説明

点検可能ポリエチレン被覆エポキシストランド

【課題】 橋梁用外ケーブルに使用されているPC鋼より線の点検を容易に行うことが可能なエポキシストランドを提供する。
【解決手段】 第1の樹脂12及び第2の樹脂13によって被覆されたPC鋼より線10を複数本束ねてなる橋梁用外ケーブル20において、これら複数本のPC鋼10より線のうちの少なくとも1本は第2の樹脂13が透明である。この第1の樹脂12はエポキシであることが好ましく、第2の樹脂13はポリエチレンであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁などのプレストレストコンクリート構造物に使用されるPC鋼より線およびこのPC鋼より線を用いた外ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁などのコンクリート構造物に使用されるプレストレストコンクリート(以下PCと称する)箱桁の軽量化の要求に対し、箱桁部材の薄肉化をはかるために、プレストレス導入用の緊張材をコンクリート部材肉厚断面の外側、すなわち、箱桁断面の内部の空隙に配設する「外ケーブル構造」が採用されている。この外ケーブル構造の採用で、箱桁自体が軽量化されたのに加え、材料費の軽減、施工時の作業量の減少などPCケーブルの維持管理や補修が容易となる効果がもたらされた。また、上部工の軽量化はそれを支える下部工(橋脚や基礎)のコスト縮減にもつながった。
【0003】
この外ケーブル構造においては、プレストレスを導入するため、PC鋼より線を複数本束ねて構成される外ケーブルが緊張材として使用されている。例えば、特許文献1には、7本撚りの裸のPC鋼より線の表面にエポキシ樹脂を被覆し、更にその表面にポリエチレンを被覆してなるポリエチレン被覆エポキシストランドを19本束ねてなる外ケーブルが開示されている。このポリエチレン被覆エポキシストランドは、エポキシ樹脂及びポリエチレンによって2重に被覆されているので防食性に優れており、塩害対策橋など特に高耐食性を要求される用途におおいて多く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−096470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、ポリエチレン被覆エポキシストランドは高い耐久性を有しているが、より万全を期すためには、定期的に保全状態を点検することが望ましい。しかしながら、従来のポリエチレン被覆エポキシストランドは、耐候性及び経済性の観点から黒色のポリエチレンで表面が被覆されているため、内部のPC鋼より線の状態を目視にて点検することはできなかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、橋梁用外ケーブルに使用されているPC鋼より線の点検を容易に行うことが可能なエポキシストランドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明が提案する橋梁用外ケーブルは、第1の樹脂及び第2の樹脂によって被覆されたPC鋼より線を複数本束ねて構成されており、これら複数本のPC鋼より線のうちの少なくとも1本は第2の樹脂が透明であることを特徴としている。上記本発明の橋梁用外ケーブルにおいては、第1の樹脂がエポキシであり、第2の樹脂がポリエチレンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数本のPC鋼より線のうちの少なくとも1本は第2の樹脂が透明であるので、エポキシ樹脂等の第1の樹脂によって被覆されているPC鋼より線の経年劣化の有無を目視によって確実に識別することができるので、橋梁用外ケーブルの点検を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の橋梁用外ケーブルを構成するPC鋼より線の一具体例を示す断面図である。
【図2】本発明の橋梁用外ケーブルの一具体例を示す断面図である。
【図3】本発明の橋梁用外ケーブルが橋梁に用いられている例を示す模式図である。
【図4】図3に示す偏向部の部分断面図である。
【図5】図4のB−B部分で橋梁用外ケーブルを切断したときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の橋梁用外ケーブルの一具体例を図面を参照しながら説明する。図1に示すように、橋梁用外ケーブルを構成するPC鋼より線10は、複数本の素線11を撚り合わせたものの表面に第1の樹脂12及び第2の樹脂13が被覆されている。具体的には、外径15.2mmの7本より線の表面に、第1の樹脂12として厚さ0.6mmのエポキシ樹脂が被覆されている。エポキシ樹脂による被覆は、好適には粉体塗装によって行うことができる。
【0011】
