説明

無機発泡断熱材及びその製造方法

【課題】 軽量不燃で高い断熱性と屈撓性及び廃棄性にも優れる無機発泡断熱材、及びその製造方法の提供。
【解決手段】
分子量換算で4,000以上に多分子量化され、且シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が略65乃至80重量%に水分が略20乃至35重量%割合のシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液を、15℃以下の温度条件でゲル化させたうえ、加熱発泡温度が240乃至400℃で且20乃至100kg/cmの成形圧力を付加させながら、2乃至5倍の発泡倍率で発泡成形させてなる無機発泡断熱材及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軽量不燃で断熱性に優れ、而も屈撓性をも保持する無機発泡断熱材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
断熱材は高温条件のもとで使用される場合には不燃性が要求されることから、従来より無機質からなる石綿材やロックウール材或いはグラスウール材が主に使用されてきており、他方比較的低温度条件においてはポリウレタンやフェノール樹脂を初めポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂発泡板材や発泡シートが多量に使用されている。
【0003】
然るに近年に至って石綿材が健康阻害の原因物質たることが判明し、且健康被害者も全国的に拡大化したため使用禁止措置が講ぜられ、この結果ロックウール材やグラスウール材においても疑問視されるに至っており、耐火不燃性に優れる断熱板材や断熱シート材の開発が強く要請されている。
更に合成樹脂発泡板材や発泡シート材は、一旦火災に遭遇すると猛烈な火炎や煤煙に加えて多量の有害ガスを発生するため、建物火災においては再々に亘って人命が失われる悲惨事故の原因となっているばかりか、環境浄化が求められる今日においてはこれら発泡板材や発泡シート等は、その使用が広範囲に亘り且その使用方法も多様であるから、食品包装容器の如き回収が至難であって使用済断熱板材や断熱シート材が随所に飛散散乱し、或いは河川や海洋にまで流失する等環境汚染原因となっており、仮令分別回収がなされた場合にも有害ガスやダイオキシンの発生を抑制する特定焼却炉での焼却をなさねばならぬ等、焼却にも多大な費用が強いられている実情にある。
【0004】
かかる経緯に鑑み発明者等は岩石や火山灰等の自然鉱物類や石炭灰若しくは鋳造廃砂等の無機産業廃棄物中に多量に含有されてなる酸化珪素を一旦アルカリで溶解のうえ珪酸ソーダーとなし、或いはシリコンウエハー等の溶解液よりその分子量換算で4,000以上の多分子量の錯化合物化を図ることにより、シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が略45重量%に水分が略55重量%割合のシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液が形成されるとともに、該シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液を適宜の成形型内に注入し、少なくとも200℃以上の加熱によりシロキサン結合の促進と加熱融着性を創出させつつ、水分の蒸散に伴いその発泡倍率が略6乃至10倍程度の連続気泡構造からなる無機発泡成形物が成しえることを究明し、多くの先願を出願済である。
【0005】
かかる如くして形成される無機発泡成形物は、その組成割合中に略55重量%も含有される水分を蒸散せしめて連続気泡構造が形成されるため発泡セルが比較的大きく形成され、低比重化による軽量性には極めて優れるもの無機質素材であるため屈曲強度に劣り、特に曲げ応力に対しては容易に破損する難点を抱えている。
反面合成樹脂発泡板材や発泡シート材は自動車や船舶若しくは鉄道車輌を初め冷暖機器等の断熱材として膨大量が使用されてなるもので、かかる理由は軽量安価で且屈撓性を保持することによるものであるが、他方においては合成樹脂発泡板や発泡シート材の環境汚染の問題を抱えており、断熱性や耐熱性に加えて屈撓性を保持する無機発泡断熱材が強く要請されている現況にある。
【0006】
