説明

無機配向膜、その製造方法および液晶装置

【課題】スプレイ−ベンド配向転移を容易に発現し、かつ転移後のベンド配向維持が容易な無機配向膜およびその無機配向膜を用いた表示品質の優れた液晶装置を提供する。
【解決手段】基板上に配置された、同一方向に傾斜した複数の柱状構造体により形成される無機配向膜において、前記無機配向膜は第1領域と、該第1領域を取り囲むように配置された第2領域を有し、前記第1領域における柱状構造体の直径が、前記第2領域の柱状構造体の直径よりも大きい無機配向膜およびその無機配向膜を用いた液晶装置。前記柱状構造体の傾斜角度が、基板法線を基準として30度以上55度以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機配向膜、その製造方法および液晶装置に関し、特に高速応答実現可能なOCB(Optically Compensated Bend)モードを用いた液晶装置およびそれに用いる無機配向膜に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶素子には用途に応じて様々な液晶配向モードが用いられる。例えばTN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Aligned)モード、IPS(In Plane Switching)モード、OCB(Optically Compensated Bend)モード等が良く知られている。これらの液晶配向モードは液晶組成物の物性と、配向膜の特性によって決定することができる。
【0003】
近年、優れた動画表示を行う高速応答性を有する液晶装置の開発が活発になっており、上記液晶配向モードの中でOCBモードは比較的高速応答性を有していることから、注目を集めている。
【0004】
OCBモードは、表示動作の際に図7に示すベンド配向と呼ばれる液晶配向状態を使用するが、ベンド配向を形成するためには図6に示すような初期配向状態のスプレイ配向からの配向転移が必要となる。一般にこのスプレイ−ベンド配向転移のために液晶セルに対してある電圧以上の転移電圧を印加する必要がある。しかしながら転移電圧が高くなると液晶素子の駆動電圧が高くなるため、転移電圧はできるだけ低くすることが好ましい。
【0005】
転移電圧の低減には液晶配向膜とその直上の液晶分子の傾き角であるプレチルト角を高く設定することや、液晶組成物の弾性定数(K33/K11)の低減等が有効であることが知られている(非特許文献1、2参照)。特にプレチルト角を40°以上に設定することにより転移電圧が不要となり、スプレイ配向状態を経ずにベンド配向を形成することが可能である。
【0006】
しかし、プレチルト角を高く設定するとベンド転移が発生しやすくなる反面、液晶層のリタデーションが低下し、その結果光利用効率が低下するという課題がある。
この課題の解決のため、低プレチルト角でもベンド配向転移を容易にするための報告がある。
【0007】
例えば特許文献1には、基板面内に複数の異なるプレチルト角を発現する領域を形成し、具体的には低プレチルト角領域を高プレチルト角領域で囲い込むことで、スプレイ−ベンド転移の発生を容易とする技術が開示されている。特許文献1における低プレチルト角領域の形成方法としては以下の方法が挙げられている。まず高プレチルト角領域を、蒸着角度80°の斜方蒸着法により基板上に形成する。その後マスクを用いて蒸着領域を画素領域のみに制限し、基板を90°回転させることにより蒸着方向を90°回転させて、蒸着角度60°で斜方蒸着膜を作製する。このような作製方法により、画素領域は60°蒸着により低プレチルト角となり、画素間領域は80°蒸着により高プレチルト角となる。一方蒸着角度60°と蒸着角度80°の場合には、方位角方向、即ち基板面内方向の液晶配向が90°回転することが知られている。そのため特許文献1においては、蒸着角度60°と蒸着角度80°の蒸着方向を90°回転させて、方位角方向の液晶配向方向を一致させている。
【0008】
また、特許文献2においては、紫外線照射によりプレチルト角が変化するようなポリイミド配向膜を用い、画素領域部にのみ紫外線を照射することで、画素領域部のプレチルト角を画素間領域のプレチルト角よりも低く設定している。
【特許文献1】特開2007−017502号公報
【特許文献2】特開2000−330141号公報
【非特許文献1】Applied Physics Letters Vol.90、091103 (2007)
【非特許文献2】Applied Physics Letters Vol.88、041108 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の方法では、液晶層のベンド転移電圧を低減させる効果は有するものの、十分とは言えず、更なるベンド転移電圧の低下、転移後のベンド配向の安定化が望まれていた。また、配向膜作製時に、異なる蒸着角度(例えば60°と80°)で2回、基板を90°回転させて蒸着を行う必要があるため、プロセスが煩雑となる課題があった。
また、特許文献2の方法では、有機配向膜を用いるため、高強度光を使用する環境下では液晶素子が劣化する場合があった。
【0010】
