】
現在、ラムネ飲料の容器もガラス瓶からPET等の樹脂ボトルに移行しているが、日本古来の飲料であるラムネ飲料の風情・伝統・ラムネらしさが商品価値を高めるため、現在も同じようにいわゆるラムネ球で封止し、ラムネ球をボトル内部に落とすことで開栓する形式のボトルが伝統的に採用されている。(特許文献1、2参照)
【特許文献1】特開2000−246790号公報
【特許文献2】実用新案登録第3131406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の狭窄部でラムネ球を停止させる上玉方式のラムネボトルは、ラムネ球が通過できない程度まで深い狭窄部を形成する必要があるために、狭窄部の強度を維持するために製造工程が容易でなかった。
【0006】
さらに、上記のラムネボトルは、狭窄部が狭く且つラムネ球も狭窄部上部に位置する構造のために、ラムネ飲料をボトルに充填する製造工程においてラムネ飲料が狭窄部を通過しづらく、生産効率の向上の阻害要因となっていた。
【0007】
また、ラムネ球が狭窄部の上部に止まっているため、開口部を下に向けて飲んでいるとすぐにラムネ球が開口部まで落下してくるという欠点があった。ラムネボトルには、これを防止するための球止めが形成されているが、浅い突起形状であるため直ぐに外れてしまう。
【0008】
また、狭窄部や球止めはボトルの側面を内部に窪ませて形成されるため必ず外観に現れ、ラムネボトルの外観形状の自由度を制約していた。たとえば、特許文献2のラムネボトルのようにボトルの上部を下部と同じ径にした場合においても、狭窄部が深いためボトル上部の膨らみが極端になり外観上美しくなかった
【0009】
そこで、本発明は、狭窄部で球状栓部材を止めない底玉方式の容器形状にする事により、上記課題を解決した炭酸飲料用ボトル容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明の炭酸飲料用ボトル容器は、開口部を上端に有するボトル本体と前記開口部を封止し、押し込みにより前記ボトル本体内部に落下する球状栓部材と、を有する炭酸飲料用ボトル容器において、前記ボトル本体の前記開口部と底部との間に、前記球状栓部材の落下を一旦受け止める阻止部と前記球状栓部材が通過可能な開口である連通部とからなるクッション部が形成されていることを特徴としている。
また、本発明は、前記クッション部は、前記ボトル本体の側面を内面側に変形させたくびれ部により形成したことを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明は、前記くびれ部は、前記ボトル本体の対向する側面を内面側に変形させ、対向する2箇所間の隙間の寸法が、中央部は球状栓部材の直径よりも小さく、片側または両側の外周部は球状栓部材の直径よりも大きい形状であることを特徴としている。
【0012】
上記の炭酸飲料用ボトル容器を使用すれば、開栓時に所謂ラムネ球である球状栓部材を容器内部に押し込んでも、落下の衝撃による炭酸ガスの発生が少ないので、開口部から液こぼれすることが少ない。
【0013】
また、ボトル側面を内面側に変形させてくびれ部を形成した場合にも、球状栓部材が通過する連通部が設けられているため全体的に狭窄の程度が小さく、製造が容易で、且つ、炭酸飲料の充填が効率的なボトル容器とすることができる。
また、本発明は、前記ボトル本体の前記クッション部よりも上部の最大外径が、前記クッション部よりも下部の最大外径と同じであることを特徴とする。
これにより、自動販売機で転がって排出される際の転がり安定性も良くなり、店頭販売以外での無人販売も可能となる。
また、本発明は、前記球状栓部材が、比重1以上の樹脂製であることを特徴とする。
さらに、本発明は、前記球状栓部材は、絵、文字、模様等の意匠が施されている事を特徴とする。
【0014】
これにより、いわゆるラムネ球である球状栓部材がクッション部に衝突したり、通過したりし、クッション部を挟んで上部空間、下部空間を縦横無尽に転がらせることが可能なために、飲用し終わった後においても楽しむ事が可能な炭酸飲料用ボトル容器を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、以上説明したように、ボトル内部の途中にクッション部を設けることにより、開栓時に球状栓部材を容器内部に押し込んでも、球状栓部材がクッション部の阻止部で一旦落下を停止したのちゆっくりと連通部を通過して底まで落下する。これにより、落下の衝撃による炭酸ガスの発生が少なく開口部から液こぼれすることのない、容器詰炭酸飲料用のボトル容器を実現することができる。
【0016】
また、この発明の炭酸飲料用ボトル容器は、容器胴体部に球状栓部材を通過させない程度の深い狭窄部を形成する必要がなくなり、ボトル容器の強度維持が容易になるとともに、容器詰飲料の製造工程において、炭酸飲料の充填速度を高めることができ、生産性を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図面を参照してこの発明の実施形態であるラムネボトルについて説明する。
【0018】
