説明

無機繊維成形板とその製造方法

【課題】無機繊維成形板の強度を高くするための新たな工程を付け加えることなく、かつ建築内装材としての意匠性を持ちつつ、施工時のハンドリング性が良く、さらにたわみが小さいという特性を備えた無機繊維成形板を提供することを課題とする。
【解決手段】略平面状の無機繊維成形板の表面に、先端の全面あるいは周縁部に丸みのあるピンを押し付け、さらにこのピンを無機繊維成形板に押し込むことで、前記無機繊維製天井板の表面に凹みを設けることにより、建築内装材としての意匠性を持ち、かつたわみを小さくし、建築内装材として、有用な無機繊維成形板を構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルや住宅等の建築物に用いられる建築内装材、特に天井材に用いられる無機繊維成形板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロックウール、スラグウール、グラスウール等の無機繊維を主成分とする無機繊維成形板は、建築物の中でもビル等の比較的大きい面積を持つ建築物の天井板として多く用いられる。
ビル等の建築物の天井に用いられる際、直貼り工法と捨て貼り工法があるが、より多く用いられる直貼り工法では、まず天井下地を建築物の天井スラブに直接据え付けられるか、または前記天井スラブから金属製の吊りボルト等の吊り具を介して吊り下げて設置する。次に天井下地の室内側に無機繊維成形板がビスや釘等の固定具で固定され、施工される。
この時、無機繊維成形板の室内側に向いた面を「表面」と呼び、その裏側を「裏面」と呼ぶことが一般的である。
無機繊維成形板を天井下地に施工する際、図1に示すように、通常、天井下地は鉄やアルミニウム等の金属製の部材を組み合わせて枠状に組まれるが、無機繊維成形板が直接固定される部材は野縁1である。野縁1は、250mm以下の間隔を空けて略並行に設置される。この野縁1の室内側に無機繊維成形板をあてがい、無機繊維成形板を通して野縁1にビスや釘等の固定具を打ち込むことにより、無機繊維成形板を固定する。また、一般的な無機繊維成形板の寸法は、幅455mm以下、長さ910mm以下、厚さ9〜11mm程度である。
【0003】
天井下地の野縁1を設置する間隔が250mm以下では、例えば 1000m2以上といった比較的大きい面積の天井スラブに無機繊維成形板を施工するには、天井下地の野縁1を設置する間隔の一つ一つが狭いため無機繊維成形板の固定に非常に手間がかかるばかりではなく、天井下地そのものを組むにも手間がかかり、工期が長くなるという問題があった。なお、野縁を設置する間隔は1本の野縁の長さ方向の中心とその野縁に隣り合う野縁の長さ方向の中心との距離をいう。以降、この野縁を設置する間隔を野縁間隔ということもある。
この問題を改善するために、無機繊維成形板の厚さを例えば9mmとし、無機繊維成形板の寸法を例えば幅600mm、長さ1200mmと前述した一般的な無機繊維成形板より大きくし、天井下地の野縁1を設置する間隔を例えば300mmに広くすると、天井下地に無機繊維成形板を固定する際に、無機繊維成形板が自重によりたわんでしまい、無機繊維成形板の周縁部が天井下地と離れてしまうため、ビスや釘等の固定具での固定が非常にしにくくなるという問題が生じる。また、この施工時の自重によるたわみを防止するため、無機繊維成形板の厚さを例えば12mm〜15mm程度の厚さに厚くすると無機繊維成形板の重量が重くなり、ハンドリング性が悪化するため、施工がしにくくなるという問題が生じる。さらに、無機繊維成形板施工後は時間経過とともに空気中の水分等の影響により、無機繊維成形板がたわむ場合もある。このたわみは野縁1を設置する間隔が広いと大きくなる傾向がある。無機繊維成形板がたわむと、無機繊維成形板の表面に室内光により陰影ができることがあり、陰影ができると無機繊維成形板の表面に模様以外の凹凸があるように見えるため、天井面の美観を損なう虞がある。
【0004】
そのため、無機繊維成形板の強度を高くし、施工時のたわみ(以降、自重たわみという)及び施工後の時間経過によるたわみ(以降、耐湿たわみという)を小さくする必要がある。なお、以降特に断りが無いかぎり、たわみは自重たわみと耐湿たわみの両方を指すものとする。
【0005】