本発明は、係る課題を鑑みなされたものであって、画素電極や画素間に切欠部等の構造を設置すること無く、スプレイ−ベンド配向転移を容易に発現し、かつ転移後のベンド配向維持が容易であり、表示品質の優れた液晶装置を提供するものである。
また、本発明は上記の液晶装置に用いる無機配向膜およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、斜方蒸着法を用いて、40°以上のプレチルト角を発現するための、柱状構造体で形成された無機配向膜の製造条件を見出した。さらにその条件で製造された無機配向膜の柱状構造体に、ある一定の角度方向から、もう一度斜方蒸着を行うことにより、柱状構造体の直径を増加させプレチルト角を低下させることができることを見出した。
【0012】
また、ベンド配向領域に囲まれたスプレイ配向領域の液晶をスプレイ−ベンド転移させることで、その後のベンド配向領域に囲まれた領域の液晶の逆転移(ベンド配向からスプレイ配向への転移)が、通常の逆転移に比べて非常に遅いか、逆転移が発生しないことを見出した。
【0013】
これらの事実を基に検討を行い、以下に示す発明を完成させた。
上記の課題を解決する無機配向膜は、基板上に配置された、同一方向に傾斜した複数の柱状構造体により形成される無機配向膜において、前記無機配向膜は第1領域と、該第1領域を取り囲むように配置された第2領域を有し、前記第1領域における柱状構造体の直径が、前記第2領域の柱状構造体の直径よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
また、上記の課題を解決する液晶装置は、正の誘電異方性を有するネマティック液晶からなる液晶層と、前記液晶層を挟持して対向する第1の基板と第2の基板と、前記第1の基板と第2の基板上に配置された同一方向に傾斜した複数の柱状構造体により形成される無機配向膜を有する液晶装置であり、前記第1の基板上には複数の画素電極が配置された画素電極領域と、前記画素電極領域を取り囲むように画素電極外領域が配置され、前記第2の基板上には透明電極から成る対向電極が配置され、前記第1の基板の画素電極領域上に前記無機配向膜の第1領域が配置され、前記画素電極外領域には前記無機配向膜の第2領域が配置され、前記第1領域における柱状構造体の直径が、前記第2領域の柱状構造体の直径よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
また、上記の課題を解決する無機配向膜の製造方法は、斜方蒸着法を用いた、一方向に傾斜した複数の柱状構造体により形成される無機配向膜の製造方法において、基板上に基板法線を基準として70度以上の蒸着角度にて酸化物を蒸着して一方向に傾斜した複数の柱状構造体を形成する第一の蒸着工程と、第一の蒸着工程により形成された前記複数の柱状構造体を第1領域と、該第1領域を取り囲む第2領域に分けて、該第2領域にマスクを設置する工程と、前記マスクを設置していない第1領域の柱状構造体に、基板法線を基準として−45度以上45度以下の蒸着角度にて酸化物を蒸着し、前記第1領域における柱状構造体の直径を、前記第2領域の柱状構造体の直径よりも大きくする第二の蒸着工程からなり、第一の蒸着工程における蒸着方向と、第二の蒸着工程における蒸着方向が略同一平面内にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第一の斜方蒸着で形成した複数の柱状構造体より形成される無機配向膜を第1領域と、前記第1領域を取り囲む第2領域に分けて、前記第1領域にある一定角度で第二の斜方蒸着を行うことで第1領域の柱状構造体の直径を増加させ、第1領域の柱状構造体の直径を第2領域の柱状構造体の直径よりも大きくする。この手法により部分的なプレチルト角低下を達成可能な無機配向膜、その製造方法および液晶装置を提供できる。
【0017】
特に、第一の斜方蒸着で形成する無機配向膜を、電圧無印加状態でベンド配向となるプレチルト角に設定することにより、第二の蒸着にて形成する表示領域部のスプレイ配向部のベンド配向への転移を容易にすることができる。加えてベンド配向領域に囲まれたスプレイ配向領域の液晶をスプレイ−ベンド転移させることで、その後のベンド配向領域に囲まれた領域の逆転移発生を抑制することができ、転移後のベンド配向の安定性向上を図ることが可能な無機配向膜、その製造方法および液晶装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る無機配向膜は、基板上に配置された、同一方向に傾斜した複数の柱状構造体により形成される無機配向膜において、前記無機配向膜は第1領域と、該第1領域を取り囲むように配置された第2領域を有し、前記第1領域における柱状構造体の直径が、前記第2領域の柱状構造体の直径よりも大きいことを特徴とする。
【0019】
<無機配向膜について>
図1は、本発明の無機配向膜の構成の一例を示す概念図である。101は第1領域、102は第2領域である。また、図2は本発明の無機配向膜の断面模式図である。201は基板、202は柱状構造体、203は柱状構造体の傾斜角度、204は膜厚、205は蒸着方向、206は空隙、207は柱状構造体の直径、208は基板法線である。また、図3は図2に示す無機配向膜の断面図を配向膜表面方向から見た場合の模式図である。図3において301は柱状構造体、302は柱状構造体の直径である。
【0020】