図1はラムネボトルの正面図、図2は縦断面図である。ボトル本体1はポリエチレンテレフタレート(PET)からなり、上端部に開口部10を有している。また、ボトル本体1の中央よりやや上部にはくびれ部11が設けられている。開口部10は略円筒状であり、外周面には雄ねじが形成されている。この雄ねじにキャップ2が螺合している。
また、ボトル本体1の上部12には、ラムネボトルらしいデザインとして3個のディンプル15
【0019】
キャップ2は、上面でつながる外筒21と内筒22を有し、上面中央部が開口している。この開口部20が飲み口となる。キャップの外筒21は、ポリプロピレンからなり、内筒は低密度ポリエチレンからなる。キャップ2の外筒21の内側に雌ねじが形成されており、この雌ねじがボトル本体1の開口部10の雄ねじと螺合する。また、内筒22の内壁面には、周に沿った2つのリブが形成されており、この2つのリブの間に球状栓部材であるラムネ球3が保持されている。キャップ2の構造については、本出願人の特開2004−051205号公報等に詳細に記載されている。
【0020】
図3は、くびれ部11の断面を示すA−A端面図である。ボトル本体1は、くびれ部11において、左右の幅が狭まり、前後の幅は殆ど狭まっていない。図3の断面図において、くびれ部11は、前後に長い略8字形状をなしており、ボトル本体の前部(図3において下部)側に形成された前部開口部111、後部(図3において上部)側に形成された後部開口部112は、図4に示すように、ラムネ球3が通過できる大きさに開口している。そして、この前部開口部111と後部開口部112を隔てるように、中央部にラムネ球3が通過できない程度の左右幅に狭まった狭窄部113が形成されている。また、ボトル本体1を内部側に変形させて狭窄部113を形成したことによりボトル本体1に傾斜部14が生じている。狭窄部113および傾斜部14が本発明の阻止部に対応し、前部開口部111、後部開口部112が本発明の連通部に対応する。
【0021】
連通部は、ラムネ球3が通過できれば、その形状や大きさに制限はない。好ましい連通部の形状は、ラムネ球3と相似形で、その面積が、ラムネ球3の断面面積の1.05から2.0倍程度が好ましい。1.05倍以下の場合にはラムネ球3が通過しにくいし、2.0倍以上の場合、ラムネ球3が阻止部でクッションさせることなく直接落下したり、飲用中にラムネ球3が開口部10に戻る可能性が高まるためである。
【0022】
この構造により、図5(A)、(B)に示すように、開栓によって上方から落下してきたラムネ球3は、一旦傾斜部14または中央部113に掛かって落下が停止し、そののち前部開口部111または後部開口部112のどちらかの開口部に回り込んでくびれ部11を通過してボトル本体1の底まで落下する。このように、ラムネ球3がくびれ部11で、1乃至数回クッションして落下することから、落下速度、落下の衝撃を緩和することができ、内容物である炭酸飲料の泡立ちを抑制することができる。
【0023】
また、くびれ部11は、ラムネ球3を保持するのではなく、一旦クッションさせたのち底部まで落下させる構造であるため、狭窄部113を除きラムネ球3が通過する程度の緩い狭窄でよく、くびれ部11全体をラムネ球3の通過を阻止するほどの深い狭窄にする必要がない。このため、この狭窄部の強度維持が容易になるとともに、ボトル詰炭酸飲料の製造工程において、炭酸飲料をボトルに充填するときボトル下部13への充填が容易になり、製造効率を向上させることが可能になる。また、ボトルの外観デザインの自由度が高くなる。
【0024】
飲用者がこのボトルの右または左の側面から飲用すれば、底まで落下したラムネ球3はくびれ部11の狭窄部113に阻止されて開口部10まで戻ってくることが少なく、飲用中にラムネ球3で開口部10が閉じられてしまうという煩わしさが軽減される。
【0025】
また、くびれ部11で仕切られたボトル本体1の上部12、下部13は、その最大径が同じである。一般的にラムネボトルは上部の最大径が下部の最大径よりも小さい場合が多いが、この実施形態の場合、くびれ部11のくびれがラムネ球3が通過できる程度に緩いため、デザインを損なうことなく、ボトル上部12の最大径を下部13と同じにすることができる。ボトル上部12、ボトル下部13の最大径を同じにしたことにより、自動販売機による販売適正が向上する。すなわち、自動販売機内のラックに横向きに積み上げたとき傾くことなく真っ直ぐ積みあがり、商品取り出し口へ転がり出るときも曲がることなく真っ直ぐ転がる。
くびれ部11の位置は、容量250ml、高さ180mmのボトルの場合、80〜120mm程度が好ましい。
【0026】
図6は、くびれ部11の他の実施形態を示すA−A端面図である。この実施形態では、くびれ部11は、円と長方形が組み合わされた略鍵穴形を成している。ボトル本体1の前部(図4において下部)側に形成された狭窄部115は、ラムネ球3が通過できない幅の長方形形状であり、後部(図4において上部)側に形成された開口部116は、図7に示すように、ラムネ球3が通過できる大きさに開口している。
【0027】
この構造により、図8に示すように、開栓によって上方から落下してきたラムネ球3は、狭窄部115上方の傾斜部14または狭窄部115に掛かって落下が停止し、そののち後部の開口部116に回り込んでくびれ部11を通過してボトル本体1の底まで落下する。
【0028】
