説明

無機コーティングを有するプラスチック体、それらの製造方法及びそれらの使用

本発明は、一面又は多面のSi−含有の及び無機のコーティングを有する、ラジカル重合により得ることができるプラスチックからプラスチック体を製造する方法に関する。その場合に、まず最初に、場合により付加的に流れ調節助剤を含有していてよい溶剤中に無機粒子を含有している塗料組成物での基体のコーティングが行われる。そのようにコートされた1つ又はそれ以上の基体は、重合室を組み立てるために使用されることができ、その際にコートされた面が該室の内側である。重合開始剤の存在でのモノマー混合物のラジカル重合後に、内側にある無機コーティングは基体から、ラジカル重合されるプラスチックもしくはプラスチック体の表面中もしくは表面上へ移行する。本発明はさらに相応するプラスチック体及びそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機コーティングを有するプラスチック体及びそれらの製造方法並びにそれらの使用に関する。
【0002】
技術水準
EP-A 0 193 269は、シリカ−粒子でコートされている基体に関する。該コーティングは、層厚に関して極めて均一であり、基体上に並はずれて強固に接着し、かつ良好な反射防止特性を有する。
【0003】
US 4,571,361には、帯電防止加工されたプラスチックフィルムが記載されている。その場合に、例えば酢酸セルロース又はポリエチレンテレフタレートからなるフィルムは、例えばアンチモン−スズ−酸化物−粒子を含有していてよい重合性の塗装系でコートされる。耐摩耗性コーティング及び10Ωより少ない/10Ωに等しい範囲内の僅かな表面抵抗を有するフィルムが得られる。
【0004】
EP-B 0 447 603には、ケイ酸塩溶液及び伝導性溶液を含有している帯電防止コーティング組成物が記載されている。双方の溶液は、加水分解させかつ前記のコーティング組成物へと重縮合させるために混合され、該組成物はケイ酸塩と伝導性材料との間で化学結合を有する。該コーティング組成物は、ガラスパネル又はプラスチックパネルからなる帯電防止性の防眩視覚表示スクリーンの製造に適している。
【0005】
課題及び解決手段
例えばガラス又はプラスチック体のような基体に、例えば帯電防止特性を有していてよい無機層を設けることは公知である。その場合に、通例、該コーティングは、乾燥又は重合により硬化されることができる塗装系を用いて基体表面上に施与される。耐摩耗性及び例えば電気伝導率に関して完全に満足のいく性質を有するコートされた基体が得られる。
【0006】
課題としては、プラスチック体に無機コーティングを設けることを可能にし、その場合に技術水準と比較して改善されたプラスチック表面上への結合が達成されるべきである方法を提供することであった。
【0007】
前記課題は、次の処理工程:
a)ナイフ塗布、流し塗又は浸し塗を用いて、場合により付加的に流れ調節助剤(Verlaufhilfsmittel)を含有していてよい溶剤中にケイ素ベースの接着促進剤(Haftvermittler)及び無機粒子を1:9〜9:1の質量比で含有する塗料組成物で基体をコートする工程、
b)該基体上の該塗料組成物を乾燥させる工程、それによりコートされた基体が得られ、
c)そのようにコートされた1つ又はそれ以上の基体を、重合室を組み立てるために使用する工程、その場合にコートされた面が該室の内側であり、
d)該重合室中へ、ポリマー含分を有していてよいラジカル重合性モノマーからなる重合可能な液体を注入する工程、
e)重合開始剤の存在で、該重合可能な液体をラジカル重合する工程、その場合に内側にある該無機コーティングは基体から、ラジカル重合されるプラスチックもしくはプラスチック体の表面中へ又は表面上へ移行し、及び
f)該重合室から、一面又は多面の無機コーティングを有する該コートされたプラスチック体を取り出す工程
により、一面又は多面の無機コーティングを有し、ラジカル重合により得ることができるプラスチックからプラスチック体を製造する方法によって解決される。
【0008】
本発明による方法を用いて、表面の耐摩擦性(Scheuerfestigkeit)に関して改善された性質を有するプラスチック体が得られることができる。さらに無機コーティングの極めて均一な層厚及び表面の高い均一性が達成されることができる。
【0009】
発明の説明
本発明は、一面又は多面の無機コーティングを有し、ラジカル重合により得ることができるプラスチックからプラスチック体を製造する方法に関する。
【0010】
プラスチック体は、本発明による方法の過程で入手可能である、事実上任意の形状の各々のプラスチック−物体であると理解されるべきである。好ましいプラスチック体は、例えば平らなシートの形状を有していてよい。しかしながら、他のプラスチック体、例えば波形板、立方体、ブロック(Quader)、丸棒等も可能である。該プラスチック体は例えば少なくとも1500MPa、好ましくは少なくとも2000MPaのISO 527-2による弾性率を有していてよい。シートは、例えば1mm〜200mm、特に3〜30mmの範囲内の厚さを有していてよい。例えば塊のシートの常用の寸法は、3×500〜2000×2000〜6000mm(厚さ×幅×長さ)の範囲内である。
【0011】
該無機コーティングは、使用目的に応じて一面又は多面で行われることができる。平らなシートの場合に、好ましくは大平面の一方又は双方がコートされる。しかしながら、より小さなエッジ面をコートするか又は全ての平面のまんべんないコーティングを行うことも可能である。
【0012】
本方法は、少なくとも処理工程a)〜f)を含む
a)ナイフ塗布、流し塗又は浸し塗を用いて、場合により付加的に流れ調節助剤を有していてよい溶剤中にケイ素ベースの接着促進剤及び無機粒子を1:9〜9:1の質量比で含有している塗料組成物で基体をコートする工程、
