説明

焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品

【課題】精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供する。
【解決手段】焙煎ごま油が50質量%より大になるように焙煎ごま油と菜種油等の精製油とを配合し、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含む焙煎ごま油配合油脂組成物を製造し、当該焙煎ごま油配合油脂組成物を用いて食品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品に関するものであり、特に、精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食用油には風味を付ける為に焙煎した焙煎油と、風味のほとんどない精製油がある。焙煎油としてはごま油が通常用いられ、一部業務用に焙煎菜種油(油揚げ用など)が使用されている。
【0003】
焙煎ごま油は、精製油の風味付けのために0〜30質量%の範囲で精製油に加えられることがある(特許文献1参照)。
【0004】
また、焙煎油は製造コストが比較的高く商品価格が高めになってしまうことから、焙煎ごま油に大豆油を加えて調合した「調合ごま油」が市販されている。
【特許文献1】特開2005−105248号公報(段落〔0027〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、焙煎ごま油と大豆油とを調合した「調合ごま油」は、焙煎ごま油の風味を維持することが難しかった。
【0006】
従って、本発明の目的は、精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、焙煎ごま油が50質量%より大になるように焙煎ごま油及び精製油を配合し、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを60質量%以上80質量%以下含むことを特徴とする焙煎ごま油配合油脂組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記目的を達成するために、上記本発明の焙煎ごま油配合油脂組成物を用いて製造した食品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
〔本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物〕
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、焙煎ごま油が50質量%より大になるように焙煎ごま油及び精製油を配合し、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含む。
【0011】
(焙煎ごま油)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物に配合される焙煎ごま油は、特に限定されるものではなく、公知の方法により製造された焙煎ごま油を用いることができる。市販の焙煎ごま油を用いても良い。
【0012】
一般的な製造工程としては、例えば、原料種子を選別した後、焙煎し、その後、圧搾、ろ過、静置、(ろ過及び静置の繰り返し)、仕上げろ過の工程を経る。焙煎は公知の種々の方法により行なうことができる。
【0013】
本実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物において、焙煎ごま油は、50質量%より大となるように配合される。60質量%以上95質量%以下配合されることが好ましい。より好ましくは、65質量%以上90質量%以下であり、さらに好ましくは、70質量%以上90質量%以下である。
【0014】
(精製油)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物に配合される精製油は、植物油であることが好ましい。特に、菜種油、べに花油、ひまわり油から選ばれる1種以上であることが好ましい。中でも菜種油が好ましい。
【0015】
菜種油を用いる場合には、8質量%以上50質量%未満配合されることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは、10質量%以上35質量%以下である。
【0016】
べに花油を用いる場合には、ハイオレイックべに花油が好ましく、9.5質量%以上50質量%未満配合されることが好ましい。より好ましくは、10質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは、20質量%以上35質量%以下である。
【0017】
ひまわり油を用いる場合には、10質量%以上50質量%未満配合されることが好ましい。より好ましくは、20質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは、20質量%以上35質量%以下である。
【0018】
(トリグリセリド組成)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含む。好ましくは、当該トリグリセリドを60質量%以上70質量%以下含む。
【0019】
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、トリオレインを5質量%以上25質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは、6質量%以上20質量%以下であり、さらに好ましくは、13質量%以上16質量%以下である。
【0020】
(脂肪酸組成)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、飽和脂肪酸を10質量%以上16質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは、12質量%以上15.5質量%以下であり、さらに好ましくは、12質量%以上15質量%以下である。
【0021】
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、オレイン酸を40質量%以上55質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは、42質量%以上52質量%以下であり、さらに好ましくは、43質量%以上50質量%以下である。
【0022】
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、リノール酸を30質量%以上52質量%以下含むことが好ましい。より好ましくは、32質量%以上44質量%以下であり、さらに好ましくは、34質量%以上40質量%以下である。
【0023】
(曇点)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が−5℃以下であることが好ましい。より好ましくは、当該曇点が−6℃以下である。
【0024】
(トコフェロール含量)
本発明の実施の形態に係る焙煎ごま油配合油脂組成物は、トコフェロール含量が40〜50mg/100g油であることが好ましい。
【0025】
〔本発明の実施の形態に係る食品〕
本発明の実施の形態に係る食品は、上記の焙煎ごま油配合油脂組成物を用いて製造した食品である。
【0026】
食品としては、例えば、チャーハン等の炒め物、ほうれん草のナムル等の和え物、スープ、ドレッシングが挙げられる。調理は、公知の一般的な方法により行なうことができる。
【0027】
〔本発明の実施の形態の効果〕
本発明の実施の形態によれば、精製油をブレンドしても焙煎ごま油の風味を維持できる焙煎ごま油配合油脂組成物及びこれを用いた食品を提供することができるので、焙煎ごま油に比べて安価に焙煎ごま油とほぼ同等の風味の調合油を消費者に提供できる。また、本発明の実施の形態によれば、低温(例えば、−5℃)で焙煎ごま油よりも見た目がクリアな(曇りが無い)焙煎ごま油配合油脂組成物を提供できる。
【0028】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
焙煎ごま油(日清オイリオグループ株式会社製)と、精製菜種油(以下菜種油という、日清オイリオグループ株式会社製)、精製ハイオレイックべに花油(以下ハイオレイックべに花油という、日清オイリオグループ株式会社製)及び精製ひまわり油(以下ひまわり油という、日清オイリオグループ株式会社製)とを表1〜3に記載の配合割合で混合し、焙煎ごま油配合油脂組成物を調合した(実施例1〜16及び参考例1〜3)。また、比較例として表4に記載の比較例1(焙煎ごま油のみ)及び比較例2〜6(焙煎ごま油と大豆油とを調合)を用意した。
【0030】
実施例1〜16、参考例1〜3及び比較例1〜6について、トリグリセリド組成、脂肪酸組成、ステロール含量及びトコフェロール含量を測定した結果を表1〜4に示す。
【0031】
【表1】