無機繊維成形板の寸法を大きくすることによるたわみを小さくするため、特開平6−240799号公報においては、無機繊維成形板の裏面に薄い金属板又は箔を張り表面に金属箔を張り合わせて天井用複合下地板とし、さらに表面側の金属箔に吸音化粧材を張り合わせた天井板及びその製造方法が記載されている。しかしながら、この天井板は構成が複雑であるため、その製造方法も複雑になるという問題がある。
【特許文献1】特開平6−240799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる問題点を鑑みてなされたもので、無機繊維成形板の強度を高くするための新たな工程を付け加えることなく、かつ建築内装材としての意匠性を持ちつつ、施工時のハンドリング性が良く、さらにたわみが小さいという特性を備えた無機繊維成形板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、略平面状の無機繊維成形板の表面に、先端の全面あるいは周縁部に丸みのあるピンを押し付け、さらにこのピンを無機繊維成形板に押し込むことで、前記無機繊維製天井板の表面に凹みを設けることにより、建築内装材としての意匠性を持ち、かつたわみを小さくし、建築内装材として、有用な無機繊維成形板を構成したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の無機繊維成形板は、前述したように略平面の無機繊維成形板の表面に、先端の全面あるいは周縁部に丸みのあるピンを押し付けることにより凹みを付けるため、無機繊維成形板の表面にピンで模様付けする際に無機繊維成形板を構成する無機繊維の折れが減少する。
模様付けにより折れる無機繊維が減少することにより、無機繊維成形板中の無機繊維の絡み合いが模様付けをする前とほぼ同程度に保たれるため、無機繊維成形板の模様付けによる強度低下が少なくなる。
無機繊維成形板の強度低下が少なくなるため、従来多く用いられてきた一般的な無機繊維成形板の寸法より大きな、例えば幅455mm、長さ910mm以上の無機繊維成形板であっても、無機繊維成形板の自重たわみが小さくなるので、天井下地に無機繊維成形板を固定する際の無機繊維成形板と天井下地の野縁1との間に生じる隙間が小さくなり、無機繊維成形板の固定が従来の例えば幅455mm、長さ910mm以下の寸法の無機繊維成形板の施工と同じように行うことができる。
また、無機繊維成形板のたわみが小さいので、天井下地の野縁1の間隔を広くしても、例えば280〜350mm、好ましくは300〜335mmとしても、無機繊維成形板のたわみによる天井全体の美観を損ねにくくなる。
さらに、上述の効果により天井面の施工の手間を減らすことができるため、工期の短縮が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
無機繊維成形板は、ロックウール、スラグウール、グラスウール等の無機繊維と、でんぷん、ポリビニルアルコール(PVA)やその変性体、あるいは酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等の糊剤、アタパルジャイト、セピオライト、パーライト等の無機充填材、及び必要に応じて凝集剤、有機充填材、撥水剤、難燃剤、着色剤、防腐剤等の材料から製造される。
また、無機繊維成形板は、上述の材料を多量の水に分散、混合し、丸網や長網で抄造し、脱水、乾燥し、さらに必要に応じ、表面切削、切断、表面装飾等の加工を施すことにより、製造される。
【0010】
無機繊維成形板の表面への表面装飾の方法としては、その表面の全面に塗料を塗布したり、ピンで凹みを付けるピン加工、押し型で浮き彫り状の模様を付与するプレス加工で模様付けをしたり、塩化ビニル樹脂製やガラスクロス製等の表皮材を貼り付ける加工方法等があり、これらの加工を複数組み合わせて用いることもある。
【0011】
種々の表面装飾の中でも最も多く無機繊維成形板の表面に施される表面装飾の方法としては、必要に応じて塗料の無機繊維成形板の含浸を防ぐための下塗り塗装をした後、断面が略円形、略楕円形、略多角形、虫食い模様等の形状のピンで凹み模様を付与するピン加工をし、さらに塗料を塗布し、塗料を乾燥させる組み合わせである。この場合の略多角形の角の数は3から12、好ましくは3から8、より好ましくは3から6である。これは略多角形の角の数が増えると円形に近づき、見分けがつかなくなる虞があるためである。
【0012】
