説明

無機質球状化粒子の製造方法

【課題】原料粉体の平均粒径が粒状化の過程において変動することが少なく、目的とする粒度分布を有する球状化粒子を1つのバーナにより得られる無機質球状化粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】拡散型のバーナの第一原料供給路1Aに粗粉を、第二原料供給路6Aに微粉をキャリアガスに搬送して送り込み、酸素を第一酸素供給路5Aと第二酸素供給路7Aとに二分して供給する。燃料ガスを燃料供給路4Aに送り込む。粗粒の原料粉体を分散体積が小さく火炎温度が高い領域で加熱溶融し、細粒の原料粉体を分散体積が大きく火炎温度が低い領域で加熱溶融する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカなどの無機質球状化粒子を酸素バーナにより製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機質球状化粒子は、珪石などを粉砕した原料粉体を高温の火炎中で溶融し、表面張力により球状化させたものである。
例えば、原料として珪石を用いる高純度の球状シリカは、半導体素子のエポキシ封止材用の充填材として広く使用されており、球状化により封止材の流動性の向上、高充填、耐磨耗性向上など様々なメリットを得ることができる。
なお、本明細書においては、無機質球状化粒子を単に球状化粒子と記すことがある。
【0003】
無機質球状化粒子の製造に関し、従来技術として、特許文献1〜4に開示されている方法がある。
原料粉体の球状化には、高温の火炎が必要であることから、通常は、酸素・ガス燃焼方式のバーナが用いられている。
これらのバーナには、予混合型バーナと、拡散型バーナとがある。予混合型とは酸素と燃料ガスとを予め混合させて燃焼場に噴出させるものであり、拡散型とは酸素と燃料ガスとを別々に噴出し、燃焼場で混合させるものである。
【0004】
特許文献2に開示の方法では、予混合型バーナが用いられており、特許文献1、3、4に記載の方法では、拡散型バーナが使用されている。
特許文献1での拡散型バーナは、同心円状の二重管であって、その内管と外管との間に多数の小管を設けてある。このバーナを竪型炉に設置し、珪素質原料をバーナの中心管(内管)から自然流化または加圧流下させ、小管からの燃料ガスと外管からの酸素ガスとで形成した火炎中に原料粉体を投入し、溶融シリカ球状体を製造するものである。
【0005】
特許文献2に記載の予混合型バーナは、バーナ内で、原料粉体、酸素、LPGが充分に混合され、バーナ先端に形成される火炎中に原料粉体が供給されるものである。
特許文献3、4に記載の拡散型バーナは、同心の四重管構造であり、中心から酸素ガス又は酸素富化ガスをキャリアガスとして原料粉体を燃焼室に供給し、その外周から燃料ガスを、更にその外周から1次酸素と2次酸素を供給するように形成され、最外周には、バーナを冷却する冷却水通路が設けられている。
また、特許文献3、4には、このような拡散型バーナを用いて無機質球状化粒子を製造する装置が開示されている。
【0006】
特許文献4に開示されている無機質球状化粒子製造装置においては、図6に示すように、原料粉体が原料供給機Aから切り出され、キャリアガス供給装置A’から供給されるキャリアガスに同伴されてバーナBに搬送される。このバーナBには、酸素供給設備Cからの酸素と、LPG供給設備Dからの液化石油ガス(LPG)とが供給される。
竪型炉E内の火炎中で球状化された粒子を含む排ガスは、経路Fから竪型炉Eの底部に導入された空気により冷却され、後段のサイクロンG、バグフィルターHで球状化粒子が捕集される。
【特許文献1】特開昭58−145613号公報
【特許文献2】特開昭62−241543号公報
【特許文献3】特許第3331491号公報
【特許文献4】特許第3312228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、原料粉体は、火炎中で、主に火炎からの強制対流熱伝達により加熱・溶融され、表面張力によって球状化する。