本発明の無機配向膜は、基板上に配置された、同一方向に傾斜した複数の柱状構造体より形成される無機配向膜であり、図1に示す様に、前記無機配向膜は第1領域101と、該第1領域101を取り囲むように配置された第2領域102を有し、図2および図3に示す柱状構造体の直径207、302が、図1に示す第1領域101と第2領域102とで異なり、前記第1領域101における柱状構造体の直径が、前記第2領域102の柱状構造体の直径よりも大きいことを特徴とする。この柱状構造体直径207、302が大きくなることにより、液晶配向、特にプレチルト角が変化する。なお、柱状構造体の直径とは、ここでは走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した、無機配向膜表面から見た柱状構造体の平均直径で定義される。
【0021】
ここでプレチルト角について図4を用いて説明する。図4はプレチルト角を測定する際に使用する液晶セルの断面模式図であり、401はプレチルト角θp、402は液晶分子、403は配向膜、404はガラス基板、405は配向処理方向である。配向膜403のプレチルト角401はクリスタルローテーション法や磁場スレッショルド法等の方法により測定される。その際配向膜403は、上下基板共に同じ配向膜を用い、配向処理方向405が反平行(アンチパラレル)方向となる様に向かい合わせ液晶セルを作製する。このような液晶セルを作製することにより、液晶分子402が図4に示すような方向へと配列し、配向膜403のプレチルト角401が測定可能となる。本発明におけるプレチルト角は、図4に示す液晶セルを用いて測定する。
【0022】
また、図2に示す柱状構造体の傾斜角度203は、後述する斜方蒸着時の蒸着角度により変化させることができる。図1の第1領域101の無機配向膜における柱状構造体の傾斜角度は同一である。この柱状構造体の傾斜角度203は、基板法線208を基準として30度以上55度以下の範囲にある場合、第2領域102の柱状構造体の直径を第1領域の柱状構造体の直径より大きくした場合にプレチルト角が効果的に低下する。
【0023】
本発明における無機配向膜に用いられる無機材料としては、例えば酸化物、例えば二酸化ケイ素(SiOx)、一酸化珪素(SiO)等の酸化ケイ素(SiOx:x=1から2程度)、が挙げられる。しかしながら本発明はこれらの材料に限定されるものではない。
【0024】
<液晶装置について>
本発明に係る液晶装置は、正の誘電異方性を有するネマティック液晶からなる液晶層と、前記液晶層を挟持して対向する第1の基板と第2の基板と、前記第1の基板と第2の基板上に配置された同一方向に傾斜した複数の柱状構造体により形成される無機配向膜を有する液晶装置であり、前記第1の基板上には複数の画素電極が配置された画素電極領域と、前記画素電極領域を取り囲むように画素電極外領域が配置され、前記第2の基板上には透明電極から成る対向電極が配置され、前記第1の基板の画素電極領域上に前記無機配向膜の第1領域が配置され、前記画素電極外領域には前記無機配向膜の第2領域が配置され、前記第1領域における柱状構造体の直径が、前記第2領域の柱状構造体の直径よりも大きいことを特徴とする。
【0025】
図5は、本発明の液晶装置の構成の一例を示す概念図である。501は画素電極領域、502は画素電極外領域、503はシール部、504は封口部、505は取出電極である。
【0026】
画素電極領域501は、透過型の場合にはITO(Indium−Tin−Oxide)等の透明電極であり、反射型の場合には入射光を反射する金属材料、例えばアルミニウム(Al)、銀(Ag)等である。これらの画素電極の液晶層を挟んで対向側に図6に図示する対向電極602が存在し、画素電極605と対向電極602との間に印加する電位差により液晶分子を駆動する。
【0027】
本発明においては、画素電極領域501上に図1に示す無機配向膜の第1領域101を、画素電極外領域502上に無機配向膜の第2領域102が配置されるよう、無機配向膜を作製する。このように無機配向膜を配置することにより、画素電極領域501のプレチルト角をその周辺部、即ち画素電極外領域502より低下させることができ、液晶表示素子として使用する場合に、画素電極領域の透過率、反射率の向上を図ることができる。
【0028】
図6は、本発明の液晶装置におけるスプレイ配向状態を示す概念図である。601は上部基板、602は対向電極、603は無機配向膜、604は液晶層、605は画素電極、606は下部基板である。
【0029】
また、図7は、本発明の液晶装置におけるベンド配向状態を示す概念図である。本発明の液晶装置においては、表示動作時に図7に示すようなベンド配向状態を示す必要があり、そのような配向状態となるように無機配向膜の配向方向等を調整しておく必要がある。具体的には、上下の配向方向が一致するように無機配向膜を形成しておく必要がある。また、プレチルト角が低い場合には図6に示すようなスプレイ配向状態を示すので、表示動作時にはスプレイ配向状態から配向転移させてベンド配向状態を形成する必要がある。
【0030】
特に本発明では、前記基板の画素電極領域上に前記無機配向膜の第1領域が配置され、前記画素電極外領域には前記無機配向膜の第2領域が配置され、前記第1領域における柱状構造体の直径が、前記第2領域の柱状構造体の直径よりも大きくすることができる。その結果、画素電極領域と画素電極外領域とで異なる液晶配向状態を発生させることができる。
