説明

点字付光記録媒体の製造方法

【課題】 光記録媒体に、所望の高さの点字を形成する。
【解決手段】 基板及び光により記録又は再生が可能な記録再生機能層を備える光記録媒体2の、上記記録再生機能層に対して上記光が入射する面4とは反対側の面5に、硬化性樹脂をスクリーン印刷により複数回印刷して点字3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光記録媒体の製造方法に関し、特に、点字が形成された点字付光記録媒体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光記録媒体の情報読取面(情報記録再生面)とは反対側の面(印刷面)には、通常、媒体の種類、情報記録容量、メーカー名、商品名などの様々な情報を表わすための記号(以下適宜、「レーベル」という)が印刷され、これにより、使用者が当該情報を認識できるようになっている。しかし、視覚に何らかの障害を有する視覚障害者は、上記の印刷面に表示されたレーベルを認識することができないことがあった。なお、ここで言う「視覚障害者」には、目が全く見えない者以外に、乱視、弱視、近視、遠視、色盲、老眼など、上記印刷面のレーベルを認識できない程度に視力に何らかの障害を有している者のことを指し、高齢者などを含めて広義の者を表わすものとする。
【0003】
上記のようなケースに対応するため、特許文献1,2には、印刷面に点字を設けることが提案されている。また、特許文献1においては、インクジェット印刷により点字を形成する技術が記載されている。さらに、特許文献2においては、印刷面に発泡体を含有した発泡層を形成し、発泡層内の発泡体を発泡させて点字を形成する技術が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−158099号公報
【特許文献2】特開2004−213795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、発明者等の検討によれば、点字の高さは0.15mm程度であっても識読可能であり、むしろ、光記録媒体に点字を設ける場合にあっては、製造上及び識読のためには0.15mm程度の高さが好適であることがわかった。但し、いずれにしても、識読可能な点字や凹凸部等を光記録媒体に設けようとした場合、その部分にはある程度の高さで形成することが必要となる。
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載されたような従来の方法では、上記のように識読可能な程度の高さに点字を形成することは容易ではない。
本発明は上記の課題に鑑みて創案されたもので、所望の高さの点字を形成することができるようにした、点字付光記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、光記録媒体の印刷面に、複数回のスクリーン印刷により硬化性樹脂を印刷することにより、所望の高さの点字を的確に形成することが可能であることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、本発明の要旨は、基板及び光により記録又は再生が可能な記録再生機能層を備える光記録媒体の、前記記録再生機能層に対して前記光が入射する面とは反対側の面に、複数回のスクリーン印刷により硬化性樹脂を印刷して、前記光記録媒体に点字を形成する工程を有することを特徴とする、点字付光記録媒体の製造方法に存する(請求項1)。
【0009】
このとき、前記印刷を行なう際において、スクリーン印刷を行なう度に印刷された硬化性樹脂を硬化させることが好ましい(請求項2)。
【0010】
また、各スクリーン印刷においては、点字の各点を構成する硬化性樹脂の印刷領域の大きさが、略同一になるように印刷を行なうことが好ましく(請求項3)、前記スクリーン印刷の度に順次大きくなるように印刷を行なっても好ましく(請求項4)、前記スクリーン印刷の度に順次小さくなるように印刷を行なっても好ましい(請求項5)。
【0011】
さらに、前記印刷は、2回又は3回のスクリーン印刷で行なうことが好ましい(請求項6)。
【0012】
また、前記硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂を用いることが好ましい(請求項7)。
【0013】
さらに、前記点字付光記録媒体の製造方法は、前記光記録媒体の、前記記録再生機能層に対して前記光が入射する面上に、ハードコート層を形成する工程を有することが好ましい(請求項8)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の点字付光記録媒体の製造方法によれば、所望の高さの点字を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明するが、本発明は以下の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
図1〜図12は本発明の一実施形態としての点字付光記録媒体の製造方法について説明するもので、図1は本実施形態の製造方法により得られる点字付光記録媒体の模式的な断面図、図2は本実施形態で用いる光記録媒体の記録再生機能層の層構成を説明する模式的な断面図、図3は本実施形態の製造方法により得られる点字付光記録媒体の模式的な平面図、図4は点字の印刷の様子を説明するための模式的な断面図、図5は点字の印刷の様子を説明するための模式的な断面図、図6は点字の印刷の様子を説明するための模式的な断面図、図7は本実施形態の製造方法により得られる点字付光記録媒体を積み重ねた場合の模式的な断面図、図8は本実施形態の製造方法に用いる光記録媒体の模式的な断面図、図9は点字形成装置の概要を模式的に示す図、図10は点字形成装置の第1印刷部を説明するための模式的な図、図11は点字形成装置の第1硬化部を説明するための模式的な図、図12は点字形成装置の第2印刷部を説明するための模式的な図である。なお、図1は、図3のA−A’面における断面を図3中左側から見たものを示している。
【0016】
[1.概要]
図1に示すような点字付光記録媒体1を形成する場合、光記録媒体2に点字3を形成する点字形成工程を行なう。この際、点字3を形成する対象である光記録媒体2は、図2に示すように、少なくとも、基板21及び光により記録又は再生が可能な記録再生機能層22を備える媒体である。
【0017】
また、点字形成工程では、光記録媒体2の、上記記録再生機能層22に対して上記光が入射する面(即ち、情報記録再生面)4とは反対側の面(即ち、印刷面)5に、硬化性樹脂をスクリーン印刷により複数回印刷して、点字3を形成する。
また、点字付光記録媒体1には、適宜、図3に示すようなレーベル6や、図1に示すような記号部7、スペーサ部8,9、突起部10、ハードコート層11なども形成される。
【0018】
[2.光記録媒体]
まず、点字3を形成する対象となる光記録媒体2について説明する。
光記録媒体2は、図2に示すように、基板21と、光による記録又は再生が可能な記録再生機能層22とを有する。そして、図1に示すように、上記の記録又は再生のための光が入射する情報記録再生面4とは反対側に存在する印刷面5に、点字3が形成されるようになっている。
【0019】
[2−1.基板]
基板21の材料としては、通常、適度な加工性と剛性を有するものを任意に用いることができ、例えば、プラスチック、金属、ガラス等を用いることができる。ただし、光記録媒体2が基板面入射型である場合には、基板21の材料として、入射する光に対して透明である光透過性材料が用いられる。一方、光記録媒体2が膜面入射型である場合には、基板21は入射する光に対して透明である必要はない。
【0020】
なかでも、通常は、基板21はプラスチック材料により形成される。プラスチック材料の具体例としては、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、基板21の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0021】
また、基板21の厚さは所定の強度を確保できる限り任意であるが、通常は0.5mm〜1.2mm程度とするのが好ましい。尚、CD型媒体の場合は、通常、厚さがほぼ1.2mmの基板が使用される。また、DVD型媒体の場合は、表面に所定のピットまたはトラッキング用案内溝が形成された厚さがほぼ0.6mmの基板が使用され、記録再生機能層22を挟んで基板21と反対側に厚さがほぼ0.6mmのダミー基板を貼り合わせることにより光記録媒体としての剛性が付与される。
【0022】