発明者等は、かかる状況に鑑み更なる研究を重ねた結果、シロキサン及びシラノール塩多分子量溶液のシロキサン及びシラノール塩からなる固形分を略65乃至80重量%と水分を略20乃至35重量%にまで濃縮させたシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液における加熱発泡成形においては、水分蒸散に伴い形成される発泡セルが微細化し且発泡成形に際して所要の成形圧力を付加させることにより、無機発泡成形物に屈曲弾性、所謂屈撓性が保持されることを究明し本発明に至った。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は軽量不燃で高い断熱性とともに、屈撓性と廃棄性にも優れる無機発泡断熱材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために本発明が用いた技術的手段は、分子量換算において略4,000以上に多分子量化され且シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が略65乃至80重量%と、水分が20乃至35重量%割合に濃縮されたシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液を15℃以下でゲル化させたうえ、加熱発泡温度が240乃至400℃で且成形圧力が発泡成形物に対し20乃至100kg/cmの成形圧力を付加させて、その発泡倍率を2乃至5倍に発泡成形させたことを特徴とする無機発泡断熱材の構成に存する。
【0009】
加えて該無機発泡断熱材の製造については、シロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液の保持する低温特異性能とされる低温ゲル化特性を利用することにより、高い生産性を以って簡便且安価に無機発泡断熱材を製造するものであって、本発明においては自動車や船舶若しくは鉄道車輌或いは冷暖機器等の断熱材としての使用には、比較的薄肉で且屈撓性を保持させる必要がある。
これがためシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液を7乃至15℃に保持されたギヤーポンプ若しくはスクリュー及びその先端に所要の幅と厚さに形成されたT型ダイスとにより、シロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液を所要の幅と厚さのゲル状シートに成形吐出させたうえ、その温度が240乃至400℃に加熱され且その外表面には剥離層が形成され、而も相互の間隔が調整可能の複数組対の加熱加圧ロール間を実質的に20乃至100kg/cmの成形圧力を付加させながら、2乃至5倍の発泡倍率を以って加熱発泡成形させつつ移送させたうえ、徐冷ロールで徐冷し所要の幅と長さに切断させる構成からなる無機発泡断熱材の製造方法に存する。
【0010】
更に他の製造手段として、所要の幅と長さ及び深さで且その内表面全体に剥離層が形成された成形雌型と、該成形雌型内に密着嵌入しえる幅と長さ及び深さで且その外表面全体に剥離層が形成された成形雄型には、それぞれ240乃至400℃の温度に加熱できる電磁誘導加熱体が装備され、而も成形雄型には成形雌型内に20乃至100kg/cmの成形圧力を以って加圧でき且除圧隔離できるピストンが連結され、更に成形雄型の除圧隔離時には、その一方側からは成形雌型上面に移動可能に原料注入管が配備され、且その他方側からは適宜数の吸着盤が設けられた吸着盤アームが移動可能に配備された成形型を用い、成形雄型を除圧隔離させたうえ原料注入管を成形雌型上面に配位させて、所要量のシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液を注入させたうえ該原料注入管を反転移動し、而して成形雄型を20乃至100kg/cmの成形圧力で成形雌型内に密着嵌入させ、240乃至400℃の加熱温度で且その発泡倍率を2乃至5倍に加熱発泡成形のうえ成形雄型を除圧隔離したる後、吸着盤アームを成形雌型内の加熱発泡成形された無機発泡断熱材上に配位させるとともに、その吸着盤を接触吸着のうえ型抜きをなす構成からなる無機発泡断熱材の製造方法に存するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の如き構成からなるもので、使用素材たるシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液は、シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が略65乃至80重量%と水分が略20乃至35重量%割合にまで濃縮されてなるため、その温度が15℃以下に保持されるとキセロゲル化が進みその粘度も略12,000乃至30,000pis(ポアズ)以上にも上昇するため塑性加工が容易となり、ギヤーポンプやスクリュー等の機械的連続移送手段が使用でき連続生産も可能となる。
そしてかかるシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液を240乃至400℃の加熱発泡成形温度と且成形圧力を20乃至100kg/cmのもとに2乃至5倍に加熱発泡成形させて形成される無機発泡断熱材は、発泡セルが微細に且緻密な融着により発泡構造が形成されて軽量で高い断熱性はもとより屈曲弾性も創出されて屈撓性を保持するとともに、無機酸化珪素態であるから廃棄も可能となる。
【0012】
加えて該シロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液は15℃以下に保持されたギヤーポンプやスクリュー等の移送手段においては塑性変形が容易なゲル状に保持されるため、連続的移送と且所要の厚さと幅に吐出成形させてゲル状シートが形成しえ、このゲル状シートを240乃至400℃に加熱され且その外表面には剥離層が形成され、而も相互の挟持間隔が調整可能な複数対組の加熱加圧ロール間を、20乃至100kg/cmの成形圧力に付加させて移送させるのみで、その発泡倍率が2乃至5倍の加熱発泡成形が連続的になされ、且適宜位置に徐冷ロールを配して徐冷させることで発泡促進も停止できるため、極めて高い生産性を以って無機発泡断熱材が製造される。
【0013】
更には所要の幅と長さ及び深さでその内表面全体に剥離層が形成された成形雌型と、該成形雌型内に密着嵌入できる幅と長さ及び深さでその外表面全体に剥離層が形成された成形雄型にはそれぞれ240乃至400℃に加熱可能に電磁誘導加熱体が装備され、而も成形雄型には20乃至100kg/cmの成形圧力を以って加圧圧着でき且除圧隔離できる加圧ピストンが連結されてなるから、成形雄型と成形雌型とが自在に開閉できるとともに、その一方側からは成形雄型が除圧隔離されてなる場合に成形雌型上面に原料注入管が移動可能に配備されてなるため、所要量のシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液が成形雌型内に注入され、次いで原料注入管を反転させたうえ成形雄型を成形雌型内に20乃至100kg/cmの成形加圧を以って密着嵌入させるとともに、240乃至400℃の加熱により2乃至5倍に加熱発泡成形をなしたる後、成形雄型を除圧隔離して加熱発泡成形された無機発泡断熱材表面に、その他方側より吸着盤アームを移送配位し且吸着盤で接触吸着させることで、無機発泡断熱材が容易に型抜きされる。そして一旦加熱発泡成形された無機発泡断熱材は高温度でも変形せぬため、成形雄型や成形雌型を冷却することなく注入、成形加圧と加熱発泡成形及び型抜きがなしえるとともに、これら一連の工程を連続的になしえるため、極めて高い生産性を以って生産が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
分子量換算で略4,000以上に多分子量化され、且シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が略65乃至80重量%に水分が略20乃至35重量%割合のシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液を、その温度が15℃以下に保持された押出機のスクリューでゲル状化させつつ先端のT型ダイスより所要の厚さと幅のゲル状シートに吐出成形させながら、その温度が240乃至400℃に加熱され且外表面に剥離層が形成された複数組対で而もその挟持間隔が調整可能な加熱加圧ロール間で、実質的に20乃至100kg/cmの成形圧力を付加させつつ2乃至5倍の発泡倍率に加熱発泡成形させたうえ、徐冷ロールで徐冷させてなる無機発泡断熱材及びその製造方法。
【実施例1】
【0015】
以下に本発明実施例をその製造方法に基づき詳細に説明すれば、図1は加熱加圧ロール手段による本発明の製造方法の説明図であって、使用する原料素材は本発明においては軽量で不燃のうえ優れた断熱性と屈撓性及び廃棄性が要請されることから、その分子量換算で略4,000以上に多分子量化され、且発泡セルが微細で而も緻密な発泡構造を形成せしむるうえから、シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が略65乃至80重量%割合と水分が略20乃至35重量%割合、より好ましくは固形分が略75乃至80重量%割合に水分が略20乃至25重量%割合のシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液1が好適である。
【0016】
かかる理由は発明者等が既に多くの実用化試験に供してなるシロキサン及びシラノール塩多分子量溶液は、シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が略45重量%に水分が略55重量%割合の組成からなるものであるから、低粘度で成形型における加熱発泡成形に際しての均質な受熱が至難なうえ水分蒸散による発泡形成には膨大な加熱エネルギーが必要となり且連続生産による生産性を挙げることも至難である。