【0031】
画素電極領域のプレチルト角が40°以下である場合、配向処理直後の電圧無印加の状態では、図6の液晶層604に示すような、スプレイ配向状態をとる。表示領域部のプレチルト角が低いと、図7に示すようなベンド配向状態を形成した際に液晶層のリタデーション量が大きくなり表示には有利となる。しかし初期状態では表示に使用するベンド配向状態をとりづらくなる。
本発明では、表示に寄与しない画素電極外領域のプレチルト角を高く設定し、電圧無印加時でのベンド配向状態を形成することにより、画素電極領域のスプレイ配向のベンド配向への転移を容易にし、かつ表示領域部のベンド配向からスプレイ配向への逆転移を抑制する。
【0032】
本発明においては、前記液晶層の表示動作時の配向状態がベンド配向であり、
前記非表示領域部の液晶層において、電圧無印加の状態での該液晶層の配向状態がベンド配向であることが好ましい。
【0033】
<無機配向膜の製造方法について>
次に、本発明の無機配向膜の製造方法について説明する。
本発明の無機配向膜の製造方法は、斜方蒸着法を用いた、一方向に傾斜した複数の柱状構造体により形成される無機配向膜の製造方法において、基板上に基板法線を基準として70度以上の蒸着角度にて酸化物等の無機材料を蒸着して一方向に傾斜した複数の柱状構造体を形成する第一の蒸着工程と、第一の蒸着工程により形成された前記複数の柱状構造体を第1領域と、該第1領域を取り囲む第2領域に分けて、該第2領域にマスクを設置する工程と、前記マスクを設置していない第1領域の柱状構造体に、基板法線を基準として−45度以上45度以下の蒸着角度にて酸化物等の無機材料を蒸着し、前記第1領域における柱状構造体の直径を、前記第2領域の柱状構造体の直径よりも大きくする第二の蒸着工程からなり、第一の蒸着工程における蒸着方向と、第二の蒸着工程における蒸着方向が略同一平面内にあることを特徴とする。
【0034】
即ち、本発明の無機配向膜の製造方法は、下記工程から成る。
(a)工程:複数の柱状構造体からなる斜方蒸着膜を形成する第一の蒸着工程
(b)工程:蒸着領域を制限するマスクを設置する工程
(c)工程:マスクを設置していない柱状構造体の一部領域に無機材料を蒸着する第二の蒸着工程
【0035】
以下に各工程について説明する。
(a)工程:複数の柱状構造体からなる斜方蒸着膜を形成する第一の蒸着工程
図8は、本発明の無機配向膜の製造方法における、斜方蒸着法の装置構成を示す構成図である。図8において、801は蒸着源、802は基板、803は基板ホルダ、804は基板法線、805は蒸着角度、806は蒸着距離、807は蒸着方向である。図8に示す構成の装置は、真空装置内に設置される。
【0036】
蒸着源801は、斜方蒸着膜を構成する材質の材料を蒸着原料として導入し、抵抗加熱法や電子ビーム蒸着法等の方法により蒸着原料を加熱し、蒸着を行う。
蒸着原料は、形成する無機配向膜が液晶を一定の方位角方向に配列させるものであればどのような材料を用いても良く、例えば酸化物、例えば二酸化ケイ素(SiOx)、一酸化珪素(SiO)等の酸化ケイ素(SiOx:x=1から2程度)、が用いられる。
【0037】
本発明では、二酸化珪素(SiO)、一酸化珪素(SiO)等の酸化ケイ素(SiOx)を用いることが好ましい。これらの材料はその形成条件により液晶配向状態を制御できる。
【0038】
また蒸着原料の形態は、粉末状、顆粒状、ペレット状等の形状が好適に用いられるが、上記の液晶配向を制御できるものであれば、特に形状、サイズ等の制限はない。
基板802には、斜方蒸着膜を形成する、画素電極や対向電極が形成された基板を用いる。斜方蒸着膜は、図2に示す断面構造を有しており、図8に示す蒸着方向807と図2に示す蒸着方向205が対応している。
【0039】
基板ホルダ803は、基板802の保持に用いる。基板ホルダ803を稼動することで、蒸着角度805を規定する。
蒸着角度805は、本発明においては、基板法線804と、蒸着源801と基板802の中心を結ぶ線分(図8では蒸着距離806に相当)がなす角である。蒸着角度805は装置の構成によるが、通常0°から90°の間で設定可能である。液晶素子に用いる配向膜として使用する斜方蒸着膜を作製する場合には、通常50°から90°の範囲に設定される。このような範囲で蒸着角度805を設定することで、斜方蒸着膜に蒸着方向807に起因した異方性が付与され、液晶分子を一定方向に配列させることが可能となる。
【0040】
更に、本発明においては、基板法線を基準として70度以上の蒸着角度にて酸化物を蒸着して一方向に傾斜した複数の酸化物柱状構造体を形成することが好ましい。このような範囲に設定することで、後述する(c)工程で行う第二の斜方蒸着を行う工程でのプレチルト角制御を効果的に行うことができる。また、このような方法で斜方蒸着膜を作製した場合、図2に示す斜方蒸着膜を構成する柱状構造体の傾斜角度203の角度が30度以上55度以下となる。例えば蒸着角度を70°に設定した場合、斜方蒸着膜の断面構造は図18(a)のようになり、柱状構造体の傾斜角度は基板法線を基準として30°傾斜する。また蒸着角度を87.5°に設定した場合には、柱状構造体傾斜角度は図18(b)のようになり、基板法線に対して最大で55度傾斜する。
【0041】