エポキシ樹脂で被覆することによって高い防食性を得ることができるが、更に防食性を高め且つ施工時に生じやすい損傷を防止するため、エポキシ樹脂の表面に、更に第2の樹脂13として厚さ1.25mmのポリエチレンが被覆されている。このポリエチレンによる被覆は、好適には押し出し加工によって行うことができる。このようにして、耐久性が高められた外径18.9mmのPC鋼より線10が得られる。
【0012】
上記PC鋼より線10を複数本束ねることによって橋梁用外ケーブル20が構成される。例えば、図2には19本のPC鋼より線10を束ねた橋梁用外ケーブル20が示されている。尚、束ねられる本数は19本に限定するものではなく、27本や37本のPC鋼より線10が束ねられることもある。
【0013】
本発明においては、上記橋梁用外ケーブル20を構成する複数本のPC鋼より線10のうち、少なくとも1本は第2の樹脂13が透明であることを特徴としている。例えば、第2の樹脂13としてポリエチレンを使用する場合は、少なくとも1本のPC鋼より線には透明なポリエチレンが使用されており、残りのPC鋼より線には、カーボンブラック等を添加して黒色にしたポリエチレンが使用されている。
【0014】
橋梁用外ケーブル20を構成する各PC鋼より線10は、ほぼ同程度に経年劣化すると考えることができるので、第2の樹脂13を透明にしたPC鋼より線のみを点検することによって、橋梁用外ケーブル20の保全状態を確認することができる。よって、煩雑でコストのかかる非破壊検査等を行うことなく信頼性の高い点検を簡易に行うことができる。
【0015】
橋梁用外ケーブル20を構成する複数本のPC鋼より線10の全ての第2の樹脂13を透明なものにしても良いが、黒色は一般に耐候性の点において優れており且つ経済的でもあるので、1〜数本だけを透明にすることが好ましい。尚、複数本を透明にする場合は、束ねられたときに透明にしたもの同士が適度に分散して配置されるのが好ましい。
【0016】
また、図2の例えば位置Aのように、PC鋼より線10の束の一番外側に透明にしたものが来るようにするのが好ましい。これにより、施工時及び施工後の定期点検をより容易に行うことができる。尚、図2においては、位置AはPC鋼より線の束の最下部に位置しているが、かかる位置に限定されるものではなく、束の最上部や横に位置しても良い。
【0017】
図3には、上記橋梁用外ケーブル20を橋梁1に使用したときの一例が示されている。図3に示されるように、橋梁用外ケーブル20は、橋梁1の箱桁の両端部に設けられた定着部2によって緊張力が加えられており、これにより、コンクリート構造からなる橋梁1の耐荷力の維持、及びひび割れなどによる破壊の防止が行われている。
【0018】
橋梁1の箱桁内部の中央部には複数の偏向部3が設けられている。この偏向部3で橋梁用外ケーブル20が偏向せしめられている。図4は図3の偏向部3を拡大した部分断面図である。この図4から分るように、偏向部3には橋梁用外ケーブル20が挿通されるデビエータ管4が設けられている。デビエータ管4内には、更に、摩擦抵抗を少なくしてプレストレス導入時にスムーズに橋梁用外ケーブル20が移動可能となるように、ポリエチレン管5が設けられている。
【0019】
この偏向部3では、橋梁用外ケーブル20に上向きの力が働くので、図5に示すように、橋梁用外ケーブル20は若干横に広がったような形状となる。この場合においても、図2に示す位置Aは束になっている複数のPC鋼より線10の一番外側に位置しており、容易に点検することができる。
【0020】
以上、本発明の橋梁用外ケーブルの一具体例について説明したが、本発明は係る一具体例に限定されるものではなく、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で種々の実施態様が可能であることはいうまでもない。すなわち、本発明は、その技術的範囲が特許請求の範囲及びその均等物に及ぶことを企図している。
【符号の説明】
【0021】
1 橋梁
2 定着部
3 偏向部
4 デビエータ管
5 ポリエチレン管
10 PC鋼より線
11 素線
12 第1の樹脂
13 第2の樹脂
20 橋梁用外ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂及び第2の樹脂によって被覆されたPC鋼より線を複数本束ねてなる橋梁用外ケーブルにおいて、前記複数本のPC鋼より線のうちの少なくとも1本は前記第2の樹脂が透明であることを特徴とする橋梁用外ケーブル。
【請求項2】
前記第1の樹脂がエポキシであり、前記第2の樹脂がポリエチレンであることを特徴とする、請求項1に記載の橋梁用外ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−174423(P2010−174423A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20919(P2009−20919)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(302061613)住友電工スチールワイヤー株式会社 (163)
【Fターム(参考)】