説明

焚き火台

【課題】携帯に便利であり、燃焼性能に優れて落ち葉や枯れ木等を燃料としても立消えを起こさない焚き火台を提供する。
【解決手段】脚部41、42を備えた略矩形の灰受け部20と、灰受け部20の上部に設けられる火格子31、32と、灰受け部及び火格子の上部周縁に設けられる囲み板61、62、63、64とを備える。火格子31、32は、複数の火格子孔51、53を備え、火格子孔53の周縁は、エンボス加工により上方へ浮き出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落ち葉や枯れ木等の天然燃料を使用して、簡単に焚き火をすることができる焚き火台に関し、特に、携帯に便利であると共に、燃焼性能に優れて立消えを起こさない焚き火台に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外でバーベキューや鍋料理等の調理を行うキャンプ用品として、カセットガスコンロや炭火コンロが多く用いられている。これらは、その型式や大きさ等を適宜選択することにより、様々な規模で様々な調理に要求される火力を提供することができる。また、車等での持ち運びが便利となるように、多くのものは、コンパクトに折り畳みができるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、コンパクトに折り畳むことができる携帯コンロの一例が記載されている。図7に示すように、特許文献1に記載されている携帯コンロ110は、複数の金属の板材を組み合わせることにより、組み立てと分解とを繰り返し行うことができる構成となっている。
【0004】
携帯コンロ110は、上面に火格子130を備えて略矩形の皿状に形成された灰受け部120と、灰受け部120の上部周縁に設けられる囲み板とを備えている。火格子130は、複数の火格子孔135を備えている。囲み板は、前面板161、背面板162、及び側面板163、164を組み合わせて構成され、火格子130の周囲を取り囲むように形成されている。そして、この囲み板の内側が、燃料を燃焼させる燃焼室を形成している。
【0005】
前面板161及び背面板162は、側面板163、164の間に差し込まれて組み立てられている。したがって、分解するときには、前面板161及び背面板162を側面板163、164の間から引き抜いて、外すことができる。また、一対の側面板163、164は、夫々灰受け部120の両端に回転軸121、122で連結されており、灰受け部120に対して回動可能に形成され、折り畳み可能となっている。
【0006】
このように構成された携帯コンロ110は、不使用時にはコンパクトに折り畳んで車等に収納することができる。また、使用時には、図7に記載された状態に組み立てて、火格子130の上で木炭等の燃料を燃やすことができる。そして、バーベキューや鍋料理等の調理を行うことができる。
【0007】
しかしながら、このような従来の携帯コンロは、キャンプ用品として製作されているために、その多くは燃料が特定されている。すなわち、多くの場合使用燃料は、灯油、木炭、カセットガス等であり、落ち葉や枯れ木等の天然燃料を使用することができない。図7に示した携帯コンロ110を用いて落ち葉や枯れ木等を燃焼させても、その燃焼効率が低いために、立消えすることが多い。
【0008】
もしも、落ち葉や枯れ木を優れた燃焼効率で燃焼させることができるならば、キャンプ生活は、より楽しく、より経済的なものとすることができる。また、自然災害に遭遇した場合でも、このような天然燃料を使用することができるならば、燃料の有無を気にすることなく、お湯を沸かしたり、調理を行ったりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】2001−41455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明が解決しようとする課題は、落ち葉や枯れ木等の天然燃料を使用する場合に、優れた燃焼効率を得ることができる焚き火台を提供することである。そして、バーベキューや鍋料理等の調理を行うことができると共に、コンパクトに折り畳んで携帯できる焚き火台を提供することである。さらに、キャンプ生活での使用は勿論のこと、自然災害に遭遇した場合でも容易に使用することができる焚き火台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る焚き火台は、脚部を備えた皿状の灰受け部と、該灰受け部の上部に設けられる火格子と、前記灰受け部の上部周縁に設けられる囲み板とを備える焚き火台であって、前記火格子が、複数の火格子孔を備える平板からなり、かつ、少なくとも一部の前記火格子孔の周縁がエンボス加工により上方へ浮き出されてなる手段を採用している。