また、基板21の表面には、通常、所定のトラックピッチのトラッキング用案内溝(図1では図示省略)が形成されている。トラックピッチは、記録再生光の波長により異なり、CD系光記録媒体では、通常1.5μm〜1.6μmである。また、DVD系光記録媒体では、通常0.7μm〜0.8μmである。青色レーザー用光記録媒体では、通常0.2μm〜0.5μmである。さらに、トラッキング用案内溝の溝深さは特に制限されないが、CD系光記録媒体では、通常10nm〜300nmである。DVD系光記録媒体では、通常10nm〜200nmである。青色レーザー用光記録媒体では、通常10nm〜200nmである。
【0023】
なお、上記の案内溝を基板21に形成する方法に制限は無いが、例えば、プラスチック材料で基板21を形成する場合には、射出成型等により基板21自体の円盤状の形状と基板21の表面の案内溝とを一工程で形成することができる。また、例えば金属、ガラス等で基板21を形成する場合には、基板21の表面に光硬化性または熱硬化性の薄い樹脂層を形成し、その樹脂層に溝を形成するようにする。
【0024】
[2−2.記録再生機能層]
記録再生機能層22は、基板21上に形成された層であり、この記録再生機能層22に光によって情報が記録され、また、この記録再生機能層22に記録された情報が光によって再生される。
なお、本実施形態では、図2に示すように、記録再生機能層22として、後述の「追記型の媒体の例1」で説明する記録再生機能層の一例を用いているが、記録再生機能層の形態は、これに限られるものではない。つまり、記録再生機能層22は、光記録媒体2が、再生専用媒体(ROM媒体)の場合と、一度の記録のみ可能な追記型媒体(Write Once媒体)の場合と、記録消去を繰り返し行える書換型媒体(ReWritable媒体)の場合とにより、それぞれの目的に応じた層構成を採用することができる。また、記録再生機能層22は、記録・再生光の入射方向によって、基板面入射型と、膜面入射型とに分けることができる。
【0025】
(再生専用媒体の例)
光記録媒体が再生専用媒体である場合、記録再生機能層は、通常、反射層及び保護層を有して構成される。
反射層の材料としては、情報の記録及び再生が可能な限り任意のものを用いることができるが、通常は、Al、Ag、Au等の金属又はこれらの合金が用いられる。なお、反射層の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組合せ及び比率で併用してもよい。
【0026】
また、保護層の材料としても、情報の記録及び再生が可能な限り任意のものを用いることができるが、通常は、紫外線硬化性樹脂等が用いられる。また、保護層として、例えば、ポリカーボネート等の樹脂製や金属製等の板状部材を用いる場合もある。
なお、光記録媒体が再生専用媒体である場合、基板面入射型であっても膜面入射型であっても、記録再生機能層の層構成は同一となる。
【0027】
また、光記録媒体が再生専用媒体である場合、記録再生機能層の製造方法も任意である。保護層を紫外線硬化性樹脂等の樹脂材料により形成する場合には、通常、スパッタ法により基板上に反射層を成膜する。次に、反射層上に樹脂材料をスピンコート法等により塗布し、塗布された樹脂材料を硬化させて保護層を形成する。このようにして、記録再生機能層を形成する。また、保護層として板状部材を用いる場合には、通常、これら板状部材を接着剤により反射層上に接着して記録再生機能層を形成する。
【0028】
(追記型の媒体の例1)
光記録媒体が追記型の媒体である場合、それが膜面入射型の媒体であるときには、記録再生機能層は、通常、基板側から、反射層、記録層及び保護層をこの順に設けることによって構成される。ここで、記録層と保護層との間に、無機材料(例えば、ZnS/SiO2)で形成されるバッファー層を設けてもよい。
【0029】
一方、光記録媒体が追記型の媒体である場合、それが基板面入射型の媒体であるときには、記録再生機能層は、通常、基板側から、記録層、反射層及び保護層をこの順に設けることによって得られる。
反射層及び保護層の材料及び形成方法は、それぞれ「(再生専用媒体の例)」で上述したものと同様である。なお、保護層に板状部材を用いる場合には、これら板状部材を接着剤を用いて、記録層、バッファー層又は反射層に接着すればよい。
【0030】
また、光記録媒体が上記追記型の媒体である場合における記録層の材料としては、情報の記録及び再生が可能な限り任意のものを用いることができるが、通常、有機色素が用いられる。このような有機色素としては、例えば、大環状アザアヌレン系色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、ポリメチン系色素(シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素など)、アントラキノン系色素、アズレニウム系色素、含金属アゾ系色素、含金属インドアニリン系色素などが挙げられる。特に含金属アゾ系色素は、耐久性および耐光性に優れているため好ましい。なお、この場合の記録層の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0031】
さらに、光記録媒体が上記追記型の媒体である場合、記録層の形成方法は任意である。ただし、有機色素により記録層を形成する場合は、通常、有機色素を適当な溶媒に溶解させた溶液によるスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート等の塗布方法で記録層を成膜する。この際、使用する溶媒に制限は無いが、例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ溶媒、テトロフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のパーフルオロアルキルアルコール溶媒、乳酸メチル、イソ酪酸メチル等のヒドロキシエチル溶媒が好適に使用される。なお、溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0032】
また、記録層の厚さは、記録方法等により適した膜厚が異なるため、特に限定されないが、十分な変調度を得るために、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上である。但し、記録層に光を透過させる必要がある場合には、記録層の厚さは、通常3μm以下であり、好ましくは1μm以下、より好ましくは200nm以下である。
【0033】
(追記型の媒体の例2)
光記録媒体が追記型の媒体である場合、それが膜面入射型の媒体であるときにおける他の具体例においては、記録再生機能層は、通常、基板側から、反射層、誘電体層、記録層、誘電体層及び保護層をこの順に設けることによって構成される。
一方、光記録媒体が追記型の媒体である場合、それが基板面入射型の媒体であるときにおける他の具体例においては、記録再生機能層は、通常、基板側から、誘電体層、記録層、誘電体層、反射層、及び保護層をこの順に設けることによって構成される。
【0034】
反射層及び保護層の材料及び形成方法は、それぞれ「(再生専用媒体の例)」で上述したものと同様である。なお、保護層に板状部材を用いる場合には、これら板状部材を接着剤を用いて、誘電体層又は反射層に接着すればよい。
【0035】
誘電体層の材料としては、所定の耐熱性や機械的特性を有する限り任意のものを用いることができるが、通常、無機材料(代表的には、ZnS/SiO2)が用いられる。また、誘電体層の形成方法も任意であるが、通常、スパッタリングすることによって形成される。
【0036】
また、光記録媒体が上記のような追記型の媒体である場合、記録層の材料は、情報の記録及び再生が可能な限り任意のものを用いることができるが、通常、無機材料(例えば、Ge・Te、Ge・Sb・Teの様なカルコゲン系合金)が用いられる。また、このとき、記録層の製造方法は任意であるが、通常、スパッタリングによって形成される。さらに、この場合の記録層の膜厚にも制限は無いが、通常1nm〜50nm程度とされる。
【0037】
(書き換え可能型の媒体の例1)
光記録媒体が書き換え可能型の媒体である場合、それが膜面入射型の媒体であるときには、記録再生機能層は、通常、基板側から、反射層、誘電体層、記録層、誘電体層及び保護層をこの順に設けることによって構成される。
一方、光記録媒体が書き換え可能型の媒体である場合、それが基板面入射型の媒体であるときには、記録再生機能層は、通常、基板側から、誘電体層、記録層、誘電体層、反射層及び保護層をこの順に設けることによって構成される。
【0038】