特許文献3、4に記載された構造の拡散型バーナにおいては、燃焼室が設けられ、特許文献1に記載のバーナに比べ、製造した無機質球状化粒子の凝集状態に改善がみられる。
【0008】
しかし、特許文献3、4に記載された拡散型バーナでは、原料供給路が一つしか有しない構造である。
このため、このバーナを用い、ボールミル粉砕によって得られるような粒度分布の広い原料粉体を使用した場合においては、火炎中において微粒子同士、あるいは微粒子と粗粒子の融着が生じるため、投入した原料粉体の粒度分布と得られる球状化粒子製品の粒度分布とが異なる状況が見られた。
そのため、最適な粒度分布の球状化粒子製品を得るためには、微粒子の原料粉体と粗粒子の原料粉体をそれぞれ別のバーナにて球状化した後、別途混合して製品を得る必要があった。
【0009】
そこで、本発明における課題は、原料粉体の平均粒径が粒状化の過程において変動することが少なく、目的とする粒度分布を有する球状化粒子が一つのバーナによって得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、拡散型バーナを用いた無機質球状化粒子の製造方法であって、
前記バーナは、第一原料供給路、燃料供給路、原料分散室、第一酸素供給路、第二原料供給路、第二酸素供給路、燃焼室から構成され、
バーナの中心に配した第一原料供給路の第一原料噴出孔から、粗粉をキャリアガスを用い、第一原料供給路の先端に設けた分散室に供給し、
分散室の外周に設けた燃料供給路の燃料ガス噴出孔から、分散室の前方に設けた燃焼室へバーナの中心軸と平行に燃料ガスを供給し、
第一酸素供給路から燃焼室の側面に開口した第一酸素噴出孔を通じて酸素含有ガスを旋回流となるように燃焼室に供給し、
第二原料供給路から第一酸素噴出孔よりも出口側の燃焼室側面に開口した第二原料供給孔を通じて、キャリアガスを用い微粉をバーナの中心軸と平行に燃焼室に供給し、
第二酸素供給路から第二原料噴出孔よりも出口側の燃焼室側面に開口した第二酸素噴出孔を通じて、酸素含有ガスを供給する無機質球状化粒子を製造する無機質球状化粒子の製造方法である。
【0011】
請求項2にかかる発明は、請求項1記載の無機質球状化粒子製造方法において、竪型の球状化炉に前記バーナを設け、この球状化炉の下流にサイクロンとバグフィルターとを直列に設けることにより、サイクロンにて粗粒を、バグフィルターにて微粒を捕集することにより、異なる粒度分布を有する無機質球状化粒子を同時に製造する無機質球状化粒子の製造方法である。
【0012】
請求項3にかかる発明は、請求項1記載の無機質球状化粒子製造方法において、竪型の球状化炉に前記バーナを設け、この球状化炉の下流に設けたバグフィルターにて無機質球状化粒子を一括捕集する無機質球状化粒子の製造方法である。
請求項4にかかる発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の方法によって得られた無機質球状化粒子である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、拡散型のバーナを用いているので、逆火を生じることがない。また、第一原料供給路に粗粉を、第二原料供給路に微粉を供給するので、火炎外周部の温度が低い領域において粒径の小さな粒子を十分溶融でき、火炎中心部の温度が高い領域において粒径の大きな粒子を十分溶融できる。また、粒径の小さな粒子は分散性がよくないので、これを分散体積が大きくなる第二原料供給路から噴射させ、火炎中で良好に分散できる。一方、粒径の大きな粒子は分散性がよいので、これを分散体積が小さくなる第一原料供給路から噴射させ、火炎中で良好に分散できる。
【0014】
このため、本発明の製造方法によれば、大きな粒径の粒子も小さな粒径の粒子も、その粒径をほぼ維持して球状化できる。