【0032】
【表2】



【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
〔曇点の測定〕
以下の方法により、実施例1〜16、参考例1〜3及び比較例1〜6について曇点の測定を行なった。測定結果を表5に示す。
【0036】
<曇点の測定方法>
4mLの試料を入れた試験管を一分間に0.5℃ずつ降温し、試料の一部に曇りを認めた時の温度を曇点とした。
【0037】
【表5】

【0038】
表5より、実施例1〜16及び参考例1〜3はいずれも焙煎ごま油のみからなる比較例1に比べて曇点が低いので、低温で焙煎ごま油よりもクリアな焙煎ごま油配合油脂組成物が得られたことが判る。
【0039】
また、同混合率で比較した場合の曇点低下率が焙煎ごま油に大豆油をブレンドした比較例2〜6よりも実施例1〜16及び参考例1〜3の方が概ね高くなることが判った。
【0040】
〔風味の評価〕
以下の方法により、実施例1〜7,9〜16、参考例1〜3及び比較例1〜6について風味の評価を行なった。評価結果を表6に示す。
【0041】
<風味の評価方法>
実施例1〜16、参考例1〜3及び比較例2〜6で調合した焙煎ごま油配合油脂組成物(以下、評価対象油脂組成物という)と比較例1の焙煎ごま油(以下、評価対象油という)の生風味を評価した。風味の評価は、5名のパネルで5段階の風味総合評価を行なった。
○風味の評価基準
5:優れている
4:やや優れている
3:普通
2:やや劣っている
1:劣っている
【0042】
【表6】

【0043】
表6より、実施例1〜16及び参考例1〜3はいずれも焙煎ごま油と大豆油からなる比較例2〜6に比べて風味が良好な焙煎ごま油配合油脂組成物が得られたことが判る。
【0044】
また、実施例1〜5,7,9,13において、焙煎ごま油のみからなる比較例1と遜色ない風味を実現できた。
【0045】
〔調理した食品についての風味の評価〕
1.ほうれん草のナムル
<風味の評価方法>
実施例3〜6,11,15、参考例1及び比較例2,4,5で調合した焙煎ごま油配合油脂組成物(以下、評価対象油脂組成物という)と比較例1の焙煎ごま油(以下、評価対象油という)を用いて、ほうれん草のナムルを調理し、その風味を評価した。風味の評価は、5名のパネルで5段階の風味総合評価を行なった。評価結果を表7に示す。
○風味の評価基準
5:優れている
4:やや優れている
3:普通
2:やや劣っている
1:劣っている
【0046】
<ほうれん草のナムルの調理法>
ほうれん草1把を洗い、沸騰したお湯で2分間茹でた。ほうれん草を室温程度にまで冷まし、5cm程度の長さに切り、水気をきった後、ねぎのみじん切り、醤油小さじ2杯、砂糖小さじ1/2杯を入れ、さらに、評価対象油脂組成物のいずれか又は評価対象油を大さじ1杯加えて和えた。
【0047】
【表7】

