説明

無段変速ベルトエレメント用整列フィーダ

【課題】無段変速ベルトエレメントの上下及び表裏を正しい姿勢に整列させることができる無段変速ベルトエレメント用整列フィーダを提供する。
【解決手段】表側に突起を形成したヘッド部を設けた板状の無段変速ベルトエレメントWが投入される傾斜円筒容器10の底部上に切出し回転盤21を配設し、切出し回転盤21を無段変速ベルトエレメントWに作用する重力を打ち消さない速度で回転させ、切出し回転盤21にヘッド部を下向きにした表向きの無段変速ベルトエレメントWを1枚だけ嵌合掛止させるエレメント嵌合孔21aを同心円上に多数配設し、該エレメント嵌合孔21aにエレメントWの上下及び表裏が逆になるとエレメントWを傾斜円筒容器10下部に滑落させるテーパガイド部を形成し、底部の上方部にエレメントWのヘッド部の先端を受けてヘッド部が上向きとなって落下排出されるエレメント排出口10aを設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無段変速ベルトエレメントの姿勢を正しく整えて送出する無段変速ベルトエレメント用整列フィーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、振動式のパーツフィーダに切欠き部を形成し、振動を与えられる部品が切欠き部においてバランスを崩して落下するようにして正常な姿勢を維持する部品のみを送出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、無段変速ベルトエレメントは表側に突起を形成したヘッド部をボディ部上に連設する形状をしており、従来のパーツフィーダでは前記のような無段変速ベルトエレメントの表裏および上下を整列させることは難しかった。しかも、振動式のパーツフィーダでは振動発生装置が必要となり装置が高価となるうえに、消費電力が増しランニングコストが高くなるという問題があった。
【特許文献1】特開2004−217393号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は無段変速ベルトエレメントの上下及び表裏を正しい姿勢に整列させることができる無段変速ベルトエレメント用整列フィーダを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、表側に突起を形成したヘッド部をボディ部に連設した板状の無段変速ベルトエレメントが投入される傾斜円筒容器の底部上に切出し回転盤を配設し、該切出し回転盤を無段変速ベルトエレメントに作用する重力を打ち消さない速度で回転させるとともに、該切出し回転盤にヘッド部を下向きにした表向きの無段変速ベルトエレメントを1枚だけ嵌合掛止させるエレメント嵌合孔を同心円上に多数配設し、該エレメント嵌合孔に無段変速ベルトエレメントの上下及び表裏が逆になると無段変速ベルトエレメントを傾斜円筒容器下部に滑落させるテーパガイド部を形成し、また、傾斜円筒容器底部の上方部に無段変速ベルトエレメントのヘッド部の先端を受けてヘッド部が上向きとなって落下排出されるようにしたエレメント排出口を設けた無段変速ベルトエレメント用整列フィーダを請求項1の発明とし、請求項1の発明において、エレメント嵌合孔に無段変速ベルトエレメントのヘッド部を係止させるヘッド掛止部を設けた無段変速ベルトエレメント用整列フィーダを請求項2の発明とし、請求項2の発明において、ヘッド掛止部を先尖り状とした無段変速ベルトエレメント用整列フィーダを請求項3の発明とし、請求項1から3の発明において、テーパガイド部が無段変速ベルトエレメントのボディ部下端を掬い上げて滑落させる左右のボディガイド斜面と、無段変速ベルトエレメントの突起を掬い上げて滑落させる突起ガイド斜面とよりなる無段変速ベルトエレメント用整列フィーダを請求項4の発明とし、請求項4の発明において、左右のボディガイド斜面が中央に向かう下向きの傾斜を有するものとした無段変速ベルトエレメント用整列フィーダを請求項5の発明とし、請求項1から5の発明において、切出し円盤の複数の同心円上にエレメント嵌合孔を多数配設するとともに、前記各同心円に合わせて傾斜円筒容器底部にエレメント排出口を複数設けた無段変速ベルトエレメント用整列フィーダを請求項6の発明とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、表側に突起を形成したヘッド部をボディ部に連設した板状の無段変速ベルトエレメントが投入される傾斜円筒容器の底部上に切出し回転盤を