而してシロキサン及びシラノール塩は錯化物状の態様のもので、シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が略65乃至80重量%割合に増大し、且水分が略20乃至35重量%割合に減少することにより、その温度が15℃以下になると隣接電子の共有による網状構造即ちキセロゲル化する特異性を創出する。従ってその温度が15℃以下でゲル状化させることにより、塑性加工が可能となり連続生産も可能となるばかりか、水分割合が少なく短時間での加熱発泡成形も可能となることによる。
【0017】
かくしてなるシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液1は、シリンダー2A内の移送用のスクリュー2Bとその先端に所要の厚さと幅を以ってゲル状シート3として吐出成形させるT型ダイス2Cを擁する押出成形機2のホッパー部2Dにより注入される。
かかる場合に押出成形機2全体は、注入されるシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液1をゲル状に保持させてゲル状シート3として吐出成形させるうえから、15℃以下好ましくは7乃至15℃程度に保持させる必要がある。従って高温時においては冷却水や地下水等による押出機2のシリンダー2A部を冷却することが要請される。
更に該押出成形機2のスクリュー2Bにおいては、特段に混練作用等が要請されるものではなく移送可能なものであれば良い。加えて該スクリュー2Bの移送量は、スクリュー2Bの回転数とシリンダー2Aとスクリュー2Bとの移送空隙容量、及びT型ダイス2Cの厚さと幅及び吐出成形速度により具体的に決定される。
【0018】
押出成形機2のT型ダイス2Cより所要の厚さと幅に吐出成形されたゲル状シート3は、その温度が240乃至400℃に加熱可能で且相互の間隔が調整可能な複数組対からなる加熱加圧ロール4間に、実質的に20乃至100kg/cmの成形圧力を付加させながら、その発泡倍率を2乃至5倍に加熱発泡成形をなす。
かかる場合に該加熱加圧ロール4に挟持されるゲル状シート3は極めて脆弱なものであるから、該加熱加圧ロール4の前段の加熱加圧ロール4は比較的低温度の略240乃至300℃程度で且その挟持間隔もゲル状シート3の厚さと略等しく、而も移送速度も該ゲル状シート3の吐出成形速度に略等しく設定させることが望ましい。
【0019】
そして該加熱加圧ロール4は図2に示す如く、所要の加熱温度の加熱エネルギーを十分大きな熱容量を以って加熱保持させるうえから、通常においては金属製ロールが用いられるとともに、その外表面にはゲル状シート3の加熱発泡に際して創出される加熱融着性による粘着障害を回避するうえから剥離層4Aが形成されてなるもので、該剥離層4Aの具体的な素材としてはテトラフロロエチレンやフッ化炭素基と炭化水素基及びシリル基からなる組成物等が挙げられる。
更に該加熱加圧ロール4内には、該加熱加圧ロール4を240乃至400℃にまで加熱するための加熱体4Bが装備されてなるもので、具体的な加熱体4Bとしては加熱ヒーターや電磁誘導加熱体が望ましい。
【0020】
当然のことながらこれら複数組対の加熱加圧ロール4は、その温度が240乃至400℃の高温度に加熱されることから外部逸散熱エネルギーも膨大となる。これがためには加熱加圧ロール4は断熱フード4Cにより包被させることが望まれる。
そしてかかる加熱加圧ロール4において、所要の厚さと幅及び発泡倍率を以って加熱発泡成形されて排出される無機発泡断熱材7は、高温度で加熱発泡成形されたものであるから、引続いて徐冷ロール5において徐冷のうえカッター6により所望の幅や長さに切断すれば良い。
図3は前記製造手段により形成された無機発泡断熱材7の側面拡大説明図であって、かかる製造手段により形成される無機発泡断熱材7は比較的薄物の製造に好適で、その厚さとしては最少1乃至2mm程度から最大でも6乃至7mm程度が良好である。
【実施例2】
【0021】
本発明の無機発泡断熱材7の製造には前記の加熱加圧ロール手段の他に成形型手段によっても実現できる。
即ち図4は成形型の説明図であって、かかる成形型手段による場合には形成する無機発泡断熱材7の寸法及び形状に合せて所要の幅と長さ及び深さを以って強靭で熱伝導性の高い金属素材を用いて且その内表面全体には剥離層21Aが形成されてなる成形雌型21と、該成形雌型21内に密着嵌入しえる幅と長さ及び深さを以って且その外表面全体に剥離層21Aが形成された成形雄型22とには、それぞれその温度を240乃至400℃にまで加熱できる電磁誘導加熱体23がその内部若しくは外部に装備されている。