基体は、第一に、本発明の目的に適している限り、形及び材料に関して事実上任意の物体であると理解されるべきである。特に該基体はコート可能でなければならず、かつ重合室を組み立てるために適していなければならない。このためには、特に硬質の固体原料、例えばセラミック、金属又は特に好ましくはガラスからなる平らなシートが適している。プラスチックからなるシート又はプラスチックフィルムも同様に適当でありうる。特にポリエチレンテレフタレートからなるプラスチックフィルムが適当でありうる。フィルムは、重合室を組み立てるために適当であるために、硬質の基体上に、例えばガラス板上に貼り付けられていてよいか、粘着されていてよいか、又は吸着されていてよい。
【0013】
基体はプラスチックからなっていてよい。これには、特にポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、これらはグリコールで変性されていてもよい、及びポリブチレンテレフタレート(PBT)、シクロオレフィン系コポリマー(COC)、アクリルニトリル/ブタジエン/スチレン−コポリマー及び/又はポリ(メタ)アクリレートが属する。
【0014】
この場合にポリカーボネート、シクロオレフィン系ポリマー及びポリ(メタ)アクリレートが好ましく、その場合にポリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0015】
ポリカーボネートは当工業界において公知である。ポリカーボネートは形式的に炭酸と脂肪族又は芳香族のジヒドロキシ化合物とからなるポリエステルであるとみなされることができる。これらは、重縮合反応又はエステル交換反応によるジグリコール又はビスフェノールとホスゲン又は炭酸ジエステルとの反応によって容易に入手可能である。
【0016】
この場合にビスフェノールから誘導されるポリカーボネートが好ましい。これらのビスフェノールには、特に2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン (ビスフェノールA)、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン (ビスフェノールB)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン (ビスフェノールC)、2,2′−メチレンジフェノール (ビスフェノールF)、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン (テトラブロモビスフェノールA)及び2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン (テトラメチルビスフェノールA)が属する。
【0017】
通常、そのような芳香族ポリカーボネートは、界面重縮合又はエステル交換により製造され、その場合に詳細は、Encycl. Polym. Sci. Engng. 11, 648-718に記載されている。
【0018】
界面重縮合の際に、ビスフェノールはアルカリ性水溶液として不活性な有機溶剤、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン又はテトラヒドロフラン中に乳化され、かつ段階的反応でホスゲンと反応される。触媒としてアミンが、立体障害性ビスフェノールの場合に相間移動触媒も使用される。生じるポリマーは、使用される有機溶剤中に可溶である。
【0019】
ビスフェノールの選択を通して、ポリマーの性質は幅広く変更されることができる。異なるビスフェノールの同時使用の場合に、多段階−重縮合でブロック−ポリマーも合成されることができる。
【0020】
シクロオレフィン系ポリマーは、環式オレフィン、特に多環式オレフィンの使用下に得ることができるポリマーである。
【0021】
環式オレフィンは、例えば単環式オレフィン、例えばシクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン並びにメチル、エチル又はプロピルのような炭素原子1〜3個を有するこれらの単環式オレフィンのアルキル誘導体、例えばメチルシクロヘキセン又はジメチルシクロヘキセン、並びにこれらの単環式化合物のアクリレート−及び/又はメタクリレート−誘導体を含む。さらにまた、オレフィン系側鎖を有するシクロアルカン、例えばシクロペンチルメタクリレートも環式オレフィンとして使用されることができる。
【0022】
橋かけされた多環式オレフィン化合物が好ましい。これらの多環式オレフィン化合物は二重結合を、橋かけされた多環式シクロアルケンが該当する環中にも、側鎖中にも有していてよい。これらは、多環式シクロアルカン化合物のビニル誘導体、アリルオキシカルボキシ誘導体及び(メタ)アクリルオキシ誘導体である。これらの化合物はさらにアルキル−、アリール−又はアラルキル−置換基を有していてよい。
【0023】
例示的な多環式化合物は次のものであるが、これにより限定されるものではない:ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン (ノルボルネン)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン (2,5−ノルボルナジエン)、エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン (エチルノルボルネン)、エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン (エチリデン−2−ノルボルネン)、フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[4.3.0]ノナ−3,8−ジエン、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3,8−デセン−(3,8−ジヒドロジシクロペンタジエン)、トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、テトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]−3−ドデセン、エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、メチルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]−3−ドデセン、エチリデン−9−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5,17,10]−3−ドデセン、ペンタシクロ[4.7.0.12,5,O,O3,13,19,12]−3−ペンタデセン、ペンタシクロ[6.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、ジメチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、ビス(アリルオキシカルボキシ)トリシクロ[4.3.0.12,5]−デカン、ビス(メタクリルオキシ)トリシクロ[4.3.0.12,5]−デカン、ビス(アクリルオキシ)トリシクロ[4.3.0.12,5]−デカン。