したがって、要求に応じた粒径あるいは粒度分布を有する球状化粒子を一つのバーナによって製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1および図2は、本発明において使用される無機質球状化粒子製造用バーナ(以下、単にバーナと呼ぶことがある)の一例を示すもので、図1はバーナー中心軸に沿って切断した断面図であり、図2はバーナをその先端側から眺めた側面図であるが、原料粉体、燃料、酸素の噴出孔のみを示している。
【0016】
これらの図において、符号1は第一原料供給管を示し、その内部は原料粉体とキャリアガスとの混合物が供給される第一原料供給路1Aとなっている。
キャリアガスとしては酸素、酸素濃度20vol%以上の酸素富化空気、空気などの酸素濃度20vol%以上の酸素含有ガスが用いられる。
原料粉体としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ガラスなどの無機質粉末であって、その粒子形態が角を有する非球形の粒子であるものが用いられる。
原料粉体のうち、粗粉とは平均粒度がおおよそ10μm以上の粒径の大きな粉体を言い、微粉とは平均粒度がおおよそ10μm未満の粒径の小さな粉体を言うものとする。
【0017】
この第一原料供給管1の出口端には粉体分散板2が取り付けられている。この粉体分散板2は、原料粉体とキャリアガスとの混合粉体をバーナ出口方向に向けて放射状に噴出させるもので、斜め外方に向けた複数の第1原料噴出孔3、3・・が円周上に等間隔に形成されている。
【0018】
第一原料供給管1の外側には、燃料供給管4が同軸的に設けられており、原料供給管1と燃料供給管4との間の空隙は燃料供給路4Aとなって、液化石油ガス(LPG)などの燃料ガスが供給されるようになっている。燃料供給路4Aの出口端は複数の燃料ガス噴出孔4B、4B・・となっており、バーナ中心軸に対して平行に燃料を噴出するようになっている。これら複数の燃料ガス噴出孔4B、4B・・は、円周上に等間隔に形成されている。
【0019】
燃料供給管4の外側には、第一酸素供給管5が同軸的に設けられており、燃料供給管4と第一酸素供給管5との間の空隙は第一酸素供給路5Aとして、酸素、酸素濃度20vol%以上の酸素富化空気、空気などの酸素濃度20vol%以上の酸素含有ガスが供給されるようになっている。
第一酸素供給路5Aの出口端は複数の第一酸素噴出孔5B、5B・・となっており、これら第一酸素噴出孔5B、5B・・の出口はバーナ中心軸に向いて開口しており、バーナ中心軸に対して直角方向に酸素を噴射し、後述する燃焼室8内で旋回流を形成するように構成されている。
これら複数の第一酸素噴出孔5B、5B・・は、円周上に等間隔に形成されており、かつ前記複数の燃料噴出孔4B、4B・・と円周上異なる位置であって2つの燃料噴出孔4B、4Bの中間に配されている。
【0020】
第一酸素供給管5の外側には第二原料供給管6が同軸的に設けられており、第一酸素供給管5と第二原料供給管6との間の空隙は第二原料供給路6Aとなっている。第二原料供給路6Aの出口部分は、複数の第二原料噴出孔6B、6B・・が形成され、バーナ中心軸に対して平行に原料が噴出するようになっている。
複数の第二原料噴出孔6B、6B・・は、円周上に等間隔に形成されている。
【0021】
第二原料供給管6の外側には第二酸素供給管7が同軸的に設けられており、第二原料供給管6と第二酸素供給管7との間の空隙は、第二酸素供給路7Aとなっている。この第二酸素供給路7Aは、第一酸素供給路5Aに比較してその断面積が広くなっており、多くの酸素を供給できるようになっている。第二酸素供給路7Aの出口端は、複数の第二酸素噴出孔7B、7B・・が形成され、この第二酸素噴出孔7B、7B・・は円周上に等間隔に形成されている。これら第二酸素噴出孔7B、7B・・は、バーナ中心軸に平行方向に開口しており、酸素含有ガスがバーナ中心軸に対して平行方向に噴出されるようになっている。
【0022】
また、第二酸素供給管7は、その厚さが厚くなっており、その内部には冷却水が循環して流れる冷却水通路71が形成され、バーナ自体を冷却できるようになっている。
さらに、バーナの先端部分は、外方に拡がったすり鉢状に凹んでおり、この部分が燃焼室8となっている。
