説明

点鼻薬噴出器

【課題】点鼻薬を収納する容器体の形状や、容器体とディスペンサーとの噴出器全体の縦幅等に制限を受けることがなく、しかも取り扱い容易であり、快適な操作が可能な点鼻薬噴出器を提案する。
【解決手段】点鼻薬を収容した容器体Aと、上方付勢状態で押し下げ可能に設けたステム30の上端に嵌着したノズル部材31を押し下げることで収容点鼻薬をノズル35先端の噴出口37より噴出する噴出機構を備えたディスペンサーBとを備え、ノズル部材31外面の対向位置に一対の摺動突部38を突設するとともに、各摺動突部38が摺動する摺動押圧面sを内側に備えた一対の押圧腕40をノズル35両側に揺動可能に立設している。そして、各押圧腕40をノズル35側へ傾倒させることで、各摺動突部38を各摺動押圧面sに摺動下降させてノズル35が押し下げられる如く構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は点鼻薬噴出器に関する。
【背景技術】
【0002】
点鼻薬噴出器とし、ポンプを装着した取付キャップと、ポンプのステムに取着されたノズル部材とからなるものが提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
上記従来の点鼻薬噴出器はノズル部材の押し下げによりステムを押し下げてポンプ機構により容器体内の点鼻薬をノズル噴出孔より噴出する如く構成している。その際、点鼻薬を収納する容器体の中心線上にノズルが起立しているため、ノズル部材の外周下部に突設したフランジ状の基板上面を押圧することでステムを押し下げる構造となっている。
【特許文献1】特開2004−000844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の点鼻薬噴出器は、上記した如く、ノズルの脇に指を掛けて下方向へ押して使用するため下方向に押し荷重が加わり、容器体の外周もしくは容器体の底部を確実に保持しなければならず、容器体の形状、或いは容器体及びディスペンサーとの丈幅に著しく制限を受けるという不都合があった。また、人指し指と中指でノズル部材を作動させるため、それ以外で容器体を保持するのが非常に不安定であった。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、点鼻薬を収容する容器体の形状や、容器体とディスペンサーとの噴出器全体の縦幅等に制限を受けることがなく、しかも取り扱い容易であり、快適な操作が可能な点鼻薬噴出器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、点鼻薬を収容した容器体Aと、容器体Aの口頚部11に嵌合した装着キャップB1により容器体Aに装着するとともに、上方付勢状態で押し下げ可能に設けたステム30の上端に嵌着したノズル部材31を押し下げることで収容点鼻薬をノズル35先端の噴出口37より噴出する噴出機構を備えたディスペンサーBとを備え、ノズル部材31外面の対向位置に一対の摺動突部38を突設するとともに、各摺動突部38が摺動する摺動押圧面sを内側に備えた一対の押圧腕40をノズル部材31両側に揺動可能に立設し、且つ、各押圧腕40をノズル35側へ傾倒させることで、各摺動突部38を各摺動押圧面sに摺動下降させてノズル35が押し下げられる如く構成した。
【0007】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、ノズル35下部外周より延設したフランジ状の頂板部33の外縁部を摺動突部38として構成した。
【0008】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、各押圧腕40が、装着キャップB1外周の対向位置より外方へ突設した支持板部40a と、支持板部40a の外縁より内外方向の弾性揺動が可能に立設するとともに、内面に摺動押圧面sを備えた起立板部40b と、起立板部40b の上面に延設するとともに、外方へ傾斜下降する押圧板部40c とで構成した。
【0009】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第3の手段に於いて、各押圧腕40を、装着キャップB1外周に嵌合させた嵌合筒部50の下部より上記支持板部40a を突設して、装着キャップB1と別体に形成した。
【発明の効果】
【0010】
本発明の点鼻薬噴出器は、ノズル部材31外面の対向位置に一対の摺動突部38を突設するとともに、各摺動突部38が摺動する摺動押圧面sを内側に備えた一対の押圧腕40をノズル部材31両側に揺動可能に立設しており、各押圧腕40をノズル35側へ傾倒させることで、各摺動突部38を各摺動押圧面sに摺動下降させてノズル35が押し下げられる如く構成しているため、点鼻薬の噴出の際に容器体Aに上下方向の押し荷重がかからず、容器体Aを小さな力で保持することができる。その結果、例えば、中指,薬指,小指,手のひらで容器体の周囲を保持することができ、各押圧腕40の押圧は親指と人指し指とで安定的に違和感なく行うことができる。更に、中指,薬指,小指,手のひらで容器体保持を行えるため、噴出操作を周囲の視線から隠して行うことが容易にできるという利点もある。