【0024】
シクロオレフィン系ポリマーは、少なくとも1つの前記のシクロオレフィン系化合物、特に多環式炭化水素化合物の使用下に製造される。さらにまた、シクロオレフィン系ポリマーを製造する際に、前記のシクロオレフィン系モノマーと共重合されることができる別のオレフィンが使用されることができる。これには、とりわけエチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、メチルペンテン、スチレン及びビニルトルエンが属する。
【0025】
たいていの前記のオレフィン、特にシクロオレフィン及びポリシクロオレフィンも、商業的に得られることができる。さらにまた、多くの環式及び多環式のオレフィンがディールス−アルダー−付加反応により得ることができる。
【0026】
シクロオレフィン系ポリマーの製造は公知方法で行われることができ、例えばこれはとりわけ日本国特許第11818/1972、同43412/1983、同1442/1986及び同19761/1987号公報及び日本国特許出願公開第75700/1975、同129434/1980、同127728/1983、同168708/1985、同271308/1986、同221118/1988及び同180976/1990号公報及び欧州特許出願公開第EP-A-0 6 610 851、同EP-A-0 6 485 893、同EP-A-0 6 407 870及び同EP-A-0 6 688 801号明細書に記載されている。
【0027】
シクロオレフィン系ポリマーは例えば、触媒としてアルミニウム化合物、バナジウム化合物、タングステン化合物又はホウ素化合物の使用下に溶剤中で重合されることができる。
【0028】
該重合が、条件、特に使用される触媒に応じて、開環下に又は二重結合の開裂(Oeffnung)下に行われうることが仮定される。
【0029】
さらにまた、シクロオレフィン系ポリマーをラジカル重合により得ることが可能であり、その場合に光又は開始剤はラジカル形成剤として使用される。これは特に、シクロオレフィン及び/又はシクロアルカンのアクリロイル誘導体に当てはまる。この種類の重合は、溶液中でも、バルクでも行われることができる。
【0030】
別の好ましいプラスチック基体は、ポリ(メタ)アクリレートを含む。これらのポリマーは一般的に、(メタ)アクリレートを含有する混合物のラジカル重合により得られる。これらは前記されており、その場合に、製造に応じて、単官能性並びに多官能性の(メタ)アクリレートが使用されることができる。
【0031】
本発明の好ましい一態様によれば、これらの混合物は、モノマーの質量に対して、メチルメタクリレートを少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも60質量%及び特に好ましくは少なくとも80質量%含有する。
【0032】
前記の(メタ)アクリレートに加えて、重合すべき組成物は、メチルメタクリレート及び前記の(メタ)アクリレートと共重合性である別の不飽和モノマーも有していてよい。これについての例は、特に成分E)のもとにより詳細に説明されている。
【0033】
一般的にこれらのコモノマーは、モノマーの質量に対して、0〜60質量%、好ましくは0〜40質量%及び特に好ましくは0〜20質量%の量で使用され、その場合に該化合物は個々にか又は混合物として使用されることができる。
【0034】
重合は一般的に、特に成分D)のもとに記載されている公知のラジカル開始剤を用いて開始される。これらの化合物はしばしば、モノマーの質量に対して、0.01〜3質量%、好ましくは0.05〜1質量%の量で使用される。
【0035】
前記のポリマーは、個々にか又は混合物として使用されることができる。この場合に、例えば分子量又はモノマー組成が異なる、多様なポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート又はシクロオレフィン系ポリマーも使用されることもできる。
【0036】
さらにプラスチック基体は、注型法(Gusskammerverfahren)により製造されることができる。この場合に、例えば適している(メタ)アクリル混合物は型へ入れられ、かつ重合される。そのような(メタ)アクリル混合物は、一般的に前記の(メタ)アクリレート、特にメチルメタクリレートを有する。さらに、(メタ)アクリル混合物は前記のコポリマー並びに、特に粘度の調節のために、ポリマー、特にポリ(メタ)アクリレートを含有していてよい。
【0037】
注型法により製造されるポリマーの分子量の質量平均Mは、成形材料において使用されるポリマーの分子量よりも一般的に高い。これにより、多数の公知の利点がもたらされる。一般的に、注型法により製造されるポリマーの分子量の質量平均は、500 000〜10 000 000g/molの範囲内であるが、これにより限定されるものではない。
【0038】
注型法により製造された、好ましいプラスチック基体は、Cyro Inc. USAから商標名(登録商標)Acryliteで商業的に得られることができる。
【0039】
さらにまた、基体は、該基体がプラスチックからなる限り、全ての種類の常用の添加剤を含有していてよい。これには、とりわけ酸化防止剤、離型剤、防炎加工剤、潤滑剤、染料、流動改善剤、充填剤、光安定剤及び有機リン化合物、例えばリン酸エステル、リン酸ジエステル及びリン酸モノエステル、ホスフィット、ホスホリナン(Phosphorinane)、ホスホラン又はホスホネート、顔料、耐候保護剤及び可塑剤が属する。しかしながら添加剤の量は使用目的に制限されている。