【0048】
表7より、実施例3〜6,11,15及び参考例1の評価対象油脂組成物はいずれも焙煎ごま油と大豆油からなる比較例2,4,5に比べて風味が良好な食品(ほうれん草のナムル)を得ることができる焙煎ごま油配合油脂組成物であることが判る。
【0049】
また、実施例3〜5,11,15の焙煎ごま油配合油脂組成物を使用した場合に、比較例1の焙煎ごま油を使用した場合と同等に良好な風味の食品(ほうれん草のナムル)を得ることができた。
【0050】
2.わかめスープ
<風味の評価方法>
実施例3,9,13及び比較例2で調合した焙煎ごま油配合油脂組成物(以下、評価対象油脂組成物という)と比較例1の焙煎ごま油(以下、評価対象油という)を用いて、わかめスープを調理し、その風味を評価した。風味の評価は、5名のパネルで5段階の風味総合評価を行なった。評価結果を表8に示す。
○風味の評価基準
5:優れている
4:やや優れている
3:普通
2:やや劣っている
1:劣っている
【0051】
<わかめスープの調理法>
8gの乾燥わかめを水、またはぬるま湯で戻しておき、小さめに刻んだ。また、ねぎ20gをみじん切りにした。これらのわかめとねぎ、鶏がらスープ(顆粒)25g、醤油小さじ2杯、塩1g、及びこしょう少々を水2,400mLに入れ、温めた。評価対象油脂組成物のいずれか又は評価対象油をスープ50g当たりに0.3g入れた。
【0052】
【表8】

【0053】
表8より、実施例3,9,13の評価対象油脂組成物はいずれも焙煎ごま油と大豆油からなる比較例2に比べて風味が良好な食品(わかめスープ)を得ることができる焙煎ごま油配合油脂組成物であることが判る。
【0054】
また、実施例3の焙煎ごま油配合油脂組成物を使用した場合に、比較例1の焙煎ごま油を使用した場合と同等に良好な風味の食品(わかめスープ)を得ることができた。
【0055】
3.チャーハン
<風味の評価方法>
実施例5,11,15及び比較例4で調合した焙煎ごま油配合油脂組成物(以下、評価対象油脂組成物という)と比較例1の焙煎ごま油(以下、評価対象油という)を用いて、チャーハンを調理し、その風味を評価した。風味の評価は、5名のパネルで5段階の風味総合評価を行なった。評価結果を表9に示す。
○風味の評価基準
5:優れている
4:やや優れている
3:普通
2:やや劣っている
1:劣っている
【0056】
<チャーハンの調理法>
フライパンを加熱し、精製菜種油を小さじ1杯加え、卵を入れた。さらに、精製菜種油を小さじ1杯入れ、長ネギ40g、ご飯200gを加え炒めた。焼き豚を40g加え、塩、コショウを少々、醤油を小さじ1杯加えた。最後に評価対象油脂組成物のいずれか又は評価対象油を小さじ1杯加え、炒めた。
【0057】
【表9】

【0058】
表9より、実施例5,11,15の評価対象油脂組成物はいずれも焙煎ごま油と大豆油からなる比較例4に比べて風味が良好な食品(チャーハン)を得ることができる焙煎ごま油配合油脂組成物であることが判る。
【0059】
また、実施例5の焙煎ごま油配合油脂組成物を使用した場合に、比較例1の焙煎ごま油を使用した場合と同等に良好な風味の食品(チャーハン)を得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焙煎ごま油が50質量%より大になるように焙煎ごま油及び精製油を配合し、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸が不飽和脂肪酸であるトリグリセリドを59質量%以上80質量%以下含むことを特徴とする焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項2】
前記精製油が植物油であることを特徴とする請求項1に記載の焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項3】
前記植物油が菜種油、べに花油、ひまわり油から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項2に記載の焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項4】
一分間に0.5℃ずつ降温した時の曇点が−5℃以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項5】
前記焙煎ごま油は60質量%以上95質量%以下配合され、かつ、トリオレインを5質量%以上25質量%以下含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の焙煎ごま油配合油脂組成物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の焙煎ごま油配合油脂組成物を用いて製造した食品。
【請求項7】
前記食品が、炒め物、和え物、スープ、ドレッシングであることを特徴とする請求項6に記載の食品。

【公開番号】特開2009−284803(P2009−284803A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−140172(P2008−140172)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】