反射層、誘電体層、記録層、及び保護層としては、上記追記型の媒体の例2と同様にすればよい。但し、記録層は、記録・消去を可逆的に行えるような材料とする必要がある。このような材料としては、例えば、SbTe系、GeTe系、GeSbTe系、InSbTe系、AgSbTe系、AgInSbTe系、GeSb系、GeSbSn系、InGeSbTe系、InGeSbSnTe系等の材料が挙げられる。これらの中でも、結晶化速度を高めるために、記録層にSbを主成分とする組成を用いることが好ましい。
【0039】
(書き換え可能型の媒体の例2)
光記録媒体が書き換え可能型の媒体である場合、他の具体例として、光磁気記録媒体(MOディスク)を挙げることもができる。
【0040】
(共通事項:記録再生領域について)
記録再生機能層には、記録再生領域が設定されていて、この記録再生機能層の記録再生領域に、光記録媒体に記録するべきユーザーデータが記録されるようになっている。図1に示すように、記録再生領域12は、通常、記録再生機能層が中心孔を有する平板の環状形状の場合は、内周径よりも大きい内径と外周径よりも小さい外径との範囲内に、ドーナッツ状に設けられる。
【0041】
(共通事項:その他)
なお、光記録媒体2においては、上記「(再生専用媒体の例)」、「(追記型の媒体の例1)」、「(追記型の媒体の例2)」、及び「(書き換え可能型の媒体の例1)」のいずれにおいても、記録容量向上の観点から、記録層を複数設けることも行われる。記録層を複数設ける場合、記録容量を考慮し、記録層の数は、通常2層以上、好ましくは3層以上とする。一方、記録層の数は、通常5層以下とする。
【0042】
[3.点字形成工程]
点字形成工程では、光記録媒体2の印刷面5に、点字3を形成する。この際、点字3は、複数回のスクリーン印刷により硬化性樹脂を印刷して形成する。なお、この際、硬化性樹脂は、硬化性樹脂のみで印刷に使用してもよいが、適宜、溶媒や添加剤などと混合して印刷に使用するようにしてもよい。
【0043】
[3−1.硬化性樹脂]
点字3を形成する硬化性樹脂としては、所望の高さの点字3を形成できる限り任意のもので形成することができる。通常、点字3の形成材料には、硬度が大きい、硬化収縮が小さい、経時変化の少ない、等の特性が求められるため、これらの特性を有する硬化性樹脂を用いることが望ましい。
【0044】
また、硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂等が挙げられるが、いずれを用いるようにしてもよい。ただし、一般的に硬化速度が速く作業性が容易となりやすいため、硬化性樹脂の中でも光硬化性樹脂を用いることが好ましい。
【0045】
一般に、光硬化性樹脂は、樹脂の骨格となる樹脂主成分であるオリゴマー、反応性希釈剤としてモノマー、重合開始剤、添加剤等の混合物からなる。この光硬化性樹脂に上記の硬度が大きい、硬化収縮が小さい、経時変化の少ない、等の特性を備えさせるには、以下の手段を用いればよい。
【0046】
即ち、光硬化性樹脂の硬度を大きくするには、オリゴマーそのものの分子構造を工夫したり、立体的に架橋するように、2官能、3官能またはそれ以上の反応基を有するモノマーを用いたりすればよい。
ただし、上記の多官能モノマー成分は、多すぎると硬化収縮が大きくなる虞がある。これを防ぐために、オリゴマーの構造を工夫したり、各モノマーの組成を調整してバランスをとったりすることが望ましい。
【0047】
さらに、光硬化性樹脂においては、経時変化は、未硬化成分の揮発、分解による腐食成分の発生等によりもたらされる事が多い。このため、経時変化を抑制するためには、混合物の組成、特に重合開始剤の種類、量などを工夫することが望ましい。ただし、この重合開始剤は、樹脂の架橋に組み込まれないので、徐々に揮発(溶出)されることがある。したがって、上記重合開始剤は、必要最低限の量に止めることが好ましい。
【0048】
光硬化性樹脂の例としては、紫外線硬化性樹脂(UV硬化性樹脂)を挙げることができる。また、紫外線硬化性樹脂の例としては、ラジカル系(ラジカル重合型の)紫外線硬化性樹脂、カチオン系(カチオン重合型の)紫外線硬化性樹脂などが挙げられ、いずれも使用することができる。
【0049】
ラジカル系紫外線硬化性樹脂としては、例えば、紫外線硬化性化合物と光重合開始剤とを必須成分として含む組成物が挙げられる。ラジカル系紫外線硬化性化合物との具体例としては、単官能(メタ)アクリレート及び多官能(メタ)アクリレートを重合性モノマー成分として用いることができる。ここで、アクリレートとメタアクリレートとを併せて(メタ)アクリレートと称する。なお、光重合開始剤としては、光開裂型又は水素引き抜き型のものが好ましい。
【0050】
一方、カチオン系紫外線硬化性樹脂としては、例えば、カチオン重合型の光開始剤を含むエポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA−エピクロールヒドリン型、脂環式エポキシ、長鎖脂肪族型、臭素化エポキシ樹脂、グリシジルエステル型、グリシジルエーテル型、複素環式系等が挙げられる。
【0051】
さらに、エポキシ樹脂としては、遊離した塩素及び塩素イオン含有率が少ないものを用いるのが望ましい。具体的な範囲を挙げると、塩素の量は、通常1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下であることが望ましい。なお、カチオン重合型の光開始剤としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩等が挙げられる。
【0052】
上述したものの中でも、点字3の材料としては、ラジカル重合型のアクリル酸エステルを主体とする未硬化の紫外線硬化樹脂を用いることが特に好ましい。
なお、点字3の材料として用いる硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0053】
また、硬化性樹脂の粘度(室温(25±5℃)での粘度)は、通常0.5Pa・s以上、好ましくは1Pa・s以上とすることが望ましい。硬化性樹脂材料の粘度を上記範囲とすれば、硬化性樹脂材料の塗布性が良好となり、点字3の高さ制御が行ないやすくなる。一方、硬化性樹脂材料の粘度(室温(25±5℃)での粘度)の上限は、通常100Pa・s以下、好ましくは50Pa・s以下とすることが望ましい。硬化性樹脂材料の粘度を上記範囲とすれば、一般的に、温度による粘度変化も抑制しやすくなり、実用上好ましい。
【0054】
[3−2.添加剤等]
印刷に際して、硬化性樹脂には、他の物質を混合させてもよい。即ち、硬化性樹脂と他の物質とを混合させて印刷用のインクを用意し、そのインクを光記録媒体2の印刷面5に印刷するようにしてもよい。
【0055】
硬化性樹脂に混合させるものに制限は無く、光記録媒体2の種類や用途に応じて任意であるが、例えば、溶媒や添加剤などが挙げられる。
溶媒としては、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、イソヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、変性アルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アルミ、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、乳酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶媒;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のエーテル系溶媒;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコール系溶媒;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエステル系溶媒;メチレンクロライド、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、水などが挙げられる。
また、添加剤としては、顔料、染料、粒子、潤滑剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤などが挙げられる。
【0056】
[3−3.印刷]
印刷は、スクリーン印刷により行なう。従来行なわれていたインクジェット印刷などでは、仮に複数回印刷を行なったとしても十分な高さを有する点字3の形成が困難である。また、たとえ所望の高さの点字3を形成することができたとしても、印刷に要する時間や回数が大きくなりすぎ、工業的には実現が困難である。
