説明

無機質板の製造方法

【課題】無機質板の靱性、耐衝撃性を向上することができ、特に屋根材として用いた場合にも踏み割れが発生しにくい無機質板の製造方法を提供する。
【解決手段】セメントを主体とするグリーンシートをオートクレーブ養生により養生硬化することにより無機質板を製造する方法に関する。前記オートクレーブ養生における養生温度を155〜170℃の範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントを主成分とするグリーンシートを養生硬化することにより無機質板を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメントを主成分とする水性スラリーを抄造するなどして得られるグリーンシートをオートクレーブ養生により養生硬化して製造される無機質板は、屋根材等の外装材等として広く用いられている。
【0003】
オートクレーブ養生は通常は180℃前後の温度条件で行われている。
【特許文献1】特開平11−180784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような無機質板は荷重がかかった際にクラックが発生しやすく、例えば無機質板を屋根材として用いた場合、作業者が敷設後の無機質板の上を歩くと踏み割れが発生する場合があり、このため作業者は作業中に屋根上を移動する際には非常に注意が必要であり、作業性が悪いものであった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、無機質板の靱性を向上することができ、特に屋根材として用いた場合にも踏み割れが発生しにくい無機質板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、オートクレーブ養生時の養生温度と、製造される無機質板の耐クラック性との間に相関関係があることを見出し、本発明の完成に至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明に係る無機質板の製造方法は、セメントを主体とするグリーンシートをオートクレーブ養生により養生硬化することにより無機質板1を製造する方法において、前記オートクレーブ養生における養生温度を155〜170℃の範囲とすることを特徴とするものである。
【0008】
上記の無機質板の製造方法においては、オートクレーブ養生における養生温度を、無機質板の全体に亘り均一となるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、無機質板の靱性を向上することができて、耐クラック性が向上し、特に無機質板を屋根材として用いる場合の耐踏み割れ性を向上することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明をその実施をするための最良の形態に基づいて説明する。
【0011】
本発明では、セメントを主体とするグリーンシートをオートクレーブ養生により養生硬化して、無機質板1を製造するものである。前記グリーンシートは、例えばセメント、シリカ質原料、補強繊維等を乾式混合した粉体材料を成形ベルト上に層状に供給し、必要な水分を散布供給しつつ、ロールにより圧縮成形する乾式法により作製されるものである。また、前記のようなセメント等を含む材料に水を加えた水性スラリーを抄造することにより得ることもできる。
【0012】
上記粉体材料としては、グリーンシートの成形と養生硬化とを経る無機質板1の製造に適用可能な組成のものを適宜用いることができるが、例えばセメント、シリカ質原料、骨材などの固体材料を主成分とするものであり、また必要に応じ、無機質板1の強度を向上させるために、混和材や繊維等が配合される。
【0013】
上記セメントとしては、例えばポルトランドセメント、フライアッシュセメント、高炉セメント、などのものが用いられる。
【0014】
また、上記シリカ質原料としては、粉末シリカ、フライアッシュ等のものが用いられる。
【0015】
また、上記骨材としては、御影石、蛇紋石などの砕石、珪石粉、シラスバルーン、ガラスバルーン、パーライト、砂、ビーズ等のものが用いられる。
【0016】
また、必要に応じて配合される混和材としては、通常シリカフュームなどが用いられるものである。更には、上記繊維としては、例えばセルロース系のパルプ繊維、石綿などの鉱物性繊維、ポリプロピレン、ビニロン等の有機質の樹脂系繊維、硝子繊維、炭素繊維、金属繊維などを用いることができる。
【0017】
上記グリーンシートの各成分の配合量は適宜調整されるが、セメント100質量部に対して、骨材の含有量が60〜120質量部の範囲であることが望ましく、また混和材を加える場合はその含有量が15〜45質量部の範囲、更に繊維を加える場合には、その含有量が10〜20質量部の範囲にあることが望ましい。また、上記グリーンシートは、その含水率が10〜20質量%の範囲であることが望ましい。
【0018】
上記のグリーンシートは、オートクレーブ養生の前に、必要に応じて常温で48〜120時間、自然養生を行うことができる。
【0019】
次いで、グリーンシートは、オートクレーブ内でのオートクレーブ養生(高温高圧蒸気養生)により養生硬化され、無機質板1が得られる。
【0020】
無機質板1は、用途に応じた適宜の形状・寸法に形成することができるが、例えば無機質板1を屋根材として形成する場合には、図1に示すような形状・寸法に形成することができる。図中の符号2は釘打ち孔を示す。またこの無機質板1の厚みは5.0〜7.0mmの範囲範囲に形成することが好ましい。
【0021】
本発明では、上記のようにオートクレーブ養生における養生温度を155〜170℃の範囲とすることで、このような低温養生を行うことにより、無機質板1の耐衝撃性の向上((靱性の向上)をなすことができ、このため、特に無機質板1を屋根材として用いる場合の耐踏み割れ性を向上することができるものである。
【0022】
上記のオートクレーブ養生時の養生温度は、高すぎると無機質板1の靱性を十分に向上することができず、また養生温度が低すぎると養生硬化に要する時間が長くなったり、十分に養生硬化を行うことができなくなる。
【0023】
また、オートクレーブ養生の養生時間や雰囲気圧力は、養生温度等に応じて、無機質板1の養生硬化を十分に行うと共に靱性を十分に向上することができるように適宜調整されるが、例えば養生時間を5〜15時間の範囲、雰囲気圧力を5.5〜7.0atmの範囲とすることが望ましい。
【0024】
ここで、無機質板1は全体に亘りクラックの発生が抑制されることが好ましい。例えば屋根材として用いる場合には、複数の屋根材が千鳥(互い違い)に重ね合わされて施工されることから荷重が無機質板1の中央部と端縁部にかかることになり、このため全体に亘って耐クラック性を向上し、踏み割れの発生を抑制することが好ましい。このためには、望ましくはオートクレーブ養生における養生温度が、無機質板1の全体に亘って均一となるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】無機質板の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 無機質板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントを主体とするグリーンシートをオートクレーブ養生により養生硬化することにより無機質板を製造する方法において、前記オートクレーブ養生における養生温度を155〜170℃の範囲とすることを特徴とする無機質板の製造方法。
【請求項2】
上記オートクレーブ養生において、養生温度が無機質板の全体に亘り均一となるようにすることを特徴とする請求項1に記載の無機質板の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−62254(P2006−62254A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248966(P2004−248966)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】