このピン加工に用いられるピンは、そのピンの長さ方向に略垂直な方向の断面は前述の通り種々の形状があるが、無機繊維成形板に模様付けのために押し付けられるピンの先端はピンの長さ方向に対して略垂直で略平面状であり、かつピンの先端と側面部とで構成される角部には丸みがほとんどない。以降、このピンの長さ方向に対する略平行な方向の断面で、このピンの先端面と側面とで形成される角部が半径1mm以下の略円弧状である場合、ピンの先端に丸みが無いとして扱うものとする。
【0013】
この模様付け用のピンを無機繊維成形板の表面に押し付け、さらに無機繊維成形板の厚さの1/3程度までピンを食い込ませたときに、模様付け用のピンの先端部が接する箇所とその周辺部の境界に大きな負荷が加わるため、無機繊維成形板を構成する無機繊維がこの境界部で折れてしまう場合が多い。
無機繊維が折れてしまうと、無機繊維成形板中の無機繊維の絡み合いが減少するため、無機繊維成形板の強度が低下する。これにより、無機繊維成形板のたわみも大きくなるという問題が生じる。
【0014】
上記のたわみが大きくなるという問題を解決するためには、ピン加工による模様付けの際の無機繊維の折れを減少させることが必要であり、そのためには、模様付け用のピンの先端に丸みを付けるとよい。
本発明の無機繊維成形板に凹み模様を設けるためのピンは次の通りである。
長さは、このピンを無機繊維成形板に押し込む深さより約5mm以上長く、かつピンそのものの長さが約50mm以下である。
長さ方向に略垂直な断面の形状は略円形、略楕円形、略多角形、虫食い模様またはこれらの形状の組合せた形状で、好ましくはこのピンの長さ方向に略垂直な断面の形状の最大長さが50mm以下である。さらに好ましくはこのピンの長さ方向に略垂直な断面の面積が300mm2以下である。この場合の略多角形の角の数は3から12、好ましくは3から8、より好ましくは3から6がよい。
さらに、このピンの無機繊維成形板に凹みを設けるため無機繊維成形板に押し込む側の先端は、このピンの長さ方向に平行な断面において先端面と側面が形成する角部を略円弧状とする。これにより、ピンの先端に丸みを付けることができる。この略円弧状の角部はその円弧の半径を3mm以上とすることが好ましい。この理由は、この円弧の半径を3mm以上とすると、無機繊維成形板を構成する無機繊維の折れがほとんど生じなくなるためである。
さらに、一般的なピンの先端面は略平面であるが、本願発明のピンの先端面の角部を除いた部分は一般的なピンと同様に略平面でも良いし、ピンの長さ方向に平行な断面で凸弧状である面としてもよい。ピンの長さ方向に平行な断面で凸弧状である面とすると、無機繊維成形板を構成する無機繊維の折れがさらに少なくなるので好ましい。
上述のピンで設けられる無機繊維成形板の凹みで、上述のピンの先端の丸みの部分、すなわちピンの長さ方向に平行な断面で略円弧である部分に対応する凹みの一部分を凹みの側面とする。また、上述のピンで設けられる無機繊維成形板の凹みで、上述のピンの先端の略平面状の部分、すなわちピンの先端面で角部を除いた部分に対応する凹みの一部分を凹みの底面とする。なお、ピン先端の丸みを設けるためのピンの長さ方向に平行な断面で略円弧の半径が大きいとピンの先端面に略平面状の部分が無い場合も生じる。このようなピンで設けられた凹みは側面のみからなる凹みとして扱うものとする。
図2に本発明で使用するピンの例を示す。
【0015】
無機繊維成形板の表面に設ける2以上の複数の凹みは、その複数の凹みの全数を前記先端に丸みのあるピンで設ける必要はなく、その複数の凹みの一部は従来どおりの先端と側面の形成する角部に丸みの無いピンで設けられてもよく、この場合であっても、複数の凹みの全数が従来どおりの先端と側面の形成する角部に丸みの無いピンで設けられた無機繊維成形板よりたわみが小さくなる。
また、無機繊維成形板の表面に設ける複数の凹みは、その凹みの全数をピンの長さ方向に略垂直方向の断面が同じ形状のピンで設ける必要はなく、相似形の組合せ、略円形と虫食い模様の組合せ等の異なる形状の組合せ、あるいは相似形の組合せと異なる形状の組合せとの組合せでもよい。
吸音性を高めるためには、従来どおりの、先端と側面の形成する角部に丸みの無いピンであって、ピンの長さ方向に略垂直な方向の断面が略円形であり、かつその直径が0.3〜2mm程度のピンを併用して、無機繊維成形板に模様付けすることが好ましい。
【0016】
前記先端に丸みのある模様付け用のピンを用いて、無機繊維成形板に模様付けする方法は次の通りである。