【0057】
また、スクリーン印刷は、複数回、即ち、2回以上行なうようにする。点字3の高さを所望の高さにするためである。具体的な回数は、形成しようとする点字3の高さや使用する硬化性樹脂の種類等に応じて設定すればよいが、通常は2回又は3回である。通常は、2回又は3回のスクリーン印刷を行なえば識読可能な程度の高さの点字3を形成することが可能であり、また、工業的にもこの程度の回数が適切だからである。
【0058】
硬化性樹脂は印刷後に硬化させることになる。例えば、光硬化性樹脂は光を照射することにより硬化させ、熱硬化性樹脂は加熱することにより硬化させる。この際、印刷された硬化性樹脂を、いつ硬化させるかは任意である。したがって、例えば、全ての回数のスクリーン印刷が完了してから硬化性樹脂を硬化させてもよく、また、スクリーン印刷を行なう度に硬化性樹脂を硬化させても良い。ただし、点字3の高さを効率よく伸ばすためには、スクリーン印刷を行なう度に、印刷された硬化性樹脂を硬化させるようにすることが望ましい。
【0059】
さらに、各スクリーン印刷を行なう際において、点字の各点を構成する硬化性樹脂の印刷領域の大きさ(面積)は、形成しようとする点字3の寸法に応じて設定すればよいが、各回で行なうスクリーン印刷における上記印刷領域の大きさは、以下のいずれかのようにすることが望ましい。なお、上記印刷領域とは、印刷の際に印刷する点字の各点に対応するそれぞれの部分のことを指し、その面積は、印刷時に用いるスクリーンに形成されたパターンの面積にほぼ等しくなるのが通常である。
(1)各回における印刷領域の大きさを、略同一にする。
(2)各回における印刷領域の大きさを、各スクリーン印刷の度に順次大きくする。
(3)各回における印刷領域の大きさを、各スクリーン印刷の度に順次小さくする。
【0060】
以下、上記の印刷領域の大きさについて、それぞれ説明する。
まず、上記(1)の場合には、各回において行なうスクリーン印刷の印刷領域の面積を、すべて略同一にする。したがって、例えば印刷を3回行なう場合には、図4に示すように、1回目、2回目及び3回目の各印刷における印刷領域の大きさが、全て略同一になるようにする。これにより、スクリーン印刷の際に同一デザインの印刷用スクリーン(図10の印刷用パターン114参照)を用いることができるという利点を得ることができる。なお、図4において、符号31、32及び33は、それぞれ、1回目、2回目及び3回目の印刷で形成された硬化性樹脂の層を示す。
【0061】
ただし、印刷領域の各面積は略同一であればよいので、各スクリーン印刷で形成されるそれぞれの印刷領域の大きさは、上記の利点を損なわない程度の誤差を有していてもよい。具体的な誤差の範囲としては、各印刷回における印刷領域の直径の誤差が、通常±10%以内、好ましくは±5%以内であればよい。
【0062】
また、上記(2)の場合には、各回において行なうスクリーン印刷の印刷領域の面積を、スクリーン印刷の回数を重ねるごとに順次大きくする。したがって、例えば印刷を3回行なう場合には、図5に示すように、1回目よりも2回目の印刷領域の面積を大きくし、2回目よりも3回目の印刷領域を大きくする。この場合、通常は印刷した硬化性樹脂がたれるために、後で印刷した樹脂が先に印刷した硬化性樹脂を覆うようになる。これにより、各スクリーン印刷の際の位置あわせが行ないやすく、かつ、点字の各ドットが滑らかな略半球形状となりやすいという利点を得ることができる。なお、図5において、符号31、32及び33は、それぞれ、1回目、2回目及び3回目の印刷で形成された硬化性樹脂の層を示す。
【0063】
上記の場合、どの程度の割合で大きくするかは上記の利点を損なわない限り適宜設定することができる。ただし、1回前の印刷における印刷領域の直径に対し、その直後の印刷における印刷領域の直径を大きくする割合は、通常10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上、また、通常50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下とすることが望ましい。なお、各回の印刷において印刷領域を大きくする割合は、一定でもよく、異なっていてもよい。
【0064】
さらに、上記(3)の場合には、各回において行なうスクリーン印刷の印刷領域の面積を、スクリーン印刷の回数を重ねるごとに順次小さくする。したがって、例えば印刷を3回行なう場合には、図6に示すように、1回目よりも2回目の印刷領域の面積を小さくし、2回目よりも3回目の印刷領域を小さくする。これにより、より少ないスクリーン印刷の回数で点字の高さを所望の値にしやすいという利点を得ることができる。なお、図6において、符号31、32及び33は、それぞれ、1回目、2回目及び3回目の印刷で形成された硬化性樹脂の層を示す。
【0065】
上記の場合、どの程度の割合で小さくするかは上記の利点を損なわない限り適宜設定することができる。ただし、1回前の印刷における印刷領域の直径に対し、その直後の印刷における印刷領域の直径を小さくする割合は、通常5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、また、通常50%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下とすることが望ましい。なお、各回の印刷において印刷領域を小さくする割合は、一定でもよく、異なっていてもよい。
【0066】
また、1回の印刷で印刷できる硬化性樹脂の厚みは任意である。通常は、使用する硬化性樹脂の粘度などによってこの厚みは変化するが、通常10μm以上、好ましくは20μm以上、また、通常200μm以下、好ましくは150μm以下である。この範囲の下限を下回ると工業生産上許容されるスクリーン印刷の回数で点字の高さを所望の高さにしにくくなる虞があり、上限を上回るとスクリーン印刷が困難又はスクリーン印刷の速度が遅くなり生産性が低下する虞がある。
【0067】
[3−5.点字]
複数回のスクリーン印刷により、所望の高さを有する点字3を形成することができる。形成される点字3の高さは、触覚による認識が可能な程度とする。
本発明者等が、光記録媒体2の印刷面5上に様々な高さの点字3を形成して視覚障害者に識読してもらったところ、点字付光記録媒体1における点字3の高さは、0.15mm程度が好ましいことがわかった。さらに、0.15mm程度の高さとすれば、点字3を光ディスクの規格で決められたスタックリブ(後述の突起部10の一態様)の高さの範囲内に納めることができる。このため、点字3の具体的な高さは、通常50μm以上、好ましくは70μm以上、より好ましくは100μm以上、また、通常400μm以下である。但し、上述の通り光記録媒体2においては、0.15mm(150μm)程度の高さで点字3を設ければ、製造上も識読上も好ましい。したがって、点字3の高さは、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下、である。光記録媒体としての利便性、識読の可能性、工業生産上の観点から、この範囲が好適だからである。
【0068】
また、点字3の直径にも制限は無く、触覚による認識が可能であれば任意であるが、通常0.5mm以上、好ましくは0.8mm以上、また、通常2.5mm以下、好ましくは2.0mm以下である。光記録媒体としての利便性、識読の可能性、工業生産上の観点から、この範囲が好適だからである。
【0069】
さらに、点字3を形成する位置は、光記録媒体2の印刷面5上であれば任意であり、どの位置に形成してもよい。
【0070】
[4.印刷面に形成できるその他の部位]
点字付光記録媒体1は、図1,3に示すように、その印刷面5に、上記の点字3の他、レーベル6(図1では図示省略)、記号部7、スペーサ部8,9など、その他の部位を有していてもよい。したがって、点字付光記録媒体1を製造する際には、レーベル6を形成するレーベル形成工程、記号部7を形成する記号部形成工程、スペーサ部8,9を形成するスペーサ部形成工程などを行なうことが望ましい。また、これらの部位は、光記録媒体2に点字3を形成する前や後に形成するようにしてもよいが、製造工程を簡略化する観点からは、点字3の形成する際に点字3と共に形成することが好ましい。
【0071】
[4−1.レーベル]
点字付光記録媒体1は、印刷面5に、通常、レーベル6を有している。このレーベル6は、媒体の種類、情報記録容量、メーカー名、商品名などの様々な情報を表わすための記号が印刷面に印刷されたものであり、その色、形状、寸法などに特に制限無く任意のものを用いることができる。ただし、印刷されたレーベル6を視覚障害者が認識しやすくするためには、記号の大きさは大きいほど好ましく、また、その記号部分とその他の地の部分とは色調が大きく異なる色で印刷することが望ましい。
