説明

無塩醤油風調味液、無塩醤油風調味料、無塩醤油風味ドレッシング、無塩醤油風味ポン酢、醤油風調味液、醤油風調味料、醤油風味ドレッシング並びに醤油風味ポン酢

【課題】 無塩醤油風調味液の呈味性を改善し、塩化ナトリウム、塩化カリウムを含まない無塩醤油風調味液、並びに、従来の製法では不可能であった塩分濃度が0.001%から18%の任意の濃度に調整された醤油風調味液の提供。
【解決手段】アルコールに浸漬した醤油麹を、20度以下の温度条件下に熟成させて原料調味液を製造し、この原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したものに、糖類とアミノ酸類を加えることで無塩醤油風調味液を得ることができる。また、この無塩醤油風調味液に任意量の醤油や食塩を添加することで食塩濃度を0.001%から18%の任意に調整した醤油風調味液を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮して、原料調味液からアルコールを除去したもの、又はアルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を原料とし、その呈味性を改善させた無塩醤油風調味液、無塩醤油風調味料、無塩醤油風味ドレッシング、無塩醤油風味ポン酢、醤油風調味液、醤油風調味料、醤油風味ドレッシング並びに醤油風味ポン酢に関する。
尚、本明細書における醤油麹とは、醤油原料となる大豆及び/又は脱脂加工大豆や小麦等に種麹を加えて培養させたものをいい、通常の醤油製造では、この醤油麹に食塩水を仕込んでもろみとし、これを醗酵・熟成させて醤油とするものである。又、本明細書における醤油風調味液には、農水省の見解にかかわらず、食塩濃度を0.001%から18%に調整したものすべてを含むものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、醤油は、15〜18%前後の食塩含有量を有し、この含有食塩によりその味を呈していた。
【0003】
近年、健康志向から減塩、低塩の醤油が販売されるようになった。
又、過去において、呈味性を維持しながらナトリウム摂取を制限された高血圧患者用の調味液として塩化ナトリウムの代わりに塩化カリウムを使用した無塩醤油が販売された(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、塩化カリウムを使用することに伴う以下のような問題点から現在は製造販売がなされていない。
すなわち、塩化カリウムに独特のエグ味があること、腎不全患者が一度に多量のカリウムを摂取すると高カリウム血漿をきたす恐れがあること、塩化カリウムを使用した醤油を無塩と称することの妥当性への疑問があることからである。
【0005】
したがって、現在販売されている減塩醤油は、塩化ナトリウム量を通常の約1/2(7%前後)にしたもので、塩化ナトリウムを含む点に変りはない。
【0006】
塩化ナトリウムを使用しない無塩調味液として、アルコールに浸漬した醤油麹を、20度以下の温度条件下に熟成して製造した調味液が製造されている。
この無塩調味液は10%のアルコールを含み、日本酒と同等のアルコール濃度を有するために直接に調味液としては使用できない(特許文献2参照)。
【0007】
また、減塩、低塩醤油として逆浸透膜等を使用して塩化ナトリウムを減少させた減塩、低塩醤油の調整が行なわれている(特許文献3、特許文献4参照)。
【0008】
このように、従来の減塩方法では、逆浸透膜を用いて原料醤油より1/2脱塩という方法が採られていた。
この為、塩分調整を行なうには、大きく脱塩(例えば、逆浸透膜法を3回繰り返して1/8に減塩)した後に、食塩を再添加する必要があり、逆浸透膜法だけでは、任意の塩分濃度の調整は困難であった。
【0009】
また、逆浸透膜などを使用した減塩調味液も塩分濃度が7%前後から減少すると、苦味、渋味、酸味などの雑味を呈しはじめる。
また、アルコールに浸漬した醤油麹を用いて製造された調味液およびアルコール除去のために濃縮した醤油麹を用いて製造された調味液は食塩を含有しないことから同様の苦味、渋味、酸味などの雑味を呈する。この原因は、特にアミノ酸のうち、リジン、バリン、メチオニン、トリプトファン並びに植物由来のアミノ酸のアミノ酸ペプチドであり、苦味、渋味、酸味などの雑味を呈するという問題点があった(非特許文献1参照)。
【0010】