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る焚き火台は、請求項1に記載の焚き火台であって、前記火格子が、エンボス加工された火格子孔とエンボス加工されていない火格子孔とからなり、エンボス加工された火格子孔の全面積が、エンボス加工されていない火格子孔の全面積よりも小さく形成されてなる手段を採用している。また、本発明の請求項3に係る焚き火台は、請求項1又は2に記載の焚き火台であって、前記火格子が、周縁部を下方に折り曲げて形成された端側部を備え、該端側部の高さによって前記灰受け部との間が所定の距離に形成されてなる手段を採用している。また、本発明の請求項4に係る焚き火台は、請求項1乃至3の何れかに記載の焚き火台であって、前記火格子が、ステンレスの板を素材としてなる手段を採用している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の焚き火台は、落ち葉や枯れ木等の天然燃料を使用して、優れた燃焼効率を得ることができる。そして、天然燃料を使用してバーベキューや鍋料理等の調理を行うことができる。また、コンパクトに折り畳んで携帯することができるので、キャンプ生活での使用は勿論のこと、自然災害に遭遇した場合等にも威力を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の焚き火台の組み立てられた状態を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す焚き火台の折り畳まれた状態及び一対の側面板の開閉状態を示す概略斜視図である。
【図3】図1に示す焚き火台の折り畳まれた状態及び一対の脚部の開閉状態を示す概略斜視図である。
【図4】図1に示す焚き火台で、前面板及び背面板の取付け手順を示す概略斜視図である。
【図5】図1に示す焚き火台で、火格子、五徳及び扉の取付け手順を示す概略斜視図である。
【図6】エンボス加工の説明図であり、図6(a)は平板に通常の孔を設けた例、図6(b)は平板をエンボス加工して凸部を形成した例、図6(c)はエンボス加工により形成した凸部に孔を形成した例である。
【図7】従来の携帯コンロの一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者は、落ち葉や枯れ木等の天然燃料を使用した場合に、優れた燃焼効率を得るための手段について鋭意研究を重ね、特に、金属の平板に火格子孔を設けた火格子について試行錯誤を繰り返した。その結果、火格子孔の周縁をエンボス加工により上方へ浮き出させると、火格子孔から燃焼室内への空気の流入が良好となり、燃焼室内に良好な対流が発生して、優れた燃焼効率が得られることを発見した。
【0016】
エンボス加工とは、板の一部を浮き上がらせる加工であって、板の表面に文様を形成する場合等に用いられる。本発明においては、火格子孔を形成する際に、金属板に単純な孔を形成するのではなく、火格子孔の周縁をエンボス加工することにより、上方に浮き出させて形成している。これを、図6により詳しく説明する。
【0017】
図6(a)は、金属の平板50に普通に開口して火格子孔51を設けた例を示している。図6(b)は、平板50の一部をエンボス加工により上方へ浮き出させて、球面状の凸部52を形成した例を示している。図6(c)は、平板50の一部をエンボス加工して、球面状の凸部52を形成し、その中心部に火格子孔53を設けた例を示している。この結果、火格子孔53は、その周縁がエンボス加工により上方へ浮き出された状態となる。ここでは、エンボス加工をして凸部52を形成した後に火格子孔53を設けた例を示したが、先に火格子孔53を設け、その後にエンボス加工をして凸部52を形成することもできる。
【0018】
本発明の実施の形態について、図1〜図5を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の焚き火台10を組み立てて、使用可能とした状態を示している。この焚き火台10は、金属の平板を素材とし、切断、打ち抜き、曲げ加工等を施して製作されている。また、分解と組み立てを繰り返し行えるように、2つの部材にスリットを設けて、互いのスリットを差し込んで嵌め込むことにより固定する方式を採用している。
【0019】
この焚き火台10は、脚部41、42を備えると共に略矩形の皿状に形成された灰受け部20と、灰受け部20の上部周縁に設けられる前面板61、背面板62、側面板63、64からなる囲み板を備えている。前面板61には、扉91が取付けられて、開閉可能となっている。また、囲み板の上には、好みの位置に五徳81、82を設けることができる。
【0020】