【0072】
また、レーベル6の印刷方法は任意であるが、点字3と同様にスクリーン印刷により形成することも可能である。さらに、レーベル6の形成は、点字3の形成とは別途行なうようにしても良いが、上記の点字3の形成時に点字と共にスクリーン印刷によって形成するようにしてもよい。ただし、点字3とは異なり、レーベル6は高さが必要となれないため、レーベル6をスクリーン印刷する場合には、必ずしも当該印刷を複数回行なう必要は無い。なお、レーベル6を多色刷りする場合には、通常は多色刷りに用いる色毎に2回以上印刷を行なうことが多い。
【0073】
[4−2.記号部]
点字付光記録媒体1は、印刷面5に、適宜、記号部7を有する。記号部7は、その記号部7が有する情報が触覚により識読しうるよう、印刷面5上に、識読させたい記号の形状に合わせて立体的形状を有して形成されたものである。この記号部7は、凹型(即ち、記号部7が形成された部位を、周囲の部位よりも凹ませて形成されたもの)と凸型(即ち、記号部7が形成された部位を、周囲の部位よりも突出させて形成されたもの)とがあるが、点字付光記録媒体1には、どちらを形成してもよい。
【0074】
詳しくは、記号部7は、識読させようとする記号の形状に合わせて、印刷面5に凹凸を形成したものであり、凸部のみで形成されていてもよく、凹部のみで形成されていてもよく、凸部と凹部とを組み合わせて形成されていてもよい。
また、当該凹凸を形成する際、その記号の形状に合わせてどのように凹凸を形成するかも任意であり、例えば、その記号の形状の輪郭部分のみを突出させたり凹ませたりしてもよく、記号の形状全体を突出させたり凹ませたりしてもよい。
【0075】
さらに、記号部7として表示する記号の種類も制限は無く、例えば文字、符号、図形、模様など、その記号部により表わそうとする情報に応じて任意の記号を用いることができる。
【0076】
また、記号部7の大きさは、視覚障害者が識読しうる程度に大きく形成することが望ましい。具体的な大きさはその記号の複雑さの程度などに応じて任意に設定することができるが、当該記号の径(即ち、差し渡しの大きさ)が、通常3mm以上、好ましくは5mm以上、より好ましくは10mm以上であることが望ましい。ただし、記号部10の大きさがあまりに大きすぎると、逆に識読が困難になる虞があるため、通常80mm以下、好ましくは60mm以下、より好ましくは40mm以下とすることが望ましい。
【0077】
さらに、記号部7を形成する際の凹凸の高さ(或いは、深さ)も、当該記号部7が表示する記号を触覚により識読しうる限り任意であるが、通常50μm以上、好ましくは70μm以上、より好ましくは100μm以上、また、通常400μm以下、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。なお、記号部7の高さは、点字3の高さと同様とすることが好ましい。
【0078】
また、記号部7が点字3や後述するスペーサ部8,9にあまりに近いと、それらの点字3やスペーサ部9があたかも記号部7の一部であるかのように認識されて正確な識読が困難となる場合があるため、記号部7は、点字3やスペーサ部9から、通常5mm以上、好ましくは7mm以上、より好ましくは10mm以上離れた位置に形成することが望ましい。
【0079】
さらに、記号部7は点字3に比べて占有する体積が大きく、点字付光記録媒体1の回転時の重量バランスに対して大きい影響を及ぼす可能性がある。したがって、記録又は読み取り時に点字付光記録媒体1の回転を不安定にしないようにする観点からは、記号部7は、点字付光記録媒体1の重心のズレを少なくするように配置することが望ましい。具体的には、ソニーマニュファクチュアリングシステムズ社製のディスクバランスチェッカーDUC−10で測定されるアンバランス(偏重心)量(g・mm)が、通常5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下となるように、記号部7の配置を行う。なお、アンバランス値の下限は、理論上はゼロとなる。
【0080】
さて、この記号部7の形成方法は任意であるが、例えば、点字3と同様にスクリーン印刷によって形成するようにしてもよい。記号部7をスクリーン印刷する際の印刷方法は、点字3について上述したものと同様である。したがって、記号部7を凸型に形成する場合は、所望の高さとなるようにスクリーン印刷を複数回行なうことにより形成することができる。また、記号部7を凹型に形成する場合は、印刷面5の記号部7以外の部位にスクリーン印刷を複数回行なうことにより、記号部7を周囲より凹ませて形成することができる。なお、記号部7を点字3とは別途形成するようにしてもよいが、製造工程を減らす観点からは、上記の点字3の形成時に点字3と共に記号部7も形成することが好ましい。
【0081】
[4−3.スペーサ]
点字付光記録媒体1は、印刷面5に、適宜、点字付光記録媒体1の情報記録再生面4を保護する目的で、スペーサ部8,9を有する。
スペーサ部8,9は、印刷面5に突出して形成された部分である。このスペーサ部8,9は、図7に示すように点字付光記録媒体1,1’同士を情報記録再生面4’と印刷面5とが対向するように重ね合わせた場合に、情報記録再生面4’と、点字3との接触を防止するための部分である。これは、情報記録再生面4’が何らかの物体と接触して傷が付き、情報の記録や再生が不安定になったり、できなくなったりすることを防止することを目的とする。なお、図7においては、上側の点字付光記録媒体1’の各部の符号には、下側の点字付光記録媒体1との区別のため、それぞれ「’」を付して表示している。ここで、スペーサ部8,9があったとしても、情報記録再生面4’と印刷面5とは瞬間的に接触する場合がありうる。このため、本発明においては、情報の記録や再生に影響を与えない上記のような瞬間的な接触は当然に許容される。
【0082】
したがって、スペーサ部8,9は、上記の接触を防止できる程度の高さに形成することになる。例えば、スペーサ部8,9は、点字3よりも高く形成して、当該点字3と情報記録再生面4’とが接触しないようにすればよい。但し、スペーサ部8,9の高さは、後述する突起部10を用いる場合と用いない場合とで異なる値をとる。つまり、突起部10を用いる場合は、スペーサ部8と突起部10との合計の高さを、点字3の高さよりも高くすることが好ましい。一方、突起部10を用いない場合には、スペーサ部8の単独の高さを点字3の高さよりも高くすることが好ましい。
【0083】
具体的には、突起部10及びスペーサ部8,9を用いる場合は、突起部10及びスペーサ部8の合計の高さ並びにスペーサ部9の高さそれぞれを、通常200μm以上、好ましくは300μm以上、より好ましくは350μm以上として形成する。スペーサ部8,9を単独で用いる場合には、スペーサ部8,9の高さを、通常200μm以上、好ましくは300μm以上、より好ましくは350μm以上として形成する。また、特に、点字3の高さよりも通常50μm以上、好ましくは100μm以上、より好ましくは200μm以上、高く形成することが望ましい。
【0084】
また、スペーサ部8,9を形成する位置は印刷面5上であれば他に制限は無く任意である。通常は、記録再生領域12の内側に形成されるが、上述した情報記録再生面4’と点字3との接触を防止する観点からは、スペーサ部8,9を、記録再生領域12の外側に形成することも望ましい。点字付光記録媒体1,1’を積み重ねた場合、上側の点字付光記録媒体1’の外縁がたわむことにより上記の接触が生じやすくなるが、記録再生領域121の外側にスペーサ部9を形成して点字付光記録媒体1’の外縁を支えるようにすることで、記録再生領域12を上記の接触から保護することが可能となる。また、同様の観点から、スペーサ部8,9は、記録再生領域12の内側及び外側の少なくとも一方に形成することが好ましいが、記録再生領域12の内側及び外側の両方に形成することがより好ましい。
【0085】
さて、このスペーサ部8,9の形成方法は任意であるが、例えば、点字3と同様にスクリーン印刷によって形成するようにしてもよい。スペーサ部8,9をスクリーン印刷する際の印刷方法は、点字3について上述したものと同様である。したがって、スペーサ部8,9を形成する場合は、所望の高さとなるようにスクリーン印刷を複数回行なうことにより形成することができる。なお、スペーサ部8,9を点字3とは別途形成するようにしてもよいが、製造工程を減らす観点からは、上記の点字3の形成時に点字と共にスペーサ部8,9も形成することが好ましい。
【0086】
[5.情報記録再生面に形成できるその他の部位]