以上のことから現状では、塩化ナトリウムや塩化カリウムを含まない醤油麹をアルコールに浸漬した浸漬物を、20度以下の温度条件下に熟成して製造した調味液を濃縮してアルコールを除去したもの、もしくは醤油麹をアルコールに浸漬した浸漬物を、20度以下の温度条件下に熟成して製造した調味液は、呈味性の問題で醤油製造の調味液以外(窒素比の調整や味の調整)の目的以外では販売されていない。食塩を含む醤油には苦味があるがこれに少量の調味液を加えても、醤油同様に食塩により苦味が呈味され問題を生じない。しかしながら、食塩濃度の減少に伴い呈味されていた苦味を感じるようになる。そのために特に7%未満の減塩醤油はあまり例を見ない。即ち商品化が難しいという問題があった。
【特許文献1】特許公開平6−189709号公報
【特許文献2】特許公開平06−125735号公報
【特許文献3】特許公開2004−357700号公報
【特許文献4】特許公開2001−046014号公報
【非特許文献1】都甲潔著、旨いメシには理由がある−味覚に関する科学的検証、角川書店、2001年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮して、原料調味液からアルコールを除去した調味液、もしくはアルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液の呈味性を改善し、塩化ナトリウム、塩化カリウムを含まない無塩醤油風調味液およびこの無塩醤油風調味液を粉末状もしくは顆粒状に調整した無塩醤油風調味料、無塩醤油風味ドレッシング、無塩醤油風味ポン酢を提供することを第1の課題としている。
【0012】
また、この無塩醤油風調味液を用いることで、従来の製法では不可能であった塩分濃度が0.001%から18%と任意に調整された醤油風調味液及びこの醤油風調味液を使用して粉末状もしくは顆粒状に調整した醤油風調味料、醤油風味ドレッシング、醤油風味ポン酢を提供することを第2の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記第1の課題を解決するために、本発明(請求項1)の無塩醤油風調味液は、
アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又はアルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて製造する構成とした。
醤油麹は醤油製造の際に使用されるものであればどの様なものでもよく例えば、丸大豆及び/又は脱脂加工大豆と小麦に種麹を入れこれを製麹して製造したものを使用することができる。
アルコールとしては醸造用アルコール(エチルアルコール)を使用する。アルコールは最終濃度が5〜20%、好ましくは6〜15%程度となる範囲で利用するのが最適である。アルコールに浸漬した醤油麹は20度以下、好ましくは15度以下の温度条件で1〜2ヶ月程度熟成させる。熟成の温度条件を20度以下としたのは、無塩条件下で熟成が行なわれるので、これ以上温度が上がると腐敗微生物の繁殖を抑えることが出来ないからである。また、原料調味液の加熱濃縮はおよそ80度から85度の温度で10分から5時間程度行なうのが好ましい。原料調味液の加熱濃縮は原料調味液からアルコールを蒸発させるために行なうものであるが、これにより原料調味液のアミノ酸が変化すると不都合である。そのため、前記温度と時間の範囲内で原料調味液の加熱濃縮を行なうことが好ましいが、これに限定されるものではない。尚、原料調味液を加熱するとアルコールの蒸発と一緒に水分も多少除かれる。
原料調味液に加える糖類としてはショ糖、果糖、ブドウ糖、オリゴ糖、環状オリゴ糖、デキストリン、トレハロースなどを使用し、アミノ酸類としてはグリシン、アルギニンなどを使用する。糖類やアミノ酸は、原料調味液の酸味、苦味や渋味などを呈味するために使用するものである。
【0014】
又、本発明(請求項2)の無塩醤油風調味料は、アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又はアルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液を粉末状又は顆粒状に形成した構成とした。
無塩醤油風調味液を粉末調味料とする方法は、例えば、スプレードライなどの従来から公知の乾燥手段で行なう。また、無塩醤油風調味液を顆粒状調味料とする方法についても、例えば、食品加工において従来から一般に行なわれている結合助剤を用いた造粒手段等で行なうことが出来る。
【0015】
又、本発明(請求項3)の無塩醤油風味ドレッシングは、
アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又はアルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液にドレッシング原料を加えて製造した構成とした。
ドレッシング原料としては、酢(穀物酢、玄米酢、もろみ酢、ワインビネガーなど)、油(オリーブオイル、コーン油、胚芽油などの食用油、香味油)、固形物(たまねぎ、ねぎ、しそ、オリーブなど)、香辛料(そのままか香辛料抽出物)、調味料(酵母エキス、チキンブイヨン、しいたけエキス、魚介エキス、調味料(アミノ酸)など)、増粘剤(キサンタンガム)、甘味料(カンゾウ、ステビア)などを使用し、これらを適宜加えて無塩の醤油風味ドレッシングを製造する。
【0016】
又、本発明(請求項4)の無塩醤油風味ポン酢は、
アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又はアルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液にポン酢原料を加えて製造した構成とした。
ポン酢原料としては柑橘酢(柚子、カボス、酢橘、橙、みかんなど)、穀物酢、酒、みりん、調味料(鰹節、昆布、しいたけ、いりこ又はそれらのエキスなど)を使用し、これらを適宜加えて無塩の醤油風味ポン酢を製造する。
【0017】
上記第2の課題を解決するために、本発明(請求項5)の醤油風調味液は、
アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又はアルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液に、食塩を含有する醤油及び/又は食塩を添加することで食塩濃度を0.001%から18%の任意に調整した構成とした。
【0018】
又、本発明(請求項6)の醤油風調味料は、
アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又はアルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液に、食塩を含有する醤油及び/又は食塩を添加することで食塩濃度を0.001%から18%の任意に調整した醤油風調味液を粉末状または顆粒状に形成した構成とした。粉末状または顆粒状にする方法は前記無塩醤油風調味料(請求項2)と同じである。
【0019】
又、本発明(請求項7)醤油風味ドレッシングは、
アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又はアルコールに浸漬した醤油麹を、20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液に、食塩を含有する醤油及び/又は食塩を添加することで食塩濃度を0.001%から18%の任意に調整した醤油風調味液に植物油、酢、香辛料などのドレッシング原料を加えて製造した構成とした。ドレシング原料は前記無塩醤油風ドレッシング(請求項3)に記載したものと同様である。
【0020】
又、本発明(請求項8)の醤油風味ポン酢は、
アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又はアルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液に、食塩を含有する醤油及び/又は食塩を添加することで食塩濃度を0.001%から18%の任意に調整した醤油風調味液に、柑橘果汁、酢、酒、みりんなどのポン酢原料を加えて製造した構成とした。
ポン酢の原料は前記無塩醤油風ポン酢(請求項4)に記載したものと同様である。
【発明の効果】
【0021】
本発明(請求項1)の無塩醤油風調味液は、アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又はアルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて製造したものであるから、独特の酸味、苦味や渋みなどの雑味を軽減し醤油風の呈味性を有しながら塩化ナトリウム、塩化カリウムを含まない無塩の調味液を得ることができる。また、遊離アミノ酸を高濃度に含有することからこれを健康食品などに使用することができる。
【0022】
また、本発明(請求項2)の無塩醤油風調味料は前記無塩醤油風調味液を粉末状または顆粒状に形成しているので、乾燥だしやふりかけなどにも使用することができるし、保管や使用が容易である。
【0023】