図2は、本発明の焚き火台10を折り畳んで持ち運び可能とした状態を示している。折り畳み状態では、全体が薄い箱状となり、内部に主要部品(前面板61、背面板62、火格子31、32、五徳81、82)を納めることができる。対向する広い2面の内、一方の面は、一対の側面板63、64で形成されている。一対の側面板63、64は、灰受け部20の両端に回転軸21、22で連結されており、夫々灰受け部20に対して略90°回動させて、灰受け部20に対して略垂直の状態に起立させることができる。
【0021】
図3は、図2を裏返した状態で、他方の面を上にして示している。他方の面は、一対の脚部41、42で形成されている。2つの脚部41、42は、灰受け部20の両端に回転軸21、22で連結されており、夫々灰受け部20に対して略100°回動させて、灰受け部20に対して垂直よりも少し開いた状態に開脚させることができる。これにより、灰受け部20を、脚部41、42の長さだけ地上から離して位置させることができる。
【0022】
図4は、脚部41、42を開脚させ、側面板63、64を略垂直に起立させた状態を示している。側面板63の両側には、上方に開放されたスリット73、73が形成され、側面板64の両側には、上方に開放されたスリット74、74が形成されている。そして、前面板61の両側には、下方に開放されたスリット71、71が形成され、背面板62の両側には、下方に開放されたスリット72、72が形成されている。
【0023】
前面板61のスリット71、71は、夫々側面板63のスリット73及び側面板64のスリット74に噛合うように形成されている。したがって、前面板61の一方のスリット71と側面板63のスリット73とを互いに差し込むように嵌め込み、前面板61の他方のスリット71と側面板64のスリット74とを互いに差し込むように嵌め込んで、前面板61を2つの側面板63、64の間に固定させることができる。
【0024】
また、背面板62のスリット72、72は、夫々側面板63のスリット73及び側面板64のスリット74に噛合うように形成されている。したがって、背面板62の一方のスリット72と側面板63のスリット73とを互いに差し込むように嵌め込み、背面板62の他方のスリット72と側面板64のスリット74とを互いに差し込むように嵌め込んで、背面板62を2つの側面板63、64の間に固定させることができる。
【0025】
このようにして、前面板61、背面板62、側面板63、64を、灰受け部20の上部周縁を取り囲むように組み立て、囲み板とすることができる。そして、前面板61、背面板62、側面板63、64からなる囲み板の内部に、落ち葉や枯れ木を燃焼させる燃焼室が形成される。
【0026】
図5は、火格子31、32、五徳81、82、及び扉91の取付け手順を示している。火格子31、32は、略同型に形成されて、灰受け部20の上に載置することができる。五徳81、82は、前面板61、背面板62、側面板63、64の上部に適宜配置することができる。また、前面板61には、摘み99を備えた扉91を取付けることができる。
【0027】
火格子31、32は、複数の火格子孔51及び53を備えている。図6において示したように、火格子孔51は平板に普通に開孔したものである。また、火格子孔53は、その周縁がエンボス加工により上方へ浮き出されて形成されている。ここでは、火格子孔51と火格子孔53とが、縦横に交互に配置された例を示しているが、火格子31、32全体において略均等であれば、どの様な配置をすることも可能である。
【0028】
縦横に交互に配列した場合、エンボス加工された火格子孔53の孔径は、普通に開孔した火格子孔51の孔径よりもやや小さ目とすることが好ましい。あるいは、エンボス加工された火格子孔53の全面積が、普通に開孔した火格子孔51の全面積よりもやや小さ目とすることが好ましい。このように形成することにより、落ち葉や枯れ木等を良好な燃焼状態で燃焼させることができる。
【0029】
火格子31、32の周縁端部には、下方に折り曲げられて形成された端側部35を備えている。そして、端側部35の高さによって、火格子31、32の上面と灰受け部20との間が所定の距離に形成されている。端側部35には複数の風孔55が設けられ、外気を火格子31、32の下側に導入することができる。灰受け部20の周囲にも、複数の風孔25が設けられている。したがって、外気は風孔25、55を通過して、火格子31、32の下側に導入され、火格子孔51、53から燃焼室内に流入することになる。
【0030】
囲み板にも風孔が設けられている。すなわち、前面板61には複数の風孔75が、背面板62には複数の風孔76が、側面板63、64には複数の風孔77、78が設けられている。したがって、外気は、風孔75、76、77、78からも大量に燃焼室内に導入される。