点字付光記録媒体1は、その情報記録再生面4にも、適宜、様々な部位を形成することができる。例えば、突起部10や、ハードコート層11を形成することができる。したがって、点字付光記録媒体1を製造する際には、突起部10を形成する突起部形成工程や、ハードコート層11を形成するハードコート層形成工程を行なうことが望ましい。また、これらの部位は、光記録媒体2に点字3を形成する前と後の何れで形成するようにしてもよい。
【0087】
[5−1.突起部]
情報記録再生面4には、図7に示すように点字付光記録媒体1,1’同士を情報記録再生面4’と印刷面5とが対向するように重ね合わせた場合に、スペーサ部8,9と当接しうる位置に突起部10を形成することが好ましい。これにより、点字付光記録媒体1,1’を積み重ねた場合に、突起部10とスペーサ部8とが当接し、情報記録再生面4’と点字3との接触をより確実に防止することができるようになる。
【0088】
なお、突起部10を形成する具体的な位置は、光記録媒体2を挟んでスペーサ部8が形成された部分のちょうど反対側の位置とすることが望ましい。通常は、スペーサ部8は点字付光記録媒体1の記録再生時の安定性のために同心円上に位置するように形成されるので、突起部10も、情報記録再生面4の上記の同心円上の位置に形成することが望ましい。
【0089】
また、図7のように点字付光記録媒体1,1’を積み重ねた場合に上記の接触を防止することができるのであれば、突起部10の形状に制限は無い。したがって、当接するスペーサ部8と同様の形状に形成してもよいが、積み重ねた場合の点字付光記録媒体1の周方向の位相によらず確実にスペーサ部8と突起部10とが当接しうるよう、突起部10は円環形状に形成することが望ましい。
【0090】
さらに、突起部10の寸法にも制限は無く任意である。例えば、上記の接触を確実に防止すべく、突起部10の高さはスペーサ部8と同様に形成してもよい。
また、突起部10の形成方法は任意であり、例えば射出成形によって基板21を一体として形成することができる。また、突起部10は、スクリーン印刷などの印刷手段を用いて形成してもよい。この場合、突起部10の形成工程は、点字形成工程の前に行なってもよく、点字形成工程の後に行なっても良い。
【0091】
[5−2.ハードコート層]
情報記録再生面4には、情報記録再生面4が傷つくことを防止するため、適宜、ハードコート層11を形成することが好ましい。点字3を識読する際、視覚障害者は、点字付光記録媒体1の表裏が明確には分からないため、通常、情報記録再生面4と印刷面5とを両方とも指触する。この際、情報記録再生面4には傷や指紋などがつきやすいため、ハードコート層11により情報記録再生面4を保護することが望ましい。
【0092】
ハードコート層11は、記録再生機能層4への記録又は再生に用いる光の透過を許容しつつ、情報記録再生面4が傷つくことを防止できれば任意のものを用いることができる。このようなハードコート層11としては、例えば、光硬化性樹脂中に無機フィラーを含有させた材料を塗布、硬化させることによって得ることができる。より具体的には、例えば特開2004−272993号公報に記載のハードコート層を適用することができる。
【0093】
また、ハードコート層11は少なくとも情報記録再生面4の記録再生領域12に対応する部位、即ち、記録再生領域12の情報の記録又は再生のための光が透過する部位に形成することが望ましい。記録又は再生を安定して行なえるようにするためである。
【0094】
なお、ハードコート層11の形成方法は任意であるが、例えば、ハードコート層11の材料をスピンコート法により情報記録再生面4に塗布し、当該材料を硬化させればよい。また、ハードコート層11の形成工程は、点字形成工程の前に行なっても良く、点字形成工程の後に行なっても良い。
【0095】
[6.製造方法の具体例]
以下、点字形成装置の一例を示して、点字付光記録媒体1の製造方法についてより具体的に説明する。
まず、点字3を形成する対象となる光記録媒体2について説明する。ここで用いる光記録媒体2は、図8に示すように、中央に表裏を貫通するセンターホール13を形成された円板形状の光記録媒体である。また、この光記録媒体2に、図中下方から情報記録再生面4に情報の記録又は再生のための光が照射され、光記録媒体2内の情報の記録又は再生ができるようになっている。
【0096】
また、この光記録媒体2は、図2に示すように、光透過性材料からなる基板21と、基板21の表面に形成された記録再生機能層22とを有していて、記録再生機能層22は、有機色素を含む記録層221と、例えば、Ag、Al等の金属からなる反射層222と、紫外線硬化性樹脂等から形成されている保護層223とが、順番に積層された構造を有しているものとする。
【0097】
そして、この記録再生機能層22には、記録又は再生のためのレーザー光が、所定の開口数(NA)を有する対物レンズ(図示省略)を介して照射されるようになっている。このような記録再生機能層22を有する光記録媒体2では、レーザー光が入射する側の面が情報記録再生面4となり、その反対側の面が印刷面5となる。
また、この光記録媒体2には、図8に示すように、内周径よりも大きい内径と外周径よりも小さい外径との範囲内に、ドーナッツ状に記録再生領域12が設けられているものとする。
【0098】
また、この光記録媒体2には、情報記録再生面4の内縁部の、点字3形成後の点字付光記録媒体1,1’を積み重ねた場合にスペーサ部8(図1参照)と当接しうる位置に、円環形状の突起部10を形成してあるものとする。さらに、光記録媒体2の情報記録再生面4にはハードコート層11が形成されているものとする。
【0099】
上記のような光記録媒体2に対して点字3を形成するため、ここでは、図9に示す点字形成装置101を用いる。
点字形成装置101は、搬送装置102によって搬送されてきた光記録媒体2を取り込み、点字3をスクリーン印刷により形成して点字付光記録媒体1を製造し、再び搬送装置102に送り出すものである。さらに、なお、この点字形成装置101では、印刷を2回行なうものとするが、実際には、適宜、所望の高さの点字3が形成できる回数だけ印刷を行なうようにする。
【0100】
また、この点字形成装置101では、点字3の形成と共に、レーベル6、記号部7及びスペーサ部8,9の形成も行なうようになっている。さらに、ここでは点字3、レーベル6、記号部7及びスペーサ部8,9は、いずれも紫外線硬化性樹脂により形成するが、これ以外の硬化性樹脂によって形成するようにしてもよい。
【0101】
点字形成装置101は、搬送装置102から光記録媒体2を取り込む取込部103と、1回目のスクリーン印刷を行なう第1印刷部104と、第1印刷部104で印刷された紫外線硬化性樹脂を硬化させる第1硬化部105と、2回目のスクリーン印刷を行なう第2印刷部106と、第2印刷部106で印刷された紫外線硬化性樹脂を硬化させる第2硬化部107と、点字3の形成後の光記録媒体2(即ち、点字付光記録媒体1)を搬送装置102に送り出す送出部108と、取込部103で取り込んだ光記録媒体2を第1印刷部104、第1硬化部105、第2印刷部106、第2硬化部107及び送出部108の順に移動させるディスク移動装置109とを備えている。
【0102】
また、第1印刷部104には、図10に示すようなスクリーン印刷具110が設けられている。このスクリーン印刷具110は、枠体111に張設された印刷用スクリーン112と、印刷用スクリーン112に紫外線硬化性樹脂Pを押し伸ばすためのスキージ113とを備えて構成されている。また、印刷用スクリーン112には、光記録媒体2の印刷面5に印刷するべき点字3、レーベル6、記号部7及びスペーサ8,9の形状に合わせて開口された印刷用パターン114が形成されていて、スキージ113で紫外線硬化性樹脂Pを印刷用スクリーン112に押し伸ばすことにより、印刷用パターン114を通って光記録媒体2上に紫外線硬化性樹脂Pが供給され、スクリーン印刷が行なわれるようになっている。
【0103】
さらに、第1印刷部104のスクリーン印刷具110の下部には、光記録媒体2を載置するための印刷台115が設置されている。この印刷台115は、ディスク移動装置109により運ばれてきた光記録媒体2を真空吸引などにより固定して、正確な印刷ができるようにするためのものである。
【0104】
また、第1硬化部105には、図11に示すように、紫外線硬化性樹脂Pを硬化させるための光源116が設けられていて、この光源116から光記録媒体2上の紫外線硬化性樹脂Pに紫外線を照射することにより、紫外線硬化性樹脂Pが硬化するようになっている。
【0105】