又、本発明(請求項3)の無塩醤油風味ドレッシングは、前記無塩醤油風調味液に植物油、酢、香辛料などのドレッシング原料を加えて製造しているので、無塩の新規なドレッシング風調味料を得ることができる。
【0024】
又、本発明(請求項4)の無塩醤油風味ポン酢は、前記無塩醤油風調味液に柑橘果汁、酢、酒、みりんなどのポン酢原料を加えて製造しているので、無塩の新規なポン酢風調味料を得ることができる。
【0025】
又、本発明(請求項5)の醤油風調味液は、アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又はアルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液に、食塩を含有する醤油及び/又は食塩を添加することで食塩濃度を0.001%から18%に調整したので、任意の塩分濃度とした醤油風調味液を容易に製造することができる。特に、本発明では、無塩醤油風調味液に後添加で食塩を含有する醤油及び/又は食塩を加えていくだけで、従来任意の塩分量に調節することができなかった醤油の塩分量を、0.001%から18%とした任意の塩分濃度の醤油風調味液を製造することができる。
【0026】
本発明(請求項6)の醤油風調味料は、前記調味料を粉末状又は顆粒状に形成しているから、乾燥だしやふりかけなどにも使用することができるし、保管や使用が容易である。
【0027】
又、本発明(請求項7)の醤油風味ドレッシングは、前記醤油風調味液に植物油、酢、香辛料などのドレッシング原料を加えて製造しているので、新規なドレッシング風調味料を得ることができる。
【0028】
又、本発明(請求項8)の醤油風味ポン酢は、前記醤油風調味液に柑橘果汁、酢、酒、みりんなどのポン酢原料を加えて製造しているので、新規なポン酢風調味料を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明における無塩醤油風調味液の製造方法の好ましい形態としては、アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮して、原料調味液からアルコールを除去したもの、又は前記原料調味液に、糖類(ショ糖、果糖、ブドウ糖、オリゴ糖、環状オリゴ糖、デキストリン、トレハロースなど)を加えて超音波、ホモジナイザーあるいは攪拌機を用いて十分攪拌をして0℃〜100℃で5分から3時間加熱したのち、これにアミノ酸類(グリシン、アルギニンなど)を加えて得る方法である。
【0030】
又、本発明における醤油風調味液の製造方法の好ましい形態としては、上記のようにして製造した無塩醤油風調味液に対して、後添加により食塩を含有する醤油及び/又は食塩を加えるようにしたもので、これにより塩分濃度を0.001%から18%の任意に設定した醤油風調味液を製造することができる。
【0031】
下記の表1に(A)市販の1/2減塩醤油(塩分濃度7%)、(B)無塩大豆HFCの3倍希釈液、(C)1/5減塩醤油、(D)本発明品、を用いて行なった呈味性改善確認の官能試験の結果を示す。
無塩大豆HFCとは、アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて製造した原料調味液を加熱濃縮して、原料調味液からアルコールを除去したものをいい、本試験ではこれに水を加えて3倍量に希釈したものを使用した。無塩大豆HFCとしては、福岡県醤油醸造協同組合製の調味液を原料として使用した。
1/5減塩醤油(塩分濃度2.87%)は、呈味性の比較のために特別に調整したもので、市販の減塩醤油(塩分濃度7%)を、逆浸透膜を用いて2回脱塩して製造した。
本発明品は、以下の方法で製造したものを使用した。大豆・脱脂加工大豆・小麦に種麹を加えて製麹した醤油麹をアルコールに浸漬した浸漬物を、20度以下の温度条件下で熟成して製造した調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの(無塩大豆HFC)1に対し、環状オリゴ糖1/10量、水2倍量を加え超音波にて融解するまで十分に攪拌し60℃まで加熱する。これにトレハロースを全量の1/150量を加えて同様に超音波にて融解するまで十分に攪拌し、さらに85℃まで加熱しその後冷却して本発明品を得た。
なお、評価は訓練されたパネラー10名で実施し、1/2減塩醤油(市販品)を0として比較対照品の評価を±2点の5点法で評価した。