すなわち、燃焼室8の傾斜した壁の部分は、第二酸素供給管7と第二原料供給管6と第一酸素供給管5の先端部分を斜めに形成することで構成され、燃焼室8の底部は円筒状の原料分散室9に続いている。原料分散室9は、原料供給管1の出口端部が粉体分散板2よりもバーナの先端方向に向けて薄肉となって円筒状に延びることによって形成されている。
【0023】
さらに、燃焼室8の円錐状壁面には、燃料ガス噴出孔4B、4B・・、第一酸素噴出孔5B、5B・・、第二原料噴出孔6B、6B・・、第二酸素噴出孔7B、7B・・がそれぞれ開口している。
また、前記第二原料噴出孔6Bは第一酸素噴出孔5Bよりバーナの先端側に開口し、前記第二酸素噴出孔7Bは第二原料噴出孔6Bよりもバーナ先端側に開口している。
【0024】
このような構造の無機質球状化粒子製造用バーナにあっては、第一原料供給路1Aの先端が多数の小孔を有する粉体分散板2を介して原料分散室9に接続され、第一原料供給路1Aの外周に設けられた燃料ガス供給路4Aと、該燃料ガス供給路4Aの外周に設けられた第一酸素供給路5Aとが、各供給路の先端に接続する出口側が拡径した燃焼室8に向けて開口しているため、バーナ火炎中における原料粉体の分散性が向上する。
第一原料供給路1Aと、第二原料供給路6Aに、それぞれ粒度の異なる原料粉体を供給するようにすれば、火炎中心部の温度の高い領域では、平均粒度の大きい粒子を、火炎外周部の温度が低い領域では、平均粒度の小さい粒子を効率よく分散させながら処理することができる。
【0025】
平均粒度が大きい粒子は、比較的分散しやすいため、分散面積が小さい、火炎中心部に位置した第一原料供給路1Aから供給し、平均粒度が小さい粒子は、分散が困難であるため、分散面積の大きい第二原料供給路6Aから火炎中に供給することで、火炎中に効率よく分散させることができる。
これにより、平均粒度の大きい球状化粒子と、平均粒度の小さい球状化粒子を、一つのバーナにおいて、一度に最適な状態で処理できる。
【0026】
図3は、本発明において使用される無機質球状化粒子製造装置の一例を示すもので、図中符号11は球状化炉を示す。この球状化炉11は、円筒形の竪型炉であって、その天井部には上述のバーナ12が、その先端側を炉内に臨ませるようにして垂直に取り付けられている。
球状化炉11の底部付近には空気導入口13が形成されており、ここから冷却用空気を内部に導入し、排出される燃焼ガスの温度を下げることができるようになっている。
【0027】
球状化炉11の底部付近には燃焼ガス排出口14が形成されており、ここから生成した球状化粒子が燃焼ガスに搬送されて導出され、ダクト15、ダンパー16を介してサイクロン17の入口に送られるようになっている。
ダクト15は、そのダンパー16の上流側において、ダクト18に接続されて分岐され、このダクト18はバグフィルター19の入口に接続されている。
【0028】
ダクト18には、その途中に空気導入ポート20が設けられており、このポート20から適宜空気をダクト18内に取り入れ、ダクト18内を流れる燃焼ガスの温度を下げて調節することができるようになっている。
また、サイクロン17の出口にはダクト21が接続され、このダクト21はダンパー22を介してバグフィルター19の入口に接続されている。
【0029】
バーナ2の第一原料供給路1Aには第一原料供給パイプ(図示略)が接続され、この第一原料供給パイプは第一原料フィーダー23に接続されている。第一原料フィーダー23には、平均粒度10μm以上の粒径の粗い原料粉体が貯えられ、キャリアガス供給源24からのキャリアガスが送られ、このキャリアガスに所定量の原料粉体が搬送されて前記第一原料供給パイプを介してバーナ2の第一原料供給路1Aに送られるようになっている。
第一原料フィーダー23には、図示しない制御装置からの原料粉体供給量制御信号に応じて、所定量の原料粉体を送り出す送出機構が備えられている。
キャリアガスには、酸素、酸素富化空気、空気などの酸素濃度20vol%以上の酸素含有ガスが用いられる。
キャリアガス供給源24にも、図示しない制御装置からのキャリアガス供給量制御信号に応じて、所定量のキャリアガスを第一原料フィーダー23および第二原料フィーダー25にそれぞれ送り出す流量調整弁が備えられている。