【0040】
ポリ(メタ)アクリレートを含む特に好ましい成形材料は、商標名(登録商標)AcryliteでCyro Inc.社 USAから商業的に入手可能である。シクロオレフィン系ポリマーを含む好ましい成形材料は、Ticonaから商標名(登録商標)Topas及びNippon Zeonから(登録商標)Zeonexで購入されることができる。ポリカーボネート−成形材料は、例えばBayerから商標名(登録商標)Makrolon又はGeneral Electricから(登録商標)Lexanで入手可能である。
【0041】
特に好ましくは、プラスチック基体は、該基体の全質量に対して、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート及び/又はシクロオレフィン系ポリマーを少なくとも80質量%、特に少なくとも90質量%含む。特に好ましくはプラスチック基体はポリメチルメタクリレートからなり、その場合にポリメチルメタクリレートは常用の添加剤を含有していてよい。
【0042】
好ましい一実施態様によれば、プラスチック基体は、少なくとも10kJ/m、好ましくは少なくとも15kJ/mのISO 179/1による衝撃強さを有していてよい。
【0043】
プラスチック基体の形並びに大きさは本発明にとって本質的ではない。一般的に、1mm〜200mm、特に5〜30mmの範囲内の厚さを有するシート形又はパネル形の基体がしばしば使用される。
【0044】
塗料組成物は、接着促進剤及び無機粒子を1:9〜9:1の質量比で含有する。
【0045】
接着促進剤は、コロイド状に溶解されたSiO粒子からか又はシラン縮合物からなっていてよい。場合により付加的に流れ調節助剤及び水を含有する溶剤又は溶剤混合物中の、SiO 1〜2質量%及び別の無機粒子2.5〜7.5質量%が好ましい。流れ調節助剤は、例えば0.01〜2質量%、好ましくは0.1〜1質量%の濃度で含まれていてよい。
【0046】
他の結合剤又は重合する有機成分は、好ましくは含まれていないか、又は含まれていたとしても、僅かで重要でない量で含まれているに過ぎない。
【0047】
本発明の範囲内で、無機という概念は、無機コーティングの炭素含分が、無機コーティング(a)の質量に対して、最大25質量%、好ましくは最大17質量%及び極めて特に好ましくは最大10質量%であることを意味する。この量は元素分析を用いて決定されることができる。
【0048】
本発明の別の態様によれば、コロイド状に溶解されたSiO−粒子を含有するシラン縮合物も使用されることができる。そのような溶液はゾル−ゲル法により得られることができ、その場合に特にテトラアルコキシシラン及び/又はテトラハロゲンシランが縮合される。
【0049】
通常、前記のシラン化合物から水含有コーティング剤は、有機ケイ素化合物が、加水分解に十分な量の水、すなわち加水分解のために設けられた基、例えばアルコキシ基1mol当たり水>0.5molで、好ましくは酸触媒作用下に加水分解されることによって製造される。酸として、例えば無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等、又は有機酸、例えばカルボン酸、有機スルホン酸等、又は酸性イオン交換体が添加されることができ、その場合に加水分解反応のpHは通例2〜4.5、好ましくは3である。
【0050】
該コーティング組成物は好ましくは、SiO 1〜2質量%、好ましくは1.2〜1.8質量%及びアンチモン−スズ−酸化物−粒子2.5〜7.5質量%、好ましくは3〜7質量%、特に好ましくは4〜6質量%の形の無機粒子を溶剤としての水中に含有する。pH−値は好ましくはアルカリ性に調節されており、そのために該粒子は凝集しない。この酸化物−粒子の粒度は重要でないが、しかしながらその場合に透明度は粒度に依存している。好ましくは該粒子は多くとも300nmの大きさを有し、その場合にこれらは特に、1〜200nm、好ましくは1〜50nmの範囲内である。
【0051】
本発明の特別な一態様によれば、該コロイド溶液は好ましくは、7.5を上回るか又は7.5に等しい、特に8を上回るか又は8に等しい及び特に好ましくは9を上回るか又は9に等しいpH−値で施与される。
【0052】
塩基性のコロイド溶液は、酸性溶液よりも安価である。さらにまた、酸化物−粒子の塩基性のコロイド溶液は特に簡単にかつ長時間に亘って貯蔵できる。
【0053】
前記のコーティング剤は、商標名(登録商標)Ludox(Grace社、Worms);(登録商標)Levasil(Bayer社、Leverkusen);(登録商標)Klebosol(Clariant社)で商業的に得られることができる。
【0054】
好ましくはまた、粒子の良好な分布を促進するために、付加的に、挙げられる流れ調節助剤は、例えば0.1〜1質量%、好ましくは0.3〜0.5質量%の濃度で含まれている。
【0055】
塗料組成物は使用前に個々の成分から混合されることができる。
【0056】
例えば、水(溶液1)中の市販の10〜15%濃度のアンチモン−スズ−酸化物−溶液又は懸濁液が使用されることができ、かつこれはすぐ使用できる調節されたシリカゾル−溶液(溶液2)及び希釈溶液(溶液3)と混合されることができる。
【0057】
該シリカゾル−溶液は、まず最初に濃縮された形で、例えば、10〜100nm、好ましくは7〜50nmの大きさ範囲内のSiO粒子を含有していてよく、かつ20〜30%濃度のアルカリ性に調節された水性の溶液又は懸濁液の形で存在していてよい。濃縮された溶液はそしてまたHO中約30%濃度ですぐ使用できる溶液(溶液2)として調節されることができる。好ましくは分配助剤もしくは流れ調節助剤が添加される。例えば界面活性剤が適しており、[脂肪アルコール+3−エチレンオキシド、Genapol X 80]の添加が好ましい。
【0058】
アニオン性基を有する流れ調節助剤に加えて、コーティング組成物は別の流れ調節助剤、例えば非イオン性の流れ調節助剤を含んでいてよい。これらの中では特にエトキシレートが好ましく、その場合に特にエトキシ基を有するエステル並びにアルコール及びフェノールが使用されることができる。これにはとりわけノニルフェノールエトキシレートが属する。