配設し、該切出し回転盤を無段変速ベルトエレメントに作用する重力を打ち消さない速度で回転させるとともに、該切出し回転盤にヘッド部を下向きにした表向きの無段変速ベルトエレメントを1枚だけ嵌合掛止させるエレメント嵌合孔を同心円上に多数配設し、該エレメント嵌合孔に無段変速ベルトエレメントの上下及び表裏が逆になると無段変速ベルトエレメントを傾斜円筒容器下部に滑落させるテーパガイド部を形成し、また、傾斜円筒容器底部の上方部に無段変速ベルトエレメントのヘッド部の先端を受けてヘッド部が上向きとなって落下排出されるようにしたエレメント排出口を設けたものとしたから、傾斜円筒容器内に投入された無段変速ベルトエレメントのうち上下及び表裏が逆になっているものはエレメント嵌合孔のテーパガイド部により滑り落ちて傾斜円筒容器の下部に滑落し、上下及び表裏が正しい無段変速ベルトエレメントだけがエレメント嵌合孔に掛止され、傾斜円筒容器の上方に移送されて傾斜円筒容器のエレメント排出口より排出されることとなる。また、無段変速ベルトエレメントのヘッド部先端はエレメント排出口に掛止されて、無段変速ベルトエレメントはヘッド部を上向きにした姿勢で排出されることとなる。
【0007】
また請求項2のように、エレメント嵌合孔に無段変速ベルトエレメントのヘッド部を係止させるヘッド掛止部を設けたことにより、ヘッド部を下向きとした正姿勢の無段変速ベルトエレメントのヘッド部を確実に掛止してエレメント嵌合孔に無段変速ベルトエレメントを嵌合掛止させることができる。
【0008】
請求項3のように、ヘッド掛止部を先尖り状とすることにより、ヘッド部を下向きとした正姿勢の無段変速ベルトエレメントのヘッド部をより的確に掛止することができるので、切出し円盤の速度を早めてもエレメント嵌合孔内に収納された正しい姿勢の無段変速ベルトエレメントが振動や重なり合う他の無段変速ベルトエレメントにより掛止が外れて滑落することを確実に防止できるので、切出し回転盤の回転速度を高めても選別が確実に行われるので処理能力を向上させることができる。
【0009】
また、請求項4のように、テーパガイド部が無段変速ベルトエレメントのボディ部下端を掬い上げて滑落させる左右のボディガイド斜面と、無段変速ベルトエレメントの突起を掬い上げて滑落させる突起ガイド斜面とよりなるものとすることにより、駆動機構を用いず重力により上下逆や裏返しのものと正姿勢のものとを素早く選別することができる。
【0010】
請求項5のように、左右のボディガイド斜面が中央に向かう下向きの傾斜を有するものとすることにより、上下逆の無段変速ベルトエレメントのボディ部はより円滑にエレメント嵌合孔内から滑落させることができ、無段変速ベルトエレメントの滑落が円滑に行われることにより切出し回転盤の回転速度を高めても選別が的確に行われるので処理能力を向上させることができる。
【0011】
請求項6のように、切出し回転盤の複数の同心円上にエレメント嵌合孔が多数配設するとともに、前記各同心円に合わせて傾斜円筒容器底部にエレメント排出口を複数設けたことにより、切出し回転盤が1回転する間に排出される無段変速ベルトエレメント数は増すこととなり処理能力を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図に基づいて詳細に説明する。
図1、2中、1は加工工程から送り込まれてきた板状の無段変速ベルトエレメントWの上下及び表裏を整列させる整列フィーダであり、整列を行う無段変速ベルトエレメントWは図12、13に示されように、表側に突起Vを形成したヘッド部Hをボディ部Bに連設した形状としている。
【0013】
前記整列フィーダ1は図1、2に示されるように、上面を開口とするとともに底部14にエレメント排出口10aを形成した傾斜円筒容器10と、該傾斜円筒容器10の底部14上面で回転する切出し回転盤21とからなる。傾斜円筒容器10のエレメント排出口10aは図3、4、5に示されるように、傾斜最上部から切出し円盤21の回転方向側に向かう横長形状とされ、且つ後記するエレメント嵌合孔21aの上下切欠幅よりも上下孔幅が小さいので、エレメント排出口10aの下方側端縁はエレメント嵌合孔21aから露呈することとなる。このため、エレメント嵌合孔21aに嵌合掛止されて移送される無段変速ベルトエレメントWがエレメント排出口10a位置に移動されると、無段変速ベルトエレメントWのヘッド部Hの先端下面はエレメント排出口10aの下縁に受けられることとなる。この結果、無段変速ベルトエレメントWは時計回り方向に回転しながら落下することとなり、無段変速ベルトエレメントWのヘッド部Hを上にしてシュート3に送り出されることとなる。