第2印刷部106も、図12に示すように、第1印刷部104と同様の構成を有するスクリーン印刷具110’を備えている。ただし、レーベル6を単色刷りする場合には、通常、レーベル6は複数回印刷する必要は無いため、スクリーン印刷具110’においては、印刷用パターン114’にレーベル6に対応したパターンは必ずしも必要ではない。本例においても、第2印刷部106に設けられたスクリーン印刷具110’の印刷用パターン114’には、レーベル6に対応したパターンは形成していないものとする。ただし、所定の高さを要求される点字3、記号部7及びスペーサ部8,9のためのパターンは、もちろん形成されている。なお、図12において、図10と同様の部位は、図10と同様の符号を用いて示す。
【0106】
また、ここでは、点字3に対応したパターンの大きさは、点字の各点を構成する紫外線硬化性樹脂の印刷領域の面積を、第1印刷部104における1回目のスクリーン印刷で形成される上記印刷領域の面積と同一にできるよう、スクリーン印治具110と同様に形成されているものとする。ただし、点字3の2回目のスクリーン印刷に用いるパターンの大きさは、上述したように、2回目の上記印刷領域の面積を順次大きくするべく1回目より大きくしたり、2回目の上記印刷領域の面積を順次小さくするべく1回目より小さくしたりしてもよい。
【0107】
さらに、第2印刷部106のスクリーン印刷具110’の下部にも、光記録媒体2を載置するための印刷台117が設置されている。この印刷台117も、ディスク移動装置109により運ばれてきた光記録媒体2を真空吸引などにより固定できるようになっている。ただし、この印刷台117に光記録媒体2が載置される際には、第1印刷部104において印刷された印刷面5上の紫外線硬化性樹脂の真上に、第2印刷部106による紫外線硬化性樹脂の印刷ができるよう、光記録媒体2の位置が調整されて載置されるようになっている。または、第1印刷部104において印刷された印刷面5上の紫外線硬化性樹脂の真上に、第2印刷部106による紫外線硬化性樹脂の印刷ができるように、印刷台117の調整の代わりに、スクリーン印刷具110’の位置を適宜調整してもよい。
【0108】
また、第2硬化部107は、第1硬化部105と同様に構成されている。したがって、第2印刷部106で印刷された紫外線硬化性樹脂は、第2硬化部107で硬化されるようになっている。
【0109】
したがって、この点字形成装置101を用いて点字3の形成を行なう場合は、以下のような手順により印刷が行なわれる。
まず、図9のように、搬送装置102から取込部103が光記録媒体2を取り込み、ディスク移動装置109がそれを第1印刷部104にまで運ぶ。
【0110】
第1印刷部104に運ばれた光記録媒体2は、図10のように印刷台115上に載置され、固定される。そして、スクリーン印刷具110により、光記録媒体2の印刷面5上に開口された印刷用パターン114に合わせて印刷が行なわれる。
こうして1回目の印刷が行なわれた光記録媒体2は、ディスク移動装置109によって第1硬化部105に運ばれる。第1硬化部105では、図11のように、光記録媒体2上に印刷された紫外線硬化性樹脂に紫外線が照射され、紫外線硬化性樹脂を硬化させる。
【0111】
その後、光記録媒体2はディスク移動装置109によって第2印刷部106に運ばれ、図12のように、可動印刷台117に載置される。ここで、第1印刷部104により印刷された紫外線硬化性樹脂上にスクリーン印刷具110’によって印刷ができるように、可動印刷台117やスクリーン印刷具110’が予め位置調整されているか、又は、第2印刷部106でのスクリーン印刷の都度、印刷台117やスクリーン印刷具110’の位置調整が行なわれる。そして、スクリーン印刷具110’による印刷が行なわれ、点字3並びに記号部7及びスペーサ8,9は、十分な高さに形成されることになる。
【0112】
上記のようにして2回目の印刷が行なわれた光記録媒体2は、ディスク移動装置109によって第2硬化部107に運ばれ、紫外線を照射されて、印刷された紫外線硬化性樹脂を硬化させられることになる。これにより、光記録媒体2に点字3が形成され、点字付光記録媒体1が得られる。
そして、得られた点字付光記録媒体1は、移動装置109によって送出部108に送られ、送出部108によって搬送装置102に送り出される。
【0113】
以上のようにして、図1及び図3に示すような点字付光記録媒体1を得ることができる。この点字付光記録媒体1は、印刷面5に、単色刷りのレーベル6と、識読可能な十分な高さを有する点字3及び記号部7と、接触防止用のスペーサ部8,9とが形成されている。そして、点字3及び記号部7は、スクリーン印刷による複数回の印刷によって識読可能な充分な高さに形成されるため、確実に、触覚により識読が可能である。
【0114】
また、この点字付光記録媒体1の記号部7は、図3に示すように、レーベル6よりも大きく形成されている。これにより、レーベル6を読むことができなかった視覚障害者であっても、障害の程度によっては、視覚により当該記号部7を読み取ることも可能になっている。
【0115】
さらに、得られた点字付光記録媒体1の印刷面5においては、記録再生領域12よりも内側(即ち、点字付光記録媒体1の内縁部)に三角形のスペーサ部8が4箇所形成され、また、記録再生領域6よりも外側(即ち、光記録媒体1の外縁部)に点字付光記録媒体1の外周形状に沿った弧状のスペーサ部9が4箇所形成されている。したがって、積み重ねた場合の情報記録再生面4と点字3との接触を確実に防止できるようになっている。
【0116】
さらに、これらのスペーサ部8,9は、それぞれ同じ形状に形成され、対向するスペーサ部8,9同士が点字付光記録媒体1の記録再生時の回転中心に対して点対称となっている。したがって、これらのスペーサ部8,9は、いずれも、記録や再生の際に点字付光記録媒体1を回転させても、点字付光記録媒体1の回転を不安定にさせることはないようになっている。
【0117】
また、この点字付光記録媒体1は突起部10を備えているため、上記の情報記録再生面4と点字3との接触をより確実に防止することが可能である。
さらに、この点字付光記録媒体1は、情報記録再生面4にハードコート層11を有しているため、積み重ねたときや、識読するときなどに情報記録再生面4が傷つくことを、より確実に防止することができる。
【0118】
[7.効果]
以上のように、本実施形態の点字付光記録媒体の製造方法によれば、硬化性樹脂を複数回のスクリーン印刷により印刷することにより、所望の高さの点字3を有する点字付光記録媒体1を得ることができる。したがって、点字3を、確実に識読できる程度の高さに形成し、視覚障害者であっても当該点字付光記録媒体1に関する情報等を把握できるようになる。また、暗所などでの上記点字付光記録媒体1に関する情報の把握が可能となる。
【0119】
さらに、点字3の形成の際に、印刷を行なう度に印刷された硬化性樹脂を硬化させることにより、点字3の高さをより効率よく高くすることが可能となる。
また、上記の印刷の回数を2回又は3回とすることにより、工業上有利に点字付光記録媒体1を製造することができる。
【0120】
さらに、硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を使用したことにより、工業上有利に点字付光記録媒体1を製造することができる。
また、点字付光記録媒体1の情報記録再生面4にハードコート層11を形成すれば、積み重ねたときや、識読するときなどに情報記録再生面4が傷つくことを、より確実に防止することができる。
【0121】
[8.その他]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
例えば、上記実施形態では識読部は凸型(突出した形状)に形成したが、凹型(凹んだ形状)に形成しても、視覚障害者が触覚により識読することは可能である。この変形例について説明すると、例えば、図13に示すような光記録媒体1”を形成するようにしてもよい。
【0122】
図13の光記録媒体1”は、ベース層14が、記号部7”を囲むように印刷面5に印刷されることにより、記号部7”が凹型に形成されているほかは、上記実施形態で説明した光記録媒体1と同様に構成されている。即ち、光記録媒体1”においては、点字3、スペーサ部8,9はいずれも、光記録媒体2上に直接形成されていて、記号部7”は、上記実施形態の記号部7と同様の位置にベース層14が凹むことにより形成されている。この場合も、記号部7”ではベース層14との間に立体的な段差が形成されるため、視覚障害者は識読が可能である。なお、図13において、図1と同様の部位は、図1と同様の符号で示すものとする。
【0123】