先端に丸みのある模様付け用のピンを無機繊維成形板の表面に押し当て、さらに無機繊維成形板の表面から裏面側に、2mmから無機繊維成形板の厚さの約1/2の深さであって、ピンの長さ方向に平行な断面においてピンの先端と側面により形成される角部の略円弧状の半径と同じ長さ以下の深さでまで押し込む、この後速やかに押し込んだピンを引き抜く。
ピンを引き抜くと、無機繊維成形板のピンを押し込むことにより圧縮された部分は、無機繊維の折れが少ないため、無機繊維成形板の弾性により復元しピンを押し込んだ深さより凹みの深さが浅くなることもあるが、無機繊維成形板の表面に凹みが残り模様となる。
無機繊維成形板にピンを押し込む深さが2mm以下であると、無機繊維成形板の復元によりピンを引き抜いた後に凹みが残らないかまたは凹みの深さが非常に浅くなるため、模様としての効果をなさなくなる。また、無機繊維成形板にピンを押し込む深さが無機繊維成形板の厚さの1/2以上であると、無機繊維が粉砕され無機繊維同士の絡み合いが無くなり、無機繊維成形板の強度を低下させる虞がある。
【0017】
なお、無機繊維成形板の表面は、このピン加工による模様付けの前に塗料を塗布しておいても良いし、ピン加工の後に塗料を塗布しても良い。
この際、塗料は、ピン加工の前に行うのであればスプレーコーター、カーテンコーター、ロールコーター等で塗布することができ、ピン加工の後であればスプレーコーター、カーテンコーターを用いることで塗布することができる。
【0018】
以下、本発明の実施例に係る無機繊維成形板及びその製造方法について詳述する。
【0019】
実施例及び比較例の無機繊維成形板の材料及びその配合率は、表1に示す。
表1に示した配合率で材料を多量の水の中に分散し、長網で抄造し、脱水、乾燥させる。以降、この時点で得られた無機繊維成形板を原板と呼ぶものとする。原板を切削加工し目的の厚さにする。続いて、原板表面に下塗り塗装し、乾燥させる、たわみ測定用の試験体の寸法に切断する。さらに凹みを無機繊維成形板の表面に設ける。最後に塗料で表面塗装し、目的の無機繊維成形板を得た。
また、上述の方法で得た無機繊維成形板の密度を表1に示す。
【0020】
実施例及び比較例の無機繊維成形板の模様付けに用いたピンの形状とこのピンで設けた模様となる凹みの個数を表1に示す。
【0021】
実施例及び比較例の無機繊維成形板の曲げ強さを表1に示す。
なお、曲げ強さは、JIS A 1408に示された方法で測定した。なお、測定における荷重速度は毎分50mmとした。
【0022】
実施例及び比較例の無機繊維成形板のたわみを表1に示す。
自重たわみの測定方法は以下の通りである。
自重たわみの測定に用いる無機繊維成形板を、凹みを設けた側を室内側にして略平面状の天井面に押さえつける。このとき、無機繊維成形板を天井面に押さえつけるための支持具は直径190mmの円盤とし、押さえつける場所は無機繊維成形板の中央部とする。次に無機繊維成形板を押さえつけた状態で、無機繊維成形板の4つの角部の裏面側と天井面の間に生じる隙間を測定し、自重たわみとした。
耐湿たわみの測定方法は以下の通りである。
耐湿たわみを測定する測定具は、次のようなものである。
アルミニウム製の中空の角柱(厚さ30mm、幅70mm、長さ750mm、肉厚2mm)を支持部とし、支持部の幅方向並びに長さ方向の中心にダイヤルゲージの測定軸を貫通させるための穴をあける。この穴は、ダイヤルゲージの測定軸が自由に動く大きさとする。指示部の穴に測定軸を貫通させた状態でダイヤルゲージを支持部に固定する。この時ダイヤルゲージの測定軸が自由に動くようにしておく。さらに、ダイヤルゲージの測定軸の先端にアルミニウム製の円盤(直径10mm、厚さ2mm)を固定し、耐湿たわみの測定具とする。
耐湿たわみは、環境試験室(楠本化成株式会社製CH120P)内で測定を行った。環境試験室内に測定する無機繊維成形板が略水平に設置できるように、4本以上の複数本の野縁を所定の間隔で設置する。野縁の下面に、無機繊維成形板の表面が下側となるようにビスで固定する。この時、無機繊維成形板の4辺のうち、いずれか一方の対向する2辺は野縁と重なるようにする。無機繊維成形板の角に最も近いビスは隣り合う無機繊維成形板の辺からそれぞれ約10mm内方に入った場所とする。さらに、図4、図5に示したように無機繊維成形板と野縁が重なる部分にビスを打ち込む。なお、図4、図5は無機繊維成形板の裏面側から見た概略施工図である。図4、図5中に示した黒丸は耐湿たわみの測定箇所を示す。