【0059】
該エトキシレートは特に、エトキシ基1〜20個、特に2〜8個を含む。エトキシル化されたアルコール及びエステルの疎水性基は好ましくは、炭素原子1〜40個、好ましくは4〜22個を含み、その場合に線状並びに分枝鎖状のアルコール基及び/又はエステル基が使用されることができる。
【0060】
そのような製品は例えば商標名(登録商標)Genapol X80で商業的に得られることができる。
【0061】
非イオン性の流れ調節助剤の添加は、帯電防止コーティングへの不利な作用を本質的に示さない量に制限されている。一般的に、コーティング組成物に、該コーティング組成物の全質量に対して、1つ又はそれ以上の非イオン性の流れ調節助剤0.01〜4質量%、特に0.1〜2質量%が添加される。
【0062】
希釈剤(溶液3)として、NaOHで約pH 9.0に調節された完全に脱ミネラル化されたHO(VE−水)が使用されることができる。好都合にはここでも、流れ調節助剤が含まれていてもよい。
【0063】
少なくとも1つのアニオン性基を有する流れ調節助剤は当工業界において公知であり、その場合にこれらの流れ調節助剤は一般的にカルボキシ基、スルホネート基及び/又はスルフェート基を有する。好ましくはこれらの流れ調節助剤は少なくとも1つのスルホネート基を含む。少なくとも1つのアニオン性基を有する流れ調節助剤は、アニオン性の流れ調節助剤及びアニオン性基に加えてカチオン性基も含む両性の流れ調節助剤を含む。この中では、アニオン性の流れ調節助剤が好ましい。アニオン性の流れ調節助剤を用いて、特に変形可能な(umformbaren)プラスチック体の製造が可能である。
【0064】
好ましくは、少なくとも1つのアニオン性基を有する流れ調節助剤は、炭素原子2〜20個、特に好ましくは2〜10個を含み、その場合に該有機基は脂肪族並びに芳香族の基を有していてよい。本発明の特別な一態様によれば、炭素原子2〜10個を有するアルキル基又はシクロアルキル基を含むアニオン性の流れ調節助剤が使用される。
【0065】
少なくとも1つのアニオン性基を有する流れ調節助剤は、別の極性基、例えばカルボキシ基、チオカルボキシ基又はイミノ基、カルボン酸エステル基、炭酸エステル基、チオカルボン酸エステル基、ジチオカルボン酸エステル基、チオ炭酸エステル基、ジチオ炭酸エステル基及び/又はジチオ炭酸アミド基を有していてよい。
【0066】
特に好ましくは、式(I)
【0067】
【化1】

で示される流れ調節助剤が使用され、ここで、Xは独立して酸素又は硫黄原子を表し、Yは式OR、SR又はNRの基を表し、ここでRは独立して炭素原子1〜5個、好ましくは1〜3個を有するアルキル基を表し、かつRは炭素原子1〜10個、好ましくは2〜4個を有するアルキレン基を表し、かつMはカチオン、特にアルカリ金属イオン、特にカリウム又はナトリウム、又はアンモニウムイオンを表す。
【0068】
一般的に、コーティング組成物に、該コーティング組成物の全質量に対して、少なくとも1つのアニオン性基を有する1つ又はそれ以上の流れ調節助剤0.01〜1質量%、特に0.03〜0.1質量%が添加される。
【0069】
そのような化合物は特に、Raschig AGから商標名Raschig OPX(登録商標)又はRaschig DPS(登録商標)で得られることができ、かつ例えば0.1〜1質量%、好ましくは0.4〜0.6質量%の濃度で含まれていてよい。
【0070】
使用する準備のできたコーティング組成物を得るために、好ましくはまず最初に溶液2及び3が例えば1:1〜1:2、例えば1:1.5の比で混合され、ついで該混合物は溶液1と、約1:1の比で混合される。
【0071】
a)基体上で塗料組成物を乾燥させる工程、それによりコートされた基体が得られる。
【0072】
ナイフ塗布、流し塗、浸し塗を用いて基体、例えばガラス板をコートした後に、該塗料組成物は乾燥される。これは例えば50〜200℃、好ましくは80〜120℃の温度範囲で行われることができ、その場合に該温度は基体の温度安定性に適合されるべきである。通例、ほぼ完全に硬化されたコーティングを得るためには、0.1〜5時間、好ましくは2〜4時間の乾燥時間で十分である。乾燥段階の後に、コートされた基体がさらに使用される前に、完全な硬化を保証するために、さらに放置段階、例えば室温で12〜24時間が続いてよい。
【0073】
該塗料層は、無機粒子からなる固体含分を有する溶液から生じているので、該層は、球状構造から構成されており、かつ必然的にある程度の空所含分を有する連続的な三次元ネットワークからなっている。構造構成はEP-A 0 193 269から公知である。
【0074】
b)そのようにコートされた1つ又はそれ以上の基体を、重合室を組み立てるために使用する工程、その場合にコートされた面が該室の内側である。
【0075】
前述の処理工程においてコートされた1つ又はそれ以上の基体は、重合室を組み立てるために目下使用されることができる。重合室は、液状の重合可能な混合物が充填されることができ、かつこの混合物が、重合されたプラスチック体が得られるまで重合されることができ、該室を開けた後に固体として取り出すことができる、密閉された空間であると理解されるべきである。重合室は、例えば注型ポリメチルメタクリレートの製造から十分公知である(例えばDE 25 44 245、EP-B 570 782又はEP-A 656 548参照)。
【0076】
先行する処理工程において、例えばガラス板を一面で流し塗によりコートした場合には、これは、コートされた面が内側へ、距離をおいて互いに向かい合っている、面平行な2枚のガラス板からなる重合室を組み立てるために、目下使用されることができる。別の、第二のガラス板は、この場合に通常、コートされていない板であってよい。該距離は、相応する縁取り材(Seitenteile)又はフレームにより保証される。注型ポリメチルメタクリレートの製造からは、特に、密閉するための周囲を取り巻く弾性のコード(Schnur)を有する2枚のガラス板からなる重合室が公知である。該コードの弾性は重合の間の収縮の補償に利用される。該室は、相応するクリップによりしっかりとひとまとめにされる。開口部は注入するため及び脱気するために存在している。