斜方蒸着法で作製した斜方蒸着膜の柱状構造体傾斜角度が前記範囲になることにより、プレチルト角が20°以上となり、後述する第二の斜方蒸着を行う工程でのプレチルト角制御を効果的に行うことができる。
【0042】
(b)工程:蒸着領域を制限するマスクを設置する工程
次に、第一の蒸着工程により形成された斜方蒸着膜の複数の柱状構造体を第1領域と、該第1領域を取り囲む第2領域に分けて、該第2領域にマスクを設置する。マスク設置は、図9に示すように、マスク904を基板902と平行に設置する。マスク904の各開口部は、第二の蒸着工程で斜方蒸着を行なう第1領域に対応しており、各蒸着基板に対しては図10に示すようにマスク1001が配置される。マスク1001の開口部は、少なくとも画素電極領域1004を含む大きさであることが好ましく、このように開口部を設定することで少なくとも画素電極領域の配向を、後述の(c)工程により変化させることができる。
【0043】
(c)工程:マスクを設置していない柱状構造体の一部領域に無機材料を蒸着する第二の蒸着工程
次に、前述のマスク開口部領域に、第二の蒸着を行なう第二の蒸着は、図9に示す様に、マスクを使用して(a)工程の斜方蒸着と同様の方法により蒸着を行う。この際、蒸着角度903は、基板法線を基準として−45度以上45度以下の範囲であることが好ましい。このとき、蒸着角度が+(プラス)の方向とは、第一の蒸着方向と同じ方向から蒸着した場合であり、蒸着角度が−(マイナス)の方向とは、第一の蒸着方向とは逆の方向から蒸着を行った場合である。
【0044】
上記の蒸着角度の範囲で第二の蒸着を行うことにより、第二の蒸着を行った前記第1領域における柱状構造体の直径を、第一の蒸着により形成された第2領域の柱状構造体の直径よりも大きくすることができ、第二の斜方蒸着を行った領域のみプレチルト角を低下させることができる。すなわち、第1領域は第一の蒸着および第二の蒸着の2回の蒸着が行なわれ、第2領域は第一の蒸着だけが行なわれる。
【0045】
図11に、プレチルト角50.1°を発現する無機配向膜(蒸着角度87.5°、膜厚240nm)上に種々の蒸着角度、蒸着時間で第二の斜方蒸着を行った場合の蒸着角度とプレチルト角の関係を示す。図11が示す通り、第二の斜方蒸着を−45度から45度の角度範囲で行うことで、プレチルト角を30°から45°の範囲に設定することができる。また、上記角度範囲内から外れるような範囲の蒸着角度で第二の斜方蒸着を行った場合には、プレチルト低下効果が確認できなかったり、もしくは一軸配向が保てない場合があった。
【0046】
第二の斜方蒸着の蒸着方向は、その蒸着方向が第一の斜方蒸着における蒸着方向と略同一平面内に存在する様に設定することが好ましい。この関係について図19を用いて説明する。図19において1901は蒸着方向、1902は蒸着角度、1903は蒸着方向の方位角成分である。第一の斜方蒸着における蒸着方向の方位角成分をψ(度)、第二の斜方蒸着における蒸着方向の方位角成分をψ(度)、すると、
ψ = ψ+180n (n=0,1,2,3,・・・)
を満たす場合、「第一の斜方蒸着の蒸着方向と第二の斜方蒸着の蒸着方向が同一平面内に存在する」、という。
【0047】
このように第二の蒸着方向を設定することで、上記蒸着角度の範囲において配向乱れを起こすことのない無機配向膜を作製できる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を用いてさらに詳しく本実施の形態を説明するが、本発明は実施例に記述されたものに限定されるわけではない。
実施例1
本実施例は、斜方蒸着膜として蒸着角度87.5度、膜厚が240nmである酸化ケイ素(SiOx:xは1から2)から成る斜方蒸着膜を形成(以後「1回目の蒸着」と記載)した後、前記斜方蒸着膜の一部に、蒸着角度0°で、成膜レート0.5nm/sで10秒間酸化ケイ素を蒸着(以後「2回目の蒸着」と記載)して、液晶装置を作製した実施例である。
【0049】
以下、下記(a)から(g)工程に沿って説明する。
(a)工程:基板準備工程
まず、画素電極、転移用電極が形成された基板と、対向電極が形成された基板を準備した。本実施例においては、画素電極、転移用電極はAlを主成分とする反射電極を用いた。
【0050】
(b)工程:斜方蒸着膜を形成する工程
次に、前記基板上に斜方蒸着膜を形成した。斜方蒸着膜は蒸着角度87.5°、膜厚240nmに設定し、図8に示す構成を有する装置を用いて蒸着を行った。このとき、同時にプレチルト角測定用のガラス基板も同時にセットしておき、蒸着後図5に示すプレチルト角測定用セルを作製し、プレチルト角の測定を行った。液晶は正の誘電異方性を有する液晶組成物(メルク社製:MLC−2050)を用いた。このときのプレチルト角は48.1°であった。
【0051】
(c)工程:部分的に2回目の蒸着を行う工程
次に、(b)工程にて作製した斜方蒸着膜基板の一部に、2回目の蒸着を行った。
まず、反射電極基板および対向電極基板の各基板上に、表示領域部に相当する部分のみ開口したマスクを設置した。次に蒸着角度を0度、即ち基板中心と蒸着源を結ぶ線分が基板法線と平行となる角度となるよう蒸着基板を設置した。
【0052】
このとき、(b)工程の時と同様に、プレチルト角測定用のセルを同時に設置しておき、2回目蒸着後のプレチルト角を測定した。そのときのプレチルト角は、2回目蒸着部で33°、マスクをして2回目蒸着を行わなかった部分が47°であった。