また、本発明品としては、大豆・脱脂加工大豆・小麦に種麹を加えて製麹した醤油麹をアルコールに浸漬した浸漬物を、20度以下の温度条件下で熟成して製造した調味液(無塩大豆HFS)1に対し、環状オリゴ糖1/20量を加えて攪拌機もしくは超音波にて溶解するまで十分に攪拌し60ないし65度まで加熱し、これにトレハロースを1/200量加えて攪拌しながら85度まで加熱し、その後冷却しても得ることができる。しかし、呈味試験では、アルコールも味覚に関与するので、前記呈味性改善確認の官能試験ではアルコールを含まない無塩大豆HFCを呈味したものを用いた。尚、前記無塩大豆HFSは、福岡県醤油醸造協同組合製の調味液でアルコールを10%含有している。アルコールは、加熱攪拌の際にある程度蒸発するし、仮に残っていても加熱蒸発させてアルコール濃度を調整できるので醤油の製造には支障はない。むしろ防腐のためにはアルコールが3%前後残っていた方が好ましい。
【0032】
【表1】

【0033】
本発明品は、苦味については市販品より少なく、甘味がやや強く、渋味が少ない。又、旨味が強く、酸味が少ない結果が得られた。現在市販品として販売されている減塩醤油(食塩含有量7%)に比較しても醤油の味の内、甘味、酸味、苦味、旨味の全てに於いて同等かそれ以上の結果を得た。呈味を施していない無塩大豆HFC(本発明品と同濃度に希釈した希釈液)に比べて優位に味覚が改善され市販品の減塩醤油と同等かそれ以上の改善ができた。ただし、無塩醤油風調味液のため、醤油の味の内、塩味は存在しない。
【0034】
本発明品は、従来提供し得なかった無塩醤油風調味液の呈味性を改善することで提供を可能にした。
【0035】
又、本発明品に3.5%の食塩を加えたものと、市販の食塩含有量8.2%の減塩醤油との味覚センサーによる呈味試験を行ったところ、本発明品に3.5%の食塩を加えたものの方が、市販の前記減塩醤油に比べて、苦味がほとんど無く、旨味が強く、塩味が薄いという結果を得た。このことから、本発明では、従来の減塩醤油では実現することができなかった超低塩の醤油を提供することができるという顕著な効果を達成し得たものである。
尚、超低塩醤油は従来の醤油に比べてきわめて食塩含有量が少ない。このため味覚としては薄く感じパンチがない印象を受ける。したがって、酵母エキスや、かつおエキス、昆布エキス、煮干エキスなどのアミノ酸を加えることで、味に幅を持たせよりおいしい調味料として提供することができる。又、醤油の防腐は、高濃度の塩分に由来しているため、従来より使用されている酒精やビタミンB1や油性甘草などを使用して防腐させることとし、さらに加熱充填することにより保存性を高めることができる。提供する形態としては、ホットパックに充填した使い切りの子袋包装や小さめの瓶に充填することが好ましい。さらに食品としての安全性を確保するために賞味期限を設け、開封後は冷蔵庫に保管するよう注意書きを施すことが好ましい。尚、ポン酢、ドレッシングはともに酢を使用することから低塩にもかかわらず防腐することができる。そのため、ドレッシング風調味料やポン酢風調味料には前記のような手段を講ずる必要がない。
【0036】
次に、本発明の無塩醤油風ドレッシングの実施例について説明する。
アルコールに浸漬した醤油麹を20度以下の温度条件下で熟成させて原料調味液を製造し、この原料調味液を加熱凝縮してアルコールを除去したものに、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液30ccにオリーブオイル60cc、リンゴ酢10cc、砂糖少々を加えてよく振る。またよく摺ったゴマやみじん切りしたたまねぎを適量加えてもよい。無塩粉末鰹だしを加えると和風ではなお美味しくなる、ネギや大葉のみじん切りを適量入れても良い。一週間ほど冷蔵庫で寝かせると一層おいしい。必要に応じてこれに塩や醤油を好みの量加えることで、任意の塩分濃度を持つ醤油風味ドレッシングを作ることができる。
【0037】
次に本発明の無塩醤油風ポン酢の実施例について説明する。
日本酒60ccとみりん50ccを弱火にかけ、アルコール分をとばして煮きる。これに前記無塩醤油風調味液100ccを加え弱火で5分間煮詰める。すぐに冷まし、これに柚子1個、酢橘4個を搾ってこした物を加える。それぞれの無塩の粉末鰹だし、粉末昆布だし、粉末いりこだしはそれぞれ3gを鍋にとり、水30ccを加えて煮立てておりを取り、冷ましてから加える。できれば冷蔵庫で一日以上寝かせてから使う。必要に応じて塩や醤油を少々加えても良く、任意の塩分濃度を持つ醤油風味ポン酢を作ることもできる。
【0038】
