説明

無機発光素子及びその製造方法

【課題】無機発光素子で一般的に使用されていた透明電極の代わりにパターニングされた金属電極を使用することにより、複雑な工程と高コストを要する透明電極を使用することなく無機発光素子を実現できるようにして、製造工程が単純化されるとともにコストが低減された無機発光素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による無機発光素子は、予め設定された間隔を有するように周期的に配置された構造を有するパターニングされた金属電極と、前記パターニングされた金属電極の上部に位置する蛍光層とを含み、前記パターニングされた金属電極が配置された順序に従って第1電圧と第2電圧が交互に印加されることにより、前記蛍光層から発光した光が前記パターニングされた金属電極間に放出されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機発光素子及びその製造方法に関し、より詳細には、無機発光素子で一般的に使用されていた透明電極の代わりにパターニングされた金属電極を使用することにより、複雑な工程と高コストを要する透明電極を使用することなく無機発光素子を実現できるようにして、無機発光素子の製造工程を単純化するとともにコストを低減するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は従来の無機発光素子の断面図であり、従来の無機発光素子10は、基板11上に前面透明電極12を塗布し、その上に電子の流れを遮断するための絶縁層13、発光のための蛍光層14、及び電子の流れを遮断するための絶縁層13を順次塗布し、その上に背面電極15を塗布し、最後に素子の耐久性を向上させるための保護膜層16を塗布することにより形成される。ここで、背面電極15は、主に可視光線領域での反射率に優れた銀からなり、蛍光層14の発光により背面電極15に向かう光を全て前面透明電極12及び透明物質からなる基板11方向に反射させて発光効率を増加させる。
【0003】
このように、従来の無機発光素子10は、発光のために、発光方向に位置する電極を必ず透明電極で形成しなければならない。しかしながら、透明電極は、製造工程が複雑であり、その製造工程にかかるコストも非常に高いという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国公開特許第2007-0077216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、無機発光素子で一般的に使用されていた透明電極の代わりにパターニングされた金属電極を使用することにより、複雑な工程と高コストを要する透明電極を使用することなく無機発光素子を実現できるようにして、製造工程が単純化されるとともにコストが低減された無機発光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一態様による無機発光素子は、予め設定された間隔を有するように周期的に配置された構造を有するパターニングされた金属電極と、前記パターニングされた金属電極の上部に位置する蛍光層とを含み、前記パターニングされた金属電極が配置された順序に従って第1電圧と第2電圧が交互に印加されることにより、前記蛍光層から発光した光が前記パターニングされた金属電極間に放出されることを特徴とする。
【0007】
ここで、前記パターニングされた金属電極間の間隔によって前記蛍光層から発光する光が制御され、前記パターニングされた金属電極間の間隔は0.01〜300μmであることが好ましい。
【0008】
また、前記パターニングされた金属電極間に予め定められた形状の開口部が形成され、前記蛍光層から発光する光が前記開口部の形状に透過するようにしてもよい。
【0009】
そして、上記目的を達成するための本発明の一態様による無機発光素子は、基板と、前記基板の上部に塗布され、予め設定された間隔を有するように周期的に配置された構造を有するパターニングされた金属電極と、前記基板及び前記パターニングされた金属電極の上部に塗布され、電子の流れを遮断する絶縁層と、前記絶縁層の上部に塗布され、前記パターニングされた金属電極に印加された電界により発光する蛍光層と、前記蛍光層の上部に塗布され、無機発光素子を保護する保護膜層とを含む。
【0010】
ここで、前記無機発光素子は、前記パターニングされた金属電極が配置された順序に従って第1電圧と第2電圧が交互に印加されることにより、前記蛍光層から発光した光が前記パターニングされた金属電極間に放出されることを特徴とする。
【0011】
また、前記無機発光素子は、前記蛍光層と前記保護膜層との間に塗布され、前記蛍光層から発光した光を反射させる鏡面をさらに含んでもよい。この場合、前記基板は透明基板である。
【0012】
また、前記無機発光素子は、前記基板と前記パターニングされた金属電極との間に塗布され、前記蛍光層から発光した光を反射させる鏡面をさらに含んでもよい。この場合、前記保護膜層は透明物質からなる。
【0013】
一方、上記目的を達成するための本発明の他の態様による無機発光素子の製造方法は、基板の上部に予め設定された間隔を有するように周期的に配置された構造を有するパターニングされた金属電極を形成する段階と、前記基板及び前記パターニングされた金属電極の上部に電子の流れを遮断するための絶縁層を形成する段階と、前記絶縁層の上部に蛍光層を形成する段階と、前記蛍光層の上部に無機発光素子を保護するための保護膜層を形成する段階とを含む。
【0014】