【0030】
バーナ2の第二原料供給路6Aには第二原料供給パイプ(図示略)が接続され、この第二原料供給パイプは第二原料フィーダー25に接続されている。第二原料フィーダー25には、平均粒度10μm未満の粒径の細かい原料粉体が貯えられ、キャリアガス供給源24からのキャリアガスが送られ、このキャリアガスに所定量の原料粉体が搬送されて前記第二原料供給パイプを介してバーナ2の第二原料供給路6Aに送られるようになっている。
第二原料フィーダー25にも、図示しない制御装置からの原料粉体供給量制御信号に応じて、所定量の原料粉体を送り出す送出機構が備えられている。
【0031】
バーナ2の燃料供給路4Aには燃料供給パイプ(図示略)が接続され、この燃料供給パイプは燃料ガス供給源26に接続されている。燃料ガス供給源26は、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)などの燃料ガスを貯えて、これを送り出すものであって、所定量の燃料ガスが前記燃料ガス供給パイプを介してバーナ2の燃料供給路4Aに送られるようになっている。
燃料ガス供給源26には、図示しない制御装置からの燃料ガス供給量制御信号に応じて、所定量の燃料ガスを送り出す送出機構が備えられている。
【0032】
バーナ2の第一酸素供給路5Aには第一酸素供給パイプ(図示略)が接続され、この第一酸素供給パイプは第一酸素供給源27に接続されている。第一酸素供給源27は、前記酸素含有ガスを貯えて、これを送り出すものであって、所定量の酸素含有ガスが前記第一酸素供給パイプを介してバーナ2の第一酸素供給路5Aに送られるようになっている。
第一酸素供給源27には、図示しない制御装置からの第一酸素供給量制御信号に応じて、所定量の酸素含有ガスを送り出す送出機構が備えられている。
【0033】
バーナ2の第二酸素供給路7Aには第二酸素供給パイプ(図示略)が接続され、この第二酸素供給パイプは第二酸素供給源28に接続されている。第二酸素供給源28は、前記酸素含有ガスを貯えて、これを送り出すものであって、所定量の酸素含有ガスが前記第二酸素供給パイプを介してバーナ2の第二酸素供給路7Aに送られるようになっている。
第二酸素供給源28にも、図示しない制御装置からの第二酸素供給量制御信号に応じて、所定量の酸素含有ガスを送り出す送出機構が備えられている。
なお、第一酸素供給源27と第二酸素供給源28とを一体化し、これに二基の送出機構を設け、それぞれの送出機構から第一酸素供給パイプと第二酸素供給パイプとに別々に酸素含有ガスを送り出し、バーナ2の第一酸素供給路5Aと第二酸素供給路7Aとにそれぞれ所定量の酸素含有ガスを供給するようにしてもよい。
【0034】
次に、このような製造装置を用いた球状化粒子の製造方法の一例を説明する。
第一原料フィーダー23から、平均粒度10μm以上の粗粉をバーナ12の第一原料供給路1Aにおくり、第1原料噴出孔3から原料分散室9を介して燃焼室8に向けて噴出する。第二原料フィーダー25から、平均粒度10μm未満の微粉をバーナ12の第二原料供給路6Aにおくり、第二原料噴出孔6Bから燃焼室8に向けて噴出する。
ここで、原料粉体の供給先をその平均粒度10μmで区切った理由は、10μm未満の原料粉体は分散しにくい特性があるためである。
【0035】
バーナ12の第一酸素供給路5A、第二酸素供給路7Aにそれぞれ所定量の酸素含有ガスを第一酸素供給源27、第二酸素供給源28から送り込み、第一酸素噴出孔5B、第二酸素噴出孔7Bを経て燃焼室8に向けて噴出する。
バーナ12の燃料供給路4Aに所定量の燃料ガスを燃料ガス供給源26から送り込み、燃料ガス噴出孔4Bを経て燃焼室8に向けて噴出する。
【0036】
火炎中に噴出された粒径の異なる二種の原料粉体は、それぞれ火炎の高温の中心領域、低温の外側領域において、加熱されて溶融し、球状化して粒径の異なる球状化粒子となる。