【0031】
このように、火格子孔51、53及び囲み板に設けられた風孔75、76、77、78から導入される外気によって、落ち葉や枯れ木等が燃焼される。ここで、エンボス加工された火格子孔53は、外気の導入に極めて良好に作用して、燃焼室内の最下層にある落ち葉や枯れ木の燃焼を促進する。そして、燃焼室内の全体に良好な対流を発生させ、優れた燃焼効率が得られるので、立消えを起こすことがない。
【0032】
五徳81、82には、下方に開放されたスリット85が設けられている。そして、前面板61、背面板62、側面板63、64の上部にも、上方に開放されたスリット65が設けられている。そして、五徳81、82のスリット85と、囲み板に設けられたスリット65とを互いに差し込むように嵌め込むことにより、五徳81、82を囲み板の上部に取付けることができる。
【0033】
図1、図4、図5に示すように、前面板61には扉91が設けられ、開口68を自在に開閉することができる。すなわち、前面板61には、2つのスリット66、67が形成されている。そして、扉91の両側部を内側に90°折り曲げて挿入部92、93とし、スリット66、67に差し込んでいる。さらに、両側部92、93の下端部94、95を90°折り曲げて、扉91が前面板61から外れないようにしている。
【0034】
挿入部92、93の折り曲げ部の近傍には、下方に開放されたスリット96、97が設けられている。扉91を閉じた状態では、スリット66、67とスリット96、97とを互いに差し込むように嵌め込んで、固定することができる。また、扉91を閉じた状態から扉91を少し持ち上げると、スリット66、67とスリット96、97との噛み合いが外れて、扉91を手前に回動させることができる。したがって、焚き火中に、落ち葉や枯れ木等の燃料を追加投入することができる。
【0035】
本発明の焚き火台10は、スリットを用いて部材の組み立てと分解を繰り返すこと、火格子孔53の形成にエンボス加工が重要であること、また、高温の火炎に接触すること等の要件を考慮して耐久性のある素材を使用する必要がある。したがって、灰受け部20、火格子31、32、囲み板61、62、63、64、扉91、五徳81、82等、全てステンレスの板材を素材とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0036】
10 焚き火台
20、120 灰受け部
21、22、121、122 回転軸
25、55、75、76、77、78 風孔
31、32、130 火格子
35 端側部
41、42 脚部
50 平板
51、53、135 火格子孔
52 凸部
61、161 前面板(囲み板)
62、162 背面板(囲み板)
63、64、163、164 側面板(囲み板)
65、66、67、71、72、73、74、85、96、97 スリット
68 開口
81、82 五徳
91 扉
92、93 挿入部
94、95 下端部
99 摘み
110 携帯コンロ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部を備えた皿状の灰受け部と、該灰受け部の上部に設けられる火格子と、前記灰受け部の上部周縁に設けられる囲み板とを備える焚き火台であって、
前記火格子が、複数の火格子孔を備える平板からなり、かつ、少なくとも一部の前記火格子孔の周縁がエンボス加工により上方へ浮き出されてなることを特徴とする焚き火台。
【請求項2】
前記火格子が、エンボス加工された火格子孔とエンボス加工されていない火格子孔とからなり、エンボス加工された火格子孔の全面積が、エンボス加工されていない火格子孔の全面積よりも小さく形成されてなることを特徴とする請求項1記載の焚き火台。
【請求項3】
前記火格子が、周縁部を下方に折り曲げて形成された端側部を備え、該端側部の高さによって前記灰受け部との間が所定の距離に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の焚き火台。
【請求項4】
前記火格子が、ステンレスの板を素材としてなることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の焚き火台。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−243042(P2010−243042A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91328(P2009−91328)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(508346354)有限会社昭和プレス (2)
【Fターム(参考)】