【0014】
また、切出し回転盤21に形成されるエレメント嵌合孔21aは図3、4、11に示されるように、上側を開口させた無段変速ベルトエレメントWの外形と略等しい形状とし、且つ無段変速ベルトエレメントWの厚みと略等しい深さを有するもので、同心円状に多数配設されている。また、エレメント嵌合孔21aの下端面には無段変速ベルトエレメントWが上下逆及び裏返しになると無段変速ベルトエレメントWをエレメント嵌合孔21aから滑落させるテーパガイド部22と、無段変速ベルトエレメントWのヘッド部Hを係止するヘッド掛止部24とが形成されている。
【0015】
前記テーパガイド部22は上下が反転してエレメント嵌合孔21aに嵌り込んでいる無段変速ベルトエレメントWのボディ部B下端を掬い上げてエレメント嵌合孔21aから滑落させる左右のボディガイド斜面22aと、エレメント嵌合孔21aの下端面中央に形成されて裏向きの無段変速ベルトエレメントWの突起Vを介入させる凹弧面23と、裏向きの無段変速ベルトエレメントWの突起Vを掬い上げて滑落させる突起ガイド斜面23aとよりなり、該突起ガイド斜面23aは凹弧面23に形成される。
【0016】
また、前記左右のボディガイド斜面22aは左右から中央に向けて下向きの傾斜をもたせて上下が反転した無段変速ベルトエレメントWのボディ部B下端の掬い上げが円滑に行われるようにしている。
【0017】
さらに、前記ヘッド係止部24は図8、9に示されるように、凹弧面23の突起ガイド斜面23aとボディガイド斜面22aの交差部下面をテーパ状に切欠して先尖り状としたものであり、先尖り状のヘッド係止部24はエレメント嵌合孔21aの厚みの略中間位置に形成されるものとしている。ヘッド係止部24を先尖り状とすることにより、表向きの正しい姿勢を保持している無段変速ベルトエレメントWのヘッド部Hを確実に掛止して振動等により掛止が解けて切出し回転盤21の下方に滑落することがないようにしている。
【0018】
このように構成されたものは、先ず、成形加工された無段変速ベルトエレメントWを整列フィーダ1投入する。整列フィーダ1に投入された無段変速ベルトエレメントWは図2に示されるように、整列フィーダ1の傾斜円筒容器10の底部に堆積することとなるが、無段変速ベルトエレメントWは回転する切出し回転盤21の各エレメント嵌合孔21aに1枚だけ嵌合されて傾斜円筒容器10の上方に持ち上げられていく。
【0019】
このとき図6に示されるように、エレメント嵌合孔21aに正姿勢で嵌合された無段変速ベルトエレメントWはヘッド係止部24にヘッド部Hを的確に掛止され、滑落することがない。そして、エレメント嵌合孔21aへの嵌合が不十分な無段変速ベルトエレメントWはエレメント嵌合孔21a内に掛止されず傾斜円筒容器10の底部に滑落する。また、上下が反転している無段変速ベルトエレメントWはそのボディ部Bがエレメント嵌合孔21aのボディガイド斜面22aにより掬い上げられて傾斜円筒容器10の底部に滑落する。さらに、表裏が裏返っている無段変速ベルトエレメントWは突起Vが切出し回転盤21側に面しているため、図7、8、9に示されるように、ヘッド部Hの下縁はヘッド掛止面24より上方に位置することとなって、ヘッド掛止面24に掛止されることなく突起ガイド斜面23aに乗り上げてエレメント嵌合孔21aに係止されされることなく傾斜円筒容器10の底部に滑落することとなる。
【0020】
そして、エレメント嵌合孔21aに嵌合された正姿勢の無段変速ベルトエレメントWは図3、4、5に示されるように、傾斜円筒容器10の上方に送り込まれエレメント排出口10aよりシュート3に送り込まれる。該エレメント排出口10aの上下孔幅はエレメント嵌合孔21aの上下切欠幅より小さいので、エレメント排出口10aの下方側端縁はエレメント嵌合孔21aから露呈し、無段変速ベルトエレメントWのヘッド部Hの先端下面はエレメント排出口10aの下縁に受けられることとなる。このため無段変速ベルトエレメントWは時計回り方向に回転しながら落下し、図5に示されるように、ヘッド部Hを上にしてボディ部Bからシュート3上に送り込まれることとなる。
【0021】
なお、前記好ましい実施の形態ではエレメント嵌合孔21aは切出し円盤21の一つの同心円上に多数配設したものとしているが、切出し回転盤21上の複数の同心円上にエレメント嵌合孔21aを多数配設し、該同心円に合わせて傾斜円筒容器10の底部14に複数のエレメント排出口10aを設けたものとすれば、切出し回転盤が1回転する間にエレメント排出口10aより排出される無段変速ベルトエレメントWの数量を大幅に増加させることができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好ましい実施の形態を示す正面図である。