この球状化粒子は、バーナ2から生成した燃焼ガスと空気導入口13から導入される空気とのガスに浮遊して球状化炉11の燃焼ガス排出口14からダクト15、ダンパー16を経てサイクロン17に送られる。燃焼ガスに空気を混合することでサイクロン17に導入されるガスの温度が低下し、サイクロン17での粒子捕集に適した温度となる。
【0037】
サイクロン17では、ガス中に浮遊している球状化粒子のうち、粗粒の球状化粒子が捕集される。サイクロン17から導出されたガスはダクト18を介してバグフィルター19に送られ、ここで球状化粒子のうち、細粒の球状化粒子が捕集される。
【0038】
また、必要に応じて、ダクト15のダンパー16を閉とし、ガスをダクト18に流して直接バグフィルター19に送ってすべての球状化粒子をここで捕集することもできる。この際、ガスの温度を下げる必要がある場合には、空気導入ポート20から適量の空気をガスに混入することもできる。
以上の操作により、原料粉体の粒度にほぼ一致した粒度の球状化粒子を一基のバーナ12により効率よく得ることができる。
【0039】
以下、具体例を示す。
(例1)
図3に示す無機質球状化粒子製造装置を用いて球状化粒子を製造した。
原料粉体として全量でシリカ粉末20kg/hを7.5Nm/hの酸素からなるキャリアガスで搬送した。燃料ガスとしてLPG5Nm/hを供給した。酸素含有ガスとして全量で酸素20Nm/hをバーナ12に二分して導入して球状化粒子を製造し、98%以上のガラス化率が得られる球状化処理能力を求めた。
【0040】
このとき、原料粉体の粒度に応じて前記第一酸素噴出孔5B(一次酸素)及び第二酸素噴出孔7B(二次酸素)に供給する酸素の割合を、一次酸素0〜100%、二次酸素100〜0%の範囲で変えて98%以上のガラス化率が達成できる条件を検討した。
平均粒度30μmと平均粒度2μmの原料粉体に対する処理結果を図4、図5、表1に示す。
30μm原料を処理する場合には、第一原料噴出孔3より原料粉体を噴出し、2μm原料を処理する場合においては、第二原料噴出孔6Bより原料粉体を噴出した。
30μm原料粉体については、サイクロン17で捕集し、2μm原料については、サイクロン17を介さずバグフィルター19で一括捕集した。
【0041】
【表1】

【0042】
その結果、図4、図5に示すように、いかなる粒径の原料においても一次酸素50%以上、二次酸素50%以下の条件では98%以上のガラス化率は得られなかった。
また、従来技術との比較においても、一次酸素及び二次酸素の影響については、有意な差は見られなかった。
また、表1の結果より、本発明のバーナを用いることで、より原料粒度に近い無機質球状化粒子を得ることができることが確認された。
【0043】
(例2)
原料粉体としてシリカ粉末を採用し、平均粒度15μmの原料粉体A、平均粒度2μmの原料粉体B、原料粉体A70wt%と原料粉体B30wt%を混合した平均粒度5μmの原料粉体Cの3種の原料粉体を用意した。
従来技術のバーナを用い、原料粉体Cを20kg/hを7.5Nm/hの酸素からなるキャリアガスで搬送して供給した。燃料ガスとしてLPG5Nm/hを供給した。酸素20Nm/hを供給して球状化粒子を製造し、98%以上のガラス化率が得られる球状化処理能力を求めた。
【0044】
本発明のバーナを用い、原料A14kg/hを5.25Nm/hの酸素からなるキャリアガスで第一原料噴出孔3へ搬送し、原料B6kg/hを2.25Nm/hの酸素からなるキャリアガスで第二原料噴出孔6Bへ搬送した。燃料ガスとしてLPG5Nm/hを燃料ガス噴出孔4Bに供給し、酸素全量20Nm/hを第一酸素噴出孔5Bと第二酸素噴出孔7Bに分割して供給して球状化粒子を製造し、98%以上のガラス化率が得られる球状化処理能力を求めた。
【0045】
このとき、原料粉体の粒度に応じて前記第一酸素噴出孔5B(一次酸素)及び第二酸素噴出孔7B(二次酸素)に供給する酸素の割合は、一次酸素30%、二次酸素70%の比率で固定とし、原料粉体供給量を調整することで、バーナの処理能力を検討した。