【0022】
この電磁誘導加熱体23は、短時間に所望の温度に加熱昇温できるばかりか注入されるシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液1の注入量や水分率と通電する電力とにより加熱温度管理が容易になしえることから採用される。無論加熱手段としては電磁誘導加熱体23に限定されるものではなく、電熱ヒーターや高温ガスによる循環加熱等も使用できる。
当然に該電磁誘導加熱体23やその他の加熱手段によって所要温度に加熱された成形雌型21や成形雄型22からは加熱エネルギーの逸散も激しいことから、適宜の断熱材23Aで断熱包被させることを考慮すべきである。
【0023】
そして成形雄型22は成形雌型21内に所要容量割合で注入されたシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液1に、加熱発泡成形に際して20乃至100kg/cmの成形圧力を付加し且2乃至5倍の発泡倍率で発泡させる必要上から、成形雄型22の背面には該成形雄型22を成形雌型21内に20乃至100kg/cmの成形圧力を以って密着嵌入させ、或いは加熱発泡成形に先立ちシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液1をゲル化させ所要容量割合で注入させる場合や、若しくは加熱発泡成形がなされたる後成形された無機発泡断熱材7の型抜きをなす場合等において、成形雌型21から除圧隔離させる必要上から上下方向に可動するピストン24と連結されている。このピストン24の操作は当然に遠隔自動操作でなされるよう配慮されている。
【0024】
そして成形雌型21と成形雄型22とが除圧隔離された場合に、該成形雌型21並びに成形雄型22の一方側には、成形雌型21の上面にシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液1がゲル化されたうえ、成形雌型21内全体に略均等に注入されるよう移動可能に配位され、且適宜数に分岐された原料注入管31には所要の間隔を以って注入孔32が形成されてなり、而も該原料注入管31の他側には、シロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液1をゲル化させるため、その温度が15℃以下に保持された貯留タンク33より所要の注入圧を以って注入及び閉塞できる注入ポンプ34並びに開閉弁35が設けられた原料注入機構30が設けられている。無論該原料注入機構30は、成形雌型21の上面に原料注入管31を配位させ且所要容量割合でシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液1のゲル状物を注入させたうえは、再びその一方側に移動徴収される。
【0025】
かくして成形雄型22が所要の加圧力を以って成形雌型21内に密着嵌入されたうえ、所要の加熱温度によりその発泡倍率を2乃至5倍に加熱発泡成形させて無機発泡断熱材7が発泡形成される。
而してこの加熱発泡成形された無機発泡断熱材7を成形雌型21内より能率的に型抜きさせる手段として、成形雌型21並びに成形雄型22の他方側には吸着盤型抜き機構40が設けられている。
この吸着盤型抜き機構40は、加熱発泡成形された無機発泡断熱材7が成形雄型22を成形雌型21より除圧隔離された場合にも極めて高温度の状態にあり、且加熱発泡に伴う発泡圧力により成形雌型21内面に密着した状態で発泡形成されてなるから、仮令該成形雌型21の内面に剥離層21Aが形成されていても、型抜きにはある程度の型抜き応力の付加が望まれる。
【0026】
これがためには加熱発泡成形された無機発泡断熱材7の上面に、適宜の間隔を以って吸引パイプ40Aと連結された吸着盤40Bが配設された吸着盤アーム40Cを移動可能に配位させ、且無機発泡断熱材7の表面に接触させ吸着のうえ引き揚げながら成形雌型21より型抜きし、且成形雌型21の外部に移動のうえ吸着解除できるよう構成されてなるもので、無機発泡断熱材7との吸着及び吸着解除は吸引パイプ40Aの他端に設けられた吸引開閉弁40D及び吸引ポンプ40Eの操作よりなされる。
当然にかかる成形型手段においても、成形雌型21と成形雄型22の加圧密着嵌入並びに除圧隔離、原料注入管31の移動配位とシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液1のゲル状物の注入及び移動撤収、或いは吸着盤アーム40Cの移動配位と吸着及び吸着解除等は一連の制御システムによりなしえるよう配慮されている。
【産業上の利用可能性】
【0027】