【0077】
c)重合室中へ、ポリマー含分を有していてよいラジカル重合性のモノマーからなる重合可能な液体及び場合によりその中に分散された固体を注入する工程。
【0078】
重合室中へ、ポリマー含分を有していてよいラジカル重合性モノマーからなる重合可能な液体は目下充填される。原則的に全ての室法において重合可能な液体、あるいはモノマー又はモノマー/ポリマー−混合物が適している。該重合可能な液体は、別の可溶性又は不溶性の添加剤、例えば顔料、充填剤、UV−吸収体を含有していてよい。例えば、耐衝撃性改良剤又は多殻状に構成された及び/又は架橋されたプラスチック粒子からなる光散乱粒子も含まれていてもよい。
【0079】
ラジカル重合性モノマーは例えば、1つ又はそれ以上のビニル系基を有するモノマー、例えばメチルメタクリレート、メタクリル酸の別のエステル、例えばエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリル酸のエステル(例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)又はスチレン及びスチレン誘導体、例えばα−メチルスチレン又はp−メチルスチレンである。架橋するモノマー、例えばトリアリルシアヌレート、アリルメタクリレート又はジ−(メタ)アクリレートは同様に、しかしながら好ましくはより僅かな量のみ、例えば0.1〜2質量%で、含まれていてよい。
【0080】
例えばメチルメタクリレート100%からなる、均一な溶液又はモノマー混合物、例えば主に、メチルメタクリレート80〜99質量%及び別の共重合性モノマー、例えばメチルアクリレート1〜20質量%が重要であり得る。該溶液もしくは該モノマー混合物はポリマー含分を有していてよく、例えばメチルメタクリレート70〜95質量%及びポリメチルメタクリレート5〜30質量%からなる混合物が注入されることができる。
【0081】
d)重合開始剤の存在で、重合可能な液体をラジカル重合する工程、その場合に内側にある無機コーティングは基体から、ラジカル重合されるプラスチックもしくはプラスチック体の表面中へもしくは表面上へ移行する。
【0082】
ポリマー含分を有していてよいラジカル重合性モノマーからなる重合可能な溶液もしくは混合物に、好ましくは重合室中へ注入する前に重合開始剤が均一な分布で添加される。引き続いて、重合可能な液体はプラスチックへ、例えば40〜80℃で重合されることができる。
【0083】
重合開始剤のために例示的に挙げることができる:アゾ化合物、例えば2,2′−アゾビス−(イソブチロニトリル)又は2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、レドックス−系、例えば第三アミンと過酸化物との組合せ又は好ましくは過酸化物(このためには例えばH. Rauch-Puntigam, Th. Voelker, "Acryl- und Methacrylverbindungen", Springer, Heidelberg, 1967又はKirk-Othmer, Encyclopedia of Chemical Technology, 1巻, 386頁以降, J. Wiley, New York, 1978参照)。適している過酸化物−重合開始剤の例は、ジラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、t−ブチルペルイソノナノエート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、過酸化ジベンゾイル又は2,2−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−ブタンである。好ましくは、重合は、ラジカル流を重合の過程で並びに多様な重合温度で一定に保持するために、異なる半減期の多様な重合開始剤の混合物、例えばジラウロイルペルオキシド及び2,2−ビス−(t−ブチルペルオキシ)−ブタンで実施されることもできる。使用される重合開始剤量は一般的に、モノマー混合物に対して0.01〜2質量%である。
【0084】
重合は通常、温度制御もしくは熱除去を保証する、該室のそのような配置中で実施され、例えば、−架台中でほぼ水平である−室は、例えば高い空気速度を有する熱風炉中で、オートクレーブ中でスプレー水の使用下に又は水充填された桶中で、重合条件下に保持されることができる。重合は加熱することにより開始される。特にゲル範囲内での、顕著な重合熱の除去のために、意図的な冷却が必要である。重合温度は通常、常圧で15〜70℃である。オートクレーブ中で、これらは好都合には約90〜100℃である。熱処理媒体中の重合室の滞留時間は、重合バッチの様式及び実施に相応して数時間ないし数日間である。
【0085】
重合開始剤に加えて、別の添加剤、例えば分子量調節剤、例えばドデシルメルカプタンが添加されることができる。しかしながら好ましくは、高い分子量を実現するために、分子量調節剤なしで重合される。
【0086】
できるだけ広範囲に亘る転化(ポリマー>99%)をはかって、温度は重合過程の終わり頃、もう一度短い時間に亘り、例えば100℃を上回り、例えば120℃に高められるべきである。好都合にはゆっくりと冷却され、その場合にポリマーシートは型シートから分離され、かつ取り出されることができる。
【0087】
重合室をモノマー−液体で充填する際に、これは基体のコーティングの空所中へ浸透する。SiO及びアンチモン−スズ−酸化物は、例えば相互侵入ネットワークの形で存在していてよい。故に、重合の間に、プラスチック体の生じるポリマーが無機層にある程度浸透する結果となる。それゆえ、技術水準から公知であるようなその後に施与されるコーティングとは、構造的に異なるコーティング構造が生じる。
【0088】
場合により、さらにいわゆる“熱処理(Tempern)”が、プラスチック体が重合後に好ましくはさらに重合室中に放置され、かつ冷却後に再度、例えば2〜8時間に亘り40〜120℃に加熱されることによって、行われることができる。それにより、残存モノマーは逃出することができ、かつプラスチック体中の内部応力は低下されることができる。