また、前記無機発光素子の製造方法は、前記パターニングされた金属電極間に予め定められた形状の開口部を形成する段階、前記蛍光層の上部に前記蛍光層から発光した光を反射させるための鏡面を形成する段階、及び前記基板の上部に前記蛍光層から発光した光を反射させるための鏡面を形成する段階のいずれか1つをさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、従来の無機発光素子で一般的に使用されていた透明電極の代わりにパターニングされた金属電極を使用することにより、複雑な工程と高コストを要する透明電極を使用することなく無機発光素子を実現できるようにして、無機発光素子の製造工程を単純化するとともにコストを低減することができる。
【0016】
また、従来の透明電極と背面電極とを含む無機発光素子に比べて簡単な電極構造を有し、従って、無機発光素子の動作信頼性を確保することができる。
【0017】
さらに、パターニングされた金属電極間の間隔を調整し、蛍光層から発光した光がパターニングされた金属電極間を通過するようにすることにより、光効率(out−coupling)を最大化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の無機発光素子の断面図である。
【図2】本発明による無機発光素子の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態による両面発光型無機発光素子の断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態による単面発光型無機発光素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるように、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明するにあたって、関連の公知機能又は構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明にする場合は、その詳細な説明を省略する。なお、類似の機能及び作用を果たす部分には図面全体にわたって同一の符号を付す。
【0020】
また、明細書全体にわたって、ある部分が他の部分と「連結」されているとは、「直接的に連結」されている場合だけでなく、他の素子を介して「間接的に連結」されている場合も含む。そして、ある構成要素を「含む」とは、特に断らない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことがあることを意味する。
【0021】
図2は本発明による無機発光素子の断面図であり、本発明による無機発光素子20は、基板21、パターニングされた金属電極22、絶縁層23、蛍光層24、鏡面27、及び保護膜層26が順次積層された構造を有する。
【0022】
以下、本発明による無機発光素子の構造及びその製造過程をより具体的に説明する。まず、基板21上にパターニングされた金属電極22を形成する。パターニングされた金属電極22は、透明電極ではなく、一般的に広く使用されている金属電極からなり、所定の間隔で周期的に配置された構造に形成される。ここで、パターニングされた金属電極22間の間隔によって発光する光が制御されるが、その間隔を0.01〜100μmとして光効率を最大化することが好ましい。また、パターニングされた金属電極22間に線形、円形、四角形などの開口部を形成することにより、蛍光層24から発光する光が線形、円形、四角形などの形状に透過するようにしてもよい。
【0023】
次に、基板21及びパターニングされた金属電極22上に、電子の流れを遮断するための絶縁層23を塗布し、その上に、発光のための蛍光層24、光の反射のための鏡面27、及び素子の保護のための保護膜層26を順次塗布する。
【0024】
ここで、鏡面27は、蛍光層24の発光により上部に向かう光を反射させて背面に向けるためのものであるため、電気的抵抗に関係なく、反射率の高い素材で形成すればよい。
【0025】
また、保護膜層26は、湿気又は外部の影響を遮断して素子を保護するためのものである。基板21、絶縁層23、蛍光層24、及び保護膜層26は、従来の無機発光素子と同じ素材で形成してもよく、これについての詳細な説明は省略する。
【0026】
図3は本発明の一実施形態による両面発光型無機発光素子の断面図であり、本発明の一実施形態による両面発光型無機発光素子30は、基板31、パターニングされた金属電極32−1、32−2、絶縁層33、蛍光層34、及び保護膜層36が順次積層された構造を有する。すなわち、図2に示す無機発光素子20から鏡面27を除いた構造を有する。
【0027】
図3に示すように、パターニングされた金属電極が配置された順序に従って陽極32−1と陰極32−2に第1電圧と第2電圧を交互に印加すると、発光により、パターニングされた金属電極間から両面に光が放出されることにより、両面発光型無機発光素子を実現することができる。このために、保護膜層36も透明物質で形成しなければならない。
【0028】
図4は本発明の他の実施形態による単面発光型無機発光素子の断面図であり、本発明の他の実施形態による単面発光型無機発光素子40は、基板41、パターニングされた金属電極42−1、42−2、絶縁層43、蛍光層44、鏡面47、及び保護膜層46が順次積層された構造を有する。すなわち、図2に示す無機発光素子20と同じ構造を有する。
【0029】
図4に示すように、パターニングされた金属電極が配置された順序に従って陽極42−1と陰極42−2に第1電圧と第2電圧を交互に印加すると、発光により、パターニングされた金属電極間から両面に光が放出される。このとき、保護膜層46方向に向かう光は鏡面47により反射されて、透明物質からなる基板41方向のみに光が放出されることにより、高効率の単面発光型無機発光素子を実現することができる。
【0030】
本実施形態では、鏡面47が蛍光層44の上部に塗布された構造を説明したが、鏡面47をパターニングされた金属電極42−1、42−2の下部に配置して発光方向を逆にしてもよい。この場合、保護膜層46は透明物質で形成しなければならない。