分子量換算でその分子量が4,000以上に多分子量化され、且シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が略65乃至80重量%に水分が略20乃至35重量%割合のシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液を15℃以下の温度条件でゲル化させることにより、加熱加圧ロール手段においては比較的薄肉の無機発泡断熱材が、更に成形型手段では比較的厚肉の無機発泡断熱材が能率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】 加熱加圧ロール手段による製造方法の説明図である。
【図2】 加熱加圧ロールの説明図である。
【図3】 無機発泡断熱材の側面拡大説明図である。
【図4】 成形型手段による製造方法の説明図である。
【図5】 原料注入機構の説明図である。
【図6】 吸着盤型抜き機構の説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 シロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液
2 押出成形機
2A シリンダー
2B スクリュー
2C T型ダイス
2D ホッパー部
3 ゲル状シート
4 加熱加圧ロール
4A 剥離層
4B 加熱体
4C 断熱フード
5 徐冷ロール
6 カッター
7 無機発泡断熱材
21 成形雌型
21A 成形型の剥離層
22 成形雄型
23 電磁誘導加熱体
23A 断熱材
24 ピストン
30 原料注入機構
31 原料注入管
32 注入孔
33 貯留タンク
34 注入ポンプ
35 開閉弁
40 吸着盤型抜き機構
40A 吸引パイプ
40B 吸着盤
40C 吸着盤アーム
40D 吸引開閉弁
40E 吸引ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量換算で4,000以上に多分子量化され、且シロキサン及びシラノール塩からなる固形分が略65乃至80重量%に水分が略20乃至35重量%割合の組成からなるシロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液を、15℃以下の温度条件でゲル化させたうえ、加熱発泡温度が240乃至400℃及び成形圧力が20乃至100kg/cmで加圧させながら、その発泡倍率を2乃至5倍に加熱発泡成形させてなることを特徴とする無機発泡断熱材。
【請求項2】
シロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液を、その温度が15℃以下に保持され且T型ダイスを有する押出機内でゲル化させ移送させながら所要の幅と厚さのゲル状シートとして吐出させたうえ、その外表面に剥離層が形成され240乃至400℃に加熱され且相互の間隔が調整可能な複数組対からなる加熱加圧ロール間で、20乃至100kg/cmの成形圧力を付加させながら2乃至5倍の発泡倍率に発泡させ、而して徐冷ロールにおいて徐冷したうえ所要の幅及び長さに切断させることを特徴とする無機発泡断熱材の製造方法。
【請求項3】
所要の幅と長さ及び深さでその内表面全体に剥離層が形成された成形雌型及び該成形雌型内に密着嵌入できる幅と長さ及び深さで、その外表面に剥離層が形成された成形雄型には、それぞれその温度を240乃至400℃に加熱できる電磁誘導加熱体がその内部若しくは外部に装着されてなり、且成形雄型の背面には20乃至100kg/cmの成形圧力を以って成形雌型内に密着嵌入させ若しくは除圧隔離させるため上下方向に可動可能なピストンと連結されてなる成形型の成形雄型を除圧隔離させ、その一方側より成形雌型上に原料注入管を移動可能に配位させ、且シロキサン及びシラノール塩多分子量濃縮溶液をその温度が15℃以下に保持された貯留タンクでゲル化させたうえ、原料注入管より所要容量割合で注入し且移動撤収させ、而して成形雄型を成形雌型内に所要の加圧を以って密着嵌入のうえ、240乃至400℃の加熱温度で2乃至5倍に発泡成形させて無機発泡断熱材となしたるうえ、成形雄型を除去隔離し他方側より適宜の間隔を以って吸着盤が配設された吸着盤アームを移動可能に無機発泡断熱材上に配位のうえ吸着盤を接触吸着せしめて型抜きをなし、且成形型外に吸着解除させることを特徴とする無機発泡断熱材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−63212(P2008−63212A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272287(P2006−272287)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(505384601)株式会社ディ・トリップ (12)
【Fターム(参考)】