【0089】
e)重合室から、一面又は多面の無機コーティングを有するコートされたプラスチック体を取り出す工程。
【0090】
重合室を解体した後もしくは開けた後に、一面又は多面の無機コーティングを有するプラスチック体が取り出されることができる。好ましくは、一面又は二面の電気伝導性コーティングを有するポリメチルメタクリレート−プラスチックシートが製造される。
【0091】
プラスチック体
本発明による方法により得られることができるプラスチック体は好ましくは、1010Ωより少ない/1010Ωに等しい、好ましくは10Ωより少ない/10Ωに等しい表面抵抗を有する電気伝導性コーティングを有している。曇りを示すチンダル−効果は確認できない。不均一な層分布を示唆する虹−干渉効果は、コートされた表面上に殆ど又は全く確認されることができない。コーティングの表面抵抗の測定は、例えばDIN EN 613402 / IEC 61340に従ってWolfgang Warmbier社のオーム計、型式SRM-110を用いて実施されることができる。
【0092】
プラスチック体は好ましくは、ポリメチルメタクリレート、すなわち主にメチルメタクリレートから構成されているポリマー又はポリスチレンからなる。該プラスチックは、添加剤及び助剤、例えば耐衝撃性改良剤、顔料、充填剤、UV−吸収体等を含有していてよい。該プラスチック体は、半透明又は透明であってもよい。
【0093】
電気伝導性コーティングの層厚は、200〜5000nm、好ましくは250〜1000nmの範囲、特に好ましくは300〜400nmの範囲内である。
【0094】
プラスチック体は、無機コートされた平面上で少なくとも10 000、好ましくは少なくとも12 000、特に少なくとも15 000サイクルのDIN 53 778による耐摩擦性を有する。DIN 53778による湿式摩擦試験によるコーティングの接着の決定は、例えばGardner社、型式M 105/Aの湿式摩擦試験装置を用いて実施されることができる。
【0095】
プラスチック体は例えばケーシング(Einhausungen)、クリーンルームの装備、機械カバー、インキュベーター、ディスプレイ、視覚表示スクリーン及び視覚表示スクリーンカバー、リアプロジェクションスクリーン、医療用装置及び電気装置に使用されることができる。
【0096】
発明の有利な効果
本発明による方法は、技術水準から公知であるようなその後に施与されるコーティングとは構造的に異なるコーティング構造を有するプラスチック体の製造を可能にする。
【0097】
コートされた基体から高分子プラスチック体へその重合の間に転写されるコーティングは高品質である。曇りを示唆しうるチンダル−効果は確認できない。不均一な層分布を示唆する虹−干渉効果は、コートされた表面上に殆ど又は全く確認されることができない。耐摩耗性は、常用のコートされたプラスチック体に比較して高められている。
【0098】
実施例
例1
アニオン性のシリカゾル25質量部(固体含量30%;Bayer AGから入手可能な(登録商標)Levasil)を、完全脱塩水で100質量部に補充したエトキシル化脂肪酸アルコール0.4質量部((登録商標)Genapol X80)及びNaOH−水溶液で9のpH−値で100質量部に補充した0.5質量部(O−エチル−ジチオ炭酸−(3−スルホプロピル)−エステル、カリウム塩;Raschig AGから入手可能な(登録商標)Raschig OPX)からなる溶液と1:1.5の比で混合した。
【0099】
この第一の溶液50質量部を、アンチモン−スズ−酸化物−溶液50質量部(水中12%濃度;Leuchtstoffwerk Breitungen GmbHから入手可能)と混合した。
【0100】
こうして製造されたコーティング剤を、ついで流し塗法においてガラス板上へ塗布し、100℃で3h乾燥させた。コートされたガラス板を重合室の組み立てに使用した。メチルメタクリレートの重合の際に、該コーティングはPMMA−表面上へ転写された。
【0101】
極端に薄い層の層厚の測定は、薄切片を用いて透過型電子顕微鏡中で行われることができる。該層の厚さは流し塗方向に依存して350〜400nmの範囲内であった。
【0102】
コーティングの接着の測定を、DIN 53778による湿式摩擦試験に従ってGardner社、型式M 105/Aの湿式摩擦試験装置を用いて実施した。全部で350nmの層厚で20000サイクルの値が測定された。
【0103】
該コーティングの表面抵抗の測定を、DIN EN 613402 / IEC 61340によりWolfgang Warmbier社のオーム計、型式SRM-110を用いて実施した。全部で350nmの層厚で10Ωの値が測定された。
【0104】
該シートは良好な光学的性質を示した。
【0105】
比較例1
例1を本質的には繰り返したが、しかしながらその場合にコーティング剤をPMMA−シート上に直接に流し塗を用いて塗布した。こうしてコートされたシートを、引き続いて80℃で30min乾燥させた。
【0106】
該コーティングの接着は永久的でないことが判明し、かつ常用のぬぐい布を用いて何度もこすることによりPMMA−シートから剥離されることができた。
【0107】
比較例2
比較例1を本質的には繰り返したが、しかしながらその場合にPMMA−シートにまず最初に接着促進層(PLEX 9008L、Roehm GmbH & Co. KG社で入手可能)を設け、引き続いてコーティング剤を流し塗法において塗布した。こうしてコートされたシートを、引き続いて80℃で30min乾燥させた。
【0108】
該コーティングの接着は永久的でないことが判明し、かつ常用のぬぐい布を用いて何度もこすることによりPMMA−シートから剥離されることができた。
【0109】
比較例3
例1を本質的には繰り返したが、しかしながらその場合にコーティング剤の配合を、アンチモン−スズ−酸化物−溶液(水中12%濃度;Leuchtstoffwerk Breitungen GmbHから入手可能)をガラス板上へ直接に塗布するように変更した。その場合に、該コーティングの均一な流展を得ることは不可能であった。
【0110】