【0031】
本発明は、前述した実施形態及び添付された図面により限定されるものではない。本発明の技術的思想から外れない範囲内で本発明による構成要素の置換、変形、及び変更が可能であることは、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【符号の説明】
【0032】
10 無機発光素子
11 基板
12 前面透明電極
13 絶縁層
14 蛍光層
15 背面電極
16 保護膜層
20 無機発光素子
21 基板
22 パターニングされた金属電極
23 絶縁層
24 蛍光層
26 保護膜層
27 鏡面
30 無機発光素子
31 基板
32−1 パターニングされた金属電極(陽極)
32−2 パターニングされた金属電極(陰極)
33 絶縁層
34 蛍光層
36 保護膜層
40 無機発光素子
41 基板
42−1 パターニングされた金属電極(陽極)
42−2 パターニングされた金属電極(陰極)
43 絶縁層
44 蛍光層
46 保護膜層
47 鏡面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機発光素子において、
予め設定された間隔を有するように周期的に配置された構造を有するパターニングされた金属電極と、
前記パターニングされた金属電極の上部に位置する蛍光層とを含み、
前記パターニングされた金属電極が配置された順序に従って第1電圧と第2電圧が交互に印加されることにより、前記蛍光層から発光した光が前記パターニングされた金属電極間に放出されることを特徴とする無機発光素子。
【請求項2】
前記パターニングされた金属電極間の間隔によって前記蛍光層から発光する光が制御されることを特徴とする請求項1に記載の無機発光素子。
【請求項3】
前記パターニングされた金属電極間の間隔が0.01〜300μmであることを特徴とする請求項2に記載の無機発光素子。
【請求項4】
前記パターニングされた金属電極間に予め定められた形状の開口部が形成され、前記蛍光層から発光する光が前記開口部の形状に透過することを特徴とする請求項1に記載の無機発光素子。
【請求項5】
基板と、
前記基板の上部に塗布され、予め設定された間隔を有するように周期的に配置された構造を有するパターニングされた金属電極と、
前記基板及び前記パターニングされた金属電極の上部に塗布され、電子の流れを遮断する絶縁層と、
前記絶縁層の上部に塗布され、前記パターニングされた金属電極に印加された電界により発光する蛍光層と、
前記蛍光層の上部に塗布され、無機発光素子を保護する保護膜層と
を含むことを特徴とする無機発光素子。
【請求項6】
前記パターニングされた金属電極が配置された順序に従って第1電圧と第2電圧が交互に印加されることにより、前記蛍光層から発光した光が前記パターニングされた金属電極間に放出されることを特徴とする請求項5に記載の無機発光素子。
【請求項7】
前記蛍光層と前記保護膜層との間に塗布され、前記蛍光層から発光した光を反射させる鏡面をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の無機発光素子。
【請求項8】
前記基板が透明基板であることを特徴とする請求項7に記載の無機発光素子。
【請求項9】
前記基板と前記パターニングされた金属電極との間に塗布され、前記蛍光層から発光した光を反射させる鏡面をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の無機発光素子。
【請求項10】
前記保護膜層が透明物質からなることを特徴とする請求項9に記載の無機発光素子。
【請求項11】
前記パターニングされた金属電極間の間隔によって前記蛍光層から発光する光が制御されることを特徴とする請求項5に記載の無機発光素子。
【請求項12】
前記パターニングされた金属電極間の間隔が0.01〜300μmであることを特徴とする請求項11に記載の無機発光素子。
【請求項13】
前記パターニングされた金属電極間に予め定められた形状の開口部が形成され、前記蛍光層から発光する光が前記開口部の形状に透過することを特徴とする請求項5に記載の無機発光素子。
【請求項14】
基板の上部に予め設定された間隔を有するように周期的に配置された構造を有するパターニングされた金属電極を形成する段階と、
前記基板及び前記パターニングされた金属電極の上部に電子の流れを遮断するための絶縁層を形成する段階と、
前記絶縁層の上部に蛍光層を形成する段階と、
前記蛍光層の上部に無機発光素子を保護するための保護膜層を形成する段階と
を含むことを特徴とする無機発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記パターニングされた金属電極間に予め定められた形状の開口部を形成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の無機発光素子の製造方法。
【請求項16】
前記蛍光層の上部に前記蛍光層から発光した光を反射させるための鏡面を形成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の無機発光素子の製造方法。
【請求項17】
前記基板の上部に前記蛍光層から発光した光を反射させるための鏡面を形成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の無機発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−82175(P2011−82175A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229703(P2010−229703)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】