無機繊維成形板を施工した後、環境試験室の環境条件を温度20℃、相対湿度50%に設定し24時間放置する。24時間放置後、かつダイヤルゲージの測定軸の先端の円盤が図4、図5中の耐湿たわみ測定箇所に載るように、かつ測定具の支持部を隣り合う2本の野縁に橋渡しするように載せてたわみを測定する。なお、この時、測定具の支持部はその長さ方向が野縁の長さ方向に略直角となるように野縁に載せる。また、測定は、図4、図5に示した測定箇所の10箇所のすべてに対して行う。
基準となるたわみを測定した後、環境試験室の環境条件を温度30℃、相対湿度90%に設定し24時間放置する。24時間放置後、上述と同様にたわみを測定する。
たわみを測定した後、環境試験室の環境条件を温度20℃、相対湿度50%に設定し24時間放置する。24時間放置後、上述と同様にたわみを測定する。
たわみを測定した後、環境試験室の環境条件を温度30℃、相対湿度90%に設定し24時間放置する。24時間放置後、上述と同様にたわみを測定する。
たわみを測定した後、環境試験室の環境条件を温度20℃、相対湿度50%に設定し24時間放置する。24時間放置後、上述と同様にたわみを測定する。
耐湿たわみ測定箇所の10箇所それぞれについて、最初に測定したたわみを基準として以降環境試験室内の環境条件を変えて測定したたわみとの差を算出し、たわみの測定値とする。算出したたわみの測定値の中で最も下方にたわんだたわみの測定値を耐湿たわみとする。
【実施例1】
【0023】
前述の方法で得られた原板を厚さ9.5mmとなるように切削加工する。続いて、原板の表面に下塗り塗装し、乾燥させた後、原板を縦910mm、横910mmの大きさに切断する。次に、原板の表面にピンの長さ方向に略垂直な方向の断面の形状が、直径13mmの略円形であって、ピンの長さ方向に略平行な方向の断面でピンの先端と側面とで形成される角部を半径6.5mmの略円弧状に加工したピンを原板の表面から2.5mmの深さまで押し込み凹みを設けた。この凹みの個数は1平方メートル当たり65個とした。さらに、ピンの長さ方向に略垂直な方向の形状が、直径4mmの略円形であって、ピンの先端の角部には丸みを付けていないピンを原板の表面から3mmの深さまで押し込み凹みを設けた。この凹みの個数は1平方メートル当たり160個とした。このようにして模様付けした後、塗料を塗布し乾燥させて無機繊維成形板を得た。
無機繊維成形板の密度は445kg/m3であった。また、曲げ強さは3.3MPa、自重たわみは5mm、野縁間隔を303mmとしたときの1mm以下であった。
【実施例2】
【0024】
前述の方法で得られた原板を厚さ10mmとなるように切削加工する。続いて、原板の表面に下塗り塗装し、乾燥させた後、原板を縦1000mm、横1000mmの大きさに切断する。次に、原板の表面にピンの長さ方向に略垂直な方向の断面形状が、短径7mm、長径20mmの略楕円形であって、短径部のピンの長さ方向に略平行な方向の断面でピンの先端と側面とで形成される角部を半径3mmの略円弧状、長径部のピンの長さ方向に略平行な方向の断面でピンの先端と側面とで形成される角部を半径5mmの略円弧状に加工したピンを原板の表面から5mmの深さまで押し込み凹みを設けた。この凹みの個数は1平方メートル当たり50個とした。次に、ピンの長さ方向に略垂直な方向の形状が対向する角と角との長さが4mmの略正六角形であって、ピンの先端の角部には丸みを付けていないピンを原板の表面から3mmの深さまで押し込み凹みを設けた。この凹みの個数は1平方メートル当たり140個とした。さらに、ピンの長さ方向に略垂直な方向の形状が、直径0.5mmの略円形であって、ピンの先端の角部には丸みを付けていないピンを原板の表面から3mmの深さまで押し込み凹みを設けた。この凹みの個数は1平方メートル当たり100個とした。このようにして模様付けした後、塗料を塗布し乾燥させて無機繊維成形板を得た。
無機繊維成形板の密度は460kg/m3であった。また、曲げ強さは3.5MPa、自重たわみは9mm、野縁間隔を333mmとしたときの耐湿たわみは1mm以下であった。
【比較例】
【0025】
前述の方法で得られた原板を厚さ9mmとなるように切削加工する。続いて、原板の表面に下塗り塗装し、乾燥させた後、原板を縦910mm、横910mmの大きさに切断する。次に、原板の表面に日東紡績(株)製ロックウール天井板 品名ソーラトンワイド 品番ST9−BDと同じ模様を設けた。模様付けした後、塗料を塗布し乾燥させて無機繊維成形板を得た。