【0053】
また、2回目の蒸着を行った部分と行わなかった部分での表面構造の違いをFE−SEM(走査型電子顕微鏡S−5000H:日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて観察し、確認した。その結果を図16および図17に示す。図16が2回目の蒸着を行った部分、図17が行わなかった部分である。2回目の蒸着を行った箇所の柱状構造体の直径は約50nmであり、2回目の蒸着を行わなかった箇所の柱状構造体の直径は約30nmである。その結果、2回目の蒸着を行った箇所の柱状構造体の直径が、2回目の蒸着を行わなかった箇所の柱状構造体の直径よりも大きいことを確認した。
【0054】
また、断面構造より柱状構造体の傾斜角度は、基板法線を基準として38°であることを確認した。
【0055】
(d)工程:シール剤塗布、基板貼り合せ工程
次に、ベンド配向形成用の液晶セルを作製する。反射電極を形成した基板上に、所定のパターン形状でUV硬化シール剤を塗布する。シール剤には直径3μmのスペーサービーズが混合してある。
【0056】
次にUV硬化シール剤を塗布した反射電極形成基板上に、対向電極基板を所定の方向、位置で設置する。設置の際には両基板上のイオンビーム照射領域が重なり合うように設置し、所定の条件でUV照射、基板加熱を行うことで、空セルを作製する。
【0057】
(e)工程:液晶注入・液晶セル封止工程
次に、液晶注入装置を用いて空セル内に液晶材料(メルク社製:MLC−2050)を注入する。その後、UV硬化型の封口剤を用いてLCセルの封止を行う。
【0058】
(f)工程:液晶配向処理工程
次に、液晶層の再配向処理を行う。液晶のネマティック−等方相相転移温度(89℃)以上にLCセルを加熱した後、徐冷を行う。
【0059】
(g)工程:液晶配向処理工程
次に、反射電極基板上に形成された取り出し電極に、異方性導電接着フィルム(ACF)を介してフレキシブルケーブルを接続する。
【0060】
ここで、液晶の配向状態を確認するために、反射電極基板の代わりに対向電極基板を用いた以外は上記作製方法と同様の方法で作製した配向確認用液晶セルを用意する。この液晶セルをクロスニコル配置である2枚の偏光板の間に導入して観察を行うと、2回目の蒸着を行った領域では、透過光が明るい黄色であり、2回目の蒸着を行わなかった領域では透過光はグレーであった。この透過光色の違いは液晶層のリタデーションの違いに対応しており、明るい黄色の方がリタデーション量が大きい。このことは、2回目の蒸着を行った領域は電圧無印加状態でスプレイ配向状態を形成しているのに対し、2回目の蒸着を行わない部分は電圧無印加状態でベンド配向を形成していることを示唆している。以上より、2回目蒸着を行った領域では液晶層はスプレイ配向を形成し、2回目の蒸着を行わない領域ではベンド配向を形成していることが確認できる。
【0061】
この配向確認用液晶セルに電圧を印加し、スプレイ配向領域をベンド配向へと転移させる。このときの様子を図13に示す。初期の配向状態は図13(a)である。まず表示領域周辺に配置された転移用電極と、表示領域の画素電極に周波数60Hzの矩形波電圧を徐々に印加すると、印加電圧1.3V以上でベンド配向へ転移を開始し、1.5V印加後数秒で図13(b)に示すように表示領域全域がベンド配向となる。
【0062】
その後、電圧印加を終了して、電圧無印加の状態で放置し、配向状態変化を観察したが、図13(c)に示すように、スプレイ配向への逆転移は観察されず、ベンド配向が維持される。
【0063】
上記結果より、2回目の蒸着を行った領域では、通常はスプレイ配向状態が安定な状態であるにも関わらず、その周囲に形成された1回目の斜方蒸着を行った際に形成したベンド配向領域の影響により、ベンド配向が維持されていることが確認できる。
【0064】
次に、一軸性の位相補償板を液晶セルのガラス基板上へ貼り付ける。位相補償板の進相軸が液晶セルの進相軸と直交する様に位相補償板を設置する。
この状態で液晶セルを駆動し、図12に示すような光学系配置において電圧−反射率特性(V−R特性)を測定すると、図15に示すグラフを得られ、0Vで反射率最大となり、5V付近で反射率が極小となる電圧−反射率特性曲線を得ることができる。
【0065】
図15に示す電圧−反射率特性の変化は、液晶層のリタデーション(位相差)が印加電圧により変化することに起因している。本実施例の液晶装置においては、印加電圧が低い場合にリタデーション量が大きく、印加電圧を大きくするに従いリタデーション量が小さくなり、反射率もリタデーション量減少に従い小さくなる。
【0066】
比較例1
本比較例は、実施例1における2回目の蒸着を行わない以外は実施例1と同様の方法で作製した液晶装置の例である。
【0067】
本比較例では、表示領域部、非表示領域部ともにプレチルト角は48.1°であり、パラレルセルを作製すると、両領域共にベンド配向を形成する。また、両領域の無機配向膜の構造観察を行うと、柱状構造体の傾斜角度および柱状構造体直径は両領域で同一となる。
【0068】
上記の配向状態を有する液晶セルを用いて電圧−反射率特性を測定したところ、実施例1の場合と比較して低電圧側での反射率低下が見られる。