この形状であれば、飲用者がこのボトルの正面から飲用したとき、底まで落下したラムネ球3がくびれ部11の狭窄部115に阻止されて開口部10まで戻ってこないため、ボトル正面からの飲用が可能になる。
【0029】
球状栓部材であるラムネ球3は、従来と同様にガラス球を用いることができる。また、PET(ポリエチレンテレフタレート)やポリスチレン等の樹脂球をもちいてもよい。PETの比重は1.27〜1.40程度、ポリスチレンの比重は1.05〜1.07程度であり、ガラス(比重2.5程度)に比べて1に近い。このため、これらの樹脂球をラムネ球3として用いることにより、開栓時にラムネ球3が炭酸飲料内をゆっくり落下し、衝撃による泡立ちを少なくすることが可能になる。
また、ボトル本体1にPETを用いた場合、PET製のラムネ球3を用いれば、ボトル本体1内にラムネ球3を残留させたまま分別リサイクルできる。
【0030】
図9は、ラムネ球3の外観例を示す図である。このように、ラムネ球3に絵、文字、模様等の外観意匠を施してもよい。このようにラムネ球3に外観意匠を施すことにより、開栓時に回転しながら落下するラムネ球3を見て楽しむことが可能であるとともに、飲用し終わった後にボトル本体1の内部でラムネ球3を転がして楽しむことができる。
【0031】
なお、上記実施形態では、くびれ部の内面形状として、略8字形状および略鍵穴形状を例示したが、くびれ部の形状は阻止部と連通部を有する形状であれば上記に限定されない。また、本発明のクッション部は、くびれ部に限定されず内部にプレート(いわゆる邪魔板)等を挿入して形成してもよい。
なお、この実施形態では、ラムネ飲料、サイダー等の炭酸飲料用のボトルとして本発明を説明したが、本発明のボトルを他の飲料用容器に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態であるラムネボトルの施栓状態の正面図である。
【図2】同ラムネボトルの施栓状態の正面断面図である。
【図3】同ラムネボトルのくびれ部の端面図である。
【図4】同くびれ部をラムネ球が通過している状態を示す断面図である。
【図5】同ラムネボトル内におけるラムネ球の落下の形態を示す図である。
【図6】同ラムネボトルのくびれ部の他の実施形態の端面図である。
【図7】同くびれ部をラムネ球が通過している状態を示す断面図である。
【図8】同ラムネボトル内におけるラムネ球の落下の形態を示す図である。
【図9】外観意匠を施したラムネ球の例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1 容器本体
2 キャップ
3 ラムネ球
10 開口部
11 くびれ部
12 (ボトル本体の)上部
13 (ボトル本体の)下部
14 傾斜部
15 ディンプル
111、112、116 開口部
113、116 狭窄部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を上端に有するボトル本体と、
前記開口部を封止し、押し込みにより前記ボトル本体内部に落下する球状栓部材と、
を有する炭酸飲料用ボトル容器において、
前記ボトル本体の前記開口部と底部との間に、前記球状栓部材の落下を一旦受け止める阻止部と前記球状栓部材が通過可能な開口である連通部からなるクッション部が形成されていることを特徴とする炭酸飲料用ボトル容器。
【請求項2】
前記クッション部は、前記ボトル本体の側面を内面側に変形させたくびれ部により形成されている請求項1に記載の炭酸飲料用ボトル容器。
【請求項3】
前記くびれ部は、前記ボトル本体の対向する側面を内面側に変形させ、該対向する2側面間の隙間の寸法が、中央部は球状栓部材の直径よりも小さく、片側または両側の外周部は球状栓部材の直径よりも大きい形状である請求項2に記載の炭酸飲料用ボトル容器。
【請求項4】
前記ボトル本体の前記クッション部よりも上部の最大外径が、前記クッション部よりも下部の最大外径と同じである請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の炭酸飲料用ボトル容器。
【請求項5】
前記球状栓部材が、比重1以上の樹脂製である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の炭酸飲料用ボトル容器。
【請求項6】
前記球状栓部材は、絵、文字、模様等の意匠が施されている事を特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の炭酸飲料用ボトル容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−89817(P2010−89817A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260567(P2008−260567)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【特許番号】特許第4264848号(P4264848)
【特許公報発行日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(393000375)株式会社日本サンガリアベバレッジカンパニー (8)
【Fターム(参考)】