【0011】
ノズル35下部外周より延設したフランジ状の頂板部33の外縁部を摺動突部38として構成した場合には、頂板部33の外縁部のどの位置であっても摺動突部38になり得るため、ステム30が使用中等に回転してしまうことがあっても、摺動突部38が摺動押圧面sから外れることがなく、また、組み付けの際にも、摺動突部38と摺動押圧面sとを位置合わせする必要がなく、組み付け作業の簡便化を図れる。
【0012】
各押圧腕40が、装着キャップB1外周下部の対向位置より外方へ突設した支持板部40a と、支持板部40a の外縁より内外方向の弾性揺動が可能に立設するとともに、内面に摺動押圧面sを備えた起立板部40b と、起立板部40b の上面に延設するとともに、外方へ傾斜下降する押圧板部40c とで構成した場合には、各押圧腕40の押圧を解除すれば、それぞれ起立板部40b が自動的に元の状態に戻り、その結果、ノズル35が元の状態に戻るのを各押圧腕40が妨げることがなく円滑にノズル35が上昇し、牽いては作動部材B4を円滑に元の状態に戻すことが可能である。
【0013】
各押圧腕40を、装着キャップB1外周に嵌合させた嵌合筒部50の下部より上記支持板部40a を突設して、装着キャップB1と別体に形成した場合には、容器体Aの形態等により必要に応じて押圧腕40の装着、非装着を選択することができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
図1乃至図3は本発明の点鼻薬噴出器の一例を示し、点鼻薬噴出器1は、容器体Aと、ディスペンサーBと、オーバーキャップCとを備えている。
【0016】
容器体Aは、筒状胴部10の上端より小径の口頚部11を起立したボトルタイプのもので、合成樹脂により形成されている。胴部10の外周上部には上向き段部12を介して小径の嵌合部を周設しており、口頚部11外周には螺条を周設している。
【0017】
ディスペンサーBは、装着キャップB1と、シリンダB2と、パイプB3と、作動部材B4とを備えている。
【0018】
装着キャップB1は、口頚部11外周に螺着させた周壁20の上端縁より頂壁21を延設し、頂壁21の中央には作動部材B4を上下動可能に貫通させるための窓孔22を備え、窓孔22周縁部の頂壁21部分はシリンダB2を嵌着させる二重筒状の隆起部21a に形成しており、隆起部21a 上面からは内側ガイド筒24を立設している。また、頂壁21の周縁部からは外側ガイド筒25を立設している。また、更に、頂壁21の裏面と口頚部11上面との間にパッキンpを介在させてこの部分の液密性を図っている。
【0019】
シリンダB2は、上端を隆起部21a 間に嵌着させて装着キャップB1に固定しており、下端部を容器体A内上部に垂設している。また、内部底部には吸込み弁(図示せず)を備え、外周下端にはパイプB3の上端を嵌着して、その下端を容器体A内底部に垂下している。
【0020】
作動部材B4は、シリンダB2内を摺動するピストン(図示せず)を下端に連携させたステム30を備え、ステム30の上端にノズル部材31を嵌着固定している。また、シリンダB2内に装着したコイルスプリング(図示せず)により常時上方に付勢し、押し下げ可能に装着されている。
【0021】
ノズル部材31は、本体部31a と、カバー部31b と、スピンチップ31c とで構成している。本体部31a は、ステム30の上端外周に嵌着した嵌合筒32を頂板部33裏面より垂設し、頂板部33の外周より外側ガイド筒25の外周位置に垂壁部34を垂設している。また、頂板部33の上方に嵌合筒32内と連通し、牽いてはステム30内と連通するノズル35を構成するノズル基筒部36を立設している。カバー部31b は、先端にスピンチップ31c を嵌着してノズル基筒部36外周に嵌着した筒状をなし、ノズル基筒部36と、スピンチップ31c とでノズル35を構成している。そして、ステム30内より噴出する液を先端の噴出口37より霧状に噴出する如く構成している。
【0022】
また、本体部31a の頂板部33は内側をドーム状に隆起させたフランジ状をなし、両側に於ける頂板部33の外縁部の上部コーナー部分をそれぞれ摺動突部38として構成している。
【0023】
本発明では、ノズル35を押し下げるための一対の押圧腕40を設けている。押圧腕40は、装着キャップ周壁20の両側で、その外面下部より一体に外方へ突設した支持板部40a の外側縁からそれぞれ上方へ起立板部40b を立設し、起立板部40b の上面に、内方から外方へ下る傾斜状の押圧板部40c を備えている。また、起立板部40b の内面上部に上方から下方に行くに従って順次外方へ広がる傾斜状の摺動押圧面sに形成しており、摺動押圧面sをノズル部材31の摺動突部38に当接している。
【0024】