無機繊維成形板の密度は450kg/m3であった。また、曲げ強さは3.1MPa、自重たわみは15mm、野縁間隔を303mmとしたときの耐湿たわみは1.5mmであった。
【0026】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】無機繊維成形板を直貼り工法で施工した天井構造を示す概略説明図である。
【図2】無機繊維成形板に凹みを設けるためのピンの例を示す概略説明図である。 (a)ピンの長さ方向に略垂直な方向の断面の形状が略円形である場合の該断面とピンの先端のピンの長さ方向に平行な断面の形状の例を示す説明図である。 (b)ピンの長さ方向に略垂直な方向の断面の形状が略楕円形である場合の該断面とピンの先端のピンの長さ方向に平行な断面の形状の例を示す説明図である。 (c)ピンの長さ方向に略垂直な方向の断面の形状が略正方形である場合の該断面とピンの先端のピンの長さ方向に平行な断面の形状の例を示す説明図である。 (d)ピンの長さ方向に略垂直な方向の断面の形状が略正六角形である場合の該断面とピンの先端のピンの長さ方向に平行な断面の形状の例を示す説明図である。 (e)ピンの長さ方向に略垂直な方向の断面の形状が略円形と略長方形を組み合わせた形状である場合の該断面とピンの先端のピンの長さ方向に平行な断面の形状の例を示す説明図である。 (f)ピンの長さ方向に略垂直な方向の断面の形状が略長方形と略円形を組み合わせた形状である場合の該断面とピンの先端のピンの長さ方向に平行な断面の形状の例を示す説明図である。 (g)ピンの長さ方向に略垂直な方向の断面の形状が虫食い模様である場合の該断面とピンの先端のピンの長さ方向に平行な断面の形状の例を示す説明図である。
【図3】耐湿たわみの測定方法の概略図である。
【図4】無機繊維成形板の寸法が縦910mm、横910mmの時の無機繊維成形板の裏面側から見た無機繊維成形板の概略施工図である。図中の黒丸は耐湿たわみの測定箇所を示す。なお、図中の数値の単位はmmである。
【図5】無機繊維成形板の寸法が縦1000mm、横1000mmの時の無機繊維成形板の裏面側から見た無機繊維成形板の概略施工図である。図中の黒丸は耐湿たわみの測定箇所を示す。なお、図中の数値の単位はmmである。
【符号の説明】
【0028】
1,1’ 野縁
2 野縁間隔
3 無機繊維成形板
4 ダイヤルゲージ
5 円盤
6 測定具支持部
7 ビス
8 耐湿たわみ測定箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維成形板であって、その表面に2以上の複数の凹みが設けられており、その複数の凹みの一部または全部が、無機繊維成形板の表面に対して略垂直方向の断面において略円弧状である側面を持つ凹みである無機繊維成形板。
【請求項2】
前記無機繊維成形板の表面に対して略垂直方向の断面において略円弧状である凹みの側面が、無機繊維成形板の表面に対して略垂直方向の断面において半径が3mm以上の略円弧状である請求項1に記載の無機繊維成形板。
【請求項3】
無機繊維がロックウール及び/又はスラグウールである請求項1又は請求項2のいずれか1項に記載の無機繊維成形板。
【請求項4】
略平面の無機繊維成形板の表面に、
ピンの先端面の全面又はピンの先端面の周縁部に丸みのあるピンを押し付けることにより、
前記無機繊維成形板の表面に凹みを設ける無機繊維成形板の製造方法。
【請求項5】
略平面の無機繊維成形板の表面に、
ピンの長さ方向に略平行な断面が、ピンの先端と側面から形成される角部が略円弧状であるピンの先端を押し付けることにより、
前記無機繊維成形板の表面に凹みを設ける請求項4に記載の無機繊維成形板の製造方法。
【請求項6】
ピンの長さ方向に平行な断面が、ピンの先端と側面から形成される角部が半径3mm以上の略円弧状である請求項4又は請求項5のいずれか1項に記載の無機繊維成形板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−118184(P2006−118184A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306235(P2004−306235)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】