PMMA−シート上への該コーティングの転写は不均一であった。一部は強い干渉が虹色の形で生じ、このことは該コーティングの層厚−変動を示す。
【0111】
比較例4
例1を本質的には繰り返すが、しかしながらその場合にコーティング剤の配合を、第一の溶液95質量部及びアンチモン−スズ−酸化物−溶液5質量部(水中12%濃度;Leuchtstoffwerk Breitungen GmbHから入手可能)を使用するように変更する。
【0112】
該コーティングをPMMA−シート上へ転写した後に、コートされたシートは曇り(チンダル−効果)を示す。表面抵抗は>10Ωである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面又は多面の無機コーティングを有し、ラジカル重合により得ることができるプラスチックからプラスチック体を製造する方法において、次の処理工程:
a)ナイフ塗布、流し塗又は浸し塗を用いて、場合により付加的に流れ調節助剤(Verlaufhilfsmittel)を含有していてよい溶剤中にケイ素ベースの接着促進剤(Haftvermittler)及び無機粒子を1:9〜9:1の質量比で含有する塗料組成物で基体をコートする工程、
b)該基体上の該塗料組成物を乾燥させる工程、それによりコートされた基体が得られ、
c)そのようにコートされた1つ又はそれ以上の基体を、重合室を組み立てるために使用する工程、その場合にコートされた面が該室の内側であり、
d)該重合室中へ、ポリマー含分を有していてよいラジカル重合性モノマーからなる重合可能な液体を注入する工程、
e)重合開始剤の存在で、該重合可能な液体をラジカル重合する工程、その場合に内側にある該無機コーティングは基体から、ラジカル重合されるプラスチックもしくはプラスチック体の表面中もしくは表面上へ移行し、及び
f)該重合室から、一面又は多面の無機コーティングを有する該コートされたプラスチック体を取り出す工程
を特徴とする、プラスチック体を製造する方法。
【請求項2】
プラスチック体が平らなシートの形状を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ラジカル重合により得ることができるプラスチックが、ポリメチルメタクリレート又はポリスチレンである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
接着促進剤が、コロイド状に溶解されたSiO粒子又はシラン縮合物からなる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
塗料組成物が、溶剤としての水中にSiO−粒子1〜2質量%及びアンチモン−スズ−酸化物−粒子2.5〜7.5質量%を含有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
塗料組成物が付加的に界面活性剤又は界面活性剤の混合物を流れ調節助剤として含有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
コートすべき基体が、ガラス板、プラスチックシート又はプラスチックフィルムである、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
プラスチックシート又はプラスチックフィルムがポリエチレンテレフタレートからなる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
塗料組成物を有する基体を80〜120℃の範囲内の温度で乾燥させる、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
重合可能な液体を40〜80℃で重合させる、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
周囲を取り巻くパッキンコードを有する2枚のシートから本質的になる重合室を使用する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
一面又は二面の電気伝導性コーティングを有するポリメチルメタクリレート−プラスチックシートを製造する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法により得ることができる、プラスチック体。
【請求項14】
1010Ωより少ない/1010Ωに等しい表面抵抗を有する電気伝導性コーティングを有している、請求項13記載のプラスチック体。
【請求項15】
電気伝導性コーティングの層厚が200〜5000nmの範囲内である、請求項12又は13記載のプラスチック体。
【請求項16】
無機コートされた平面が少なくとも10 000サイクルのDIN 53 778による耐摩擦性(Scheuerfestigkeit)を有している、請求項12から15までのいずれか1項記載のプラスチック。
【請求項17】
ケーシング、クリーンルームの装備、機械カバー、インキュベーター、ディスプレイ、視覚表示スクリーン及び視覚表示スクリーンカバー、リアプロジェクションスクリーン、医療用装置及び電気装置のための、請求項11から16までのいずれか1項記載のプラスチック体の使用。

【公表番号】特表2007−510531(P2007−510531A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529956(P2006−529956)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007235
【国際公開番号】WO2005/039854
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(390009128)レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング  (293)
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH 
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】