従って比較例1の構成の液晶セルでは電圧無印加状態でベンド配向を形成可能であるが、0Vでの反射率が低下することが分かる。
【0069】
比較例2
本比較例は、実施例1における2回目の蒸着を基板全面に対して行う以外は、実施例1と同様の方法で作製した液晶装置の例である。
【0070】
本比較例では、1回目の蒸着、2回目の蒸着共に基板全面に対して行っているので、表示領域部、非表示領域部ともにプレチルト角は、元の斜方蒸着膜より低下して28°となり、パラレルセルを作製すると、両領域共にスプレイ配向を形成する。
【0071】
また、実施例1の場合と同様に表示領域に電圧を印加した際の配向変化を図14に示す。初期状態(図14(a))から、転移電圧以上の電圧を印加してベンド配向を形成したのち(図14(b))、電圧印加を終了して静置したところ、数秒後にスプレイ配向へと逆転移し、ベンド配向は維持されない(図14(c))。
【0072】
このことより本比較例の場合においては電圧無印加の状態ではベンド配向が維持できないことが確認できる。
電圧−反射率特性(V−R特性)を測定したところ、0Vで反射率最大とならず、スプレイ−ベンド転移に要する電圧分だけ余分に電圧印加が必要である。またそれに従い反射率最小となる電圧も高くなる。
【0073】
実施例2
本実施例は、斜方蒸着膜として蒸着角度87.5度、膜厚が240nmである酸化ケイ素(SiOx)から成る斜方蒸着膜を形成(以後「1回目の蒸着」と記載)した後、前記斜方蒸着膜の一部に、蒸着角度−45°、成膜レート0.5nm/sで10秒間酸化ケイ素を蒸着(以後「2回目の蒸着」と記載)して、液晶装置を作製した実施例である。
【0074】
このとき2回目の蒸着の蒸着角度は、図19に示す蒸着角度1902が−45°(ここで符号−は1回目の蒸着と逆方向を指す)、蒸着方向の方位角成分1903が1回目の蒸着のそれと同じ平面内に含まれる、即ち1回目の蒸着における蒸着方向の方位角成分をψ(度)、2回目のそれをψ(度)とすると、ψ=ψ+180の関係が成り立つように蒸着方向を決定した。
【0075】
実施例1と同様の方法により各領域のプレチルト角を測定したところ、1回目の蒸着のみを行った部分では48.9°、2回目の蒸着を行った部分では41.1°であった。
配向確認用セルを作製したところ、実施例1の場合と同様に2回目の蒸着を行った表示領域部のみがスプレイ配向となり、その他の部分はベンド配向となる。また、ベンド転移後の逆転移も実施例1の場合と同様起こらない。
【0076】
実施例3
本実施例は、斜方蒸着膜として蒸着角度87.5度、膜厚が240nmである酸化ケイ素(SiOx)から成る斜方蒸着膜を形成(以後「1回目の蒸着」と記載)した後、前記斜方蒸着膜の一部に、蒸着角度45°で、成膜レート0.5nm/sで10秒間酸化ケイ素を蒸着(以後「2回目の蒸着」と記載)して、液晶装置を作製した実施例である。
【0077】
実施例1と同様の方法により各領域のプレチルト角を測定したところ、1回目の蒸着のみを行った部分では48.9°、2回目の蒸着を行った部分では38.6°であった。
配向確認用セルを作製したところ、実施例1の場合と同様に2回目の蒸着を行った表示領域部のみがスプレイ配向となり、その他の部分はベンド配向となる。また、ベンド転移後の逆転移も実施例1の場合と同様起こらないことが確認できる。
【0078】
比較例3
本比較例は、斜方蒸着膜として蒸着角度87.5°、膜厚が240nmである酸化ケイ素(SiOx)から成る斜方蒸着膜を形成(以後「1回目の蒸着」と記載)した後、前記斜方蒸着膜の一部に、蒸着角度67.5°で、成膜レート0.5nmで10秒間酸化ケイ素を蒸着(「2回目の蒸着」と記載)して、液晶装置を作製した比較例である。
【0079】
配向確認用セルを作製して配向状態を確認したところ、配向乱れが発生していることが確認された。従って比較例3の方法で作製した液晶装置は、表示素子として使用することは出来なかった。
【0080】
比較例4
本実施例は、2回目の蒸着における蒸着角度が−67.5°である以外は、比較例3の方法と同様の方法で無機配向膜を形成し、液晶装置を作製した比較例である。
【0081】
配向確認用セルを作製して配向状態を確認したところ、比較例3の場合と同様に配向乱れが発生してしまい、表示素子として使用することは出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、斜方蒸着法等の成膜法により形成される無機配向膜を用いた液晶表示素子に利用可能である。また該液晶表示素子を用いた表示装置、例えばプロジェクター等の投射型表示装置、液晶モニタ、液晶テレビ等に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の無機配向膜を示す概念図である。
【図2】本発明の無機配向膜における断面構造の概念図である。
【図3】本発明の無機配向膜における表面構造の概念図である。
【図4】本発明の液晶装置におけるプレチルト角を示す概念図である。
【図5】本発明の液晶装置を示す概念図である。
【図6】本発明の液晶装置におけるスプレイ配向状態を示す概念図である。
【図7】本発明の液晶装置におけるベンド配向状態を示す概念図である。
【図8】本発明の無機配向膜の製造方法における、斜方蒸着法の装置構成を示す構成図である。
【図9】本発明の無機配向膜の製造方法における、マスクを配置した斜方蒸着法の装置構成を示す装置構成図である。