結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表2の結果より、本発明におけるバーナ構造を用いることで、より原料粒度に近い無機質球状化粒子を効率良く得ることが出来ることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明において使用されるバーナの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明において使用されるバーナの一例を示す概略側面図である。
【図3】本発明において使用される製造装置の例を示す概略構成図である。
【図4】実施例における一次酸素と二次酸素との流量割合とガラス化率との関係を示した図表である。
【図5】実施例における一次酸素と二次酸素との流量割合とガラス化率との関係を示した図表である。
【図6】従来の無機質球状化粒子の製造装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0049】
1・・第一原料供給管、1A・・第一原料供給路、2・・粉体分散板、3・・第一原料噴出孔、4・・燃料供給管、4A・・燃料供給炉、4B・・燃料ガス噴出孔、5・・第一酸素供給管、5A・・第一酸素供給路、5B・・第一酸素噴出孔、6・・第二原料供給管、6A・・第二原料供給路、6B・・第二原料噴出孔、7・・第二酸素供給管、7A・・第二酸素供給路、7B・・第二酸素噴出孔、8・・燃焼室、9・・分散室、11・・球状化炉、12・・バーナ、17・・サイクロン、19・・バグフィルター、23・・第一原料フィーダー、24・・キャリアガス供給源、25・・第二原料フィーダー、26・・燃料供給源、27・・第一酸素供給源、28・・第二酸素供給源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散型バーナを用いた無機質球状化粒子の製造方法であって、
前記バーナは、第一原料供給路、燃料供給路、原料分散室、第一酸素供給路、第二原料供給路、第二酸素供給路、燃焼室を具備し、
バーナの中心に配した第一原料供給路の第一原料噴出孔から、粗粉をキャリアガスを用い、第一原料供給路の先端に設けた分散室に供給し、
分散室の外周に設けた燃料供給路の燃料ガス噴出孔から、分散室の前方に設けた燃焼室へバーナの中心軸と平行に燃料ガスを供給し、
第一酸素供給路から燃焼室の側面に開口した第一酸素噴出孔を通じて酸素含有ガスを旋回流となるように燃焼室に供給し、
第二原料供給路から第一酸素噴出孔よりも出口側の燃焼室側面に開口した第二原料供給孔を通じて、キャリアガスを用い微粉をバーナの中心軸と平行に燃焼室に供給し、
第二酸素供給路から第二原料噴出孔よりも出口側の燃焼室側面に開口した第二酸素噴出孔を通じて、酸素含有ガスを供給する無機質球状化粒子を製造する無機質球状化粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の無機質球状化粒子製造方法において、竪型の球状化炉に前記バーナを設け、この球状化炉の下流にサイクロンとバグフィルターとを直列に設けることにより、サイクロンにて粗粒を、バグフィルターにて微粒を捕集することにより、異なる粒度分布を有する無機質球状化粒子を同時に製造する無機質球状化粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の無機質球状化粒子製造方法において、竪型の球状化炉に前記バーナを設け、この球状化炉の下流に設けたバグフィルターにて無機質球状化粒子を一括捕集する無機質球状化粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法によって得られた無機質球状化粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−37134(P2010−37134A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201302(P2008−201302)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】