次に、本発明を応用した無塩醤油風だし調味液の製造方法について説明する。それぞれの無塩の粉末鰹だし、粉末昆布だし、粉末いりこだし各3gを30ccの水に溶き煮詰めて15ccにしてこれを前記無塩醤油風調味液100ccを加え軽く煮立てたものをろ過して容器にいれ、急冷して得ることができる。これに塩、醤油などを加えて任意の塩分濃度を持つ醤油風だし調味液を得ることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールに浸漬した醤油麹を、20度以下の温度条件下で熟成させて原料調味液を製造し、この原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又は前記原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて製造したことを特徴とする無塩醤油風調味液。
【請求項2】
アルコールに浸漬した醤油麹を、20度以下の温度条件下で熟成させて原料調味液を製造し、この原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又は前記原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液を、粉末状又は顆粒状に形成したことを特徴とする無塩醤油風調味料。
【請求項3】
アルコールに浸漬した醤油麹を、20度以下の温度条件下で熟成させて原料調味液を製造し、この原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又は前記原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液に、ドレッシング原料を加えて製造したことを特徴とする無塩醤油風味ドレッシング。
【請求項4】
アルコールに浸漬した醤油麹を、20度以下の温度条件下で熟成させて原料調味液を製造し、この原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又は前記原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液に、ポン酢原料を加えて製造したことを特徴とする無塩醤油風味ポン酢。
【請求項5】
アルコールに浸漬した醤油麹を、20度以下の温度条件下で熟成させて原料調味液を製造し、この原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又は前記原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液に、食塩を含有する醤油及び/又は食塩を添加することで食塩濃度を0.001%から18%の任意に調整したことを特徴とする醤油風調味液。
【請求項6】
アルコールに浸漬した醤油麹を、20度以下の温度条件下で熟成させて原料調味液を製造し、この原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又は前記原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液に、食塩を含有する醤油及び/又は食塩を添加することで食塩濃度を0.001%から18%の任意に調整した醤油風調味液を、粉末状または顆粒状に形成したことを特徴とする醤油風調味料。
【請求項7】
アルコールに浸漬した醤油麹を、20度以下の温度条件下で熟成させて原料調味液を製造し、この原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又は前記原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液に、食塩を含有する醤油及び/又は食塩を添加することで食塩濃度を0.001%から18%の任意に調整した醤油風調味液に、ドレシング原料を加えて製造したことを特徴とする醤油風味ドレッシング。
【請求項8】
アルコールに浸漬した醤油麹を、20度以下の温度条件下で熟成させて原料調味液を製造し、この原料調味液を加熱濃縮してアルコールを除去したもの、又は前記原料調味液に、糖類とアミノ酸類を加えて得た無塩醤油風調味液に、食塩を含有する醤油及び/又は食塩を添加することで食塩濃度を0.001%から18%の任意に調整した醤油風調味液に、ポン酢原料を加えて製造したことを特徴とする醤油風味ポン酢。

【公開番号】特開2007−181450(P2007−181450A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237384(P2006−237384)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(505457433)株式会社オフィス・ケイ (6)
【Fターム(参考)】