上記の如く構成した点鼻薬噴出器1を使用する際は、図1の状態からオーバーキャップCを外し、例えば、容器体Aの胴部10を中指,薬指,小指,手のひらでつかみ、親指と人指し指をそれぞれ押圧腕40の押圧板部40c 外面に当接して押圧することで、図3に示す如く、各摺動押圧面sが各摺動突部38をそれぞれ摺動下降させて作動部材B4を押し下げ、容器体A内の点鼻薬をノズル35の噴出口37より噴出する。各押圧腕40の押圧を解除すれば、弾性復元力により各押圧腕40は元の状態に戻り、それに伴って作動部材B4の上方付勢力により作動部材B4が上昇してもとの状態に戻る。
【0025】
図4乃至図6は他の例を示し、図1の例に於いて、容器体Aの内部構造が相違する例を示す。容器体Aは胴部10の底壁部10a を着脱可能に別体に形成するとともに、内部に可動底壁13を備えている。また、シリンダB2の下端のパイプがなく、また、口頚部11内への液の進入を防止する進入防止弁14を備えている。その他の構成は図1の例と同様であるため、同符号を付して説明を省略する。
【0026】
図7は更に他の例を示し、図1の例に於いて、押圧腕40を装着キャップB1と別体に形成した例を示す。この場合には、装着キャップB1外周に押圧腕部材Dを嵌着して構成している。押圧腕部材Dは、装着キャップ周壁20の外周に嵌合させた嵌合筒部50を備え、嵌合筒部50より図4の例と同様の支持板部40a ,起立板部40b 、押圧板部40c を延設して構成している。嵌合筒部50は、その内周下部に周設した係合溝51に装着キャップの外周下部より突設した係合突条26を係合させて抜け出しの防止を図っている。また、押圧腕部材Dは、容器体Aに装着キャップB1、作動部材B4を装着した後、ノズル部材31の上方から装着することができる如く構成している。尚、この様な押圧腕40は図6の例の場合にも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】点鼻薬噴出器の半断面図である。(実施例1)
【図2】点鼻薬噴出器の平面図である。(実施例1)
【図3】点鼻薬噴出器の作用を説明する半断面図である。(実施例1)
【図4】点鼻薬噴出器の半断面図である。(実施例2)
【図5】点鼻薬噴出器の平面図である。(実施例2)
【図6】点鼻薬噴出器の作用を説明する半断面図である。(実施例2)
【図7】点鼻薬噴出器の要部半断面図である。(実施例3)
【符号の説明】
【0028】
1…点鼻薬噴出器
A…容器体
10…胴部,10a …底板部,11…口頸部,12…上向き段部,13…可動底壁,
14…進入防止弁
B…ディスペンサー
B1…装着キャップ
20…周壁,21…頂壁,21a …隆起部,22…窓孔,24…内側ガイド筒,
25…外側ガイド筒,26…係合突条,40…押圧腕,40a …支持板部,
40b …起立板部,40c …押圧板部,s…摺動押圧面
B2…シリンダ
B3…パイプ
B4…作動部材
30…ステム,31…ノズル部材,31a …本体部,31b …カバー部,
31c …スピンチップ,32…嵌合筒,33…頂板部,34…垂壁部,35…ノズル,
36…ノズル基筒部,37…噴出口,38…摺動突部
C…オーバーキャップ
D…押圧腕部材
50…嵌合筒部,51…係合溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
点鼻薬を収容した容器体Aと、容器体Aの口頚部11に嵌合した装着キャップB1により容器体Aに装着するとともに、上方付勢状態で押し下げ可能に設けたステム30の上端に嵌着したノズル部材31を押し下げることで収容点鼻薬をノズル35先端の噴出口37より噴出する噴出機構を備えたディスペンサーBとを備え、ノズル部材31外面の対向位置に一対の摺動突部38を突設するとともに、各摺動突部38が摺動する摺動押圧面sを内側に備えた一対の押圧腕40をノズル部材31両側に揺動可能に立設し、且つ、各押圧腕40をノズル35側へ傾倒させることで、各摺動突部38を各摺動押圧面sに摺動下降させてノズル35が押し下げられる如く構成したことを特徴とする点鼻薬噴出器。
【請求項2】
ノズル35下部外周より延設したフランジ状の頂板部33の外縁部を摺動突部38として構成した請求項1記載の点鼻薬噴出器。
【請求項3】
各押圧腕40が、装着キャップB1外周の対向位置より外方へ突設した支持板部40a と、支持板部40a の外縁より内外方向の弾性揺動が可能に立設するとともに、内面に摺動押圧面sを備えた起立板部40b と、起立板部40b の上面に延設するとともに、外方へ傾斜下降する押圧板部40c とで構成した請求項1又は請求項2のいずれかに記載の点鼻薬噴出器。
【請求項4】
各押圧腕40を、装着キャップB1外周に嵌合させた嵌合筒部50の下部より上記支持板部40a を突設して、装着キャップB1と別体に形成した請求項3記載の点鼻薬噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−75874(P2010−75874A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248380(P2008−248380)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】