【図10】本発明の無機配向膜の製造方法における、マスク配置方法の概念図である。
【図11】本発明の無機配向膜の製造方法における、第二の蒸着における蒸着角度とプレチルト角の関係を示すグラフである。
【図12】本発明の液晶装置の電圧−反射率特性測定に使用する測定系の装置構成図である。
【図13】本発明の液晶装置における、電圧印加前後の表示領域の配向変化を示す一例である。
【図14】本発明の液晶装置における、電圧印加前後の表示領域の配向変化を示す一例である。
【図15】本発明の液晶装置における、電圧−反射率特性のグラフである。
【図16】本発明の実施例1の無機配向膜における、第2領域の電子顕微鏡写真である。
【図17】本発明の実施例1の無機配向膜における、第1領域の電子顕微鏡写真である。
【図18】本発明の無機配向膜における、蒸着角度が異なる場合の無機配向膜の断面電子顕微鏡写真である。
【図19】本発明の無機配向膜の作製方法における、蒸着方向を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0084】
101 第1領域
102 第2領域
103、201、802、902、1003 基板
202、301 柱状構造体
203 柱状構造体の傾斜角度
204 膜厚
205、807、905、1901 蒸着方向
206 空隙
207、302 柱状構造体の直径
208 基板法線
303 第一の斜方蒸着方向
401 プレチルト角
402 液晶分子
403 配向膜
404 ガラス基板
405 配向処理方向
501、1004 画素電極領域
502 画素電極外領域
503 シール部
504 封口部
505 取出電極
601、701 上部基板
602、702 対向電極
603、703、1002 無機配向膜
604、704 液晶層
605 画素電極
606、705 下部基板
801、901 蒸着源
803 基板ホルダ
804 基板法線
805、903、1902 蒸着角度
806 蒸着距離
904、1001 マスク
1201 ハーフミラー
1202 位相差板
1203 液晶装置
1204 光源
1205 偏光板1
1206 偏光板2
1301、1401 表示領域部
1302、1402 非表示領域部
1903 蒸着方向の方位角成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された、同一方向に傾斜した複数の柱状構造体により形成される無機配向膜において、前記無機配向膜は第1領域と、該第1領域を取り囲むように配置された第2領域を有し、前記第1領域における柱状構造体の直径が、前記第2領域の柱状構造体の直径よりも大きいことを特徴とする無機配向膜。
【請求項2】
前記柱状構造体の傾斜角度が、基板法線を基準として30度以上55度以下であることを特徴とする請求項1に記載の無機配向膜。
【請求項3】
正の誘電異方性を有するネマティック液晶からなる液晶層と、前記液晶層を挟持して対向する第1の基板と第2の基板と、前記第1の基板と第2の基板上に配置された同一方向に傾斜した複数の柱状構造体により形成される無機配向膜を有する液晶装置であり、前記第1の基板上には複数の画素電極が配置された画素電極領域と、前記画素電極領域を取り囲むように画素電極外領域が配置され、前記第2の基板上には透明電極から成る対向電極が配置され、前記第1の基板の画素電極領域上に前記無機配向膜の第1領域が配置され、前記画素電極外領域には前記無機配向膜の第2領域が配置され、前記第1領域における柱状構造体の直径が、前記第2領域の柱状構造体の直径よりも大きいことを特徴とする液晶装置。
【請求項4】
前記液晶層の表示動作時の配向状態がベンド配向であることを特徴とする請求項3に記載の液晶装置。
【請求項5】
前記非表示領域部の液晶層において、電圧無印加の状態での該液晶層の配向状態がベンド配向であることを特徴とする請求項3または4に記載の液晶装置。
【請求項6】
斜方蒸着法を用いた、一方向に傾斜した複数の柱状構造体により形成される無機配向膜の製造方法において、基板上に基板法線を基準として70度以上の蒸着角度にて酸化物を蒸着して一方向に傾斜した複数の柱状構造体を形成する第一の蒸着工程と、第一の蒸着工程により形成された前記複数の柱状構造体を第1領域と、該第1領域を取り囲む第2領域に分けて、該第2領域にマスクを設置する工程と、前記マスクを設置していない第1領域の柱状構造体に、基板法線を基準として−45度以上45度以下の蒸着角度にて酸化物を蒸着し、前記第1領域における柱状構造体の直径を、前記第2領域の柱状構造体の直径よりも大きくする第二の蒸着工程からなり、第一の蒸着工程における蒸着方向と、第二の蒸着工程における蒸着方向が略同一平面内にあることを特徴とする無機配向膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図19】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−224312(P2010−224312A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72674(P2009−72674)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】