また、例えば、上記実施形態では点字3や記号部7により視覚障害者が点字付光記録媒体1に関する情報を指触して認識できるように形成したが、これに加え、視覚障害者が視覚的に認識可能な大きさの記号等を2次元的に印刷しても、視覚障害者の障害の程度によっては、同様に視覚障害者は点字付光記録媒体1に関する情報を認識できる。
【0124】
また、上記の点字形成装置101はあくまで一例であり、他の装置により点字付光記録媒体1を製造するようにしてもよい。例えば、上記実施形態では印刷を2回行なう例を示したが、3回以上印刷を行なうようにしても良い。
さらに、光記録媒体2の層構成も任意であり、上述した層以外の層を備えていてもよい。
【0125】
また、外縁部に形成されたスペーサ部9に対応した突起部を、情報記録再生面4に形成するようにしてもよい。
さらに、上述した以外の構成部を組み合わせて点字付光記録媒体を形成してもよい。
また、レーベル6、識読部7、スペーサ8,9などは、上記の点字形成工程とは別の工程で形成するようにしてもよい。
さらに、情報記録再生面4に形成される突起部10やハードコート層11は、点字3の形成後に点字付光記録媒体1に形成するようにしてもよい。
【実施例】
【0126】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
点字形成用のインクとして、十条ケミカル社製UV硬化インク、レイキュアGA4100RL−Dメジウム(紫外線硬化型のインク)を用いた。そして、以下のようにして点字を形成した。
つまり、市販のCD−R(三菱化学メディア(株)社製)の印刷面上に、上記インクを、100メッシュ、乳剤厚100μmのスクリーンを用いてスクリーン印刷を行った後、塗布したインクに紫外線を照射して硬化させた。この操作を3回繰り返して点字を形成した。なお、各スクリーン印刷の際のドットサイズ(印刷領域の直径)は、表−1の通りである。また、最終的に得られた点字の平均高さ、点字の形状も表−1に示す。
【表1】

【0127】
表−1より、点字の高さを高くする点からは、ドットサイズ(印刷領域の直径)を、スクリーン印刷毎に徐々に小さくしてくことが好ましいことがわかる。一方、点字の形状をスムースにする観点からは、ドットサイズ(印刷領域の直径)を、スクリーン印刷毎に徐々に大きくしてくことが好ましいことがわかる。また、点字の形状と点字の高さのバランスをとる観点からは、ドットサイズ(印刷領域の直径)を、スクリーン印刷毎に略同一とすることが好ましいことがわかる。このように、得たい点字の高さや形状に従い、スクリーン印刷毎のドットサイズ(印刷領域の直径、換言すれば印刷領域の大きさ)を適宜制御すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の光記録媒体は、CD、DVD、青色レーザ対応の次世代の光記録媒体等の各種の光記録媒体の分野において、好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の一実施形態としての点字付光記録媒体の製造方法により得られる点字付光記録媒体の模式的な断面図である。
【図2】本発明の一実施形態で用いる光記録媒体の記録再生機能層の層構成を説明する模式的な断面図である。
【図3】本発明の一実施形態としての点字付光記録媒体の製造方法により得られる点字付光記録媒体の模式的な平面図である。
【図4】本発明の一実施形態としての点字付光記録媒体の製造方法において、点字の印刷の様子を説明するための模式的な断面図である。
【図5】本発明の一実施形態としての点字付光記録媒体の製造方法において、点字の印刷の様子を説明するための模式的な断面図である。
【図6】本発明の一実施形態としての点字付光記録媒体の製造方法において、点字の印刷の様子を説明するための模式的な断面図である。
【図7】本発明の一実施形態としての点字付光記録媒体の製造方法により得られる点字付光記録媒体を積み重ねた場合の模式的な断面図である。
【図8】本発明の一実施形態としての点字付光記録媒体の製造方法に用いる光記録媒体の模式的な断面図である。
【図9】本発明の一実施形態としての点字付光記録媒体の製造方法で用いる点字形成装置の概要を模式的に示す図である。
【図10】本発明の一実施形態としての点字付光記録媒体の製造方法で用いる点字形成装置の第1印刷部を説明するための模式的な図である。
【図11】本発明の一実施形態としての点字付光記録媒体の製造方法で用いる点字形成装置の第1硬化部を説明するための模式的な図である。
【図12】本発明の一実施形態としての点字付光記録媒体の製造方法で用いる点字形成装置の第2印刷部を説明するための模式的な図である。
【図13】本発明の変形例としての点字付光記録媒体の製造方法により得られる点字付光記録媒体の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0130】
1,1’,1” 点字付光記録媒体
2,2’ 光記録媒体
3,3’ 点字
4,4’ 情報記録再生面
5,5’ 印刷面
6 レーベル
7,7’,7” 記号部
8,8’,9,9’ スペーサ部
10,10’ 突起部
11,11’ ハードコート層
12,12’ 記録再生領域
13 センターホール
14 ベース層
21 基板
22 情報記録再生層
101 点字形成装置
102 搬送装置
103 取込部
104 第1印刷部
105 第1硬化部
106 第2印刷部
107 第2硬化部
108 送出部
109 ディスク移動装置
110,110’ スクリーン印刷具
111 枠体
112 印刷用スクリーン
113 スキージ
114,114’ 印刷用パターン
115,117 印刷台
116 光源
211 トラッキング用溝
221 記録層
222 反射層
223 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板及び光により記録又は再生が可能な記録再生機能層を備える光記録媒体の、前記記録再生機能層に対して前記光が入射する面とは反対側の面に、複数回のスクリーン印刷により硬化性樹脂を印刷して、前記光記録媒体に点字を形成する工程を有する
ことを特徴とする、点字付光記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記印刷を行なう際において、スクリーン印刷を行なう度に印刷された硬化性樹脂を硬化させる
ことを特徴とする、請求項1記載の点字付光記録媒体の製造方法。
【請求項3】
各スクリーン印刷において、点字の各点を構成する硬化性樹脂の印刷領域の大きさが、略同一となるように印刷を行なう
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の点字付光記録媒体の製造方法。
【請求項4】
各スクリーン印刷において、点字の各点を構成する硬化性樹脂の印刷領域の大きさが、前記スクリーン印刷の度に順次大きくなるように印刷を行なう
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の点字付光記録媒体の製造方法。
【請求項5】
各スクリーン印刷において、点字の各点を構成する硬化性樹脂の印刷領域の大きさが、前記スクリーン印刷の度に順次小さくなるように印刷を行なう
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の点字付光記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記印刷を、2回又は3回のスクリーン印刷で行なう
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の点字付光記録媒体の製造方法。
【請求項7】
前記硬化性樹脂が、紫外線硬化性樹脂である
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の点字付光記録媒体の製造方法。
【請求項8】
前記光記録媒体の、前記記録再生機能層に対して前記光が入射する面上に、ハードコート層を形成する工程を有する
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の点字付光記録媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−90640(P2007−90640A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282366(P2005−282366)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(501495237)三菱化学メディア株式会社 (105)
【Fターム(参考)】