【図2】同じく一部切欠側面図である。
【図3】同じく無段変速ベルトエレメントの選別状態を示す平面図である。
【図4】無段変速ベルトエレメントの排出状態を示す一部切欠拡大平面図である。
【図5】同じく無段変速ベルトエレメントの排出状態を示す一部切欠拡大側面図である。
【図6】エレメント嵌合孔に無段変速ベルトエレメントが嵌合掛止された状態を示す平面図である。
【図7】同じく裏向きの無段変速ベルトエレメントがテーパガイド部により掬い上げられて滑落する状態を示す平面図である。
【図8】同じく裏向きの無段変速ベルトエレメントがテーパガイド部により掬い上げられて滑落する状態を示す側面図である。
【図9】同じく裏向きの無段変速ベルトエレメントがテーパガイド部により掬い上げられて滑落する状態を示す平面図である。
【図10】同じく上下が反転した無段変速ベルトエレメントがテーパガイド部により掬い上げられて滑落する状態を示す平面図である。
【図11】切出し円盤の正面図である。
【図12】無段変速ベルトエレメントの斜視図である。
【図13】無段変速ベルトエレメントの正面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 傾斜円筒容器
10a エレメント排出口
14 底部
21 切出し回転盤
21a エレメント嵌合孔
22 テーパガイド部
22a ボディガイド斜面
23 凹弧部
23a 突起ガイド斜面
24 ヘッド掛止部
W 無段変速ベルトエレメント
B ボディ部
H ヘッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表側に突起を形成したヘッド部をボディ部に連設した板状の無段変速ベルトエレメントが投入される傾斜円筒容器の底部上に切出し回転盤を配設し、該切出し回転盤を無段変速ベルトエレメントに作用する重力を打ち消さない速度で回転させるとともに、該切出し回転盤にヘッド部を下向きにした表向きの無段変速ベルトエレメントを1枚だけ嵌合掛止させるエレメント嵌合孔を同心円上に多数配設し、該エレメント嵌合孔に無段変速ベルトエレメントの上下及び表裏が逆になると無段変速ベルトエレメントを傾斜円筒容器下部に滑落させるテーパガイド部を形成し、また、傾斜円筒容器底部の上方部に無段変速ベルトエレメントのヘッド部の先端を受けてヘッド部が上向きとなって落下排出されるようにしたエレメント排出口を設けたことを特徴とする無段変速ベルトエレメント用整列フィーダ。
【請求項2】
エレメント嵌合孔に無段変速ベルトエレメントのヘッド部を係止させるヘッド掛止部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の無段変速ベルトエレメント用整列フィーダ。
【請求項3】
ヘッド掛止部を先尖り状としたことを特徴とする請求項2に記載の無段変速ベルトエレメント用整列フィーダ。
【請求項4】
テーパガイド部が無段変速ベルトエレメントのボディ部下端を掬い上げて滑落させる左右のボディガイド斜面と、無段変速ベルトエレメントの突起を掬い上げて滑落させる突起ガイド斜面とよりなることを特徴とする請求項1から3に記載の無段変速ベルトエレメント用整列フィーダ。
【請求項5】
左右のボディガイド斜面が中央に向かう下向きの傾斜を有するものとしたことを特徴とする請求項4に記載の無段変速ベルトエレメント用整列フィーダ。
【請求項6】
切出し円盤の複数の同心円上にエレメント嵌合孔を多数配設するとともに、前記各同心円に合わせて傾斜円筒容器底部にエレメント排出口を複数設けたことを特徴とする請求項1から5に記載の無段変速ベルトエレメント用整列フィーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−223769(P2007−223769A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48741(P2006−48741)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(393011038)菱栄エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】